以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、本発明の実施形態にかかる通過タイム計測装置10を概略的に示す図である。通過タイム計測装置10は、第1レーン12及び第2レーン14それぞれの複数の所定位置P1〜Pnにおける被験者Sの通過タイムを計測するための装置である。
通過タイム計測装置10は、任意スタートモードと制御スタートモードの二つのモードによる計測が可能である。任意スタートモードとは、任意にスタートする被験者Sの通過タイムを計測するためのモードである。制御スタートモードとは、被験者Sにスタートタイミングを指示し、その指示に従ってスタートする被験者Sの通過タイムを計測するモードである。また、制御スタートモードにおいては、付加的に伴走モードを選択することができる。伴走モードでは、第1レーン12及び第2レーン14の複数の所定位置それぞれに設けられた発光器40aまたは40bが、スタート位置に近いものから順に発光することによって、被験者Sに走行速度の目標を与える。これらのモードは、通過タイム計測装置10に備えられているコンピュータ24にオペレータが所定の入力操作を行うことによって選択される。
図1に示されるように、通過タイム計測装置10は、二つのスタート時刻検出器16と、複数の発光器18と、検出部20と、制御ボックス22と、コンピュータ24とを備えている。
スタート時刻検出器16は、スタート位置Psを被験者Sがスタートする時刻に関するスタート情報をコンピュータ24へ出力する。スタート時刻検出器16は、第1レーン12及び第2レーン14それぞれに設けられている。
図2は、スタート時刻検出器16の構成を示す図である。スタート時刻検出器16は、圧力センサ26と、クロックカウンタ28と、スタート時刻検出部30とを有している。圧力センサ26は、スタート位置Psにおいて被験者Sの足に接触するように設けられている。圧力センサ26は、スタート位置Psをスタートする被験者Sの足から受ける圧力に応じた電気信号を出力する。
クロックカウンタ28は、コンピュータ24から制御ボックス22を介して供給されるクロック信号を取得し、このクロック信号の周期に応じてカウント値をカウントアップする。スタート時刻検出部30は、逐次カウントアップしたカウント値を記憶している。
スタート時刻検出部30は、圧力センサ26からの電気信号が変化したときに、クロックカウンタ28からカウント値を取得する。スタート時刻検出部30は、取得したカウント値を含むスタート情報をコンピュータ24へ出力する。具体的に、スタート時刻検出部30は、圧力センサ26からの電気信号が所定量以上増加したときのカウント値を取得する。スタート時刻検出部30は、取得したカウント値と、レーンを特定するためのレーン番号と、スタートスイッチ番号を含むスタート情報をコンピュータ24へ出力する。このスタートスイッチ番号は、スタート情報が、スタート時刻検出器16によって出力されたことを報せるための情報である。
図3は、スタート情報の一例を示す図である。図3に示されるように、スタート情報には、スタートスイッチ番号、レーン番号、及びカウンタ値が含まれている。図3の例においては、スタート情報には、スタート時刻検出器16からの情報であることを示すためのスタートスイッチ番号として「0」が含まれている。スタート時刻検出器16が設けられたレーンを特定するためのレーン番号として、第1レーン12であることを示す「1」が含まれている。また、圧力センサ26からの電気信号が所定量以上増加したときのカウント値である「3」が含まれている。
複数の発光器18は、図1に示されるように、第1レーン12及び第2レーン14の一方の縁に沿うように個々に配置されている。複数の発光器18は、第1レーン12及び第2レーンそれぞれの複数の所定位置P1〜Pnを通過している被験者Sの胴の側部に交差するように、光を出射する。
複数の検出部20は、第1レーン12及び第2レーン14の他方の縁に沿うよう個々に配置されている。具体的に、複数の検出部20は、第1レーン12及び第2レーン14の間の領域に配置されている。複数の検出部20は各々、隣接する検出部とデータ線によって相互に接続されている。また、所定位置P1の縁に設けられた検出部20は、制御ボックス22とデータ線によって接続されている。データ線は、コンピュータ24と検出部20とが、データ及び信号を送受するために設けられている。
