JP4309703B2 - 符号化誤差推定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、符号化誤差推定装置に係り、特に圧縮符号化された映像信号の符号化誤差を推定する符号化誤差推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば伝送画像は、圧縮符号化により画像品質が劣化する。そこで、放送局や回線事業者などの監視設備では、圧縮符号化により伝送画像の画像品質がどの程度劣化したのかを自動監視技術を用いて自動監視している。従来の自動監視技術は、圧縮符号化前の原画(素材画像)と圧縮符号化後の受信画像(復号画像)との比較に基づくもの、圧縮符号化後の受信画像のみに基づくものがある。
【0003】
圧縮符号化前の原画と圧縮符号化後の受信画像との比較に基づく自動監視技術では、原画および受信画像の位相を合わせ、両者の差分量を画素単位で計測するPSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio)と呼ばれる値が用いられてきた。
【0004】
また、圧縮符号化後の受信画像のみに基づく自動監視技術では、圧縮符号化前の原画を必要とせず、伸張復号化後の受信画像に含まれる符号化特有の劣化を画像解析によって評価する手法が用いられてきた。
【0005】
引用文献1には、圧縮符号化後の受信画像のみに基づく自動監視技術の一例が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特表2003−501850
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧縮符号化前の原画と圧縮符号化後の受信画像との比較に基づく自動監視技術では、圧縮符号化前の原画を必要とするため、受信画像の画像品質がどの程度劣化したのかを原画を持たない映像配信先で監視することができないという問題があった。
【0008】
また、圧縮符号化器の圧縮・伸張処理によって原画が入力されてから受信画像が復号化されるまでに時間的な遅延を発生するため、原画と受信画像とのフレーム同期を合わせることが容易でないという問題があった。
【0009】
また、圧縮符号化後の受信画像のみに基づく自動監視技術では、受信画像で画像解析を行うため、原画そのものに劣化のようなパターンを含むシーンや部分を劣化として検知してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、原画を持たない映像の受信端において、原画のパターンに関わらずに圧縮符号化による画像品質の劣化を定量化する技術が必要とされている。
【0011】
また、圧縮符号化後の受信画像のみに基づく自動監視技術では復号された受信画像で画像解析を行うため、測定装置の他に復号器を必ず必要とする。また、使用する復号器による後処理の差による測定精度の変動が発生するため、事前に既知のテスト画像による測定値のキャリブレーションを必要とすることがある。
【0012】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、圧縮符号化による画像品質の劣化を原画を用いることなく容易且つ正確に推定することが可能な符号化誤差推定装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は、圧縮符号化された映像信号の符号化誤差をピクチャ単位に推定する符号化誤差推定装置であって、圧縮符号化された映像信号を逆量子化し、フレームごとに取得した直交変換係数を周波数成分,量子化値,フレーム内符号化および動き補償予測符号化の有無のうちの少なくとも1つ以上ごとに集計して前記直交変換係数の頻度分布を解析する頻度分布解析手段と、解析した前記直交変換係数の頻度分布に基づき、圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定する頻度分布推定手段と、前記頻度分布解析手段が解析した前記直交変換係数の頻度分布と前記頻度分布推定手段が推定した直交変換係数の頻度分布との比較結果に応じて、圧縮符号化された映像信号の符号化誤差をピクチャ単位に推定し、推定された符号化誤差を人間の視覚特性に応じて周波数成分毎に重み付けする符号化誤差推定手段と、前記直交変換係数を量子化値