JP4322975B2 - 新規なクロマノール配糖体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なクロマノール配糖体の製造方法およびその方法により製造されるクロマノール配糖体に関するものである。より詳しくは、本発明は、有機合成技術を用いたクロマノール配糖体の製造方法およびその方法により製造されるクロマノール配糖体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下記一般式:
【0003】
【化14】
【0004】
(ただし、式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なる水素原子または低級アルキル基を表わし、R5 は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表わし、Xは単糖残基またはオリゴ糖残基を表わし、該糖残基の水酸基の水素原子は低級アルキル基または低級アシル基で置換されていてもよく、nは0〜4の整数であり、およびmは1〜6の整数である)
で表されるクロマノール配糖体は、特開平07−118287号において、優れた抗酸化活性、熱やpH安定性及び水溶性を有する化合物であることが報告されている。
【0005】
また、近年、本発明者らの研究により、上記一般式で表されるクロマノール配糖体は、上記特性の他に放射線防護作用や炎症性腸疾患予防及び治療効果も有することが分かった。
【0006】
このような種々の優れた特性を有するクロマノール配糖体は、従来、糖転移作用を触媒する酵素を用いて、下記一般式:
【0007】
【化15】
【0008】
(ただし、式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なる水素原子または低級アルキル基を表わし、R5 は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表わし、およびnは0〜4の整数である。)
で表される2−置換アルコールと糖とを有機溶媒の存在下において反応させることにより(特開平7−118287号)または多孔質キトサンビーズにα−グルコシダーゼを固定化させた固定化酵素を用いて、上記一般式で示される2−置換アルコールと糖とを有機溶媒共存下において反応させることにより(特開平9−249688号)、製造されてきた。
【0009】
しかしながら、上記の方法は、双方とも、酵素を用いるものであるが、目的の糖を効率よく2−置換アルコールに転移させることができる酵素が入手できる場合には良好に適応できるが、フコース等の糖の種類によっては、糖を2−置換アルコールに転移させて目的とするクロマノール配糖体を生産できる酵素がまだ発見されていない、または知られていても非常に高価であり、かつたとえ目的とするクロマノール配糖体を生産する酵素があったとしても、その反応効率が非常に悪い場合には、収率が悪く経済的に適応できないという問題点があった。
【0010】
一方、上述したように、クロマノール配糖体には様々な特性があるが、その特性の発現強度は2−置換アルコールに結合する糖の種類によって当然相違する、さらには、クロマノール配糖体を生体に投与する際のクロマノール配糖体のグリコシド結合の安定性や細胞への取り込まれ方にも、結合する糖の種類によって違いが生じることは常識となっている。このため、様々な種類の糖を有するクロマノール配糖体について、目的とする特性(例えば、抗酸化活性、熱安定性、pH安定性、水溶性、放射線防護作用または炎症性腸疾患予防若しくは治療効果)、グリコシド結合の安定性および細胞への取り込まれ易さ等を検討することは非常に有用である。
【0011】
したがって、酵素により糖を転移できない、または転移できたとしても効率が悪く目的とするクロマノール配糖体が十分量生産できないなどの欠点を克服するクロマノール配糖体の製造方法に対する要望は強く存在している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、新規なクロマノール配糖体の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、酵素により糖を転移できない、または転移できたとしても効率が悪く目的とするクロマノール配糖体が十分量生産できないなどの欠点を克服する有機合成によるクロマノール配糖体の製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、生成するクロマノール配糖体の分解を防ぎクロマノール配糖体を高い収率で製造する方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる他の目的は、このような方法により製造されるクロマノール配糖体を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記事情を鑑みて鋭意研究を行った結果、アノマー位に脱離基を導入し他の水酸基を保護基で保護した糖の誘導体を2−置換アルコール誘導体と縮合させることにより、目的とするクロマノール配糖体を効率良く合成できることを発見した。また、上記に加えて、本発明者らは、上記縮合反応後における保護基の脱保護法に関しても鋭意研究を行った結果、保護基の脱保護を酸分解により、酵素分解によりまたは金属試薬を用いて行うことにより、生成したクロマノール配糖体の分解を効率よく防止し、これによりクロマノール配糖体の収率を向上させることができることを発見した。これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、上記諸目的は、下記(イ)から(ヌ)によって達成される。
【0018】
(イ) アノマー位に脱離基を導入し他の水酸基を保護基で保護した糖の誘導体および一般式(2):
【0019】
【化16】
【0020】
[ただし、式中、R1、R2、R3およびR4は同一または異なる水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、R5は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、およびnは0〜4の整数である。]
で表される2−置換アルコール誘導体の縮合反応を有し、前記糖の誘導体が一般式(3)で表されるL−フコース供与体、一般式(4)で表されるL−ラムノース供与体、一般式(5)で表されるD−キシロース供与体、一般式(6)で表されるD−ガラクトース供与体または一般式(7)で表されるD−マンノース供与体である、
【0021】
【化17】
【0022】
[ただし、式(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)中、Yはハロゲン原子、硫黄化合物またはトリクロロアセトイミド基を表し、その種類によりα体またはβ体のいずれかの型を優先的にとり、およびRは同一または異なるアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基またはトリチル基を表す。]
一般式(1):
【0024】
【化18】
【0025】
[ただし、式中、R 1 、R 2 、R 3 およびR 4 は同一または異なる水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、R 5 は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、Xは単糖残基(但し、糖残基中の水酸基の水素原子はアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基またはトリチル基で置換されていてもよい)を表し、およびnは0〜4の整数である。]
で表されるクロマノール配糖体の製造方法。
【0029】
(ロ)前記縮合反応後における保護基の脱保護が酸分解により行われるものである前記(イ)に記載の方法。
【0030】
(ハ)前記酸分解がメタノール性塩酸またはアルコールに塩酸を添加した溶媒の存在下で行われるものである前記(ロ)に記載の方法。
【0031】
(ニ)前記縮合反応後における保護基の脱保護が酵素分解により行われるものである前記(イ)に記載の方法。
【0032】
(ホ)前記酵素分解に使用される酵素がエステラーゼまたはリパーゼである前記(ニ)に記載の方法。
【0033】
(ヘ)前記縮合反応後における保護基の脱保護が金属試薬を用いて行われるものである前記(イ)に記載の方法。
【0034】
