JP4321907B2 - 新規ヒト由来不死化肝細胞株 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(1)新規ヒト(好ましくはヒト胎児)正常細胞由来肝臓不死化細胞株、(2)該細胞株の製造方法、(3)該細胞株を用いることを特徴とする▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性を阻害または促進するか、または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現を阻害または促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法、(4)該スクリーニング方法を用いて得られる▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性を阻害または促進するか、または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現を阻害または促進する化合物またはその塩、および(5)該細胞株を用いた生体異物およびまたは内在性基質代謝に関与する酵素の解析方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】
肝臓細胞は非常に多くの生理学的機能を有しているが、なかでも薬物、食品添加物、環境汚染物質などの生体異物を代謝しこれを排泄しやすい形態に変換するいわゆる生体異物の代謝に関して非常に重要な機能を果たしている。この生体異物の代謝の機能は同時に生体異物による突然変異誘発、毒性発現あるいは物質の有効性の発現をもたらす場合もあり、非常に広く研究が進められている。この様な理由から培養肝細胞は、実験動物の代替法としてばかりではなく、迅速かつ廉価にしかも正確に肝臓における代謝を検討する試験法をもたらすものばかりではなく肝臓の機能を代替するいわゆる人工肝臓作成を可能とするものと考えられてきた。
ところが、生体組織から分離したヒト正常肝細胞は継代培養が不可能である。細胞株として樹立することのできる細胞は本来の分化形質を持たない場合が多く、細胞株が本来属していた組織の機能を正確に反映するものではない場合が多い。特に肝細胞においていわゆる生体異物の代謝を行う酵素群は、初代培養においてはきわめて短時間でその活性が失われ、株化細胞でその性質を十分に保持しているものはこれまで見いだされていない(J. Dich et al., Hepatology, 8, 39-45 (1988))。この様な観点から、生体異物の代謝能を保持しかつ培養が可能な肝細胞がこれまで広く求められてきた。ヒト肝臓の細胞株の調製はヒト腫瘍細胞の選択により行われ、たとえばHepG2(Aden et al. Nature, 282, 615-616,1979)などが知られている。しかしながら、これら細胞は、腫瘍細胞由来であり正常細胞が不死化したものではない。正常細胞を不死化するすなわち無限に増殖できるようにする方法としては例えば、SV(simian virus)40由来のT抗原遺伝子を導入などの方法が一般的に利用されている。しかしながら、肝臓の正常実質細胞の不死化、特に生体異物の代謝に関わる酵素活性、生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現、生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現誘導が観察できるヒト肝臓正常実質細胞由来の不死化細胞株は知られていない。また、多くの株化細胞の培養においては培地中に血清成分を必須とする。この血清成分の必要性は、血清の品質的安定性の欠如故に培養細胞の性質の安定性を著しく損ねるだけではなく、血清が非常に高価格であるため株化細胞の安定で正確でしかも廉価な使用を著しく阻害するものであった。従って、樹立された不死化細胞株が、無血清培地において、その形質を安定に保持したまま増殖可能であれば、工業的にも大きな利益をもたらすことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ヒト正常肝臓細胞(好ましくはヒト正常肝臓実質細胞)由来でかつ無血清完全合成培地で増殖可能でありしかもヒト肝臓の特異的な代謝機能のうち特に生体異物の代謝に関わる酵素活性や、生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現が観察できる細胞株の提供および該細胞株を分離し製造することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ヒト正常肝臓実質細胞由来でかつ無血清完全合成培地で増殖可能であり、しかもヒト肝臓の特異的な代謝機能のうち特に生体異物の代謝に関わる酵素活性や、生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現が観察できる細胞株を樹立することに成功し、さらに研究を行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性または肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現能を保持するヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株、
(2)酵素活性がNADPH チトクロームP450還元酵素活性、グルクロシルトランスフェラーゼ活性、エトキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ベンジロキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ペントキシルレゾルフィン脱アルキル化活性、メトキシレゾルフィン脱アルキル化活性、フラビンモノオキシゲナーゼ活性、エポキシヒドラターゼ活性、スルフォトランスフェラーゼ活性またはグルタチオンS−トランスフェラーゼ活性である上記(1)記載の細胞株、