図4は検出部20の構成を、発光器18及び制御ボックス22と共に示す図である。複数の検出部20はそれぞれ、受光器32a及び32b、クロックカウンタ34、パケット生成部(データ生成手段)36、入出力部38、並びに発光器(スタート指示手段)40a及び40bとを有している。
図1に示されるように、受光器32aは、第1レーン12に設けられた発光器18からの光を受けるように発光器18と対向配置されている。受光器32bは、第2レーン14に設けられた発光器18からの光を受けるように発光器18と対向配置されている。受光器32a及び受光器32bは、受けた光の強度に応じた電気信号をパケット生成部36に出力する。具体的に、受光器32a及び32bは、発光器18からの光を受光した場合には第1のレベルの電気信号を出力する。第1のレベルとは、例えば、ONレベルである。一方、発光器18からの光が、被験者Sによって遮断された場合には、第2のレベルの電気信号を出力する。第2のレベルとは、例えば、OFFレベルである。
クロックカウンタ34は、コンピュータ24から制御ボックス22を介して供給されるクロック信号を取得し、このクロック信号の周期に応じてカウント値をカウントアップする。スタート時刻検出部30は、逐次カウントアップしたカウント値を記憶している。
パケット生成部36は、受光器32a及び32bからの電気信号が、第1のレベルから第2のレベルに切り替わった時刻に関する情報を含む第1のパケット(第1のデータ)を生成する。また、パケット生成部36は、受光器32a及び32bからの電気信号が、第2のレベルから第1のレベルに切り替わった時刻に関する情報を含む第2のパケット(第2のデータ)を生成する。具体的に、パケット生成部36は、受光器32a及び32bからの電気信号が、第1のレベルから第2のレベルに切り替わった時にクロックカウンタ34が記憶しているカウンタ値を取得し、このカウンタ値を第1のパケットに含める。パケット生成部36は、受光器32a及び32bからの電気信号が、第2のレベルから第1のレベルに切り替わった時にクロックカウンタ34が記憶しているカウンタ値を取得し、このカウンタ値を第2のパケットに含める。
図5(A)は、第1のパケット及び第2のパケットのパケットフォーマットの一例を示すである。図5(B)は、第1のパケットのDATA領域に格納されたデータの一例を示す図である。図5(C)は、第2のパケットのDATA領域に格納されたデータの一例を示す図である。第1のパケット及び第2のパケットは、CMDヘッダ、SID領域、TID領域、DATA領域、CR領域を有する。CMDヘッダには、ASCII文字からなるコマンドが格納される。SID領域には、自局ID、すなわち検出部のIDが格納される。TID領域には、送先ID、すなわち、コンピュータ24のIDが格納される。CR領域は、パケットの終了を示すための「0x0D」が格納される。
第1及び第2のパケットのDATA領域には、検出部20によって検出されたデータが格納される。図5(B)及び図5(C)に示されるように、第1及び第2のパケットのDATA領域には、パケット番号格納領域、検出部番号格納領域、レーン番号格納領域、及びカウンタ値格納領域が含まれている。
パケット番号格納領域には、パケットが生成された順に付与される番号が格納される。図5(B)に示されるデータ及び図5(C)に示されるデータは、パケット生成部36によって続けて生成されるデータであり、図5(B)に示されるパケット番号格納領域には「1」が、図5(C)に示されるパケット番号格納領域には「2」が格納されている。
検出部番号格納領域には、検出部番号が格納される。検出部番号は、複数の検出部20それぞれを特定するために、複数の検出部20それぞれに異なる番号が付与されたものである。
レーン番号格納領域には、レーンを特定するための番号を特定するための番号、すなわち、第1レーン12に設けられた受光器32a又は第2レーン14に設けられた受光器32bからの出力に基づくデータであることを特定するための番号が格納される。図5(B)及び図5(C)に示される例では、レーン番号格納領域に、第1レーン12を特定するための「1」が格納されている。
カウンタ値格納領域には、パケット生成部36によってクロックカウンタ34から取得されたカウンタ値が格納される。図5(B)に示す例は、第1のパケットであるので、受光器32aからの電気信号が第1のレベルから第2のレベルに切り替わった時のカウンタ値である「32」が格納されている。図5(C)に示す例は、第2のパケットであるので、受光器32aからの電気信号が第2のレベルから第1のレベルに切り替わった時のカウンタ値である「36」が格納されている。
