JP4319035B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

技術分野
この発明は核磁気共鳴現象を利用して被検体内の原子核分布やスペクトル情報を画像化する磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に関し、特に直前のショットあるいはスライス計測のための傾斜磁場印加の影響による渦電流や残留傾斜磁場により発生するアーチファクトの低減を図ったCPMG(Carr−Purcell−Meiboom−Gill)法に基づくマルチショットシングルスライスおよびマルチショットマルチスライス撮像パルスシーケンスを有するMRI装置の改良に関する。
背景の技術
MRI装置は、均一な静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場を印加することによって、被検体の任意の領域に存在する原子核(通常プロトン)に核磁気共鳴を生じさせ、それによって発生する核磁気共鳴信号(エコー信号)からその領域の断層像を得るものである。通常、MRI装置では、被検体の断層像を得ようとする平面を特定するスライス傾斜磁場を印加すると同時にその平面内のスピンを励起する励起パルス(高周波パルス)を印加し、これにより励起されたスピンが収束する段階で発生するエコー信号を得る。エコー信号に位置情報を与えるため、励起からエコー信号を得るまでの間に、断層面内で互いに直交する方向に位相エンコード傾斜磁場及びリードアウト(周波数エンコード)傾斜磁場を印加する。こうして取得されたエコーを位相エンコード方向を縦軸、リードアウト方向を横軸とするk空間に配置し、このk空間に配置されたデータに対して逆フーリエ変換を施すことにより画像が再構成される。
エコー信号を発生させるための高周波パルスと各傾斜磁場は、予め設定されたパルスシーケンスに基づいて印加される。撮像の目的に応じて種々のパルスシーケンスが知られている。その中の高速スピンエコー法は、90°励起パルスの後に設定したエコー番号の数だけの180°反転パルスを印加し、その際、エコー番号ごとに異なる位相エンコード量を与えてエコー信号を収集し、短い繰り返し時間(TR)で複数のエコー信号を取得する高速撮像法である。
この高速スピンエコー法では、180°反転パルスの印加軸を、90°励起パルスの印加軸と異ならせるCPMG法に基づくパルス列を利用することが一般的である。このCPMG法は、180°パルスの不完全性(核スピンが完全な180°にならないこと)を補償できる優れた効果があるが、励起パルスの位相と傾斜磁場を高精度に制御する必要があり、渦電流や磁気ヒステリシスなどによる傾斜磁場の歪、不完全性が発生すると画像にアーチファクトが発生する。この傾向は静磁場発生磁石として永久磁石方式を採用したMRI装置に多く生じる。なおCPMG法のパルス列については、例えば、米国特許4,818,940を参照されたい。
このことを図5Aおよび5Bにより説明する。図5AはCPMG法に基づく高速スピンエコー法によるパルスシーケンスを、図5Bはそれによるスピンの挙動を示す図であり、ここでは説明を簡単にするために高周波パルスと周波数エンコード(リードアウト)方向の傾斜磁場のみを示している。図示するように90°励起パルス51を印加することによって、x’−y’平面に倒された特定のスピンは傾斜磁場53によって1から2の位置に回転する。このときの位相回転量をαとする。次に180°反転パルス52によって2から3の位置になり、さらに傾斜磁場54により3から4の位置に移動する。ここで傾斜磁場53と傾斜磁場54は、印加強度×印加時間が1:2の関係にあるので、このときの位相回転量は2αとなる。その後は、次の反転パルス52および傾斜磁場54によって5から6の位置というように同様の繰り返しとなるが、最初の1:2の関係が崩れると、エコー信号を複数発生しているうちに、スピンに位相回転誤差が発生するとともに累積し、信号欠損等を生じ、アーチファクトが発生する。
一般に傾斜磁場の歪、不完全性に起因するアーチファクトの抑制方法として、例えば、特開平11−89817号には、渦電流に起因した傾斜磁場の歪を補正する補正磁場波形を発生させる磁気検出回路を含むディジタル渦電流補正回路を導入することが提案されている。
