JP4311635B2 - 反射防止フィルムおよびディスプレイ用前面板 - Google Patents

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本発明は、反射防止フィルムに関し、さらに詳しくは、可視光線波長領域における反射率が低いとともに反射光の色味が制御されて表示品位が高く、かつ耐擦傷性に優れ、近赤外線吸収機能をも有する反射防止フィルムおよびディスプレイ用前面板に関するものである。
従来より、CRT、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネルなどのディスプレイ画面への外光の映り込みを防止するため、単層の低屈折率材からなる薄膜、あるいは低屈折率材からなる薄膜と高屈折率材からなる薄膜とを組み合わせた多層膜を、ディスプレイ画面の表面に配置することで、反射防止性能を得る方法が採用されている。特に、上記多層膜を用いることにより高い反射防止性能を得ることができ、従来より蒸着法やスパッタリング法などの乾式法により多層膜を形成する方法が一般的に用いられている。
ところが、これらの乾式法では生産性が悪く、製造コストが高くなるという問題があり、近年では屈折率の異なるコーティング液をフィルムなどの透明基材上にコーティングし、乾燥するという湿式法により反射防止膜を形成する検討がなされている。しかし、この湿式法では生産性は向上するものの、塗膜の表面強度が低く、耐擦傷性に問題がある。このため、コーティング液組成物として放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂を用いて塗膜を硬化させることによって表面強度を向上させる検討が行われている。
一方、近年湿式法により反射防止性能の向上と反射光の色味を制御する提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。特許文献1には、プラスチック基材からなる支持体上に、光吸収層を含み、かつ最外面が防汚性低屈折率層からなる反射防止層を設けることにより、反射光の色味を容易にコントロールできる反射防止機能、防汚性および耐擦傷性を改善した反射防止フィルムが記載されている。また、特許文献2には、透明支持体の上に屈折率の異なる3層が形成された反射防止フィルムとすることにより、反射率および反射光の色味を低減し、表示品位を改善した反射防止フィルムが記載されている。
特開2002−82205号公報 特開2003−121606号公報
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の反射防止フィルムは、450nm〜650nmの範囲の平均反射率はある程度制御することはできるが、反射光の色味としては赤紫色から青紫色の範囲での強い着色を解消することはできず、ディスプレイの表示品位としては満足できないものであった。特に、プラズマディスプレイパネルのような大画面では色味の影響は大きく、表示品位を大きく損なう赤味の制御が不十分といった問題があった。
また、特許文献2に記載のような3層構造の反射防止フィルムの場合、反射防止性能の向上を図るために高屈折率層の屈折率をより高くするように設計されている。具体的には、高屈折率層を構成する放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂の成分中に、酸化チタン微粒子などの無機微粒子を極めて高い割合で添加することにより、屈折率を高めている。このような方法により塗膜の屈折率を高めることは可能であるが、その反面樹脂成分の硬化性が不十分になりやすく、耐擦傷性が低下する問題があった。
さらに、近年大型ディスプレイとして導入が進められているプラズマディスプレイパネルにおいては、プラズマ放電を起こした際に不要な近赤外線が放出され、周辺の電子部品を用いる機器に悪影響を与え、特にテレビやエアコンなどのリモコンの誤動作を生じさせるといった問題があった。このため、近赤外線吸収剤を含むフィルムをプラズマディスプレイパネルの前面板に貼り付けるなどして対応していた。しかし、近赤外線吸収剤を含むフィルムは、反射防止フィルムとは別個のフィルムであるため、実際にプラズマディスプイパネルに使用するには、近赤外線吸収剤を含むフィルムと反射防止フィルムとをそれぞれ貼り合わせる必要があり、製造コストの上昇の原因になっていた。
本発明は、
