JP4314323B2 - ジャイロ及びレーザ墨出し装置 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ墨出し器内の振子を揺動自在に吊下げて鉛直姿勢を確保するのに好適なジャイロと該ジャイロを搭載したレーザ墨出し装置に関する。
【0002】
【背景技術】
レーザ墨出し装置から出力されるレーザ光による墨出し線は、水平の墨出し線を出力させるもの、垂直の墨出し線を出力させるもの、水平と垂直の墨出し線を出力させるものなど、各種の機種が知られている。そして、墨出し線の水平姿勢や垂直姿勢を確保する方に、レーザモジュールを支持させた振子(鏡筒)をジャイロで揺動自在に吊下げて、振子の自重による鉛直姿勢回復力を利用して行う方法が知られている。
【0003】
レーザ墨出し装置に搭載されている従来技術のジャイロとして、図21に示すジャイロ70がある。このジャイロ70は、径の異なる複数のリングのうちの内側のリング70aとその外側に位置する中間リング70bとを横軸71aで枢着し、またこのリング70bとその外側のリング70cとを前記横軸71bと横方向に直交する横軸71bで枢着し、この外側のリング70cが上下回転自在に組み付けられて、内側のリング71aが外側のリング70cに対して何れの方向にも揺動する構造を備える(従来例1)。
【0004】
ところで、振子(鏡筒)の鉛直姿勢はその揺動が静まることにより得られるものであるが、この揺動がゆっくり静まるのを待っていたのでは作業能率が悪くなる。このため、従来では、図22に示すように、振子(鏡筒)80の下部近傍箇所に銅製の円板81を装着し、この円板81の上下方向の適所に図23に示す複数個の永久磁石83,85を配設して、この永久磁石83,85間に発生する磁気トルクにより円板81の揺動にブレーキをかけて、振子(鏡筒)80の自重による鉛直姿勢回復とその位置での停止を促し、この鉛直方向を基準としたレーザ光の照射方向が確保できるようにしていた(従来例2)。
【0005】
尚、レーザ墨出し装置を置いた床面が傾斜していたり、床面に凹凸があって振子(鏡筒)が所定角度(一般に5゜とされる)以上傾くとその下端部が周囲のガイドに当たって停止する。このように振子(鏡筒)が傾いた姿勢の状態でレーザモジュールから出力される墨出し線は鉛直線を基準にしていないために、墨出し線として利用できないので、このような場合、従来では、職人が墨出し線を見て鉛直姿勢を基準にした墨出し線であるか否かを判断していた。(従来例3)。
【0006】
そして、従来のレーザ墨出し装置では、レーザ光の向きを横回転方向に変える場合、手動で水平回転する機能を備えていないものについては、レーザ墨出し装置を手で回して行ったり、手で持ち上げてその向きを変えていた(従来例4)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した(従来例1)によるジャイロは、最も内側のリングの高さがあまり無くしかも座面が狭くなっているために、ここに振子(鏡筒)やレーザモジュールを支持する支持体を装着しても、その安定性と中心位置の確保が十分に確保できず、またこのリングと振子(鏡筒)の中心の位置合わせの調整が難しいことが原因で、振子の自重による吊り下げのバランスが狂って鉛直姿勢の確保が図れず、レーザ光の向きに狂いが生じて、正確な墨出しが行えないといった事態を招き易くしていた。
【0008】
また、上述した(従来例2)ように、複数個の永久磁石を点在させて振子(鏡筒)に装着されている円板に磁気トルクを与えて振子(鏡筒)の揺動にブレーキを与える構造では、振子(鏡筒)及び円板の揺動する方向が常に一定しているわけではないので、円板が揺動する方向によっては円板に加わる磁気トルクに強弱が生じて、揺動の方向や大きさによって円板にブレーキをかける状態が異なって、振子(鏡筒)の揺動にブレーキがききにくい場合があった。
【0009】
また、上述した(従来例3)を具備したレーザ墨出し装置では、レーザ光の揺動が停止しているだけで墨出し線の鉛直姿勢が確保されていると誤判断されやすく、作業の信頼性を大きく損なう場合がある。
【0010】
また、上述した(従来例4)を具備したレーザ墨出し器は、例えば職人が脚立の上に登った位置で天井面の墨出し作業を行うときに、墨出し線の向きを変えるときに、一旦脚立から下りてレーザ墨出し装置の置かれている所まで行ってこれを手で回転操作しなければならないという煩わしさがあった。
【0011】