上述したようなハードの回路の追加による渦電流補正は、変動の少ない渦電流による傾斜磁場歪補正には極めて有効であるが、スライス数や繰り返し時間等の条件が異なるパルスシーケンスの場合の変動する残留磁場については対応することはできない。例えば、図6に示すような、与えられた繰り返し時間TR内に隣接したまたは非常に接近した複数の(この場合S1〜S3の3枚の)スライスの計測を行なうマルチスライス計測では、スライスごとの計測を均等に時間配分することにより撮像を繰り返している。しかし、各スライス間の時間間隔(1のスライスの計測終了から次のスライス計測までの時間)が必ずしも等間隔になるとは限らないため、磁石の導電体部材等に生じる渦電流による一定の時定数をもって減衰してゆく傾斜磁場誤差成分はスライス毎に異なり、この誤差成分は次に計測されるスライスに影響を与えることになるため、スライス毎にスピンは異なる位相誤差の影響を受けることになる、同様に磁気ヒステリシスによる残留傾斜磁場成分も、各スライス間の時間間隔が異なると、異なることになる。従って、その結果生じる各スライス毎に異なるスピンの位相誤差成分は、0次や1次の位相誤差補正では完全に除去することはできない。従って、特にスピンの位相の精度が要求されるCPMG法に基づく高速スピンエコー法を用いたマルチショットマルチスライスにおいて、これら位相誤差に起因するアーチファクトを除去することは困難であった。
そこで本発明の目的は、CPMG法に基づくマルチショットシングルスライスおよびマルチショットマルチスライスのパルスシーケンスによる撮像機能を有するMRI装置において、直前のショットあるいはスライス計測の際に印加された傾斜磁場による渦電流や残留磁場に起因する各ショットあるいはスライス毎に変動する傾斜磁場誤差成分の次のショットあるいはスライス計測への混入によって生じる各ショットあるいはスライス毎のスピンの位相回転誤差によって引き起こされるアーチファクトを抑制することである。
発明の開示
本発明は、マルチスライス法パルスシーケンスによる撮像機能を有するMRI装置において、直前に終了したスライス計測から次に計測されるスライス計測に混入する、スライス毎に異なる残留傾斜磁場成分を、各スライス計測の励起パルス(第1の高周波磁場パルス)印加時に同一値とするように、各スライス計測における励起パルスの印加に先立って所定量の傾斜磁場プリパルスを印加するようにしたものである。また、前記傾斜磁場プリパルスの残留成分によって励起された核スピンに生ずる位相回転誤差をキャンセルするために、励起後の第2の高周波磁場パルス印加時までにその傾斜磁場プリパルスの残留成分をキャンセルする傾斜磁場成分を印加するようにしたものである。
このMRI装置のよれば、傾斜磁場プリパルスを追加することによって、スピン励起のための90°励起高周波パルス印加の時点で、直前のショットあるいはスライス計測で印加された傾斜磁場の不完全性による誤差成分を実質的に無効化し,傾斜磁場プリパルスによる既知で一定不変の傾斜磁場誤差成分のみが人工的に導入される状態とすることができる。このような変動しない一定の残留傾斜磁場誤差成分によって引き起されるスピンの各ショットあるいはスライスにわたって均一な位相回転誤差成分は、0次或いは1次の補正によって容易に取り除くことができ、アーチファクトの発生を制御することができる。
また、本発明のMRI装置において、傾斜磁場プリパルスは90°励起高周波磁場パルスの印加の一定時刻前に印加される。
本発明のMRI装置は、CPMG法に基づくマルチショットマルチスライス型のパルスシーケンスを備えたMRI装置に好適である。即ち、本発明の好適な態様において、90°励起高周波磁場パルスと、反転する180°高周波磁場パルスは、互いに印加軸が回転座標系において直行するように印加されるものである。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、主たる構成として、被検体1が置かれる空間に均一な静磁場を発生させる静磁場発生磁石2と、静磁場に磁場勾配を与える傾斜磁場発生系3と、被検体1の組織を構成する原子の原子核(通常、プロトン)に核磁気共鳴を起こさせる高周波磁場を発生する送信系5と、核磁気共鳴によって被検体1から発生するエコー信号を受信する受信系6と、受信系6が受信したエコー信号を処理し、前述した原子核の空間密度やスペクトルを表す画像を作成する信号処理系7と、信号処理系7における各種演算や装置全体の制御を行なうための中央処理装置(CPU)8とを備えている。
