JP4308196B2 - 防刃服 - Google Patents

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Description

本発明は、着用することによって、暴漢の刃物が着用者の体に到達することを防止することができる防刃衣服に関する。極端な言い方をすれば、たとえ軽微な傷を負うことがあっても、刃物が着用者の体深くに到達するなど深い傷を負うことのないようにするものである。
複数の矩形状のエレメント部材を連結部材で連結してなる防刃チョッキであって、エレメント部材は一辺に外方へ突出する複数の凸部とこの辺と相対する他方の辺に複数の凹部を備え、一方のエレメント部材の凸部を隣接する他方のエレメント部材の凹部に噛合し、連結部材でこれらのエレメント部材同士を連結する特許文献1があった。
また、より軽く、より着心地を良くするために、直径5mm程度のステンレススチール製リングを鎖状に編むことにより構成された防刃チョッキを開示する特許文献2があった。
特開2005−36373号公報 登録実用新案第3051162号公報
従来の防刃具、たとえば、防刃チョッキ、防弾チョッキなどと称されるものは、その機能を重視するあまり、重く、動きも制約を受けるなど、満足できるものではなかった。たとえば、使用者の動作に与える制約を低減し、軽量化をはかったと称する上記特許文献1についても同様である。特許文献1について考察してみると、特許文献1の図5などに記載されているエレメント部材を連結部材で連結した防刃体は、各エレメント部材を隙間なく一直線状に連結、配置している。また、連結部材は連結するエレメント部材間の隙間を蔽うことができるように、板状で構成されている。凸部と凹部との噛合により隣接するエレメント部材の連結を行なうため、隣接するエレメント部材間の境界に一直線状の間隙が形成されることがなく、この間隙から刃物の刃が進入しないとしている。このようにエレメント部材を一直線状に連結、配置している特性により、特許文献1の防刃チョッキは、剣道具の胴衣のように、使用者の体に巻回しする防刃チョッキとなっている。必然的に自由な動きを必要とする着用性には問題があった。
このように特許文献1の防刃体は、連結されたエレメント部材間の折れ曲がりなどの変形性が悪く、使用者の体へのフィット性が悪かった。また、特許文献1の図5などに記載されているエレメント部材には、連結部材用の孔はあるものの、連結部材を取り付けるのに、必要最小限の孔の寸法となっている。このようにエレメント部材の開口率は低く、たとえエレメント部材の金属板の厚みが薄かったとしても、まだまだ軽くできるものであり、エレメントの大きさも大きく、動きの制約をもっと軽減できるものである。
警察官が日本刀やピストルを保持していると想定される暴力団のアジトに踏み込むとか、立て篭もっている暴漢を封鎖して容疑者を説得する場合などのように、危険が十分に想定される場合などは、たとえ着用性に劣るとしても、防刃・防弾の機能を十分果たし得る従来の防刃・防弾チョッキが必要とされる。
しかしながら、危険に遭遇する可能性は高くないが、その可能性を否定できない職務も数多く存在する。最近多くなっている24時間営業の店を深夜一人で従業するコンビニエンスストアなどの店員、夜間の工場などの警備員などである。このような場合に着用性に不満が少ないため長時間の着用も可能であり、万一の場合に、着用していなければ刃物が体内深くまで到達し、重傷を負ったであろうと推定される刀傷沙汰の場合に、着用していたために、かすり傷程度の軽症に抑えることが可能な防刃服については開示されていない。
本願発明は、ピストルなどの防弾を目的とするものではなく、防刃といっても、暴漢の刃物が着用者の体に到達することを完全に防止するというよりも、たとえ、軽微な切り傷を負うことがあっても、致命的な損傷を被ることを防止したものであり、このように防刃性の機能を下げる代わりに、軽量化や使用者の動作に与える制約を低減する着用性に重きをおく防刃服を提供することを目的としている。
また、必ずしも全身を防御する必要はなく、着用者の職業によって危険が想定される部位が決まっている場合もある。たとえば、コンビニエンスストアなどの店員の場合は、客からの支払いを受けるレジで応対することが多いために、前側の上半身で良いと思われる。また、タクシーの運転手の場合は、首、両肩、上腕部などになるかと思われる。そこで、これら必要な部分のみ防刃対応をした防刃服とすることで、軽量化、動作制約性低減などの着用性の向上を図り、長時間の着用を可能とすることをも目的としている。
特許文献2も本願発明の目的と類似である。しかし、防刃体が線材リングで構成される鎖であるために、使用者の体表面に投影される線材リングの面積が小さくなる。防刃エレメント部材が板材で構成された場合は、使用者の体表面に投影される防刃エレメント部材の面積が大きくなる。したがって刃物が突き刺された場合を想定すると、線材リングの場合は刃先が使用者の体表面に進入する度合が大きいのに対し、板材で構成された防刃エレメント部材の場合は、進入しようとする刃先の圧力を板材の大きな面積で受けるために、より安全になる。このように特許文献2の防刃体は、進入しようとする刃先の圧力に弱いという問題がある。また、防刃体が鎖であるために、やや立体感がでて厚めになること、鎖を構成する各リングの動きが制限されていないために、1つのリング内に係合されている各リングが1つのリング内で自由に動く(特許文献2の図3参照)などの難点があった。
本発明のある局面に係る防刃服は、
板状の小片からなる防刃エレメント部材所定幅内の間隔を有して平面状に配置、隣接する前記防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、前記平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して形成した防刃体と、
記防刃体を挟み込んで持着する裏生地および表生地とを備え、
前記連結部材は、1つの前記防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の前記防刃エレメント部材とを、それぞれの前記防刃エレメント部材が内部に備える孔に前記連結部材を遊嵌して前記防刃エレメント部材同士を連結し、
前記連結部材が遊嵌する、前記防刃エレメント部材の内部に備える孔の内側の端部から該孔を囲む全方位中の3/4以上を占める方位の前記防刃エレメント部材の外形を構成する各辺までのそれぞれの各最短直線距離が、該孔の内側両端間の最長直線距離よりもいずれも小さく、
前記防刃体は、隣接する前記防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する前記防刃エレメント部材同士間の隙間を備える。
板状の小片からなる防刃エレメント部材が所定幅内の間隔を有して平面状に配置され、隣接する防刃エレメント部材は連結部材で互いに平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結されて防刃体が形成される。防刃体は裏生地および表生地に挟み込んで持着される。1つの防刃エレメント部材と、防刃エレメント部材に隣接する他の防刃エレメント部材とを、それぞれの防刃エレメント部材が内部に備える孔に連結部材を遊嵌して防刃エレメント部材同士が連結部材により連結される。連結部材が遊嵌する、防刃エレメント部材の内部に備える孔の内側の端部から該孔を囲む全方位中の3/4以上を占める方位の防刃エレメント部材の外形を構成する各辺までのそれぞれの各最短直線距離が、該孔の内側両端間の最長直線距離よりもいずれも小さい。防刃体には、隣接する防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する防刃エレメント部材同士間の隙間が備えられる。このように、防刃体を構成しているので、着用時に防刃服が使用者の体にフィットし、使用者の動作に与える制約を低減し、着用性を向上させている。また、孔を内部に備えるために、軽量化、通気性の向上の他、孔に連結部材を遊嵌して、隣接する防刃エレメント部材を連結部材で結合することができる。
