本発明の目的は、現像性および細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって安定的に形成することができる一成分の静電荷像現像用磁性トナーを提供することにある。
本発明の他の目的は、一成分磁性現像において現像性および細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって安定的に形成することができる画像形成方法を提供することにある。
本発明の目的は、前記請求項1〜8の何れかの静電荷像現像用磁性トナーを採ること、及び前記請求項9〜16の何れかの画像形成方法を採ることにより達成される。
1.
少なくとも樹脂と磁性粉とを含有し、少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られる樹脂粒子を、水系媒体中で会合させて得られる1成分の静電荷像現像用磁性トナーにおいて、角がないトナー粒子の割合が50個数%以上で、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下であるトナー粒子からなることを特徴とする静電荷像現像用磁性トナー。
2.
トナー粒子の個数平均粒径が3〜8μmであることを特徴とする1に記載の静電荷像現像用磁性トナー。
3.
トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることを特徴とする1又は2に記載の静電荷像現像用磁性トナー。
4.
少なくとも磁性粉の長軸と短軸の比が0.8以上であることを特徴とする1〜3の何れか1項に記載の静電荷像現像用磁性トナー。
5.
少なくとも磁性粉中の珪素元素含有量が鉄元素を基準として0.1〜4.0質量%であることを特徴とする1〜4の何れか1項に記載の静電荷像現像用磁性トナー。
6.
少なくとも磁性粉中のFeO含有量が20〜30質量%であることを特徴とする1〜5の何れか1項に記載の静電荷像現像用磁性トナー。
7.
少なくとも磁性粉が6〜20面体構造であることを特徴とする1〜6の何れか1項に記載の静電荷像現像用磁性トナー。
8.
少なくとも磁性粉が球状構造であることを特徴とする1〜7の何れか1項に記載の静電荷像現像用磁性トナー。
9.
感光体上に形成された静電潜像を現像剤搬送部材上に形成された現像剤層に非接触状態で対向させて、少なくとも樹脂と磁性粉とを含有する1成分の静電荷像現像用磁性トナーのみを飛翔させて顕像化する現像工程を含む画像形成方法において、該磁性トナーは、少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られる樹脂粒子を、水系媒体中で会合させて得られ、角がないトナー粒子の割合が50個数%以上で、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下であるトナー粒子からなることを特徴とする画像形成方法。
10.
トナー粒子の個数平均粒径が3〜8μmである磁性トナーを飛翔させて顕像化することを特徴とする9に記載の画像形成方法。
11.
トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上である磁性トナーを飛翔させて顕像化することを特徴とする9又は10に記載の画像形成方法。
12.
少なくとも磁性粉の長軸と短軸の比が0.8以上であることを特徴とする9〜11の何れか1項に記載の画像形成方法。
13.
少なくとも磁性粉中の珪素元素含有量が鉄元素を基準として0.1〜4.0質量%であることを特徴とする9〜12の何れか1項に記載の画像形成方法。
14.
少なくとも磁性粉中のFeO含有量が20〜30質量%であることを特徴とする9〜13の何れか1項に記載の画像形成方法。
15.
少なくとも磁性粉が6〜20面体構造であることを特徴とする9〜14の何れか1項に記載の画像形成方法。
16.
少なくとも磁性粉が球状構造であることを特徴とする9〜15の何れか1項に記載の画像形成方法。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明の説明において、磁性トナーを本発明のトナー或いは単にトナーということがある。
一成分磁性現像における長期に亘る画像形成においては、現像されずに現像器上に残留した磁性トナーが繰り返しスリーブ上で攪拌される現象が引き起こされる。その結果として、繰り返し加えられるストレスにより帯電能の劣化したトナーがスリーブ上に蓄積されやすくなっている。この蓄積したトナーには、相互摩擦等の帯電による逆極性帯電トナーの多くも残留しており、これが原因でカブリ等の問題が引き起こされる。
この理由については明確ではないが、トナー粒子の形状が不揃いである場合には、現像装置内部での攪拌等による機械的ストレスを受けやすく、過大なストレスが加わる部分が発生することによってトナー組成物が被汚染物質に移行して付着し、トナーの帯電性を変化させると推定した。
又、このようなストレスの加わり方の違いは、トナー粒子の粒径によっても異なり、粒子径の小さいものの方がその質量に比し付着力が高いために、ストレスを受けた場合に汚染を起こしやすいことを見出した。一方、トナー粒子径が大きいものでは、このような汚染は発生しにくくなるが、ストレスにより表面性の変動を受けやすくなっており、帯電性の変動が発生する問題がある。
さらに、このような汚染発生に関しては、初期のトナーの帯電量分布も重要である。帯電量分布が広い場合には、画像形成においていわゆる選択現像が発生し、現像されにくいトナー粒子が現像装置内部に蓄積して現像性が低下する問題や、蓄積したトナーが長期間にわたってストレスを受けることにより、汚染を発生させたり、その表面性が変化して帯電性が変化し、弱帯電性あるいは逆極性のトナーとなって画質が低下する問題が発生する。
このトナーの帯電量分布について検討した結果、トナーの帯電量分布をきわめてシャープなものとするためには、トナー粒子の粒径のバラツキを小さく制御すると共に、形状のバラツキも小さく制御する必要があることが判明した。トナーの帯電量分布をきわめてシャープにすることで、トナー帯電量を低く設定した場合にも、長期にわたって安定した帯電性を得ることが可能となる。
さらに、トナーを特定の形状としてその形状を揃えた場合にも、トナー組成物による汚染が減少し、帯電量分布がシャープとなることが判明した。
すなわち、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下であるトナーを使用することでも、現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成することができることを見出し、請求項1〜8に記載の第1の本発明の完成に至ったものである。
又、磁性トナーを使用する画像形成方法としては磁性トナー相互の摩擦帯電を利用して帯電させ感光体と接触現像を行う方法と、感光体と現像剤を非接触状態で対向させてトナーを飛翔させて顕像化する現像工程を含む画像形成方法がある。この非接触での現像方法ではトナー相互の摩擦帯電性を使用しないため、逆極性のトナーの発生が無いため、いわゆるフリンジ画像の発生を抑制することができ、転写率も高くすることができる画像形成方法として好ましく使用されている方式である。しかし、この非接触現像方式では、非接触であるが故に接触現像よりも現像効率が低くなりやすく、繰り返しの画像形成において帯電性による選択現像が発生しやすい。この結果、現像トナー量の変動が起こり画質の劣化が大きくなる問題を有している。さらに、現像器上に残留したトナーの入れ替え性が低下することで、現像ゴーストなどの問題が発生しやすい。
本発明のトナーは前述した様に、帯電量分布がシャープであり、長期にわたって安定した帯電性を保持させることが可能なものであるため、上記の画像形成方法において現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成することができる特に大きな効果が発揮されることを見出し、請求項9〜16に記載の第2の本発明の完成に至ったものである。
本発明のトナーの「形状係数」は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合を65個数%以上とすることが好ましく、より好ましくは70個数%以上である。さらに好ましくは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合を65個数%以上とすることであり、より好ましくは、70個数%以上である。