基材と、前記基材の一方の主面側に配置された3層からなる反射防止膜とを含み、
前記基材と前記反射防止膜との間にハードコート層をさらに含み、
前記反射防止膜が、前記基材の側から順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層から形成されている反射防止フィルムであって、
前記基材が、飽和ポリエステル系樹脂をフィルム状又はシート状に加工したものであり、
前記ハードコート層の材料が、多官能若しくは単官能のアクリレートモノマー、及び、多官能若しくは単官能のアクリレートオリゴマーの少なくとも1種を含有する放射線硬化型樹脂組成物であり、
前記中屈折率層の材料が、放射線硬化型樹脂組成物に無機微粒子を均一分散させたコーティング組成物であり、
前記中屈折率層の屈折率n m が、1.57以上1.63以下、前記屈折率n m と前記中屈折率層の厚さd m との積が、110nm以上140nm以下であり、
前記高屈折率層の材料が、放射線硬化型樹脂組成物に無機微粒子を均一分散させたコーティング組成物であり、前記高屈折率層の固形分全重量中、前記無機微粒子の含有量は50重量%以上65重量%以下であり、前記無機微粒子が酸化チタンであり、
前記高屈折率層の屈折率n h が、1.76以上1.84以下であり、前記屈折率n h と前記高屈折率層の厚さd h との積が、220nm以上250nm以下であり、
前記低屈折率層の材料が、熱硬化型樹脂組成物を含むコーティング組成物であり、
前記低屈折率層の屈折率n l が、1.35以上1.43以下、前記屈折率n l と前記低屈折率層の厚さd l との積が、120nm以上140nm以下であり、
前記反射防止フィルムは、
波長450nm以上650nm以下の範囲内における光の反射率が、0.05%以上1.0%以下の範囲内にあり、
波長650nm以上750nm以下の範囲内における光の反射率が、0.05%以上1.0%以下の範囲内にあり、
CIE1931XYZ表色系の色度図における反射光の色度点(x,y)が、0.22<x<0.32、0.20<y<0.30の領域にあることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
また、本発明は、基板上に、上記反射防止フィルムが配置されていることを特徴とするディスプレイ用前面板を提供する。
本発明は、可視光線波長領域における反射率が低いとともに反射光の色味が制御されて表示品位が高く、かつ耐擦傷性に優れ、近赤外線吸収機能をも有する反射防止フィルムおよびそれを用いたディスプレイ用前面板を提供できる。
先ず、本発明の反射防止フィルムの実施の形態を説明する。本発明の反射防止フィルムは、基材と、上記基材の一方の主面側に配置された3層からなる反射防止膜とを含み、波長450nm〜650nmの範囲内における光の反射率が0.05%〜1.0%の範囲内にあり、波長650nm〜750nmの範囲内における光の反射率が0.05%〜1.5%の範囲内にあり、CIE1931XYZ表色系の色度図における反射光の色度点(x,y)が0.22<x<0.32、0.20<y<0.30の領域にあることを特徴とする。
より具体的には、本発明の反射防止フィルムの一例は、上記反射防止膜が、上記基材の側から順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層から形成され、上記中屈折率層の屈折率nmが1.55〜1.65、上記高屈折率層の屈折率nhが1.75〜1.85、上記低屈折率層の屈折率nlが1.35〜1.45であり、上記中屈折率層の屈折率nmと厚さdmとの積nmmが100nm〜150nm、上記高屈折率層の屈折率nhと厚さdhとの積nhhが210nm〜260nm、上記低屈折率層の屈折率nlと厚さdlとの積nllが120nm〜150nmである反射防止フィルムである。
また、上記反射防止膜が配置された上記基材の主面側とは反対側に近赤外線吸収層をさらに配置することが好ましい。より具体的には、上記近赤外線吸収層を含むことにより、波長850nm〜1100nmの全領域において分光透過率を0.1%〜20%とすることが好ましく、特に900nm〜1100nmの全領域において分光透過率を0.1%〜10%とすることがより好ましい。これにより、不要な近赤外線の放出を防止でき、特に本実施形態の反射防止フィルムをプラズマディプレイパネルの前面板に貼り付けることにより、不要な近赤外線の放出が防止され、周辺の電子部品を用いる機器に悪影響を与えことがなくなる。
