図1ないし図3はこの発明の実施形態である浴槽用温水口装置を示す図である。これらの図に示すように、この実施形態の温水口装置は、浴槽(T)の側壁に設けられた取付孔(H)に組み付けられる。この装置は、浴槽(T)の外部に設けられた給湯機から供給される温水を浴槽(T)内に供給するようにした湯はり等の貯湯処理と、浴槽(T)内の温水を吸い込んで給湯機に送り、そこで再加熱して、高温の温水を浴槽(T)に戻すようにした追い炊き等の強制循環処理とを行えるものである。
なお、この温水口装置は、この装置が備える2つの外管接続部(1a)(1b)に対して、給湯機につながる往き管及び戻り管のどちらを接続しても使用可能な、いわゆる無極性タイプのものである。
図1ないし図3に示すように、本実施形態の温水口装置は、槽外取付具(1)と、装置本体(10)と、フィルター部材(9)とを基本的な構成要素として備え、更に装置本体(10)は、槽内取付具(2)と、流路形成部材(3)とを備えている。
槽外取付具(1)は、一端側(前面側)が開放され、かつ他端側(後面側)が閉塞された円筒形状の外筒体(12)と、その外筒体(12)の内部に同軸心上に配置される円筒形状の内筒体(11)と、外筒体(12)の一端外周に設けられた平板リング状のフランジ(15)と、外筒体(12)の他端閉塞壁に設けられ、かつ軸心方向に沿って他端側に延びる管状の第1及び第2外管接続部(1a)(1b)とを一体に有する金属製品をもって構成されている。
内筒体(11)の内側空間は、第1流路(A)の一部として構成されるとともに、内筒体(11)及び外筒体(12)との間の空間は、第2流路(B)の一部として構成されており、上記第1外管接続部(1a)が第1流路(A)に連通されるとともに、第2外管接続部(1b)が第2流路(B)に連通されている。
外筒体(11)の一端側内周面には、雌ねじが刻設されている。また内筒体(11)の内周面前端部には、合成ゴム製のオーリング(81)が収容配置される。
槽外取付具(1)のフランジ(15)に設けられるリング状の合成ゴム製被覆パッキン(82)は、その内周面に沿って嵌合溝が形成されており、嵌合溝内にフランジ(15)を収容するようにして、フランジ(15)の外周面ほぼ全域を被覆した状態で密着固定される。なお被覆パッキン(82)の前面側は、厚板状に形成されて、パッキン本体として構成されている。
装置本体(10)は、槽内取付具(2)と、流路形成部材(3)とを有している。
槽内取付具(2)は、両端が開放された円筒形状の筒体(21)と、その筒体(21)の一端外周に設けられた平板リング状のフランジ(25)とを一体に有するポリアセテート樹脂等からなる鍔付き円筒形状の硬質合成樹脂成形品をもって構成されている。
筒体(21)は、外周面に雄ねじが刻設されており、上記槽外取付具(1)における外筒体(12)の筒孔内に螺着できるよう構成されている。
更にフランジ(25)の前面側には、周方向に沿って所定の間隔おきに複数のビス受け用ボス(26)が一体に形成されている。
槽内取付具(2)と浴槽(T)の内壁との間に介在される弾性パッキン(83)は、フランジ(25)の形状に対応する平板リング状の合成ゴム成形品をもって構成されている。
更にフランジ(25)とパッキン(83)との間に介在される緩衝部材(84)は、フランジ(25)の形状に対応する平板リング状に形成されている。この緩衝部材(84)は、軟質性ないしは弾力性を有するポリエチレン樹脂等の軟質合成樹脂の成形品をもって構成されている。
そして、上記槽外取付具(1)のフランジ(15)が、浴槽(T)の外壁面における取付孔(H)の周縁部に沿うように配置された状態で、槽内取付具(2)のフランジ(15)が、緩衝部材(84)及びパッキン(83)を介して浴槽内壁面における取付孔(H)の周縁部に圧接されるようにして、槽内取付具(2)の筒体(21)が取付孔(H)を通じてねじ込み固定される。これにより、両取付具(1)(2)のフランジ(15)(25)が、浴槽側壁における取付孔周縁部を挟持することにより、両取付具(1)(2)が浴槽側壁に貫通状態に固定される。
装置本体(10)の流路形成部材(3)は、流路形成部材本体(4)と、蓋体(6)とを具備している。