入出力部38は、上述したデータ線を介して、第1及び第2のパケットをコンピュータ24に送信する。
発光器40a及び40bは、制御スタートモードが選択されている場合に利用されるものである。所定位置Psの縁に設けられた検出部20の発光器40a及び40bは、被験者Sにスタートタイミングを指示するために設けられており、発光することによって被験者Sにスタートタイミングを報せる。所定位置Psの縁に設けられた検出部20の発光器40aは、第1レーン12を走行する被験者Sにスタートタイミングを指示するために設けられている。また、所定位置Psの縁に設けられた検出部20の発光器40bは、第2レーン14を走行する被験者Sにスタートタイミングを指示するために設けられている。発光器40a及び40bは、コンピュータ24から制御ボックス22を介して送信される発光情報に基づいて発光する。
図6は、発光情報の一例を示す図である。発光情報には、検出部番号、レーン番号発光開始カウンタ値、及び発光時間カウント値が含まれている。発光器40a及び40bは、発光情報に含まれている検出部番号及びレーン番号を参照することによって、コンピュータ24から送信される発光情報が自器へのものであることを認識することができる。図6に示される発光情報には、所定位置P1の縁に設けられた発光器であることを特定するための検出部番号「1」、第1レーン12の被験者Sにスタートタイミングを指示する発光器40aを特定するためのレーン番号「1」が含まれている。
発光器40a及び40bは、クロックカウンタ34に記憶されているカウント値を参照する。発光情報には発光開始カウンタ値が含まれており、発光器40a及び40bは発光開始カウンタ値とクロックカウンタ34に記憶されているカウンタ値が一致した時刻に発光を開始する。図6に示される例では、発光情報に発光開始カウンタ値として「3」が含まれている。この例では、発光器40aは、クロックカウンタ34に記憶されているカウンタ値が「3」になると、発光を開始する。
発光情報には発光時間カウンタ値が含まれている。発光器40a及び40bは、発光時間カウンタ値の数値分、クロックカウンタ34に記憶されているカウンタ値が進むまでの間、発光を継続する。図6に示される例では、発光情報に発光時間カウンタ値として「2」が含められている。この例では、発光器40aは、クロックカウンタ34に記憶されているカウンタ値が、発光開始時のカウンタ値「3」から「5」になるまで、発光を継続する。
複数の検出部20各々に設けられている発光器40a及び40bは、伴走モード時にもコンピュータ24から送信される上記の発光情報を受けて、発光する。複数の検出部20各々に設けられている発光器40a及び40bは、スタート位置に近いものから順に発光するように、コンピュータ24から送信される発光情報によって制御される。これによって、数の検出部20各々に設けられている発光器40a及び40bは、レーンを通過する速度の目標を被験者Sに与える。
制御ボックス22は、スタート時刻検出器16及び検出部20と、コンピュータ24とのデータ及び信号の中継を行うための機器である。図7は、制御ボックス22の構成を、スタート時刻検出器16、検出部20、及びコンピュータ24と共に示す図である。
図7に示されるように、制御ボックス22は、データ中継部42と、クロック中継部44と、検出部初期化部46とを有している。
データ中継部42は、スタート時刻検出器16によって出力された上記のスタート情報と、検出部20によって出力されたパケットとをコンピュータ24に中継する。また、データ中継部42は、コンピュータ24によって送信された上記の発光情報を検出部20に中継する。
クロック中継部44は、コンピュータ24によって出力されたクロック信号を、検出部20に中継する。
検出部初期化部46は、複数の検出部20の初期化を行う。この初期化は、例えば、制御ボックス22に電源が投入されたときに行われる。この初期化において、検出部初期化部46は、複数の検出部20各々に異なる検出部番号を付与する。具体的に、検出部初期化部46は、スタート位置Psに最も近い所定位置P1の縁に設けられている検出部20に、検出部番号「1」を送信する。所定位置P1の縁に設けられている検出部20は、この検出部番号「1」を記憶すると共に、データ線によって接続されている所定位置P2の縁に設けられている検出部20に検出部番号「2」を送信する。このように、検出部番号に1を加算しつつ、データ線によって接続されている隣接の検出部20に検出部番号が送信されることによって、複数の検出部20それぞれに異なる検出部番号が付与される。したがって、複数の検出部20それぞれに付与された検出部番号は、制御ボックス22からのデータ線によるリンク数が増えるに連れて増加する。また、検出部初期化部46は、複数の検出部20それぞれに付与された検出部番号をコンピュータ24に転送することによって、コンピュータ24に複数の検出部20が設けられた位置を通知する。