この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であることにより、トナー粒子が破砕しにくくなって帯電付与部材の汚染が減少し、トナーの帯電性が安定する。
この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合を65個数%以上とすることが必要であり、好ましくは、70個数%以上である。
この形状係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、トナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、トナーを溶解しない溶媒中に添加し旋回流を付与する方法等により、形状係数を1.0〜1.6または1.2〜1.6にしたトナー粒子を調製し、これを通常のトナー中へ本発明の範囲内になるように添加して調整する方法がある。また、いわゆる重合法トナーを調製する段階で全体の形状を制御し、形状係数を1.0〜1.6または1.2〜1.6に調整したトナー粒子を同様に通常のトナーへ添加して調製する方法がある。
上記方法の中では重合法トナーが製造方法として簡便である点と、粉砕トナーに比較して表面の均一性に優れる点等で好ましい。
次に、本発明のトナーの「形状係数の変動係数」は下記式から算出される。
変動係数(%)=(S1/K)×100
式中、S1は100個のトナー粒子の形状係数の標準偏差を示し、Kは形状係数の平均値を示す。
この形状係数の変動係数は16%以下であり、好ましくは14%以下である。形状係数の変動係数が16%以下であることにより、転写されたトナー層(粉体層)の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。また、帯電量分布がシャープとなり、画質が向上する。
このトナーの形状係数および形状係数の変動係数を、極めてロットのバラツキなく均一に制御するために、本発明のトナーを構成する樹脂粒子(重合体粒子)を調製(重合)、当該樹脂粒子を融着、形状制御させる工程において、形成されつつあるトナー粒子(着色粒子)の特性をモニタリングしながら適正な工程終了時期を決めてもよい。
モニタリングするとは、インラインに測定装置を組み込みその測定結果に基づいて、工程条件の制御をするという意味である。すなわち、形状などの測定をインラインに組み込んで、例えば樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーでは、融着などの工程で逐次サンプリングを実施しながら形状や粒径を測定し、所望の形状になった時点で反応を停止する。
モニタリング方法としては、特に限定されるものではないが、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子社製)を使用することができる。本装置は試料液を通過させつつリアルタイムで画像処理を行うことで形状をモニタリングできるため好適である。すなわち、反応場よりポンプなどを使用し、常時モニターし、形状などを測定することを行い、所望の形状などになった時点で反応を停止するものである。
本発明のトナーの個数粒度分布および個数変動係数はコールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定されるものである。本発明においてはコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。個数粒度分布とは、粒子径に対するトナー粒子の相対度数を表すものであり、個数平均粒径とは、個数粒度分布におけるメジアン径を表すものである。
トナーの「個数粒度分布における個数変動係数」は下記式から算出される。
個数変動係数(%)=(S2/Dn)×100
式中、S2は個数粒度分布における標準偏差を示し、Dnは個数平均粒径(μm)を示す。
本発明のトナーの個数変動係数は27%以下であり、好ましくは25%以下である。個数変動係数が27%以下であることにより、帯電量分布がシャープとなり、転写効率が高くなって画質が向上する。
本発明のトナーにおける個数変動係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を風力により分級する方法も使用できるが、個数変動係数をより小さくするためには液中での分級が効果的である。この液中で分級する方法としては、遠心分離機を用い、回転数を制御してトナー粒子径の違いにより生じる沈降速度差に応じてトナー粒子を分別回収し調製する方法がある。
特に懸濁重合法によりトナーを製造する場合、個数粒度分布における個数変動係数を27%以下とするためには分級操作が必須である。懸濁重合法では、重合前に重合性単量体を水系媒体中にトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させることが必要である。すなわち、重合性単量体の大きな油滴に対して、ホモミキサーやホモジナイザーなどによる機械的な剪断を繰り返して、トナー粒子程度の大きさまで油滴を小さくすることとなるが、このような機械的な剪断による方法では、得られる油滴の個数粒度分布は広いものとなり、従って、これを重合してなるトナーの粒度分布も広いものとなる。このために分級操作が必須となる。
本発明のトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが必要とされ、この割合が70個数%以上であることが好ましい。
本発明のトナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが好ましく、更に好ましくは70個数%以上とされる。
角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、摩耗、破断しやすいトナー粒子および電荷の集中する部分を有するトナー粒子が減少することとなり、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できる。
ここに、「角がないトナー粒子」とは、電荷の集中するような突部またはストレスにより摩耗しやすいような突部を実質的に有しないトナー粒子を言い、具体的には以下のトナー粒子を角がないトナー粒子という。
すなわち、図11(a)に示すように、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみださない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図11(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
角がないトナー粒子の割合の測定は次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、さらに拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を100個のトナー粒子について行った。
角がないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
又、樹脂粒子を会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーにおいては、融着停止段階では融着粒子表面には多くの凹凸があり、表面は平滑でないが、形状制御工程での温度、攪拌翼の回転数および攪拌時間等の条件を適当なものとすることによって、角がないトナーが得られる。これらの条件は、樹脂粒子の物性により変わるものであるが、例えば、樹脂粒子のガラス転移点温度以上で、より高回転数とすることにより、表面は滑らかとなり、角がないトナーが形成できる。
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3〜8μmのものが好ましい。この粒径は、重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、後に詳述するトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、または融着時間、さらには重合体自体の組成によって制御することができる。
個数平均粒径が3〜8μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
本発明のトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