(3)酵素がNADPH チトクロームP450還元酵素、NADPH チトクロームP450、フラビンモノオキシゲーナーゼ、エポキシヒドラターゼ、グルクロシルトランスフェラーゼ、スルフォトランスフェラーゼまたはグルタチオンS−トランスフェラーゼである上記(1)記載の細胞株、
(4)NADPH チトクロームP450がCYP1A1,CYP1A2またはCYP3Aである上記(3)記載の細胞株、
(5)細胞株がFERM BP−6328である上記(1)記載の細胞株、
(6)ヒト正常肝臓細胞にSV(simian virus)40由来のT抗原遺伝子を導入せしめることを特徴とする上記(1)記載の細胞株の製造法、
(7)ヒト正常肝臓細胞がヒト胎児由来の肝臓の細胞である上記(6)記載の製造法、
(8)上記(1)記載の細胞株を用いることを特徴とする▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性を阻害または促進または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現能を阻害または促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(9)上記(8)記載のスクリーニング方法を用いて得られる▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性を阻害または促進するか、または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現を阻害または促進する化合物またはその塩、
(10)上記(1)記載の細胞株を用いることを特徴とする(a) 生体異物および/または内在性基質代謝に関与する酵素、(b) 生体異物および/または内在性基質代謝経路、(c)生体異物および/または内在性基質代謝産物の化学構造、(d) 生体異物および/または内在性基質代謝酵素の阻害、(e) 生体異物および/または内在性基質代謝酵素の活性の促進、(f) 生体異物および/または内在性基質代謝による細胞毒性、(g) 生体異物および/または内在性基質代謝による遺伝毒性、(h) 生体異物および/または内在性基質代謝による発ガン性、(i) 生体異物および/または内在性基質代謝のよる変異原性、(j) 生体異物および/または内在性基質代謝による肝毒性、または(k) 肝に作用する生体異物および/または内在性基質の解析方法、および
(11)生体異物および/または内在性基質代謝産物の調製方法などに関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本明細書中、「正常細胞」、「正常肝臓細胞」または「正常組識」とは、癌化されていない細胞または組識を意味する。
また、「生体異物の代謝」とは、例えば薬物、食品添加物、環境汚染物質などの代謝を意味し、なかでも薬物代謝などが好ましく用いられる。
用いられるヒト正常肝臓細胞(好ましくはヒト正常肝臓実質細胞)は、ヒト成人、ヒト胎児(好ましくはヒト胎児など)などの正常組織からコラーゲナーゼ潅流法という確立された方法により分離することができる。この様にして得られたいわゆる初代培養細胞の不死化は、様々な公知方法などに準じて行われる。具体的には、癌化した組織が永久的に増殖を続けることに着目し、正常細胞個々に癌遺伝子の一部を導入し、細胞を形質転換して不死化しようとする方法などがあげられる。このようにして樹立された不死化細胞株としては、例えば、rasやc−mycなどの発癌遺伝子、あるいは、アデノウイルスEIA、SV(simian virus)40ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV16)等のDNA型腫瘍ウイルスの癌遺伝子またはそれらの腫瘍抗原(T抗原)遺伝子などを動物細胞に導入し、その形質転換体を継代させたものなどがあげられる(E.Ponet et al, Proc. Natl. Acad., Sci., USA 82 8503, (1985))。好ましくは、SV40由来のT抗原遺伝子を導入という方法またはそれに準じた方法などを用いることができる(M.Miyazakiら、Experimental Cell Research,206,27-35 (1993))。これら不死化肝臓細胞の培養(継代培養)にあたっては公知の培地[例えば、完全合成培地(無血清完全合成培地が好ましい(例えばASF104培地など)(味の素))、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Seience),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,Williams培地(日水製薬),199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕]などを用いた公知の培養方法などが用いられる。なかでも、完全合成培地(無血清完全合成培地(例えばASF104培地など)(味の素))などが好ましく用いられる。pHは約7〜7.2であるのが好ましい。培養は通常約37℃前後で行なわれる。
【0007】
なかでも、本発明の不死化肝臓細胞の樹立の過程において血清を含まない完全合成培地を使用することにより、無血清完全合成培地で増殖可能な不死化肝臓細胞を得ることができる。