コンピュータ24は、物理的には、CPU(中央処理装置)、メモリといった記憶装置、ハードディスクといった格納装置、ディスプレイといった表示装置、通信装置等を有している。
図8は、コンピュータ24の機能的な構成を示す図である。コンピュータ24は、機能的には、クロック生成部48と、スタート時刻算出部50と、反応時間演算部52と、発光器制御部(スタート制御手段)54と、所要時間記憶部(記憶手段)56と、データセット生成部58と、通過タイム演算部(通過タイム演算手段)62と、通過タイム格納部64と、通過タイム予測部(予測手段)66と、表示部68とを有している。
クロック生成部48は、所定の周波数のクロック信号を生成する。このクロック信号は、制御ボックス22を介して、スタート時刻検出器16及び複数の検出部20に送信される。また、クロック生成部48は、スタート時刻検出器16及び複数の検出部20それぞれのクロックカウンタをリセットするための信号を送信する。この信号を受けた場合に、スタート時刻検出器16及び複数の検出部20それぞれのクロックカウンタは、0にリセットされる。
スタート時刻算出部50は、スタート時刻検出器16から制御ボックス22を介して送信される上記のスタート情報を取得する。スタート情報には、上述したように被験者Sがスタート位置Psをスタートした時のカウンタ値が含められている。スタート時刻算出部50は、このカウンタ値にクロック信号の周期に相当する時間を乗算することによって、被験者Sがスタート位置Psをスタートした時刻であるスタート時刻を算出する。スタート時刻算出部50は、スタート時刻と被験者Sを特定するための被験者IDとを対応付けて、通過タイム格納部64に格納する。
図9は、通過タイム格納部64に格納されたデータの一例を示す図である。スタート時刻算出部50は、被験者IDとスタート位置において取得されたスタートタイムであることを特定するための位置情報「Ps」とに対応付けて、算出したスタート時刻を通過タイム格納部64に格納する。図9に示される例では、被験者IDは、スタート位置をスタートした順に付される番号であり、最初にスタートした被験者Sの被験者IDは「0001」となっている。なお、被験者IDを記憶しているIDタグを被験者Sに付け、スタート位置にIDタグ読み取り装置を設けることによって、スタート位置に立った被験者Sの被験者IDを読み取って、被験者IDを取得してもよい。
反応時間演算部52は、発光器40aまたは40bによって被験者Sにスタートタイミングが指示されてから、スタート時刻算出部50によって取得されたスタート時刻までの時間を算出する。すなわち、反応時間演算部52は、スタートタイミングの指示から実際のスタートまでの反応時間を算出する。反応時間演算部52は、算出した反応時間と被験者IDとを対応付けて表示部68に出力し、コンピュータ24の表示装置に被験者Sごとの反応時間を表示させる。
発光器制御部54は、複数の検出部20各々に備えられた発光器40a及び40bの発光タイミング及び発光時間を制御する。発光器制御部54は、制御スタートモード及び伴走モードが選択されている場合に動作する。
発光器制御部54は、制御スタートモードが選択されている場合に、所定位置P1の縁に設けられた検出部20の発光器40a又は40bを発光させる時刻、及び発光時間を含む発光情報を生成する。発光器制御部54は、この発光情報を発光器40a又は40bに送信することによって、発光器40a、40bを発光させ、被験者Sにスタートタイミングを指示する。
発光器制御部54は、発光情報を生成するために通過タイム演算部62によって算出された先発の被験者Sの通過タイムと、所要時間記憶部56に記憶されたデータを参照する。図10は、所要時間記憶部56に記憶されているデータの一例を示す図である。
