以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるヘッドユニットを有するインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、ヘッドユニットの平面図である。
インクジェットプリンタ100は、図1に示すように、複数のインクジェットヘッド2から4色のインクを吐出するカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構111が、図1中右方に排紙部112が、それぞれ構成されており、両者の略中間に8つのインクジェットヘッド2を有するヘッドユニット5が設けられている。
インクジェットプリンタ100の内部には、給紙機構111から排紙部112に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構111には、用紙トレイ121内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ122が設けられている。ピックアップローラ122によって用紙は図1中左方から右方へ送られる。
用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ106,107と、両ローラ106,107間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト108とが配置されている。搬送ベルト108の外周面、すなわち搬送面108aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構111のすぐ下流側には、搬送ベルト108と対向する位置に押さえローラ105が配置されており、給紙機構111から送り出された用紙を搬送ベルト108の搬送面108aに押さえ付けている。
これにより、搬送面108aに押さえ付けられた用紙は、搬送面108aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって搬送される。このとき、用紙搬送方向下流側のベルトローラ106は、図示しない駆動モータから駆動力が与えられ、図1中時計回り(矢印A方向)に回転している。
用紙搬送経路の中間部でも、インクジェットヘッド2(ヘッドユニット5)と対向する領域が、用紙に画像が形成される画像形成領域となる。さらに、用紙搬送経路に沿って搬送ベルト108のすぐ下流側には、剥離部材113が設けられている。剥離部材113は、搬送ベルト108の搬送面108aに保持されている用紙を搬送面108aから剥離して、右方の排紙部112へ向けて送るように構成されている。
搬送ベルト108によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置、つまり上側にある搬送ベルト108の下面と接触することによって内周側からこれを支持するほぼ直方体形状のプラテン109が配置されている。
ヘッドユニット5は、図1及び図2に示すように、8つのインクジェットヘッド2と、8つのインクジェットヘッド2を支持する支持部材4とを有している。8つのインクジェットヘッド2は、用紙搬送方向B(図1中矢印B方向)と平行な副走査方向に沿って千鳥状に2列に配列されている。8つのインクジェットヘッド2は、隣接する2つのインクジェットヘッド2毎に1つのヘッド組1を構成しており、ヘッドユニット5は合計4組のヘッド組1を有している。各ヘッド組1を構成する2つのインクジェットヘッド2は、2つのインクジェットヘッド2の主走査方向(用紙搬送方向Bと直交する方向)の印字領域長を主走査方向に足し合わせた印字領域長とほぼ同じ印字領域長を有するように、互いに平行に支持部材4に固定されている。また、4つのヘッド組1は、組毎に異なる4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)が吐出される。
各インクジェットヘッド2は、図1及び図2に示すように、長手方向が主走査方向に伸びた細長い直方体形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、図1に示すように、ヘッド本体3を有している。ヘッド本体3の上面には、図示しないインク供給源からの供給されたインクを一時的に貯溜し、且つ、その貯溜したインクをヘッド本体3に供給するリザーバユニット6が固定されている。リザーバユニット6は、主走査方向に関してヘッド本体3よりも長く形成されたヘッド固定部6aを有している。このヘッド固定部6aは、図2に示すように、ヘッド本体3の長手方向両側(すなわち、主走査方向両側)に伸びて形成されており、支持部材4にネジ(不図示)で固定されている。
支持部材4には、各インクジェットヘッド2のヘッド本体3に対応して開口した開口部が形成されており、ヘッド本体3の下面(複数のノズル8が形成されたインク吐出面3a)が開口部から露出している。このような構成で、搬送ベルト108で搬送された用紙がヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面に向けてノズル8(図5参照)から各色のインク滴が吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像が形成される。
次に、ヘッド本体3の詳細について説明する。図3は、図1に示したヘッド本体3の平面図である。ヘッド本体3は、図3に示すように、インク流路が形成された流路ユニット7と、流路ユニット7の上面に接着された4つのアクチュエータユニット21とを有している。流路ユニット7は、主走査方向に延在した矩形平面形状を有している。図3において、流路ユニット7内に設けられた共通インク室であるマニホールド流路55が破線で描かれている。マニホールド流路55には、リザーバユニット6からのインクが複数の開口55bを通じて供給される。マニホールド流路55は、流路ユニット7の長手方向と平行に延在する複数の副マニホールド流路55aに分岐している。
