JP4316914B2 - 失火検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒内燃機関において失火の有無を精度よく検出する装置に関する。特に、路面の凹凸等の影響がある場合でも精度よく失火の回数を気筒ごとにカウントできる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃エンジンの点火周期より短い、前記エンジンのクランク軸の所定回転角度周期毎に前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、検出したエンジン回転速度を前記クランク軸1回転に相当する周期で平均化する平均化手段とを備え、前記エンジンの燃焼状態を検出する内燃エンジンの燃焼状態検出装置において、前記平均化手段により算出されたエンジン回転速度の平均値と、該平均値が算出された時点から所定点火周期前に算出された平均値との偏差量を算出する偏差量算出手段と、該偏差量を前記点火周期に相当する周期に基づき平均化する偏差量平均化手段と、該平均化された偏差量に基づいて前記エンジンの燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段とを設けることで、失火を検出する装置が知られている(特許文献1参照)。
このような構成の失火検出装置を用いることで、失火を特徴づける周波数成分を効果的に抽出でき、十分精度の良い失火検出装置が実現できたとされていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−119536号公報(第2頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1で十分精度の高い失火検出装置が実現できたのは、失火を特徴づける周波数成分を効率的に抽出し、それより低い周波数と高い周波数にあるノイズを効率的にカットできるフィルタが実現できたためである。この発明では、4気筒内燃機関を例として取り上げているが、6気筒内燃機関においてはこのフィルタではノイズを十分にカットできないことも考えられる。なぜなら、内燃機関の気筒数が多くなると、1回の爆発に対応したクランク軸の回転角度が小さくなり(1回の爆発でクランク軸が回転する角度は、4気筒エンジンでは180°、6気筒エンジンでは120°である。)、回転所要時間の検出精度が低下するからである。このため、内燃機関の気筒数が6気筒、8気筒と増えることで、失火を特徴づける周波数を効率的に抽出するフィルタが実現できないおそれがある。
本発明は、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数と、この倍の周波数とから失火を精度よく検出するようにした失火検出装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、失火を検出するために、失火に起因するクランク軸の回転変動の2つの周波数、例えば主周波数と、この倍の周波数に感度のピークを持つ2つのフィルタを用いる。また、第3のフィルタを用いることによって悪路の影響を失火であると誤判断することなく精度よく失火のみを検出できる失火検出装置を実現する。
【0006】
上記目的は、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段を備えた失火検出装置において、信号処理手段は、失火に起因するクランク軸の回転変動の2つの周波数に感度のピークを持つ2つのフィルタと、2つのフィルタの出力の両方または片方に遅延を加える遅延手段と、2つのフィルタの出力を遅延させた値がそれぞれの閾値を超えた場合に失火が発生したと判定を行う判定手段とから構成される失火検出装置によって達成される。
【0007】
また、上記目的は、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段を備えた失火検出装置において、信号処理手段は、失火に起因するクランク軸の回転変動の2つの周波数に感度のピークを持つ2つのフィルタと、2つのフィルタの出力の両方または片方を記憶してシフトを加えるシフト手段と、2つのフィルタの出力をシフトさせた値がそれぞれの閾値を超えた場合に失火が発生したと判定を行う判定手段とから構成される失火検出装置によって達成される。
【0008】
また、上記目的は、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段を備えた失火検出装置において、信号処理手段は、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数とこの倍周波数に感度のピークを持つ2つのフィルタと、2つのフィルタの出力がそれぞれの閾値を超えた場合に失火が発生したと判定を行う判定手段とから構成される失火検出装置によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の構成の一例を示す図である。この図を用いて本発明の第1の実施形態を説明する。
本失火検出装置は、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段1と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段2に大きく分けられる。