(ト)前記金属試薬が水素化リチウムアルミニウムまたは水素化ジイソブチルアルミニウムである前記(ヘ)に記載の方法。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明は、下記一般式(2):
【0046】
【化29】
【0047】
[ただし、式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なる水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、R5 は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、およびnは0〜4の整数である。]
で表される2−置換アルコール誘導体(以下、「糖受容体」と称する)を基質として使用してアノマー位に脱離基を導入し他の水酸基を保護基で保護した糖の誘導体(以下、「糖供与体」と称する)と縮合反応を起こさせて、下記一般式(1):
【0048】
【化30】
【0049】
[ただし、式中、R1、R2、R3およびR4は同一または異なる水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、R5は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、Xは単糖残基(但し、糖残基中の水酸基の水素原子はアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基またはトリチル基で置換されていてもよい)を表し、およびnは0〜4の整数である。]
で表されるクロマノール配糖体を製造することを特徴とするものである。ここで、糖供与体は、上記一般式(3)で表されるL−フコース供与体、上記一般式(4)で表されるL−ラムノース供与体、上記一般式(5)で表されるD−キシロース供与体、上記一般式(6)で表されるD−ガラクトース供与体または上記一般式(7)で表されるD−マンノース供与体である。
【0050】
本発明を以下に詳細に説明する。
【0051】
本発明において、糖供与体は、糖残基のアノマー位に脱離基を導入し、他の水酸基を保護基で保護した糖の誘導体である。この際、アノマー位に導入される脱離基としては、塩素、臭素やフッ素等のハロゲン原子、チオメチル基、チオエチル基やチオフェニル基等の硫黄化合物およびトリクロロアセトイミド基などが挙げられる。これらの脱離基のうち、臭素、塩素、チオメチル基、チオエチル基、チオフェニル基及びトリクロロアセトイミド基が好ましく使用される。
【0052】
また、本発明において、アノマー位以外の水酸基を保護する保護基としては、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基及びレブリノイル基等のアシル系保護基、およびベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基及びトリチル基等のエーテル系保護基が挙げられる。これらの保護基のうち、アシル系保護基、特にアセチル基が好ましくは使用される。
【0053】
本発明による糖供与体における糖部分は、目的とするクロマノール配糖体の種類によって決まるが、具体的には、D,L−グルコース、D,L−ガラクトース、D,L−フコース、D,L−キシロース、D,L−マンノース、D,L−ラムノース、D,L−アラビノース、D,L−リキソース、D,L−リボース、D,L−アロース、D,L−アルトロース、D,L−イドース、D,L−タロース、D,L−デオキシリボース、D,L−2−デオキシリボース、D,L−キノボース及びD,L−アベクオースなどが挙げられる。これらのうち、D,L−グルコース、D,L−ガラクトース、D,L−フコース、D,L−キシロース、D,L−マンノース、D,L−ラムノース、D,L−アラビノース、D,L−リキソース、D,L−リボース、D,L−タロース、D,L−デオキシリボース及びD,L−2−デオキシリボースが好ましく使用され、特に、下記一般式(3)で表されるL−フコース供与体、下記一般式(4)で表されるL−ラムノース供与体、下記一般式(5)で表されるD−キシロース供与体、下記一般式(6)で表されるD−ガラクトース供与体または下記一般式(7)で表されるD−マンノース供与体が糖供与体として好ましく使用される。
【0054】
【化31】
【0055】
【化32】
【0056】
【化33】
【0057】
【化34】
【0058】
【化35】
【0059】
[ただし、式(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)中、Yはハロゲン原子、硫黄化合物またはトリクロロアセトイミド基を表し、その種類によりα体またはβ体のいずれかの型を優先的にとり、およびRは同一または異なるアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基またはトリチル基を表す。]
本発明の方法によると、糖供与体の2位の水酸基を上記アシル系保護基で保護して縮合する場合、隣接基効果により、1,2−トランス型のグリコシド結合を有するクロマノール配糖体が得られる。例えば、グルコース、ガラクトース、フコース及びキシロース等の2位の水酸基がエカトリアルで配座しているグルコ型の糖はβ型でアグリコンと結合し、マンノースやラムノース等の2位の水酸基がアキシアルで配座しているマンノ型の糖はα型でアグリコンと結合する。
【0060】
さらに、本発明におけるクロマノール配糖体及び糖受容体をそれぞれ表すものである、上記一般式(1)及び(2)において、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なる水素原子または低級アルキル基を表わすものであるが、低級アルキル基を表わす際には、炭素原子数が好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6の低級アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が挙げられ、これらのうち、メチル基及びエチル基が好ましい。同様にして、R5は、水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表わすものであるが、これらのうち、低級アルキル基を表わす際には、上記R1、R2、R3およびR4における場合と同様であり、また、低級アシル基を表わす際には、炭素原子数が好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8の低級アシル基であり、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基及びオクタノイル基等が挙げられ、これらのうち、アセチル基及びプロピオニル基が好ましい。さらに、上記一般式(1)において、Xは、グルコース、ガラクトース、フコース、キシロース、マンノース、ラムノース、アラビノース、リキソース、リボース、アロース、アルトロース、イドース、タロース、デオキシリボース、2−デオキシリボース、キノボース及びアベクオース等の単糖残基を表わすが、この際、糖残基中の水酸基の水素原子はアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基またはトリチル基で置換されていてもよい。上記単糖残基のうち、グルコース、ガラクトース、フコース、キシロース、マンノース、ラムノース、アラビノース、リキソース、リボース、タロース、デオキシリボース及び2−デオキシリボースがXとして好ましく使用され、特にフコース、キシロース及びラムノースが好ましく使用される。さらに、nは、0〜4、好ましくは1〜3の整数である。
【0061】
本発明において、糖受容体は、縮合の際、6位の水酸基をアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基及びトリチル基等の保護基、好ましくは、アセチル基やベンゾイル基で保護しておくことが好ましい。
【0062】
