JP4311984B2 - Rack bar, steering device using the same, and electric power steering device - Google Patents

Rack bar, steering device using the same, and electric power steering device Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリング用のラックバー、並びにこれを用いるステアリング装置および電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のステアリング用のラックバーに要求される最も重要な特性は、静的または動的に過大な負荷が作用した場合にも脆性的に破損しないことであり、過大負荷が作用しても曲がり変形を生ずる(曲げ変形能)ことによって、部品が完全には破断分離しないことが要求されている。
現在のラックバーの製造は、圧延鋼材→焼入れ焼もどし処理→機械加工→高周波焼入れ焼もどし処理→仕上げ加工の工程が適用されている。上記のような脆性的な破壊を極力回避するために、圧延鋼材を直接加工・高周波焼入れ処理せず、焼入れ焼もどし処理を行うことによって素材の靱性を向上させ、その後、その部品加工と高周波焼入れ処理を施すことによって脆性的な破壊を防止している。
【0003】
従来、ラックバー用の鋼材において、製造コストの低減を図るために、焼入れ焼もどし処理を省略しつつ脆性的な破壊を防止しようとする試みがなされている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−8189号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、電動パワーステアリング装置が、油圧式パワーステアリング装置と比較して燃費を3〜5%向上できることから、小型車を中心として普及してきている。
しかしながら、電動パワーステアリング装置では、自動車の左右方向に延在する転舵軸としてのラックバーとピニオンとの噛み合い部分に作用する応力が、油圧式パワーステアリング装置と比較して、大幅に(例えば6〜10倍に)高くなる。
【0006】
一方で、部品を共通化して量産効果によるコストダウンを図るために、電動パワーステアリング装置においても、油圧式パワーステアリング装置で用いているラックバーと共通の仕様のラックバーが用いられている。このため、高応力が作用する中型車以上では、ラックバーの耐摩耗性や強度(疲労強度を含む)の点で不利となり、その結果、電動パワーステアリング装置の採用は小型車中心にとどまっている。
【0007】
焼入れ焼戻しを省略する特許文献1のラックバーでは、曲げ変形能のための靱性が不足するという欠点がある。
一方、通常の焼入れや焼戻しを施す場合には、焼戻し時間が長く、製造コストが高いという問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、安価で曲げ変形能に優れたラックバー、ステアリング装置および電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するため、本発明は、焼入れおよび焼戻しが施された鋼を用いて形成された直径Dの丸棒状の本体と、この本体の周面の一部に設けられた平坦部と、この平坦部に設けられ複数のラック歯が形成されたラック歯形成部とを備えるラックバーにおいて、上記鋼の炭素含有量が0.50〜0.60質量%であり、少なくともラック歯形成部に高周波焼入および焼戻しが施された硬化層が設けられ、ラック歯形成部の表面硬さがビッカース硬さで680〜800HVであり、当該ラックバーの製造用中間体としての、焼入れ処理された丸棒に対して、660°C以上700°C以下の雰囲気温度で20分以下の時間で焼き戻し処理が行われた結果、製造物としての本ラックバーの、ラック歯形成部の背面部の表面からの深さが(3/4)Dの部分で、焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織の合計の面積百分率が30〜100%であって、再生パーライト組織が面積百分率で0〜50%であり、且つ焼戻しベイナイト組織、焼戻しマルテンサイト組織および再生パーライト組織の合計の面積百分率が50〜100%とされていることを特徴とするラックバーを提供するものである。
【0009】
通例、ラック歯は深さD/4程度に形成されるので、ラック歯形成部の背面部の表面からの深さが(3/4)Dの部分(以下、単に「(3/4)D部」ともいう。)は、焼入れされた部分と焼入れされなかった部分との概ね境界にあたる。万一、大荷重を受けたラックバーが過大な曲げ変形を生じてその一部にクラックが生じたとしても、上記の(3/4)D部に少なくとも30%の面積百分率で残存している焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織がクラックの伝搬を防止することで、ラックバーが割れて2分割するような破損を防止することができる。また、上記の(3/4)D部で再生パーライト組織の面積百分率を50%以下とするのは、靱性を低下させないためである。
【0010】
炭素(C)含有量が0.50〜0.60質量%の鋼に焼入れを施すことにより、ラックバーとして必要な硬さと靱性が付与される。すなわち、炭素含有量を0.50質量%以上とすることで、高周波焼入れによってラック歯の耐摩耗性を高めることができる一方、炭素含有量が0.60質量%を超えると、ラックバーの耐衝撃性が低下し、また、高周波焼入れ時に焼割れを生じ易くなるので、炭素含有量を0.50〜0.60質量%の範囲に設定した。
【0011】
また、ラック歯形成部の表面硬さを680〜800HVに限定したのは下記の理由による。すなわち、680HV未満であると、ラック歯形成部の表面硬さが十分でなくなり、曲げ疲労に対する疲労限界が低くなる一方、800HVを超えると、表層部の靱性が低下し、静的負荷あるいは準静的負荷に対する曲げ強度が不足するからである。そこで、ラック歯形成部の表面硬さを680〜800HVとすることで、曲げ疲労に対する疲労限界を高くすると共に静的又は準静的負荷に対する十分な曲げ強度を確保するようにした。
【0012】
また、上記鋼のボロン含有量が5〜30ppmであれば好ましい。このような微量のボロンの添加により、高周波焼入れ性を向上させることができる。すなわち、高周波焼入れされた部分の粒界を強化することができ、靱性を増加させて曲げ変形能(耐割れ性)を格段に向上させることができる。このような効果を得るためのボロン含有量としては、少なくとも5ppm以上必要である一方、30ppmを超えるボロンを含有させても、その効果が飽和するので、5〜30ppmの範囲に設定することが好ましい。
【0013】
また、上記ラック歯形成部の歯底部における硬化層の有効深さ(有効硬化層深さに相当)が歯底部の表面から0.1〜1.5mmであれば好ましい。有効深さが1.5mmを超える場合には、高い衝撃を受けたときに、ラックバーの長手方向の中間部の1箇所で局部的に屈曲して「く」の字状に曲がる傾向にあり、その結果、ラックバー上をピニオンが移動できなくなるおそれがある。一方、有効深さが0.1mm未満では、ラック歯の歯元付近の曲げ強度が不足するおそれがある。そこで、有効深さを0.1〜1.5mmの範囲とすることで、歯元曲げ強度を確保しつつ大荷重負荷時にラックバー全体が緩やかに曲がるようにし、非常時のステアリング性能を確保することが可能となる。さらに好ましい有効深さは、0.3〜1.2mmである。
【0014】
上記のラックバーであれば、ステアリング装置に好適に用いることができ、さらには、電動パワーステアリング装置に好適に用いることができる。
また、本発明は、直径Dの丸棒状の本体と、この本体の周面の一部に設けられた平坦部と、この平坦部に設けられ複数のラック歯が形成されたラック歯形成部とを備えるラックバーを製造する方法において、炭素含有量が0.50〜0.60質量%の鋼からなる丸棒を焼入れ処理して一次中間体を得た後、温度660〜700℃の雰囲気温度に加熱した炉に入れて20分以下の時間で焼戻し処理を行い、室温まで冷却することにより、上記ラック歯形成部のラック歯の背面部に相当する上記鋼の背面部の表面から深さ(3/4)Dの部分の再生パーライト組織を面積百分率で0〜50%とすると共に、上記深さ(3/4)Dの部分の焼戻しベイナイト組織、焼戻しマルテンサイト組織及び再生パーライト組織の合計を面積百分率で50〜100%とした二次中間体を得、次いで、二次中間体を引き抜き加工して得られた三次中間体の周面に平坦部を形成した後、形成された平坦部にラック歯を加工して、ラック歯形成部を形成し、形成されたラック歯形成部に高周波焼入れを施した後、焼き戻し処理を行うことにより、ラック歯形成部の表面硬さをビッカース硬さで680〜800HVとすることを特徴とするラックバーの製造方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい態様を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態のステアリングラックが用いられる電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System) 1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されるピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン7aに噛み合うラック歯8aを有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8とを有している。
【0016】
ラックバー8は車体に固定されるハウジング17内に図示しない複数の軸受を介して直線往復動自在に支持されている。ラックバー8の両端部はハウジング17の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド9が結合されている。各タイロッド9は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する操向用の車輪10に連結されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック歯8aによって、自動車の左右方向に沿ってのラックバー8の直線運動に変換される。これにより、操向用の車輪10の転舵が達成される。
【0017】
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸3aと、ピニオン軸7に連なる出力軸3bとに分割されており、これら入、出力軸3a,3bはトーションバー11を介して同一の軸線上で相対回転可能に互いに連結されている。
