JP4318491B2 - りん除去方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、下水処理場におけるりん除去装置に関し、酢酸濃度を演算するとともに、降雨によって低下したりん除去率が回復するまでの期間を降雨影響指数として演算するようにしたりん除去装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
閉鎖性水域の富栄養化を防止するため,窒素・りんを除去対象とした下水高度処理の導入が進んでいる。
図14は、従来より一般に使用されている嫌気−好気活性汚泥法によるりん除去装置の構成説明図である。
図において、1は下水Aが流入する第1沈殿池である。
2は嫌気槽3と好気槽4とを有する生物反応槽であり、第1沈殿池1によって処理された下水Aが流入する。
【0003】
5は生物反応槽2によって処理された下水Aが流入する第2沈殿池であり、この沈殿池での処理水Bが河川などに放流される。
6は第2沈殿池5と嫌気槽3とを連通し、返送汚泥Cを送る返送汚泥管である。なお、第2沈殿池5の余剰汚泥Dは、外部に排出される。
【0004】
7は第1沈殿池1に設けられた第1全りん計、8は第2沈殿池5に設けられた第2全りん計、9は、装置の処理区域内に近くに設けられた降雨量計、11は流入下水Aの水温を測定する水温計である。
上記第1全りん計7、第2全りん計8、降雨量計9および水温計11の測定結果は監視室Eの監視盤E1で監視される。
【0005】
上述のような、嫌気−好気活性汚泥法は,嫌気槽によってりん除去を行う微生物を優先的に増殖させ,その微生物の持つりんの放出と過剰摂取の性質を利用して、りん除去を行うものである。
【0006】
その他、下水の脱りん方法の従来例としては、特開2000−213057号公報が知られている。ここに記載された下水の脱りん方法は、
有機酸を添加する添加タイミング1として、処理水のりん濃度が、目標濃度を24時間以上の時間として予め定めた設定時間aを経過する前に超えると予想された場合、連続的に添加する。但し上記予測が解消されたとき、または添加を開始してから設定時間bを経過したとき、のいずれかの時点で添加を停止する。
有機酸を添加する添加タイミング2として、過去のデータより統計的にりん除去が悪化すると予測される期間d中は連続的に添加する。というものである。
【0007】
また、下水の脱りん方法の従来例としては、特開2001−38380号公報が知られている。ここに示された技術は、時間降雨量に応じて、嫌気槽へメタノール等の有機物を注入したり、最初沈殿池の運転池数を削減したり、凝集剤を注入するなどの対応を行うというものである。
また、特開平11−169885号公報には、所定時間内の総雨量ならびにDO、ORPを指標として凝集剤を注入する方法が示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
嫌気−好気活性汚泥法は優れた処理方法であるが,以下のような問題
点がある。
(1)降雨があるとりん除去性能が低下する。
【0009】
(2)降雨が終わったあともしばらくの間は,りん除去性能が回復しない。
現状においては、降雨後のりん除去性能の悪化は、処理水のりん濃度で確認している。従って,降雨後などにおいては対策が後手になり、りんの規制値を超過する恐れがあった。
【0010】
図15は降雨量と流入酢酸および処理水の関係について示す実処理場における実験結果である。
【0011】
図15において、横軸Xは日付、左縦軸Yは降雨量(mm)および酢酸濃度(mg/l)を表し、また、右縦軸Yは全りん濃度(mg/L)を表わし、Fは流入水全りん濃度、Gは有機酸の代表的な物質である流入酢酸濃度、Hは処理水全りん濃度、Iは降雨量を表わしている。
【0012】
図15のAの時点に着目すると、降雨の多いときは酢酸が通常レベルまで回復するのに時間がかかっていることがわかる。即ち、降雨後は流入酢酸濃度が0mg/lまで低下しており、その後しばらくは処理水のりん濃度が上昇(りんの除去性能が悪化)している。
【0013】
また、Bで示す時点でも降雨があった後は流入酢酸濃度が0mg/lまで低下し、その後しばらくは処理水のりん濃度が上昇していることが分かる。このB点では、降雨が少ないときは酢酸の回復が早く、りん除去が良好で、処理水全りん濃度も低いことを示してる。このように、りん除去性能を判断するためには、酢酸などの有機酸濃度の回復と流入りん濃度の監視が重要である。