また、上記近赤外線吸収層と上記反射防止膜との間のいずれかの部分に紫外線吸収剤をさらに含むことが好ましい。これにより、太陽光などの外光による近赤外線吸収層の劣化を防止することができる。上記紫外線吸収剤は、上記基材中に含ませるのが製造上有利である。
また、上記基材と上記反射防止膜との間にハードコート層をさらに含むことが好ましい。これにより、より優れた耐擦傷性を付与することができる。
次に、本発明のディスプレイ用前面板の実施の形態を説明する。本発明のディスプレイ用前面板の一例は、基板上に、上記で説明した反射防止フィルムが配置されたものである。上記反射防止フィルムを用いることにより、可視光線波長領域における反射率が低いとともに反射光の色味が制御されて表示品位が高く、かつ耐擦傷性に優れ、近赤外線吸収機能をも有するディスプレイ用前面板を提供できる。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の反射防止フィルムの一例を示す断面図である。本実施形態の反射防止フィルムは、基材1と、基材1の一方の主面上に形成されたハードコート層2と、ハードコート層2の上に形成された3層からなる反射防止膜3と、基材1の他方の主面上に形成された近赤外線吸収層4とを備えている。また、反射防止膜3は、基材1の側から順に中屈折率層3a、高屈折率層3b、低屈折率層3cから形成されている。
基材1の材料は、透光性を有する飽和ポリエステル系樹脂をフィルム状またはシート状に加工したものを用いることができる。フィルム状またはシート状への加工方法としては、押し出し成形、カレンダー成形、圧縮成形、射出成形、上記樹脂を溶剤に溶解させてキャスティングする方法などが挙げられる。基材1の厚さは、10μm〜500μm程度であることが好ましい。なお、上記樹脂には、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤、帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。
ハードコート層2の材料は、硬度が高く透光性を有する多官能または単官能のアクリレートモノマー、オリゴマーと光重合開始剤、各種添加剤とを含有する放射線硬化型樹脂組成物などを用いることができるが、特に表面硬度が高い放射線硬化型樹脂組成物が好ましい。さらに、上記樹脂に無機微粒子を添加することにより、より高い表面硬度が得られるとともに、樹脂の硬化による収縮を緩和できる。無機微粒子の材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、酸化ジルコニウムなどを用いることができる。
基材1の上にハードコート層2を形成する方法については特に制限はなく、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコートなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。ハードコート層2の厚さは、1μm〜10μmが好ましく、2μm〜7μmがより好ましい。
中屈折率層3aの材料は、屈折率nmが1.55〜1.65、より好ましくは1.57〜1.63で透光性を有する材料であれば特に制限されない。例えば、屈折率の高い無機微粒子を熱硬化型樹脂組成物または放射線硬化型樹脂組成物などの架橋可能な有機物成分中に均一に分散させたコーティング組成物が好適に用いられる。上記無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの微粒子を用いることができる。中でも高い導電性を有するITO微粒子またはATO微粒子を用いることでフィルムの帯電を防止する効果が得られるので特に好ましい。
ハードコート層2の上に中屈折率層3aを形成する方法については特に制限はなく、前述した各種の塗工法、印刷法により形成できる。中屈折率層3aの屈折率nmとその厚さdmとの積nmm(光学厚さ)は、100nm〜150nmが好ましく、110nm〜140nmがより好ましい。