トーションバー11を介する入、出力軸3a,3b間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ12が設けられており、このトルクセンサ12のトルク検出結果は、ECU(Electric Control Unit :電子制御ユニット)13に与えられる。ECU13では、トルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路14を介して操舵補助用の電動モータ15への印加電圧を制御する。電動モータ15の出力回転が減速機構16を介して減速されて、出力軸3b、中間軸5を介してピニオン軸7に伝達され、ラックバー8の直線運動に変換されて、操舵が補助される。
【0018】
減速機構としては、電動モータ15の図示しない回転軸に一体回転可能に連結されるウォーム軸等の小歯車16aと、この小歯車16aに噛み合うと共に出力軸16bに一体回転可能に連結されるウォームホイール等の大歯車16bとを備えるギヤ機構を例示することができる。
図2(a)はラックバー8の部分断面側面図であり、図2(b)は図2(a)のb−b線に沿う断面図である。ラックバー8は、直径Dの丸棒状の本体20と、この本体20の周面20aの一部に設けられた平坦部21と、この平坦部21に設けられラック歯形成部22とを備える。
【0019】
平坦部21は、本体20の軸線23に平行に所定長さで延び所定幅を有している。ラック歯形成部22は、複数設けられる上記のラック歯8aと、隣接するラック歯8a間に設けられる歯底部24とを含む。
上記本体20は、後述する高周波焼入れおよび短時間焼戻しが施された棒鋼を用いて形成される。本体20を形成する鋼の炭素含有量は0.50〜0.60質量%である。炭素含有量を0.50質量%とするのは、鋼材に後述する高周波焼入れを施すことにより、ラック歯8aの耐摩耗性を高めるためである。ただし、炭素含有量が0.60質量%を超えると、ラックバー8の耐衝撃特性が低下し、また、高周波熱処理時に焼割れを生じ易くなる。そのために、炭素含有量は、0.60質量%以下、好ましくは0.56質量%以下にする。
【0020】
また、本体20を構成する上記の鋼には、ボロン(B)が5〜30ppm含有されていることが好ましい。5ppm以上のボロンの添加により高周波焼入れされた部分の粒界を強化し、靱性を増加させて曲げ変形能(耐割れ性)を格段に向上させることができる一方、30ppmを超えるボロンを含有させても、その効果が飽和するので、5〜30ppmの範囲に設定されることが好ましい。
鋼の他の成分としては、Si含有量0.05〜0.5質量%、Mn含有量0.2〜1.5質量%、S含有量0.06質量%以下、Cr含有量1.5質量%以下(0質量%を含まず)を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0021】
ラックバー8の少なくともラック歯形成部22には、ラック歯8a形成後に施された高周波焼入および焼戻しによって硬化層25が設けられている。ラック歯形成部22の表面硬さがビッカース硬さで680〜800HVに設定されている。680HV未満であると、ラック歯形成部22の表面硬さが十分でなくなり、曲げ疲労に対する疲労限界が低くなる一方、800HVを超えると、表層部の靱性が低下し、静的負荷あるいは準静的負荷に対する曲げ強度が不足するからである。
【0022】
また、ラック歯形成部22において、ラック歯8a間の歯底部24での硬化層25の有効深さdは、歯底部24の表面から0.1〜1.5mmの範囲にあることが好ましい。ここで、硬化層25の有効深さdは、表面から450HVの硬さの位置までの距離で定義され、有効硬化層深さに相当する。
歯底部24における硬化層25の有効深さdが1.5mmを超える場合には、高い衝撃を受けたときに、ラックバー8の長手方向の中間部の1箇所で局部的に屈曲して「く」の字状に曲がる傾向にあり、その結果、ラックバー8上をピニオン7aが移動できなくなるおそれがある。一方、硬化層25の有効深さdが0.1mm未満では、ラック歯8aの歯元付近の曲げ強度が不足するおそれがある。
【0023】
そこで、歯底部24での硬化層25の有効深さdを0.1〜1.5mmの範囲とすることで、ラック歯8aの歯元曲げ強度を確保しつつ大荷重負荷時にラックバー8全体が緩やかに曲がるようにし、非常時のステアリング性能を確保するようにしている。歯底部24での硬化層25の有効深さdは、より好ましくは0.3〜1.2mmである。
通例、ラック歯8aはD/4程度の深さに形成されている。また、本体21の周面20aにおいて、ラック歯形成部22と直径方向の反対側にある背面部26の表面からの深さが(3/4)Dの部分27〔(3/4)D部27ともいう)で、焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織の合計の面積百分率が30〜100%であって、再生パーライト組織が面積百分率で0〜50%であり、且つ焼戻しベイナイト組織、焼戻しマルテンサイト組織および再生パーライト組織の合計の面積百分率が50〜100%であるように設定されている。これは、ラックバー8の切断面の電子顕微鏡写真により観察することができる。なお、上記の丸棒の直径Dは、20〜40mm程度、好ましくは20〜38mm、さらに好ましくは20〜36mm程度である。
【0024】
また、上記歯底部24の表面から0.1mm深さまで残留フェライトが発生していないことが好ましい。残留フェライトが発生していると、局部的に強度を低下させるおそれがあるので、これを排除するためである。
次いで、本ラックバー8の製造方法について説明する。まず、炭素含有量が0.50〜0.60質量%の鋼からなる中実(場合によって中空)の丸棒を、図3に示すように、780°C以上の加熱温度T1に加熱し、水冷にて室温まで制御冷却することによって、焼入れする。加熱温度T1を780°C以上とするのは、残留フェライトを抑制するためである。加熱温度T1としては、好ましくは800°C以上である。なお、加熱温度T1の上限は、通常860°C、好ましくは850°C程度である。
【0025】
上記の制御冷却では、上記の(3/4)D部27でのベイナイト組織およびマルテンサイト組織の合計が30%(面積百分率)以上、好ましくは40%(面積百分率)以上、さらに好ましくは50%(面積百分率)以上になるように行う必要がある。このような制御冷却の条件は、鋼の組成などに応じて適宜設定できるが、例えは、温度800〜300°C(好ましくは750〜350°C)程度の領域を、冷却速度30〜80°C/秒(好ましくは40〜70°C/秒)で冷却するのが好ましい。
【0026】
このようして得られたベイナイト組織やマルテンサイト組織が導入された一次中間体は、昇温過程を含めて20分以下の処理時間tで焼戻し処理を実施し、室温まで空冷する。焼戻し処理に使用する炉の雰囲気温度T2は660°C以上とされる。炉の雰囲気温度T2を660°C以上とすれば、20分以下の短時間の焼戻しであっても、焼戻しされた二次中間体のビッカース硬さを低減でき(例えば320HV以下にすることができ)、後に平坦部21やラック歯形成部22を加工するときの切削加工性を高めることができる。なお、炉の雰囲気温度T2は好ましくは680〜700°Cである。
【0027】
焼戻しの処理時間tを20分以下とするのは、製造コストを低減するためである。焼戻しの処理時間tとしては、好ましくは15分以下に設定される。
上記の(3/4)D部27で、焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織の合計の面積百分率が30〜100%であって、再生パーライト組織が面積百分率で0〜50%であり、且つ焼戻しベイナイト組織、焼戻しマルテンサイト組織および再生パーライト組織の合計の面積百分率が50〜100%となるように、焼き戻後の組織を制御するためには、上記の焼戻し条件(660°C以上、20分以内)の範囲内で、焼戻し温度が高過ぎたり焼戻し時間が長過ぎたりしないことが好ましい。焼戻し温度が高過ぎたり焼戻し時間が長過ぎたりすると、制御冷却によって導入したベイナイト組織およびマルテンサイト組織の面積百分率が低減し易くなり、かつパーライト組織が再生し易くなり、曲げ特性が低下してしまうからである。
【0028】
このように焼戻し処理により得られた二次中間体に引抜き加工、その後、当該二次中間体の周面の一部にフライス加工を施すことにより、平坦部21を形成し、この平坦部21にブローチ加工を施すことにより、複数のラック歯8aを含むラック歯形成部22を形成する。次いで、ラック歯形成部22に、例えば加熱時間5.5秒、水冷による冷却時間10秒の高周波焼入れを施した後、例えば170°Cで1.5時間の条件で焼戻し処理を実施し、ラック歯形成部22の表面でビッカース硬さで680〜800HVを達成し、ラックバー8を形成する。
【0029】
このようにして得られラックバー8では、上記した如く、ラック歯8aとして必要な耐摩耗性と必要な曲げ強度を確保することができる。また、(3/4)D部27に残存する焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織がクラックの内部への伝搬を防止することで、ラックバー8が2分割して割れるような破損を防止することができる。
しかも、歯底部24の硬化層25の有効深さdを歯底部24の表面から0.1〜1.5mmとすることで、歯元曲げ強度を確保しつつ大荷重負荷時にラックバー8全体が緩やかに曲がるようにし、非常時のステアリング性能を確保することが可能となる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
実施例
C含有量0.53質量%、Si含有量0.23質量%、Mn含有量0.8質量%、S含有量0.018質量%、Cr含有量0.30%、B含有量0.015%である鋼材を用いて、圧延によって直径30mmの棒鋼にした後、加熱温度780°Cに加熱し、次いで室温まで制御冷却した。冷却した棒鋼は、雰囲気温度660°Cに加熱した炉に15分滞留させることによって焼戻しした。焼戻し後の棒鋼は放冷した。より好ましくは、上記加熱温度は820°Cであり、焼戻し時の雰囲気温度は690°Cである。
【0031】
このようにして得られた棒鋼を引抜き加工して直径27.5mmにした後、切削加工により平坦部21を形成し、該平坦部21にラック歯8aを形成してラック歯形成部22とした。次いで、ラック歯形成部22に加熱時間5.5秒、水冷による冷却時間10秒の高周波焼入れを施した後、170°Cで1.5時間の条件で焼戻し処理を実施し、ラック歯形成部22に硬化層25を設けて、実施例のラックバーを製造した。