流路ユニット7の上面には、平面形状が台形である4つのアクチュエータユニット21が、開口55bを避けるように、千鳥状になって2列に配列されており、流路ユニット7の上面に接着されている。各アクチュエータユニット21は、その平行対向辺(上辺及び下辺)が流路ユニット7の長手方向に沿うように配置されている。複数の開口55bは流路ユニット7の長手方向に沿って2列に配列されており、各列5個、計10個の開口55bがアクチュエータユニット21と干渉しない位置に設けられている。また、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は、流路ユニット7の幅方向(副走査方向)に部分的にオーバーラップしている。
流路ユニット7の下面であるインク吐出面3aは、アクチュエータユニット21の接着領域に対向する位置に、多数のノズル8(図4及び図6参照)がマトリクス状に配列されたインク吐出領域となっている。アクチュエータユニット21に対向する流路ユニット7の上面には、多数の圧力室10(図4参照)がマトリクス状に配列された圧力室群9が形成されている。言い換えると、アクチュエータユニット21は、圧力室群9を構成する多数の圧力室10に跨る寸法と形状を有している。
図4は、図3に示す一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図4に示すように、流路ユニット7内のアクチュエータユニット21に重なる領域には、流路ユニット7の長手方向と平行に4本の副マニホールド流路55aが延在している。各副マニホールド流路55aには、ノズル8の各々に通じる多数の個別インク流路32(後述する)が接続されている。
図5は、個別インク流路を示す断面図(図4中のV−V線に沿った断面図)である。図5から分かるように、各ノズル8は、圧力室10及びアパーチャすなわち絞り12を介して副マニホールド流路55aと連通している。このようにして、ヘッド本体3には、副マニホールド流路55aの出口からアパーチャ12、圧力室10を経てノズル8に至る個別インク流路32が圧力室10ごとに形成されている。本実施の形態では、個別インク流路32は一旦上方に向かい、流路ユニット7の上面に形成された圧力室10の一端部に至る。
さらに、個別インク流路32は、水平に延在する圧力室10の他端部から斜め下方に向かい、流路ユニット7の下面(すなわち、インク吐出面3a)に形成されたノズル8に繋がっている。全体として、各個別インク流路32は、圧力室10を頂部とする弓なり形状を有している。これにより、個別インク流路32の高密度配置を可能とし、インクの円滑な流れを実現している。
ヘッド本体3は、図5からも分かるように、上側のアクチュエータユニット21と下側の流路ユニット7とからなる積層構造体である。このうち、アクチュエータユニット21は、後で詳述するように、4枚の圧電シート41〜44(図10参照)が積層され且つ電極が配されることによってなる。また、アクチュエータユニット21に含まれる4枚の圧電シートのうちの最上層だけが、電界印加時に活性部となる部分を有する層(以下、単に「活性部を有する層」というように記する)であり、残り3層が活性部を有しない非活性層である。
一方、流路ユニット7においては、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、カバープレート29及びノズルプレート30の合計9枚のシート材が積層されている。
キャビティプレート22は、圧力室10の空隙を構成するほぼ菱形の孔(角部に丸みがつけられた孔)が、アクチュエータユニット21の貼付範囲内に多数設けられた金属プレートである。ベースプレート23は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10とアパーチャ12との連絡孔及び圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。
アパーチャプレート24は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ12となる孔のほかに圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。サプライプレート25は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ12と副マニホールド流路55aとの連絡孔及び圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。
マニホールドプレート26、27、28は、副マニホールド流路55aに加えて、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。カバープレート29は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。ノズルプレート30は、複数のノズル8が設けられた金属プレートである。ノズルプレート30のノズル8は、キャビティプレート22の1つの圧力室10につき1つずつ設けられている。これら10枚のシート21〜30は、図5に示すような個別インク流路32が形成されるように、互いに位置合わせして積層されている。
図5から明らかなように、各プレートの積層方向において圧力室10とアパーチャ12とは異なるレベルに設けられている。アパーチャ12は、圧力室10より深い位置に設けられている。これにより、図4に示すように、アクチュエータユニット21に対向した流路ユニット7内において、1つの圧力室10と連通したアパーチャ12を、当該圧力室に隣接する別の圧力室10と平面視で同じ位置に配置することが可能となっている。この結果、圧力室10同士が密着してより高密度に配列されるため、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド1により高解像度の画像印刷が実現される。