所要時間記憶部56には、スタート位置をスタートしてから複数の所定位置P1〜Pn各々を通過するまでの上限所要時間と下限所要時間とが、複数の所定位置各々を特定するための位置情報に対応付けて記憶されている。上限所要時間とは、最もスピードの遅い被験者Sがスタート位置から複数の所定位置各々までに要すると想定される時間である。下限所要時間とは、最もスピードの速い被験者Sがスタート位置から複数の所定位置各々までに要すると想定される時間である。例えば、複数の被験者Sに対して、複数の所定位置各々の通過タイムを予め求めておくことによって、上限所要時間及び下限所要時間を得ることができる。
発光器制御部54は、通過タイム演算部62によって先発の被験者Sの通過タイムが得られる度に、発光情報を生成する。すなわち、後発の被験者Sに指示するスタータイミングを更新する。
具体的に、発光器制御部54は、通過タイム演算部62によって先発の被験者Sの通過タイムとその通過タイムを取得した検出部20を特定するための検出部番号とを取得する。発光器制御部54は、取得した検出部番号によって特定される検出部20が設けられている所定位置を特定する。発光器制御部54は、その所定位置を特定するための位置情報に対応付けられている上限所要時間と、最終の所定位置Pnを特定するための位置情報に対応付けられている上限所要時間とを所要時間記憶部56から取得し、これら二つの上限所要時間の差と上記の通過タイムとを加算する。
発光器制御部54は、この加算によって得られる時刻を、先発の被験者Sが最も時間を要する場合に最終の所定位置Pnを通過する時刻、すなわち最終予測上限通過タイムとする。発光器制御部54は、この最終予測上限通過タイムと所要時間記憶部56に記憶された最終の所定位置Pnでの下限所要時間との差演算によって求められる時刻を、後発の被験者Sのスタートタイミングとする。
発光器制御部54は、スタートタイミングとして求めた時刻を上記のクロックの周波数で割った値を発光開始カウンタ値とする。発光器制御部54は、この発光開始カウンタ値、レーンを特定するためのレーン番号、発光時間カウンタ値、検出部番号を「1」として含めた発光情報を生成し、所定位置P1の縁に設けられた検出部20に送信する。
発光器制御部54は、伴走モードが選択されている場合に、複数の検出部20各々に設けられた発光器40aまたは40bを、スタート位置に近いものから順に発光させることによって、複数の所定位置各々を通過すべきタイミングを被験者Sに報せる。そのために、発光器制御部54は、複数の検出部20各々に設けられた発光器40aまたは40bを発光させるための発光情報を生成する。
発光器制御部54は、被験者Sがスタート位置から複数の所定位置各々までに要する目標時間を記憶している。発光器制御部54は、上記のようにスタートタイミングとして求めた時刻に目標時間を加算した目標時刻を求める。発光器制御部54は、この目標時刻を上記のクロックの周波数で割った値を発光開始カウンタ値とし、この発光開始カウンタ値と、検出部番号、レーン番号、発光時間カウンタ値とを含めた発光情報を生成する。発光器制御部54は、生成した発光情報を検出部20へ送信する。
データセット生成部58は、制御ボックス22から出力される第1のパケット及び第2のパケットを取得する。データセット生成部58は、同一の検出部番号を含み、制御ボックス22から順に出力された第1のパケットと第2のパケットとを一つのデータセットとする。データセット生成部58は、生成したデータセットを通過タイム演算部62に出力する。
通過タイム演算部62は、データセット生成部58によって出力されるデータセットに基づいて、複数の所定位置各々を被験者Sが通過した通過タイムを算出する。通過タイム演算部62は、制御スタートモードと任意スタートモードとで一部異なる処理を行う。
制御スタートモードと任意スタートモードとで通過タイム演算部62が行う共通の処理について、説明する。通過タイム演算部62は、データセット生成部58によって出力されたデータセットのうち、同一の検出部番号を含むデータセットを抽出する。これによって、通過タイム演算部62は、検出部20によって計測されたデータと他の検出部20によって計測されたデータとを分けることができる。
通過タイム演算部62は、同一の検出部番号を含むデータセットのうち、通過タイムの演算に不要なデータを削除するためのノイズ除去処理を行う。