【0032】
実施例では、ラック歯形成部22の表面硬さが710HVである。ラック歯形成部22の背面部26の表面からの深さ(3/4)D部27で、焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織の合計の面積百分率が90%であって且つ再生パーライト組織が面積百分率で0%である。ラック歯形成部22の歯底部24の硬化層25の有効深さdが歯底部24の表面から0.7mmである。
比較例
C含有量0.46質量%、Si含有量0.19質量%、Mn含有量0.86質量%、S含有量0.053質量%、Cr含有量0.13質量%であって、Bを含有しない鋼材を用いて、圧延によって棒鋼に形成した後、加熱温度850°Cに加熱し、次いで室温まで冷却した。冷却した棒鋼は、雰囲気温度610°Cに加熱した炉に30分以上滞留させることによって焼戻しした。焼戻し後の棒鋼は放冷した。このようにして得られた棒鋼を用い、以後は実施例と同様にして、比較例のラックバーを製造した。
【0033】
比較例では、ラック歯形成部に通常の高周波焼入れ、焼戻しが施される。ラック歯の表面硬さが650HVである。(3/4)D部で焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織の合計の面積百分率が70%であって且つ再生パーライト組織が面積百分率で20%である。歯底部の硬化層の有効深さが歯底部の表面から0.3mmである。
これら実施例および比較例を各々2個用いて以下の試験を実施した。
正入力静的破壊試験
図4に示すような試験装置を用いた。実施例のラックバー8ないし比較例のラックバーをハウジング17に組み込み、ハウジング17の両端をそれぞれ固定支柱31に固定した。中立位置にてラックバー8を固定し、ピニオン軸7に連結したロータリーアクチュエータ32からピニオン軸7に駆動トルクを与えた。駆動トルクを増大させていき、破壊に至らせた。
【0034】
ラックバーに亀裂が発生するときの荷重は実施例が305Jであるのに対して、比較例が188Jであり、実施例の破壊強度が比較例の破壊強度と比較して、約62%増であることが判明した。
逆入力静的破壊試験
図5に示すような試験装置を用いた。実施例のラックバー8ないし比較例のラックバーをハウジング17に組み込み、ハウジング17の両端をそれぞれ固定支柱31にマウントラバー33を介して固定した。ピニオン軸7をジョイント34を介して中立位置に固定し、ラックバー8の端部を負荷シリンダ35によりロードセル36を介して押し、亀裂発生音を確認するまで荷重を負荷した。ロードセル36に接続された動歪み計37の出力をレコーダ38に記録した。
【0035】
その結果、実施例の亀裂発生荷重が平均で92N・mであるの対して、比較例の亀裂発生荷重が平均で51N・mであり、実施例の破壊強度が比較例の破壊強度と比較して、約80%増であることが判明した。
逆入力衝撃破壊試験
図6に示すような試験装置を用いた。実施例のラックバー8ないし比較例のラックバーをハウジング17に組み込み、ハウジング17の両端を固定支柱39に固定された一対の固定アーム40に固定した。ハウジング17はピニオン軸7に近い側の端部が上になるように立てて配置する。ピニオン軸7は中立位置で固定支柱41 に固定する。ピニオン軸7に近い側のラックバー8の端部に受け部材42を固定した。
【0036】
受け部材42の上方には、ガイドバー43により上下動自在に支持された重錘44が設けられ、この重錘44の下部にはロードセル45が固定されている。ロードセル45を固定した重錘44の重さは100Kgであり、ロードセル45と受け部材42との距離を20cmとして、重錘44およびロードセル45を落下させて受け部材42に衝突させ、破損に至るまでの落下回数を調べた。
ロードセル45に動歪み計46を接続し、動歪み計46の出力を電磁オシロスコープ47に記録した。
【0037】
試験の結果、比較例が平均で3回で破壊に至ったのに対して、実施例は平均で15回で破壊に至った。実施例の逆入力衝撃強度が比較例よりも格段に優れていることが実証された。
曲げ強度試験
図7に示すような試験装置を用いた。実施例のラックバー8ないし比較例のラックバーをハウジング17に組み込み、ハウジング17の両端をそれぞれ固定支柱48に固定した。ラックバー8をピニオン軸に近い側のハウジング17の端部から最大限突出させた状態で、ラックバー8の先端に固定した受け部材49を負荷シリンダ50によりロードセル51を介して押し、ラックバー8に最大負荷が得られるまで曲げ荷重を負荷した。
【0038】
ロードセル51に接続された動歪み計52の出力を荷重計53に導き、荷重を測定した。その結果、最大負荷荷重は、実施例が8.6KNであり、比較例は7.4KNであった。これにより、実施例は比較例として比較して約16%増の曲げ強度を持つことが確認された。また、双方とも、破断することなく「曲がる」ことが確認された。
正入力耐久試験
図8に示すような試験装置を用いた。実施例のラックバー8ないし比較例のラックバーをハウジング17に組み込み、ハウジング17の両端をそれぞれ固定支柱54に固定した。ラックバー8の両端にそれぞれサーボアクチュエータ55を連結した。ピニオン軸7にジョイント56およびトルクメータ57を介してロータリーアクチュエータ58を接続し、該ロータリーアクチュエータ58によりピニオン軸7に駆動トルクを与える。駆動トルクは50N・mとし、周波数0.1〜0.2Hzにて繰り返し回数を3万回とした。
【0039】
試験終了後、ピニオンへの噛み合い部分の摩耗量を測定したところ、実施例が平均8.7μmであるのに対して、比較例が平均27.8μmであり、実施例は比較例よりも約70%摩耗量が減少することが実証された。
逆入力耐久試験
図9に示すような試験装置を用いた。実施例のラックバー8ないし比較例のラックバーをハウジング17に組み込み、ハウジング17の両端をそれぞれ固定支柱59に固定した。ピニオン軸7をジョイント60を介して中立位置に固定し、ピニオン軸7に近い側のラックバー8の端部に連なるタイロッド9を介して、サーボアクチュエータ61からのラックバー8に軸力を負荷した。ラックバー8に負荷される軸力を9.8kNとし、周波数5Hzにて破損に至るまで実施した。
【0040】
その結果、比較例は35万回で破損に至ったのに対して、実施例は70万回にても破損に至らなかった。
曲げ疲労試験
実施例と同様の素材にて図10(a)に示す試験片62を作成した。試験片62は、全長Lが90mmのほぼ丸型の軸である。試験片62の一端62aから距離Nが40mmの位置を中心として、くびれ部65をR5の断面湾曲を持って形成する。くびれ部65の最小直径Rは8mmである。くびれ部65を挟んで一端62a側が直径Pが12mmである円柱部63となっている。また、くびれ部65を挟んで他端62b側が他端62b側にいくに従って次第に拡径する1/20テーパのテーパ部64となっている。テーパ部64の最大直径Qは14mmである。比較例についても同様の比較片を作成した。
【0041】
試験片62ないし比較片の曲げ疲労試験を、図10(b)に示す試験装置を用いて実施した。試験片62の一端62aから距離Mが50mmまでの部分を片持ち状に突出させる状態にて、残りのテーパ部64を固定支柱66のテーパ状の支持孔67に固定した。固定された試験片62の一端62a付近に転動ローラ68を介して負荷シリンダ69によって周波数20Hzで曲げ荷重を繰り返し負荷し、応力と繰り返し回数を測定して、S−N曲線を求めた。
【0042】
試験の結果、S−N曲線の平滑化部分(応力が収束する部分)において、比較片の応力が1270MPaであるのに対して、試験片62の応力が1450MPaであり、疲労強度が約15%向上することが実証された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のラックバーを含む電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2(a)は、ラックバーの一部破断側面図であり、図2(b)は図2(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図3】熱処理時の時間と温度の関係を示すグラフ図である。
【図4】正入力静的破壊試験の試験装置の概略図である。
【図5】逆入力静的破壊試験の試験装置の概略図である。
【図6】逆入力衝撃試験の試験装置の概略図である。
【図7】曲げ強度試験の試験装置の概略図である。
【図8】正入力耐久試験の試験装置の概略図である。
【図9】逆入力耐久試験の試験装置の概略図である。
【図10】図10(a)は試験片の概略側面図であり、図10(b)は曲げ疲労試験の試験装置の概略図である。
【符号の説明】
1 電動パワーステアリング装置(EPS)
2 操舵部材
3 ステアリングシャフト
3a 入力軸
3b 出力軸
5 中間軸
7 ピニオン軸
7a ピニオン
8 ラックバー
8a ラック歯
11 トーションバー
12 トルクセンサ
13 ECU
15 電動モータ
16 減速機構
20 本体
20a 周面
21 平坦部
22 ラック歯形成部
23 軸線
24 歯底部
25 硬化層
26 背面部
27 (3/4)Dの部分〔(3/4)D部〕
62 試験片
D 直径
d 有効深さ
[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a rack bar for steering an automobile, and a steering device and an electric power steering device using the same.
[0002]
[Prior art]
The most important characteristic required for an automotive steering rack bar is that it does not break brittlely even when an excessive load is applied statically or dynamically, and it bends even if an excessive load is applied. By causing deformation (bending deformability), it is required that the part does not completely break and separate.