高屈折率層3bの材料は、屈折率nhが1.75〜1.85、より好ましくは1.76〜1.84で透光性を有する材料であれば特に制限されない。例えば、屈折率の最も高い無機微粒子である酸化チタン微粒子を熱硬化型樹脂組成物または放射線硬化型樹脂組成物などの架橋可能な有機物成分中に均一に分散させたコーティング組成物が好適に用いられる。高屈折率層3bは、このコーティング組成物が強固に架橋した膜として形成される。また、酸化チタン微粒子のうち、アナターゼ構造のものには光触媒作用があり、紫外線の照射により塗膜を構成する樹脂成分や基材などの有機物を分解してしまう問題がある。そのため、光触媒作用が弱く、かつ屈折率も高いルチル構造の酸化チタン微粒子が好適に使用される。酸化チタン微粒子の量は、硬化後の高屈折率層3bの全重量に対して50重量%〜65重量%が好ましい。
中屈折率層3aの上に高屈折率層3bを形成する方法については特に制限はなく、前述した各種の塗工法、印刷法により形成できる。高屈折率層3bの屈折率nhとその厚さdhとの積nhh(光学厚さ)は210nm〜260nmが好ましく、220nm〜250nmがより好ましい。
また、上記高屈折率層3b中の有機成分の一部に、屈折率が1.60〜1.80、より好ましくは1.65〜1.75の範囲内にある有機成分を含有させることが好ましい。これにより、高屈折率層3b中の酸化チタン微粒子の量を低減しても屈折率を高めることができる。また、酸化チタン微粒子の量を低減することにより、高屈折率層3b中における有機成分の架橋性の低下が防止でき、有機成分(樹脂)の硬化が促進されて、反射防止フィルムの耐擦傷性が向上する。上記有機成分の屈折率が1.60未満では、高屈折率層3b中の酸化チタン微粒子の量の低減効果が不十分となり、1.80を超えると反射光の黄色味が強くなる傾向があり好ましくない。屈折率が1.60〜1.80の範囲内にある有機成分となり得る高屈折率有機材料としては、芳香環、硫黄、臭素などを含有する有機化合物が挙げられ、例えば、ジフェニルスルフィドおよびその誘導体などを用いることができる。
低屈折率層3cの材料は、屈折率nlが1.35〜1.45、より好ましくは1.35〜1.43で透光性を有する材料で、例えば、フッ素系またはシリコーン系の有機化合物、シリカ、フッ化マグネシウムなどの無機微粒子などを、熱硬化型樹脂組成物などの架橋可能な有機物成分中に均一に分散させたコーティング組成物が好適に用いられる。
高屈折率層3bの上に低屈折率層3cを形成する方法については特に制限はなく、前述した各種の塗工法、印刷法により形成できる。低屈折率層3cの屈折率nlとその厚さdlとの積nll(光学厚さ)は、120nm〜150nmが好ましく、120nm〜140nmがより好ましい。
近赤外線吸収層4の材料は、近赤外線を吸収する透光性を有する材料であれば特に制限されない。通常は、近赤外線を吸収する化合物を分散させた樹脂が用いられる。近赤外線を吸収する化合物としては、近赤外領域に最大吸収波長を有する有機色素が好ましく、例えば、アミニウム系、アゾ系、アジン系、アントラキノン系、インジゴイド系、オキサジン系、キノフタロニン系、スクワリウム系、スチルベン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ジイモニウム系、フタロシアニン系、シアニン系、ポリメチン系などの有機色素を用いることができる。
上記樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース樹脂、ポリブチラール樹脂などを用いることができ、またこれらの樹脂の2種以上がブレンドされたポリマーブレンドも用いることができる。
近赤外線吸収層4は、850nm〜1100nmの波長領域に最大吸収波長を有する材料を含んでいることが好ましい。近赤外線吸収層4が上記化合物を含んでいると、波長400nm〜850nmの可視光の透過率を大きく低減させることなく、波長領域850nm〜1100nmの近赤外線の透過率を低減させることが可能となる。850nm〜1100nmの波長領域に最大吸収波長を有する材料としては、上記有機色素を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これにより、本実施形態の反射防止フィルムをプラズマディスプレイパネルなどの近赤外線吸収フィルターとしても好適に用いることができる。