図6は、1つのヘッド組1のヘッド本体3を下方から見たときの平面図である。図6に示すように、ヘッド組1に属する2つのヘッド本体3の各インク吐出面3aには、流路ユニット7の上面に接着されたアクチュエータユニット21が占める領域と重なるインク吐出領域内において、複数のノズル8がマトリクス状に隣接配置された4つのノズル群71〜74が形成されている。
4つのノズル群71〜74は、アクチュエータユニット21と対応して千鳥状になって2列に配列されている。4つのノズル群71〜74は、台形平面形状を有するとともに、その平行対向辺が流路ユニット7の長手方向(主走査方向)に沿うように配置されている。
各ノズル群71〜74は、図6に示すように、主走査方向両端近傍における複数のノズル8によって構成された2つの三角形領域81,82と、2つの三角形領域81,82の副走査方向に沿う辺を共有しつつ複数のノズル8によって構成された1つの四角形領域83とからなる。四角形領域83を構成する複数のノズル8は、後述のように、主走査方向に沿って600dpiに相当する距離(42.3μm)で離隔されて並んでいる。また、三角形領域81,82を構成する複数のノズル8は、主走査方向に離れて並んでいる。
4つのノズル群71〜74は、各インク吐出面3aにおいて、隣接する三角形領域81,82同士が、副走査方向に関して、ほぼ全域にわたって重なるように配置されている。
また、インク吐出面3aのほぼ中心に位置する点60について、ノズル群71〜74がかたどる4つの台形が点対称となるように、ノズル群71〜74が配置されており、ノズル群71〜74を構成するそれぞれのノズル8も、点60について点対称となるように配置されている。
ヘッド組1に属する図6中左斜め下に位置する一方のインクジェットヘッド2のノズル群71の三角形領域81が、図6中右斜め上に位置する他方のインクジェットヘッド2のノズル群74の三角形領域82と、副走査方向に関して、ほぼ全域にわたって重なるように、2つのインクジェットヘッド2が互いに平行に配置されて1つのヘッド組1を構成している。
図7は、図6に示す2点鎖線で囲まれた領域の拡大平面図である。なお、図7においては、図面を分かり易くするために、一方のインクジェットヘッド2に属するノズル群71と他方のインクジェットヘッド2に属するノズル群74とを副走査方向に近づけて描いている。
各ノズル群71〜74は、図6及び図7に示すように、複数のノズル8が主走査方向に沿って配列された16列のノズル列75を有している。16列のノズル列75は互いに平行に配列されており、各ノズル列75を構成する複数のノズル8は主走査方向に沿って37.5dpiに相当する距離(677.3μm)で離隔されている。
各ノズル列75は、4本の副マニホールド流路55a(図4参照)と対向しない位置に配置されている。1本の副マニホールド流路55aに対して、その両側に2本ずつのノズル列75が対応付けられている。これらノズル列75は、各ノズル群71〜74の長辺側のノズル列75から短辺側のノズル列75に近づくに連れて、ノズル列75を構成するノズル数が徐々に減少しており、ノズル群71〜74がインク吐出領域内に収まっている。
図4及び図7には、四角形領域83において、主走査方向に37.5dpiに相当する幅を有し、副走査方向に延在する帯状領域Sが示されている。この帯状領域Sは、4つのノズル群71〜74のうちどのノズル群の四角形領域83に想定されても、当該1つのノズル群の16個のノズル8を含んでいる。これら16個のノズル8は、全ての異なるノズル列75に属している。帯状領域Sに含まれるこれら16個の各ノズル8を主走査方向に延びる直線上に射影した射影点は、この直線上に等間隔に並び、その間隔は、印字時の解像度である600dpiに相当する距離(42.3μm)に等しい。
換言すると、四角形領域83を構成する複数のノズル8は、主走査方向に関して、600dpiに相当する距離ずつ離れて並んでいる。なお、ノズル8を主走査方向に延びる直線(イ)へ射影した射影点とは、図7に示すように、副走査方向(主走査方向に垂直な方向)に平行でノズル8を通る直線(ロ)と、直線(イ)との交点のことである。
1つの帯状領域Sに属する16個のノズル8を主走査方向に延びる直線上に射影したとき、直線上の最も左に射影されるノズル8を(1)と記することとする。また、(1)の射影点から右方向に離れた点に射影されるノズル8を、(1)の射影点から近い順に(2)〜(16)と記することとする。これら16個のノズル8は、上から、(1)、(9)、(13)、(15)、(5)、(7)、(11)、(16)、(3)、(8)、(12)、(14)、(4)、(6)、(10)、(2)の順番に配置されている。図7において、各ノズル群71〜74に属する16列のノズル列75を、図7中上から下に向かって順に、第1のノズル列75a、第2のノズル列75b・・・第16のノズル列75pとした場合、ノズル(1)が、ノズル列75aに属しており、このノズル列75aに隣接するノズル列75bには、ノズル(9)が属しているという配置関係となっている。
このように、1つの帯状領域Sにおいて、1つのノズル8に注目した場合、このノズル8の主走査方向両側に配置される2つのノズル8は、副走査方向(用紙の搬送方向)に関して、ともに上方(上流側)又は下方(下流側)のいずれかに位置している。また、注目ノズル8と2つのノズル8とは、副走査方向に関して、少なくとも1以上のノズル8(ノズル列75)を介して配置されている。さらに、16個のノズル8は、主走査方向に関しては、ジグザグ状に配置している。
各インク吐出面3aにおける隣り合うノズル群71〜74がかたどる台形は、隣接する2つの台形の斜辺同士が平行且つ主走査方向について同じ位置になるように、副走査方向に関して重なっている。具体的には、ノズル群71の三角形領域82とノズル群72の三角形領域81、ノズル群72の三角形領域82とノズル群73の三角形領域81、及び、ノズル群73の三角形領域82とノズル群74の三角形領域81とが、副走査方向に関してほぼ全域にわたって重なっている。