このノイズ除去処理において、通過タイム演算部62は、被験者Sが既に通過した所定位置の通過タイムを取得すると、所要時間記憶部56に記憶されたその所定位置における上限所要時間と次の所定位置における上限所要時間との差を求め、この差と上記の通過タイムとを加算した時刻を予測上限通過タイムとして算出する。この予測上限通過タイムは、被験者Sが最も遅く次の所定位置を通過する場合の通過タイムであるものと想定される。また、通過タイム演算部62は、その所定位置における下限所要時間と次の所定位置における下限所要時間との差を求め、この差と上記の通過タイムとを加算した時刻を予測下限通過タイムとして算出する。この予測下限通過タイムは、被験者Sが最も早く次の所定位置を通過する場合の通過タイムであるもとの想定される。
通過タイム演算部62は、上記の予測上限通過タイムと予測下限通過タイムとの間に、含まれる出力時刻を有するデータセットのみを抽出することによって、通過タイムの演算に不要なデータセットを除くノイズ除去処理を実現する。この出力時刻には、データセットに含まれる第1のパケットのカウンタ値にクロック信号の周期に相当する時間を乗算して得られる時刻を用いることができる。
制御スタートモードが選択されている場合に、通過タイム演算部62は、ノイズ除去処理を経て抽出されたデータセットを用いて通過タイムの算出を行う。通過タイム演算部62は、抽出されたデータセットのうち、出力時間幅が最長のデータセットの出力時刻を通過タイムとして採用する。出力時間幅が最長のデータセットを抽出するために、通過タイム演算部62は、第2のパケットに含まれるカウンタ値と第1のパケットに含まれるカウンタ値との差が最大のデータセットを抽出する。被験者Sの体のうち、側面長が最も長いのは、胴部である。したがって、出力時間幅が最長のデータセットを抽出することによって、胴部によって発光器18からの光が遮断された場合の受光器32a又は32bからの出力に基づくデータセットを抽出することができる。
通過タイム演算部62は、抽出したデータセットの出力時刻を通過タイムとして採用する。なお、出力時刻には、データセットに含まれている第1のパケットのカウンタ値に、クロック信号の周期に相当する時間を乗算して得られる時刻を用いることができる。通過タイム演算部62は、算出した通過タイムを所定位置を特定するための位置情報と、被験者IDに対応付けて、通過タイム格納部64に格納する(図6参照)。
任意スタートモードが選択されている場合には、スタートタイミングが被験者Sに指示されないので、先発の被験者Sを後発の被験者Sが追い抜く可能性がある。そのために、任意スタートモードが選択されている場合には、通過タイム予測部66によって求められる予測通過タイムを利用する。
通過タイム予測部66は、被験者Sが既に通過した所定位置における通過タイムを用いて、その被験者Sが残りの所定位置を通過する予測通過タイムを求める。通過タイム予測部66は、被験者Sが既に通過した所定位置間の距離と各々の所定位置での通過タイムとを用いて、残りの所定位置での予測通過タイムを求める。この予測には、例えば、最小二乗予測、スプライン予測といった種々の方法を採用することができる。
通過タイム予測部66は、算出した予測通過タイムを被験者Sを特定するための被験者IDと所定位置を特定するための位置情報とに対応付けて通過タイム演算部62に出力する。
通過タイム演算部62は、上述したように同一の検出部番号を含むデータセットを抽出する。通過タイム演算部62は、その検出部番号をもつ検出部20が設けられている所定位置に関する位置情報を特定し、その位置情報に対応付けられている予測通過タイムを抽出する。通過タイム演算部62は、抽出したデータセットの出力時刻、すなわち第1のパケットに含まれるカウンタ値から求められる時刻と、上記のように抽出した予測通過タイムとを比較する。通過タイム演算部62は、比較の結果、出力時刻が最も近い予測通過タイムを同一とするデータセットを抽出し、抽出したデータセットをその予測通過タイムに対応付けられている被験者IDに対応付ける。
通過タイム演算部62は、同一の被験者IDに対応付けられているデータセットのうち、上述したように出力時間幅が最長のデータセットの出力時刻を通過タイムとして採用する。このように、任意スタートモードでは、被験者Sの予測通過タイムを用いることによって、データセットを先発の被験者Sを後発の被験者Sのためのデータとして適切に抽出することができるので、先発の被験者Sを後発の被験者Sが追い抜いても、被験者Sの通過タイムを適切に求めることができる。
表示部68は、通過タイム格納部64に格納された通過タイムをコンピュータ24の表示装置に表示する。表示部68は、例えば、所定位置を示すための横軸と時刻を示すための縦軸とをもつグラフに被験者Sの通過タイムをグラフ表示することができる。