本発明の他の局面に係る防刃服
板状の小片からなる防刃エレメント部材を所定幅内の間隔を有して平面状に配置し、隣接する前記防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、前記平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して形成した防刃体と、
前記防刃体を挟み込んで持着する裏生地および表生地とを備えた防刃服であって、
前記防刃服を支える支え部材を、さらに備え、
前記裏生地は、前記支え部材の一方の先端部を挿入して前記防刃服に係着させる、前記防刃服着用時の下部が開口し上部が閉じている逆さポケット部を備え、
前記連結部材は、1つの前記防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の前記防刃エレメント部とをそれぞれの前記防刃エレメント部材が内部に備える孔に前記連結部材を遊嵌して前記防刃エレメント部材同士を連結し、
前記防刃体は、隣接する前記防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する前記防刃エレメント部材同士間の隙間を備え、
前記支え部材の他方の先端部は、人体に装着している衣服固定物に前記支え部材を保持させる保持部を備える。
板状の小片からなる防刃エレメント部材が所定幅内の間隔を有して平面状に配置され、隣接する防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して防刃体が形成される。防刃体は裏生地および表生地に挟み込んで持着される。防刃体と裏生地および表生地とを備えた防刃服である。防刃服には防刃服を支える支え部材がさらに備えられる。裏生地には、支え部材の一方の先端部を挿入して防刃服に係着させる、防刃服着用時の下部が開口し上部が閉じている逆さポケット部が備えられる。1つの防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の防刃エレメント部材とを、それぞれの防刃エレメント部材が内部に備える孔に連結部材を遊嵌して防刃エレメント部材同士が連結部材により連結される。防刃体には、隣接する防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する防刃エレメント部材同士間の隙間が備えられる。支え部材の他方の先端部には、人体に装着している衣服固定物に支え部材を保持させる保持部が備えられる。このように、結部材を防刃エレメント部材の孔に遊嵌して結合されている各防刃エレメント部材が自由に折れ曲がり可能となる。これにより、着用時に使用者の動作に与える制約を低減し、着用性を向上させている。また、防刃エレメント部材に孔を備えているため、孔により防刃エレメント部材の開口率が上が軽量化、通気性の向上の他、孔に連結部材を遊嵌して、隣接する防刃エレメント部材を連結部材で結合することができる。また、防刃体を備えた防刃服の裏生地に、防刃服を支える支え部材の一方の先端部を挿入して防刃服に係着させる逆さポケット部を配置しているために、防刃服を支える支え部材の他方の先端の保持部を、人体に装着している衣服固定物に保持させることにより、防刃服の重量を人体に装着している衣服固定物にも負担を分散させることができる。本来なら、肩部のみで支えていた防刃服の重量を分散させることにより、着用者は動き易くなるなど着用性が向上する。
本発明のさらなる他の局面に係る防刃服
板状の小片からなる防刃エレメント部材を所定幅内の間隔を有して平面状に配置し、隣接する前記防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、前記平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して形成した防刃体と、
前記防刃体を挟み込んで持着する裏生地および表生地とを備えた防刃服であって、
前記防刃服を支える支え部材を、さらに備え、
前記裏生地は、前記支え部材の一方の先端部を挿入して前記防刃服に係着させる、前記防刃服着用時の下部が開口し上部が閉じている逆さポケット部を備え、
前記連結部材は、1つの前記防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の前記防刃エレメント部材とをそれぞれの前記防刃エレメント部材が内部に備える孔に前記連結部材を遊嵌して前記防刃エレメント部材同士を連結し、
前記連結部材が遊嵌する、前記防刃エレメント部材の内部に備える孔の内側の端部から該孔を囲む全方位中の3/4以上を占める方位の前記防刃エレメント部材の外形を構成する各辺までのそれぞれの各最短直線距離が、該孔の内側両端間の最長直線距離よりもいずれも小さく、
前記防刃体は、隣接する前記防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する前記防刃エレメント部材同士間の隙間を備え、
前記支え部材の他方の先端部は、人体に装着している衣服固定物に前記支え部材を保持させる保持部を備える。
板状の小片からなる防刃エレメント部材が所定幅内の間隔を有して平面状に配置され、隣接する防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して防刃体が形成される。防刃体は裏生地および表生地で挟み込んで持着される。防刃体と裏生地および表生地とを備えた防刃服である。防刃服を支える支え部材がさらに備えられる。裏生地には、支え部材の一方の先端部を挿入して防刃服に係着させる、防刃服着用時の下部が開口し上部が閉じている逆さポケット部が備えられる。
1つの防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の防刃エレメント部材とを、それぞれの防刃エレメント部材が内部に備える孔に連結部材を遊嵌して前記防刃エレメント部材同士が連結部材により連結される。連結部材が遊嵌する、防刃エレメント部材の内部に備える孔の内側の端部から該孔を囲む全方位中の3/4以上を占める方位の防刃エレメント部材の外形を構成する各辺までのそれぞれの各最短直線距離が、該孔の内側両端間の最長直線距離よりもいずれも小さい。防刃体には、隣接する防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する前記防刃エレメント部材同士間の隙間が備えられる。支え部材の他方の先端部には、人体に装着している衣服固定物に支え部材を保持させる保持部が備えられる。
このように、防刃体を構成しているので、連結部材を防刃エレメント部材の孔に遊嵌して結合されている各防刃エレメント部材が自由に折れ曲がり可能となる。これにより、着用時に防刃服が使用者の体にフィットし、使用者の動作に与える制約を低減し、着用性を向上させている。また、防刃エレメント部材に孔を備えているため、孔により防刃エレメント部材の開口率が上がり軽量化、通気性の向上の他、孔に連結部材を遊嵌して、隣接する防刃エレメント部材を連結部材で結合することができる。また、防刃体を備えた防刃服の裏生地に、防刃服を支える支え部材の一方の先端部を挿入して防刃服に係着させる逆さポケット部を配置しているために、防刃服を支える支え部材の他方の先端の保持部を、人体に装着している衣服固定物に保持させることにより、防刃服の重量を人体に装着している衣服固定物にも負担を分散させることができる。本来なら、肩部のみで支えていた防刃服の重量を分散させることにより、着用者は動き易くなるなど着用性が向上する。
前述の防刃服においては、前記支え部材の前記一方の先端部と前記他方の先端部との間は、弾力性を有する部材で構成されている。
このように、支え部材の一方の先端部と他方の先端部との間は、弾力性を有する部材で構成されている。
前述の防刃服においては、前記逆さポケット部は、前記裏生地において、前記防刃服着用時に上下方向となる高さが異なる位置に複数個設けられている。
このように、逆さポケット部は、裏生地において、防刃服着用時に上下方向となる高さが異なる位置に複数個設けられている。