【0010】
回転検出手段1は、リングギア11と磁気センサ12からなる。リングギア11には、図2に示すような歯が取り付けられている。歯が磁気センサ12に接近すると磁気センサ12の出力が変化し、磁気センサ12の出力の変化の間隔を計測することで一定角度を回転するのに要する回転所要時間が計測される。図2は特に6気筒内燃機関に適したリングギア11である。6気筒内燃機関の場合、クランク軸が1回転する間に、3つの気筒が爆発するので、図2(a)、(b)のそれぞれのリングギア11で矢印付の円弧で示された歯と歯の間の区間のそれぞれは、一つの気筒が爆発する間にリングギア11が回転する角度とみなせる。図2(a)の歯間区間はエンジン回転数が低いとき、図2(b)の歯間区間はエンジン回転数が高いときの1つの気筒が爆発する間にリングギアが回転する角度に相当する。
【0011】
本失火検出装置における信号処理手段2の構成の一例を図3に示す。信号処理手段2は、図4に示すように、失火に起因するクランク軸回転変動の主周波数(0.5次)に感度のピークを持つフィルタ(a)21と、この倍の周波数に特性のピークを持つフィルタ(b)22と、これら2つのフィルタ出力を遅延させる遅延手段24、25と、2つのフィルタの出力を遅延させた値が図5に示す領域Aに属することによって閾値を超えたときに失火が発生したと判定する判定手段23とから構成される。遅延手段24、25は両方あっても良いし、片方だけでも良い。図5において、領域Aは記憶媒体にマップとして記憶しておくことができる。
【0012】
一般に、失火が発生しているとき、図2に示すようなリングギア11の歯と歯の間の回転所要時間は、図6のようになる。失火発生時点と、その次の爆発での回転所要時間は、失火によって長くなっていることがこれらの図からわかる。図6(a)は一つの気筒がサイクルごとに失火する場合(常時失火)の回転所要時間で、図6(b)は一つの気筒が数サイクルに一回失火する場合(間欠失火)の回転所要時間である。図6(a)の場合の回転所要時間を周波数解析すると、図7のようになる。ここで、周波数がn次ということは、クランク軸1/n回転に同期した成分であることを意味する。例えば、0.5次とはクランク軸2回転に同期した成分、1次とはクランク軸1回転に同期した成分である。図7から、一つの気筒が常時失火している場合、0.5次の成分が大きい、つまり、主周波数が0.5次であるので、0.5次成分に感度のピークをもつフィルタに回転所要時間を入力し、その出力が一定の閾値を超えた場合に失火が起こったと判定することができる。
【0013】
一方で、細かい凹凸のある路面を走行する場合の回転所要時間の一例は図8のようになり、これを周波数解析すると図9のようになる。図9からは、細かい凹凸のある路面を走行時の回転所要時間の周波数成分は、0.5次付近にも分布しており、0.5次成分だけでは十分な失火検出精度が得られない。そこで、1次成分も併せて用いることで失火検出精度の向上を図る。
【0014】
失火が発生したときの回転所要時間、0.5次成分と1次成分の変化の一例を図10に示す。この図は、0.5次成分は失火が発生してから6爆発後に、1次成分は失火が発生してから3爆発後にそれぞれ極小値をとることを示す。従って、0.5次成分が閾値より小さくなり、かつ、その3爆発前に1次成分が閾値より小さかったとしたら、0.5次成分が閾値より小さくなった時より6爆発前に失火が起こっていたと判定することができる。
【0015】
従って、図3に示すような信号処理装手段2で、図4に示すような失火に起因するクランク軸の回転変動の2つの周波数、すなわち主周波数とこの倍周波数に感度のピークをもつ2つのフィルタ21、22に回転所要時間を入力したときの出力の、両方または片方に遅延を加えることで2つのフィルタの応答タイミングを合わせ、タイミングを合わせたフィルタ出力の両方がそれぞれの閾値を越えたときに失火であると判定する。こうすることによって、0.5次成分に加えて1次成分の情報も失火検出に加えることができ、失火検出の精度が向上する。
【0016】
以上のように、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段1と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段2を備えた失火検出装置において、信号処理手段2は、失火に起因するクランク軸の回転変動の2つの周波数に感度のピークを持つ2つのフィルタと、2つのフィルタの出力の両方または片方に遅延を加える遅延手段24、25と、2つのフィルタの出力を遅延させた値がそれぞれの閾値を超えた場合に失火が発生したと判定を行う判定手段23とから失火検出装置が構成される。
【0017】
第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態における失火検出装置は、図1に示すように、内燃機関のクランク軸3が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段1と、回転所要時間を処理することで失火を検出する信号処理手段2から構成される。このことは第1の実施形態と同じである。信号処理手段2の構成は、図3から遅延手段24、25を除いたものである。フィルタ(a)21、フィルタ(b)22の係数によっては、遅延手段が不用になる。第2の実施形態は遅延手段が不用になる実施形態である。