こうして得られた不死化肝臓細胞の中から肝臓特異的な代謝上の性質、特に生体異物の代謝にかかわる酵素活性、酵素、遺伝子発現、遺伝子発現誘導を保持したものを選択する。
肝特異的な生体異物の代謝に関わる酵素活性としては、例えば、NADPH チトクロームP450 還元酵素活性、グルクロシルトランスフェラーゼ活性、混合機能酸化反応(MFO)活性(例えば、エトキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ベンジロキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ペントキシルレゾルフィン脱アルキル化活性、メトキシレゾルフィン脱アルキル化活性など)、フラビンモノオキシゲナーゼ活性、エポキシヒドラターゼ活性、スルフォトランスフェラーゼ活性またはグルタチオンS−トランスフェラーゼ活性などがあげられる。なかでも、 NADPH チトクロームP450 還元酵素活性、グルクロシルトランスフェラーゼ活性、混合機能酸化反応(MFO)活性(例えば、エトキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ベンジロキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ペントキシルレゾルフィン脱アルキル化活性、メトキシレゾルフィン脱アルキル化活性など)が重要であり、特に、NADPH チトクロームP450 還元酵素活性は生体異物の代謝における機能の点から最も重要な酵素活性と考えられる。
【0008】
肝特異的な生体異物の代謝に関わる酵素としては、例えば、 NADPH チトクロームP450 還元酵素、NADPHチトクロームP450、フラビンモノオキシゲーナーゼ、エポキシヒドラターゼ、グルクロシルトランスフェラーゼ、スルフォトランスフェラーゼ、グルタチオンS−トランスフェラーゼなどが含まれる。これらのなかでNADPHチトクロームP450はその分布および生体異物の代謝における機能の点から最も重要な酵素群である。NADPHチトクロームP450は、多数の酵素タンパクの総称でありヒト肝臓で生体異物の代謝に関わる個々のNADPHチトクロームP450としては、CYP1A1, CYP1A2, CYP2A6, CYP2B6, CYP2C8, CYP2C9, CYP2C19, CYP3A(具体的には、CYP3A4, CYP3A5, CYP3A7など), CYP2D6などが知られており、なかでも本発明の不死化肝細胞株には、CYP1A1, CYP1A2, CYP3Aなどが好ましく用いられる。また、 NADPHチトクロームP450の機能的な側面からの総称して混合機能酸化反応(MFO)とも総称されることがあり、エトキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ベンジロキシレゾルフィン脱アルキル化活性、ペントキシルレゾルフィン脱アルキル化活性、およびメトキシレゾルフィン脱アルキル化活性などとして検知される。またさらに、 NADPHチトクロームP450タンパクのMFO機能発現には、NADPH チトクロームP450還元酵素の存在が必須であり本酵素も生体異物の代謝酵素に分類することができる。
また、多くの生体異物の代謝酵素は、ある一定の条件下で誘導を受けることが知られている。この例としては、CYP1A1, CYP1A2発現に対するベンズピレン、ベンズアントラセン、3-メチルコランスレン、ダイオキシンなどのいわゆる多環性芳香族化合物の効果、CYP2B(例えば、CYP2B6など)誘導に対するフェノバルビタール、フェノバルビトンの効果、CYP3A誘導に対するリファンピシン、デキサメタゾン、フェニトイン、フェニルブタゾンの効果などがよく知られている(C.G.ギブソンら、新版生体異物の代謝学 講談社、1995年)。
本発明のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株は、▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現能を保持しているために、肝臓の生体異物の代謝異常に係る疾患(例えば、肝機能不全症など)に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株に試験化合物を接触させ、▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現の変化を観察・測定することを特徴とする▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性を阻害または促進するか、または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現を阻害または促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法などを提供する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0009】