【0014】
また、流入酢酸濃度と処理水のりん濃度の関係は酢酸濃度が約20mg/l以上になると処理水のりん濃度が低下(処理性能が上昇)することが分かる。
上記のように,りんの除去性能を判断するためには,酢酸濃度の回復と流入りん濃度の監視が重要である。
【0015】
大量の降雨があり、処理水がりんの規制値を超過する恐れがある場合、凝集剤の注入などの対策が考えられるが、投入する凝集剤の量や注入するタイミングが難しく、安全を考慮した場合、薬品の過剰注入になる可能性がある。
【0016】
また、特開2001−38380号公報に示された、時間降雨量に応じて嫌気槽へメタノール等を注入するなどの方法は、時間当たりの降雨量に応じて、有機物の注入や運転池数の削減を行うものであるが、降雨後において、時間降雨量だけの指標では有機物の注入や沈殿池の運転を適切に行うことは困難である。
【0017】
また、特開平11−169885号公報に示された、所定時間内の総降雨量SRtならびにDO、ORPを指標として凝集剤を注入する方法は、注入開始の判断方法や凝集剤の注入継続時間について示されたもので、継続時間は総降雨量判定値SR2を設けて、SRt<SR2の場合を継続時間T2nとし、SRt≧SR2の場合を継続時間T3nとして、ともに5日以内の継続時間を設定している。しかし、降雨後の時間経過に伴うりん除去能力の回復程度はわからず、継続時間の設定も5日以内と記されるにとどまるという問題がある。
【0018】
いずれの引用例も降雨後におけるりん除去の対応については、判定の指標に乏しく、適切な運転を適切な期間行うことが困難である。注入の停止が早すぎると、りん除去の悪化を招く恐れがあり、注入の停止が遅すぎると、過剰注入になり薬品代等の損失につながる。このように、降雨時だけでなく降雨後の判断指標も重要であるが、現在では降雨後の明確な指標がなく経験や勘に頼っているのが実状である。
【0019】
【特許文献1】
特開2000−213057号公報
【0020】
【特許文献2】
特開2001−38380号公報
【0021】
【特許文献3】
特開平11−169885号公報
【0022】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、降雨等によりりん除去性能が悪化し、規制値を超過する恐れのある場合に、降雨影響指数を演算し、りん除去に関連のある他の指標と組み合わせることで、りん除去能力を容易かつ定量的に予測出来るりん除去装置を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1のりん除去方法においては、
下水が流入する第1沈殿池と、
この第1沈殿池によって処理された下水が流入する嫌気槽と好気槽とを有する生物反応槽と、この生物反応槽からの下水が流入する第2沈殿池と、前記第一沈殿池に流入した下水の水質を測定する水温計、全窒素計及びpH計と、りん除去装置の処理区域内に設けられた降雨量計と、前記水温計、全窒素計、pH計及び降雨量計の測定データを入力する演算装置を備え、下記の工程によりりん除去を行うことを特徴とするりん除去方法。
記
1)水質基準を満足するために必要な酢酸濃度を判断する工程と、
2)一回の降雨の積算降雨量と前記水質基準を満足するために必要な酢酸濃度の相関を判断する工程と、
3)前記積算降雨量から前記水質基準を満足するまでに必要な酢酸濃度に回復するまでの回復期間を積算降雨量の対数を変数とする所定の演算式により演算する工程と、
4)降雨後に前記回復期間を一定速度で減少させて演算する工程と、
5)断続的な降雨を想定し数時間後に降雨が再開するような場合、降雨後には、積算降雨量を逆算して、仮の値として演算装置に記憶させる工程と、
6)酢酸濃度の予測式を作成する工程と、
7)前記酢酸濃度の予測式を用いて酢酸の予測値を演算する工程と、
を含むことを特徴とするりん除去方法。
【0024】
請求項2においては、請求項1記載のりん除去方法において、
前記酢酸の所定の濃度は20〜25mg/lであることを特徴とする
【0025】
請求項3においては、請求項1または2に記載のりん除去方法において、