流路形成部材本体(4)は、硬質合成樹脂の一体成形品からなり、細長円筒形状の筒体(41)と、その一端に設けられた区画室部材本体(5)とを有している。なお本実施形態においては、区画室部材本体(5)と蓋体(6)とによって区画室部材(50)が構成されるものである。
筒体(41)は、上記槽外取付具(1)における内筒体(11)の内部に適合状態に挿入できる大きさに形成されている。
区画室部材本体(5)は、筒体(41)の一端に設けられた円板状の後壁(51)と、その後壁(51)の前面側外周を囲うようにして設けられた外周壁(52)とを一体に有している。この区画室部材本体(5)は、径方向の大きさが上記槽内取付具(2)のフランジ(25)とほぼ同じ大きさに形成されている。
図5及び図6に示すように、区画室部材本体(5)は、その前面側に仕切壁(53)が一体に形成されて、区画室部材本体(5)の内部が3つの室(5a)〜(5c)に区分けされている。このうち第1区画室(5a)は、同図において区画室部材本体(5)の略右上領域に形成されるとともに、第2区画室(5b)は、左半部領域に形成されている。更に吐出室(5c)は、右下領域に形成されている。
区画室部材本体(5)における第1及び第2区画室(5a)(5b)は、互いに独立して非連通状態に形成されている。更に第1区画室(5a)と吐出室(5c)との間は第1区画室出口(53a)を介して連通されるとともに、第2区画室(5b)と吐出室(5c)との間は第2区画室出口(53b)を介して連通されている。
第1及び第2区画室出口(53a)(53b)は、並んで配置され、互いの開口軸(Ea)(Eb)、つまり互いの開口方向が吐出室(5c)に向けてほぼ平行に配置されている。
区画室部材本体(5)の外周壁(52)における右下部には、吐出室(5c)の周方向全域に対応して、吐出口(55)が形成され、この吐出口(55)を介して吐出室(5c)が外部(浴槽内)に開放されている。更に吐出口(55)は、上記第1及び第2区画室出口(53a)(53b)に対し周方向のサイズが大きく形成されている。これにより第1及び第2区画室(5a)(5b)の各区画室出口(53a)(53b)から吐出室(5c)内に供給される温水は、吐出室(5c)を周方向に拡大しながら吐出口(55)から吐出されるよう構成されている。換言すれば、各区画室出口(53a)(53b)、吐出室(5c)及び吐出口(55)からなる吐出流路(Da)(Db)は、図6の実線によるハッチング領域(Da)(Db)に示すように末広がりの扇形形状に形成されて、この扇形形状の吐出流路(Da)(Db)を通って吐出される温水は、同図の破線によるハッチング領域に示すように、吐出経路(Da)(Db)の延長経路に沿って、周方向に拡散しながら吐出されることにより、浴槽内の広い範囲にわたって偏りなく供給されるよう構成されている。
また第1区画室出口(53a)側の第1吐出流路(Da)と、第2区画室出口(53b)側の第2吐出流路(Db)とは、正面視状態(前面視状態)において、一部が重なり合うように配置されており、吐出室(5c)内に第1及び第2区画室出口(53a)(53b)から流出される温水が相互乗り入れされる部分(ハッチング領域Da、Dbが重なり合う部分)が形成されている。このように1つの吐出室(5c)内に第1及び第2吐出流路(Da)(Db)の共通部分を形成することにより、各吐出流路(Da)(Db)の拡がり度合を共に大きく形成することができ、湯はり時等、いずれか一方の吐出流路のみを使用する場合であっても、温水を周方向に十分に拡散させて吐出することができる。
ここで各扇状吐出流路(Da)(Db)の開き角度はそれぞれ40〜170°、好ましくはそれぞれ50〜150°に設定するのが良い。すなわちこの開き角度が小さ過ぎる場合には、温水吐出時の温水の拡散性が低下する恐れがある。逆に大き過ぎる場合には、温水の吐出方向にばらつきや偏りが生じる恐れがある。
また、吐出流路(Da)(Db)の重なり合う部分(共用部分)の面積割合は、吐出流路(Da)(Db)の総面積(吐出流路Daの面積+吐出流路Dbの面積−両流路Da、Dbが重なり合う部分の面積)に対し、20〜90%、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上に設定するのが良い。