具体的には、本発明のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株を、試験化合物で処理し、無処理の対照ヒト由来不死化肝臓細胞株と比較し、該ヒト由来不死化肝臓細胞株の▲1▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性、または▲2▼肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現の変化などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、肝臓の生体異物の代謝異常に係る疾患(例えば、肝機能不全症など)に対して治療・予防効果を有するので、該疾患に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例アルカリ金属)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、公知の製造法またはそれに準じた方法で製造することができる。このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、肝機能不全症の治療目的で該化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、肝機能不全症の治療目的で該化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0010】
上記の製剤の剤形としての具体例としては、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、カプセル剤(マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、細粒剤、散剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、吸入剤、軟膏などが用いられる。これらの製剤は常法(例えば日本薬局方記載の方法など)に従って調製される。
該製剤において、上記のスクリーニング方法で得られた化合物またはその塩の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して0.01ないし100重量%、好ましくは0.1ないし50重量%、さらに好ましくは0.5ないし20重量%程度である。
具体的には、錠剤の製造法は、医薬品をそのまま、賦形剤、結合剤、崩壊剤もしくはそのほかの適当な添加剤を加えて均等に混和したものを、適当な方法で顆粒とした後、滑沢剤などを加え、圧縮成型するかまたは、医薬品をそのまま、または賦形剤、結合剤、崩壊剤もしくはそのほかの適当な添加剤を加えて均等に混和したものを、直接圧縮成型して製するか、またはあらかじめ製した顆粒をそのまま、もしくは適当な添加剤を加えて均等に混合した後、圧縮成型しても製造することもできる。また、本剤は、必要に応じて着色剤、矯味剤などを加えることができる。さらに、本剤は、適当なコーティング剤で剤皮を施すこともできる。
注射剤の製造法は、医薬品の一定量を、水性溶剤の場合は注射用水、生理食塩水、リンゲル液など、非水性溶剤の場合は通常植物油などに溶解、懸濁もしくは乳化して一定量とするか、または医薬品の一定量をとり注射用の容器に密封して製することができる。
経口用製剤担体としては、例えばデンプン、マンニット、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの製剤分野において常用されている物質が用いられる。注射用担体としては、例えば蒸留水、生理食塩水、グルコース溶液、輸液剤などが用いられる。その他、製剤一般に用いられる添加剤を適宜添加することもできる。
【0011】
さらに本発明は、上記のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株を用いることを特徴とする(a) 生体異物およびまたは内在性基質代謝に関与する酵素の解析方法、(b) 生体異物およびまたは内在性基質代謝経路の解析方法、(c)生体異物およびまたは内在性基質代謝産物の化学構造の解析方法、(d) 生体異物およびまたは内在性基質代謝産物の調製方法、(e) 生体異物およびまたは内在性基質代謝酵素の阻害の解析方法、(f) 生体異物およびまたは内在性基質代謝酵素の活性の促進の解析方法、(g) 生体異物およびまたは内在性基質代謝による細胞毒性の発現の解析方法、(h) 生体異物およびまたは内在性基質代謝による遺伝毒性の発現の解析方法、(i) 生体異物およびまたは内在性基質代謝による発ガン性発現の解析方法、(j) 生体異物およびまたは内在性基質代謝のよる変異原性の解析方法、(k) 生体異物およびまたは内在性基質代謝に肝毒性発現の解析方法または(l) 肝に作用する生体異物およびまたは内在性基質の解析方法などに関する。以下に上記(a)〜(l)記載の各方法について説明する。
【0012】
(a) 生体異物および/または内在性基質代謝に関与する酵素の解析方法:
たとえば、被検物質のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞への暴露による生体異物およびまたは内在性基質の構造の変化を解析することにより生体異物および/または内在性基質代謝に関与する酵素の解析が可能である(J.L. .Napoli ほか Methods in Enzymology vol. 206 pp.491-501 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1991、H. K. Kroemer ほか Methods in Enzymology vol. 272 pp.99-198 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1996)。具体的には、被検物質のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞への暴露による生体異物および/または内在性基質の構造の変化を各種酵素の阻害・拮抗物質あるいは各種酵素の中和抗体により解析することによる生体異物および/または内在性基質代謝に関与する酵素の同定、被検物質の細胞への暴露による生体異物およびまたは内在性基質の構造の変化を解析することによる酵素反応機構の解析、基質特異性の解析などをあげることができる。