このように重なった三角形領域81,82に属するノズル8は、後述のように、ヘッド組1の一方のインクジェットヘッド2の三角形領域81と、他方のインクジェットヘッド2の三角形領域82との相補関係と同様となっている。この重なり領域81,82において、四角形領域83と同様の帯状領域Rを想定すると、この帯状領域R内のノズル8には、四角形領域83におけるノズル8同士と同様の相対的位置関係がある。この場合、隣接する2つのノズル群のそれぞれに属するノズル8の間では、両ノズル群の副走査方向への離隔分(距離)を考慮する必要がある。しかし、主走査方向に関しては、印字の解像度に対応した等間隔ですべてのノズル8が配置されている。そのため、1つのインクジェットヘッド2の主走査方向の幅全体に亘って途切れず印字できる。
なお、4つのノズル群71〜74によって途切れず印字できる正味の幅は、4つのノズル群71〜74に含まれる各ノズル8を主走査方向に延びる直線上に射影した射影点が、この直線上に等間隔に並んでいる線分部分の長さに等しい。
1つのインクジェットヘッドにおける上記線分部分の長さとしては、4つのノズル群71〜74の主走査方向に関する幅から、主走査方向に関して最も外側にあるノズル群71の三角形領域81及びノズル群74の三角形領域82の幅を引いた長さに等しい。
本実施形態においては、2つのインクジェットヘッド2で1つのヘッド組1を構成しており、一方のインクジェットヘッド2のノズル群71の三角形領域81と他方のインクジェットヘッド2のノズル群74の三角形領域82とが上記と同様に、副走査方向に関してほぼ全域にわたって重なっており、互いに相補関係を持たせてある。なお、上記線分部分の長さは、ヘッド組1に属する8つのノズル群71〜74の主走査方向に関する幅から、主走査方向に関して最も外側にあるノズル群71の三角形領域81及びノズル群74の三角形領域82の幅を引いた長さに等しい。
ここで、図7及び図8を用いて、一方のインクジェットヘッド2のノズル群71の三角形領域81と、他方のインクジェットヘッド2のノズル群74の三角形領域82とが、互いに相補関係を持たせつつ、副走査方向に関してほぼ全域にわたって重なった構成の詳細を説明する。図8は、副走査方向に関して互いに重なった三角形領域及びその領域近傍に属するノズルから主走査方向に延在した直線に射影した射影点を示す図である。なお、図8において、白丸が三角形領域81に属するノズル8から射影した点であり、黒丸が三角形領域82に属するノズル8から射影した点である。
図7には、1つのヘッド組1に属する一方のインクジェットヘッド2のノズル群71の三角形領域81と、他方のインクジェットヘッド2のノズル群74の三角形領域82とが重なった領域において、主走査方向に37.5dpiに相当する幅(677.3μm)を有し、副走査方向に延在する複数の帯状領域R1〜R8が図7中左方から右方に向かって順に示されている。各帯状領域R1〜R8は、三角形領域81,82にそれぞれ属するノズル8を少なくとも1つ以上含みつつ合計16個のノズル8を含んでいる。これら16個のノズル8は、すべて異なるノズル列75に属している。
これら8つの帯状領域R1〜R8のそれぞれに含まれる16個のノズル8を、図8に示すように、主走査方向に延びる直線上に射影した射影点は、この直線上に等間隔に並び、その間隔は、印字時の解像度である600dpiに相当する距離(42.3μm)に等しい。換言すると、重なった三角形領域81,82を構成するすべてのノズル8は、主走査方向に関して、600dpiに相当する距離ずつ離れて並んでいる。
なお、図8に示すように、三角形領域81に属するノズル8から射影した点(白丸)だけ、及び、三角形領域82に属するノズル8から射影した点(黒丸)だけを見ると、ともに主走査方向に関して離れて並んでいるものの、600dpiに相当する距離ずつ離れて等間隔に並んでいない。
図8に示すように、帯状領域R1には、三角形領域81に属するノズル8が14個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が2個含まれている。これら16個のノズル8は、主走査方向に関して、異なる三角形領域81,82に属する少なくとも1以上のノズル8を互いに挟んで配置されている。具体的には、図8に示すように、三角形領域82に属する2つのノズル8が、主走査方向に関して、三角形領域81に属する7つのノズル8を挟んでいる。また、三角形領域82に属する2つのノズル8は、帯状領域R1において、三角形領域81に属するノズル8のうち、図8中左から1番目のノズル8と3番目のノズル8と、9番目のノズル8と11番目のノズル8とによってそれぞれ挟まれている。
帯状領域R2には、三角形領域81に属するノズル8が12個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が4個含まれている。これら16個のノズル8も、主走査方向に関して、異なる三角形領域81,82に属する少なくとも1以上のノズル8を挟んで配置されている。帯状領域R3には、三角形領域81に属するノズル8が10個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が6個含まれている。これら16個のノズル8も、主走査方向に関して、異なる三角形領域81,82に属する少なくとも1以上のノズル8を互いに挟んで配置されている。帯状領域R4には、三角形領域81に属するノズル8が8個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が8個含まれている。これら16個のノズル8は、主走査方向に関して、異なる三角形領域81,82に属するノズル8を1つずつ挟んで交互に配置されている。