前記演算装置に全りん計のデータを入力し、前記予測した酢酸濃度との関係に基づいてそれぞれの濃度レベルを複数段階に設定し、それぞれの濃度レベルに応じて異なる警報を発するようにしたことを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図である。図において、図14に示す従来例と同一機能を有するものは同一記号を付している。
以下、図14と相違部分のみ説明する。
【0028】
20は第1沈殿池1の出口に設けられたpH計、21は全窒素全りん計である。22は監視室であり、監視盤23及び第1表示装置24が設置されている。25は水質分析室であり、演算装置26及び第2表示装置27が設置されている。
【0029】
監視盤23及び演算装置26には全窒素全りん計21、pH計20、降雨量計9、水温計11及び第2全りん計8からの信号が入力され、監視盤22では各々の信号が表示される。
【0030】
図2は演算装置25における酢酸予測演算のための入力信号の処理フローを示すものである。処理フローに従って説明する。
演算開始のステップ(1)として酢酸予測に用いるオンライン計測値(水温,流入全窒素,pH,降雨量のデータ)が入力される。
【0031】
ステップ(2)において、降雨量から積算降雨影響指数を算出する。
即ち、降雨量データから積算降雨量を算出し、更にその積算降雨量を変数変換して降雨影響指数を演算する。
以下、降雨影響指数について説明する。
【0032】
図3は、酢酸濃度(X軸)と処理水全りん濃度(Y軸)の関係を示す図である。図に示すように、ばらつきはあるものの概ね20〜25mg/l程度の酢酸濃度があれば処理水全りん濃度が1mg/lとなり、水質基準を満足する良好なりんの処理ができることがわかる。即ち、りん除去性能を判断するためには、有機酸濃度の回復の監視が重要であり、良好にりん除去を行うためには、概ね20mg/l程度以上の酢酸濃度が必要である。
【0033】
図4は2001年8月13日〜12月12日の間の1回の降雨の積算降雨量(X軸)と酢酸濃度20mg/lまでの回復日数(Y軸)を整理した結果を示す図である。積算降雨量の対数と酢酸濃度20mg/lまでの回復日数との間には、良好な相関が見られる。
つまり、降雨が多いほど、酢酸濃度の回復は遅く、その関係は、概ね以下の式で表わすことができた。
【0034】
酢酸20mg/lまでの回復日数[日]=1.46×log(積算降雨量)−1.39(logの底はe(自然対数)・・・図4のグラフから求まる相関式)
酢酸濃度が20mg/lまで回復する期間は、りん除去に有効な酢酸が少なく、高濃度のりんが流入すると流入りんを十分に処理できない可能性が高い。本発明では、このりんが処理できない可能性のある酢酸20mg/lまでの回復期間を「降雨影響指数」で表わす。
【0035】
次に、時間経過とともに変化する降雨影響指数の具体的な演算方法の一例を示す。この演算処理は1時間に1回行う(降雨量などのオンラインデータは一時間ごとのデータで表示・記録されることが多い)ものとする。
現在時間tにおける積算降雨量Atは、下記のように表記できる。
【0036】
積算降雨量At=時間降雨量Bt+積算降雨量At − 1・・・(1)
ここで、(t−1)は、1時間前の値である。
また、降雨影響指数Ctは、前記より以下のようになる。
降雨影響指数Ct=a1×log(積算降雨量At)+b ・・・ (2)
(a1,b:定数・・・処理場毎に異なる)
【0037】
図5は降雨影響指数の演算方法の説明図であり、降雨の状況に応じた演算処理のマトリックスを示すものである。条件は「降雨継続中」、「降雨開始」、「降雨後」、「降雨なし」の4種類である。
「降雨継続中」と「降雨開始」は、前記(1)、(2)式によって、降雨影響指数Ctを算出する。
【0038】
「降雨後」は、降雨影響指数を一定速度で減少させる。
降雨影響指数Ct=降雨影響指数(Ct −1)−1/24・・・(3)
ここで、降雨影響指数は、もともと回復日数であるため、1時間ごとの減少を1/24時間とした。また、降雨後は演算処理に積算降雨量を用いていないが、たとえば断続的な降雨を想定すると数時間後に降雨が再開するような場合も多くある。
【0039】
そこで、降雨後は次式のように降雨影響指数Ctから、積算降雨量Atを逆算して、仮の値として演算装置に記憶させた。