前述の防刃服においては、前記連結部材は、前記防刃エレメント部材の外形が突部となる角部同士で、所定幅内の間隔を有して平面状に配置し、隣接する前記防刃エレメント部材同士をも連結する。
このように連結部材は、防刃エレメント部材の外形が突部となる角部同士で、所定幅内の間隔を有して平面状に配置し、隣接する前記防刃エレメント部材同士をも連結する。
前述の防刃服においては、首周りにも装着可能とした
このように、防刃服は首周りにも装着可能である
たとえ、軽微な切り傷を負うことがあっても、致命的な損傷を被ることを防止するように防刃性の機能を下げる代わりに、軽量化や使用者の動作に与える制約を低減する着用性に重きをおいた防刃服を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態における防刃服の服地は、図5などに示すように防刃体3とこの防刃体3をサンドイッチ状に挟み込む布地の表生地9、布地の裏生地10とで構成される。防刃体3は、図1などに示す防刃エレメント部材1を図2、図3に示すように連結部材2で平面状に連結することで構成される。
本実施の形態における防刃体3を構成する防刃エレメント部材1は平面形状寸法が小さく、防刃エレメント部材1が略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置され、隣接する防刃エレメント部材1は連結部材2で互いに移動可能に連結されて防刃体3を構成したことを最大の特徴とする。このため着用時に防刃服が使用者の体にフィットし、使用者の動作に与える制約を低減し、着用性を向上させている。また、防刃エレメント部材1が略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置されて連結されていること、防刃エレメント部材1の内部に孔を備え、開口率をあげていることにより、防刃服の軽量化を図ることができる。また、防刃服としたときの通気が十分となるため、暴漢と格闘するなど動作が激しい場合でも、汗(湿気)の発散が有利になる。
さらに、防刃エレメント部材1の内部に孔を備えることにより、防刃体3の端部に位置する防刃エレメント部材1の孔4、孔5と、表生地9、裏生地10の少なくとも1方の端部に、織糸で作成された頑丈なひも11を通し、解けることないように固定することができる。また、防刃エレメント部材1の内部に孔を備えること、防刃エレメント部材1が略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置されて連結されていることにより、表生地9、裏生地10間に防刃体3をサンドイッチ状に挟み込み、表生地9上から裏生地10までを縫製可となる可能性が大きくなる。
また、防刃エレメント部材1は平面形状寸法が小さいために、折れ曲がりの自由度が大きくなる分、使用者の動作に与える制約を低減し、着用性が向上した防刃服の服地を提供できる。
図1に防刃エレメント部材1を示している。図2に防刃エレメント部材1を連結部材2で平面状に連結して構成した防刃体3の部分を示している。最初に図1に示す防刃エレメント部材1について説明する。防刃エレメント部材1は厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)で、8mm×8mmの正方形からなる凸部13を8mm×8mmの正方形の四方の辺に密着して伸ばした十字形状であり、縦横の最大長はそれぞれ24mmである。中心に内径6mmの円孔5、各凸部13の中心に内径4mmの孔4をそれぞれ図示の如く備えている。各コーナーの角部は小さなR(曲率)となっているが、コーナーのRが角張っているものと無視して計算したときの孔の外形に対する面積比の開口率は約24.5%となる。
不規則に切断された絵や写真を、ばらばらな状態にしてからその断片を元の絵や写真に復元する玩具であるジグソーパズルのように、各防刃エレメント部材1を図2に示すように平面状に嵌め込む。ただし防刃エレメント部材1と隣接する防刃エレメント部材1とが略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置されて連結されている。このために着用時に防刃服が使用者の体にフィットし、使用者の動作に与える制約を低減し、着用性を向上させている。図3に示すように線径1mmのステンレス線からなる連結部材2が、各防刃エレメント部材1の各凸部13に設けられている内径4mmの孔4を貫き、遊びの余裕をもって各防刃エレメント部材1同士を係着することにより結合し、防刃体3を構成する。
連結部材2は余裕をもったゆるやかなR(曲率)で曲げられ、各防刃エレメント部材1を係着させている。そのため、連結部材2は各防刃エレメント部材1を互いに固着させることなく、図2に示すように略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置され、各防刃エレメント部材1を自由に折れ曲がり可能としている。各防刃エレメント部材1の1つの孔4は隣接する2つの防刃エレメント部材1のそれぞれの孔4とそれぞれの連結部材2により係着されている。さらに防刃エレメント部材1が対角位置に隣接している防刃エレメント部材1の孔4とも図2において点線で記載している連結部材2’を用いて係着させてもよい。
図3において、連結部材2の先端21、21は互いに隣接させているのみである。これでも簡単には防刃エレメント部材1が連結部材2から外れない強度となるからである。図3では、図面上で上下に隣接させているが、図面上で同一高さで左右に隣接させてもよい。なお、必要であれば、先端21、21同士を隣接させた上にさらに溶着したり、先端21、21同士の先端断面を突き合わさせて溶着したり、捻じ曲げて固定してもよい。
図3において、連結部材2の先端21、21を互いに隣接させている部分と防刃エレメント部材1を挟んで対極側にあるコーナー部22、22はさらにくぼんだ凹部形状となっている。これは隣接し、連結部材2で連結されている防刃エレメント部材1同士を曲がり易くするためである。なお、必要であれば、先端21、21を互いに隣接させている部分側のコーナー部も、コーナー部22、22同様にさらにくぼんだ凹部形状としてもよい。また、図3において、先端21、21を互いに隣接させている部分側のコーナー部は大きなR(曲率)となっているが、略直角に折り曲げてもよい。また、コーナー部22、22の凹部も略直角に折り曲げて凹部を構成してもよい。
本実施の形態の説明においては、各防刃エレメント部材1を図2に示すように、防刃エレメント部材1と隣接する防刃エレメント部材1とが略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置し連結するとして説明している。しかし、略2〜4mmの間隔は望ましい間隔ではあっても、絶対的に守ることが必要な隙間とはいえない。後述するように、最大が略10mm程度の隙間であれば、特に、本願発明の趣旨に沿うものである。このため隣接する防刃エレメント部材1を連結部材2を用いて連結するに際して、略2〜4mmの間隔を厳守するために、特別の治具を用いなくてもよい。作業により、隙間に多少のばらつきがあってもよい。
このように、隙間に多少のばらつきを認めるように、防刃エレメント部材1の十字形の外形形状についても、中心に配置された正方形の4辺の各辺に該正方形と同一の大きさの4個の正方形の一辺をそれぞれ一致させて上下左右に並べた形状となる十字形の外形であらねばならないなどと、厳しい条件をつけることはない。
たとえば、防刃エレメント部材1を、十字形状の中心となる8mm×8mmの正方形の四方の辺に密着して伸ばす凸部13を、8mm×8mmの正方形とする代わりに、
突出長さを7mm×正方形の四方の辺に密着させる横幅を8mmの長方形としてもよい。この場合は、隣接する防刃エレメント部材1を互いに連結して防刃体3とした場合、凸部13の突出長さが短くなった分、凸部13の突出方向の隙間が増えることになる。十字形状の防刃エレメント部材から構成される防刃体3は、人体にフィットし、人体の動きに合わせて隣接する防刃エレメント部材間で折れ曲がる際、凸部13の突出方向に折れ曲がることが多いとすると、凸部13の突出方向の隙間が増えることにより、よりスムーズに折れ曲がり得ることになる。