The current manufacturing process of the rack bar is applied to the following processes: rolled steel, quenching and tempering, machining, induction hardening and tempering, and finishing. In order to avoid brittle fracture as much as possible, the toughness of the material is improved by performing quenching and tempering treatment instead of direct processing and induction quenching of the rolled steel, and then processing the parts and induction quenching. By applying the treatment, brittle fracture is prevented.
[0003]
Conventionally, an attempt has been made to prevent brittle fracture while omitting the quenching and tempering treatment in order to reduce the manufacturing cost in the steel material for the rack bar (Patent Document 1).
[0004]
[Patent Document 1]
Japanese Patent Laid-Open No. 10-8189
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
In recent years, electric power steering devices have become popular mainly for small cars because they can improve fuel efficiency by 3 to 5% compared to hydraulic power steering devices.
However, in the electric power steering device, the stress acting on the meshing portion between the rack bar and the pinion as a steered shaft extending in the left-right direction of the automobile is significantly larger than that of the hydraulic power steering device (for example, 6 10 times higher).
[0006]
On the other hand, in order to reduce the cost due to the mass production effect by using common parts, the rack bar having the same specifications as the rack bar used in the hydraulic power steering apparatus is also used in the electric power steering apparatus. For this reason, it is disadvantageous in terms of wear resistance and strength (including fatigue strength) of the rack bar in medium-sized cars and higher where high stress acts, and as a result, the adoption of the electric power steering device is limited to the center of small cars.
[0007]
The rack bar of Patent Document 1 that omits quenching and tempering has a drawback that the toughness for bending deformability is insufficient.
On the other hand, when performing normal quenching or tempering, there are problems that the tempering time is long and the manufacturing cost is high.
The present invention has been made in view of the above problems, and an object thereof is to provide a rack bar, a steering device, and an electric power steering device that are inexpensive and have excellent bending deformability.
[0008]
[Means for Solving the Problems and Effects of the Invention]
  In order to achieve the above object, the present invention provides a round bar-shaped main body having a diameter D formed using steel that has been quenched and tempered, a flat portion provided on a part of the peripheral surface of the main body, In the rack bar provided with the rack tooth forming part provided on the flat part and formed with a plurality of rack teeth, the carbon content of the steel is 0.50 to 0.60% by mass, and at least the rack tooth forming part A hardened layer subjected to induction hardening and tempering is provided, and the surface hardness of the rack tooth forming portion is 680 to 800 HV in terms of Vickers hardness,As a result of the tempering treatment being performed at an atmospheric temperature of 660 ° C. or more and 700 ° C. or less for a time of 20 minutes or less with respect to the round bar subjected to quenching treatment as an intermediate for manufacturing the rack bar, a product As a book rack bar,In the portion where the depth from the surface of the back portion of the rack tooth forming portion is (3/4) D, the total area percentage of the tempered bainite structure and the tempered martensite structure is 30 to 100%, and the regenerated pearlite structure is The area percentage is 0 to 50%, and the total area percentage of the tempered bainite structure, tempered martensite structure and regenerated pearlite structure is 50 to 100%.It is saidA rack bar is provided.
[0009]
Usually, the rack teeth are formed to a depth of about D / 4. Therefore, the depth from the surface of the back surface of the rack tooth forming portion is (3/4) D (hereinafter simply referred to as “(3/4) D”. Part ") generally corresponds to the boundary between the quenched part and the unquenched part. Even if a rack bar that has received a large load undergoes excessive bending deformation and cracks partially occur, it remains in the (3/4) D portion at an area percentage of at least 30%. Since the tempered bainite structure and the tempered martensite structure prevent the propagation of cracks, it is possible to prevent the rack bar from being broken and broken into two parts. In addition, the reason why the area percentage of the regenerated pearlite structure is set to 50% or less in the (3/4) D part is that the toughness is not lowered.