以下に、本発明による糖供与体の調製方法の一実施態様を示す。糖1gに対してピリジンを5〜20ml、好ましくは10〜15mlの割合で加えて溶解させる。さらにこの溶液に、無水酢酸を10〜20ml、好ましくは15〜20mlを加えて、室温で3〜8時間、好ましくは5〜7時間撹拌する。次に、この撹拌溶液にメタノールを20ml添加することにより過剰の無水酢酸を壊した後、すべての水酸基をアセチル基で保護した糖(以下、「アセチル糖誘導体」と称する)を塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン及びエーテル等の有機溶媒、好ましくは塩化メチレンで抽出する。得られた抽出液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製することにより、アセチル糖誘導体を得る。さらに、このようにして得られたアセチル糖誘導体1gに対して塩化メチレンを5〜20ml、好ましくは10〜15mlの割合で加えて溶解させる。さらにこの溶液に、臭化水素酢酸溶液(25%(w/w))を0.5〜2ml、好ましくは1〜1.5mlを添加して、5〜30℃、好ましくは10〜25℃で、15〜60分間、好ましくは20〜30分間撹拌する。次に、この撹拌溶液に氷上で蒸留水を5〜30ml、好ましくは15〜20ml加えて、臭化水素を分解する。この反応液を塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン及びエーテル等の有機溶媒、好ましくは塩化メチレンで抽出する。得られた抽出液を減圧下で濃縮することにより、1位に臭素が導入され他の水酸基はアセチル基で保護された糖供与体(以下、「1−ブロモ糖供与体」と称する)が得られる。
【0063】
次に、本発明による糖受容体の調製方法の一実施態様を示す。2−置換アルコール1gに対してピリジンを5〜20ml、好ましくは10〜15mlの割合で加えて溶解させる。さらにこの溶液に、t−ブチルジメチルシリルクロリドを0.7〜1.5g、好ましくは0.9〜1.0g加えて、室温で3〜8時間、好ましくは4〜5時間撹拌する。次いで、この撹拌溶液に無水酢酸を0.8〜2ml、好ましくは1〜1.5ml添加して、5〜30℃、好ましくは10〜25℃で、3〜8時間、好ましくは4〜5時間撹拌する。この反応液にメタノールを2ml加えることにより過剰の無水酢酸を壊した後、6位の水酸基をアセチル基で保護して2位の水酸基をt−ブチルジメチルシリル基で保護した2−置換アルコールを得る。このように保護された2−置換アルコールを塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン及びエーテル等の有機溶媒、好ましくは塩化メチレンで抽出する。得られた抽出液を減圧下で濃縮して、得られた化合物を酸性条件、例えば、酢酸水溶液(80%(w/w))中で、5〜30℃、好ましくは10〜25℃で、36〜54時間、好ましくは40〜48時間撹拌して、t−ブチルジメチルシリル基を脱保護する。脱保護された化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製することにより、2−置換アルコールの6位の水酸基のみをアセチル基で保護した糖受容体が得られる。
【0064】
さらに、本発明による糖供与体及び糖受容体の縮合反応の一実施態様を、上記で得られた糖供与体及び糖受容体について、以下に示す。糖受容体1gおよび糖受容体1gに対してモル比で1.0〜1.5等量、好ましくは1.2等量の1−ブロモ糖供与体を塩化メチレンやベンゼン等の非極性溶媒に溶解して、モレキュラーシーブ4A(4Å)を2〜4g、好ましくは2.5〜3.0g添加して、5〜30℃、好ましくは10〜25℃で、1〜5時間、好ましくは3時間撹拌する。この反応溶液に無水条件下で活性化剤を添加して、5〜30℃、好ましくは10〜25℃で、12〜48時間、好ましくは20〜30時間撹拌する。得られた反応液をセライト瀘過してモレキュラーシーブ4A(4Å)及び過塩素酸銀を除去した後、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製することにより、すべての水酸基がアセチル基で保護されたクロマノール配糖体(以下、「クロマノール配糖体アセチル誘導体」と称する)が得られる。
【0065】
本発明において使用される活性化剤としては、三フッ化ホウ酸・エーテル錯体、過塩素酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、臭化水銀、シアン化水銀、N−ヨードコハク酸イミド−トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチルメチルチオスルホニウムトリフラート及びp−トルエンスルホン酸などが挙げられ、特に、臭素を糖供与体の脱離基として使用した場合には過塩素酸銀等の重金属塩を使用することが好ましい。
【0066】
また、上記実施態様においては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行ったが、この精製方法に制限されるものではなく、公知の精製方法が使用される。
【0067】
次いで、以下のようにして、クロマノール配糖体アセチル誘導体の脱保護を行う。
【0068】
本発明において、上記したような糖供与体と糖受容体との縮合反応後に得られた縮合物、すなわち、水酸基がアセチル基等の保護基で保護されたクロマノール配糖体アセチル誘導体から、保護基を脱離する脱保護法としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルカリ分解法、酸分解法、酵素分解法及び金属試薬を用いた脱保護法等の種々の方法を採択できる。
【0069】
しかしながら、クロマノール配糖体は、その化学的性質によりアルカリ条件下では非常に不安定な化合物であるため、縮合で得られた化合物の脱保護処理を抗酸化剤であるピロガロール共存下でアルカリ分解するといったアルカリ分解法では、クロマノール配糖体の分解が起こり収率が低下するという欠点がある。このため、大量のクロマノール配糖体を合成することを考慮すると、アルカリ分解法による場合に比べて、酸分解法による、酵素分解法による及び金属試薬を用いた脱保護法、特に金属試薬を用いた脱保護法の方が本発明において好ましく使用される。
【0070】
第一に、縮合物のアセチル基等の保護基の脱保護を酸分解によって行う場合には、クロマノール配糖体の分解が防止され、アルカリ分解により脱保護を行う場合と比較して収率良くクロマノール配糖体を得ることができ、例えば、縮合で得られた化合物をメタノール性塩酸に溶解させる酸分解法はアルカリ分解法に比較して約7倍量の配糖体を得ることが可能となる。しかしながら、上記酸分解による脱保護法では、2−置換アルコールに結合している糖の種類によっては、酸性条件下で、アセチル基の脱保護と同時にグリコシド結合が切断される配糖体もあり、このような場合には良好な収率で配糖体を得ることは困難になってしまう。このため、酸分解による脱保護処理には、酸に安定な配糖体を使用することが好ましく、酸に不安定な配糖体の場合には、酸分解ではなくむしろ酵素分解や金属試薬を用いて脱保護を行なう方法が好ましいといえる。
【0071】
次に、縮合で得られた化合物のアセチル基などの保護基をエステラーゼ等の酵素により加水分解させて脱保護処理を行う場合には、上記と同様に、クロマノール配糖体の分解は防止され、アルカリ分解により脱保護を行う場合と比較して収率良くクロマノール配糖体を得ることができ、例えば、縮合で得られた化合物をエステラーゼにより加水分解させて脱保護処理を行う方法はアルカリ分解法に比較して約7倍量の配糖体を得ることが可能となる。しかしながら、上記酵素分解による脱保護法では、使用する酵素が高価であり、製造されるクロマノール配糖体のコストが高くなってしまい、経済的でないという問題がある。
【0072】
これらの脱保護法に対して、金属試薬を使用して縮合物のアセチル基等の脱保護を還元的に行なう場合には、上記と同様に、クロマノール配糖体の分解は防止され、アルカリ分解により脱保護を行う場合と比較して収率良くクロマノール配糖体を得ることができ、例えば、縮合で得られた化合物を水素化リチウムアルミニウムや水素化ジイソブチルアルミニウムを用いて脱保護処理を行う方法はアルカリ分解法に比較して約8.25倍量の配糖体を得ることが可能となる。また、これらの利点に加えて、金属試薬を用いた脱保護法は、結合する糖の種類に関わらず、全ての配糖体の脱保護に適用が可能であり、かつ高収率で配糖体の製造が可能であるという長所も有する。
【0073】
本発明による脱保護をアルカリ分解、酸分解、酵素分解および金属試薬を用いる場合に分けて、その一実施態様を、それぞれ、上記で得られたクロマノール配糖体アセチル誘導体を用いて以下に示す。
【0074】