本発明は、これらの課題を解消するために、鉛直線を基準にした正確な方向にレーザ光による墨出し線を照射させ、振子(鏡筒)の揺動を瞬時にしかも安定した状態で鉛直姿勢で停止させることがジャイロ及びこのジャイロを搭載するとともに、振子(鏡筒)が鉛直でない姿勢のまま墨出し線が照射されても、これを判り易く作業者に知らしめ、しかも墨出し線を照射する水平回転方向の向きの変更が手動及び遠隔操作などで行えるようにしたレーザ墨出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1の発明は、レーザ墨出し装置内において振子を揺動自在に吊下げるために用いるのに好適なジャイロの発明であり、
長尺軸と、短尺軸と、同径で同肉厚の上下2分割の筒部形状を有する上部の支持体と下部の支持体と、ベアリング軸受とを備え、
前記短尺軸の中央部分が、前記長尺軸の中央に形成されている開口内に、横方向に直交する状態で回転自在に枢着され、
前記長尺軸の両端部が前記上部の支持体と前記下部の支持体の半曲面部が合わさって形成された開口内から突出して、前記ベアリング軸受に嵌装され、
前記短尺軸の両端部が、前記上部の支持体と前記下部の支持体の半曲面部内に嵌められた状態で、前記上部の支持体と前記下部の支持体とが組みつけられており、
前記長尺軸の軸心と前記短尺軸の軸心の直交点に、前記上部支持体と前記下部の支持体の上下方向の中心である鉛直線が通過するように構成されている。
【0013】
本発明のジャイロは、の平面視十字状に組み付けられた短尺軸と長尺軸は、いずれも円滑に軸回転自在であり、
長尺軸の両端部は、上部の支持体と下部の支持体の半曲面部が合わさって形成された開口内から突出した状態にあり、
短尺軸の両端部は、上部の支持体と下部の支持体とが組み付けられて一体化された組み付け品に嵌められた状態にある。
このため、長尺軸と上部の支持体及び下部の支持体とは、短尺軸を介して支持されている。
長尺軸の両端部はベアリング軸受に嵌装され、長尺軸と短尺軸とは回転自在に支持されているため、
長尺軸の両端部を支持しているベアリング軸受に対して、上部の支持体と下部の支持体とによる組み付け品は、揺動自在な状態にある。
長尺軸の軸心と短尺軸の軸心の直交点に、上部支持体と下部の支持体の上下方向の中心である鉛直線が通過するように構成されているため、本発明のジャイロで鏡筒等の振子を吊下げると、鉛直姿勢で揺動が停止する。
【0014】
請求項2の発明は、レーザ墨出し装置の発明であり、円筒又は円柱形状の振子の揺動による鉛直姿勢回復力を利用してレーザモジュールの照射方向の基準となる鉛直姿勢が得られるように構成したレーザ墨出し装置内の振子の支持に、請求項1に記載のジャイロが用いられていることを特徴とする
【0015】
レーザ墨出し装置の分野において、鏡筒は、ジャイロで吊るされて揺動し、筒内に配設したレーザモジュールからスポット形状のレーザ光を通過させて床面にレーザ光による鉛直点を示すことができる構造の振子を呼ぶ場合が多いが、本構成では、振子はこのような構造の鏡筒だけでなく、ジャイロで吊るされて鉛直姿勢を回復する径の太い金属棒や金属筒だけのようなものも含まれる。
このような構造のジャイロをレーザ墨出し装置のジャイロに用い、ジャイロ内の長尺軸と短尺軸からなる2本の回転軸の軸心の交点上に振子(鏡筒)の鉛直線が位置するように振子(鏡筒)の上端をジャイロの吊下げ用ブラケットの下面に装着して、振子(鏡筒)をジャイロから吊下げるようにすると、振子(鏡筒)はいずれの方向にもバランス良く揺動して、振子(鏡筒)の自重により得られる鉛直線を基準にした静止ができるようになり、この結果、鉛直線を基準にした正確な方向に墨出し線を照射させることができるようになる。即ち、墨出し精度の高いレーザ墨出し装置にすることができるようになる。
【0016】
請求項3の発明によるレーザ墨出し装置は、上記構成を具備し、更に、前記振子の下部近傍箇所に円板形状のブレーキ板が装着され、該ブレーキ板の上方と下方の近傍箇所にドーナツ形状のネオジ磁石が設けられて、ネオジ磁石がブレーキ板に磁気トルクを与えることにより振子の揺動を早期に収束させ、振子が鉛直姿勢で停止するように構成されている。
【0017】
このように構成すると、振子(鏡筒)がどの方向に揺動しても、円板に加わる磁気トルクが同じ状態で付与されるので、安定した揺動停止力が得られ、振子(鏡筒)何れの向きに振れても正確な鉛直姿勢で停止する。特に、磁力の高いネオジ磁石を使用すると、揺動にブレーキをかける力が強くなって揺動から静止までの時間が早くなり、振子(鏡筒)を瞬時に停止させることができるようになるため、作業性が高まる。
【0018】