【0018】
では、2つのフィルタ21、22がどういうときに遅延手段が不用になるかについて説明する。
図10に示す1次成分は、図11(a)に示されるようなフィルタに回転所要時間を入力したときに得られる出力である。このフィルタを、図11(b)のように、3爆発分過去にメモリに記憶した情報をシフトすると、フィルタが出力する1次成分は図12に示される1次成分のようになり、0.5次成分と極小値を取る時点が一致する。従って、第1の実施例のように、遅延手段によって応答のタイミングを合わせる必要がない。
【0019】
従って、図3に示すような信号処理装手段2から遅延手段24、25を除いたもので、図4に示すような失火に起因するクランク軸3の回転変動の2つの周波数、すなわち主周波数とこの倍周波数に感度のピークをもつ2つのフィルタ21、22に回転所要時間を入力したときのフィルタ出力の両方が、それぞれの閾値を越えたときに失火であると判定する。こうすることによって、0.5次成分に加えて1次成分の情報も失火検出に加えることができ、失火検出の精度が向上する。
【0020】
以上のように、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段1と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段2を備えた失火検出装置において、信号処理手段2は、失火に起因するクランク軸の回転変動の2つの周波数に感度のピークを持つ2つのフィルタと、2つのフィルタの出力の両方または片方を記憶してシフトを加えるシフト手段と、2つのフィルタの出力をシフトさせた値がそれぞれの閾値を超えた場合に失火が発生したと判定を行う判定手段23とから失火検出装置が構成される。
【0021】
また、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段1と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段2を備えた失火検出装置において、信号処理手段2は、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数とこの倍周波数に感度のピークを持つ2つのフィルタ21、22と、2つのフィルタ21、22の出力がそれぞれの閾値を超えた場合に失火が発生したと判定を行う判定手段23とから失火検出装置が構成される。
【0022】
第3の実施形態について説明する。
第1、第2の実施形態は、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数とこの倍周波数に感度のピークをもつ2つのフィルタの両方が条件を満たしたときに失火を判定することで、0.5次成分に加えて1次成分の情報も失火検出に加えることができ、低周波数から高周波数までのノイズを除去できるものであるが、失火の頻度が車体振動の共振点に一致した場合、クランク軸の回転変動は、失火のみならず車体振動の影響も受ける。このときのクランク軸の回転変動は、0.5次成分に近い周波数で、しかも振幅も失火によるクランク軸の回転変動に近いので、第1、第2の実施形態では精度が不十分である場合がある恐れがある。そこで、車体振動の除去性能を向上させた実施形態をここで述べる。
【0023】
第3の実施形態における失火検出装置は、図1に示すように、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段1と、回転所要時間を処理することで失火を検出する信号処理手段2から構成される。このことは第1、第2の実施形態と同じである。
回転検出手段1については第1、第2の実施形態と同じである。
【0024】
信号処理手段2の構成の一例を図13に示す。この構成は、図3に示す第1の実施形態の構成に、フィルタ(c)26と、遅延27とを追加したものである。
【0025】
フィルタ(c)26の周波数特性を図14に示す。フィルタ(c)はフィルタ(a)と同じように失火に起因するクランク軸回転変動の主周波数(0.5次)付近に感度のピークを持ち、0.5次成分に対する感度はフィルタ(a)と同じであるが、0.5次成分より小さな周波数に対する感度がフィルタ(a)より小さく、0.5次成分より大きな周波数に対する感度がフィルタ(a)より大きい。また、この逆で、0.5次成分より小さな周波数に対する感度がフィルタ(a)より大きく、0.5次成分より大きな周波数に対する感度がフィルタ(a)より小さくても良い。いずれにしても、0.5次成分についてはフィルタ(a)とフィルタ(b)の感度は同じに設定し、その前後の周波数については若干ずらしておく。
【0026】
このようにフィルタの感度を設計すると、クランク軸回転変動の主周波数(0.5次)が3つのフィルタに入力されると、フィルタ(a)とフィルタ(c)はほぼ同じ値を出力し、入力の周波数が0.5次成分から離れるにつれ、フィルタ(a)とフィルタ(c)の出力の差は大きくなる。従って、フィルタ(a)の出力とフィルタ(c)の出力の比が、入力周波数がどれくらい0.5次に近いかを示す指標となる。このように考えると、図15に示すように、フィルタ(a)とフィルタ(c)の出力の比が一定の範囲Aに収まることが、失火であると判定するための条件であると考えられる。このことを、第1、第2の実施形態での失火判定条件に加えることで失火の判定をより精度よく行う。