近赤外線吸収層4には、プラズマディスプレイパネルのネオン輝線スペクトル(オレンジ色)をカットする化合物を適宜添加することも可能である。これにより、プラズマディスプレイパネルにおいて、赤色をより鮮やかに発色させることができる。ネオン輝線スペクトルをカットする化合物としては、580nm〜620nmの波長領域に最大吸収波長を有する有機色素が使用でき、例えば、シアニン系、アズレニウム系、スクワリウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯塩系、アザポルフィリン系、ビスアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系などの有機色素を用いることができる。
(実施形態2)
図2は、本発明のディスプレイ用前面板の一例を示す断面図である。本実施形態のディスプレイ用前面板11は、強化ガラスなどの基板12の一方の主面上に実施形態1の反射防止フィルム13が配置され、他方の主面上に電磁波遮蔽体14が配置されている。また、15は電極(アース)であり、電磁波遮蔽体14の金属層と接続している。このように、実施形態1の反射防止フィルム13を用いることにより、可視光線波長領域における反射率が低いとともに反射光の色味が制御されて表示品位が高く、かつ耐擦傷性に優れ、近赤外線吸収機能をも有するディスプレイ用前面板を提供できる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
基材として、表裏両面を易接着処理した厚さ100μmの紫外線カット性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製“ルミラーQT58”)を準備した。次に、シリカ超微粒子含有アクリレート系紫外線硬化型ハードコート材(JSR製“デソライトZ7501”)100重量部とシクロヘキサノン35重量部とを混合攪拌してコーティング液を調製し、このコーティング液を上記PETフィルムの一方の表面に、マイクログラビアコータ(康井精機製)を用いてコーティングして乾燥した。その後、紫外線を300mJ/cm2の強度で照射して硬化させ、上記PETフィルムの一方の表面に厚さ4μmのハードコート層を形成した。
次に、無機超微粒子含有アクリレート系紫外線硬化型コート材(JSR製“オプスターTU4005”)100重量部、多官能アクリレート(日本化薬製“DPHA”)5重量部、およびシクロヘキサノン200重量部を混合攪拌してコーティング液を調製し、このコーティング液を上記ハードコート層の上に、上記マイクログラビアコータを用いてコーティングして乾燥した。その後、紫外線を300mJ/cm2の強度で照射して硬化させ、上記ハードコート層の表面に厚さ72nmの中屈折率層(屈折率1.60)を形成した。
続いて、酸化チタン超微粒子(石原テクノ製“TTO55(A)”)30重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学製“ライトエステルDM”)1重量部、リン酸基含有メタクリレート(日本化薬製“KAYAMER PM−21”)4重量部、シクロヘキサノン65重量部を混合した組成物をサンドグラインドミルにて分散して酸化チタン超微粒子分散体を調製し、これにアクリレート系紫外線硬化型ハードコート材(三洋化成工業製“サンラッドH−601R”)15重量部、メチルイソブチルケトン600重量部を配合分散してコーティング液を調製した。このコーティング液を上記中屈折率層の上に、上記マイクログラビアコータを用いてコーティングして乾燥した。その後、紫外線を500mJ/cm2の強度で照射して硬化させ、上記中屈折率層の表面に厚さ130nmの高屈折率層(固形分中に占める酸化チタン微粒子の量60重量%、屈折率1.80)を形成した。
さらに、フッ素系ポリマー含有熱硬化型低屈折率反射防止材(JSR製“オプスターTT1006”)100重量部とメチルイソブチルケトン20重量部とを混合攪拌してコーティング液を調製し、このコーティング液を上記高屈折率層の上に、上記マイクログラビアコータを用いてコーティングして乾燥した。その後、120℃で6分間熱処理を行い、上記高屈折率層の表面に厚さ92nmの低屈折率層(屈折率1.41)を形成した。
以上により、PETフィルムの一方の表面上に、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順番で形成された実施例1の反射防止フィルムを作製した。
なお、上記屈折率は、光学式薄膜計測システム(Scientific Computing International(SCI)製“FilmTek3000”)により測定した。
(実施例2)