まず、アルカリ分解によるアセチル基の脱保護を行う場合には、例えば、得られたクロマノール配糖体アセチル誘導体1gを蒸留水−メタノール混合溶液(1:1(v/v))20〜50ml、好ましくは25〜30mlに溶解して、10gのピロガロールを加えて、5〜30℃、好ましくは10〜25℃で、30分〜2時間、好ましくは1時間〜1時間30分間撹拌する。このようにして得られた反応溶液に水酸化ナトリウム1〜20g、好ましくは8〜12gを加えて、5〜30℃、好ましくは10〜25℃で、1〜4時間、好ましくは2〜3時間撹拌して、アセチル基の脱保護を行い、目的とするクロマノール配糖体が得られる。
【0075】
次に、酸分解によるアセチル基の脱保護を行う場合には、まず、塩化ナトリウム20〜100g、好ましくは40g〜50gに濃硫酸50ml〜200ml、好ましくは80ml〜100mlを滴下して発生する塩化水素ガスをメタノール(あらかじめモレキュラーシーブで脱水したもの)に吸収させ、メタノール性塩酸を調製する。このときの塩酸の濃度は5〜15%が好ましい。そして、クロマノール配糖体アセチル誘導体1gを上記のようにして調製されたメタノール性塩酸10〜50ml、好ましくは20〜30mlに溶解させて室温で2〜8時間、好ましくは4〜6時間、攪拌してアセチル基を酸分解させる。その後、反応液から目的とするクロマノール配糖体を分離、精製する。
【0076】
さらに、酵素分解によるアセチル基の脱保護の場合には、緩衝溶液中で加水分解酵素を使用して行なう。この際、アセチル基の脱保護を行なうのに使用される酵素としては、エステラーゼ、例えば、シグマ(SIGMA)製のブタの肝臓及びウサギの肝臓由来のエステラーゼ、及びリパーゼ、例えば、ブタの膵臓由来のリパーゼなどが挙げられる。
【0077】
また、上記実施態様において、添加される酵素量は、使用される酵素の種類や反応条件等によって異なるが、例えば、シグマ(SIGMA)製のブタ肝臓由来のエステラーゼを2gのクロマノール配糖体アセチル誘導体を含む反応液500mlに添加する場合、10,000から50,000U、好ましくは20,000から40,000Uである。酵素量が10,000U未満の場合には、酵素による触媒作用が十分でなく好ましくない。これに対して、酵素量が50,000Uを越える場合には、過度の添加に見合うだけの効果が得られず不経済である。なお、上記で使用されたブタ肝臓由来のエステラーゼの「1U」とは、基質として酪酸エチルを用い、pH8.0、25℃において1分間に1μmolの酪酸エチルを加水分解する酵素量を意味するものである。
【0078】
また、酵素分解法による脱保護反応は、縮合で得られたクロマノール配糖体アセチル誘導体を反応溶液に溶解させることが望ましく、そのため、水に対する溶解度が非常に低いクロマノール配糖体アセチル誘導体を溶解し得る有機溶媒を添加する必要がある。同時に、添加される有機溶媒は、エステラーゼの加水分解活性を効率よく発現させることができるものでなければならない。このような条件を満たす有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、およびアセトニトリルなどが挙げられる。例えば、ブタ肝臓由来のエステラーゼを酵素分解反応に使用する際には、エステラーゼの加水分解活性を高めるために、メタノール、エタノールまたはジメチルスルホキシドを使用することが望ましい。添加する有機溶媒の濃度は、使用する酵素の種類などによって、相違するが、例えば、エステラーゼを用いる場合、添加する有機溶媒の濃度は、10〜25%、反応効率を考慮すると、好ましくは、15〜20%である。有機溶媒濃度が10%未満の場合には、所望とするクロマノール配糖体を反応溶液に溶解させることが難しく、また、25%を越える場合には、酵素の安定性が低下し加水分解効率が悪くなるため好ましくない。
【0079】
さらに、酵素分解法による実施態様において、その反応条件は、使用する酵素やクロマノール配糖体アセチル誘導体の種類や量などによって異なる。例えば、ブタ肝臓由来のエステラーゼを用いる場合、反応系のpHは、6.5〜8.5、好ましくは7.5〜8.0である。pHが上記範囲を外れる場合には上述した酵素が失活するなどして好ましくない。また、反応温度に関しても、例えば、ブタ肝臓由来のエステラーゼを用いる場合、20〜60℃、好ましくは30〜40℃である。反応温度が上記範囲の下限を下回る場合には、使用した酵素の活性が低下し、充分な加水分解率を確保するのに長時間を要するため経済的でなく、また、反応温度が上記範囲の上限を越える場合には、酵素が失活するため好ましくない。さらに、反応時間に関しては、例えば、ブタ肝臓由来のエステラーゼを用いる場合、2〜60時間、好ましくは15〜50時間である。この際、反応時間が2時間未満の場合には、反応が平衡近くに達していないため、充分な加水分解率を得ることができず、また、60時間を越える場合には、これに見合うだけの更なる効果が期待できないため、好ましくない。
【0080】
最後に、金属試薬を用いたアセチル基の脱保護は、具体的には、金属試薬を溶解させた有機溶媒中に縮合で得られた化合物を添加して反応させる簡単な方法である。より詳しく述べると、まず、縮合で得られた上記クロマノール配糖体アセチル誘導体1gを50〜100mlの非極性溶媒に溶解する。この溶液を、糖アセチル誘導体1gに対して、0.5g〜3g、好ましくは0.75g〜1.25gの金属試薬を予め溶解した非極性溶媒50〜100mlに、冷却しながら、1〜2時間にわたって滴下する。滴下後、この混合液を室温で1〜6時間、好ましくは2〜4時間攪拌してアセチル基の脱保護を行なう。反応液から目的とするクロマノール配糖体を分離精製する。
【0081】
この際反応に使用される金属試薬としては、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4 )およびそのトリアルコキシ誘導体(LiAlH(OR)3 、この際、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)、水素化ジイソブチルアルミニウム((i−C4 H9 )2 AlH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4 )及び水素化ホウ素リチウム(LiBH4 )等が挙げられる。これらのうち、水素化リチウムアルミニウム(LiALH4 )及び水素化ジイソブチルアルミニウム((i−C4 H9 )2 AlH)が好ましく使用される。
【0082】
また、上記実施態様において使用される非極性溶媒としては、例えば、エーテル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン及びヘキサンなどが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフランが非極性溶媒として好ましく使用される。
【0083】
上記したようにして反応が終了した後、反応液から脱保護により得られた目的とするクロマノール配糖体を分離、精製することにより高純度のクロマノール配糖体が得られる。
【0084】
このようにして、非極性溶媒中に糖供与体及び糖受容体を溶解し、無水条件下で活性化剤の存在下で糖供与体及び糖受容体の縮合反応を行い、得られた化合物を精製し、保護基を脱保護するという簡便な工程により、本発明のクロマノール配糖体が高い収率で製造できる。
【0085】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらにより本発明の範囲がなんら制限されるものでないことはいうまでもない。
【0086】
実施例1
1)フコース供与体の製造
L−フコース1150mgをピリジン15mlに溶解して無水酢酸15mlを加えて、室温で6時間撹拌した。反応溶液にメタノール15mlを添加することにより過剰の無水酢酸を壊し、生成物を塩化メチレン30mlで抽出した。次に、抽出液を2N塩酸30ml、飽和炭酸ナトリウム溶液30ml及び飽和食塩水30mlで順次洗浄し、ピリジン及び酢酸を除去した。この溶液を減圧下で乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製した。
【0087】
このようにして得られた化合物を塩化メチレン20mlに溶解し、臭化水素酢酸溶液(25%(w/w))1.5mlを加えて室温で30分間撹拌した。反応液に蒸留水20mlを加えて、試薬を壊し、1位に臭素が導入され他の水酸基はアセチル基で保護された糖供与体を塩化メチレン20mlで抽出した。抽出液を飽和炭酸ナトリウム溶液20mlで洗浄して残存する酢酸を除去した。硫酸ナトリウム10gを添加し、水分を除去した後、減圧下で乾燥することにより、下記一般式で示される2,3,4−トリ−O−アセチル−α−L−フコピラノシルブロミド(2,3,4-tri-O-acetyl-α-L-fucopyranosyl bromide) (以下、「フコース供与体」と称する)2100mgを得た。