測定条件
(1)アパーチャー:100μm
(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
本発明に係わる上記式により求められた値について、従来知られているトナーの数値を説明する。これらの数値は製造方法等、種々の要件により異なる値となることはいうまでもない。
粉砕法トナーの場合、形状係数が1.2〜1.6であるトナー粒子の割合は60個数%程度である。このものの形状係数の変動係数は20%程度である。また、粉砕法では破砕を繰り返しながら粒径を小さくするために、トナー粒子に角部分が多くなり、角がないトナー粒子の割合は30個数%以下である。
懸濁重合法によるトナーの場合、従来は層流中において重合されるため、ほぼ真球状のトナー粒子が得られ、例えば特開昭56−130762号公報に記載されたトナーでは、形状係数が1.2〜1.6であるトナー粒子の割合が20個数%程度となり、また形状係数の変動係数も18%程度となり、更に角がないトナー粒子の割合も85個数%程度となる。また、個数粒度分布における個数変動係数を制御する方法として前記した様に、重合性単量体の大きな油滴に対して、機械的な剪断を繰り返して、トナー粒子程度の大きさまで油滴を小さくするため、油滴径の分布は広くなり、従って得られるトナーの粒度分布は広く、個数変動係数は32%程度と大きいものであり、個数変動係数を小さくするためには分級操作が必要である。
樹脂粒子を会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーにおいては、例えば特開昭63−186253号公報に記載されたトナーでは、形状係数が1.2〜1.6であるトナー粒子の割合は60個数%程度であり、また形状係数の変動係数は18%程度であり、更に角がないトナー粒子の割合も44個数%程度である。さらに、トナーの粒度分布は広く、個数変動係数は30%であり、個数変動係数を小さくするためには分級操作が必要である。
さらに本発明において、磁性粉の形状及び形状の分布を特定化することで、帯電性を均一化することができる。
この磁性粉は数平均一次粒子径が0.1〜2μm、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが好ましく、トナー中に含有させる量としては樹脂成分100質量部に対し20〜200質量部、好ましくは樹脂成分100質量部に対し40〜150質量部が良い。なお、この数平均一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡で5000倍に拡大した写真を使用し、500個の粒子を測定し、算出したものである。なお、粒子の粒径は水平方向の最大長軸径を使用した。
又、磁性粉として珪素元素の含有量を特定化することで、表面が過度に酸化されることが無く、帯電性を安定に維持することができる。特に、高湿環境での帯電性の変化に対して有効である。
磁性トナーに用いる磁性粉中の珪素元素の含有率が鉄元素を基準にして、0.1〜4.0質量%(さらに好ましくは0.4〜2.0質量%)であることが特徴の1つである。珪素元素の含有率が0.1質量%より少ない場合には、磁性トナーへの改善効果(特に磁性トナーの流動性の改善)が弱く、珪素元素の含有率が4.0質量%より多い場合には、ケイ酸成分が磁性酸化鉄表面に必要以上に残留したり、磁気特性に悪影響を与える可能性がある。
本発明において、磁性粉の珪素元素の含有率(鉄元素を基準とする)は、次のような方法によって求めることができる。例えば、5リットルのビーカーに約3リットルの脱イオン水を入れ45〜50℃になるようにウォーターバスで加温する。約400mlの脱イオン水でスラリーとした磁性酸化鉄約25gを約300ml脱イオン水で水洗いしながら、該脱イオン水とともに5リットルビーカー中に加える。
次いで、温度を約50℃、攪拌スピードを約200rpmに保ちながら、特級塩酸または塩酸とフッ化水素酸との混酸を加え、溶解を開始する。このとき、塩酸水溶液は約3規定となっている。溶解開始から、すべて溶解して透明になるまでの間に数回約20mlサンプリングし、0.1μmメンブランフィルターでろ過し、ろ液を採取する。ろ液をプラズマ発光分光(ICP)によって、鉄元素及び珪素元素の定量を行う。
又、長軸と短軸の比をある範囲以上とすることで、球形化された磁性粉を使用し、表面へのムダな吸着成分を除去することができ、帯電性を安定に維持することができる。この場合、いわゆる導電性成分の吸着を抑制することができ、特に高湿環境での電荷のリークを抑制することができ、濃度低下などの問題を発生しない。
磁性粉の形状を6〜20面体構造とすることで、磁性粉が含有されたトナーの耐破砕性を向上することができ、長期に亘って安定した画像を形成することができる。特に、会合型トナーとした場合、トナー内部での凝集力を向上することができるために、長期に亘る使用での微粉の発生が無く、現像スリーブなどへの付着が引き起こされることなく、長期に亘る帯電性の安定化を計ることができる。
本発明においてFeO含有量が20質量%未満の磁性粉をトナーに用いると、低温低湿環境下ではトナー帯電量を適度にコントロールしにくくなり、トナー帯電量の過度の上昇による画像濃度低下やバックグラウンドの汚れに充分対処しきれるものではなく、又、黒色トナーとして鮮明な色味を得る為の色調制御等も難しくなる。
一方、FeO含有量が30質量%を上まわる磁性酸化鉄をトナーに用いると、特に高湿環境下ではトナーの帯電量が低下し、画像濃度低下が発生する。
本発明に用いる磁性酸化鉄は、硫酸鉄(FeSO4)を苛性ソーダ(NaOH)で中和しFe(OH)2を得、アルカリ調整によりpH12〜13にした後蒸気と空気により酸化しマグネタイトのスラリーを得る。次の乾燥工程を温風乾燥器を用い乾燥温度、乾燥時間をコントロールすることにより磁性酸化鉄中のFeOをコントロールすることができる。乾燥終了後解砕しマグネタイト粉体を得る。
ここで磁性酸化鉄中のFeOの測定は下記の手順による。
磁性酸化鉄1,000gを500mlのビーカーに入れ脱イオン水50mlを加え、更に特級硫酸20mlを添加し、磁性酸化鉄を完全に溶解させる。
次に脱イオン水100ml加え、更にMnSO4、H2SO4及びH3PO4(モル比0.3:2.0:2.0)から成るMnSO4混液10mlを加えて合計180mlとした後、10mlを採取し、0.1NのKMnO4溶液にて滴定する。
本発明により、現像性および細線再現性に優れ、高画質な画像を長期に亘って安定的に形成することができる一成分の静電荷像現像用磁性トナーを提供することができる。
又、一成分磁性現像において現像性および細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって安定的に形成することができる画像形成方法を提供することが出来る。
トナーの製造方法
本発明のトナーは、少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られるトナーであることが好ましく、また、樹脂粒子を水系媒体中で会合させて得られるトナーであることが好ましい。以下、本発明のトナーを製造する方法について詳細に説明する。
尚、本発明における磁性トナーは、製造されたトナー粒子(着色粒子ということもある)に、後述する如く、外添剤としてシリカ微粉末等を添加しただけで現像剤として用いられる。しかし、それ以外の添加剤を加えても無論よい。
本発明のトナーは、懸濁重合法や、必要な添加剤の乳化液を加えた液中(水系媒体中)にて単量体を乳化重合して微粒の重合体粒子(樹脂粒子)を調製し、その後に、有機溶媒、凝集剤等を添加して当該樹脂粒子を会合する方法で製造することができる。ここで「会合」とは、前記樹脂粒子が複数個融着することをいい、当該樹脂粒子と他の粒子(例えば磁性体粒子)とが融着する場合も含むものとする。
本発明のトナーを製造する方法の一例を示せば、重合性単量体中に磁性粉(磁性体とも言う)や、必要に応じて着色剤、離型剤、荷電制御剤、さらに重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解あるいは分散させる。この各種構成材料が溶解あるいは分散された重合性単量体を分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置(攪拌装置)へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、さらに乾燥することで本発明のトナーを調製する。