で除算した商である量子化インデックスと前記量子化値との積を用いた逆直交変換により得た直交変換値および前記直交変換値を復号するための符号化情報を保存する保存手段とを有し、前記保存手段は、前記符号化情報がないとき、逆量子化により得た直交変換値を既に保存している符号化情報と共に保存し、前記頻度分布推定手段は、前記頻度分布解析段階で解析した前記直交変換係数の前記頻度分布から偏差を求め、当該偏差からラプラス分布により圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、圧縮符号化された映像信号の直交変換係数の頻度分布から圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定し、圧縮符号化された映像信号の直交変換係数の頻度分布と、推定された圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布との比較結果に応じて、圧縮符号化された映像信号の符号化誤差を推定することができる。
【0016】
また、本発明によれば、圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布の偏差と圧縮符号化後の映像信号の直交変換係数の頻度分布の偏差とが近似することを利用し、圧縮符号化後の映像信号の直交変換係数の頻度分布の偏差から圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定することができる。
【0017】
したがって、圧縮符号化による画像品質の劣化を原画を用いることなく容易且つ正確に推定することが可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0019】
(第1実施例)
まず、本発明の理解を容易とするために、本発明の原理について説明する。画像を符号化する符号化技術では、画像を小さなブロック単位に区切って画素ごとの明るさを表す画素値を直交変換し、その直交変換係数を量子化することにより情報量の削減を行っている。
【0020】
一般的に、符号化技術では画像を複数画素で構成されるブロックに分割し、直交変換を用いて画像を空間周波数に変換する。直交変換により抽出された直交変換係数を量子化値Qで除算することにより、その商である量子化インデックスが算出される。そして、算出した量子化インデックスと量子化値Qとを伝送することにより、情報量の削減を行っている。一方、復号化技術では伝送された量子化インデックスと量子化値Qとの積を用いて逆量子化を行い、直交変換係数を逆直交変換することにより画像を再現する。
【0021】
連続値である直交変換係数は、量子化値Qによる除算又は積算を行うことによって量子化値Qに応じた間隔の離散値となる。符号化における画質劣化は量子化による直交変換係数の値の丸めに起因するため、量子化値Qと直交変換係数の分布とを評価することで画質劣化の程度を推定できる。
【0022】
また、直交変換係数は量子化または逆量子化の過程によって直交変換係数の値が完全に元の値に一致することはないが、量子化前および量子化後の直交変換係数の分布を比較すると、量子化前および量子化後の直交変換係数の分布の標準偏差が極めて近い値を示す。そこで、受信画像から得られた直交変換係数の分布の標準偏差を求めることで、原画の直交変換係数の分布f(x)を推定できる。
【0023】
また、直交変換係数成分(u,v)の値を量子化値Qの値によって分類し、その値の発生頻度を集計することで直交変換係数の分布を解析する。そして、解析した直交変換係数の分布から原画の直交変換係数の分布fq[v][u](x)を推定し、以下の式(1),(2)から符号化誤差量Sq[v][u]を推定できる。
【0024】
図1は、量子化値Qによって分類された直交変換係数成分(u,v)の値の発生頻度を表した一例の図を示す。
【0025】
【数1】
Figure 0004309703
以下、直交変換の一例としてのDCT(Discrete Cosine Transform )を用いる圧縮符号化方式のMPEG2を例に、本発明の第1実施例に係る符号化誤差推定方法および符号化誤差推定装置について説明する。
【0026】
図2は、本発明の符号化誤差推定装置を含む画像伝送システムの一例の構成図を示す。図2の画像伝送システム1では、送信側の符号化部10が、伝送画像を符号化した符号化データ(ビットストリーム)を伝送ネットワーク50を介して受信側に伝送する。