請求項3の発明によるレーザ墨出し装置は、上記いずれかの構成を具備し、更に、前記振子の傾き角が所定の傾斜許容限界角となる位置に、振子又はブレーキ板による接触によって電気信号が入力する傾斜検知手段を設けて、振子の傾きが傾斜許容限界角に達すると、該傾斜検知手段による検知信号に基づいて、前記レーザモジュールから出力されるレーザ光を点滅させ、又は機器本体に備えた表示部で表示させ、或いはこれら双方による表示が行われるように構成されている。
【0019】
このように構成すると、例えば本装置が床面に傾いた状態で置かれていたり、床面が傾いていたりして、鏡筒が揺動しないまま傾いた状態で停止して、そのままレーザモジュールより天井面等にレーザ光が照射されても、このレーザ光が点滅したり機器本体に備えた表示部で表示したりすることによって、このレーザ光が鉛直点を基準にした照射方向でないことを判り易く目視で判断できる。
【0020】
具体的には、例えば、円板が接触して電気信号が入力する場合でいうと、円板を導電材料で形成すると共に、この円板の周縁から所定間隔を設けた周外方向となる位置に、この円板の周縁が接当する鉄又は銅等の材料で形成した揺制止板の立設周面を位置させ、さらに鏡筒を通じて円板にマイナスアースに接続し、導電板をプラス電極に接続して、それぞれの電気線をレーザ光を点滅させる点滅回路に接続する方法などが挙げられる。
【0021】
尚、導電板の立設周面に交互に極性の異なる電極を小刻みに配設し、この異なる2つの電極に円板が接触することによって電気信号が入力するような検知手段を備えたものであっても構わない。
【0022】
請求項4の発明によるレーザ墨出し装置は、上記いずれかの構成を具備し、更に、レーザ墨出し装置の主要部を搭載した回転台が摩擦板を挟んで基台上に回転自在に備えられ、前記回転台の水平回転が、リモコン端末器の操作によりモータを駆動させて該モータの駆動軸先端部に設けられているプーリの接触により、前記摩擦板を連れ回りさせて行う自動回転と、摩擦板の摩擦力を超える力により摩擦板を滑らせて行う手動回転とが選択可能に構成されている。
【0023】
レーザ光を水平方向に回転させる必要性としては、例えば壁面に照射したレーザ光を横移動させて墨出しを必要とする位置に合わせたり、天井面に照射したレーザ光の向きを所望の向きに回転させるときなどが挙げられる。従来、この向きの変更は本装置の向きを置き変えて行っていたが、これを本構成を採用することによって、レーザ墨出し装置の位置を動かすことなく水平方向(横方向)に回転させることができるようにしたのである。
【0024】
そしてその回転をモーターと手動の2通りの方法で行えるようにしたのである。自動で行える利点は本装置の地墨点をずらすことなく正確に回転させることができることと、後述において説明するように遠隔制御できることにある。手動で行える利点は職人が本装置の近くに居るときには敢えて遠隔操作するまでもなく簡単に手で回すことができることにある。
【0025】
尚、このように手で本装置を回すと、モーターの駆動軸に過度の負担が加わることが予想されるが、本構成ではこのような場合には、駆動軸が連れ回りする前に回転台が基台に対して滑って空周りするため、モーターに過度の負担が加わったりしない。しかもこの空回りは単なる空転ではなくモーターに過度の負担を与えない程度の摩擦力が加わっているため、意図しない振動などにより空回りするようなことはない。尚、本構成では低速回転のモーターを用いたり、減速装置を備えたりして、本装置をゆっくりと回転させる必要がある。
【0026】
モーターの駆動を伝える方法としては、基台側に備えられている摩擦板の壁面に、モーターの駆動軸の先端部に装着したプーリーを常時接触させて行う方法、基台側に備えられている摩擦板の外周面と、モーターの駆動軸の先端部に装着したプーリーとの間にタイミングベルト等を掛けて行うベルトドライブ方式、基台側に備えられているギヤ円板のギヤ面に、モーターの駆動軸の先端部に装着したギヤを噛合させてダイレクトドライブで行う方法等が挙げられ、本構成ではこれら何れも適用の対象となる。
【0027】
また、このモーターをステッピングモーターやトルクモーターあるいはブレーキモーターを用いて、正確な位置でモーターの回転を止めるようにしても構わない。
【0028】
このようにリモコン端末器を利用して遠隔制御すると、職人が本装置から離れた所に居てもその場所を離れることなく本装置の向きを変えることができる。
【0029】
リモコン端末器によるモータ制御を、マイクロ波を含む電波を発信する構造にすると、太陽光やレーザ光等の光の干渉による影響を受けない利点があるので、この構造が最も優れると考えられるが、赤外線信号を含む光信号を発信して行う構造でも対応できることから敢えてこれも記載した。
【0030】