静磁場発生磁石2は、永久磁石、常電導方式又は超電導方式の磁石からなり、被検体1の周りにその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させる。傾斜磁場発生系3は、x、y、zの三軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とからなり、後述のシーケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、x、y、zの三軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを被検体1に印加する。この傾斜磁場の加え方により、被検体1の撮像対象領域(スライス、スラブ)を設定することができるとともに、エコー信号に、位相エンコード、周波数エンコードなどの位置情報を付与することができる。なお、この三軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、GzはMRI装置の設定断面に応じてスライス方向傾斜磁場Gs、位相エンコード方向傾斜磁場Gpおよび周波数エンコード方向傾斜磁場Gfのいづれとも対応させることができる。
送信系5は、シーケンサ4から送り出される高周波パルスにより被検体1の生体組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせるために高周波磁場を照射するもので、高周波発振器11と、変調器12と、高周波増幅器13と、送信側の高周波コイル14aとからなる。送信系5では、高周波発振器11から出力された高周波パルスを変調器12で振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、高周波磁場(電磁波)を被検体1に照射する。
受信系6は、被検体1から核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル14bと、増幅器15と、直交位相検波器16と、A/D変換器17とからなる。受信系6では、高周波コイル14bで検出したエコー信号を増幅器15及び直交位相検波器16を介してA/D変換器17に入力して、エコー信号をディジタル信号に変換するとともに、二系列の収集データとして信号処理系7に送る。
信号処理系7は、CPU8と、磁気ディスク及び磁気テープ等の記録装置18と、CRT等のディスプレイ19とからなり、CPU8でフーリエ変換、補正係数計算、画像再構成演算等の処理を行い、得られた画像をディスプレイ19に表示する。またCPU8は、被検体1の断層像のデータ収集に必要な種々の命令を、シーケンサ4を介して、傾斜磁場発生系3、送信系5および受信系6に送る。シーケンサ4は、撮像法によって決まる所定の制御のタイムチャートであるパルスシーケンスに則って、画像再構成に必要なデータを収集するように傾斜磁場発生系3、送信系5および受信系6を制御する。本発明のMRI装置では、パルスシーケンスとして、CPMG法によるパルスシーケンス、例えば高速スピンエコー法のパルスシーケンスが含まれている。このようなパルスシーケンスは、プログラムとしてCPU8内に組み込まれている。
次にこのような構成のMRI装置が実行するCPMG法に基づく高速スピンエコー法による撮像について説明する。図2は図6に示したマルチショットマルチスライス型高速スピンエコー法による全体パルスシーケンスの中の1つのスライスについてのパルスシーケンスを示す図である。このパルスシーケンスは、従来のCPMG法に基づく高速スピンエコー法によるパルスシーケンスにプリパルスとしての傾斜磁場25〜27が追加されており、それ以降のパルス列は、従来のパルスシーケンスとほぼ同様である。
即ち、まずプリパルス25〜27を印加してから一定の時間経過後に、所定の断面を選択する最初のスライス選択傾斜磁場20と同時に90°励起パルス21を印加し、その断面内のスピンを励起する。次いで、その後スライス選択傾斜磁場20と同時に複数の180°反転パルス22を順次に印加し、エコー信号を発生させる。これらエコー信号の発生毎に極性および強度の異なる位相エンコード傾斜磁場23、23’を印加し、各エコー信号に異なる位相エンコード量を与えるとともに、周波数方向の傾斜磁場24を印加してエコー信号を計測する。周波数方向の傾斜磁場に関しては、エコー信号の発生に先立ってディフェイズ傾斜磁場24’が印加される。また図示するパルスシーケンスは、CPMG法を用いたものであり、90°励起パルス21の印加軸x’に対し、180°反転パルス22の印加軸y’は直交し、180°反転パルス印加の間隔は、90°励起パルスと最初の180°反転パルスとの間隔のちょうど2倍になるように設定される。このようなCPMG法に基づく高速スピンエコー法のパルスシーケンスを繰り返し時間TR内に複数スライス分を設定して繰り返し実行し、スライス毎に画像を再構成するのに必要な数のエコー信号を取得する。