【0027】
受信側の復号化部20および符号化誤差推定装置40は、伝送ネットワーク50から符号化データを受信する。復号化部20は、符号化データを復号化した受信画像をモニタ30に供給する。モニタ30は、復号化部20で復号化された受信画像を表示する。
【0028】
また、符号化誤差推定装置40は、伝送画像の画像品質が符号化によりどの程度劣化したのかを符号化データを用いて定量化する。符号化誤差推定装置40の詳細について図3を参照しつつ説明する。
【0029】
図3は、符号化誤差推定装置の第1実施例の構成図を示す。図3の符号化誤差推定装置40は、可変長符号復号部41,逆量子化部42,直交変換係数値計数部43,量子化前分布推定部44,符号化誤差演算部45を含む。
【0030】
可変長符号復号部41は、受信した符号化データの可変長符号を固定長符号に復号化して逆量子化部42に供給する。逆量子化部42は、可変長符号復号部41から供給された固定長符号をDCT係数値に逆量子化して直交変換係数値計数部43に供給する。
【0031】
直交変換係数値計数部43は、逆量子化部42から供給されたDCT係数値の発生頻度を周波数成分ごとに計数し、DCT係数値の頻度分布を量子化前分布推定部44に供給する。量子化前分布推定部44は、直交変換係数値計数部43から供給されたDCT係数値の頻度分布を用いて量子化前のDCT係数値の頻度分布を推定する。
【0032】
量子化前分布推定部44は、供給されたDCT係数値の頻度分布(以下、符号化後DCT係数頻度分布という)および推定した量子化前のDCT係数値の頻度分布(以下、符号化前DCT係数頻度分布という)を符号化誤差演算部45に供給する。
【0033】
符号化誤差演算部45は、量子化前分布推定部44から供給された符号化前DCT係数頻度分布および符号化後DCT係数頻度分布を比較計算することで、符号化された伝送画像の符号化誤差を演算する。
【0034】
例えばMPEG2を利用する場合、DCTはブロックと呼ばれる8×8画素の部分に対して行われる。一般的な自然画像では、1フレーム内の全DCT係数の(u,v)成分ごとに、そのDCT係数値の発生頻度を計数すると図4のような符号化前DCT係数頻度分布となる。図4は、符号化前DCT係数頻度分布の一例のグラフを示す。なお、図4のグラフは、DCT係数の(2,0)成分の例を表している。
【0035】
図4に対応する画像をMPEG2で符号化し、復号化した後の画像では、1フレーム内の全DCT係数の(u,v)成分ごとに、そのDCT係数値の発生頻度を計数すると図5のような符号化後DCT係数頻度分布となる。図5は、符号化後DCT係数頻度分布の一例のグラフを示す。なお、図5のグラフは、DCT係数の(2,0)成分の例を表している。
【0036】
図5の符号化後DCT係数頻度分布は、符号化における量子化および逆量子化の過程において、DCT係数値が量子化値Qによって丸められたことを表している。図5は、量子化値Q=5を用いた場合の符号化後DCT係数頻度分布であって、9.5刻みの整数においてDCT係数値が発生している。
【0037】
図4及び図5に示されるように、符号化前DCT係数頻度分布および符号化後DCT係数頻度分布は異なっている。しかし、符号化前DCT係数頻度分布および符号化後DCT係数頻度分布の標準偏差は、ほぼ等しくなる。例えば図4の符号化前DCT係数頻度分布の標準偏差は31.91である。また、図5の符号化後DCT係数頻度分布の標準偏差は31.31である。
【0038】
したがって、符号化誤差推定装置40は非可逆な画像圧縮技術を用いて符号化された画像であっても、符号化後DCT係数頻度分布の標準偏差を求めることにより、符号化前DCT係数頻度分布の標準偏差を推定することができ、推定した符号化前DCT係数頻度分布の標準偏差から以下のように符号化前DCT係数頻度分布を推定できる。
【0039】
例えば一般的な自然画像はラプラス分布に従うことを考慮し、符号化誤差推定装置40は、式(3)〜式(6)を用いることにより逆量子化されたDCT係数の(u,v)成分x[v][u]の発生頻度P(v,u)(x[v][u])から符号化前DCT係数頻度分布f(v,u)(x[v][u])を推定できる。
【0040】
【数2】
Figure 0004309703