なお、本発明でいうところの「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。
又、本発明のトナーを製造する方法として樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させて調製する方法も挙げることができる。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と磁性粉などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および磁性体等より構成される微粒子を複数以上会合させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時に水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
樹脂を構成する重合性単量体として使用されるものは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
又、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
これら重合性単量体はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。この場合、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
また、乳化重合法を用いる場合には水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
本発明において優れた樹脂としては、ガラス転移点が20〜90℃のものが好ましく、軟化点が80〜220℃のものが好ましい。ガラス転移点は示差熱量分析方法で測定されるものであり、軟化点は高化式フローテスターで測定することができる。さらに、これら樹脂としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量が数平均分子量(Mn)で1000〜100000、重量平均分子量(Mw)で2000〜1000000のものが好ましい。さらに、分子量分布として、Mw/Mnが1.5〜100、特に1.8〜70のものが好ましい。
前記樹脂粒子を水系媒体中で会合させる際に使用される凝集剤としては特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。具体的には、一価の金属として例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属として例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類の金属塩、マンガン、銅等の二価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属の塩等が挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。
これらの凝集剤は臨界凝集濃度以上添加することが好ましい。この臨界凝集濃度とは、水性分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加して凝集が発生する濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、乳化された成分および分散剤自体によって大きく変化するものである。例えば、岡村誠三他著「高分子化学
17、601(1960)日本高分子学会編」等に記述されており、詳細な臨界凝集濃度を求めることができる。また、別な手法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ(ゼータ)電位を測定し、この値が変化する塩濃度を臨界凝集濃度として求めることもできる。
本発明の凝集剤の添加量は、臨界凝集濃度以上であればよいが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、さらに好ましくは、1.5倍以上添加することがよい。
凝集剤と共に使用さすることのできる水に対して無限溶解する溶媒としては、形成される樹脂を溶解させないものが選択される。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、ジオキサン等のエーテル類を挙げることができる。特に、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。
この水に対して無限溶解する溶媒の添加量は、凝集剤を添加した重合体含有分散液に対して1〜100体積%が好ましい。
なお、粒子形状を均一化させるためには、着色粒子を調製し、濾過した後に粒子に対して10質量%以上の水が存在したスラリーを流動乾燥させることが好ましいが、この際、特に重合体中に極性基を有するものが好ましい。この理由としては、極性基が存在している重合体に対して、存在している水が多少膨潤する効果を発揮するために、形状の均一化が特に図られやすいからであると考えられる。
本発明のトナーは少なくとも樹脂と磁性粉(磁性体)を含有するものであるが、必要に応じて定着性改良剤である離型剤や荷電制御剤等を含有することもできる。さらに、上記樹脂と磁性体を主成分とするトナー粒子に対して無機微粒子や有機微粒子等で構成される外添剤を添加したものであってもよい。
磁性粉は結着樹脂100質量部に対し30〜200質量部、好ましくは60〜200質量部、さらには70〜150質量部が好ましい。30質量部未満では搬送性が不十分で現像剤担持体上の現像剤層にむらが生じ画像むらとなる傾向があり、さらに現像剤トリボの上昇に起因する画像濃度の低下が生じ易い傾向であった。一方、200質量部を超えると定着性に問題が生ずる傾向であった。
又、更に着色剤としてはカーボンブラック、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。
磁性粉や着色剤の添加方法としては、乳化重合法で調製した重合体粒子を、凝集剤を添加することで凝集させる段階で添加し重合体を着色する方法や、単量体を重合させる段階で磁性粉を添加し、重合し、着色粒子とする方法等を使用することができる。
さらに、定着性改良剤としての低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等を添加してもよい。
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
なお、これら荷電制御剤や定着性改良剤の粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
本発明のトナーでは、外添剤として無機微粒子や有機微粒子などの微粒子を添加して使用することでより効果を発揮することができる。この理由としては、外添剤の埋没や脱離を効果的に抑制することができるため、その効果が顕著にでるものと推定される。
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理の程度としては特に限定されるものでは無いが、メタノールウェッタビリティーとして40〜95のものが好ましい。メタノールウェッタビリティーとは、メタノールに対する濡れ性を評価するものである。この方法は、内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり攪拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この無機微粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、下記式により疎水化度が算出される。
疎水化度=(a/(a+50))×100
この外添剤の添加量としては、トナー中に0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