パルスシーケンスの90°励起パルスに先立って印加されるプリパルス傾斜磁場25〜27は、90°励起パルスの印加時に変動しない常に一定の傾斜磁場誤差成分を与えるものである。このようなプリパルスを印加することにより、その直前のスライス計測において生じた渦電流による傾斜磁場の不完全性や磁気ヒステリシスによる残留傾斜磁場によって発生した変動残留磁場誤差成分の影響を取り除き、それにより引き起されるスピンの位相誤差を一定のもの、即ち0次及び1次の補正によってその後除去可能な位相誤差にする。
このことを図3により更に説明する。図3は、傾斜磁場が渦電流による不完全性を持つ場合を示す図である。この時定数を持って減衰する傾斜磁場がスピンに与える位相回転量φは、スライス方向を例にとり説明すると式(1)に示すように、傾斜磁場強度Gsと印加時間tに比例する量である。
φ=∫γGs・Sdt=γGs・S・t ・・・(1)
γ:磁気回転比
S:計測空間の中心からスライスまでの距離
ここでプリパルス傾斜磁場25の印加から90°励起パルス21印加までの時間を各スライスについてのパルスシーケンスで一定とすることにより、プリパルス25の残留傾斜磁場が90°励起されたスピンに与える位相回転量φを常に後に0次および1次の補正可能な一定値βにすることができる。このような一定の位相回転量βは、例えば、スライス傾斜磁場の場合、90°励起パルス直後に印加するリフェイズ傾斜磁場20’の強度を調節しておくことにより、CPMG効果を保つように補正することができる。
このことは、図4に示すような磁気ヒステリシスにより残留傾斜磁場が発生している場合も同様であり、図中斜線で示す部分の面積の部分が誤差成分である。このような残留傾斜磁場による誤差成分も、プリパルス傾斜磁場の印加から90°励起パルス印加までの時間を一定にしておくことにより、この誤差成分による位相回転量を一定にすることができ、これも上記と同様な方法により補正により除去できる。
上述のようにプリパルスは、残留傾斜磁場を常に一定にするためのものであるので、その強度は、スポイル傾斜磁場のような強力な傾斜磁場強度は必要とせず、パルスシーケンス内で印加される傾斜磁場と同様の強度、印加時間とすることで十分である。
具体的には、スライス方向については、励起パルスの帯域巾を一定とすると、スライス選択傾斜磁場は、設定スライス厚によってその強度が変化するので、スライス方向の位相誤差成分はスライス厚に反比例の関係となる。従って、プリパルス傾斜磁場25もスライス厚に反比例して、印加強度を変化させることが好ましい。これによりスライス選択傾斜磁場の印加強度に対して線形な位相誤差成分を発生することができるため、最初のスライス選択傾斜磁場直後のリフェイズ傾斜磁場20’印加時にその成分を加算あるいは減算することにより容易に補正することができる。
周波数方向についても、CPMG効果を生かすためには同様に、プリパルス27の印加強度及び印加時間を、ディフェイズ傾斜磁場24’と同様の印加強度、印加時間とし、90°励起パルス21の印加からディフェイズ傾斜磁場24’印加開始までの間にスピンに印加されたプリパルス27による残留傾斜磁場によるスピンの位相回転を補正するためディフェイズ傾斜磁場24’の印加量が調節される。なおディフェイズ傾斜磁場24’の印加量を調節した場合にはそれ以後に印加されるリードアウト傾斜磁場24の印加量もそれに応じて変更する必要がある。
位相エンコード方向については、位相回転量の累積を防ぐために、図示するようにタイミング的に接近して印加されるバイポーラ型のプリパルス26、26’とすることが好ましい。また位相エンコード方向のプリパルスは、位相エンコード数に依存して強度を変化させることが好ましい。即ち、高速スピンエコー法によるパルスシーケンスでは、繰り返し毎に位相エンコード傾斜磁場23、23’の強度が変化する。プリパルス26、26’は、この繰り返しの最初に印加される位相エンコード傾斜磁場の印加強度、印加時間と同様にし、また、90°励起パルス21の印加後にスピンに印加されるプリパルス26,26’による残留傾斜磁場によるスピンの位相回転を補正するため位相回転誤差打消傾斜磁場パルス26”を印加することによって他の方向の傾斜磁場と同様に補正することができ、CPMG効果が保たれる。
このようにプリパルスを印加したパルスシーケンスを繰り返すことにより収集したエコー信号を用いて画像再構成することは従来のMRI装置と同様である。こうして得られた画像は、傾斜磁場の不完全性に起因するアーチファクトが抑制された画像となる。
以上、本発明の一実施形態を図2を参照して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、図2ではスライス方向、位相エンコード方向及び周波数方向の三方向についてそれぞれプリパルス25〜27を印加した場合を示したが、これらは少なくともは一方向について行えば効果がもたらされる。