なお、式(3)〜式(6)に含まれるnは、標本総数を表す。例えば伝送画像の符号化前DCT係数頻度分布と、式(3)〜式(6)を用いて推定した伝送画像(原画)の符号化前DCT係数頻度分布とは、図6のように表される。
【0041】
図6は、伝送画像の符号化前DCT係数頻度分布および推定した符号化前DCT係数頻度分布の一例のグラフを示す。式(3)〜式(6)を用いて推定した符号化前DCT係数頻度分布は、図6のグラフのように、伝送画像の符号化前DCT係数頻度分布と近似する。
【0042】
次に、推定した符号化前DCT係数頻度分布を用いて、復号画像のDCTドメインにおける符号化誤差を計算する方法について説明する。例えばMPEG2を利用する場合、DCTを施すブロックは8×8画素である。また、DCT係数の(u,v)成分の量子化値がイントラピクチャ(Iピクチャ)の場合、以下の式(7)のように表され、qscaleは32通りの値をとる。
【0043】
Q[v][u][l]=qscale[l]×Qmatrix[v][u]/16・・・・・(7)
Qmatrix[v][u]がフレーム内で一意であるため、Q[v][u][l]はフレーム内で32通りの値を取り得る。このように、符号化データよりそれぞれの値を得ることができるため、(u,v)成分のDCT係数をQ[v][u][l]により分類して原画の符号化前DCT係数頻度分布を推定できる。
【0044】
例えばIピクチャー、(u,v)=(2,0)、qscale[3]=8、Qmatrix[0][2]=19の符号化前DCT係数頻度分布を推定する場合について説明する。これらの値を式(7)に代入すると、Q[v][u][l]は以下の式(8)のようになる。
【0045】
Q[0][2][3]=8×19/16=9.5・・・・・(8)
したがって、式(7)を用いて図1のようなDCT係数値の頻度分布を得ることができるので、図4のようなDCT係数値の頻度分布を推定することが可能となる。図1のDCT係数値の頻度分布は、推定されたDCT係数値の頻度分布f(x)がQ[v][u][l]間隔で離散化されたものであるので、その符号化誤差量Sは以下の式(9)で表すことができる。
【0046】
【数3】
Figure 0004309703
なお、式(9)は集計範囲を−6σ〜+6σとした場合である。σは、qscale[l]の(u,v)成分のDCT係数頻度分布の標準偏差である。kは、整数である。
【0047】
算出された符号化誤差量Sは一般的に用いられている誤差量を表す指標,平均二乗誤差(MSE)と比例関係にある。したがって、MSE=αSとすることにより、受信画像の画像品質がどの程度劣化したのかを評価できる。
【0048】
(第2実施例)
上記の第1実施例では、動き補償予測符号化を用いた符号化データにおいて非符号化ブロックが発生した場合、非符号化ブロックを符号化誤差のないブロックとして符号化誤差を推定するため、符号化誤差の推定精度が劣化する場合があった。
【0049】
そこで、第2実施例では、動き補償予測符号化を用いた伝送画像に非符号化ブロックが発生しても、安定した推定精度を保つことができる符号化誤差推定方法および符号化誤差推定装置について説明する。なお、以下の説明では第1実施例で説明した内容を適宜省略する。
【0050】
まず、本発明の理解を容易とするために、本発明の原理について説明する。動き補償予測符号化を用いた符号化方式の場合、符号化データから得られる直交変換係数は、ブロックが動き補償予測を用いた符号化ブロックか否かによって、それぞれの直交変換係数の分布が集計される。
【0051】
また、直交変換係数成分(u,v)の値を量子化値Qの値によって分類し、その値の発生頻度を集計することで直交変換係数の分布を解析する。そして、解析した直交変換係数の分布から原画の直交変換係数の分布fq[v][u](x)を推定し、上記の式(1),(2)から符号化誤差量Sq[v][u]を推定できる。なお、量子化値Qによって分類された直交変換係数成分(u,v)の値の発生頻度は、上述した図1のように表される。
【0052】
ところで、動き補償予測符号化を用いた直交変換符号化方式では、符号化の対象となるフレームに対し、時間的に前方または後方に位置するフレームを用いて予測符号化を行う。このような動き補償予測符号化を用いた直交変換符号化方式では、パニングのように物体が画面内で動いているような画像において高い符号化効率を実現できる。