いわゆる重合性単量体中に磁性体などのトナー構成成分を分散あるいは溶解したものを水系媒体中に懸濁し、ついで重合せしめてトナーを得る懸濁重合法トナーでは、重合反応を行う反応容器中での媒体の流れを制御することによりトナー粒子の形状を制御することができる。すなわち、形状係数が1.2以上の形状を有するトナー粒子を多く形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを乱流とし、重合が進行して懸濁状態で水系媒体中に存在している油滴が次第に高分子化することで油滴が柔らかい粒子となった時点で、粒子の衝突を行うことで粒子の合一を促進させ、形状が不定形となった粒子が得られる。また、形状係数が1.2より小さいほぼ球形のトナー粒子を形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを層流として、粒子の衝突を避けることによりほぼ球形の粒子が得られる。この方法により、トナー形状の分布を本発明の範囲内に制御できるものである。
反応装置
図1は、一般的に使用されている攪拌翼の構成が一段の反応装置(攪拌装置)を示す構成斜視図であり、2は攪拌槽、3は回転軸、4は攪拌翼、9は乱流形成部材である。
懸濁重合法においては、特定の攪拌翼を使用することで、乱流を形成することができ、形状を容易に制御することができる。この理由としては明確ではないが、図1に示されるような攪拌翼4の構成が一段の場合には、攪拌槽2内に形成される媒体の流れが攪拌槽2の下部より上部への壁面を伝って動く流れのみになる。そのため、従来では一般的に攪拌槽2の壁面などの乱流形成部材9を配置することで乱流を形成し、攪拌の効率を増加することがなされている。しかし、この様な装置構成では、乱流が一部に形成されるものの、むしろ乱流の存在によって流体の流れが停滞する方向に作用し、結果として粒子に対するズリが少なくなるために、形状を制御することができない。
懸濁重合法において好ましく使用することのできる攪拌翼を備えた反応装置について図面を用いて説明する。
図2および図3は、それぞれ反応装置の一例を示す斜視図および断面図である。図2および図3に示す反応装置において、熱交換用のジャケット1を外周部に装着した縦型円筒状の攪拌槽2内の中心部に回転軸3を垂設し、該回転軸3に攪拌槽2の底面に近接させて配設された下段の攪拌翼40と、より上段に配設された攪拌翼50とが設けられている。上段の攪拌翼50は、下段に位置する攪拌翼40に対して回転方向に先行した交差角αをもって配設されている。本発明のトナーを製造する場合において、交差角αは90度(°)未満であることが好ましい。この交差角αの下限は特に限定されるものでは無いが、5度程度以上であることが好ましく、更に、好ましくは10度以上である。なお、三段構成の攪拌翼を設ける場合には、それぞれ隣接している攪拌翼間で交差角が90度未満であることが好ましい。
このような構成とすることで、上段に配設されている攪拌翼50によりまず媒体が攪拌され、下側への流れが形成される。ついで、下段に配設された攪拌翼40により、上段の攪拌翼50で形成された流れがさらに下方へ加速されるとともにこの攪拌翼50自体でも下方への流れが別途形成され、全体として流れが加速されて進行するものと推定される。この結果、乱流として形成された大きなズリ応力を有する流域が形成されるために、得られるトナー粒子の形状を制御できるものと推定される。
なお、図2および図3中、矢印は回転方向を示し、7は上部材料投入口、8は下部材料投入口、9は攪拌を有効にするための乱流形成部材である。
ここにおいて攪拌翼の形状については、特に限定はないが、方形板状のもの、翼の一部に切り欠きのあるもの、中央部に一つ以上の中孔部分、いわゆるスリットがあるものなどを使用することができる。これらの具体例を図10に記載する。図10(a)に示す攪拌翼5aは中孔部のないもの、同図(b)に示す攪拌翼5bは中央に大きな中孔部6bがあるもの、同図(c)に示す攪拌翼5cは横長の中孔部6c(スリット)があるもの、同図(d)に示す攪拌翼5dは縦長の中孔部6d(スリット)があるものである。また、三段構成の攪拌翼を設ける場合において、上段の攪拌翼に形成される中孔部と、下段の攪拌翼に形成される中孔部とは異なるものであっても、同一のものであってもよい。
図4〜図8は、それぞれ、好ましく使用することのできる攪拌翼を備えた反応装置の具体例を示す斜視図であり、図4〜図8において、1は熱交換用のジャケット、2は攪拌槽、3は回転軸、7は上部材料投入口、8は下部材料投入口、9は乱流形成部材である。
図4に示す反応装置において、攪拌翼41には折り曲げ部411が形成され、攪拌翼51にはフィン(突起)511が形成されている。
なお、攪拌翼に折り曲げ部が形成されている場合において、折り曲げ角度は5〜45°であることが好ましい。
図5に示す反応装置を構成する攪拌翼42には、スリット421が形成されていると共に、折り曲げ部422およびフィン423が形成されている。
なお、当該反応装置を構成する攪拌翼52は、図2に示す反応装置を構成する攪拌翼50と同様の形状を有している。
図6に示す反応装置を構成する攪拌翼43には、折り曲げ部431およびフィン432が形成されている。
なお、当該反応装置を構成する攪拌翼53は、図2に示す反応装置を構成する攪拌翼50と同様の形状を有している。
図7に示す反応装置を構成する攪拌翼44には、折り曲げ部441およびフィン442が形成されている。
また、当該反応装置を構成する攪拌翼54には、中孔部541が中央に形成されている。
図8に示す反応装置には、攪拌翼45(下段)と、攪拌翼55(中段)と、攪拌翼65とによる三段構成の攪拌翼が設けられてなる。
これら折り曲げ部451や上部あるいは下部への突起(フィン)452を有する構成を持つ攪拌翼は、乱流を効果的に発生させるものである。
尚、上記の構成を有する上段と下段の攪拌翼の間隙は特に限定されるものでは無いが、少なくとも攪拌翼の間に間隙を有していることが好ましい。この理由としては明確では無いが、その間隙を通じて媒体の流れが形成されるため、攪拌効率が向上するものと考えられる。但し、間隙としては、静置状態での液面高さに対して0.5〜50%の幅、好ましくは1〜30%の幅である。
さらに、攪拌翼の大きさは特に限定されるものでは無いが、全攪拌翼の高さの総和が静置状態での液面高さの50%〜100%、好ましくは60%〜95%である。
又、懸濁重合法において層流を形成させる場合に使用される反応装置の一例を図9に示す。この反応装置には、乱流形成部材(邪魔板等の障害物)は設けられていない点に特徴を有する。
図9に示した反応装置を構成する攪拌翼46および攪拌翼56は、それぞれ、図2に示す反応装置を構成する攪拌翼40および攪拌翼50と同様の形状および交差角αを有している。また、図9において、1は熱交換用のジャケット、2は攪拌槽、3は回転軸、7は上部材料投入口、8は下部材料投入口である。
尚、層流を形成させる場合に使用される反応装置としては、図9に示されるものに限定されるものではない。
又、かかる反応装置を構成する攪拌翼の形状については、乱流を形成させないものであれば特に限定されないが、方形板状のもの等、連続した面により形成されるものが好ましく、曲面を有していてもよい。
一方、樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させる重合法トナーでは、融着段階での反応容器内の媒体の流れおよび温度分布を制御することで、さらには融着後の形状制御工程において加熱温度、攪拌回転数、時間を制御することで、トナー全体の形状分布および形状を任意に変化させることができる。
すなわち、樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーでは、反応装置内の流れを層流とし、内部の温度分布を均一化することができる攪拌翼および攪拌槽を使用して、融着工程および形状制御工程での温度、回転数、時間を制御することにより、所期の形状係数および均一な形状分布を有するトナーを形成することができる。この理由は、層流を形成させた場で融着させると、凝集および融着が進行している粒子(会合あるいは凝集粒子)に強いストレスが加わらず、かつ流れが加速された層流においては攪拌槽内の温度分布が均一である結果、融着粒子の形状分布が均一になるからであると推定される。さらに、その後の形状制御工程での加熱、攪拌により融着粒子は徐々に球形化し、トナー粒子の形状を任意に制御できる。
樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーを製造する際に使用される攪拌翼および攪拌槽としては、前述の懸濁重合法において層流を形成させる場合と同様のものが使用でき、例えば図9に示すものが使用できる。攪拌槽内には乱流を形成させるような邪魔板等の障害物を設けないことが特徴である。攪拌翼の構成については、前述の懸濁重合法に使用される攪拌翼と同様に、上段の攪拌翼が、下段の攪拌翼に対して回転方向に先行した交差角αを持って配設された、多段の構成とすることが好ましい。