リモコン端末器によるモータ制御が、赤外線信号を含む光信号を発信して行う構造であれば、前記アンテナに代えて赤外線等の発光器がリモコン端末器に備えられ、電波受信アンテナに代えて受光器がレーザ墨出し装置側に備えられる。
【0031】
請求項5の発明によるレーザ墨出し装置は、更に、このリモコン端末器に、所望の回転角を設定するテンキー又はダイヤルが設けられている。
【0032】
テンキーは、例えば45の数値を入力すると本機が45°回転するぶんだけモーターを回転させるもので、右又は左回転を選択するキーと併用して使用する。ダイヤルの場合はその周りに回転方向に対応した角度設定目盛りが印されている。このようにテンキー又はダイヤルを利用すると、レーザ墨出し装置は入力した数値に対応した正確な角度で回転する。
【0033】
本発明の目的及び構成は以上の通りであり、次に添付図面に基づいて本発明に係るレーザー墨出し装置の具体的な実施例について詳述する。尚、各添付図面の各図において共通する箇所には同一符号を付してある。
【0034】
図1は本実施例に係るレーザ墨出し装置の内部をケースから取り出して示した斜視図、図2は同じく正面図である。
【0035】
図1及び図2に示す本実施例のレーザ墨出し装置1は、平面視、中央に開口を形成した円板形状を有し周縁を上方に立ち上げて形成した回転台5上に複数本の柱4,4を立設させてあり、この柱4,4の上部には、この回転台5と略同形状を有する上部支持台3が、その周縁を下方に向けて装着されている。
【0036】
前記回転台5は、その中央が開設された開口を通じて、ベアリング24を介して、上端にフランジ面22aが形成され下部周面に螺子が刻設された筒状の装着部材22を基台26に装着することによって、回転自在に基台26上に備えられており、しかもこのベアリング24と基台26との間には、周縁23aを上方に立ち上げた摩擦板23と、摺接部材25が、それぞれ挟んだ状態で備えられている。
【0037】
この摩擦板23の外周縁面23aの側方には、前記回転台5に装着したモーター27の駆動軸27aが突出して位置しており、この駆動軸27a端に装着したプーリー28を前記外周縁面23aに接触させて、モーター27の駆動によりプーリー28がこの外周縁面23aに沿って走行することによって、回転台5が横方向に回転するように構成してある。
【0038】
この回転台5上方には、前記柱4に装着された状態で制御回路基板30が備えられており、モーター27はこの制御回路基板30に接続されている。尚、図1に示すように回転台5上方には電池ケース70が備えられており、本装置のあらゆる電気・電子部品はこの電池ケース70に内装された電池を電源とする。
【0039】
前述した上部支持台3の中央の開口周りの上面には、ジャイロ2が装着されている。そしてこのジャイロ2の上面にはレーザモジュール取付台7を介してレーザモジュール8,8・・が装着されており、このジャイロ2の下部には鏡筒6の上端部が装着されている。
【0040】
尚、図1及び図2では、4個のレーザモジュール8,8・・がレーザ光を四方斜め上方に照射する向きで備えられており、これら4個のレーザモジュール8,8・・によって照射されるレーザ光の映像は十字形状である。勿論、レーザモジュール8,8の取付個数はレーザモジュール取付台7と共に別途交換することにより、変更可能である。
【0041】
図3及び図4はレーザモジュール取付台7を示した平面図及び正面図であり、図1乃至図4に示すように、レーザモジュール取付台7の座面7aから四方斜め上方に拡がる方向に突出した取付端7b,7b・・にそれぞれ計4個のレーザモジュール8,8・・が装着されている。7cはこのレーザモジュール取付台7をジャイロ2の上面に装着する螺子を挿通する孔、7dは開口である。
【0042】
図1及び図2では、レーザモジュール8,8・・の後端に接続されている各2本の電気線のうちのプラス側の各1本の電気線8a,8a・・は、重量バランスを考慮した状態で上部支持台3に接続されており、マイナスアースの各電気線8b,8b・・は導電材料で形成されているレーザモジュール取付台7に接続されている。
【0043】
この電気線の接続における他の実施例が図5及び図6で示されており、これら各図において、上部支持台3の上面には導電性材料で形成された門形の柱90が絶縁材料91を介して装着されており、この門形の柱90の略中央箇所には、レーザモジュール8,8・・の後端に接続されている各2本の電気線のうちのプラス側の各1本の電気線8a,8a・・が、重量バランスを考慮した状態でジャイロ2中心方向に向けて接続されている。尚、この柱90から別途電気線が制御回路基板30に接続されている。これに対し、レーザモジュール8,8・・の後端に接続されているマイナスアースの各電気線8b,8b・・は導電材料で形成されているレーザモジュール取付台7に接続されている。