なお本発明においては、吐出流路(Da)(Db)を必ずしも扇形形状に形成する必要はなく、吐出流路(Da)(Db)における下流側端部が、それよりも上流側の部分に対し周方向の寸法が大きくなるよう形成されてさえいれば、上記の温水拡散を得ることができる。
また本実施形態において、区画室部材本体(5)の後壁内面のうち、第1及び第2区画室(5a)(5b)の後壁面(51a)(51b)と、吐出室(5c)の後壁面(51c)とは、同一平面内に配置されており、各後壁面(51a)(51b)(51c)によって連続する滑らかな平坦面が形成されている。これにより第1及び第2区画室(5a)(5b)から吐出流路(Da)(Db)を流通する温水が、各後壁面(51a)(51b)(51c)に沿って滑らかに流通するようになり、この整流作用によって温水の流れが安定し、その安定状態で吐出口(55)から吐出されるよう構成されている。
図5に示すように区画室部材本体(5)の仕切壁(53)における第1及び第2区画室出口(53a)(53b)の両側部には、後述する弁部材(7)(7)を支持するための凹陥部(54)(54)がそれぞれ形成されている。
更に図4及び図5に示すように区画室部材本体(5)の後壁(51)における第1及び第2区画室出口(53a)(53b)の中間位置には、弁支持部(54a)(54b)が形成されている。この弁支持部(54a)(54b)は、吐出方向(下流側)に向かうに従って、後壁(51)側に近づくように傾斜状に形成されている。
また区画室部材本体(5)における後壁(51)の内面には、第1及び第2区画室出口(53a)(53b)に対応する位置に、第1及び第2弁先設置溝(52a)(52b)が各区画室出口(53a)(53b)を横断方向に形成されている。
区画室部材本体(5)の第1区画室(5a)内における後壁(51)には、筒体(41)の内部に連通する第1開口(50a)が形成されており、この開口(50a)によって第1区画室(5a)が後述の第1流路(A)に連通される。更に第2区画室(5b)内における後壁(51)には、筒体(51)の外部に連通する第2開口(50b)が形成されており、この開口(50b)によって第2区画室(5b)が後述の第2流路(B)に連通される。
また区画室部材本体(5)における後壁(51)には、槽内取付具(2)の複数のビス受け用ボス(26)のいずれか3つに対応して、ビス挿通部(56)が周方向に等間隔おきに形成されている。
図7に示すように、前壁を構成する蓋体(6)は、区画室部材本体(5)の前面開口部に対応する円板状の硬質合成樹脂成形品をもって構成されている。
この蓋体(6)には、上記区画室部材本体(5)の第1及び第2区画室出口(53a)(53b)の近傍に対応して、第1及び第2吸込口(6a)(6b)が形成されている。各吸込口(6a)(6b)は、複数の小孔をもって構成されている。
また、蓋体(6)の裏面側には、第1及び第2区画室出口(53a)(53b)に対応して、弁取付部(61a)(61b)が形成されている。
更に蓋体(6)には、区画室部材本体(5)の3つのビス挿通部(56)に対応して、3つのビス挿通部(66)がそれぞれ形成されている。
そして図1ないし図3に示すように、蓋体(6)及び流路形成部材本体(4)が、3本のタッピングビス(37)によって上記槽内取付具(2)に組付固定される。すなわち、流路形成部材本体(4)の筒体(41)が槽内取付具(2)の筒体(21)を通じて、槽外取付具(1)の内筒体(11)の筒孔に、上記オーリング(81)を介して適合状態に挿入されるとともに、流路形成部材本体(4)の3つのビス挿通部(56)が、槽内取付具(2)の複数のボス(26)のうち、対応するいずれか3つのボス(26)に適合される。更に蓋体(6)のビス挿通部(66)が流路形成部材本体(4)のビス挿通部(56)にそれぞれ適合状態に挿入されて、蓋体(6)が流路形成部材本体(4)の前面開口部に閉塞状に配置される。その状態で、蓋体(6)の前面側からビス(37)が、ビス挿通部(66)(56)に挿通されて、対応するボス(26)にねじ止め固定される。これにより、蓋体(6)が流路形成部材本体(4)に固定されて、流路形成部材(3)が組み付けられると同時に、その流路形成部材(3)が槽内取付具(2)に固定される。