同様に、十字形状の中心となる8mm×8mmの正方形の四方の辺に密着して伸ばす凸部13を、突出長さを8mm×正方形の四方の辺に密着させる横幅を7mmの長方形としてもよい。また、十字形状の中心となる8mm×8mmの正方形の代わりに、7mm×8mmの長方形としてもよい。このように十字形状の中心に1つ、凸部13の4つの正方形の形状が多少変形された長方形であっても、隣接する防刃エレメント部材1を互いに連結して防刃体3としたときの隙間がばらつくが、特に、致命的な欠陥は生じない。
このように本実施の形態では、各防刃エレメント部材1が連結部材2で折れ曲がり可能に結合されてはいるが、連結部材2の長さが冗長ではないため、各防刃エレメント部材1が重なり合うことはない。たとえば、従来例の特許文献2の図3のように、1つのリングに複数のリングが係合され、係合された各リングが1つのリング内で自由に動くようなことはない。
また、図1に示す防刃エレメント部材1について補足説明する。防刃エレメント部材1の外形は8mm×8mmの正方形が、中心部に1つ、周辺の四方に各凸部として4つ、合わせて5つで構成されたような十字形である。このように、十字形の4隅の空間も各凸部と同じ正方形の面積となっているから、各防刃エレメント部材1を平面状に嵌め込んだときに、ジグソーパズルのように平面を埋めることが可能となっている。
また、図2に示す防刃体3を構成する防刃エレメント部材1は外形が十字形であり、凸部13が互いに平面を埋めるために、防刃エレメント部材1を平面状に配置したときの間隔である略2〜4mmの隙間により一直線状に隙間ができることがない。これにより、刃物が進入し難くなる。
また、十字形の防刃エレメント部材1の大きさは縦横の最大長がそれぞれ24mmと小さく、連結部材2は各防刃エレメント部材1を互いに固着させることなく、略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置され、各防刃エレメント部材1を自由に折れ曲がり可能としている。さらに、外形は正方形ではなく、十字形であるため、十字形の4隅の空間に隣接する各防刃エレメント部材1が自由に折れ曲がり可能となる。これらの条件の相乗効果により、着用時に使用者の動作に与える制約を低減し、着用性を向上させている。
この着用性を考慮すると、防刃エレメント部材1の外形の大きさは縦横の長さが最大でもそれぞれ60mm程度に抑えるべきである。好ましくは、30mm以下である。ただし、防刃エレメント部材1内部の孔の最大直線長さ(内法)は、10mm以下に抑えるべきである。したがって外形が大きくなると、防刃エレメント部材1内部の孔4、5はこの最大直線長さ(内法)以下になるように、小さく区切ることが必要となる。これは、図1の防刃エレメント部材1に限らず、後に図14〜図21で説明する変形例の防刃エレメント部材1A〜1Mなどにもあてはまることです。
なお、防刃エレメント部材を使用した1つの防刃服において、防刃エレメント部材はすべて同一の形状、サイズ、材質に統一する必要はない。背中部分など、動きが少なく着用性に比較的問題が生じない部分には、外形の大きさが大きいものを使用し、脇、袖、肩、首の部分など動きが大きく着用性が大事になる部分には、外形の大きさが小さいものを使用するなどである。材質についても、心臓に近い重要部分には、鋼板製の、それも板厚が十分なものを、致命的な傷を負う確率の低い部分、たとえば、足、腕の部分には、後で述べる樹脂製、強度が高い繊維製の防刃エレメント部材とするなどである。また、防刃エレメント部材の形状、サイズ、材質により、連結部材2の材質、線径、防刃エレメント部材結合時の連結部材2により生じる防刃エレメント部材の遊びの状況などを替えてもよい。
このように、防刃服の部分によって、防刃体を構成する防刃エレメント部材の形状、サイズ、材質の少なくとも1つを異ならせるために、たとえば、背中部分など、動きが少なく着用性に比較的問題が生じない部分には、外形の大きさが大きい防刃エレメント部材を使用し、脇、袖、肩、首の部分など動きが大きく着用性が大事になる部分には、外形の大きさが小さい防刃エレメント部材を使用するなどの使い分けが可能となる。さらに、外形形状の異なる複数の防刃エレメント部材をともに用いて防刃体を構成することによって、防刃エレメント部材を平面状に配置したときの間隔隙間により一直線状に隙間ができるのを防止できる場合もある。また、材質についても、心臓に近い重要部分には、鋼板製の、それも板厚が十分なものを、致命的な傷を負う確率の低い部分、たとえば、足、腕の部分には、樹脂製、強度が高い繊維製の防刃エレメント部材とするなどの使い分けが可能となる。
本実施の形態における防刃体3、この防刃体3を構成する防刃エレメント部材1は、刃物で襲われた場合にたとえ軽微な傷は負うことがあったとしても、致命的な傷を受けることは防止できる。
次に本実施の形態における防刃体3の軽量化について説明する。防刃エレメント部材1の軽量化のためには、外形と内部の孔との面積比の開口率をあげることが必要である。従来の防刃服においては、防刃の機能を重視するあまり、防刃エレメント部材1の内部に孔を設けていなかった。設けていたとしても、隣接する防刃エレメント部材1との結合のための小さな孔であった。
実際には、プレス加工で外形寸法に対して内部の孔を打ち抜くために、材質、板の厚さにより、プレス可能な残り幅(外形から孔打ち抜きのために残される板幅)が制限され、防刃エレメント部材1の内部に開ける孔の最大内径は制限される。また、防刃エレメント部材1の材質とも関連するが、防刃性能のための強度からも、自ずと制限がかかる。
本実施の形態においては、防刃エレメント部材1の材質として、厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)としている。しかし、防刃性能のための強度、プレス加工上の制約などをも考慮しつつ、ステンレス鋼板の厚さを0.5mmに下げたり、あるいは、思い切って、アラミド繊維、パラアラミド繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などにするなどの置き換えにより軽量化を推進することもできる。また、アラミド繊維不織布にロジンを含浸した材質や、高強度高弾性率繊維に熱可塑性エラストマー樹脂を含浸固着した材質、全芳香ポリアミド繊維織物に高硬度セラミックス粒子を固着した材質にするなどもできる。その際、防刃性能のための強度、耐用年数などから、防刃エレメント部材1の内部に開ける孔の最大内径は小さくする。場合によっては、連結部材2が貫き遊びをもって各防刃エレメント部材1同士を係着するのに必要最小限の孔とする必要もでてくる。
次に本実施の形態における防刃体3を用いた防刃服の例として、前側上半身を防護するパーツとなる前身服部6について図4、図5を参照しながら説明する。図4は、前身服部6を説明するための平面図であり、前身服部6の裏生地10側から見た布地の展開図面である。前身服部6と後身服部7からなる防刃服の重量をすべて肩に負担させることなく、腰部にも負担させるために、防刃服を上部に持ち上げる支え部材31を本実施の形態における防刃服は備えている。この支え部材31の先端部(服地係着部32)を裏生地10に係着させるための逆さポケット部15が裏生地10に縫製されている。これら支え部材31、逆さポケット部15については、図10〜図13とともに、後に説明する。
図5は、図4の前身服部6の内部を説明するために布地の表生地9、防刃体3の一部をカットして示した図面であり、前身服部6の表生地9から見た布地の展開図面である。前身服部6は防刃体3とこの防刃体3をサンドイッチ状に挟み込む布地の表生地9、布地の裏生地10とで構成される。防刃体3を構成する防刃エレメント部材1の孔4、孔5に縫製用の糸を通して防刃体3を裏生地10に適宜箇所縫製することで、防刃体3を裏生地10に保持させた状態に取り付ける。