【0044】
図7から図15まではジャイロ2を示しており、このうち図7はジャイロ2を一部切り欠いて示した平面図、図8はジャイロの正面図、図9は同じく分解斜視図、図10は支持体の分割面を断面線として示したジャイロの平面断面図、図11はジャイロの内部構造を示したスケルトン図、図12はジャイロの正面断面図、図13は同じく側面断面図、図14及び図15は2軸の交差部分の構造を示した正面図、及び平面断面図である。
【0045】
これら各図に示すように、ジャイロ2は、長尺軸53及び短尺軸54と、これら2本の軸53,54の交差部分に用いられる第1のベアリング軸受け55,56と、レーザ墨出し装置の振子を装着して吊下げる上部の支持体50及び下部の支持体51と、平面視ドーナツ形状を有する肉厚の取付座52と、長尺軸53の両端部を取付座52に回転自在に支持させる第2のベアリング軸受け65,66と、を備えて成る。
【0046】
図9から図15において、長尺軸53の中央箇所は幅広く形成されており、この箇所に開設されている開口内に、短尺軸54の中央部分が位置するように挿通された状態で、短尺軸54の中央部分を再側から挟むように嵌装したベアリング軸受け55,56を該開口内に装着して、長尺軸53の中央箇所に短尺軸54の中央部分が横方向に直交する状態で回転自在に枢着されている。61,61は埋め込み螺子により長尺軸53の中央箇所の対応面に装着したベアリング軸受け55,56の抜止防止部材であり、この抜止防止部材61,61があることによって、短尺軸54は横抜けしない。
【0047】
図9において、上部の支持体50は、肉厚の筒部50dの上端部が大径の座50aで形成されて成るもので、その下端縁の対向箇所には、長尺軸53の径よりも大きな半曲面部50e,50eが形成されており、この半曲面部50e,50eに対して90°対向する前記下端縁には、短尺軸54の径に略等しい半曲面部50f,50fが形成されている。
【0048】
上部の大径の座50aには、レーザモジュール取付台7を取り付けるためのネジ孔50h,50h・・が形成されており、また、大径の座50aから筒部50dの側壁を通じて下端部まで至る複数の箇所には、上部の支持体50下部の支持体51に連結して装着するための皿頭のボルト59,59の挿通穴50j,50jがそれぞれ複数開設されている。
【0049】
図9及び図10において、下部の支持体51は、上部の支持体50の筒部50dと同径,同肉厚の筒部であり、下部の支持体51の上縁には、前記半曲面部50e,50eと対向する同じ大きさの半曲面部51e,51eと、前記半曲面部50f,50fと対向する同じ大きさの半曲面部51f,51fが形成されている他、前記ボルト59,59を螺装するネジ孔51j,51j・・が形成されている。
【0050】
また、下部の支持体51における開口51bの下部には、後述する鏡筒(6)の上端部が挿通されるため、この支持体51の対向する2側面部分に、鏡筒(6)の上端部を装着するピン孔51g,51gが開設されている。
【0051】
また、図8、図9において、上部の支持体50及び下部の支持体51の各対向縁面には、上部の支持体50及び下部の支持体51を位置ずれなく装着するための段部50k,51kが形成されている。
【0052】
図7から図9及び図12、図13において、取付座52は、上部の支持体50及び下部の支持体51の筒部よりも大径の内径を有する肉厚の平面視ドーナツ形状を有しており、その対向する側壁面の上面部分には、前記ベアリング軸受け65,65の一部周面に沿った半曲面部52c,52cが形成されている。尚、符号を付していないが、この半曲面部52c,52cを挟む取付座52の上面部分にはベアリング軸受け65,65の押止部材を装着するボルト58,58・・の螺子孔と、該取付座52を第1図及び第2図で示した上部支持台3に装着するためのボルトの螺子孔等がそれぞれ開設されている。
【0053】
ジャイロ2の組み付けは、先ず、長尺軸53と短尺軸54とを組み付ける。続いてこの組み付けた長尺軸53と短尺軸54を平面視十字状になる向きで、上部の支持体50と下部の支持体51とを合わせて、短尺軸54の両端部を上部の支持体50及び下部の支持体51の半曲面部50f,51f,(50f,51f)内に嵌まるようにして、上下の支持体50,51を、皿頭を持つボルト59,59で装着して一体化させる。
【0054】