帯状領域R5には、三角形領域81に属するノズル8が6個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が10個含まれている。これら16個のノズル8も、主走査方向に関して、異なる三角形領域81,82に属する少なくとも1以上のノズル8を互いに挟んで配置されている。帯状領域R6には、三角形領域81に属するノズル8が4個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が12個含まれている。これら16個のノズル8も、主走査方向に関して、異なる三角形領域81,82に属する少なくとも1以上のノズル8を互いに挟んで配置されている。
帯状領域R7には、三角形領域81に属するノズル8が2個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が14個含まれている。これら16個のノズル8も、主走査方向に関して、異なる三角形領域81,82に属する少なくとも1以上のノズル8を互いに挟んで配置されている。帯状領域R8には、三角形領域81に属するノズル8が1個含まれ、三角形領域82に属するノズル8が15個含まれている。
このように、帯状領域R1〜R8においては、三角形領域81,82に属するノズル8がそれぞれ少なくとも1以上含まれた16個のノズル8が、主走査方向に関して600dpiに相当する距離ずつ離れ、重なった三角形領域81、82に属するノズル8同士で相補関係が構成されている。このため、一方のインクジェットヘッド2及び他方のインクジェットヘッド2の主走査方向の幅全体に亘って途切れず印字することが可能になる。
これより、ヘッド組1に属する2つのインクジェットヘッド2の8つノズル群71〜74によって途切れず印字できる正味の幅は、上述のようにヘッド組1に属する8つのノズル群71〜74の主走査方向に関する幅から、主走査方向に関して最も外側にあるノズル群71の三角形領域81及びノズル群74の三角形領域82の幅を引いた長さに等しい。
このように構成されたヘッド組1において、アクチュエータユニット21内を用紙の搬送に合わせて適宜駆動させると、主走査方向に関して2つのインクジェットヘッド2の印字幅で600dpiの解像度を有する画像を形成することができる。
図4に戻って、アクチュエータユニット21の貼付範囲内には、多数の圧力室10からなる圧力室群9が形成されている。圧力室群9は、アクチュエータユニット21の貼付範囲とほぼ同じ大きさの台形形状を有している。圧力室群9は、各アクチュエータユニット21について1つずつ形成されている。
図4から明らかなように、圧力室群9に属する各圧力室10は、その長い方の対角線の一端においてノズル8に連通されていると共に、長い対角線の他端においてアパーチャ12を介して副マニホールド流路55aに連通されている。後述するように、アクチュエータユニット21上には、平面形状がほぼ菱形で圧力室10よりも一回り小さい個別電極35(図9及び図10参照)が、圧力室10と対向するようにマトリクス状に配列されている。なお、図4において、図面を分かりやすくするために、流路ユニット7にあって破線で描くべき、ノズル8、圧力室10及びアパーチャ12等を実線で描いている。
圧力室10は、主走査方向及び方向Cの2方向に千鳥状配列パターンでマトリクス状に隣接配置されている。圧力室10の短い方の対角線は主走査方向と平行である。圧力室10の一斜辺と平行な方向は、主走査方向との間の角度が鈍角θであり、方向Cと平行である。そして、圧力室10の両方の鋭角部は、隣接する別の2つの圧力室の間に位置している。
主走査方向及び方向Cの2方向にマトリクス状に隣接配置された圧力室10は、主走査方向に沿って37.5dpiに相当する距離ずつ離隔している。また、圧力室10は、1つのアクチュエータユニット21と対向する領域内において、方向Cに16個並べられている。
マトリクス状に配置された多数の圧力室10は、主走査方向に沿って、複数の圧力室列11を形成している。圧力室列11は、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、副マニホールド流路55aとの相対位置に応じて、第1の圧力室列11a、第2の圧力室列11b、第3の圧力室列11c、及び、第4の圧力室列11dに分けられる。これら第1〜第4の圧力室列11a〜11dは、アクチュエータユニット21の上辺から下辺に向けて、11c→11d→11a→11b→11c→11d→…→11bという順番で周期的に4個ずつ配置されている。
第1の圧力室列11aを構成する圧力室10a及び第2の圧力室列11bを構成する圧力室10bにおいては、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、ノズル8が図4の紙面下側に偏在している。そして、ノズル8が、それぞれ対応する圧力室10の下端部付近と対向している。
一方、第3の圧力室列11cを構成する圧力室10c及び第4の圧力室列11dを構成する圧力室10dにおいては、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、ノズル8が図4の紙面上側に偏在している。そして、ノズル8が、それぞれ対応する圧力室10の上端部付近と対向している。
第1及び第4の圧力室列11a、11dにおいては、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、圧力室10a、10dの半分以上の領域が、副マニホールド流路55aと重なっている。第2及び第3の圧力室列11b、11cにおいては、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、圧力室10b、10cのほぼ全領域が、副マニホールド流路5aと重なっていない。そのため、いずれの圧力室列11に属する圧力室10についてもこれに連通するノズル8が副マニホールド流路55aと重ならないようにしつつ、副マニホールド流路55aの幅を可能な限り広くして各圧力室10にインクを円滑に供給することが可能となっている。