また、防刃エレメント部材1の孔4、孔5に縫製用の糸を通して縫製する替わりに、隣接する防刃エレメント部材1間を結合する連結部材2に縫製用の糸を係合させ防刃体3を裏生地10に縫製して防刃体3を裏生地10に保持させた状態に取り付けることもできる。
ただし、前身服部6の端部である、首部63、肩部64、側面部65、上腕との結合部66、下端部67は、防刃体3の端部に位置する防刃エレメント部材1の孔4、孔5と、防刃体3の端部に位置する裏生地10端部とに織糸で作成された頑丈なひもを通し、防刃体3の端部を裏生地10の端部に解けることないように固定する。
前身服部6の表生地9の端部部分は、この表生地9の端部部分の相対する位置にある裏生地10の端部部分と縫製される。表生地9の端部以外の部分は防刃体3が固定された裏生地10に相対する部分の表生地9が、防刃体3を構成する防刃エレメント部材1の孔4、孔5に縫製用の糸を通して適宜箇所縫製する。この場合は、縫製用の針が防刃エレメント部材1にあたることが想定されるため、手縫いする必要もある。
なお、機械にて縫製する場合は、防刃エレメント部材1の孔4、孔5の位置を探知し、縫製機械の針が防刃エレメント部材1の孔4、孔5の位置になるように、表生地9、防刃エレメント部材1が固定された裏生地10を移動させる装置を縫製機械に付加することが考えられる。たとえば、表生地9に、防刃体3が固定された裏生地10を重ねて機械がつかみ、上から、2〜3mm径の先端が丸くなった棒状のセンサーを複数本当てると、孔4、孔5の位置など防刃エレメント部材1に当たらない位置のみ、棒状のセンサーがより深く挿入できることで、孔4、孔5などの位置を把握し、縫製機械の針が通過する位置に孔4、孔5などの位置を移動させるなどである。いずれにしても、従来と異なり、防刃エレメント部材1には孔4、孔5などの開口が設けられているため、縫製が可能となる。
上記の実施の形態では、防刃体3を裏生地10に縫製して固着し、防刃体3の端部は防刃エレメント部材1の孔4、孔5にひも11を通し、裏生地10の端部に固定し、その防刃体3を固着した裏生地10の端部に表生地9の端部を縫製し、表生地9の端部以外の部分も防刃体3を固着した裏生地10に適宜箇所縫製していた。この変形例として、表生地9と裏生地10間に防刃体3をサンドイッチ状に挟み込み、端部は防刃エレメント部材1の孔4、孔5にひも11を通し、表生地9と裏生地10の端部を固定し、表生地9と裏生地10間に防刃体3をサンドイッチ状に挟み込んだ状態で表生地9と裏生地10間を縫製することにしてもよい。このことは後に述べる後身服部7、上腕服部8についても同様である。
このように、防刃エレメント部材の内部に存在する孔、または、防刃エレメント部材間を結合する連結部材に縫製用の糸を係合させ防刃体を表生地と裏生地との少なくとも一方の服地に縫製して防刃体を服地に持着するため、防刃体から服地が浮くことがない。また、防刃体の端部近傍に位置する防刃エレメント部材の孔に紐を通し、表生地と裏生地との少なくとも一方の服地に防刃体の端部近傍を固定するため、服地に防刃体の端部近傍をしっかりと固定できる。
前身服部6の端部のうち、肩部64、側面部65は、防刃服の後側上半身部分を構成する後身服部7の相対する部分と連結して防刃服を着脱可能とするための着脱手段としてのファスナーを縫製により備えている。さらに、前身服部6の端部のうち、上腕との結合部66は、防刃服の上腕部から肩部までの部分を構成する上腕服部8の相対する部分と連結して上腕服部8を着脱可能とするための着脱手段(服地連結部材)としてのファスナーを縫製により備えている。
以上説明した前身服部6と同様の構成により、後身服部7(図示せず)も製作可能であるため、特に後身服部7についての説明は割愛する。なお、前身服部6の肩部64、側面部65と相対する後身服部7の肩部、側面部の部分には、前身服部6の肩部64、側面部65に備えられたファスナーと噛合うファスナーが、防刃服を着脱可能とするための着脱手段(服地連結部材)として縫製により備えられている。さらに、後身服部7の上腕との結合部には、防刃服の上腕部を構成する上腕服部8の相対する部分と連結して上腕服部8を着脱可能とするための着脱手段(服地連結部材)としてのファスナーを縫製により備えている。
次に本実施の形態における防刃服の上腕部の部分を防護するパーツとなる上腕服部8について図6、図7を参照しながら説明する。図7は、図6に示す上腕服部8の内部を説明するために布地の表生地9、防刃体3の一部をカットして示した図面である。上腕服部8も前身服部6と同様に防刃体3とこの防刃体3をサンドイッチ状に挟み込む布地の表生地9、布地の裏生地10とで構成される。防刃体3を構成する防刃エレメント部材1の孔4、孔5に縫製用の糸を介して防刃体3を裏生地10に適宜箇所縫製して防刃体3を裏生地10に固着すること、防刃体3の端部に位置する防刃エレメント部材1の孔4、孔5と、上腕服部8の端部に位置する裏生地10の端部に、織糸で作成された頑丈なひも11を通し、解けることないように固定すること、上腕服部8の表生地9の端部部分は、この表生地9の端部部分の相対する位置にある裏生地10の端部部分と縫製されること、表生地9の端部以外の部分を、防刃体3が固定された裏生地10の相対する部分に、防刃体3を構成する防刃エレメント部材1の孔4、孔5に縫製用の糸を通して適宜箇所縫製することなど、前身服部6の場合と同様である。
前身服部6の場合は、後身服部7とセットになって、上半身部分の服部分を構成したが、上腕服部8の場合は、端部85、86にそれぞれ備えられたファスナーを噛合せ連結し、筒状にすることで上腕部を蔽う上腕服部8となる。前身服部6の上腕との結合部66、後身服部7の上腕との結合部に備えられたファスナーとそれぞれ連結する上腕服部8の肩口部83、84に備えられたファスナーにより、前身服部6と後身服部7とのセットと上腕服部8を着脱可能とすることができる。
ファスナーを縫製した部分が布地ばかりとなり、防刃エレメント部材1で構成された防刃体3が欠如し、防刃の機能低下が心配される場合は、金属製のファスナーを使用することが考えられる。また、通常の衣服に用いられている樹脂製ファスナーを用いる場合は、ファスナーで連結した部分において、防刃体3が必ず重なるように配慮することも可能である。図8、図9は防刃体3が重なるようにファスナー連結部分を配置した場合を説明するための図面であり、図8は2つに分割された防刃服を連結する例として取り上げた前身服部6と後身服部7とのファスナー連結部、図9は連結して筒状にする防刃服の例として取り上げた上腕服部8のファスナー連結部の要部断面を模式的に示している。
図8において、前身服部6の端部(側面部65)は先に説明したように、防刃体3の端部が織糸で作成された頑丈なひも11で裏生地10の端部に固定され、その裏生地10に表生地9が縫製されている。同様に、前身服部6の端部(側面部65)に相対する後身服部7の端部(側面部)も、防刃体3の端部が織糸で作成された頑丈なひも11で裏生地10の端部に固定され、その裏生地10に表生地9が縫製されている。後身服部7の端部(側面部)先端近傍と、前身服部7の端部(側面部)先端より幾分内側に離れた位置の裏生地10とにこれらを連結するためのファスナー12が備えられている。
図9においても、上腕服部8の端部は、防刃体3の端部がひも11で固定された裏生地10の端部に表生地9が縫製されている。上腕服部8の端部85、86のうちの一方の端部85の先端近傍と、他方の端部86先端より幾分内側に離れた位置の裏生地10とにこれらを連結し、筒状の上腕服部8とするためのファスナー12が備えられている。このようにして防刃体3が必ず重なるように配慮することも可能である。
以上は前身服部6と後身服部7がともに防刃体3を備えた防刃服地で構成されている場合について説明した。しかし用途によっては、前身服部6は防刃服地とすべきであるが、後身服部7は通常の服地でもよい場合も考えられる。たとえば、図8において後身服部7が単なる服地で構成される場合である。この場合の後身服部7は、ちょうどエプロンを着用時に背部で固定するように、単にひも(服地連結部材)などで前身服部6を着脱できるようにしてもよい。また、逆に後身服部7は防刃服地とすべきであるが、前身服部6は通常の服地でもよい場合も考えられる。