【0088】
【化36】
【0089】
2)糖受容体の製造
2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-hydroxymethyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol) 1000mgをピリジン10mlに溶解し、t−ブチルジメチルシリルクロリド950mgを加え、室温で5時間撹拌した。この溶液に無水酢酸1mlを加え、室温で5時間撹拌した。氷上で冷やしながら、反応液にメタノール2mlを添加し、過剰の無水酢酸を壊し、2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの6位の水酸基をアセチル基で保護し、2位の水酸基をt−ブチルジメチルシリル基で保護した化合物を塩化メチレン20mlで抽出して、減圧下で乾燥した。この化合物を酢酸水溶液(80%(w/w))100mlに溶解し、室温で48時間撹拌した。反応液にエタノールを添加し、減圧下で共沸させながら、酢酸及び蒸留水を除去した。このようして得られた黄色のシロップ状の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製することにより、下記一般式で示される2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの6位の水酸基のみをアセチル基で保護した、2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−アセテート(2-hydroxymethyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-acetate)(以下、「糖受容体」と称する)1100mgを得た。
【0090】
【化37】
【0091】
3)配糖体の製造
1)で得られたフコース供与体2100mgと2)で得られた糖受容体1100mgを塩化メチレン10mlに溶解し、モレキュラーシーブ4A(4Å) 3gを加え、室温で3時間撹拌した後、過塩素酸銀1200mgと炭酸銀1600mgを添加して室温で24時間撹拌することにより、縮合反応を行った。縮合後、反応液をセライト濾過し、モレキュラーシーブ4A(4Å)、過塩素酸銀及び炭酸銀を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製した。この化合物を50%メタノール溶液50mlに溶解してピロガロール25gを加えて、1時間撹拌した後、水酸化ナトリウム25gを添加して室温で3時間撹拌した。反応液に濃塩酸10mlを添加して中和した後、30%メタノール溶液で平衡化したカラム(担体:XAD−4)にアプライした。溶離液として30%メタノール溶液を用いて非吸着物を溶出後、100%メタノール溶液を溶離液としてクロマノール配糖体を溶出した。溶出液を減圧下で乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1(v/v))で精製することにより、下記物性を有し、下記一般式で示される2−(β−L−フコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-L-fucopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)200mgを得た。
【0092】
【化38】
【0093】
この化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0094】
また、上記化合物の13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0095】
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリング):11.8
11.8
12.7
16.6
19.9
22.4および22.6
28.0
70.0
70.2
71.1
73.1
73.5
74.0および74.0
103.8および104.0
116.8
120.3
120.9
122.6
144.3
145.2
質量スペクトル(FAB)
m/z 382 (分子イオンピーク)
比旋光度
【0096】
【外1】
【0097】
実施例2
実施例1の1)で得られたフコース供与体2100mgと、実施例1の2)で得られた糖受容体1100mgを塩化メチレン10mlに溶解し、モレキュラーシーブ4A(4Å) 1gを加え室温で2時間攪拌した後、過塩素酸銀1200mgと炭酸銀1600mgを加えて室温で24時間攪拌することにより、縮合反応を行なった。縮合後、反応液をセライト濾過し、モレキュラーシーブ4A(4Å)、過塩素酸銀及び炭酸銀を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製した。
【0098】
得られた化合物をメタノール80mlに溶解した後、50mMリン酸緩衝液(pH7.5)400mlに加えた。次に、この溶液に、エステラーゼ20,000Uを加え、35℃で48時間反応させた。このときの加水分解率は90%であった。反応終了後、反応液を遠心分離し(12000rpm、4℃、5分)、上清から酢酸エチルで配糖体を抽出した。抽出液を減圧下で乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1(v/v))で精製することにより、実施例1において得られたものと同様の一般式、赤外吸収スペクトル、13C−NMR、質量分析、および比旋光度の分析結果を有する2−(β−L−フコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-L-fucopyranosyl)methyl)-2,5,7,8-tetramethylchoman-6-ol)1400mgを得た。
【0099】
これより、エステラーゼを用いた酵素分解により脱保護を行う(実施例2、収量:1400mg)ことにより、アルカリ分解により脱保護を行う(実施例1、収量:200mg)のに比べて、7倍量のクロマノール配糖体が得られた。
【0100】
実施例3
実施例1の1)で得られたフコース供与体2100mgと実施例1の2)で得られた糖受容体1100mgを塩化メチレン10mlに溶解し、モレキュラーシーブ4A(4Å) 3gを加えて室温で3時間攪拌した後、過塩素酸銀1200mgと炭酸銀1600mgを添加して室温で24時間攪拌することにより、縮合反応を行なった。縮合後、反応液をセライト濾過し、モレキュラーシーブ4A(4Å)、過塩素酸銀及び炭酸銀を除去した後、シリカゲルカラムクロマトクラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製した。この化合物をテトラヒドロフラン50mlに溶解して、水素化リチウムアルミニウム2gを50mlのテトラヒドロフランに溶解させた溶液に冷却しながら滴下した。この混合液を3時間室温で撹拌後、メタノール50mlを冷却しながら反応液に添加して反応を終了させた。反応液に蒸留水100mlを加えた後、酢酸エチルで配糖体を抽出した。抽出液を減圧下で乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1(v/v))で精製することにより、実施例1において得られたものと同様の一般式、赤外吸収スペクトル、13C−NMR、質量分析、および比旋光度の分析結果を有する2−(β−L−フコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-L-fucopyranosyl)methyl)-2,5,7,8-tetramethylchoman-6-ol)1650mgを得た。
【0101】
これより、水素化リチウムアルミニウムを用いて脱保護を行う(実施例3、収量:1650mg)ことにより、アルカリ分解により脱保護を行う(実施例1、収量:200mg)のに比べて、8.25倍量のクロマノール配糖体が得られた。
【0102】
実施例4
水素化リチウムアルミニウムの代わりに水素化ジイソブチルアルミニウムを用いた以外は、実施例3と同様にして配糖体の製造を行うことによって、実施例1において得られたものと同様の一般式、赤外吸収スペクトル、13C−NMR、質量分析、および比旋光度の分析結果を有する2−(β−L−フコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-L-fucopyranosyl)methyl)-2,5,7,8-tetramethylchoman-6-ol)1650mgを得た。