アクチュエータユニット21との対向領域内では、圧力室10が、主走査方向、副走査方向及び方向Cに関して、それぞれ等間隔でマトリクス状に配置されている。一方、ノズル8は、上述のように、副マニホールド流路55aを避けるとともに、副マニホールド流路55aを挟んで上側と下側とで、圧力室10に対する位置関係が異なっている。そのため、ノズル8は、主走査方向に等間隔で、全体としてはマトリクス状に配置されている。
次に、アクチュエータユニット21の構成について説明する。アクチュエータユニット21上には、圧力室10と同じパターンで多数の個別電極35がマトリクス状に配置されている。各個別電極35は、平面視において圧力室10と対向する位置に配置されている。
図9は個別電極35の平面図である。図9に示すように、個別電極35は、圧力室10と対向する位置に配置されて平面視において圧力室10内に収容される主電極領域35aと、主電極領域35aにつながっており且つ圧力室10外に対向する位置に配置された補助電極領域35bとから構成されている。各個別電極35は、略1μmの厚みを有している。
図10は、図9のX−X線に沿った断面図である。図9に示すように、アクチュエータユニット21は、それぞれ厚みがほぼ同じである4枚の圧電シート41、42、43、44を含んでいる。これら圧電シート41〜44は、ヘッド本体3内の1つのインク吐出領域内に形成された多数の圧力室10に跨って配置されている。圧電シート41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。
最上層の圧電シート41上に形成された個別電極35の主電極領域35aは、図9に示すように、圧力室10とほぼ相似である略菱形の平面形状を有している。つまり、その菱形の各部は、滑らかな曲線(円弧)状に形成されている。略菱形の主電極領域35aにおける下方鋭角部は延出されて、圧力室10外に対向する補助電極領域35bにつながっている。補助電極領域35bの先端には、個別電極35と電気的に接続された円形のランド部36が設けられている。
図10に示すように、ランド部36は、キャビティプレート22において圧力室10が形成されていない領域に対向している。ランド部36は、例えばガラスフリットを含む金からなり、図9に示すように、補助電極領域35bにおける延出部表面上に形成されている。ランド部36は、図示しない配線基板に設けられた接点と電気的に接合されている。
最上層の圧電シート41とその下側の圧電シート42との間には、圧電シート41と同じ外形及び略2μmの厚みを有する共通電極34が介在している。個別電極35及び共通電極34は共に、例えばAg−Pd系などの金属材料からなる。
共通電極34は、図示しない領域において接地されており、すべての圧力室10に対応する領域において等しく一定の電位、本実施の形態ではグランド電位に保たれている。また、個別電極35は、各圧力室10に対応するものごとに電位を制御することができるように、個別電極35ごとに独立した別のリード線を含む配線基板及びランド部36を介してドライバIC(不図示)に接続されている。
次に、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21における圧電シート41の分極方向はその厚み方向である。つまり、アクチュエータユニット21は、圧電シート41を活性部が存在する層とし且つ3枚の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。従って、個別電極35を正又は負の所定電位とすると、圧電シート41中の電極に挟まれた電界印加部分が活性部(圧力発生部)として働き、例えば電界と分極とが同方向であれば圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。
一方、3枚の圧電シート42〜44は、外部から電界が印加されることが無く、そのために活性部としてほとんど機能しない。つまり、圧電シート41において主に主電極領域35aと共通電極34とによって挟まれた部分が、圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。他の圧電シート42〜44は、この変位を規制する。これによって、圧電シート41〜44全体が非活性側、すなわち、圧力室側へ凸となるように変形する。このため、圧力室10の容積が低下して、インクの圧力が上昇し、ノズル8からインクが吐出される。その後、個別電極35を共通電極34と同じ電位に戻すと、圧電シート41〜44は元の形状になって圧力室10の容積が元の容積に戻るので、インクを副マニホールド流路55a側から吸い込む。
なお、他の駆動方法として、予め個別電極35を共通電極34と異なる電位にしておき、吐出要求があるごとに個別電極35を共通電極34と一旦同じ電位とし、その後所定のタイミングにて再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にすることもできる。この場合は、個別電極35と共通電極34とが同じ電位になるタイミングで、圧電シート41〜44が元の形状に戻ることにより、圧力室10の容積は初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加し、インクが副マニホールド流路55a側から圧力室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にしたタイミングで、圧電シート41〜44が圧力室10側へ凸となるように変形し、圧力室10の容積低下によりインクへの圧力が上昇し、インクが吐出される。
<印字時の動作例>
再び図4に戻って、図4中に示された帯状領域Sは図7中に示すものと同じ帯状領域Sであって、この帯状領域S中では、16列の圧力室列11a〜11dの内の何れの列についても、ノズル8が1つしか存在していない。これにより、各圧力室列11a〜11dが図7に示す第1のノズル列75a〜第16のノズル列75pと対応していることがわかる。なお、図7においては、ヘッド本体3を下から見ているので、ノズル列75に対応する圧力室列11の上下が逆さまになっている。