積算降雨量At=e{(降雨影響指数Ct−b)/a1}・・・(4)
この結果、降雨再開時でも前回の積算降雨量を加味した降雨影響指数を算出することができる。
最後に、「降雨なし」の時は、演算を行わないものとする。
【0040】
図6は、これらの演算によって得られた時間降雨量b(Y軸)と経過時間(X軸)と降雨影響指数aの関係を示すもので、降雨が多いほど降雨影響指数が高く、その影響が数日に渡ることを示している。
図7,8は2001年9月1〜10月31までの降雨影響指数a(Y軸)と流入水全りん濃度qおよび処理水全りん濃度p(Y軸)の経時変化を示す図である。りん除去悪化はいくつかの要因が関連しているため単純に説明することはできないが、本発明で演算した降雨影響指数はりん除去悪化の期間を概ね表わしており、りん除去能力を説明する1つの指標として利用が可能である。
【0041】
降雨影響指数を計算する上で、係数は処理場ごとに異なる。上述した実施例中の係数は実験を行った処理場における一例である。ただし、式(2)に示した積算降雨量の対数を用いるという考え方は、他の処理場でも広く利用することができる。前記では統計的に式を求めたが、物理的な現象からも式(2)は理に適っているといえる。以下にこの式の考え方について示す。
【0042】
管渠内の堆積汚泥が酢酸の生成源であるため、堆積汚泥がなければ酢酸の生成ができない。管渠内の堆積汚泥量の変化要因は主に以下の2つと考えられる。
1.堆積汚泥量の減少:降雨によるフラッシュアウト
2.堆積汚泥量の増加:処理区域内からの汚泥負荷の流入
【0043】
図9は積算降雨量と管渠内の堆積汚泥量の関係を示す概念図である。
この概念図は少雨のときは降雨量にほぼ比例して管渠内に堆積した汚泥が流されるのに対し、降雨量がある一定値に達すると管渠内の汚泥はほとんどすべてフラッシュアウト(Z点)され、一定値を超過した降雨量分は堆積汚泥がないため何ら影響を及ぼさないことを示している。
【0044】
この曲線は対数で表わすことができ、積算降雨量がX2の場合、降雨後の堆積汚泥量S2は概ね下記のように示すことができる。
堆積汚泥量S2=k1・log(積算降雨量X2)+k2・・・(5)
ここで、k1、k2は定数である。
【0045】
また、酢酸20mg/lを生成するために必要な堆積汚泥量をS1とする。酢酸20mg/lを生成するために不足している汚泥量ΔSはΔS=S1-S2である。
【0046】
一方、堆積汚泥量は、処理区域内の汚泥負荷の流入によって増加する。管渠へ流入し、堆積する1日当たりの汚泥量をSdとすれば、酢酸20mg/lまで回復するために必要な日数D20は下記のように表わすことができる。
【0047】
(6)式に(5)式を代入すると
D20=(S1−k1・log(積算降雨量X2) −k2)/Sd・・・(7)
酢酸20mg/lを生成するために必要な汚泥量S1、1日当たりに堆積する汚泥量Sdは、ほぼ水温が一定の期間であれば、定数とみなせる。
【0048】
したがって、
D20=(k3−k1・log(積算降雨量X2) −k2)/k4・・・(8)
(k3、k4は定数)
定数をあらたに書き直すと
D20=k5・log(積算降雨量X2)+k6・・・(9)
(k5、k6は定数)
以上のように統計的に求めた、積算降雨量の対数を用いるという考え方は、(9)式に示すように物理的に考えても一致し、他の処理場においても広く利用できることを示唆している。
【0049】
図2に戻り、
ステップ(3)において、水質試験における酢酸の手分析データを入力する。
【0050】
ステップ(4)において、酢酸手分析データの入力の有無をみる。
なお、手分析データはコンポジットサンプルではなくスポットサンプルを用いる。この手分析データを5〜60データほど入力する。
ステップ(5)において、上述の(1),(2),(3)のステップで得た値に基づいて多変量解析を行なう。
【0051】
ステップ(6)において、酢酸の予測式を作成し、式の更新を行なう。
以下に多変量解析で得られた結果と、予測式の一例を示す。
多変量解析結果 寄与率 R2=0.83
酢酸濃度の予測式は、以下のとおりである。
【0052】
Y=0.890x1+0.878x2−22.5x3−0.699x4+143.1
ここで、x1は流入下水の全窒素 x2は流入下水の水温