【0027】
従って、本実施形態の判定手段23では、
▲1▼(遅延を施した)フィルタ(a)の出力が閾値を超える。
▲2▼(遅延を施した)フィルタ(b)の出力が閾値を超える。
▲3▼(遅延を施した)フィルタ(c)とフィルタ(a)の出力の比が一定範囲に収まる。
の3条件が満たされたときに、失火と判定する。こうすることで、路面の凹凸や車体の振動の影響を失火であると誤判断することが無くなり、失火のみを正確に判定できるようになる。
【0028】
以上のように、内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段1と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段2を備えた失火検出装置において、信号処理手段2は、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数にピークを持つ第1のフィルタ21と、この倍周波数に感度のピークを持つフィルタ22と、主周波数に対する感度が第1のフィルタ21と同じで、その前後の周波数に対する感度が第1のフィルタ21とずれているフィルタ26と、第1、第2のフィルタ21、22の出力がそれぞれの閾値を超え、かつ第3のフィルタ26と第1のフィルタ21の出力比が一定範囲内におさまった場合に失火が発生したと判定を行う判定手段23とから失火検出装置が構成される。
【0029】
第4の実施形態について述べる。
第1、第2の実施形態においては、2つのフィルタの周波数特性は、1つのフィルタが失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数にピークをもち、もう一つのフィルタがこの倍周波数に感度のピークを持つと述べたが、これは厳密にピークの位置が主周波数とこの倍周波数上にあることを規定するものではなく、感度のピークが主周波数とこの倍周波数から多少ずれても個別の判定が可能である。図18のように、1つのフィルタは、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数での感度がこの倍周波数への感度より大きく、もう1つのフィルタはこの逆で、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数での感度がこの倍周波数への感度より小さい、というものでも良い。従って、感度のピーク点は主周波数とこの倍の周波数からずれても失火判定には支障をきたさない。
【0030】
以上で4つの実施形態について述べてきたが、ここでは、ある失火検出装置が本発明の実施例に該当するかどうかを検証する方法について述べる。
検証手段5は、失火検出装置に図16のように接続される。駆動装置6は内燃機関のクランク軸3に接続され、様々なパターンのクランク軸3の動きを生成する。そのときに失火検出装置が出力する失火検出結果と、回転検出手段1が出力する回転所要時間を解析することで、失火検出装置が本発明に該当するかどうかを検証する。
【0031】
検証手段5の構成を図17を用いて説明する。検証手段5は、回転所要時間を過去N爆発分記憶しておく所要時間メモリ51と、失火検出装置が出力する失火検出結果が失火のときに、所要時間メモリ51に記憶されている所要時間のベクトルをN次元空間にプロットするプロット手段52と、プロットされた所要時間のベクトルの分布の境界面を算出する境界面算出手段53と、算出された境界面から、失火検出装置で用いたフィルタを算出するフィルタ逆解析手段54からなる。
【0032】
所要時間メモリ51の個数Nは、フィルタの長さに相当する。フィルタの長さが未知の場合は、想定しうるフィルタの長さの上限値にしておいても良い。あるいは、Nを想定しうるフィルタの長さより小さめに設定しておいて、失火検出装置を検証し、本発明に該当すればそれ以上検証する必要はないし、本発明に該当しなければ、Nの値を増やして再度検証する。このことを繰り返し、Nが常識的なフィルタの範囲を超えてしまったら、その失火検出装置は本発明の実施例に該当しないと判断できる。
【0033】
現在の回転所要時間をTi、1爆発前の回転所要時間をTi−1、…とする。現在から過去N爆発分の回転所要時間のベクトル
【数1】
が所要時間メモリ51に記憶されている。
【0034】
プロット手段52は、失火検出装置が出力する失火検出結果が失火のとき、所要時間メモリ51に記憶されている回転所要時間のベクトルをN次元空間にプロットする。これを様々なパターンのクランク軸3の回転パターンについて行うことで、回転所要時間の分布がN次元空間に作成される。
境界面算出手段53は、N次元空間に作成された失火時の回転所要時間のベクトルの分布の境界面を算出する。具体的なアルゴリズムは、凸包の求め方として知られており、例えばPreparata、F.P. and Shamos、M.I.著“Computational Geometry”(Springer-Verlag、1985)等に記載されている。
【0035】
失火検出装置が、本発明の第1ないしは第2の実施形態を適用したものであれば、境界面は2つの平面から構成される。算出された境界面の式が