この攪拌翼の形状についても、前述の懸濁重合法において層流を形成させる場合と同様のものが使用でき、乱流を形成させないものであれば特に限定されないが、図10(a)に示した方形板状のもの等、連続した面により形成されるものが好ましく、曲面を有していてもよい。
現像方法
本発明のトナーが使用できる現像方法としては特に限定されないが、本発明のトナーは帯電量分布がシャープであるため、非接触現像方式に適用されると更に効果が発揮される。すなわち、非接触現像方式では現像電界の変化が大きいことから、微少な帯電の変化が大きく現像自体に作用する。しかし、本発明のトナーは帯電量分布がシャープであることから、帯電の変化が少なく、安定した帯電量を確保することができるため、非接触現像方式において安定した画像を長期にわたって形成することができる。
現像剤担持体の構成
本発明に使用される現像剤担持体は、円筒状のアルミニウムの如き基体で構成されており、該基体を被覆する被覆層を有してもよい。
現像剤担持体は磁性トナーを搬送するために、適度な粗さを有するものが好ましい。本発明の現像剤担持体の粗度は中心線平均粗さ(以下Ra)として0.2〜4.5μmであり、好ましくは0.4〜3.5μmである。表面粗度が0.2μm未満ではトナーの搬送性が低下し、十分な画像濃度が得られなくなる場合があり、4.5μmを超えるとトナーの搬送量が多くなり過ぎてトナーの帯電性が不充分となる。
ここに、本発明の画像形成方法は、本発明のトナーを使用して行われる非接触現像方式による現像工程、転写する工程、定着する工程を含む点に特徴を有するものである。
非接触現像方式とは、現像剤担持体(現像剤搬送部材)上に形成された現像剤層と感光体とが接触しないものであり、この現像方式を構成するために現像剤層は薄層で形成されることが好ましい。この方法は現像剤担持体表面の現像領域で20〜500μmの現像剤層を形成させ、感光体と現像剤担持体との間隙が該現像剤層よりも大きい間隙を有するものである。この薄層形成は磁気の力を使用する磁性ブレードや現像剤担持体表面に現像剤層規制棒を押圧する方式等で形成される。さらに、ウレタンブレードや燐青銅板等を現像剤担持体表面に接触させ現像剤層を規制する方法もある。押圧規制部材の押圧力としては10〜150N/mmが好適である。押圧力が小さい場合には規制力が不足するために搬送が不安定になりやすく、一方、押圧力が大きい場合には現像剤に対するストレスが大きくなるため、現像剤の耐久性が低下しやすい。好ましい範囲は30〜100N/mmである。現像剤担持体と感光体表面の間隙は現像剤層よりも大きいことが必要である。さらに、現像に際して現像バイアスを付加する場合、直流成分のみ付与する方式でも良いし、交流バイアスを印加する方式のいずれでも良い。
本発明においては、この現像剤担持体(現像剤搬送部材)と静電潜像保持体(感光体)との間には交番電界を印加することが好ましい。この交番電界を印加することによってトナーを有効に飛翔させることができる。この交番電界の条件は、交流周波数fが200〜8000Hzであり、交流電圧Vp−pが500〜3000Vであることが好ましい。この交番電界を使用する場合にはトナーとして均一な帯電性を有していることが必要である。すなわち、トナー間で帯電性に分布を有している場合には交番電界による弱帯電性トナーなどの引き戻し効果が相殺され、結果として画質を向上する効果が低下する。
本発明に於いて使用される現像剤担持体としては、担持体内部に磁石を内蔵したものが多く用いられ、その現像剤担持体表面(スリーブ)が回転することによって現像剤を現像領域に搬送するものである。スリーブを構成するものとしてはアルミニウムや表面を酸化処理したアルミニウムあるいはステンレス製のものが用いられる。
現像剤担持体の大きさとしては直径が10〜40mmのものが好適である。直径が小さい場合には現像剤の混合が不足し、トナーに対して充分な帯電付与を行うに充分な混合を確保することが困難となり、直径が大きい場合には現像剤に対する遠心力が大きくなり、トナーの飛散の問題を発生しやすい。
以下、非接触現像方式の一例を図12を用いて説明する。
図12は、本発明の画像形成方法に好適に使用できる非接触現像方式の現像部の概略図であり、73は感光体、74は現像剤担持体、75はスリーブ、76は磁石、77は本発明のトナーを含有する現像剤、78は現像剤層規制部材、79は現像領域、80は現像剤層、81は交番電界を形成するための電源である。
本発明のトナーを含有する現像剤77はその内部に磁石76を有する現像剤担持体74の磁気力により担持され、スリーブ75の移動により現像領域79に搬送される。この搬送に際して、現像剤層80は現像剤層規制部材78により、現像領域79に於いて、感光体73と接触することがないようにその厚さが規制される。
現像領域79の最小間隙(Dsd)はその領域に搬送される現像剤層80の厚さ(概ね50〜300μmの層で搬送されることが好ましい)より大きく、例えば100〜1000μm(好ましくは100〜500μm)程度である。
電源81は交番電界を形成するための電源であり、周波数200〜8000Hz、電圧500〜3000Vp−pの交流が好ましい。電源81には必要に応じて直流を交流に直列に加えた構成であってもよい。その場合、直流電圧としては300〜800Vが好ましい。
本発明の画像形成方法においては、現像工程後、転写材(画像支持体ともいわれ、通常は普通紙のため転写紙ともいわれる)に転写する工程を経て、定着工程にて定着される。
本発明に使用される好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式をあげることができる。特に、接触加熱方式として、熱圧定着方式、さらには熱ローラー定着方式および固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式をあげることができる。
熱ローラー定着方式では、多くの場合表面にテトラフルオロエチレンやポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体類等を被覆した鉄やアルミニウム等で構成される金属シリンダー内部に熱源を有する上ローラーとシリコーンゴム等で形成された下ローラーとから形成されている。熱源としては、線状のヒーターを有し、上ローラーの表面温度を120〜200℃程度に加熱するものが代表例である。定着部に於いては上ローラーと下ローラー間に圧力を加え、下ローラーを変形させ、いわゆるニップを形成する。ニップ幅としては1〜10mm、好ましくは1.5〜7mmである。定着線速は40mm/sec〜600mm/secが好ましい。ニップが狭い場合には熱を均一にトナーに付与することができなくなり、定着のムラを発生する。一方でニップ幅が広い場合には樹脂の溶融が促進され、定着オフセットが過多となる問題を発生する。
定着クリーニングの機構を付与して使用してもよい。この方式としてはシリコーンオイルを定着の上ローラーあるいはフィルムに供給する方式やシリコーンオイルを含浸したパッド、ローラー、ウェッブ等でクリーニングする方法が使用できる。
次に、本発明で用いられる固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する方式について説明する。
この定着方式は、固定配置された加熱体と、該加熱体に対向圧接し、且つフィルムを介して転写材を加熱体に密着させる加圧部材とにより圧接加熱定着する方式である。
この圧接加熱定着器は、加熱体が従来の加熱ローラーに比べて熱容量が小さく、転写材の通過方向と直角方向にライン状の加熱部を有するものであり、通常加熱部の最高温度は100〜300℃である。
なお、圧接加熱定着とは、通常よく用いられるごとく加熱部材と加圧部材の間を、未定着トナーをした転写材を通す方式等、加熱源に未定着トナー像を押し当てて定着する方法である。こうすることにより加熱が迅速に行われるため、定着の高速化が可能となるが、温度制御が難しく、加熱源表面部分等の未定着トナーを直接圧接される部分に、トナーが付着残留したいわゆるトナーオフセットが起こりやすく、また転写材が定着器に巻き付きを起こす等の故障も起こしやすいという問題点もある。
この定着方式では、装置に固定支持された低熱容量のライン状加熱体は、厚さにして0.2〜5.0mm、さらに好ましくは0.5〜3.5mmで幅10〜15mm、長手長240〜400mmのアルミナ基板に抵抗材料を1.0〜2.5mmに塗布したもので両端より通電される。