実施例1の高屈折率層の形成工程において、アクリレート系紫外線硬化型ハードコート材(三洋化成工業製“サンラッドH−601R”)の配合量を16.7重量部とし、さらに高屈折率含硫黄化合物(住友精化製“MPSMA”、屈折率1.69)を1重量部配合した以外は、実施例1と同様にして高屈折率層(固形分中に占める酸化チタン微粒子の量57重量%、屈折率1.81)を形成した。それ以外は実施例1と同様にして実施例2の反射防止フィルムを作製した。
(実施例3)
ポリエステル樹脂(ユニチカ製“エリーテルUE3690”)100重量部、近赤外線吸収色素(日本化薬製“カヤソーブIRG−022”)9.5重量部、近赤外線吸収色素(日本触媒製“イーエクスカラーIR−12”)3.2重量部、ネオン光カット色素(旭電化工業製“アートクルズTY−100”)2.2重量部、シクロヘキサノン370重量部、トルエン185重量部、およびメチルエチルケトン62重量部を混合攪拌して、コーティング液を調製した。このコーティング液を実施例2の反射防止フィルムのコーティングしていない側のPETフィルム上に、前述のマイクログラビアコータを用いてコーティングして乾燥し、上記PETフィルムの表面に厚さ3μmの近赤外線吸収層を形成して、実施例3の反射防止フィルムを作製した。
(比較例1)
実施例1の中屈折率層の形成工程において、無機超微粒子含有アクリレート系紫外線硬化型コート材(JSR製“デソライトKZ7987C”)100重量部、メチルエチルケトン550重量部、およびシクロヘキサノン150重量部を混合攪拌してコーティング液を調製し、このコーティング液を前述のハードコート層の上に、前述のマイクログラビアコータを用いてコーティングして乾燥した。その後、紫外線を300mJ/cm2の強度で照射して硬化させ、上記ハードコート層の表面に厚さ85nmの中屈折率層(屈折率1.68)を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例1の反射防止フィルムを作製した。
(比較例2)
実施例1の高屈折率層の形成工程において、アクリレート系紫外線硬化型ハードコート材(三洋化成工業製“サンラッドH−601R”)の配合量を8重量部とした以外は、実施例1と同様にして高屈折率層(屈折率1.88)を形成した。それ以外は実施例1と同様にして比較例2の反射防止フィルムを作製した。
(比較例3)
実施例1の低屈折率層の形成工程において、無機超微粒子含有アクリレート系紫外線硬化型コート材(JSR製“デソライトKZ7291G”)100重量部、メチルエチルケトン900重量部、およびシクロヘキサノン400重量部を混合攪拌してコーティング液を調製し、このコーティング液を前述の高屈折率層の上に、前述のマイクログラビアコータを用いてコーティングして乾燥した。その後、紫外線を300mJ/cm2の強度で照射して硬化させて、上記高屈折率層の表面に厚さ95nmの低屈折率層(屈折率1.48)を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例3の反射防止フィルムを作製した。
次に、実施例1〜3および比較例1〜3で得られた反射防止フィルムについて、以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
(1)可視光線波長領域における反射率
分光光度計(日本分光社製“「Ubest V−570型”)を用いて、380nm〜780nmの可視光線波長領域における反射防止フィルムの反射防止膜側の反射率の測定を行い、450nm〜650nmの領域および650nm〜750nmの領域における最大反射率を測定した。
(2)測定された反射スペクトルからCIE1931XYZ表色系の色度図における反射防止フィルムの反射防止膜側の反射光の色度点(x,y)を算出し、反射光の色味を評価した。
(3)近赤外線波長領域における分光透過率
上記分光光度計を用いて、850nm〜1100nmの近赤外線波長領域における分光透過率の最大値を測定した。
(4)耐擦傷性
スチールウール(#0000:超極細)に100g/cm2の荷重を加えて、ハードコート層を形成した側の反射防止フィルムの表面を10往復擦り、傷つきの度合いを目視にて判定した。その判定基準は、A:無傷、B:僅かに傷あり、C:全面に傷あり、D:コーティング層の一部が剥離、E:コーティング層が完全に剥離とした。
Figure 0004311635