また、図2では、k空間の計測順序としてシーケンシャルオーダリングの場合を示しているが、計測順序は任意のものとすることができる。
さらに図2ではCPMG法に基づくパルスシーケンスとして高速スピンエコー法による撮像法を示したが、本発明は90°励起パルスと複数の180°反転パルスのシーケンスを複数回繰り返して1回のTRで複数のエコーを計測する撮像法であれば適用することができ、例えば180°反転パルス印加後に、周波数方向の傾斜磁場の反転を繰り返し複数のエコー信号を計測するグラジエントエコーアンドスピンエコー撮像法(GRASE)にも適用することが可能である。即ち上記実施の形態においては、マルチショットマルチスライス撮像法を例に挙げて説明したが、本発明のコンセプトはTRを短縮したマルチショットシングルスライス撮像法においても有効であることは容易に理解され得るであろう。
本発明によれば、位相及び傾斜磁場の高精度の制御が要求されるCPMG法によるマルチスライス撮像において、設定TRやマルチスライス数などにより変動する傾斜磁場誤差成分およびそれによるスピンの位相誤差が与える影響を低減し、位相誤差によるアーチファクトを効果的に抑制することができる。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明にかかるCPMG法に基づく高速高画質が要求されるマルチショットシングルスライスおよびマルチショットマルチスライスパルスシーケンスを有するMRI装置は、医療用画像診断装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明を適用したMRI装置の全体概要を示す図。
図2は本発明のMRI装置に備えられたCPMG法に基づく高速スピンエコー法による撮像シーケンスを示す図。
図3は渦電流による傾斜磁場の不完全性を説明する図。
図4は磁気ヒステリシスによる残留傾斜磁場を説明する図。
図5Aは従来のCPMG法に基づく高速スピンエコー法を説明する図。
図5Bは図5Aのシーケンスによるスピンの挙動を説明する図。
図6はマルチスライス撮像における傾斜磁場誤差成分の変動を説明する図。

Claims (11)

  1. 被検体が配置される静磁場空間に傾斜磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、
    前記被検体の組織を構成する原子の原子核スピンを励起する高周波磁場パルスを発生する高周波磁場パルス発生手段と、
    前記傾斜磁場発生手段と前記高周波磁場パルス発生手段を制御して、少なくとも第1の高周波磁場パルスと第2の高周波磁場パルスとを印加するシーケンスを複数回繰り返すマルチショットパルスシーケンスに基づいて、前記被検体からのエコー信号の計測を制御する計測制御手段と、を備え、
    前記マルチショットパルスシーケンスは、前記第1の高周波磁場パルス印加時の残留傾斜磁場成分がショットに依らず一定となるように、該第1の高周波磁場パルスの印加前に傾斜磁場プリパルスの印加を有する磁気共鳴イメージング装置であって、
    スライス方向の前記傾斜磁場プリパルスは、スライス厚に反比例する印加強度を有して、前記第1の高周波磁場パルスに対して一定の時間間隔を空けて印加されることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 被検体が配置される静磁場空間に傾斜磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、
    前記被検体の組織を構成する原子の原子核スピンを励起する高周波磁場パルスを発生する高周波磁場パルス発生手段と、
    前記傾斜磁場発生手段と前記高周波磁場パルス発生手段を制御して、少なくとも第1の高周波磁場パルスと第2の高周波磁場パルスとを印加するシーケンスを複数回繰り返すマルチショットパルスシーケンスに基づいて、前記被検体からのエコー信号の計測を制御する計測制御手段と、を備え、
    前記マルチショットパルスシーケンスは、前記第1の高周波磁場パルス印加時の残留傾斜磁場成分がショットに依らず一定となるように、該第1の高周波磁場パルスの印加前に傾斜磁場プリパルスの印加を有する磁気共鳴イメージング装置であって、
    位相エンコード方向の前記傾斜磁場プリパルスは、印加タイミングが接近したバイポーラ型であって、位相エンコード数に対応して変化する印加強度を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 被検体が配置される静磁場空間に傾斜磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、