[0010]
By hardening the steel having a carbon (C) content of 0.50 to 0.60 mass%, the hardness and toughness necessary for a rack bar are imparted. That is, by setting the carbon content to 0.50% by mass or more, the wear resistance of the rack teeth can be increased by induction hardening, whereas when the carbon content exceeds 0.60% by mass, the rack bar resistance Since the impact property is lowered and it becomes easy to cause cracking during induction hardening, the carbon content is set in the range of 0.50 to 0.60% by mass.
[0011]
Moreover, the reason why the surface hardness of the rack tooth forming portion is limited to 680 to 800 HV is as follows. That is, if the surface hardness is less than 680 HV, the surface hardness of the rack tooth forming portion becomes insufficient and the fatigue limit for bending fatigue is lowered. On the other hand, if it exceeds 800 HV, the toughness of the surface layer portion decreases, and static load or quasi-static This is because the bending strength against the mechanical load is insufficient. Therefore, by setting the surface hardness of the rack tooth forming portion to 680 to 800 HV, the fatigue limit against bending fatigue is increased and sufficient bending strength against static or quasi-static load is ensured.
[0012]
Moreover, it is preferable if the boron content of the steel is 5 to 30 ppm. By adding such a small amount of boron, induction hardenability can be improved. That is, the grain boundary of the induction-hardened part can be strengthened, and the toughness can be increased to significantly improve the bending deformability (cracking resistance). As boron content for obtaining such an effect, at least 5 ppm or more is necessary, but even if boron exceeding 30 ppm is contained, the effect is saturated, so it is preferable to set it in the range of 5 to 30 ppm. .
[0013]
Moreover, it is preferable if the effective depth of the hardened layer (corresponding to the effective hardened layer depth) at the bottom of the rack tooth forming portion is 0.1 to 1.5 mm from the surface of the bottom of the tooth. When the effective depth exceeds 1.5 mm, when subjected to a high impact, there is a tendency to bend locally at one place in the longitudinal direction of the rack bar and bend into a "<" shape. As a result, the pinion may not be able to move on the rack bar. On the other hand, if the effective depth is less than 0.1 mm, the bending strength near the base of the rack tooth may be insufficient. Therefore, by setting the effective depth in the range of 0.1 to 1.5 mm, the entire rack bar bends gently when a heavy load is applied while ensuring the tooth root bending strength, thus ensuring the emergency steering performance. It becomes possible. A more preferable effective depth is 0.3 to 1.2 mm.
[0014]
  If it is said rack bar, it can be used conveniently for a steering device, Furthermore, it can be used suitably for an electric power steering device.
  Further, the present invention provides a round bar-shaped main body having a diameter D, a flat portion provided on a part of the peripheral surface of the main body, and a rack tooth forming portion provided on the flat portion and formed with a plurality of rack teeth. In this method, a round bar made of steel having a carbon content of 0.50 to 0.60% by mass is quenched to obtain a primary intermediate, and then an ambient temperature of 660 to 700 ° C. Tempering in a time of 20 minutes or less in a furnace heated to 1 and cooled to room temperature, the depth (from the surface of the steel back corresponding to the back of the rack teeth of the rack tooth forming portion ( 3/4) The reclaimed pearlite structure of the D portion is 0 to 50% in terms of area percentage, and the total of the tempered bainite structure, the tempered martensite structure and the regenerated pearlite structure of the depth (3/4) D portion is 50 to 10 in area percentage After forming a flat portion on the peripheral surface of the tertiary intermediate obtained by drawing out the secondary intermediate and then processing the rack teeth on the formed flat portion The rack tooth forming part is formed, induction hardening is performed on the formed rack tooth forming part, and then the surface hardness of the rack tooth forming part is set to 680 to 800 HV in terms of Vickers hardness. The present invention provides a method for manufacturing a rack bar.
[0015]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Preferred embodiments of the present invention will be described with reference to the accompanying drawings.
FIG. 1 is a schematic diagram showing a schematic configuration of an electric power steering apparatus in which a steering rack according to an embodiment of the present invention is used. Referring to FIG. 1, an electric power steering system (EPS) 1 is connected to a steering shaft 3 connected to a steering member 2 such as a steering wheel, and to the steering shaft 3 via a universal joint 4. An intermediate shaft 5, a pinion shaft 7 connected to the intermediate shaft 5 via a universal joint 6, and rack teeth 8 a meshing with a pinion 7 a provided at the tip of the pinion shaft 7. And a rack bar 8 as a steered shaft extending in the direction.
[0016]
The rack bar 8 is supported in a linearly reciprocable manner through a plurality of bearings (not shown) in a housing 17 fixed to the vehicle body. Both end portions of the rack bar 8 project to both sides of the housing 17, and tie rods 9 are coupled to the respective end portions. Each tie rod 9 is connected to a corresponding steering wheel 10 via a corresponding knuckle arm (not shown).
When the steering member 2 is operated and the steering shaft 3 is rotated, this rotation is converted into a linear motion of the rack bar 8 along the left-right direction of the automobile by the pinion 7a and the rack teeth 8a. Thereby, the steering of the steering wheel 10 is achieved.
[0017]
The steering shaft 3 is divided into an input shaft 3a connected to the steering member 2 and an output shaft 3b connected to the pinion shaft 7. These input and output shafts 3a and 3b are on the same axis line via a torsion bar 11. They are connected to each other so as to be relatively rotatable.
A torque sensor 12 is provided for detecting a steering torque based on the relative rotational displacement between the input and output shafts 3a and 3b via the torsion bar 11, and the torque detection result of the torque sensor 12 is obtained from an ECU (Electric Control Unit: electronic Control unit) 13. The ECU 13 controls the voltage applied to the steering assisting electric motor 15 via the drive circuit 14 based on a torque detection result or a vehicle speed detection result given from a vehicle speed sensor (not shown). The output rotation of the electric motor 15 is decelerated via the speed reduction mechanism 16 and transmitted to the pinion shaft 7 via the output shaft 3b and the intermediate shaft 5, and converted into a linear motion of the rack bar 8, thereby assisting steering. .
[0018]
As the speed reduction mechanism, a small gear 16a such as a worm shaft that is connected to a rotating shaft (not shown) of the electric motor 15 so as to be integrally rotated, and a worm wheel that meshes with the small gear 16a and is connected to the output shaft 16b so as to be integrally rotatable. A gear mechanism including a large gear 16b such as can be exemplified.
2A is a partial cross-sectional side view of the rack bar 8, and FIG. 2B is a cross-sectional view taken along the line bb of FIG. 2A. The rack bar 8 includes a round bar-shaped main body 20 having a diameter D, a flat portion 21 provided on a part of the peripheral surface 20 a of the main body 20, and a rack tooth forming portion 22 provided on the flat portion 21.
[0019]
The flat portion 21 extends in a predetermined length parallel to the axis line 23 of the main body 20 and has a predetermined width. The rack tooth forming portion 22 includes a plurality of rack teeth 8a provided above and a tooth bottom portion 24 provided between adjacent rack teeth 8a.
The main body 20 is formed using a steel bar that has been subjected to induction hardening and short-time tempering described later. The carbon content of the steel forming the main body 20 is 0.50 to 0.60 mass%. The reason why the carbon content is 0.50% by mass is to increase the wear resistance of the rack teeth 8a by subjecting the steel material to induction hardening, which will be described later. However, if the carbon content exceeds 0.60 mass%, the impact resistance characteristics of the rack bar 8 are deteriorated, and it becomes easy to cause a burning crack during the induction heat treatment. Therefore, the carbon content is set to 0.60% by mass or less, preferably 0.56% by mass or less.