x3は流入下水のpH x4:降雨影響指数
【0053】
ステップ(7)において、酢酸の予測値(濃度)を演算する。なお、ステップ(4)において、手分析データがなかった場合は上述の(1),(2)のステップで得た値のみを用いて酢酸の予測値(濃度)を演算する。
【0054】
図11はA下水処理場における酢酸の実測値と予測値を示す図であり、横軸に測定日、縦軸に酢酸濃度(mg/l)を示している。なお、解析に用いた酢酸の手分析値は平日における1日1回のデータと通日試験における2時間おきの12回のデータを過去3ヶ月間分入力した結果である。
図によれば、酢酸の実測値(イで示す線)と酢酸予測値(ロで示す線)がほぼ一致していることが分かる。
【0055】
図12は同様にしてB下水処理場における酢酸の実測値と予測値を示す図であり、横軸に測定日、縦軸に酢酸濃度(mg/l)を示している。図によれば、図11に示す場合と同様、酢酸の実測値(イで示す線)と酢酸予測値(ロで示す線)がほぼ一致していることが分かる。
【0056】
ステップ(8)において、図10は酢酸濃度と流入りん濃度から警報レベルを決定するための概念図であり、横軸に酢酸濃度、縦軸に流入全りん濃度を示している。
図10において、酢酸濃度及び流入全りん濃度をレベル1〜レベル5まで設定する。例えば酢酸濃度は0〜5,5〜10,10〜20,20〜30,30mg/l以上の5段階とし、流入全りん濃度は0〜1,1〜2,2〜3,3〜4,4mg/l以上の5段階とする。
【0057】
ここでは、図示のように流入全りん濃度、酢酸濃度との関係から警報レベルを0レベルを警報解除として4段階に設定する。即ち、酢酸濃度が低く流入全りん濃度が高い場合には警報レベルは高くなり、酢酸濃度が高く流入全りん濃度が低い場合には警報レベルは低くなって警報解除となる。
【0058】
このような設定は処理場ごとに変化するものであり、例えば積算降雨量が20mm未満の場合は警報レベルを一段階下げ、積算降雨量が100mm以上の場合は警報レベルを一段階上げる。また、降雨が1ヶ月なかった場合は警報レベルを下げ、冬季に積算降雨量が20mmを超えた場合には流入全りん濃度に関係なくすぐにレベル2の警報を発するなど、処理場ごとの特性を反映させることによってより確度の高い警報を発することができる。
【0059】
図13は図1に示す監視室22と水質分析室25内に配置される表示装置24及び27表示内容を示すもので、横軸に日付、縦軸に降雨量、流入全りん、処理全りん及び本発明により演算した酢酸の予測値を示すものである。10/14日時点では酢酸の予測値が2mg/l、流入全りんが3.5mg/lで、メッセージとしてりん除去悪化警報レベルが3であることを示している。
【0060】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば嫌気−好気活性汚泥法の代わりに嫌気−無酸素−好気法など嫌気槽を含む生物学的りん除去法であれば良い。また、計器は全窒素計の代わりにUV計などで有機物濃度を測定しても良い。したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1によれば、下水が流入する第1沈殿池と、
この第1沈殿池によって処理された下水が流入する嫌気槽と好気槽とを有する生物反応槽と、この生物反応槽からの下水が流入する第2沈殿池と、前記第一沈殿池に流入した下水の水質を測定する水温計、全窒素計及びpH計と、りん除去装置の処理区域内に設けられた降雨量計と、前記水温計、全窒素計、pH計及び降雨量計の測定データを入力する演算装置を備えタリン除去方法であって、
1)水質基準を満足するために必要な酢酸濃度を判断する工程と、
2)一回の降雨の積算降雨量と前記水質基準を満足するために必要な酢酸濃度の相関を判断する工程と、
3)前記積算降雨量から前記水質基準を満足するまでに必要な酢酸濃度に回復するまでの回復期間を積算降雨量の対数を変数とする所定の演算式により演算する工程と、
4)降雨後に前記回復期間を一定速度で減少させて演算する工程と、
5)断続的な降雨を想定し数時間後に降雨が再開するような場合、降雨後には、積算降雨量を逆算して、仮の値として演算装置に記憶させる工程と、
6)酢酸濃度の予測式を作成する工程と、
7)前記酢酸濃度の予測式を用いて酢酸の予測値を演算する工程と、