このとき長尺軸53の両端部は、上部の支持体50及び下部の支持体51の半曲面部50e,51e,(50e,51e)が合わさって形成された開口から突出している。この突出した長尺軸53の両端部にベアリング軸受65,65を嵌装する一方、下部の支持体51の周りに取付座52を位置させ、この取付座52内の半曲面部52c,52c内にベアリング軸受65,65を位置させ、その上から押止部材57,57を被せるようにしてあてがって押止部材57,57を取付座52上にボルト58,58で装着し、またベアリング軸受65,65の端部を押止部材64,64であてがうようにして、押止部材64,64を取付座52の側壁面にボルト65,65で装着すれば、ジャイロ2の組み付けは完了する。
【0055】
このようにして組み付けると、長尺軸53の軸心と短尺軸54の軸心の交点に支持体50,51の上下方向の中心すなわち振子である鏡筒(6)の鉛直線が通過する。
【0056】
尚、図示していないが、前記座50aの周側面又はその近傍箇所には、重力バランスを調整する螺子の装着孔が形成されている。
【0057】
次に本装置1のジャイロ5より下方の箇所について説明する。図1及び図2に示すように、ジャイロ5の下端部には円筒形状を有する銅製の鏡筒6の上部が装着されて、鏡筒6が揺動自在に吊り下げられている。この鏡筒6の下部近傍箇所には、中央に大きな開孔を有する銅製の円板9が、鏡筒6の周方向に拡がる状態で水平に装着されている。
【0058】
図2及び図16に示すように、この円板9の上方には、平面視ドーナツ形状を有する鉄製の支持板10が鏡筒6を中央に挿通する状態で複数の取付部材20を介して4に装着されており、この支持板10の下面には、絶縁体12を挟んで、平面視円板形状を有しその周縁を下方に僅かながら立ち上げて形成した鉄等又はステンレスにニッケルメッキを施した揺動制止板13が装着されており、さらにその下面には、絶縁体14を挟んで、平面視ドーナツ形状のステンレス板15が装着されており、これらの装着はビスにより一体的により行われている。そしてこのステンレス板15の内周縁から前記支持板10に至る箇所には、図17に示す平面視ドーナツ形状を有する肉厚のネオジ磁石11が装着されている。
【0059】
また、図16において、この円板9の下方には、ドーナツ形状のステンレス板18が絶縁体17を挟んだ状態でドーナツ形状を有する鉄製の支持板10上に装着されており、この支持板10は複数の取付部材21を介してその下方の回転板5の上面に装着されており、このステンレス板18の内周縁から前記支持板16に至る箇所には図17に示すように平面視ドーナツ形状を有する肉厚のネオジ磁石19が、その上方の前記ネオジ磁石11に対して極性の向きを異にした状態で装着されている。
【0060】
このようにして円板9の僅かながら隙間を設けた上下箇所ドーナツ形状のネオジ磁石11,19が装着されていると、双方のネオジ磁石11,19間の空間には円板18の揺動を停止させる極めて強い磁気トルクが発生しているのであるが、このように対向するネオジ磁石11,19をドーナツ形状にしたことによって、円板9がどのような方向に揺動しても、円板9には常に一定の強い磁気トルクが付与される。このため、円板9すなわち鏡筒6の揺動は瞬時に停止し、鉛直姿勢で停止し、この状態が維持される。
【0061】
また、図16において、上述したように円板9の外周縁から等間隔をおいた箇所には鉄等の導電材料からなる揺動制止板13の立設面が位置している。この円板9には銅製の鏡筒6から電気線を通じて図1及び図2に示す御回路基板30の点滅回路に接続されており、揺動制止板13も電気線32を通じて図1及び図2に示す制御回路基板30の点滅回路に接続されている。つまり、円板9と揺動制止板13による傾斜検知手段がここに備えられているのである。
【0062】
このため、図16及び図18に示すように、鏡筒6が大きく傾いて円板9の周縁が揺動制止板13に接触すると、電気が通じて、制御回路基板30の点滅回路が作動してレーザモジュール(8,8・・)を点滅させる。尚、このときの点滅回数は、職人が見落とすことのないように数回以上、例えば5回点滅するのが好ましい。
【0063】
上述したように円板9には銅製の鏡筒6から電気線を通じて図1及び図2に示す制御回路基板30の点滅回路に接続されているが、揺動する鏡筒6から如何様にして制御回路基板30まで電気線を接続するかについては、図19に示しており、ジャイロ2の一部を構成する上部の支持体50及び下部の支持体51の側壁に、上下方向に貫通する開孔50v,5vを開設し、鏡筒6の上端部にこの開孔50v,51v内に通した電気線8cの一端を接続し、ジャイロ2上方に出ているこの電気線8cの他端をレーザモジュール取付台7にマイナスアース接続させてある。