【0103】
これより、水素化ジイソブチルアルミニウムを用いて脱保護を行う(実施例4、収量:1650mg)ことにより、アルカリ分解により脱保護を行う(実施例1、収量:200mg)に比べて、8.25倍量のクロマノール配糖体が得られた。
【0104】
実施例5
実施例1において、L−フコースの代わりにL−ラムノースを用いた以外は、実施例1と同様にして、縮合反応及び分離回収を行うことにより、下記物性を有し、下記一般式で示される2−(α−L−ラムノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(α-L-rhamnopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)160mgを得た。
【0105】
【化39】
【0106】
この化合物の赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
【0107】
また、上記化合物の13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0108】
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリング):
11.7
11.8
12.7
17.7および17.9
19.8
21.9および22.0
28.4
68.4および68.5
70.4
70.7
70.9および71.1
71.3
73.7
100.1および100.2
116.6
120.2
121.0
122.6
144.2
145.2
質量スペクトル(FAB)
m/z 382 (分子イオンピーク)
比旋光度
【0109】
【外2】
【0110】
実施例6
実施例1において、L−フコースの代わりにD−キシロースを用いた以外は、実施例1と同様にして、縮合反応及び分離回収を行うことにより、下記物性を有し、下記一般式で示される2−(β−D−キシロピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-D-xylopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)250mgを得た。
【0111】
【化40】
【0112】
この化合物の赤外線吸収スペクトルを図3に示す。
【0113】
また、上記化合物の13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0114】
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリング):
11.7
11.8
12.7
19.7および19.8
20.7
22.2および22.3
28.0および28.2
65.6
69.5
73.2
73.9および74.0
76.5
103.9および104.1
116.8
120.2
120.9
122.6
144.2
145.2
質量スペクトル(FAB)
m/z 368 (分子イオンピーク)
比旋光度
【0115】
【外3】
【0116】
実施例7
1)マンノース供与体の製造
D−マンノース1150mgをピリジン15mlに溶解して無水酢酸15mlを加えて室温で6時間攪拌した。この反応溶液にメタノール15mlを加えることにより過剰の無水酢酸を壊し、生成物を塩化メチレン30mlで抽出した。次に、抽出液を2N塩酸、飽和炭酸ナトリウム溶液30ml及び飽和食塩水30mlで順次洗浄して、ピリジン及び酢酸を除去した。この溶液を減圧下で乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン,1:1(v/v))で精製した。
【0117】
得られた化合物を塩化メチレン20mlに溶解し、臭化水素酢酸溶液(25%(w/w))2.5mlを加えて、室温で30分間攪拌した。反応液に蒸留水20mlを加えて過剰の試薬を壊し、1位に臭素が導入され他の水酸基はアセチル基で保護された糖供与体を塩化メチレン20mlで抽出した。抽出液を飽和炭酸ナトリウム溶液20mlで洗浄して酢酸を除去した。硫酸ナトリウム10gを加え、水分を除去した後、減圧下で乾燥することにより、下記式で示される2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−マンノピラノシルブロミド(2,3,4,6-tetra-O-acetyl-α-D-mannopyranosyl bromide)(以下、「マンノース供与体」と称する)2100mgを得た。
【0118】
【化41】
【0119】
2)糖受容体の製造
2−ヒドロキシルメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール1000mgをピリジン10mlに溶解し、t−ブチルジメチルシリルクロリド950mgを加え、室温で5時間攪拌した。この溶液に無水酢酸1mlを加え室温で5時間攪拌した。氷上で冷やしながら、反応液にメタノール2mlを加え過剰の無水酢酸を壊し、2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの6位の水酸基をアセチル基で保護し、2位の水酸基をt−ブチルジメチルシリル基で保護した化合物を塩化メチレン20mlで抽出して、減圧下で乾燥した。この化合物を酢酸溶液(80%(w/w))100mlに溶解し、室温で24時間攪拌した。反応液にエタノールを加え、減圧下で共沸させながら、酢酸および蒸留水を除去した。このようにして得られた黄色のシロップ状の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製することにより、下記一般式で示される2−ヒドロキシルメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−アセテート(2-hydroxymethyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-acetate)(以下、「糖受容体」と称する)1100mgを得た。
【0120】
【化42】
【0121】
3)配糖体の製造
1)で得られたマンノース供与体2100mgと2)で得られた糖受容体1100mgを塩化メチレン10mlに溶解し、モレキュラーシーブ4A(4Å) 1gを加えて室温で2時間攪拌した後、過塩素酸銀1200mgと炭酸銀1600mgを添加して室温で24時間攪拌することにより、縮合反応を行なった。縮合後、反応液をセライト濾過し、モレキュラーシーブ4A(4Å)、過塩素酸銀及び炭酸銀を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製し、目的とする配糖体の全ての水酸基がアセチル基で保護された化合物を得た。得られた化合物を50%メタノール溶液50mlに溶解してピロガロール25gを加えて、室温で1時間攪拌した後、水酸化ナトリウム25gを加えて室温で3時間攪拌した。反応液に濃塩酸10mlを加え中和した後、30%メタノール溶液で平衡化したカラム(担対:XAD−4)にアプライした。溶離液として30%メタノール溶液を用いて非吸着物を溶出後、100%メタノール溶液を溶離液としてクロマノール配糖体を溶出した。溶出液を減圧下で乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=6:1(v/v))で精製し下記の物性を有し、下記一般式で示される2−(α−D−マンノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(α-D-mannopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)200mgを得た。
【0122】
【化43】
【0123】
この化合物の赤外線吸収スペクトルを図4に示す。
【0124】
また、上記化合物の 1H−NMR、13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0125】
1H−NMR δ(300MHz, DMSO−d6):
1.17および1.21(s,3H)
1.65から1.74(m,1H)
1.77から1.91(m,1H)
1.97(s,3H)
2.01(s,3H)