    前記被検体の組織を構成する原子の原子核スピンを励起する高周波磁場パルスを発生する高周波磁場パルス発生手段と、
    前記傾斜磁場発生手段と前記高周波磁場パルス発生手段を制御して、少なくとも第1の高周波磁場パルスと第2の高周波磁場パルスとを印加するシーケンスを複数回繰り返すマルチショットパルスシーケンスに基づいて、前記被検体からのエコー信号の計測を制御する計測制御手段と、を備え、
    前記マルチショットパルスシーケンスは、前記第1の高周波磁場パルス印加時の残留傾斜磁場成分がショットに依らず一定となるように、該第1の高周波磁場パルスの印加前に傾斜磁場プリパルスの印加を有する磁気共鳴イメージング装置であって、
    周波数エンコード方向の前記傾斜磁場プリパルスは、前記第1の高周波磁場パルス印加後に印加されるディフェーズ傾斜磁場パルスと同一の印加量を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記第1の高周波磁場パルスと、前記第2の高周波磁場パルスは、互いに印加軸が回転座標系において直交するように印加されるCPMG法パルスシーケンスであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  5. 請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記CPMG法に基づくマルチショットパルスシーケンスは、マルチショットシングルスライスのパルスシーケンスであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  6. 請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記CPMG法に基づくマルチショットパルスシーケンスは、マルチショットマルチスライスのパルスシーケンスであるであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  7. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記計測制御手段は、前記第1の高周波磁場パルスの印加後の最初の前記第2の高周波磁場パルスの印加前に、前記傾斜磁場プリパルスによって引き起されるスピンの一定の位相回転誤差を打消す傾斜磁場を印加することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  8. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記スライス方向の傾斜磁場プリパルスによって引き起こされるスピンの一定の位相回転誤差を打消す傾斜磁場成分は、前記第1の高周波磁場パルスと同時に印加されるスライス選択傾斜磁場パルスの後に印加されるリフェイズ傾斜磁場パルス中に含まれていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  9. 請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記位相エンコード方向の傾斜磁場プリパルスの印加量は、引き続く計測の最初の位相エンコード傾斜磁場パルスと同一であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  10. 請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記位相エンコード方向の傾斜磁場プリパルスによって引き起こされるスピンの一定の位相回転誤差を打消す傾斜磁場成分は、前記最初の反転する第2の高周波磁場パルスの印加前に印加される位相エンコード方向の位相回転誤差打消傾斜磁場パルスであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  11. 請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記リードアウト方向の傾斜磁場プリパルスによって引き起こされるスピンの一定の位相回転誤差を打消す傾斜磁場成分は、前記ディフェーズ傾斜磁場パルス中に含まれていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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