【0053】
特に映像の一部分の符号化効率を上げるために、参照画面の情報をそのまま利用し、直交変換符号化処理を行わない非符号化処理を行う場合がある。この場合は非符号化処理された部分に関する直交変換係数が伝送されず、符号化データから非符号化処理された部分に関する符号化情報を抽出することができない。
【0054】
そこで、非符号化処理を伴う場合、非符号化処理された非符号化ブロックの直交変換係数の替わりに、同一位置において符号化処理された符号化ブロックの直交変換係数を用いて符号化誤差を推定する。なお、非符号化処理された非符号化ブロックを用いずに符号化誤差を推定するようにしてもよい。
【0055】
以下、直交変換の一例としてのDCTを用いる圧縮符号化方式のMPEG2を例に、本発明の第2実施例に係る符号化誤差推定方法および符号化誤差推定装置について説明する。なお、本発明の符号化誤差推定装置を含む画像伝送システム1は符号化誤差推定装置40の構成を除いて第1実施例と同様であるため、符号化誤差推定装置40以外の説明を省略する。
【0056】
図7は、符号化誤差推定装置の第2実施例の構成図を示す。図7の符号化誤差推定装置40は、逆量子化部42と直交変換係数値計数部43との間にメモリ46を含む構成であることが図3の符号化誤差推定装置40と異なっている。
【0057】
可変長符号復号部41は、受信した符号化データの可変長符号を固定長符号に復号化して逆量子化部42に供給する。逆量子化部42は、可変長符号復号部41から供給された固定長符号をDCT係数値に逆量子化し、DCT係数値および符号化情報(例えば符号化ブロックのフレーム内位置情報,モード情報など)をメモリ46に供給する。メモリ46は、逆量子化部42から供給されたDCT係数値および符号化情報を保存する。
【0058】
直交変換係数値計数部43は、メモリ46からDCT係数値を読み出し、DCT係数値の発生頻度を周波数成分ごとに計数する。そして、直交変換係数値計数部43はDCT係数値の発生頻度を量子化前分布推定部44に供給する。量子化前分布推定部44は、直交変換係数値計数部43から供給されたDCT係数値の頻度分布を用いて量子化前のDCT係数値の頻度分布を推定する。
【0059】
量子化前分布推定部44は、供給されたDCT係数値の頻度分布(符号化後DCT係数頻度分布)および推定した量子化前のDCT係数値の頻度分布(符号化前DCT係数頻度分布)を符号化誤差演算部45に供給する。
【0060】
符号化誤差演算部45は、量子化前分布推定部44から供給された符号化前DCT係数頻度分布および符号化後DCT係数頻度分布を比較計算することで、符号化された伝送画像の符号化誤差を演算する。なお、図7の符号化誤差推定装置40を構成する各処理部の処理の詳細は後述する。
【0061】
符号化誤差推定装置40は、前述したように、非可逆な画像圧縮技術を用いて符号化された画像であっても、符号化後DCT係数頻度分布の標準偏差を求めることにより、符号化前DCT係数頻度分布の標準偏差を推定することができ、推定した符号化前DCT係数頻度分布の標準偏差から以下のように符号化前DCT係数頻度分布を推定できる。
【0062】
例えば一般的な自然画像はラプラス分布に従うことを考慮し、符号化誤差推定装置40は、式(10)〜式(13)を用いることにより、逆量子化されたDCT係数の(u,v)成分x(v,u)の発生頻度P(v,u)(x(v,u))から符号化前DCT係数頻度分布f(v,u)(x(v, u))を推定できる。
【0063】
【数4】
Figure 0004309703
ただし、イントラマクロブロックにおけるDCT係数の(0,0)成分は、MPEG2で規定されている隣接ブロックとの差分を用いてDCT係数の頻度分布を推定する。なお、式(10)〜式(13)に含まれるnは、標本総数を表している。
【0064】
例えば伝送画像の符号化前DCT係数頻度分布と、式(10)〜式(13)を用いて推定した符号化前DCT係数頻度分布とは、前述した図6のように表される。図6のグラフのように、式(10)〜式(13)を用いて推定した符号化前DCT係数頻度分布は、伝送画像の符号化前DCT係数頻度分布と近似する。なお、式(10)〜(13)では、演算量を削減するためにμ(u,v)を0としてもよい。
【0065】