以下、通過タイム計測装置10の動作について説明する。図11は、制御スタートモードでの通過タイム計測装置10の動作を示すフローチャートである。図11は、制御スタートモードにおいて、一人の被験者Sの通過タイムを取得するための動作を示している。
制御スタートモードでは、発光器制御部54によって求められた発光情報に基づいて、所定位置P1の縁に設けられた発光器40aまたは40bが発光することによって、被験者Sにスタートタイミングが指示される(ステップS01)。
この指示に基づいて被験者Sがスタート位置Psをスタートすると、スタート時刻検出器16によって生成されたスタート情報を用いて、スタート時刻算出部50がスタート時刻を算出する(ステップS02)。スタート時刻算出部50は、このスタート時刻を、通過タイム格納部64に格納すると共に、反応時間演算部52に出力する。
反応時間演算部52は、上記の発光情報に含まれるカウンタ値に基づく時刻と、スタート時刻との差からなる反応時間を求め、表示部68に表示させる(ステップS03)。
その後、被験者Sが複数の所定位置を順に通過するたびに検出部20から出力される第1のパケット及び第2のパケットに基づくデータセットがデータセット生成部58によって生成される。通過タイム演算部62は、データセット生成部58によって生成されたデータセットのうち、通過タイムの算出対象の所定位置の縁に設けられている検出部番号を含むデータセットを取得する(ステップS04)。
通過タイム演算部62は、通過タイムの算出に不要なデータセットを除くためのノイズ除去処理を行う(ステップS05)。すなわち、通過タイム演算部62は、被験者Sが既に通過した所定位置での通過タイムと、所要時間記憶部56に記憶されている上限所要時間及び下限所要時間を用いて、通過タイムの算出対象の所定位置における予測上限通過タイムと予測下限通過タイムを求める。通過タイム演算部62は、ステップS24において取得されたデータセットのうち、予測上限通過タイムと予測下限通過タイムの範囲に含まれるデータセットのみを抽出する。
通過タイム演算部62は、ノイズ除去処理によって抽出されたデータセットのうち、最長の出力時間幅のデータセットを抽出し、そのデータセットに基づく出力時刻を通過タイムとして算出する(ステップS06)。
次に、最終の所定位置Pnにおける通過タイムが取得されたか否かが判断され(ステップS07)、最終の所定位置Pnにおける通過タイムが取得された場合には、以上の処理が終了する。
一方、最終の所定位置Pnにおける通過タイムが取得されていない場合には、発光器制御部54が、次にスタートする被験者Sにスタートタイミングを指示するための発光情報を更新する(ステップS08)。すなわち、上述したように、発光器制御部54は、通過タイム演算部62によって新たに算出された通過タイムと、その通過タイムが取得された所定位置からの最終の所定位置までの上限所要時間とを加算した時刻を最終予測上限通過タイムとして算出する。発光器制御部54は、スタート位置から最終の所定位置までの下限所要時間を最終予測上限通過タイムから差し引いた時刻を後発の被験者Sがスタートすべき時刻とし、この時刻に基づく発光情報を生成して、所定位置P1の縁に設けられた検出部20に送信する(ステップS09)。
なお、制御スタートモードに加えて伴走モードが選択されている場合には、以上の処理に並行して、発光器制御部54は、複数の検出部20が有する発光器40aまたは40bを各々発光させるための発光情報を送信する。発光器40aまたは40bが発光情報に基づいて発光することによって、被験者Sが複数の所定位置を通過する目標タイミングが指示される。
図12は、任意スタートモードでの通過タイム計測装置10の動作を示すフローチャートである。任意スタートモードが選択されている場合、スタート時刻検出器16によって出力されたスタート情報を用いて、スタート時刻算出部50がスタート時刻を算出する(ステップS21)。スタート時刻算出部50は、このスタート時刻を、通過タイム格納部64に格納する。
その後、被験者Sが複数の所定位置を順に通過するたびに検出部20から出力される第1のパケット及び第2のパケットに基づくデータセットがデータセット生成部58によって生成される。通過タイム演算部62は、データセット生成部58によって生成されたデータセットのうち、通過タイムの算出対象の所定位置の縁に設けられている検出部番号を含むデータセットを取得する(ステップS22)。