この組付状態では、槽外取付具(1)の内筒体(11)の内部が、流路形成部材(3)の筒体(41)の内部が連通して、第1流路(A)として構成されるとともに、その第1流路(A)が第1開口(50a)を介して第1区画室(5a)に連通されている。更に槽外取付具(1)の内外筒体(11)(12)間が、槽内取付具(2)の筒体(21)及び流路形成部材(4)の筒体(41)間に連通して、第2流路(B)が構成されるとともに、その第2流路(B)が第2開口(50b)を介して第2区画室(5b)に連通されている。
更にこの組付状態においては、装置本体(10)の前部、すなわち区画室部材(50)が、浴槽内側面よりも内方に突出した状態に配置されて、浴槽内突出部として構成されている。
また図4に示すように蓋体(6)における吐出口(55)に対応する位置(吐出口周縁部)には、流路絞り片(62)が蓋体(6)と一体に形成されている。この絞り片(62)は、蓋体(6)側から後壁(51)に向けて突出するように形成されるとともに、蓋体(6)の吐出口(55)に対応する領域の全域にわたって形成されている。更にこの絞り片(62)は、その内面が傾斜面となるように、基端から先端に向かうに従って肉厚が薄くなるように形成されている。
ここで、絞り片(62)の内面における傾斜角度(θ1)は12〜22°、好ましくは15〜19°に設定するのが良い。更に絞り片(62)による吐出口(55)の閉塞率は、10〜60%、好ましくは25〜50%に設定するのが良い。この傾斜角度(θ1)や閉塞率が、上記の好適範囲内に調整される場合には、吐出口(55)から吐出される温水の流路を適度に絞り込むことができ、温水を十分な流速をもって勢い良く吐出させることができる。
なお図1ないし図3に示すように、区画室部材(50)の後面側外周縁部と、槽内取付具(2)におけるフランジ(35)の外周縁部との間には、平板リング状の合成ゴム製パッキン(85)が介装されて、その間の水密が図られるよう構成されている。
また区画室部材(50)には、その外周面に、フィルター部材取付用の3つの鉤状溝(36)が形成されている。
一方、図4及び図8に示すように、流路形成部材(3)に設けられる弁部材(7)(7)は、合成ゴムの一体成形品をもって構成されている。この弁部材(7)(7)は、断面略「へ」の字形に形成されており、その一片が矩形板状の吐出弁(71)として構成されるとともに、他片が矩形板状の吸込弁(72)として構成されている。更に吐出弁(71)及び吸込弁(72)との間の連結部には、略角棒状の弁支持軸(73)が設けられている。
この弁部材(7)(7)における弁支持軸(73)の前部が、流路形成部材(3)における蓋体裏面の弁取付部(61a)(61b)に嵌着されるとともに、弁支持軸(73)の両側端部が、流路形成部材(3)における第1及び第2区画室出口(53a)(53b)両側の凹段部(54)(54)に嵌着される。これにより図4の実線に示すように、自然状態においては、弁部材(7)(7)の吐出弁(71)(71)が、区画室出口(53a)(53a)を吐出室(5c)側から閉塞するように配置されるとともに、吸込弁(72)(72)が、吸込口(6a)(6b)を区画室(5a)(5b)側から閉塞するように配置される。このとき吐出弁(71)(71)は、自然状態においては、弁支持部(54a)(54b)によって支持されて、基端側(蓋体6側)から先端側(後壁51側)に向かうに従って、後壁(51)側に次第に近接するように傾斜姿勢に配置される。更に自然状態(閉止状態)の吐出弁(71)(71)は、その先端が、上記弁先設置溝(52a)(52b)にそれぞれ収容される。この構成において、弁先設置溝(52a)(52b)における内周面の一部が、吐出弁(71)(71)の先端側の弁座として構成され、自然状態では、吐出弁(71)の先端側が、弁先設置溝内周面に弾性力により接触して配置されている。このように本実施形態においては、弁先設置溝(52a)(52b)内に弁座を形成するものであるため、弁座部が吐出室(5c)の後壁面(51c)から突出するように形成されることがなく、弁先端側の弁座形成による突部や段部の形成を防止することができる。従って、その凸部や段部によって流通水に乱れが生じるのを防止でき、温水を安定して流通させることができる。