次に、推定した符号化前DCT係数頻度分布を用いて、復号画像のDCTドメインにおける符号化誤差を計算する方法について説明する。例えばMPEG2を利用する場合、DCT係数の(u,v)成分の量子化値は、qscaleとQmatrixとの関数である。
【0066】
qscaleは、32通りの値を取り得る。また、Qmatrix[v][u]はフレーム内で一意である。したがって、量子化値Qはフレーム内で32通りの値を取り得る。このように、符号化データよりそれぞれの値を得ることができるため、(u,v)成分のDCT係数を量子化値Qの値により分類して原画の符号化前DCT係数頻度分布を推定できる。
【0067】
例えばMPEG2の場合、DCT係数の(u,v)成分x(v,u)の復号処理は以下の式(14)によって行われる。
【0068】
【数5】
Figure 0004309703
復号されたDCT係数は符号化情報(例えば符号化ブロックのフレーム内位置情報およびモード情報など)と共にメモリ46に保存される。なお、モード情報は符号化ブロックがイントラマクロブロックであるか否かを含むものである。非符号化処理により該当する非符号化ブロックの符号化情報が伝送されなかった場合、以前の符号化ブロックの符号化情報がそのままメモリ46に保持される。
【0069】
直交変換係数値計数部43は、メモリ46からDCT係数値を読み出し、DCT係数値の発生頻度を周波数成分および量子化値Q毎に計数する。そして、直交変換係数値計数部43はDCT係数値の発生頻度を量子化前分布推定部44に供給する。量子化前分布推定部44は、直交変換係数値計数部43から供給されたDCT係数値の頻度分布を用いて符号化前DCT係数頻度分布を推定する。
【0070】
量子化前分布推定部44は、供給された符号化後DCT係数頻度分布および推定した符号化前DCT係数頻度分布を符号化誤差演算部45に供給する。
【0071】
符号化誤差演算部45は、量子化前分布推定部44から供給された符号化前DCT係数頻度分布および符号化後DCT係数頻度分布を比較計算することで、符号化された伝送画像の符号化誤差を演算する。
【0072】
このようなDCT係数値を保存するメモリ46を符号化誤差推定装置40に搭載する場合、高速なメモリの容量を相当量必要とする。このような高速なメモリは高価であり、ハードウェア規模も大きく複雑となる。
【0073】
そこで、より簡単に処理を行う場合に、以下のような処理を行うようにしてもよい。動き補償予測符号化を用いた符号化方式において非符号化処理を行う場合は、最後に復号化したブロックの符号化情報をメモリ46に保存し、その符号化情報を次のブロックを復号するために利用する。
【0074】
図8は、非符号化ブロックに対する処理について説明するための図である。例えば図8に表したように非符号化ブロック前後の符号化ブロックのqscaleが等しい場合、i番目のブロックの符号化情報を復号化してqscale=8をメモリ46に保存する。
【0075】
なお、メモリ46は非符号化ブロックが存在してもそのqscale=8を保持し続ける。i+1番目,i+2番目のブロックはqscale=16,24で符号化された結果、DCT係数値が全て0になったため、非符号化処理が行なわれている。つまり、i+1番目,i+2番目のブロックは非符号化ブロックであり、符号化情報を伝送されない為、符号化順で前に復号されたDCT係数がメモリ46に保持される。
【0076】
次に、符号化ブロックであるi+3番目のブロックの符号化情報を復号化するが、i+3番目のブロックのqscaleはi番目のブロックのqscaleと等しいため、i+3番目のブロックの符号化情報にqscaleが存在せず、メモリ46に保持されたqscaleが再利用される。
【0077】
以上のように、非符号化処理された非符号化ブロックのDCT係数は0であるが確実である。ここで、DCT係数値の発生頻度を計数する直交変換係数値計数部43では、ブロックのDCT係数値の0を計測することが可能であるが、qscaleが如何なる値であるか計測することができない。
【0078】
そこで、メモリ46に保存しているqscaleを近似値として利用することが考えられるが、誤差を多く発生する場合も考えられる。そこで、非符号化ブロックは使用せず、符号化ブロックのみを用いることにより、誤差を減少させることもできる。
【0079】