さらに、両腕の上腕服部8のみ防刃服地とすべきであるが、前身服部6と後身服部7はともに通常の服地でもよい場合も考えられる。場合によっては、前身服部6や後身服部7の心臓位置部分のみに防刃服地を配した防刃服とする場合、首の周囲部分から、肩の上部、背後の部分のみ防刃服とする場合など、用途、目的に応じた防刃服として、より軽量化、より着脱性向上をめざしてもよい。このような場合に必要個所の体形に合わせて用意された防刃服を通常の服地からなる衣服に着脱自由とするためのファスナーやボタン、紐などの服地連結部材を備えていればよい。
このように、防刃体を備えた防刃服に服地連結部材を備え、該服地連結部材と係合する服地連結部材を備えた他の衣服に着脱可能とし、または、服地連結部材により直接人体に着脱可能とする。このため、必要部分にのみ防刃体を備えた防刃服とすることができる。必要な部分のみ防刃対応をした防刃服とすることで、軽量化、動作制約性低減などの着用性の向上を図り、長時間の着用を可能とする防刃服を提供できる。
次に防刃服を上部に持ち上げる支え部材31、および支え部材31の先端部(服地係着部32)を裏生地10に係着させるための裏生地10に縫製されている、逆さポケット部15について、図4、図10〜図13を用いて説明する。
通常であれば、前身服部6と後身服部7からなる防刃服の重量はすべて肩にかかることになる。この防刃服の重量は軽量化を図ったとはいえ、軽視することはできない。通常、男性はズボンを着用するため、腰にベルトを装着している。また、女性でも、ベルトを装着する場合がある。本願発明の防刃服の主対象となるのは、夜間の店番などを考えると、やはり男性であると思われる。本願の実施の形態ではここに着目して、防刃服の重量を腰に装着しているベルトにも支えさせることにしたものである。いずれにしても防刃服の重量は人体で負担するわけであるが、一部を人体の腰部にも分けて負担させ、肩部への負担を軽減することで、着用時の動きが楽になるという効果が生じる。
図4に示すように、防刃服を上部に持ち上げる支え部材31の先端部(服地係着部32)を前身服部6の裏生地10に係着させるための逆さポケット部15が裏生地10に縫製されている。支え部材31の平面図を図10に、周囲との関係をも記載した支え部材31の側面図を図11に示している。支え部材31の先端部となり支え部材31を防刃服に係着する、服地係着部32は、合成樹脂製であるが、金属であっても構わない。支え部材31の他方の先端部となり、人体の腰部に装着しているベルトに支え部材31を保持させる保持部34は、金属板で構成されているが、合成樹脂製であっても構わない。
服地係着部32と保持部34とをつなぎ、防刃服の重量を支える支柱部33は弾力性を有する金属製の板バネであるが、金属製の線材からなるバネ、たとえば、コイルバネであってもよい。また、弾力性は必須ではないため、単に合成樹脂製の板でもよい。弾力性があった場合は魚を吊り上げた際の釣り竿のように、防刃服の重量をしなやかに支えることができる。その意味から、コイルバネで構成する方がよいかもしれない。ここでは、板バネとして説明する。
支柱部33の先端は服地係着部32とリベット35でかしめられて固定されている。服地係着部32が合成樹脂の成形品であれば、固定の方法はいろいろな方法が想定されます。支柱部33の他方の先端は保持部34のU字状の溝に挟まれかしめて固定されている。この固定方法も圧入や接着など他の固定方法でもよい。支柱部33の先端を固定した保持部34のU字状の溝とは逆方向に形成されたもう一つのU字状の溝にズボン36に装着されているベルト35を挿入して支え部材31を人体の腰部に装着する。
布地で構成されている逆さポケット部15を前身服部6の裏生地10側から見た平面図を図12に、周囲との関係をも記載した逆さポケット部15の側面図を図13に示している。図12において、逆さポケット部15の×××で示した部分は、前身服部6の裏生地10に縫製されている。逆さポケット部15は切断された布地部、以下、開口部と称する26、27、28を備え、下辺部19は裏生地10に縫製されていない。上辺部16、左辺部18、右辺部17および各開口部26、27、28により切り離された下部が前身服部6の裏生地10に縫製されている。したがって各開口部26、27、28および下辺部19から逆さポケット部15の布地と前身服部6の裏生地10との間にはそれぞれ、下部が開口となり上部が閉鎖された逆さポケット41、42、43、44が構成されている。
図4に示されているように、逆さポケット部15の布地の周辺部と前身服部6の防刃体3を構成する防刃エレメント部材1の孔4、5、隣接する防刃エレメント部材1間の隙間を糸25が貫通する縫製により、逆さポケット部15の布地の周辺部は13箇所で前身服部6の防刃体3を構成する防刃エレメント部材1にとりつけられている。この糸25による縫製は防刃体3を備えた前身服部6の重量を支え部材31が支えるのに耐え得る強度を備えている。なお、この糸25による縫製は、逆さポケット部15の布地、裏生地10、防刃体3の他に表生地9をも共に縫製することにしてもよい。
上記のように、逆さポケット41、42、43、44が構成されているために、防刃服を着用時に着用者の腰部に装着されているズボンのベルトの高さに合わせた位置に応じて、支え部材31を逆さポケット部15に係着できることになる。なお、支柱部33の長さを変えた複数種類の支え部材31を用意し、高さを調節することにしてもよい。また、支え部材31は、服地係着部32、支柱部33、保持部34を別部品で構成し組み立てるものではなく、最初から一体化した一つものであってもよい。
逆さポケット部15は図4に示すように、前身服部6には2箇所に備えられている。図4において、破線で描いた支え部材31を逆さポケット部15に係着させた場合を記載している。同様に防刃体3を備えた後身服部7にも逆さポケット部15は2箇所に備えられている。防刃服(上着)に逆さポケット部15を備える数は4ヶ所に限定することなく、その数は増減できる。この方式はズボンを肩から吊り下げるズボン吊りとは逆に、防刃服(上着)をズボン(を固定するベルト)で持ち上げる面白い発想である。さらに、上腕部にバンドを巻くなどすれば、上腕服部8にも装着可能である。
次に防刃エレメント部材1の変形例について記載する。図14は図1に示す十字形状の防刃エレメント部材1の孔4を4mm×4mmの正方形の孔4Aに替えて開口率を大きくした防刃エレメント部材1Aである。防刃エレメント部材1Aは厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)で、幅8mmの凸部を四方に伸ばした十字形であり、縦横の最大長はそれぞれ24mmである。中心に内径6mmの円孔5を備えている。各コーナーの角部は小さなR(曲率)となっているが、このRが角張っているものと無視して計算したときの孔の外形に対する面積比の開口率は約28.8%となる。
図15は図1に示す十字形状の防刃エレメント部材1の孔4、5の替わりに、各凸部に4mm×6mmの長方形にさらに十字形状の中心に向かって半径2mmの半円を加えた弾丸状の孔4Bをそれぞれ図示の如く備えた防刃エレメント部材1Bである。防刃エレメント部材1Bは厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)で、幅8mmの凸部を四方に伸ばした十字形であり、縦横の最大長はそれぞれ24mmである。各コーナーの角部は小さなR(曲率)となっているが、このRが角張っているものと無視して計算したときの孔の外形に対する面積比の開口率は約37.9%となる。
図16に示す12mm×12mmの正方形状で、厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)の防刃エレメント部材1Dは、外径8mmの孔による開口率は約34.9%となる。なお、外形の正方形状を円形にしてもよい。たとえば、外径12mm、内径6mmのリング状で、厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)の防刃エレメント部材1Cは、孔(内径6mmの円)の外形(外径12mmの円)に対する面積比の開口率は約25.0%となる。しかしジグソーパズルのように、各防刃エレメント部材1Cを平面状に嵌め込んだとき、12mm×12mmの正方形と外径12mmの円との面積の差分も開口とみなされるため、外径6mmの孔の開口と合わせ、実質的な開口率は約41.1%となる。