[0020]
Further, the steel constituting the main body 20 preferably contains 5 to 30 ppm of boron (B). By adding boron of 5ppm or more, the grain boundary of the induction-hardened part can be strengthened, and the toughness can be increased to significantly improve the bending deformability (cracking resistance), while boron exceeding 30ppm is contained. However, since the effect is saturated, it is preferably set in the range of 5 to 30 ppm.
As other components of steel, Si content 0.05-0.5 mass%, Mn content 0.2-1.5 mass%, S content 0.06 mass% or less, Cr content 1.5 It contains not more than mass% (not including 0 mass%), and the balance is Fe and inevitable impurities.
[0021]
At least the rack tooth forming portion 22 of the rack bar 8 is provided with a hardened layer 25 by induction hardening and tempering performed after the rack teeth 8a are formed. The surface hardness of the rack tooth forming portion 22 is set to 680 to 800 HV in terms of Vickers hardness. If it is less than 680 HV, the surface hardness of the rack tooth forming portion 22 becomes insufficient, and the fatigue limit for bending fatigue is lowered. On the other hand, if it exceeds 800 HV, the toughness of the surface layer portion decreases, and static load or quasi-static This is because the bending strength against the load is insufficient.
[0022]
Moreover, in the rack tooth formation part 22, it is preferable that the effective depth d of the hardened layer 25 in the tooth bottom part 24 between the rack teeth 8a is in the range of 0.1 to 1.5 mm from the surface of the tooth bottom part 24. Here, the effective depth d of the hardened layer 25 is defined by the distance from the surface to the position of the hardness of 450 HV, and corresponds to the effective hardened layer depth.
When the effective depth d of the hardened layer 25 in the tooth bottom part 24 exceeds 1.5 mm, when receiving a high impact, it bends locally at one place in the middle part of the rack bar 8 in the longitudinal direction. The pinion 7a may not be able to move on the rack bar 8 as a result. On the other hand, if the effective depth d of the hardened layer 25 is less than 0.1 mm, the bending strength near the root of the rack tooth 8a may be insufficient.
[0023]
Therefore, by setting the effective depth d of the hardened layer 25 at the tooth bottom portion 24 in the range of 0.1 to 1.5 mm, the rack bar 8 as a whole is loaded when a large load is applied while ensuring the root bending strength of the rack teeth 8a. Is designed to bend gently to ensure emergency steering performance. The effective depth d of the hardened layer 25 at the root portion 24 is more preferably 0.3 to 1.2 mm.
Usually, the rack teeth 8a are formed to a depth of about D / 4. Further, on the peripheral surface 20a of the main body 21, a portion 27 [(3/4) D portion with a depth of (3/4) D from the surface of the back surface portion 26 opposite to the rack tooth forming portion 22 in the diameter direction. 27), the total area percentage of the tempered bainite structure and the tempered martensite structure is 30 to 100%, the regenerated pearlite structure is 0 to 50% in terms of area percentage, and the tempered bainite structure and tempered martensite. The total area percentage of the tissue and the regenerated perlite tissue is set to be 50 to 100%. This can be observed from an electron micrograph of the cut surface of the rack bar 8. In addition, the diameter D of said round bar is about 20-40 mm, Preferably it is 20-38 mm, More preferably, it is about 20-36 mm.
[0024]
Further, it is preferable that no residual ferrite is generated from the surface of the tooth bottom 24 to a depth of 0.1 mm. If residual ferrite is generated, the strength may be locally reduced, so that this is excluded.
Next, a method for manufacturing the rack bar 8 will be described. First, as shown in FIG. 3, a solid (in some cases hollow) round bar made of steel having a carbon content of 0.50 to 0.60 mass% is heated to a heating temperature T1 of 780 ° C. or higher. Quench by controlled cooling to room temperature with water cooling. The reason for setting the heating temperature T1 to 780 ° C. or higher is to suppress residual ferrite. The heating temperature T1 is preferably 800 ° C. or higher. The upper limit of the heating temperature T1 is usually about 860 ° C., preferably about 850 ° C.
[0025]
In the controlled cooling, the total of the bainite structure and martensite structure in the (3/4) D portion 27 is 30% (area percentage) or more, preferably 40% (area percentage) or more, more preferably 50%. It is necessary to carry out so that it may become (area percentage) or more. Such controlled cooling conditions can be appropriately set according to the composition of the steel and the like. For example, in the region where the temperature is about 800 to 300 ° C. (preferably 750 to 350 ° C.), the cooling rate is 30 to 80 °. It is preferable to cool at C / second (preferably 40 to 70 ° C./second).
[0026]
The primary intermediate in which the bainite structure and martensite structure thus obtained are introduced is tempered for a treatment time t of 20 minutes or less including the temperature rising process, and is air-cooled to room temperature. The atmosphere temperature T2 of the furnace used for the tempering process is set to 660 ° C. or higher. If the furnace atmosphere temperature T2 is set to 660 ° C. or higher, the Vickers hardness of the tempered secondary intermediate can be reduced (for example, 320 HV or lower) even in the case of tempering for 20 minutes or less. ), It is possible to improve cutting workability when the flat portion 21 and the rack tooth forming portion 22 are later processed. The furnace atmosphere temperature T2 is preferably 680 to 700 ° C.
[0027]
The reason for setting the tempering treatment time t to 20 minutes or less is to reduce the manufacturing cost. The tempering treatment time t is preferably set to 15 minutes or less.
In the above (3/4) D part 27, the total area percentage of the tempered bainite structure and the tempered martensite structure is 30 to 100%, the regenerated pearlite structure is 0 to 50% in area percentage, and tempered. In order to control the structure after tempering so that the total area percentage of the bainite structure, tempered martensite structure and regenerated pearlite structure is 50 to 100%, the above tempering conditions (660 ° C. or higher, 20 minutes) Within the range of ()), it is preferable that the tempering temperature is not too high and the tempering time is not too long. If the tempering temperature is too high or the tempering time is too long, the area percentage of the bainite structure and martensite structure introduced by controlled cooling is likely to be reduced, and the pearlite structure is likely to be regenerated, resulting in lower bending properties. Because.
[0028]
In this way, the secondary intermediate obtained by the tempering process is drawn, and then a part of the peripheral surface of the secondary intermediate is milled to form a flat portion 21. By performing broaching, a rack tooth forming portion 22 including a plurality of rack teeth 8a is formed. Next, the rack tooth forming part 22 is subjected to induction hardening with a heating time of 5.5 seconds and a cooling time of 10 seconds with water cooling, for example, and then subjected to a tempering treatment at 170 ° C. for 1.5 hours, for example. A Vickers hardness of 680 to 800 HV is achieved on the surface of the tooth forming portion 22 to form the rack bar 8.
[0029]
In the rack bar 8 thus obtained, as described above, it is possible to ensure the necessary wear resistance and the necessary bending strength as the rack teeth 8a. Further, the tempered bainite structure and the tempered martensite structure remaining in the (3/4) D portion 27 prevent the crack bar 8 from being broken into two parts, thereby preventing the rack bar 8 from being broken in two. Can do.
In addition, by setting the effective depth d of the hardened layer 25 of the tooth bottom portion 24 to 0.1 to 1.5 mm from the surface of the tooth bottom portion 24, the rack bar 8 as a whole can be secured when a large load is applied while ensuring the root bending strength. It is possible to ensure gentle steering performance by turning gently.
[0030]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described more specifically with reference to examples.
Example
C content 0.53% by mass, Si content 0.23% by mass, Mn content 0.8% by mass, S content 0.018% by mass, Cr content 0.30%, B content 0.015 % Steel was rolled into a steel bar having a diameter of 30 mm, heated to a heating temperature of 780 ° C., and then controlled to room temperature. The cooled steel bar was tempered by allowing it to stay in a furnace heated to an atmospheric temperature of 660 ° C. for 15 minutes. The steel bar after tempering was allowed to cool. More preferably, the heating temperature is 820 ° C, and the ambient temperature during tempering is 690 ° C.