表1から明らかなように、実施例1〜3は、比較例1〜3に比べて、可視光線波長領域における反射率が低いとともに反射光の色味が制御されて無彩色化していることが分かる。
また、実施例2は、実施例1に比べて耐擦傷性が良好である。さらに、実施例3は、実施例1、2に比べて近赤外線波長領域での分光透過率が低いことが分かる。
本発明は、可視光線波長領域における反射率が低いとともに反射光の色味が制御されて表示品位が高く、かつ耐擦傷性に優れ、近赤外線吸収機能をも有する反射防止フィルムを提供でき、CRT、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネルなどのディスプレイ画面への外光の映り込みを防止するための優れたディスプレイ用前面板を提供できる。
本発明の反射防止フィルムの一例を示す断面図である。 本発明のディスプレイ用前面板の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 基材
2 ハードコート層
3 反射防止膜
3a 中屈折率層
3b 高屈折率層
3c 低屈折率層
4 近赤外線吸収層
11 ディスプレイ用前面板
12 基板
13 反射防止フィルム
14 電磁波遮蔽体
15 電極

Claims (6)

  1. 基材と、前記基材の一方の主面側に配置された3層からなる反射防止膜とを含み、
    前記基材と前記反射防止膜との間にハードコート層をさらに含み、
    前記反射防止膜が、前記基材の側から順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層から形成されている反射防止フィルムであって、
    前記基材が、飽和ポリエステル系樹脂をフィルム状又はシート状に加工したものであり、
    前記ハードコート層の材料が、多官能若しくは単官能のアクリレートモノマー、及び、多官能若しくは単官能のアクリレートオリゴマーの少なくとも1種を含有する放射線硬化型樹脂組成物であり、
    前記中屈折率層の材料が、放射線硬化型樹脂組成物に無機微粒子を均一分散させたコーティング組成物であり、
    前記中屈折率層の屈折率n m が、1.57以上1.63以下、前記屈折率n m と前記中屈折率層の厚さd m との積が、110nm以上140nm以下であり、
    前記高屈折率層の材料が、放射線硬化型樹脂組成物に無機微粒子を均一分散させたコーティング組成物であり、前記高屈折率層の固形分全重量中、前記無機微粒子の含有量は50重量%以上65重量%以下であり、前記無機微粒子が酸化チタンであり、
    前記高屈折率層の屈折率n h が、1.76以上1.84以下であり、前記屈折率n h と前記高屈折率層の厚さd h との積が、220nm以上250nm以下であり、
    前記低屈折率層の材料が、熱硬化型樹脂組成物を含むコーティング組成物であり、
    前記低屈折率層の屈折率n l が、1.35以上1.43以下、前記屈折率n l と前記低屈折率層の厚さd l との積が、120nm以上140nm以下であり、
    前記反射防止フィルムは、
    波長450nm以上650nm以下の範囲内における光の反射率が、0.05%以上1.0%以下の範囲内にあり、
    波長650nm以上750nm以下の範囲内における光の反射率が、0.05%以上1.0%以下の範囲内にあり、
    CIE1931XYZ表色系の色度図における反射光の色度点(x,y)が、0.22<x<0.32、0.20<y<0.30の領域にあることを特徴とする反射防止フィルム。
  2. 前記高屈折率層は、屈折率が1.60以上1.80以下の範囲内にある有機成分を含む請求項に記載の反射防止フィルム。
  3. 前記反射防止膜が配置された前記基材の主面側とは反対側に近赤外線吸収層をさらに配置した請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
  4. 波長850nm以上1100nm以下の全領域において分光透過率が、0.1%以上20%以下である請求項に記載の反射防止フィルム。
  5. 前記近赤外線吸収層と前記反射防止膜との間のいずれかの部分に紫外線吸収剤をさらに含む請求項またはに記載の反射防止フィルム。
  6. 基板上に、請求項1〜のいずれかに記載の反射防止フィルムが配置されていることを特徴とするディスプレイ用前面板。
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