また、図17に示す12mm×12mmの正方形状で、厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)の防刃エレメント部材1Eは、6mm×6mmの正方形の孔による開口率は約25%となる。
図14〜図17に示す防刃エレメント部材1A〜1Eを使用した場合も、各防刃エレメント部材をジグソーパズルのように平面状に嵌め込んだとき、上下左右に隣接する防刃エレメント部材間とで、各防刃エレメント部材1の孔同士を、図3に示すように線径1mmのステンレス線からなる連結部材2で係着することにより、防刃体3が構成される。なお、連結部材2は余裕をもったゆるやかなR(曲率)で曲げられ、各防刃エレメント部材1を係着させている。そのため、連結部材2は隣接する各防刃エレメント部材1を互いに固着させることなく、略2〜4mmの間隔を有して平面状に配置され、各防刃エレメント部材1を自由に折れ曲がり可能に結合している。さらに防刃エレメント部材の対角位置に隣接している防刃エレメント部材の孔とも連結部材2を用いて係着させてもよい。この模様は防刃エレメント部材1の場合について説明した、図2において点線で記載している対角位置に隣接している防刃エレメント部材の孔とも連結部材2’を用いて係着させている例と同様である。
なお、図1、図14、図15で説明した十字形状の防刃エレメント部材1、1A、1Bや、図16、図17で説明した正方形の形状の防刃エレメント部材1D、1Eの他にも、防刃エレメント部材の形状が、三角形、長方形、菱形を含む平行四辺形、台形からなっていても、ジグソーパズルのように隙間無く平面を埋めることが可能となる。このような形状の隣接する各防刃エレメント部材を連結部材2で遊嵌して結合した防刃体3の部分を図18〜図21に示している。
図18は、中心に内径10mmの孔を備え、1辺の長さが30mmからなる正三角形の防刃エレメント部材1Hで構成された防刃体3の部分を示している。この場合の外形に対する孔の開口率は約20.1%となる。図18に示す正三角形の防刃エレメント部材1Hの配置では、防刃エレメント部材1Hを平面状に配置したときの間隔である略2〜4mmの隙間により一直線状に隙間ができている。このため隣接する各防刃エレメント部材1H間を結合させるための連結部材2を多くすることにより、さらに連結部材2の材質、強度を確実なものとすることによって、一直線状の隙間からの刃物の進入を防止している。
なお、防刃エレメント部材が正三角形ではなく、直角三角形であれば直角をはさむ2辺の長さを調整することにより、防刃エレメント部材を平面状に配置したときの間隔である略2〜4mmの隙間により一直線状に隙間ができないようにできる。これは直角三角形を2つ合わせると長方形になり、図19に示すように一直線状に隙間ができないようにできることから理解できる。
また、たとえば、4つの正三角形防刃エレメント部材1Hを交互に上下逆に配置すると、平行四辺形の外形となる。辺の長さを調整することにより、後に説明する図20のように一直線状に隙間ができないようにできる。また、正三角形の外形からなる防刃エレメント部材1Hと他に適当な外形の防刃エレメント部材とを組み合わせて防刃体3を形成するのであれば、一直線状に隙間ができないようにすることができる。
図19は、長方形の防刃エレメント部材1Jで構成された防刃体3の部分を示している。防刃エレメント部材1Jは、内部に内径8mmの孔を2つ備え、長辺の長さが25mm、短辺の長さが14mmからなる長方形の外形で構成され、この場合の外形に対する孔の開口率は約28.7%となる。
図19に示すように、長方形の外形寸法を調整し、防刃エレメント部材の配置を工夫すると、防刃エレメント部材を平面状に配置したときの間隔である略2〜4mmの隙間により一直線状に隙間ができないようにできる。一直線状に隙間ができないように調整した長方形の外形とは、たとえば、正方形を2つ並べて形成された長方形である。図19においても多少の長さの一直線状隙間はできることから、刃物の進入を確実に防止するためには、連結部材2の数を多くすること、連結部材2の材質、強度を確実なものとすることなどへの対応に配慮が必要である。図19において、上下に長辺が平行して隣接する長方形の防刃エレメント部材1J間で2つの孔をそれぞれ連結部材2で連結している例などは、上記配慮の上で一方の連結部材2を省略してもよい。
図20は、平行四辺形の防刃エレメント部材1Kで構成された防刃体3の部分を示している。防刃エレメント部材1Kは、内部に内径8mmの孔を2つ備え、長辺の長さが25mm、高さが14mmからなる(長方形を約20°傾斜させた)平行四辺形の外形で構成され、この場合の外形に対する孔の開口率は約28.7%となる。
図20に示すように、平行四辺形の外形寸法を調整し、防刃エレメント部材の配置を工夫すると、防刃エレメント部材を平面状に配置したときの間隔である略2〜4mmの隙間により一直線状に隙間ができないようにできる。図20においても多少の長さの一直線状隙間はできることから、刃物の進入を確実に防止するためには、連結部材2の数を多くすること、連結部材2の材質、強度を確実なものとすることなどへの対応に配慮が必要である。図20において、上下に長辺が平行して隣接する平行四辺形の防刃エレメント部材1K間で2つの孔をそれぞれ連結部材2で連結している例などは、上記配慮の上で一方の連結部材2を省略してもよい。
図21は、等脚台形の防刃エレメント部材1Mで構成された防刃体3の部分を示している。防刃エレメント部材1Mは、内部に内径8mmの孔を2つ備え、底辺の長さ30mm、底辺と平行な頂辺の長さ20mm、高さが14mmからなり、左右の辺の長さが等しい等脚台形の防刃エレメント部材1Mで構成され、この場合の外形に対する孔の開口率は約28.7%となる。
図21に示す等脚台形の防刃エレメント部材1Mの配置では、防刃エレメント部材1Mを平面状に配置したときの間隔である略2〜4mmの隙間により一直線状に隙間ができている。このため隣接する各防刃エレメント部材1M間を結合させるための連結部材2を多くすることにより、さらに連結部材2の材質、強度を確実なものとすることによって、一直線状の隙間からの刃物の進入を防止している。なお、図21において、上下に隣接する等脚台形の防刃エレメント部材1M間で2つの孔をそれぞれ連結部材2で連結している例などは、上記配慮の上で一方の連結部材2を省略してもよい。
また、たとえば、2つの等脚台形の防刃エレメント部材1Hを交互に上下逆に配置すると、平行四辺形の外形となる。辺の長さを調整することにより、図20のように一直線状に隙間ができないようにできる。これは台形の防刃エレメント部材でも同じことである。なお、等脚台形の外形からなる防刃エレメント部材1Mと他に適当な外形の防刃エレメント部材とを組み合わせて防刃体3を形成するのであれば、一直線状に隙間ができないようにすることができる。
なお、たとえば、図18、図21においては、防刃エレメント部材1H、1Mを平面状に配置したときの間隔である略2〜4mmの隙間により一直線状に隙間ができている。これは同じ防刃エレメント部材1H、1Mを用いて防刃体3を構成しようとしたためでもある。たとえば、台形の防刃エレメント部材1Mとともに、三角形の防刃エレメント部材を組み合わせるなどとすれば、もっと容易に隙間を一直線状にせずに済む。
なお、図18〜図21においては、内部に設けた孔は円形であるが、外形から外形の辺に沿って内部に必要最小限の幅を残した孔としてもよい。この必要最小限の幅は防刃エレメント部材としての強度の他に、防刃エレメント部材の使用材料によりプレス打ち抜き加工の条件で定まってくる。ただし、孔の最大内径の直線長さが10mmを超えるときは、孔を2つに分けるなどして孔の最大内径の直線長さを10mm以下にすべきである。刃物が進入するおそれが生じるからである。