[0031]
The steel bar thus obtained was drawn to a diameter of 27.5 mm, and then the flat portion 21 was formed by cutting, and the rack teeth 8a were formed on the flat portion 21 to form the rack tooth forming portion 22. . Next, the rack tooth forming portion 22 was subjected to induction hardening with a heating time of 5.5 seconds and a cooling time by water cooling of 10 seconds, and then tempered at 170 ° C. for 1.5 hours, A hardened layer 25 was provided on 22 to produce the rack bar of the example.
[0032]
In the embodiment, the surface hardness of the rack tooth forming portion 22 is 710 HV. Depth from the surface of the back surface portion 26 of the rack tooth forming portion 22 (3/4) In the D portion 27, the total area percentage of the tempered bainite structure and the tempered martensite structure is 90%, and the regenerated pearlite structure has an area. The percentage is 0%. The effective depth d of the hardened layer 25 of the bottom portion 24 of the rack tooth forming portion 22 is 0.7 mm from the surface of the bottom portion 24.
Comparative example
C content 0.46% by mass, Si content 0.19% by mass, Mn content 0.86% by mass, S content 0.053% by mass, Cr content 0.13% by mass, The steel material not containing was formed into a steel bar by rolling, heated to a heating temperature of 850 ° C., and then cooled to room temperature. The cooled steel bar was tempered by staying in a furnace heated to an ambient temperature of 610 ° C. for 30 minutes or more. The steel bar after tempering was allowed to cool. Using the bar thus obtained, a rack bar of a comparative example was manufactured in the same manner as in the examples.
[0033]
In the comparative example, normal induction hardening and tempering are performed on the rack tooth forming portion. The surface hardness of the rack teeth is 650 HV. (3/4) In part D, the total area percentage of the tempered bainite structure and the tempered martensite structure is 70%, and the regenerated pearlite structure is 20% in terms of area percentage. The effective depth of the hardened layer at the root is 0.3 mm from the surface of the root.
The following tests were conducted using two each of these examples and comparative examples.
Positive input static fracture test
A test apparatus as shown in FIG. 4 was used. The rack bar 8 of the example or the rack bar of the comparative example was assembled in the housing 17, and both ends of the housing 17 were fixed to the fixed columns 31. The rack bar 8 was fixed at the neutral position, and drive torque was applied to the pinion shaft 7 from the rotary actuator 32 connected to the pinion shaft 7. The drive torque was increased, leading to destruction.
[0034]
The load when cracks occur in the rack bar is 305 J in the example, whereas it is 188 J in the comparative example, and the fracture strength of the example is about 62% higher than the fracture strength of the comparative example. It turned out to be.
Reverse input static fracture test
A test apparatus as shown in FIG. 5 was used. The rack bar 8 of the example or the rack bar of the comparative example was incorporated in the housing 17, and both ends of the housing 17 were fixed to the fixed support 31 via the mount rubber 33. The pinion shaft 7 was fixed at the neutral position via the joint 34, the end of the rack bar 8 was pushed by the load cylinder 35 via the load cell 36, and a load was applied until cracking noise was confirmed. The output of the dynamic strain meter 37 connected to the load cell 36 was recorded on the recorder 38.
[0035]
As a result, the crack initiation load of the example is 92 N · m on average, while the crack initiation load of the comparative example is 51 N · m on average, and the fracture strength of the example is compared with the fracture strength of the comparative example. It was found that the increase was about 80%.
Reverse input impact fracture test
A test apparatus as shown in FIG. 6 was used. The rack bar 8 of the example or the rack bar of the comparative example was assembled in the housing 17, and both ends of the housing 17 were fixed to a pair of fixed arms 40 fixed to the fixed column 39. The housing 17 is arranged upright so that the end near the pinion shaft 7 is on the top. The pinion shaft 7 is fixed to the fixed support 41 at the neutral position. The receiving member 42 was fixed to the end of the rack bar 8 on the side close to the pinion shaft 7.
[0036]
A weight 44 is provided above the receiving member 42 so as to be movable up and down by the guide bar 43. A load cell 45 is fixed to the lower portion of the weight 44. The weight 44 to which the load cell 45 is fixed is 100 kg, the distance between the load cell 45 and the receiving member 42 is set to 20 cm, the weight 44 and the load cell 45 are dropped and collide with the receiving member 42 until the load cell 45 is damaged. The number of drops was examined.
A dynamic strain meter 46 was connected to the load cell 45, and the output of the dynamic strain meter 46 was recorded on an electromagnetic oscilloscope 47.
[0037]
As a result of the test, the comparative example resulted in destruction in 3 times on average, while the example resulted in destruction in 15 times on average. It was proved that the reverse input impact strength of the example was remarkably superior to that of the comparative example.
Bending strength test
A test apparatus as shown in FIG. 7 was used. The rack bar 8 of the example or the rack bar of the comparative example was assembled in the housing 17, and both ends of the housing 17 were fixed to the fixed columns 48. With the rack bar 8 protruding as far as possible from the end of the housing 17 on the side close to the pinion shaft, the receiving member 49 fixed to the tip of the rack bar 8 is pushed by the load cylinder 50 through the load cell 51, and the rack bar 8 The bending load was applied until the maximum load was obtained.
[0038]
The output of the dynamic strain meter 52 connected to the load cell 51 was guided to the load meter 53, and the load was measured. As a result, the maximum load was 8.6 KN in the example and 7.4 KN in the comparative example. Thus, it was confirmed that the example had a bending strength of about 16% increase as a comparative example. Moreover, it was confirmed that both of them “bend” without breaking.
Positive input durability test
A test apparatus as shown in FIG. 8 was used. The rack bar 8 of the example or the rack bar of the comparative example was assembled in the housing 17, and both ends of the housing 17 were fixed to the fixed columns 54. Servo actuators 55 were connected to both ends of the rack bar 8, respectively. A rotary actuator 58 is connected to the pinion shaft 7 via a joint 56 and a torque meter 57, and drive torque is applied to the pinion shaft 7 by the rotary actuator 58. The driving torque was 50 N · m, the frequency was 0.1 to 0.2 Hz, and the number of repetitions was 30,000.
[0039]
After the test was completed, the amount of wear at the portion engaged with the pinion was measured. The average of the examples was 8.7 μm, while the average of the comparative examples was 27.8 μm. % Wear has been demonstrated to decrease.
Reverse input durability test
A test apparatus as shown in FIG. 9 was used. The rack bar 8 of the example or the rack bar of the comparative example was assembled in the housing 17, and both ends of the housing 17 were fixed to the fixing columns 59. The pinion shaft 7 is fixed to the neutral position via the joint 60, and the axial force is applied to the rack bar 8 from the servo actuator 61 via the tie rod 9 connected to the end of the rack bar 8 on the side close to the pinion shaft 7. . The axial force applied to the rack bar 8 was 9.8 kN, and the test was performed at a frequency of 5 Hz until breakage.
[0040]
As a result, the comparative example was damaged at 350,000 times, whereas the example was not damaged at 700,000 times.
Bending fatigue test
A test piece 62 shown in FIG. 10A was made of the same material as in the example. The test piece 62 is a substantially round shaft having a total length L of 90 mm. A constricted portion 65 is formed with a cross-sectional curvature of R5 around a position where the distance N is 40 mm from one end 62a of the test piece 62. The minimum diameter R of the constricted portion 65 is 8 mm. One end 62a side of the constricted portion 65 is a cylindrical portion 63 having a diameter P of 12 mm. Further, a taper portion 64 having a 1/20 taper that gradually increases in diameter as the other end 62b side goes to the other end 62b side with the constricted portion 65 interposed therebetween. The maximum diameter Q of the tapered portion 64 is 14 mm. A similar comparative piece was prepared for the comparative example.