被検物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
(b) 生体異物および/または内在性基質代謝経路の解析方法:
たとえば、被検物質のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞への暴露による生体異物および/または内在性基質の構造の変化を解析することにより生体異物および/または内在性基質代謝経路の解析が可能である(J.L. Napoli ほか Methods in Enzymology vol. 206 pp.491-501 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1991、H. K. Kroemer ほか Methods in Enzymology vol. 272 pp.99-198 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1996)。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(c)生体異物および/または内在性基質代謝産物の化学構造の解析方法:
たとえば、被検物質の細胞への暴露により生じた生体異物および/または内在性基質の構造の変化を解析することにより生体異物および/または内在性基質代謝産物の化学構造の解析が可能である(J. L. Napoli ほか Methods in Enzymology vol. 206 pp.491-501 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1991、H. K. Kroemer ほか Methods in Enzymology vol. 272 pp.99-198 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1996)。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
【0013】
(d) 生体異物および/または内在性基質代謝産物の調製方法:
たとえば、被検物質を細胞に暴露せしめた結果生じた生体異物およびまたは内在性基質の変換物質(いわゆる代謝産物)を採取し適切な方法で精製分離することにより生体異物および/または内在性基質代謝産物の調製が可能である(J.L. Napoli ほか Methods in Enzymology vol. 206 pp.491-501 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1991)。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(e) 生体異物および/または内在性基質代謝酵素の阻害の解析方法
たとえば、被検物質を細胞へ暴露することにより生体異物および/または内在性基質代謝酵素の活性の阻害の解析が可能である(J.L. Napoli ほか Methods in Enzymology vol. 206 pp.491-501 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1991)。具体的には、チトクロームP450酵素活性の阻害、タンパク量の減少、mRNAの減少などにより検出することが可能である。検出方法としては、各種P450に対応する酵素活性の測定、各種P450蛋白質に対応するウエスタンブロティング、各種P450 mRNAに対応するノザンハイブリダイゼーションあるいはRT-PCR法など公知の手法を使用することができる。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(f) 生体異物および/または内在性基質代謝酵素の活性の促進の解析方法:
たとえば、被検物質を細胞へ暴露し、生体異物および/または内在性基質代謝酵素活性の上昇、酵素量の増加または酵素をコードする遺伝子の転写量の上昇などを検出することにより生体異物および/または内在性基質代謝酵素の活性の促進の解析が可能である(J. Rueff ほかMutation Research 353(1996) 151-176)。具体的には、チトクロームP450酵素活性の上昇、タンパク量の増加、mRNAの増加を検出することで可能である。検出方法としては、各種P450に対応する酵素活性の測定、各種P450蛋白質に対応するウエスタンブロティング、各種P450 mRNAに対応するノザンハイブリダイゼーションあるいはRT-PCR法など公知の手法を使用することができる。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
【0014】
(g) 生体異物および/または内在性基質代謝による細胞毒性の解析方法:
たとえば、被検物質の細胞への暴露により生体異物および/または内在性基質代謝による細胞毒性の解析が可能である。具体的には、被検物質の暴露による細胞の形態の変化、生細胞数の変動、細胞内酵素の漏出、細胞表層構造の変化あるいは細胞内酵素の変動などを観察することにより解析される(D. Wu ほか Journal of Biological Chemistry, 271, (1996) 23914-23919)。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(h) 生体異物および/または内在性基質代謝による遺伝毒性の解析方法:
たとえば、被検物質を細胞に暴露し、細胞を染色体異常試験、小核試験などに付すことより生体異物および/または内在性基質代謝による遺伝毒性の解析が可能である。またさらに、被検物質を細胞に暴露したのち、細胞により変化した被検物質を適切な評価系で評価することにより染色体異常試験、小核試験、復帰突然変異試験などに付すことにより解析が可能である(J. Rueff ほかMutation Research 353(1996) 151-176, M. E. McManus ほか Methods in Enzymology vol. 206 pp.501-508 Ed. by M.R. WatermanほかAcademic Press 1991))。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(i) 生体異物および/または内在性基質代謝による発ガン性の解析方法:
たとえば、被検物質を細胞に暴露し、細胞を染色体異常試験、DNAの修飾などに付すことにより生体異物および/または内在性基質代謝による発ガン性の解析が可能である。またさらに、被検物質を細胞に暴露したのち、細胞により変化した被検物質を適切な化学物質による発ガン評価系で評価することにより解析が可能である(J. Rueff ほかMutation Research 353(1996) 151-176, K. Kawajiri ほかCytochromes P450 metabolic and toxicological aspects pp77-98 ed. by C. Ioannides CRC press (1996))。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(j) 生体異物および/または内在性基質代謝のよる変異原性の解析方法:
たとえば、被検物質を細胞に暴露し、細胞を染色体異常試験、小核試験などに付すことにより生体異物および/または内在性基質代謝のよる変異原性の解析が可能である。またさらに、被検物質を細胞に暴露したのち、細胞により変化した被検物質を適切な評価系で評価することにより染色体異常試験、小核試験、復帰突然変異試験などに付すことにより解析が可能である(J. Rueff ほかMutation Research 353(1996) 151-176)。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(k) 生体異物および/または内在性基質代謝による肝毒性の解析方法:
たとえば、被検物質を細胞に暴露し、細胞毒性の発現を観察することにより、あるいは、被検物質を細胞に暴露したのち、細胞により変化した被検物質を他の肝細胞、肝切片、摘出肝または、実験動物へ投与しそれによる細胞、組織、生体の変化を観察することにより生体異物および/または内在性基質代謝による肝毒性を解析することが可能である。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
(l) 肝に作用する生体異物および/または内在性基質の解析方法:
たとえば、被検物質の細胞への暴露による細胞の変化の発現を観察することにより、あるいは、被検物質を細胞に暴露したのち、細胞により変化した被検物質を他の肝細胞、肝切片、摘出肝または、実験動物へ投与しそれによる細胞、組織、生体の変化を観察することにより肝への作用の発現を解析することが可能である。
被検物質としては、上記と同様のものなどが用いられる。
【0015】
本明細書において、塩基などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
【0016】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
後述の実施例3において行われたRT−PCT法においてCYP1A1に対して用いられた合成プライマー塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
後述の実施例3において行われたRT−PCT法においてCYP1A1に対して用いられた合成プライマー塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
後述の実施例3において行われたRT−PCT法においてCYP1A2に対して用いられた合成プライマー塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
後述の実施例3において行われたRT−PCT法においてCYP1A2に対して用いられた合成プライマー塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
後述の実施例3において行われたRT−PCT法においてCYP3Aに対して用いられた合成プライマー塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
後述の実施例3において行われたRT−PCT法においてCYP3Aに対して用いられた合成プライマー塩基配列を示す。
【0017】
後述の実施例1で得られたOUMS−29株は、平成10年4月21日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6328として、平成10年4月21日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 50487として寄託されている。
【0018】
【実施例】
以下本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。また、個々の遺伝子操作の手法は特に断りのない限りサムブルーク(Sambrook)らのマニュアル((Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス)による一般的手法をもちいた。
【0019】
【実施例1】
肝細胞株の樹立