【0064】
さて、図2に戻るが、前記モーター27の駆動制御は、制御回路基板30の駆動制御回路を通じて行われる。
この駆動制御回路への命令信号は、図20に示すリモコン端末器100から赤外線信号を発振させた光信号を、本装置1の外面に装着した図示しない赤外線受光器で受信し、この受信した光信号を変換した電気信号が制御回路基板30の駆動制御回路に送られ、この駆動制御回路を通じて前記モーター27を回転させることにより本装置1の基台26より上部分を横方向に回転させて、レーザ光の向きを所望の角度に横回転させることができるように構成してある。
【0065】
このため、リモコン端末器100には、レーザ光を左右何れかの横方向に連続的に回転させるキー101,102と、回転角をデジタル設定するテンキー103と、テンキー103の回転方向を切り換える切換キー104と、電源キー105が備えられており、この端末器100の前端面にはマイクロ波を発信するアンテナ106が突出している。
【0066】
このようにテンキー103でレーザ光の回転角をデジタル設定してもモーター27の駆動、特に駆動停止のタイミングが一定していないと正確な回転角が得られ難いので、ロータリーエンコーダを備えるのが好ましい。
【0067】
ところで、図2に示すように、本装置1の上部分、すなわち摩擦板23より上の部分は、手で回してその向きを変えることもできるようにしてある。このため、摩擦板23の下面と基台26の間に摺接板25を接した状態で位置させ、本装置1の上の部分を手で回すと、モーター27の駆動軸27aが連れ回りする前に、摩擦板23と摺接板25とが滑って、回転板5が基台26に対して空周りして、モーター27に過度の負担がかかったりしないようにしてある。この摩擦力は、モーター27を駆動させてプーリー28を回転させて摩擦板23面を走行したときには、摩擦板23と摺接板25は滑らない程度、つまりこの摩擦力は外力によりモーターにかかる負担よりも小さくしてある。
【発明の効果】
【0068】
本発明に係るジャイロによれば、軸回転する2本の回転軸が平面視十字状に組み付けられている結果、いずれの方向にもバランス良く揺動するジャイロにすることができるようになった。
【0069】
そして、レーザ墨出し装置にこのジャイロを搭載した結果、振子(鏡筒)はいずれの方向にもバランス良く揺動することができ、振子(鏡筒)の自重により鉛直線を基準にした正確な位置で静止できるようになった。よって、正確な照射方向のレーザー光による墨出し線を形成することが出来たのである。
【0070】
また、鏡筒の揺動停止構造として、鏡筒の下部又はその近傍箇所に鏡筒の周側方に拡がる銅製の円板を装着し、この円板から僅かながら隙間を設けた上方と下方に、平面視ドーナツ形状のネオジ磁石を備えることによって、双方のネオジ磁石間の空間内で揺動する円板に強い磁気トルクを与えて、円板すなわち鏡筒の揺動にブレーキを掛けて鉛直姿勢で停止させることが出来たのである。このため、揺動している鏡筒は、瞬時に鉛直位置で停止することが出来たのである。このため、作業効率を向上させることが出来たのである。
【0071】
また、円板の傾斜許容限界角となる位置に、円板の周縁が接触することによって電気信号が入力する傾斜検知手段を備え、該傾斜検知手段による傾斜検知信号を、機器本体に備えた表示部で表示し又はレーザモジュールから照射するレーザ光を点滅し或いはこの表示と点滅の双方を行うように構成したことによって、レーザ墨出し装置を置いた床面が傾いていたりなどして、鏡筒が傾いた姿勢で停止しても、これらの表示によって鏡筒が鉛直姿勢でないことが判るため、誤判断による誤った墨出し線を基準にした作業を行うようなことも無くなったのである。
【0072】
さらに、本装置を内部に備えたモーターの駆動によって横方向に回転自在に構成し、しかもこのモーターの駆動制御をリモコンにより遠隔操作できるように構成したことによって、職人がレーザ墨出し装置から離れた位置に居ても、その場からリモコン操作することによって簡単にレーザ光を所望の横方向の回転位置に変化させることが出来、またこの横方向への回転を、モーターに過度な負担を与えることなく、本装置を手で回して行うこともできるようにしたことによって、レーザ墨出し装置による墨出し作業の能率を飛躍的に高くすることができたのである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施例に係るレーザ墨出し装置の内部をケースから取り出して示した斜視図である。
【図2】同じく正面断面図である。
【図3】レーザモジュール取付台を示した平面図である。
【図4】同じく正面図である。