例えば、600dpiの解像度で主走査方向に延びる直線を印字する場合について説明する。図4において、ノズル8(及び圧力室10)が、一番下から順次上方に、互いに隣接するインクのドットを形成するように配列されている参考例の場合(図示せず)について簡単に説明する。
この場合には、用紙が搬送されるのに対応して、搬送方向の一番上流側に位置する圧力室列中のノズル8からインクの吐出を始め、順次上側に隣接する圧力室列に属するノズル8を選択してインクを吐出する。これにより、ドットが主走査方向に向かって600dpiの間隔で隣接しながら形成されていく。最終的には、全体で600dpiの解像度で主走査方向に延びる直線が描かれることになる。
本実施の形態では、図4中一番下に位置する圧力室列11b中のノズル8からインクの吐出を始め、用紙が搬送されるのに伴って順次上側に隣接する圧力室に連通するノズル8を選択してインクを吐出していく。このとき、下側から上側に1圧力室列上がるごとのノズル位置の主走査方向での配設位置が同じでないので、用紙が搬送されるのに伴って主走査方向に沿って順次形成されるインクのドットは、600dpiの間隔で等間隔にはならない。
すなわち、図4に示したように、用紙が搬送されるのに対応して、まず図中一番下の圧力室列11bに連通するノズル(1)からインクが吐出され、用紙上に37.5dpiに相当する間隔でドット列が形成される。この後、用紙の搬送に伴って、直線の形成位置が下から2番目の圧力室列11aに連通するノズル(9)の位置に達すると、このノズル(9)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の8倍だけ主走査方向に変位した位置に2番目のインクドットが形成される。
次に、用紙の搬送に伴って、直線の形成位置が下から3番目の圧力室列11dに連通するノズル(13)の位置に達すると、ノズル(13)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の12倍だけ主走査方向に変位した位置に3番目のインクドットが形成される。さらに、用紙の搬送に伴って、直線の形成位置が下から4番目の圧力室列11cに連通するノズル(15)の位置に達すると、ノズル(15)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドットの位置から600dpiに相当する間隔分の14倍だけ主走査方向に変位した位置に4番目のインクドットが形成される。さらに、用紙の搬送に伴って、直線の形成位置が下から5番目の圧力室列11bに連通するノズル(5)の位置に達すると、ノズル(5)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の4倍だけ主走査方向に変位した位置に5番目のインクドットが形成される。
以下同様にして、順次図中下側から上側に位置する圧力室10に連通するノズル8を選択しながらインクドットが形成されていく。このとき、図4中に示したノズル8の番号をNとすると、(倍率n=N−1)×(600dpiに相当する間隔)に相当する分だけ、始めに形成されたドット位置から主走査方向に変位した位置にインクドットが形成される。最終的に16個のノズル8を選択し終わったときには、図中一番下のノズル(1)により37.5dpiに相当する間隔で形成されたインクドットの間が600dpiに相当する間隔毎に離れて形成された15個のドットで繋げられ、全体で600dpiの解像度で主走査方向に延びる直線を描くことが可能になっている。
なお、インクジェットヘッド毎の4つのノズル群71〜74の隣接した三角形領域81,82同士、及び、ヘッド組1の一方のインクジェットヘッド2のノズル群71の三角形領域81と他方のインクジェットヘッド2のノズル群74の三角形領域82とが、主走査方向に関して上記のように相補関係となることで、600dpiの解像度での印刷が可能となっている。
上述のように、四角形領域83での印字動作では、(1)、(9)、(13)、(15)、(5)、(7)、(11)、(16)、(3)、(8)、(12)、(14)、(4)、(6)、(10)、(2)の順にインクを吐出して画像が形成されている。しかし、三角形領域81,82同士の重なり領域では、1つのインクジェットヘッド2の中でも、また2つのインクジェットヘッド2間でも、対応するノズル群同士がそれぞれの間隙で副走査方向に離隔している。そのため、印字動作もこの離隔を加味したものとなっている。
1つのインクジェットヘッド2内の重なり領域において、1つの帯状領域R(例えば、R2)では、16個のノズル8のうち、(1)、(9)、(13)、(15)、(5)、(7)、(11)、(16)、(3)、(8)、(12)及び(4)が一方のノズル群に属し、(14)、(6)、(10)及び(2)がこれに隣接する他方のノズル群に属している。四角形領域83では、上述の印字手順にあるように、用紙の搬送に伴って、ノズル8は(1)、(9)、(13)、(15)、(5)、(7)、(11)、(16)、(3)、(8)、(12)の順にインク滴を吐出していく。次の(14)のノズル8は、別のノズル群に属している。そのため、(14)のノズル8からの吐出は、四角形領域83での(12)と(14)との離隔距離に、2つのノズル群の離隔距離を加えた距離を、用紙が搬送される時間の後となる。この時間内には、用紙は、一方のノズル群にある(4)のノズル8に到達するので、このノズル8が先にインクを吐出する。この後、用紙の搬送に伴って、他方のノズル群に属する(14)、(6)、(10)及び(2)の順で吐出される。