SV 40 T抗原遺伝子の導入による不死化細胞の樹立は確立された手法に従い実施した(M.Miyazakiほか、Experimental Cell Research, 206,27-35 (1993))。21週令ヒト死亡胎児より肝臓を摘出し、公知のコラーゲナーゼ潅流法により肝実質細胞の初代細胞を分離した。この細胞を10%牛胎児血清を添加したWilliams培地(日水製薬)にまき培養した。培養24時間後にリポフェクション法でSV40 T抗原遺伝子の導入を行った。SV40T抗原遺伝子の導入にはプラスミドpSV3Neo(P.J. Southern and P. Berg, J. Mol. Appl. Genet., 1, 327-341)を用いた。リポフェクション及びそれ以降は一貫して培養培地として無血清完全合成培地(ASF104、 味の素)用いた。トランスフェクション後3日目に継代培養を実施して肝細胞の増殖を促進するとともに最終濃度100μg/mlのG418(ギブコ(GIBCO Laboratoyies))を添加し、さらに2日間培養しネオマイシン耐性細胞を選択した。その後30日間の培養により明瞭なG418耐性を示すクローンを得OUMS-29と命名した。このクローンはさらに300代に亘りASF104培地中で増殖を続けたため、不死化したものと考えられた。
【0020】
【実施例2】
OUMS-29株の薬物代謝酵素活性の測定
5ないし7日間ASF104培地で培養しコンフルエントに達したOUMS-29細胞を集め0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)中に懸濁し超音波発生装置で破砕しこれを酵素源として以下の酵素活性の測定に供した。
【0021】
(1)チトクロームP450還元酵素活性
測定はBiological Pharmacology,37,4111-4116,1988記載の方法を基本に測定した。すなわちチトクロームC(和光純薬)を基質としてNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)およびOUMS-29由来の酵素源を存在させチトクロームCの還元に基づきチトクロームP450還元酵素活性を測定した。その結果、蛋白質1ミリグラム・1分あたり1ナノモルのチトクロームCを還元する活性を1ユニットとしてOUMS-29株に由来する酵素源は8ユニットの酵素活性を示した。
【0022】
(2)グルクロシルトランスフェラーゼ活性
測定はBiologicalPharmacology,37,4111-4116,1988記載の方法を基本に測定した。すなわち
1-ナフトール(シグマ)を基質としてUDP-グルクロン酸(シグマ)およびOUMS-29由来の酵素源を共存させ1-ナフトールグルクロニドの生成量を測定した。その結果、蛋白質1ミリグラム・1分あたり1ピコモルの1-ナフトールグルクロニドを生成する活性を1ユニットとしてOUMS-29株に由来する酵素源は196ユニットの酵素活性を示した。
【0023】
(3)混合機能酸化反応(MFO)活性
測定はBiologicalPharmacology,42,1307-1313,1991記載の方法を基本に測定した。すなわち
エトキシレゾルフィン(シグマ)、ペントキシレゾルフィン(シグマ)、ベンジロキシレゾルフィン(シグマ)及びメトキシレゾルフィン(シグマ)を基質としてNADPHおよびOUMS-29由来の酵素源を共存させ各々の基質の脱アルキル化により生じる生成物の量を測定した。その結果、蛋白質1ミリグラム・1分あたり1ピコモルの生成物を生じる活性を1ユニットとしてOUMS-29株に由来する酵素源はエトキシレゾルフィンを基質としたとき0.25ユニット、ペントキシレゾルフィンを基質としたとき0.47ユニット、ベンジロキシレゾルフィンを基質としたと0.38ユニット、メトキシレゾルフィンを基質としたとき0.32ユニットの酵素活性をおのおの示した。
【0024】
【実施例3】
チトクロームP450遺伝子の発現
OUMS-29株におけるチトクロームP450の発現は異なるチトクロームP450に特異的なDNAプライマーを用いて公知のRT-PCR法によりmRNA量のレベルを検討することにより解析することができる。これらのプライマーはジーンバンク(Gene Bank)のデータベースから入手可能である各々のチトクロムP450の配列から調製できる。GeneBank における受け入れ番号はおのおのCYP1A1はK03191、CYP1A2はM55053、CYP2E1はJ02625、CYP3A4はJ04449、CYP3A5はJ04813、CYP3A7はD00408である。個々のプライマーは、CYP1A1に対しては、5'-ATGCTTTTCCCAATCTCCATGTGC および5'-TTCAGGTCCTTGAAGGCATTCAGG。CYP1A2に対しては、5'-GGAAGAACCCGCACCTGGCACTGTおよび5'-AAACAGCATCATCTTCTCACTCAA。CYP3Aに対しては、5'-ATGGCTCTCATCCCAGACTTGおよび5'-GGAAAGACTGTTATTGAGAGAを各々用いた。
RT-PCR法におけるアニーリング温度は、 CYP1A1が55℃、 CYP1A2が65℃、CYP3Aが55℃、 CYP2E1が65℃、サイクル数は28〜36サイクルという条件下で行われた。
OUMS-29株を5ないし7日間培養しコンフルエントに達した細胞を集めこれよりRNAイージー(RNAeasy)キット(キアゲン(Quiagen))を用いてRNAを抽出した。このRNAと、先に決定した各チトクロームP450に特異的なプライマーをワンステップPCRキット(宝酒造)によりmRNAからの逆転写およびPCR反応を行い、ついでアガロースゲルで分離し、臭化エチジウム存在下で紫外線で可視化する。その結果を図1に示す。おのおのCYP1A1に予測される763bp、CYP1A2に予測される1180bp、CYP3Aに予測される680bp付近のシグナルが検出され対応する遺伝子のOUMS-29株における発現が確認された。