2.04(s,3H)
2.50(broad t,2H)
3.16から4.69(m,13H)
7.39(s,1H)
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリングスペクトル):
11.7
11.8
12.7
19.7および19.8
21.9および22.1
28.2および28.5
61.0および61.2
66.7および66.9
70.2および70.3
71.0
73.8
73.9
74.1
100.1および100.2
116.7
120.2および120.3
120.9
122.6
144.1および144.2
145.2
質量スペクトル (FAB):
m/z 398 (分子イオンピーク)
比施光度:
【0126】
【外4】
【0127】
実施例8
実施例7の1)で得られたマンノース供与体2100mgと、実施例7の2)で得られた糖受容体1100mgを塩化メチレン10mlに溶解し、モレキュラーシーブ4A(4Å) 1gを加え室温で2時間攪拌した後、過塩素酸銀1200mgと炭酸銀1600mgを加えて室温で24時間攪拌することにより、縮合反応を行なった。縮合後、反応液をセライト濾過し、モレキュラーシーブ4A(4Å)、過塩素酸銀及び炭酸銀を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で目的とする配糖体の全ての水酸基がアセチル基で保護された化合物を精製した。
【0128】
得られた化合物をメタノール性10%塩酸50mlに溶解して、室温で4時間攪拌した。反応液を30%メタノール溶液で平衡化したカラム(担体:XAD−4)にアプライした。溶離液として30%メタノール溶液を用いて非吸着物を溶出後、100%メタノール溶液を溶離液としてクロマノール配糖体を溶出した。溶出液を減圧下で乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=6:1(v/v))で精製することにより、実施例7において得られたものと同様の赤外吸収スペクトル、13C−NMR、質量分析、および比旋光度の分析結果を呈する2−(α−D−マンノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール1400mgを得た。
【0129】
これより、メタノール性塩酸を用いた酸分解により脱保護を行う(実施例8、収量:1400mg)ことにより、アルカリ分解により脱保護を行う(実施例7、収量:200mg)に比べて、7倍量のクロマノール配糖体が得られた。
【0130】
実施例9
1)ガラクトース供与体の製造
D−ガラクトース1150mgをピリジン15mlに溶解して無水酢酸15mlを加えて、室温で6時間攪拌した。反応溶液にメタノール15mlを添加することにより過剰の無水酢酸を壊し、生成物を塩化メチレン30mlで抽出した。次に、抽出液を2N塩酸30ml、飽和炭酸ナトリウム溶液30ml及び飽和食塩水30mlで順次洗浄し、ピリジンおよび酢酸を除去した。この溶液を減圧下で乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製した。
【0131】
このようにして得られた化合物を塩化メチレン20mlに溶解し、臭化水素酢酸溶液(25%(w/w))1.5mlを加えて、室温で30分間攪拌した。反応後に蒸留水20mlを加えて、過剰の試薬を壊し、1位に臭素が導入され他の水酸基はアセチル基で保護された糖供与体を塩化メチレン20mlで抽出した。抽出液を飽和炭酸ナトリウム溶液20mlで洗浄して残存する酢酸を除去した。硫酸ナトリウム10gを添加して、水分を除去して後、減圧下で乾燥することにより、下記一般式で示される2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−ガラクトピラノシルブロミド(2,3,4,6-tetra-O-acetyl-α-D-galactopyranosyl bromide)(以下、「ガラクトース供与体」と称する)2100mgを得た。
【0132】
【化44】
【0133】
2)糖受容体の製造
2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラチルクロマン−6−オール(2-hydroxymethyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol) 100mgをピリジンに溶解し、t−ブチルジメチルシリルクロリド950mgを加え、室温で5時間攪拌した。この溶液に無水酢酸2mlを加えて5時間攪拌した。氷上で冷やしながら、反応液にメタノール2mlを添加し、過剰の無水酢酸を壊し、2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの6位の水酸基をアセチル基で保護し、2位の水酸基をt−ブチルジメチルシリル基で保護した化合物を塩化メチレン20mlで抽出して、減圧下で乾燥した。この化合物を酢酸水溶液(80%(w/w))100mlに溶解し、室温で48時間攪拌した。反応液にエタノールを添加し、減圧下で共沸させながら、酢酸及び蒸留水を除去した。このようにして得られた黄色のシロップ状の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製することにより、下記一般式で示される2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの6位の水酸基のみをアセチル基を保護した2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−アセート(2-hydroxymethyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-acetate)(以下、「糖受容体」と称する)1100mgを得た。
【0134】
【化45】
【0135】
3)配糖体の製造
1)で得られたガラクトース供与体2100mgと2)で得られた糖受容体1100mgを塩化メチレン10mlに溶解し、モレキュラーシーブ4A(4Å)3gを加え、室温で3時間攪拌した後、過塩素酸銀1200mgと炭酸銀1600mgを添加して室温で24時間攪拌することにより、縮合反応を行なった。縮合後、反応液をセライト濾過し、モレキュラーシーブ4A(4Å)、過塩素酸銀及び炭酸銀を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製した。この化合物を50%メタノール溶液50mlに溶解してピロガロール25gを加えて、1時間攪拌した後、水酸化ナトリウム25gを添加して室温で3時間攪拌した。反応液に濃硫酸10mlを添加して中和した後、30%メタノール溶液で平衡化したカラム(担体:XAD−4)にアプライした。溶離液として30%メタノール溶液を用いて非吸着物を溶出後、100%メタノール溶液を溶離液としてクロマール配糖体を溶出した。溶出液を減圧下で乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸メチル:メタノール=5:1(v/v))で精製することにより、下記物性を有し、下記一般式で示される2−(β−D−ガラクトピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-D-galactopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol) 200mgを得た。
【0136】
【化46】
【0137】
この化合物の赤外線吸収スペクトルを図5に示す。
【0138】
また、上記化合物の 1H−NMR、13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0139】
1H−NMR δ(270MHz, DMSO−d6 ):
1.21および1.24(s,3H)
1.67から1.73(m,1H)
1.90から1.93(m,1H)
1.98(s,3H)
2.02(s,3H)
2.05(s,3H)
2.50(broad t,2H)
3.17から4.78(m,13H)
7.38(s,1H)
13C−NMR δ(67.8MHz,DMSO−d6 ,プロトンデカップリング):
11.7
11.8
12.6
19.7および19.8
22.2および22.5
28.0および28.1
60.3および60.4
68.1
70.5
73.1および73.2
73.4
73.9および74.0
75.1および75.2