通過タイム演算部62は、取得したデータセットのうち、通過タイムの算出に不要なデータセットを除くためのノイズ除去処理を行う(ステップS23)。すなわち、通過タイム演算部62は、被験者Sが既に通過した所定位置での通過タイムと、所要時間記憶部56に記憶されている上限所要時間及び下限所要時間を用いて、通過タイムの算出対象の所定位置における予測上限通過タイムと予測下限通過タイムを求める。通過タイム演算部62は、ステップS24において取得されたデータセットのうち、予測上限通過タイムと予測下限通過タイムの範囲に含まれるデータセットのみを抽出する。
通過タイム予測部66は、被験者Sが既に通過した所定位置での通過タイムを用いて、残りの所定位置における被験者Sの予測通過タイムを求めて、予測通過タイムに位置情報及び被験者IDを対応付けて通過タイム演算部62に出力する(ステップS24)。
通過タイム演算部62は、ノイズ除去処理によって抽出されたデータセットのうち、他の予測通過タイムより近い予測通過タイムを同一にするデータセットを抽出し、抽出したデータセットを用いて通過タイムを算出する(ステップS25)。
次に、最終の所定位置における通過タイムが取得されたか否かが判断され(ステップS27)、最終の所定位置における通過タイムが取得された場合には、以上の処理が終了する。一方、最終の所定位置における通過タイムが取得されていない場合には、ステップS22からの処理が継続される。
以上述べたように、本実施形態の通過タイム計測装置10では、所定位置における被験者Sの胴部の通過タイムを計測するために、所定位置の縁に一対の発光器18と受光器32a(又は32b)とを対向配置すれば良いので、装置構成が簡易である。すなわち、通過タイム計測装置10は、被験者Sによって発光器18からの光が遮断されたときに受光器32a及び32bから出力される第2のレベルの信号のうち、最もその時間幅が長い第2のレベルの信号の出力時刻を通過タイムとする。これによって、体の部位のうち側面長が最も長い胴部の通過タイムが取得される。
また、複数の所定位置P1〜Pnごとに設けられた検出部20は、各々検出部番号を含むデータセットを生成する。通過タイム演算部62は、同一の検出部識番号を含むデータセットを用いて通過タイムを取得するので、複数の所定位置各々での通過タイムを正確に取得することができる。
また、制御スタートモードにおいては、発光器制御部54が、被験者Sが所定位置を通過するたびに後発の被験者Sがスタートするスタートタイミングを指示するための発光情報を更新する。したがって、先発の被験者Sを後発の被験者Sが追い抜かないように、より適切な時刻に被験者Sにスタートタイミングを指示することができる。
また、任意スタートモードにおいては、通過タイム予測部66によって、被験者Sが既に通過した所定位置での通過タイムに基づいて、残りの所定位置での予測通過タイムが被験者ごとに取得される。通過タイム演算部62は、複数のデータセットのうち、そのデータセットに基づく出力時刻が最も近い予測通過タイムを同一にするデータセットを用いることによって、追い抜きが発生しても、通過タイムを被験者ごとに識別して取得することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、種々の変形例を構成することができる。例えば、データセットに基づいて生成される通過タイムは、第1のパケットに含まれるカウント値と第2のパケットに含まれるカウント値との平均値にクロック信号の周期に相当する時間を乗算することによって得られる時刻であっても良い。
また、制御スタートモードにおいては、所定位置P3、P2、P1の縁に設けられた発光器40aまたは40bを順に発光させることによって、被験者Sにスタートタイミングを指示することもできる。
10…通過タイム計測装置、12…第1レーン、14…第2レーン、16…スタート時刻検出器、18…発光器、20…検出部、22…制御ボックス、24…コンピュータ、26・・・圧力センサ、28,34・・・クロックカウンタ、30・・・スタート時刻検出部、32a,32b・・・受光器、36・・・パケット生成部、38・・・入出力部、40a,40b…発光器(スタート指示手段)、42・・・データ中継部、44・・・クロック中継部、46・・・検出部初期化部、48・・・クロック生成部、50…スタート時刻算出部、52…反応時間演算部、54…発光器制御部、56…所要時間記憶部、58…データセット生成部、62…通過タイム演算部、64…通過タイム格納部、66…通過タイム予測部、68…表示部、Ps…スタート位置、P1〜Pn…所定位置。