また、DCT係数の周波数成分に応じた人間の視覚特性を考慮し、各周波数成分で計算される誤差量Sq[v][u]と、重み付け計数w[v][u](0〜1.0)の積に応じて誤差量を調整し、主観的な画像品質を提示することもできる。
【0080】
【発明の効果】
上述の如く、本発明によれば、圧縮符号化された映像信号の直交変換係数の頻度分布から圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定し、圧縮符号化された映像信号の直交変換係数の頻度分布と、推定された圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布との比較結果に応じて、圧縮符号化された映像信号の符号化誤差を推定することができる。
【0081】
また、本発明によれば、圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布の偏差と圧縮符号化後の映像信号の直交変換係数の頻度分布の偏差とが近似することを利用し、圧縮符号化後の映像信号の直交変換係数の頻度分布の偏差から圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定することができる。
【0082】
したがって、圧縮符号化による画像品質の劣化を原画を用いることなく容易且つ正確に推定することが可能である。
【0083】
【図面の簡単な説明】
【図1】量子化値Qによって分類された直交変換係数成分(u,v)の値の発生頻度を表した一例の図である。
【図2】本発明の符号化誤差推定装置を含む画像伝送システムの一例の構成図である。
【図3】符号化誤差推定装置の第1実施例の構成図である。
【図4】符号化前DCT係数頻度分布の一例のグラフである。
【図5】符号化後DCT係数頻度分布の一例のグラフである。
【図6】伝送画像の符号化前DCT係数頻度分布および推定した符号化前DCT係数頻度分布の一例のグラフである。
【図7】符号化誤差推定装置の第2実施例の構成図である。
【図8】非符号化ブロックに対する処理について説明するための図である。
【符号の説明】
1 画像伝送システム
10 符号化部
20 復号化部
30 モニタ
40 符号化誤差推定装置
41 可変長符号復号部
42 逆量子化部
43 直交変換係数値計数部
44 量子化前分布推定部
45 符号化誤差演算部
46 メモリ
50 伝送ネットワーク

Claims (2)

  1. 圧縮符号化された映像信号の符号化誤差をピクチャ単位に推定する符号化誤差推定装置であって、
    圧縮符号化された映像信号を逆量子化し、フレームごとに取得した直交変換係数を周波数成分,量子化値,フレーム内符号化および動き補償予測符号化の有無のうちの少なくとも1つ以上ごとに集計して前記直交変換係数の頻度分布を解析する頻度分布解析手段と、
    解析した前記直交変換係数の頻度分布に基づき、圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定する頻度分布推定手段と、
    前記頻度分布解析手段が解析した前記直交変換係数の頻度分布と前記頻度分布推定手段が推定した直交変換係数の頻度分布との比較結果に応じて、圧縮符号化された映像信号の符号化誤差をピクチャ単位に推定し、推定された符号化誤差を人間の視覚特性に応じて周波数成分毎に重み付けする符号化誤差推定手段と
    前記直交変換係数を量子化値で除算した商である量子化インデックスと前記量子化値との積を用いた逆直交変換により得た直交変換値および前記直交変換値を復号するための符号化情報を保存する保存手段と
    を有し、
    前記保存手段は、前記符号化情報がないとき、逆量子化により得た直交変換値を既に保存している符号化情報と共に保存し、
    前記頻度分布推定手段は、前記頻度分布解析段階で解析した前記直交変換係数の前記頻度分布から偏差を求め、当該偏差からラプラス分布により圧縮符号化前の映像信号の直交変換係数の頻度分布を推定することを特徴とする符号化誤差推定装置。
  2. 前記頻度分布解析手段は、動き補償予測符号化によって発生する非符号化ブロックを含む圧縮符号化された映像信号に対し、非符号化ブロック以外の符号化ブロックを用いて前記直交変換係数の頻度分布を解析することを特徴とする請求項1記載の符号化誤差推定装置。
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