104.0および104.2
116.8
120.2
120.8
122.5
144.2
145.2
質量スペクトル(FAB):
m/z 398 (分子イオンピーク)
比施光度:
【0140】
【外5】
【0141】
実施例10
実施例9の1)で得られたガラクトース供与体2100mgと実施例9の2)で得られた糖受容体1100mgを塩化メチレン10mlに溶解し、モレキュラーシーブ4A(4Å) 3gを加え、室温で3時間攪拌した後、過塩素酸銀1200mgと炭酸銀1600mgを添加して室温で24時間攪拌することにより、縮合反応を行なった。縮合後、反応液をセライト濾過し、モレキュラーシーブ4A(4Å)、過塩素酸銀及び炭酸銀を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で精製した。この化合物をテトラヒドロフラン50mlに溶解して、水素化リチウムアルミニウム2gを50mlのテトラヒドロフランに溶解させた溶液に冷却しながら滴下した。この混合液を3時間室温で撹拌後、メタノール50mlを冷却しながら反応液に添加して反応を終了させた。沈殿物を濾過して得られた濾液を減圧下で乾燥した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1(v/v))で精製することにより、実施例9において得られたものと同様の一般式、赤外吸収スペクトル、 1H−NMR、13C−NMR、質量分析、および比旋光度の分析結果を有する2−(β−D−ガラクトピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-D-galactopyransosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)1650mgを得た。
【0142】
これより、水素化リチウムアルミニウムを用いて脱保護を行う(実施例10、収量:1650mg)ことにより、アルカリ分解により脱保護を行う(実施例9、収量:200mg)のに比べて、8.25倍量のクロマノール配糖体が得られた。
【0143】
実施例11
水素化リチウムアルミニウムの代わりに水素化ジイソブチルアルミニウムを用いた以外は、実施例10と同様にして配糖体の製造を行うことによって、実施例9において得られたものと同様の一般式、赤外吸収スペクトル、 1H−NMR、13C−NMR、質量分析、および比旋光度の分析結果を有する2−(β−D−ガラクトピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(β-D-galactopyransosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)1650mgを得た。
【0144】
これより、水素化ジイソブチルアルミニウムを用いて脱保護を行う(実施例11、収量:1650mg)ことにより、アルカリ分解により脱保護を行う(実施例9、収量:200mg)のに比べて、8.25倍量のクロマノール配糖体が得られた。
【0145】
比較例1
特開平7−118,287号の実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、下記一般式で示される2−(α−D−グルコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2-(α-D-glucopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol) を約300mg得た。
【0146】
【化47】
【0147】
実施例12:放射線防護作用の評価
実施例1、5及び6ならびに比較例1で得られたクロマノール配糖体を、それぞれ、RPMI−1640+10%牛胎仔血清+HEDES緩衝液(25mM)系培養液(以下、「完全培養液」と略称する)中に最終濃度が1mMになるように溶解し、クロマノール配糖体溶液を予め調製した。
【0148】
次に、マウスのTリンパ腫株EL−4細胞を完全培養液中で37℃、5%CO2 雰囲気下で継代培養し、細胞密度が2×105 個/mlになるように調整した。このようにして培養されたEL−4細胞培養液の上清を除去し、上記クロマノール配糖体溶液をそれぞれ等量加え、X線を照射するまでの30分間、上記と同様の条件下で細胞培養を行った。クロマノール配糖体を含む培養液中で所定時間培養した後、3Gyの放射線を0.92Gy/分の線量率で照射した。放射線照射終了直後、細胞を遠心沈降(400g×5分)させ、RPMI−1640で2回洗浄し、完全培養液で再浮遊させて培養した。これに、サイトカラシンBのDMSO溶液(2mg/ml濃度)を最終濃度が3μg/mlになるように添加し、20時間培養後に2核細胞中の小核保有細胞の頻度(小核誘発頻度)を測定し、細胞の放射線損傷の頻度を表わす尺度とした。また、各放射線照射細胞について、上記クロマノール配糖体溶液の濃度を0μg/mlとした以外は上記操作を同様に繰り返して得られた比較対照の小核誘発頻度を基準として下記式より小核誘発抑制率を計算した。この際、上記細胞は1群4〜5連で放射線照射実験を行い、結果はこれらの平均値として表わした。結果を表1に示す。
【0149】
【数1】
【0150】
【表1】
【0151】
表1より、実施例1、5および6で得られたクロマノール配糖体の小核誘発頻度は、比較例1で得られたクロマノール配糖体の値に比べて有意に小さく、これより、本発明によるクロマノール配糖体は放射線被爆による細胞の損傷を有効に抑制することが示された。
【0152】
【発明の効果】
上述したように、本発明のクロマノール配糖体の製造方法は、アノマー位に脱離基を導入し他の水酸基を保護基で保護した糖の誘導体および一般式(2)で表される2−置換アルコール誘導体の縮合反応からなることを特徴とするものである。したがって、本発明の方法によると、フコースなどの従来の酵素では2−置換アルコール誘導体に転移できない糖を用いたクロマノール配糖体の製造が、簡便な製造及び精製工程により、効率良く可能になる。
【0153】
また、発明のクロマノール配糖体の製造方法において、縮合反応後における保護基の脱保護を酸分解により、酵素分解によりまたは金属試薬を用いて、特に、金属試薬を用いて行なうことにより、クロマノール配糖体の分解が効率良く防止され、ゆえに、クロマノール配糖体がさらに高い収率で製造できる。
【0154】
さらに、本発明のクロマノール配糖体は、熱やpH安定性及び水溶性及び抗酸化活性に加えて、放射線防護作用にも優れているので、今後、様々な分野における利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた2−(β−L−フコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルである。
【図2】 実施例5で得られた2−(α−L−ラムノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルである。
【図3】 実施例6で得られた2−(β−D−キシロピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルである。
【図4】 実施例7で得られた2−(α−D−マンノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルである。
【図5】 実施例9で得られた2−(β−D−ガラクトピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルである。
Claims (3)
- アノマー位に脱離基を導入し他の水酸基を保護基で保護した糖の誘導体および一般式(2):
で表される2−置換アルコール誘導体の縮合反応を有し、前記糖の誘導体が一般式(3)で表されるL−フコース供与体、一般式(4)で表されるL−ラムノース供与体、一般式(5)で表されるD−キシロース供与体、一般式(6)で表されるD−ガラクトース供与体または一般式(7)で表されるD−マンノース供与体である、
一般式(1):
で表されるクロマノール配糖体の製造方法。 - 前記縮合反応後における保護基の脱保護が酸分解により、酵素分解により、または金属試薬を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記縮合反応後における保護基の脱保護が金属試薬を用いて行われる、請求項2に記載の方法。
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