なお図4においては、第1区画室出口(53a)側に取り付けられる第1弁部材(7)側の構成のみを示しているが、本実施形態においては、第1区画室出口(53b)側に取り付けられる第2弁部材(7)側の構成も、上記第1弁部材(7)側の構成と基本的に同様である。
ここで閉止状態における吐出弁(71)の傾斜角度(θ2)は5〜70°、好ましくは15〜50°に設定するのが良い。すなわちこの傾斜角度(θ2)を上記の好適範囲内に設定する場合には、後述するように、吐出弁傾斜配置による効果をより確実に得ることができる。
こうして取り付けられた弁部材(7)(7)において、吐出弁(71)(71)は、その外周縁部が吐出室(5c)側における区画室出口(53a)(53b)の周縁部(弁先設置溝52a、52bの内周面を含む)に弾性力により密着しており、吐出室(5c)側から区画室(5a)(5b)側に温水が流れ込もうとした際には、その水圧によって、吐出弁(71)(71)の区画室出口(53a)(53b)に対する閉塞状態が維持されて、その方向の温水の流通が規制されるとともに、逆に、区画室(5a)(5b)側から吐出室(5c)側に温水が流れ込もうとした際には、図4の想像線に示すように水圧によって、吐出弁(71)(71)がその基端側を支点に先端側が吐出室(5c)側に揺動するように弾性変形することにより、吐出弁(71)(71)の先端側が前先設置溝(52a)(52b)から抜け出して区画室出口(53a)(53b)が開放され、その方向の温水の流通が許容されるよう構成されている。従って弁部材(7)(7)の吐出弁(71)(71)は、吐出室(5c)に対し、温水の排出方向の流通は許容し、かつ吸込方向の流通は阻止する逆止弁として機能する。
更に弁部材(7)(7)の吸込弁(72)(72)は、その外周縁部が区画室(5a)(5b)側における吸込口(6a)(6b)の周縁部(弁座部)に弾性力により密着しており、区画室(5a)(5b)側から外部に温水が流れ出そうとした際には、水圧によって、吸込弁(72)(72)の吸込口(6a)(6b)に対する閉塞状態が維持されて、その方向の温水の流通が規制されるとともに、逆に、外部から区画室(5a)(5b)側に温水が流れ込もうとした際には、その水圧によって、吸込弁(72)(72)が内側に弾性変形することにより、吸込口(6a)(6b)が開放されて、その方向の温水の流通が許容されるよう構成されている。従って、弁部材(7)(7)の吸込弁(72)(72)は、区画室(5a)(5b)に対し、温水の吸込方向の流通は許容し、かつ吐出方向の流通は阻止する逆止弁として機能する。
図1ないし図3に示すように、フィルター部材(9)は、流路形成部材(3)における区画室部材(50)をその前面から外周側面を覆うように配置されるもので、区画室部材(50)の前面側を覆う円板状の前面カバー(91)と、その前面カバーの周縁部に沿って設けられ、かつ区画室部材(50)の外周側面を覆う側面カバー(92)とを有している。
フィルター部材(9)の前面カバー(91)には、複数の吸込用開口(95)が放射状に形成されてるとともに、吸込用開口(95)には、フィルター本体としての金属製メッシュシートが配置されている。
更にフィルター部材(9)の側面カバー(92)には、区画室部材(50)の吐出口(55)に対応して、吐出用開口(97)が形成されている。
またフィルター部材(9)における側面カバー(92)の内面には、流路形成部材(3)の外周面に設けられた3つの鉤状溝(36)に対応して、3つの係合突起(96)が内方突出状に形成されている。そして、この係合突起(96)が鉤状溝(36)に挿入係合されることにより、フィルター部材(9)が、流路形成部材(3)に着脱自在に取り付けられている。
なお、この取付状態においては、フィルター部材(9)の吐出用開口(97)が、流路形成部材(3)の吐出口(55)に適合して配置される。
本実施形態において、温水口装置の浴槽(T)への組付手順は特に限定されるものではないが、例えば、以下のようにして組み付けられる。
まず、浴槽(T)の側壁外面側における取付孔(H)に対応する位置に、槽外取付金具(1)を配置する一方、槽内取付具(2)におけるフランジ(15)の後面側に緩衝部材(84)及びパッキン(83)を配置しておいて、その状態で槽内取付具(2)の筒体(21)を、浴槽(T)の内側から取付孔(H)に挿通して槽外取付具(1)の外筒体(12)にねじ込んで固定する。