通電はDC100Vの周期15〜25msecのパルス波形で、温度センサーにより制御された温度・エネルギー放出量に応じたパルス幅に変化させてあたえる。低熱容量ライン状加熱体において、温度センサーで検出された温度T1の場合、抵抗材料に対向するフィルムの表面温度T2はT1よりも低い温度となる。ここでT1は120〜220℃が好ましく、T2の温度はT1の温度と比較して0.5〜10℃低いことが好ましい。また、フィルムがトナー表面より剥離する部分におけるフィルム材表面温度T3はT2とほぼ同等である。フィルムは、この様にエネルギー制御・温度制御された加熱体に当接して図13(a)の矢印方向に移動する。これら定着用フィルムとして用いられるものは、厚みが10〜35μmの耐熱フィルム、例えばポリエステル、ポリパーフルオロアルコキシビニルエーテル、ポリイミド、ポリエーテルイミドに、多くの場合はテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂に導電材を添加し離型剤層を、5〜15μm被覆させたエンドレスフィルムである。
フィルムの駆動には、駆動ローラーと従動ローラーにより駆動力とテンションをかけられて矢印方向へシワ・ヨレがなく搬送される。定着器としての線速は40〜600mm/secが好ましい。
加圧ローラーはシリコーンゴム等の離型性の高いゴム弾性層を有し、総圧20〜300Nでフィルム材を介して加熱体に圧着され、圧接回転する。
また、上記にはエンドレスフィルムを用いた例を説明したが、図13(b)の様にフィルムシートの送り出し軸と巻き取り軸を使用し、有端のフィルム材を使用してもよい。さらには内部に駆動ローラー等を有しない単なる円筒状のものでもよい。
上記定着器にはクリーニング機構を付与して使用してもよい。クリーニング方式としては、各種シリコーンオイルを定着用フィルムに供給する方式や各種シリコーンオイルを含浸させたパッド、ローラー、ウェッブ等でクリーニングする方式が用いられる。
なお、シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等を使用することが出来る。さらに、フッ素を含有するシロキサンも好適に使用することが出来る。
次に図13にこの定着器の構成断面図の例を示す。
図13(a)において、84は装置に固定支持された低熱容量ライン状加熱体であって、一例として高さが1.0mm、幅が10mm、長手長が240mmのアルミナ基板85に抵抗材料86を幅1.0mmに塗工したものであり、長手方向両端部より通電される。
通電は例えばDC100Vで通常は周期20msecのパルス状波形でなされ、検温素子87からの信号によりコントロールされ所定温度に保たれる。このためエネルギー放出量に応じてパルス幅を変化させるが、その範囲は例えば0.5〜5msecである。
このように制御された加熱体84に移動するフィルム88を介して未定着トナー像93を担持した転写材94を当接させてトナーを熱定着する。
ここで用いられるフィルム88は、駆動ローラー89と従動ローラー90によりテンションをかけられた状態でシワの発生なく移動する。95はシリコーンゴム等で形成されたゴム弾性層を有する加圧ローラーであり、総圧40〜200Nでフィルムを介して加熱体を加圧している。転写材94上の未定着トナー像93は、入口ガイド96により定着部に導かれ、上述した加熱により定着像を得る。
以上はエンドレスベルトで説明したが、図13(b)のごとく、フィルムシート繰り出し軸91および巻き取り軸92を使用し、定着用のフィルムは有端のものでもよい。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(トナー製造例1:乳化重合会合法の例)
n−ドデシル硫酸ナトリウム0.90kgと純水10.0リットルを入れ攪拌溶解した。この溶液に、磁性粉(79.6kA/mにおける飽和磁化8.3×10-5Wb・m/kg、珪素元素含有量1.7質量%、平均粒径0.22μm、FeO含有量26.1質量%、長軸と短軸の比=0.82、8面体構造)12.0kgを徐々に加え、1時間よく攪拌した後に、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。このものを「着色剤分散液1」とする。
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgとイオン交換水4.0リットルとからなる溶液を「アニオン界面活性剤溶液A」とする。
ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgとイオン交換水4.0リットルとからなる溶液を「ノニオン界面活性剤溶液B」とする。
過硫酸カリウム238gをイオン交換水12.0リットルに溶解した溶液を「開始剤溶液C」とする。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた容積100リットルのGL(グラスライニング)反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均一次粒子径=120nm/固形分濃度=29.9%)3.41kgと「アニオン界面活性剤溶液A」全量と「ノニオン界面活性剤溶液B」全量とを入れ、攪拌を開始した。次いで、イオン交換水44.0リットルを加えた。
加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、「開始剤溶液C」全量を滴下して加えた。その後、液温度を75℃±1℃に制御しながら、スチレン12.1kgとアクリル酸n−ブチル2.70kgとメタクリル酸1.14kgとt−ドデシルメルカプタン550gとからなる溶液を滴下しながら投入した。滴下終了後、液温度を80℃±1℃に上げて、6時間加熱攪拌を行った。ついで、液温度を40℃以下に冷却し攪拌を停止し、ポールフィルターで濾過してラテックスを得た。これを「ラテックス−A」とする。
なお、ラテックス−A中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は119℃、分子量分布は、重量平均分子量=1.35万、質量平均粒径は115nmであった。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換純水4.0リットルに溶解した溶液を「アニオン界面活性剤溶液D」とする。
また、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgをイオン交換水4.0リットルに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液E」とする。
過硫酸カリウム(関東化学社製)200gをイオン交換水12.0リットルに溶解した溶液を「開始剤溶液F」とする。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100リットルのGL反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均一次粒子径=120nm/固形分濃度 29.9%)3.41kgと「アニオン界面活性剤溶液D」全量と「ノニオン界面活性剤溶液E」全量とを入れ、攪拌を開始した。
次いで、イオン交換水44.0リットルを投入した。加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、「開始剤溶液F」を添加した。ついで、スチレン11.0kgとアクリル酸n−ブチル4.00kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン9.0gとをあらかじめ混合した溶液を滴下した。滴下終了後、液温度を72℃±2℃に制御して、6時間加熱攪拌を行った。さらに、液温度を80℃±2℃に上げて、12時間加熱攪拌を行った。液温度を40℃以下に冷却し攪拌を停止した。ポールフィルターで濾過し、この濾液を「ラテックス−B」とする。
なお、ラテックス−B中の樹脂粒子のガラス転移温度は59℃、軟化点は133℃、分子量分布は、重量平均分子量=24.5万、質量平均粒径は110nmであった。
塩析剤としての塩化ナトリウム5.36kgをイオン交換水20.0リットルに溶解した溶液を「塩化ナトリウム溶液G」とする。