【図5】レーザ墨出し装置の内部の上部分を示した斜視図である。
【図6】同じく正面図である。
【図7】ジャイロを一部切り欠いて示した平面図である。
【図8】ジャイロの正面図である。
【図9】同じく分解斜視図である。
【図10】ジャイロの分割面を断面線として示した平面断面図である。
【図11】ジャイロの内部構造を示したスケルトン図である。
【図12】ジャイロの正面断面図である。
【図13】同じく側面断面図である。
【図14】ジャイロの一部を構成する2軸の交差部分の構造を示した正面図である。
【図15】同じく平面断面図である。
【図16】円板周りの部分を拡大して示した正面断面図である。
【図17】ドーナツ状の磁石を示した斜視図である。
【図18】回動規制板と鏡筒に装着した円板を下面から見た図である。
【図19】鏡筒からジャイロ内を通じる電気線の配設構造を示した断面図である。
【図20】リモコン端末器の正面図である。
【図21】従来構造のジャイロを示した斜視図である。
【図22】従来構造の揺動制止構造を示した正面断面図である。
【図23】同じく磁石の形状と配設位置を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1 レーザ墨出し装置
2 ジャイロ
3 上部支持台
5 回転台
鏡筒(振子)
8 レーザモジュール
9 円板
11 磁石
13 揺動制止板
19 磁石
23 摩擦板
26 基台
27 モーター
28 プーリー
50 上部の支持体
51 下部の支持体
53 長尺軸
54 短尺軸
100 リモコン端末器

Claims (7)

  1. レーザ墨出し装置内において振子を揺動自在に吊下げるために用いられるジャイロであり、
    長尺軸と、短尺軸と、同径で同肉厚の上下2分割の筒部形状を有する上部の支持体と下部の支持体と、ベアリング軸受とを備え
    前記短尺軸の中央部分が、前記長尺軸の中央に形成されている開口内に、横方向に直交する状態で回転自在に枢着され、
    前記長尺軸の両端部が前記上部の支持体と前記下部の支持体の半曲面部が合わさって形成された開口内から突出して、前記ベアリング軸受に嵌装され、
    前記短尺軸の両端部が、前記上部の支持体と前記下部の支持体の半曲面部内に嵌められた状態で、前記上部の支持体と前記下部の支持体とが組みつけられており、
    前記長尺軸の軸心と前記短尺軸の軸心の交点に、前記上部支持体と前記下部の支持体の上下方向の中心である鉛直線が通過するように構成されていることを特徴とするジャイロ。
  2. 円筒又は円柱形状の振子の揺動による鉛直姿勢回復力を利用してレーザモジュールの照射方向の基準となる鉛直姿勢が得られるように構成したレーザ墨出し装置内の振子の支持に、請求項1に記載のジャイロが用いられていることを特徴とするレーザ墨出し装置
  3. 前記振子の下部近傍箇所に円板形状のブレーキ板が装着され、該ブレーキ板の上方と下方の近傍箇所にドーナツ形状のネオジ磁石が設けられて、ネオジ磁石がブレーキ板に磁気トルクを与えることにより振子の揺動を早期に収束させ、振子が鉛直姿勢で停止するように構成されている請求項2に記載のレーザ墨出し装置。
  4. 前記振子の傾き角が所定の傾斜許容限界角となる位置に、振子又はブレーキ板による接触によって電気信号が入力する傾斜検知手段を設けて、振子の傾きが傾斜許容限界角に達すると、該傾斜検知手段による検知信号に基づいて、前記レーザモジュールから出力されるレーザ光を点滅させ、又は機器本体に備えた表示部で表示させ、或いはこれら双方による表示が行われるように構成されている請求項2又は3に記載のレーザ墨出し装置。
  5. レーザ墨出し装置の主要部を搭載した回転台が摩擦板を挟んで基台上に回転自在に備えられ、
    前記回転台の水平回転が、リモコン端末器の操作によりモータを駆動させて該モータの駆動軸先端部に設けられているプーリの接触により、前記摩擦板を連れ回りさせて行う自動回転と、摩擦板の摩擦力を超える力により摩擦板を滑らせて行う手動回転とが選択可能に構成されている請求項2乃至4のいずれか1項に記載のレーザ墨出し装置。
  6. 前記リモコン端末器による前記モータの駆動制御が、マイクロ波を含む電波、又は赤外線信号を含む光信号で行われるように構成されている請求項2乃至5のいずれか1項に記載のレーザ墨出し装置。
  7. 前記リモコン端末器に、所望の回転角を設定するテンキー又はダイヤルが設けられている請求項5又は6のいずれか1項に記載のレーザ墨出し装置。
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