を含んでりん除去を行うので、次のような効果がある。
【0062】
(1)これまで、りん除去の悪化は経験や勘によって予測されてきたが、本方法では、既存の計器を利用して酢酸濃度や降雨影響指数を演算することにより容易かつ定量的にりん除去性能を把握することが可能なりん除去方法を実現することができる。
(2)その結果、りんの除去の悪化に対して、凝集剤を適切に注入するなどの対応が可能なりん除去方法が得られる。
【0063】
(3)本方法では、酢酸を直接測定する計器が不要なので、装置全体を安価に構成することができる。
(4)本方法では、演算処理をプログラミングできる計算機があれば良く、既存のパソコン等を利用した監視装置に容易に組み込むことが出来る。
(5)また、流入全りんと酢酸濃度の関係から警報レベルを設定したので適切な量の凝集剤や有機源を注入するなどの対策が立てやすいという効果がある。
【0064】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す要部構成説明図である。
【図2】図1に示す演算装置の演算フローを示す説明図である。
【図3】酢酸濃度(X軸)と処理水全りん濃度(Y軸)の関係を示す図である。
【図4】積算降雨量と酢酸濃度20mg/lまでの回復日数を示す図である。
【図5】降雨影響指数の演算方法の説明図である。
【図6】時間降雨量と経過時間と降雨影響指数の関係を示す図である。
【図7】降雨影響指数と流入水全りん濃度および処理水全りん濃度の経時変化を示す図である。
【図8】降雨影響指数と流入水全りん濃度および処理水全りん濃度の経時変化を示す図である。
【図9】降雨量と管渠内の堆積汚泥量の関係を示す概念図である。
【図10】流入りん濃度と酢酸濃度に基づく警報レベルの説明図である。図である。
【図11】下水処理場における実験結果を示す図である。
【図12】下水処理場における実験結果を示す図であ
【図13】表示装置の表示例を示す説明図である。
【図14】りん除去装置の従来例を示す要部構成図である。
【図15】降雨量と流入酢酸および処理水の関係について示す図である。
【符号の説明】
1 第1沈殿池
2 生物反応槽
3 嫌気槽
4 好気槽
5 第2沈殿池
6 返送汚泥管
8 第2全りん計
9 降雨量計
11 水温計
20 pH計
21 全窒素全りん計
22 監視室
23 監視盤
24,27 表示装置
25 水質分析室
26 演算装置
A 流入下水
B 処理水
C 返送汚泥
D 余剰汚泥
Claims (3)
- 下水が流入する第1沈殿池と、
この第1沈殿池によって処理された下水が流入する嫌気槽と好気槽とを有する生物反応槽と、この生物反応槽からの下水が流入する第2沈殿池と、前記第一沈殿池に流入した下水の水質を測定する水温計、全窒素計及びpH計と、りん除去装置の処理区域内に設けられた降雨量計と、前記水温計、全窒素計、pH計及び降雨量計の測定データを入力する演算装置を備え、下記の工程によりりん除去を行うことを特徴とするりん除去方法。
記
1)水質基準を満足するために必要な酢酸濃度を判断する工程と、
2)一回の降雨の積算降雨量と前記水質基準を満足するために必要な酢酸濃度の相関を判断する工程と、
3)前記積算降雨量から前記水質基準を満足するまでに必要な酢酸濃度に回復するまでの回復期間を積算降雨量の対数を変数とする所定の演算式により演算する工程と、
4)降雨後に前記回復期間を一定速度で減少させて演算する工程と、
5)断続的な降雨を想定し数時間後に降雨が再開するような場合、降雨後には、積算降雨量を逆算して、仮の値として演算装置に記憶させる工程と、
6)酢酸濃度の予測式を作成する工程と、
7)前記酢酸濃度の予測式を用いて酢酸の予測値を演算する工程と、
を含むことを特徴とするりん除去方法。 - 前記酢酸の所定の濃度は20〜25mg/lであることを特徴とする請求項1記載のりん除去方法。
- 前記演算装置に全りん計のデータを入力し、前記予測した酢酸濃度との関係に基づいてそれぞれの濃度レベルを複数段階に設定し、それぞれの濃度レベルに応じて異なる警報を発するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のりん除去方法。
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