次に、流路形成部材(3)を槽内取付具(2)に取り付ける。この際、流路形成部材(3)において、上記したように蓋体(6)に弁部材(7)(7)をセットしておき、その弁部材付きの蓋体(6)を本体(4)に仮組みしておく。
この状態で、流路形成部材(3)をその筒体(41)を槽内取付具(2)の筒体(21)に挿通して、槽外取付具(1)の内筒体(11)の筒孔に適合状態に挿入する。そして、蓋体(6)の前面側からビス(37)を、ビス挿通部(66)(56)に挿通して、ボス(26)にねじ込んで固定する。
その後、流路形成部材(3)にフィルター部材(9)を被せて取り付けることにより、温水口装置の浴槽(T)への組付作業が完了する。
こうして浴槽(T)に組み付けられた温水口装置においては、槽外取付具(1)の外管接続部(1a)(1b)に、室外給湯機からの配管が連結されて、浴槽システムが形成される。
この浴槽システムにおいて、浴槽(T)内に温水を供給して貯湯する場合には、2つの外管接続部(1a)(1b)の双方に温水を供給して、2つの流路(A)(B)の両方が浴槽(T)に温水を供給する給湯側流路として利用される。すなわち温水が流路(A)(B)を通って、流路形成部材(3)の2つの区画室(5a)(5b)内に流入された際には、その水圧によって、弁部材(7)(7)の吐出弁(71)(71)が開放されて、温水が区画室(5a)(5b)内から吐出室(5c)に流入する。
また本実施形態においては、区画室(5a)(5b)の後壁面(51a)(51b)と、吐出室(5c)の後壁面(51c)とにより、連続する滑らかな平坦面を形成するようにしているため、第1及び第2区画室(5a)(5b)から吐出室(5c)にかけて流通する温水が、平坦面(51a)(51b)(51c)よって整流作用を受けながら、その面(51a)(51b)(51c)に沿って滑らかに流通することにより、温水をより安定させて供給することができる。
更に本実施形態においては、区画室部材(50)内の後壁面(51a)(51b)(51c)に沿って温水を流通させるようにしているため、吐出される温水を、区画室部材(50)の後壁(51)に沿って、つまり浴槽内壁面に沿って、広範囲に穏やかに供給することができる。
また本実施形態においては、第1及び第2区画室出口(53a)(53b)から吐出室(5c)内に流出される温水は、扇状の吐出流路(Da)(Db)に沿って周方向に拡散しながら吐出されるため、温水を浴槽内壁面に沿って広範囲に分散させて供給することができる。このため、吐出される温水のばらつきや偏りを有効に防止でき、貯留されるお湯の温度分布に偏りが生じるのを防止でき、湯はり当初から温度むらのない快適な入浴環境を自動的に得ることができる。
特に本実施形態においては、吐出流路(Da)(Db)が吐出室(5c)内で重なり合うものであるため、2つの流路(A)(B)に温度の異なる水(例えば高温水と低温水等)がそれぞれ供給される場合であっても、温度差のある温水同士は、吐出室(5c)内における吐出流路(Da)(Db)の重なり合う部分で混合されることにより、温度むらのない均一な温度分布の温水を吐出口(55)から浴槽(T)内に供給することができる。
しかも本実施形態においては、吐出口(55)に絞り片(62)を形成しているため、吐出口(55)から吐出される温水の流路が適度に絞り込まれることにより、温水を十分な流速で勢い良く供給でき、上記温水の拡散作用も相まって、温水を浴槽内全域にバランス良く供給できる。このため貯留されるお湯の温度分布の偏りをより確実に防止でき、より一層快適な入浴環境を得ることができる。
一方、浴槽(T)内の温水を再加熱するような追い焚き処理を行う場合には、温水口装置の2つの流路(A)のうち、室外給湯機の往き管に接続された側の流路が給湯側流路として機能し、戻り管に接続された側の流路が吸込側流路として機能して、いわゆる強制循環が行われる。例えば第1流路(A)が給湯側流路、第2流路(B)が吸込側流路となるように配管接続された場合には、給湯機から供給される温水は、第1流路(A)を通って第1区画室(5a)に流入され、第1区画室出口(53a)の吐出弁(71)を開いて、吐出室(5c)に流入されて、吐出口(55)及びフィルター開口(97)を介して浴槽(T)内に供給される。