[0041]
The bending fatigue test of the test piece 62 or the comparative piece was performed using the test apparatus shown in FIG. The remaining taper portion 64 was fixed to the tapered support hole 67 of the fixed column 66 in a state where the portion with the distance M from the one end 62 a of the test piece 62 protruding in a cantilever manner was cantilevered. A bending load was repeatedly applied at a frequency of 20 Hz by a load cylinder 69 via a rolling roller 68 in the vicinity of one end 62a of the fixed test piece 62, and the stress and the number of repetitions were measured to obtain an SN curve.
[0042]
As a result of the test, in the smoothed portion of the SN curve (the portion where the stress converges), the stress of the comparison piece is 1270 MPa, whereas the stress of the test piece 62 is 1450 MPa, and the fatigue strength is about 15%. Proven to improve.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic diagram showing a schematic configuration of an electric power steering apparatus including a rack bar according to an embodiment of the present invention.
2A is a partially cutaway side view of the rack bar, and FIG. 2B is a cross-sectional view taken along the line bb of FIG. 2A.
FIG. 3 is a graph showing the relationship between time and temperature during heat treatment.
FIG. 4 is a schematic view of a test apparatus for a positive input static destructive test.
FIG. 5 is a schematic diagram of a test apparatus for a reverse input static destructive test.
FIG. 6 is a schematic view of a test apparatus for a reverse input impact test.
FIG. 7 is a schematic view of a test apparatus for a bending strength test.
FIG. 8 is a schematic view of a test apparatus for a positive input durability test.
FIG. 9 is a schematic view of a test apparatus for a reverse input durability test.
FIG. 10 (a) is a schematic side view of a test piece, and FIG. 10 (b) is a schematic diagram of a test apparatus for a bending fatigue test.
[Explanation of symbols]
1 Electric power steering system (EPS)
2 Steering member
3 Steering shaft
3a Input shaft
3b Output shaft
5 Intermediate shaft
7 Pinion shaft
7a pinion
8 rack bars
8a rack teeth
11 Torsion bar
12 Torque sensor
13 ECU
15 Electric motor
16 Reduction mechanism
20 body
20a circumference
21 Flat part
22 Rack tooth forming part
23 axis
24 tooth bottom
25 Hardened layer
26 Back side
27 (3/4) D part [(3/4) D part]
62 Specimen
D diameter
d Effective depth

Claims (6)

焼入れおよび焼戻しが施された鋼を用いて形成された直径Dの丸棒状の本体と、この本体の周面の一部に設けられた平坦部と、この平坦部に設けられ複数のラック歯が形成されたラック歯形成部とを備えるラックバーにおいて、
上記鋼の炭素含有量が0.50〜0.60質量%であり、
少なくともラック歯形成部に高周波焼入および焼戻しが施された硬化層が設けられ、
ラック歯形成部の表面硬さがビッカース硬さで680〜800HVであり、
当該ラックバーの製造用中間体としての、焼入れ処理された丸棒に対して、660°C以上700°C以下の雰囲気温度で20分以下の時間で焼き戻し処理が行われた結果、製造物としての本ラックバーの、ラック歯形成部の背面部の表面からの深さが(3/4)Dの部分で、焼戻しベイナイト組織と焼戻しマルテンサイト組織の合計の面積百分率が30〜100%であって、再生パーライト組織が面積百分率で0〜50%であり、且つ焼戻しベイナイト組織、焼戻しマルテンサイト組織および再生パーライト組織の合計の面積百分率が50〜100%とされていることを特徴とするラックバー。
A round bar-shaped main body having a diameter D formed using quenched and tempered steel, a flat portion provided on a part of the peripheral surface of the main body, and a plurality of rack teeth provided on the flat portion. In a rack bar comprising a formed rack tooth forming portion,
The carbon content of the steel is 0.50 to 0.60 mass%,
At least a hardened layer subjected to induction hardening and tempering is provided on the rack tooth forming part,
The surface hardness of the rack tooth forming part is 680 to 800 HV in terms of Vickers hardness,
As a result of the tempering treatment being performed at an atmospheric temperature of 660 ° C. or more and 700 ° C. or less for a time of 20 minutes or less with respect to the round bar subjected to quenching treatment as an intermediate for manufacturing the rack bar, a product As for this rack bar, the depth from the surface of the back part of the rack tooth forming part is (3/4) D, and the total area percentage of the tempered bainite structure and the tempered martensite structure is 30 to 100%. there are, reproduction pearlite is 0-50% in area percentage, and rack tempered bainite structure, the total area percentage of tempered martensite structure and regeneration pearlite structure, characterized in that there is a 50-100% bar.
請求項1において、上記鋼のボロン含有量が5〜30ppmであることを特徴とするラックバー。  The rack bar according to claim 1, wherein the boron content of the steel is 5 to 30 ppm. 請求項1又は2において、上記ラック歯形成部の歯底部における硬化層の有効深さが歯底部の表面から0.1〜1.5mmであることを特徴とするラックバー。  3. The rack bar according to claim 1, wherein an effective depth of the hardened layer at a tooth bottom portion of the rack tooth forming portion is 0.1 to 1.5 mm from a surface of the tooth bottom portion. 請求項1,2又は3に係るラックバーを用いることを特徴とするステアリング装置。  A steering apparatus using the rack bar according to claim 1, 2 or 3. 請求項1,2又は3に係るラックバーを用いることを特徴とする電動パワーステアリング装置。  An electric power steering apparatus using the rack bar according to claim 1, 2 or 3. 直径Dの丸棒状の本体と、この本体の周面の一部に設けられた平坦部と、この平坦部に設けられ複数のラック歯が形成されたラック歯形成部とを備えるラックバーを製造する方法において、Manufactures a rack bar having a round bar-shaped main body with a diameter D, a flat portion provided on a part of the peripheral surface of the main body, and a rack tooth forming portion provided on the flat portion and formed with a plurality of rack teeth. In the way to
炭素含有量が0.50〜0.60質量%の鋼からなる丸棒を焼入れ処理して一次中間体を得た後、After obtaining a primary intermediate by quenching a round bar made of steel having a carbon content of 0.50 to 0.60 mass%,
温度660〜700℃の雰囲気温度に加熱した炉に入れて20分以下の時間で焼戻し処理を行い、室温まで冷却することにより、上記ラック歯形成部のラック歯の背面部に相当する上記鋼の背面部の表面から深さ(3/4)Dの部分の再生パーライト組織を面積百分率で0〜50%とすると共に、上記深さ(3/4)Dの部分の焼戻しベイナイト組織、焼戻しマルテンサイト組織及び再生パーライト組織の合計を面積百分率で50〜100%とした二次中間体を得、In a furnace heated to an ambient temperature of 660 to 700 ° C., tempering is performed in a time of 20 minutes or less, and cooled to room temperature, whereby the steel corresponding to the back surface portion of the rack tooth of the rack tooth forming portion is formed. The reclaimed pearlite structure in the portion of depth (3/4) D from the surface of the back portion is made 0 to 50% in area percentage, and the tempered bainite structure and tempered martensite in the portion of depth (3/4) D. To obtain a secondary intermediate in which the total of the structure and the regenerated perlite structure is 50 to 100% by area percentage
次いで、二次中間体を引き抜き加工して得られた三次中間体の周面に平坦部を形成した後、Next, after forming a flat portion on the peripheral surface of the tertiary intermediate obtained by drawing the secondary intermediate,
形成された平坦部にラック歯を加工して、ラック歯形成部を形成し、Processing rack teeth on the formed flat part to form a rack tooth forming part,
形成されたラック歯形成部に高周波焼入れを施した後、焼き戻し処理を行うことにより、ラック歯形成部の表面硬さをビッカース硬さで680〜800HVとすることを特徴とするラックバーの製造方法。Manufacturing the rack bar characterized in that the surface hardness of the rack tooth forming part is set to 680 to 800 HV in terms of Vickers hardness by performing induction hardening after the formed rack tooth forming part is subjected to induction hardening. Method.
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