【0025】
【実施例4】
チトクロームP450遺伝子の発現の誘導
5ないし7日間培養しコンフルエントに達したOUMS-29細胞に最終濃度0〜10000nMの3−メチルコランスレン(3−MC)(図2)、0〜50000nMのベンズピレン(BP)(図3)、0〜25mMのフェノバルビトン(PB)(図4)あるいは、0〜1000nMのデキサメタゾン(DEX)(図5)を添加しさらに1日間培養した。培養後細胞を分離しこれより先に示した方法を用いてRNAを抽出しRT-PCR反応を実施した。
RT-PCR法におけるアニーリング温度は、 CYP1A1が55℃、 CYP1A2が65℃、CYP3Aが55℃、サイクル数は28〜36サイクルという条件下で行われた。
また、コントロールとして用いられるベータアクチンのサイクル数は、15サイクルであった。
この時あらゆる組織で同程度に発現しているベータアクチン(beta actin)のmRNA量を基準にして各サンプルの総mRNA量を補正するためアクチンコンペティティブRT-PCRキット(宝酒造)を用いた。結果を図2〜図5に示す。CYP1A1の発現は3−メチルコランスレン、ベンズピレン、フェノバルビトンの添加により、CYP1A2の発現は、3−メチルコランスレン、ベンズピレンの添加により、CYP3Aの発現はデキサメタゾンの添加により増強され、OUMS-29株にはチトクロムP450をコードする遺伝子の発現能が存在することが確認された。
【0026】
【発明の効果】
本発明のヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株、即ち、肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性または肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現能を保持するヒト由来不死化肝臓細胞株は、例えば、肝機能不全症などの予防・治療効果を有する化合物またはその塩のスクリーニングのために有用である。
【0027】
【配列表】
Figure 0004321907
Figure 0004321907
【0028】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で行われたRT-PCR法の結果を示す(電気泳動図)。
図中、Marker2,5,6はおのおのDNA分子量マーカー(ニッポンジーン製)を示す。
【図2】実施例4で行われた3−メチルコランスレン(3−MC)を添加後のRT-PCR法の結果を示す。
【図3】実施例4で行われたベンズピレン(BP)を添加後のRT-PCR法の結果を示す。
【図4】実施例4で行われたフェノバルビトン(PB)を添加後のRT-PCR法の結果を示す。
【図5】実施例4で行われたデキサメタゾン(DEX)を添加後のRT-PCR法の結果を示す。

Claims (8)

  1. 肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性または肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現能を保持するヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株であって、当該酵素がCYP1A1,CYP1A2およびCYP3Aであるヒト正常細胞由来不死化肝臓細胞株。
  2. CYP1A1,CYP1A2およびCYP3Aをコードする遺伝子が同時に発現していることを特徴とする請求項1記載の細胞株。
  3. 細胞株がFERM BP−6328である請求項1記載の細胞株。
  4. ヒト正常肝臓細胞にSV(simian virus)40由来のT抗原遺伝子を導入せしめることを特徴とする請求項1記載の細胞株の製造法。
  5. ヒト正常肝臓細胞がヒト胎児由来の肝臓の細胞である請求項記載の製造法。
  6. 請求項1記載の細胞株を用いることを特徴とする(1)肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素活性を阻害または促進または(2)肝臓の生体異物の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子の発現を阻害または促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  7. 請求項1記載の細胞株を用いることを特徴とする(a) 生体異物および/または内在性基質代謝に関与する酵素、(b) 生体異物および/または内在性基質代謝経路、(c)生体異物および/または内在性基質代謝産物の化学構造、(d) 生体異物および/または内在性基質代謝酵素の阻害、(e) 生体異物および/または内在性基質代謝酵素の活性の促進、(f) 生体異物および/または内在性基質代謝による細胞毒性、(g) 生体異物および/または内在性基質代謝による遺伝毒性、(h) 生体異物および/または内在性基質代謝による発ガン性、(i) 生体異物および/または内在性基質代謝のよる変異原性、(j) 生体異物および/または内在性基質代謝による肝毒性または(k) 肝に作用する生体異物および/または内在性基質の解析方法。
  8. 請求項1記載の細胞株を用いることを特徴とする生体異物および/または内在性基質代謝産物の調製方法。
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