ここで給湯側流路においては、上記と同様に、整流作用、拡散作用、絞り効果等によって、温水を浴槽内に安定状態に供給することができ、お湯の温度分布の偏りを確実に防止することができる。
また吸込側流路においては、室外給湯機の戻り管及び第2流路(B)の負圧に伴い、第2区画室(5b)が負圧となる。このため、浴槽(T)内の水圧によって、流路形成部材(3)における第2吸込口(6b)の吸込弁(72)が開放して、浴槽(T)内の温水がフィルター部材(9)を介して第2吸込口(6b)を通って第2区画室(5b)内に流入されて、更に第2流路(B)を通って室外給湯機に戻される。
なお、温水口装置の2の流路(A)(B)が、室外給湯機の往き管及び戻り管に対し、上記とは逆に接続した場合には、各流路(A)(B)を温水が上記とは逆方向に流通して、強制循環されるものである。
この場合においても、給湯側流路では、上記と同様、整流作用、拡散作用、絞り効果等によって、温水を浴槽内に安定状態に供給することができる。
また本実施形態においては、吐出弁(71)を吐出流路(Da)(Db)に対し傾斜姿勢に配置しているため、吐出弁(71)の基端から先端までの長さを、吐出流路(Da)(Db)の厚み(区画室部材50の前後壁間寸法)に対し十分に大きく設定することができる。このため水圧による吐出弁(71)の押込力(モーメント)を大きく確保することができ、例えば流量が少なくて水圧が低くとも、吐出弁(71)への操作力を十分に確保でき、弁(71)をスムーズに開放できて、動作信頼性を向上させることができる。その上更に閉止状態から全開状態までの角度変化が小さくなるため、全開状態への移行をスムーズに行えるとともに、逆に全開状態から閉止状態への移行もスムーズに行うことができ、より一層動作信頼性を向上させることができる。
しかも温水の流量が少なくて低い水圧であっても確実に吐出弁(71)を開放できるため、温水の供給を確実に行うことができる。更に低い水圧で確実に吐出弁(71)を開放できるため、流路抵抗も小さくなり、温水の供給をより安定させて行うことができる。
特に水圧が低く吐出弁(71)の開放量が小さい場合、弁(71)によって流通水が後壁面(51a)(51b)(51c)側に押し寄せられるため、平坦な後壁面(51a)(51b)(51c)による整流作用が十分に発揮され、温水の安定供給をより一層確実に行うことができる。
また上記のように吐出弁(71)の動作信頼性を確保した上更に、吐出弁(71)のサイズに比べて、吐出流路(Da)(Db)の厚み(前後壁6、51間の寸法)を薄くできて(前後壁6、51間の寸法を小さくできて)、区画室部材(50)のスリム化を図ることができ、浴槽内壁面からの突出量を小さくでき、良好な美観を得ることができる。
また、本実施形態においては、2つの区画室(5a)(5b)から流出される温水を、一旦、吐出室(5c)に導入してから、吐出口(55)を介して浴槽内に吐出するものであるため、例えば2つの区画室から別々に温水を槽内に吐出する場合と比較して、温水吐出時の流速や方向性等を制御し易くなり、方向性等を所望の状態に設定でき、温水を効果的に吐出させることができる。例えば、湯はり時であっても、追い炊き時であっても、更に2つの経路のうちいずれの経路を給湯側に設定しようとも、温水の吐出位置が変更されることはなく特定されているため、吐出方向等を制御し易く、所望の吐出性能を得ることができる。
また本実施形態においては、吐出弁(71)及び吸込弁(72)を一体に有する弁部材(7)(7)を用いるものであるため、部品点数を削減できて、構造の簡素化を図ることができ、コストの削減を図ることができる。
更に弁部材(7)(7)を装置本体(10)に組み付けるだけで、第1及び第2吐出弁(71)、第1及び第2吸込弁(72)の4つの弁を組み付けることができ、組付工程数を削減できて、組付作業を容易に行うことができ、より一層コストの削減を図ることができる。
しかも、弁部材(7)(7)における吐出弁(71)及び吸込弁(72)間の連結部に弁支持軸(73)を形成して、その軸(73)を装置本体(10)に組み付けるものであるため、弁部材(7)(7)を安定状態に組み付けることができ、吐出弁(71)及び吸込弁(72)に高い動作信頼性を得ることができて、品質を向上させることができる。