さらに、帯状領域R2の隣の帯状領域R3では、(1)、(9)、(13)、(15)、(5)、(7)、(11)、(16)、(3)及び(8)が一方のノズル群に属し、(12)、(14)、(4)、(6)、(10)及び(2)が他方のノズル群に属している。この領域では、(8)のノズル8から吐出した後、四角形領域83での(8)と(12)との離隔距離に、2つのノズル群の離隔距離を加えた距離を、用紙が搬送される時間だけ待って、(12)のノズル8から吐出されることとなる。
以上のように、1つのインクジェットヘッド2内の重なり領域では、各帯状領域Rについて、ノズル8の所属が一方のノズル群から他方のノズル群に移るところで、両ノズル群の離隔距離に対応した待ち時間が生じている。主走査方向で隣接し、搬送方向で異なるノズル群に属するノズル8の間では、四角形領域83での吐出タイミングのずれ(時間差)にこの待ち時間を加えた時間内に、上流側(一方)のノズル群中のノズル8があれば、このノズル8が先に吐出されることになり、四角形領域83での吐出順と異なっている。
本実施形態では、四角形領域83と吐出順が前後するノズル8が含まれる帯状領域Rが、四角形領域83と同じ吐出順の領域と交互に形成されている。2つのインクジェットヘッド2間でも、同様である。この場合には、端部同士の重なり領域において、インクジェットヘッド2間の離隔距離に対応した時間を待って、他方のノズル群中のノズル8が吐出される。これにより、8つのノズル群71〜74から吐出されたインクによって記録される画像が途中で途切れなくなる。
以上のような本実施形態によるヘッドユニット5によると、主走査方向に関する印字領域が、長尺なインクジェットヘッドの印字領域(すなわち、2つのインクジェットヘッド2の主走査方向に関する印字領域を足し合わせた合計印字領域とほぼ同じ印字領域)とほぼ同じ印字領域を有するように2つのインクジェットヘッド2が組み合わされているので、一つの長尺なインクジェットヘッドを製造する必要がなくなり、歩留まりが向上する。
また、ヘッド組1の一方のインクジェットヘッド2のノズル群71の三角形領域81と、他方のインクジェットヘッド2のノズル群74の三角形領域82とがほぼ全域にわたって重なり、且つ、重なった三角形領域81,82に属するすべてのノズルが主走査方向に関して600dpiに相当する間隔で離れて並んでいるので、一方及び他方のインクジェットヘッド2で形成される画像の色に色調差があっても、重なった三角形領域81,82部分で徐々に色調が変化することになって、その境界部分の色調差が目立ちにくくなる。
また、重なった三角形領域81,82におけるどの帯状領域R1〜R8においても、三角形領域81,82にそれぞれ属するノズル8が分散して混在しているので、より色調差が目立ちにくくなる。
また、重なった三角形領域81,82における帯状領域R1〜R7においては、三角形領域81,82に属するノズル8が、異なる三角形領域81,82に属する少なくとも1以上のノズル8を互いに挟んで配置されているので、より色調差が目立ちにくくなる。なお、帯状領域R8は、三角形領域81に属するノズル8を1つだけ含んでいるので、三角形領域81,82にそれぞれ属するノズル8同士で互いに挟むような配置にはなっていないが、帯状領域R7及び帯状領域R8に属する三角形領域82のノズル8に挟まれている。
また、ノズル群71〜74が、主走査方向に関して四角形領域83を挟む両側に三角形領域81,82を有しているので、ヘッド組1を構成する際に、重なる三角形領域81,82の相補関係を変えずに、一方のインクジェットヘッド2を図6中左斜め上側に配置し、他方のインクジェットヘッド2を右斜め下側に配置することも可能になる。つまり、インクジェットヘッド2の配置の自由度が向上する。また、インク吐出面3aにおいて、4つのノズル群71〜74が点対称に配列されているので、多くのノズル群71〜74を有するインクジェットヘッド2を製造しやすくなる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態におけるヘッド組1は、2つのインクジェットヘッド2からなるが、印字領域が主走査方向に延びるように、3以上のインクジェットヘッドが配列されていてもよい。また、ヘッドユニット5は、4つのヘッド組1を有しているが、1〜3及び5以上のヘッド組を有していてもよい。また、インクジェットヘッド2には、4つのノズル群71〜74が形成されているが、1〜3及び5以上のノズル群が形成されていてもよい。この場合においても、ヘッド組を構成する際に、三角形領域81,82の相補関係が変わらず維持されていることが望ましい。また、ヘッド組を構成したときに、主走査方向に関して最も外側に存在するノズル群の外側の三角形領域はなくてもよい。また、隣接するノズル群71〜74同士が互いに相補関係を保っておれば、インク吐出面の中心点60に対して点対称に配列されていなくてもよい。
また、インクジェットヘッド2に形成されるノズル群は、三角形領域と四角形領域とから構成されておれば、上述したように、その外形形状は台形形状に限定されるものではなく、平行四辺形であってもよく、台形形状と平行四辺形形状が組み合わされていてもよい。いずれも、三角形領域の斜辺部が、隣接するノズル群同士で平行に配置されているとよい。つまり、複数のノズルがマトリクス状に配列された複数のノズル群が、インクジェットヘッド2の長辺方向に所定の群間隔で並設されている。これらのノズル群は、台形形状および平行四辺形形状の少なくとも1種類の形状を有している。さらに、これら複数のノズル群が、インクジェットヘッド2の短辺方向における中心に対して、この短辺方向に平行な相反する方向に交互に等距離偏倚して配置された構成である。これによって、インクジェットヘッド2は、長辺方向および短辺方向にコンパクトな形状となり、複数のインクジェットヘッド2を組み合わせる場合でも、全体にコンパクトなヘッドユニット5が得られることになる。
さらに、隣接するノズル群同士でも、点対称の関係を有していてもよい。これにより、ノズル群の占める領域の外形が、1種類で済む。このとき、アクチュエータユニット21も1種類で済むので、インクジェットヘッドの製造が容易となり、コストの低減にも寄与する。