フッ素系ノニオン界面活性剤1.00gをイオン交換水1.00リットルに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液H」とする。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、粒径および形状のモニタリング装置を付けた100リットルのSUS反応釜(図9に示した構成の反応装置,交差角αは25°)に、上記で作製したラテックス−A=20.0kgとラテックス−B=5.2kgと着色剤分散液1=6.1kgとイオン交換水20.0kgとを入れ攪拌した。ついで、40℃に加温し、塩化ナトリウム溶液G、ノニオン界面活性剤溶液Hをこの順に添加した。その後、10分間放置した後に、昇温を開始し、液温度85℃まで60分で昇温し、85±2℃にて0.5〜3時間加熱攪拌して塩析/融着させながら粒径成長させた。次に純水2.1リットルを添加して粒径成長を停止させた。
温度センサー、冷却管、粒径および形状のモニタリング装置を付けた5リットルの反応容器(図9に示した構成の反応装置,交差角αは20°)に、上記で作製した融着粒子分散液5.0kgを入れ、液温度85℃±2℃にて、0.5〜15時間加熱攪拌して形状制御した。その後、40℃以下に冷却し攪拌を停止した。次に遠心分離機を用いて、遠心沈降法により液中にて分級を行い、目開き45μmの篩いで濾過し、この濾液を会合液とする。ついで、ヌッチェを用いて、会合液よりウェットケーキ状の非球形状粒子を濾取した。その後、イオン交換水により洗浄した。この非球形状粒子をフラッシュジェットドライヤーを用いて吸気温度60℃にて乾燥させ、ついで流動層乾燥機を用いて60℃の温度で乾燥させた。得られた着色粒子の100質量部に、シリカ微粒子1質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して乳化重合会合法による磁性トナーを得た。
前記塩析/融着段階および形状制御工程のモニタリングにおいて、攪拌回転数、および加熱時間を制御することにより、形状および形状係数の変動係数を制御し、さらに液中分級により、粒径および粒度分布の変動係数を任意に調整して、特定の形状特性および粒度分布特性を有するトナー粒子からなる磁性トナー1〜5を得た。また、磁性粉を表に示す様に変更した。
(トナー製造例6:懸濁重合法の例)
スチレンを165g、n−ブチルアクリレートを35g、磁性粉(79.6kA/mにおける飽和磁化8.3×10-5Wb・m/kg、珪素元素含有率0.7質量%、平均粒径0.20μm、FeO含有量25.1%、長軸と短軸の比=0.91、球状構造)130g、ジ−t−ブチルサリチル酸金属化合物を2g、スチレン−メタクリル酸共重合体を8g、パラフィンワックス(mp=70℃)20gを60℃に加温し、サンドグラインダーにて攪拌し、磁性粉を分散した。これに重合開始剤として2,2′−アゾビス(2,4−バレロニトリル)10gを加えて溶解させ、重合性単量体組成物を調製した。ついで、イオン交換水710gに0.1M燐酸ナトリウム水溶液450gを加え、TKホモミキサーにて13000rpmで攪拌しながら1.0M塩化カルシウム68gを徐々に加え、燐酸三カルシウムを分散させた懸濁液を調製した。この懸濁液に上記重合性単量体組成物を添加し、TKホモミキサーにて10000rpmで20分間攪拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、図2に示した構成の反応装置(交差角αは45°)を使用し、75〜95℃にて5〜15時間反応させた。塩酸により燐酸三カルシウムを溶解除去し、次に遠心分離機を用いて、遠心沈降法により液中にて分級を行い、ついで濾過、洗浄、乾燥させた。得られた着色粒子の100質量部に、シリカ微粒子1質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して懸濁重合法によるトナーを得た。
前記重合時にモニタリングを行い、液温度、攪拌回転数、および加熱時間を制御することにより、形状および形状係数の変動係数を制御し、さらに液中分級により、粒径および粒度分布の変動係数を任意に調整して、特定の形状特性および粒度分布特性を有するトナー粒子からなる磁性トナー6〜8を得た。
(トナー製造例9:懸濁重合法の例)
トナー製造例5において、図9に示した構成の反応装置(交差角αは15°)を使用したこと、および遠心分離機を用いた液中での分級を行わなかった他は同様にして、特定の形状特性および粒度分布特性を有するトナー粒子からなる磁性トナー9を得た。
(トナー製造例10:粉砕法の例)
スチレン−nブチルアクリレート共重合体樹脂100kgと磁性粉(79.6kA/mにおける飽和磁化8.3×10-5Wb・m/kg、珪素元素含有量1.6質量%、平均粒径0.19μm、FeO含有量27.1質量%、長軸と短軸の比=0.85、8面体構造)を60kgとポリプロピレン4質量部とからなるトナー原材料をヘンシェルミキサーにより予備混合し、二軸押出機にて溶融混練し、ハンマーミルにて粗粉砕し、ジェット式粉砕機にて粉砕し、得られた粉体をスプレードライヤーの熱気流中に分散して(200〜300℃に0.05秒間)形状を調整した粒子を得た。この粒子を風力分級機にて目的の粒径分布となるまで繰り返し分級した。得られた着色粒子の100質量部に、シリカ微粒子1質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して粉砕法によるトナーを得た。
この様にして、形状および形状係数の変動係数を制御し、さらに粒径および粒度分布の変動係数を調整した、特定の形状特性および粒度分布特性を有するトナー粒子からなる磁性トナー10を得た。
*珪素含有量 :質量%
*平均粒径 :数平均一次粒子径(μm)
*FeO含有量:質量%
*飽和磁化 :79.6kA/mにおける飽和磁化(Wb・m/kg)
〔評価(非接触現像方式)〕
評価は、HP社製レーザープリンター「LJ4000」を改造して使用した。
条件を下記に示す。感光体としては積層型有機感光体を使用した。
・感光体表面電位=−750V
・DCバイアス =−610V
・ACバイアス =Vp−p:2700V
・交番電界周波数=5000Hz
・Dsd =270μm
・磁性H−Cut方式の薄層形成方式
・磁性トナー厚 =100μm
・現像スリーブ =20mm径のアルミニウム製円筒状基体
定着器としては圧接方式の加熱定着器を採用した。構成は下記のとおりである。
テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体で表面を被覆した直径30mmのヒーターを中央部に内蔵した円柱状の鉄からなる上ローラーを有し、表面が同様にテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエーテル共重合体で被覆したシリコーンゴムで構成された直径30mmの下ローラーを有している。線圧は8.0N/cmに設定され、ニップの幅は4.3mmとした。この定着器を使用して、印字の線速を250mm/secに設定した。定着の温度は上ローラーの表面温度で制御し、185℃の設定温度とした。なお、定着装置のクリーニング機構としてポリジフェニルシリコーン(20℃の粘度が100Pa・sのもの)を含浸したウェッブ方式の供給方式を使用した。
上記条件にて、画素率が4%の線画を使用し、20000枚にわたる画像形成を行い、初期の画像と、20000枚目後の画像とについて、各種の評価を行った。
〔評価方法〕
(1)最大画像濃度
ベタ黒画像の画像濃度を測定した。測定にはマクベス反射濃度計「RD−918」を用いて絶対反射濃度を測定した。
(2)ベタ黒画像濃度ムラ
ベタ黒画像の最大反射濃度と最小反射濃度をマクベス反射濃度計「RD−918」を用いて絶対反射濃度で測定し、その差を求めた。差が少ないほど、ベタ黒画像の安定性に優れているといえる。
なお、ベタ黒画像を印字する前に、10mm幅の縦の黒筋スジ画像を印字した後に出力した。この結果、ベタ黒画像の濃度の差が大きいものほど、いわゆる現像ゴースト現象が発生しているものといえる。
(3)カブリ濃度
印字されていない白紙について、マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、白紙濃度とする。次に評価形成画像の白地部分について、同様に20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、この平均濃度から白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。
カブリ濃度が0.010以下であれば、カブリは実用的に問題ないといえる。
以上の様に、本発明の画像形成によれば繰り返しの画像形成によっても画質の変化が小さく、現像性および細線再現性に優れ、高画質な画像を長期に亘って安定的に形成することができる。