更に吐出弁(71)は、区画室部材(50)における区画室(5a)(5b)と吐出室(5c)との間、つまり区画室部材(50)の奥内に設置されるため、温水口装置の掃除やメンテナンスを行う際に、指先が吐出弁(71)に接触するようなことがなく、その接触による吐出弁の劣化、破損、汚染等の不具合を確実に防止することができる。
また本実施形態においては、装置本体(10)の前面から浴槽内に温水を吸い込んで、周側面から浴槽内の温水を吐出するようにした側方吐出/前面吸込方式を採用するものであるため、例えば貯湯時には、温水が浴槽内面に沿って滑らかに供給することができ、吐出される温水の飛散による音の発生を防止でき、静かに湯はりを行える。更に、追い焚き時には、吐出される温水が浴槽内面に沿ってその内周面全域に温水が行き渡るとともに、浴槽中央部の温水が装置内に吸い込まれることにより、浴槽内を温水が大きく安定して循環し、例えば吐出された温水が、循環せずに装置内に吸い込まれるような不具合(ショートサイクル)を有効に防止することができ、追い焚き処理を効率良くスムーズに行うことができる。
更に本実施形態においては、区画室部材(50)の吸込口(6a)(6b)を、多数の小孔によって形成するものであるため、吸込口(6a)(6b)から浴槽内の温水を吸い込む際に、吸引力が周辺に分散されるため、浴槽内に浮遊する毛髪等のゴミが、吸込口(6a)(6b)に吸い寄せられるのを防止でき、毛髪等が区画室部材(50)の吸込口周辺に吸い付けられたり、装置内部に吸い込まれたりするを防止することができる。
なお上記実施形態においては、吐出弁を区画室部材の前壁(蓋体)に取り付けるようにしているが、それだけに限られず、本発明は、吐出弁をその基端側を区画室部材の後壁に取り付けるようにしても良い。この場合には、区画室部材の前壁に、弁先設置溝を設けるとともに、区画室内の前壁面及び吐出室内の前壁面とによって、滑らかな平面を形成するのが良い。
また本実施形態においては、吐出室(5c)内における吐出口(55)の近傍のみに流路絞り片(62)を形成して、吐出口(55)付近で狭い範囲で流路を一気に絞り込むように構成しているが、本発明はそれだけに限られず、例えば図9に示すように、吐出室(5c)内における蓋体(6)の裏面側に吐出室全域にわたって、その吐出流路(Da)(Db)を次第に狭めていくような流路絞り片(62)を形成して、流路を徐々に絞り込むように構成しても良い。もっとも本発明においては、浴槽内吐出部の浴槽内側への突出方向を前後方向としたとき、吐出流路における下流側端部が、それよりも上流側の部分に対し前後寸法が小さくなるよう形成されてさえいれば、上記の絞り効果を得ることができる。
更に本実施形態においては、蓋体(6)の吐出口周縁部(吐出口前縁部)に流路絞り片を形成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、流路形成部材本体(5)における後壁(51)の吐出口周縁部(吐出口後縁部)に流路絞り片を形成しても良く、更に吐出口前縁部及び後縁部の双方に流路絞り片を形成するようにしても良い。
また上記実施形態においては、本発明を無極性タイプの温水口装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は、給湯機につながる往き管及び戻り管が予め設定されている温水口装置にも適用することができる。
また上記実施形態においては、フィルター部材の外周側面から温水を吐出するように構成しているが、本発明は、フィルター部材と浴槽内壁面との隙間から温水を吐出するように構成しても良い。
更に上記実施形態においては、強制循環タイプの追い焚き可能な装置を例に挙げて説明したが、本発明は、湯はり等の貯湯処理のみを行う温水口装置にも適用することができる。
また本発明においては、流路形成部材(3)の吐出口(55)や、フィルター部材(9)の吐出用開口(97)に桟部材を設けて、吐出室(5c)は1つのままで、吐出口(55)や吐出用開口(97)を2つ以上に分割するようにしても良い。
また本発明においては、吐出口は、区画室部材の外周壁に限られず、前壁(蓋体)や後壁の外周部に設けられていても良い。