【数2】
であるなら、2つのベクトル
【数3】
は失火検出装置のフィルタの係数である。このフィルタの周波数特性を調べ、f、gのうちのどちらかの周波数応答のピークが0.5次であり、もう片方の周波数応答のピークが1次であれば、本発明の第1ないしは第2の実施形態に該当する。
【0036】
失火検出装置が、本発明の第3の実施形態を適用したものであれば、境界面は4つの平面から構成される。算出された境界面の式が
【数4】
であるとする。このとき、第3の実施形態を適用したものであるなら、3つのベクトルf、g、hが同一平面上になくてはならない。同一平面上にあるなら、f、g、hと同一平面上にあり、hと垂直なベクトルを
【数5】
によって定める。直行するベクトルhとh’によって、2つのベクトルf、gは
【数6】
と表せる。Φ1、Φ2、Φ3、Φ4はf、g、hから一意に算出できる。数6を数4に代入したとき、
【数7】
と変形できれば、hを係数とするフィルタとh’を係数とするフィルタの比が一定範囲に収まることになる。このとき、hまたはh’の周波数のピークが0.5次で、2つのフィルタの0.5次の周波数感度が同じでその前後の周波数感度がずれていて、かつ、lを係数とするフィルタの周波数感度のピークが1次であるなら、この失火検出装置は本発明の第3の実施形態を適用したものであるといえる。
【0037】
【発明の効果】
上記のような構成の失火検出装置により、主周波数と、この倍の周波数とに感度のピークを持つ2つのフィルタを使用し、2つのフィルタ出力が同時に条件を満たすときに失火と判定することで、精度のよい失火判定が実現できる。更に、第3のフィルタを用いることによって、路面の凹凸等の外乱に対してロバストな失火の検出が可能となる。失火が検出されたら運転中止や修理を実施することで、燃費の悪い状態での走行を避けることができ、また、未燃ガスを排出も回避でき、環境への悪影響も防げる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかわる失火検出装置の構成図である。
【図2】リングギアの形状の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施例にかかわる信号処理手段の構成図である。
【図4】信号処理手段のフィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【図5】判定手段が失火と判定する領域の一例を示す図である。
【図6】失火時の回転所要時間の一例を示す図である。
【図7】失火時の回転所要時間の周波数成分の強度を示す図である。
【図8】悪路走行時の回転所要時間の一例を示す図である。
【図9】悪路走行時の回転所要時間の周波数成分の強度を示す図である。
【図10】回転所要時間とフィルタ出力の関係の一例を示す図である。
【図11】1次成分を算出するフィルタの一例を示す図である。
【図12】回転所要時間とフィルタ出力の関係の一例を示す図である。
【図13】本発明の一実施例にかかわる信号処理手段の構成図である。
【図14】信号処理手段のフィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【図15】判定手段が失火と判定する必要条件の一例を示す図である。
【図16】本発明を検証する手段の接続図である。
【図17】本発明を検証する手段の構成図である。
【図18】信号処理手段のフィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…回転検出手段、2…信号処理手段、3…クランク軸、4…気筒、5…検証手段、11…リングギア、12…磁気センサ、21…フィルタ(a)、22…フィルタ(b)、23…判定手段、24…遅延手段、25…遅延手段、26…フィルタ(c)、27…遅延手段、51…所要時間メモリ、52…プロット手段、53…境界面算出手段、54…フィルタ逆解析手段。
Claims (2)
- 内燃機関のクランク軸が一定角度回転するのに要する時間を計測する回転検出手段と、回転所要時間を処理することで内燃機関の失火を検出する信号処理手段を備えた失火検出装置において、
信号処理手段は、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数にピークをもつフィルタと、この倍周波数に感度のピークを持つ第1のフィルタと、主周波数に対する感度が第1のフィルタと同じで、その前後の周波数に対する感度が第1のフィルタとずれている第2のフィルタと、第1、第2のフィルタの出力がそれぞれの閾値を超え、かつ出力比が一定範囲内におさまった場合に失火が発生したと判定を行う判定手段とから構成される失火検出装置。 - 請求項1の失火検出装置において、信号処理手段における2つのフィルタのうち、一つのフィルタは、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数での感度がこの倍周波数への感度より大きく、もう一つのフィルタはこの逆で、失火に起因するクランク軸の回転変動の主周波数での感度がこの倍周波数への感度より小さい、ことを特徴とする失火検出装置。
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