上記の説明において、防刃エレメント部材1を平面状に配置したときの間隔である隙間を略2〜4mmとして説明している。しかしながら、最大が略10mm程度の隙間であれば、上記に説明した、孔の最大内径の直線長さと同様に、特に、本願発明の趣旨に沿うものである。したがって望ましくは略2〜4mmであるが、最大が略10mm程度の隙間であればよい。
本願発明の最大の特徴は、たとえ、軽微な切り傷を負うことがあっても、致命的な損傷を被ることを防止したものであり、このように防刃性の機能を下げる代わりに、軽量化や使用者の動作に与える制約を低減する着用性に重きをおく防刃服としたものである。この従来にない着想に基づき、防刃エレメント部材1を平面状に配置したときの間隔である隙間に自由度を与えることができ、また、防刃エレメント部材に孔を設け開口率を大きくし、軽量化を図ることを可能としたものである。
図1、図14〜図21で説明した防刃エレメント部材1およびその変形例である1A〜1Mにおける孔の外形との面積比の平面的な開口率をまとめた表を図22に示している。この表からみても、防刃エレメント部材は外形に対する面積比の開口率が20%以上となる孔を内部に備えることが望ましい。
上記の説明において、各防刃エレメント部材として、厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)としているが、これは例示であって、材質、鋼板の厚さなど適宜選択することができる。たとえば材質として、ステンレスでも、SUS430でもよいし、アルミニウム合金・マグネシウム合金・チタン合金などの軽合金、燐青銅、ジュラルミンなどのアルミニウム軽合金なども使用できる。また、板の厚さも0.5〜2mmなど選択できるが、0.5〜1mmが好ましい。これは、重量、強度、加工性から定まるものである。なお、プレス加工で外形や孔を打ち抜くために、材質、板の厚さにより、プレス可能な残り幅(外形から孔打ち抜きのために残される板幅)が制限され、寸法が多少変更されることもある。
また、金属板に拘ることなく、ポリカーボネート板、ナイロン6/ガラス混合板、ポリアミドイミド板などのプラスチック板の使用も可能である。プラスチック板の場合は金属板に比べ、軽量であること、強度が落ちることを勘案して、板の厚さ、幅を大きめにすることが必要となる。プラスチック板の場合は金属板に比べ、成形が容易となる利点もある。たとえば、ポリカーボネート樹脂で射出成形して防刃エレメント部材を製作するなどである。
連結部材2としても、線径1mmのステンレス線として説明したが、上記の防刃エレメント部材1の材質と同様に各種の材料を使用できる。線径も0.8〜1.4mm程度が好ましい。これも重量、強度、加工性から定まるものである。
防刃体3の端部を裏生地10の端部に固定するひも11を織糸で作成された頑丈なひもと説明したが、防刃体3の端部が裏生地10の端部に固定されたときの強度条件が満たされれば、やや太めの糸でもよい。このひも、糸の材質もナイロンなど適宜選択可能である。
また、防刃体3の端部に位置する防刃エレメント部材1の孔4、孔5と、防刃体3の端部に位置する裏生地10端部とに織糸で作成された頑丈なひもを通し、防刃体3の端部を裏生地10の端部に解けることないように固定すると説明している。しかし、防刃体3の端部に位置する防刃エレメント部材1を裏生地10の端部に固定するとともに、防刃体3の端部以外の箇所に位置する防刃エレメント部材1をも裏生地10の相当する箇所に頑丈なひもを通し固定してもよいし、防刃体3の端部に位置する防刃エレメント部材1の裏生地10への固定をやめて防刃体3の端部以外の箇所に位置する防刃エレメント部材1を裏生地10の相当する箇所に固定してもよい。さらに、防刃体3の防刃エレメント部材1を裏生地10に頑丈なひもを通し固定する替わりに、表生地9に頑丈なひもを通し固定してもよいし、表生地9、裏生地10の両方に頑丈なひもを通し固定することにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
防刃エレメント部材1の平面図である。 図1に示すリング状の防刃エレメント部材1を用いて構成した防刃体3の部分を示す平面図である。 連結部材2の説明図である。 前身服部6を説明するための平面図である。 図4の前身服部6の内部を説明するために布地の表生地9、防刃体3の一部をカットして示した説明図である。 上腕服部8を説明するための平面図である。 図6の上腕服部8の内部を説明するために布地の表生地9、防刃体3の一部をカットして示した説明図である。 前身服部6と後身服部7とを連結するファスナー12の位置を模式的に説明する断面図である。 上腕服部8を筒状に連結するファスナー12の位置を模式的に説明する断面図である。 防刃服を上部に持ち上げる支え部材31の平面図である。 図10に示す支え部材31の側面図であり、周囲との関係をも記載している。 支え部材31を防刃服に係着させるための逆さポケット部15を防刃服の裏生地10側から見た平面図である。 図12に示す逆さポケット部15の側面図であり、周囲との関係をも記載している。 図1に示す十字形状の防刃エレメント部材1の変形例である防刃エレメント部材1Aの平面図である。 図1に示す十字形状の防刃エレメント部材1の変形例である防刃エレメント部材1Bの平面図である。 防刃エレメント部材1の変形例である正方形状の防刃エレメント部材1Dの平面図である。 図16に示す正方形状の防刃エレメント部材1Dの変形例である防刃エレメント部材1Eの平面図である。 正三角形の形状の防刃エレメント部材1Hで構成された防刃体3の部分を示す平面図である。 長方形の防刃エレメント部材1Jで構成された防刃体3の部分を示す平面図である。 平行四辺形の防刃エレメント部材1Kで構成された防刃体3の部分を示す平面図である。 台形の防刃エレメント部材1Mで構成された防刃体3の部分を示す平面図である。 防刃エレメント部材1およびその変形例である1A〜1Mにおける孔の外形との面積比の平面的な開口率をまとめた表である。
符号の説明
1 防刃エレメント部材、2 連結部材、3 防刃体、4 孔、5 孔、6 前身服部、7 後身服部、8 上腕服部、9 表生地、10 裏生地、11 ひも、12 ファスナー、13 十字形の凸部、15 逆さポケット部、31 支え部材。

Claims (7)

  1. 板状の小片からなる防刃エレメント部材所定幅内の間隔を有して平面状に配置、隣接する前記防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、前記平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して形成した防刃体と、
    記防刃体を挟み込んで持着する裏生地および表生地とを備え、
    前記連結部材は、1つの前記防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の前記防刃エレメント部材とを、それぞれの前記防刃エレメント部材が内部に備える孔に前記連結部材を遊嵌して前記防刃エレメント部材同士を連結し、
    前記連結部材が遊嵌する、前記防刃エレメント部材の内部に備える孔の内側の端部から該孔を囲む全方位中の3/4以上を占める方位の前記防刃エレメント部材の外形を構成する各辺までのそれぞれの各最短直線距離が、該孔の内側両端間の最長直線距離よりもいずれも小さく、
    前記防刃体は、隣接する前記防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する前記防刃エレメント部材同士間の隙間を備える、防刃服。
  2. 板状の小片からなる防刃エレメント部材所定幅内の間隔を有して平面状に配置、隣接する前記防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、前記平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して形成した防刃体と、
    記防刃体を挟み込んで持着する裏生地および表生地とを備えた防刃服であって、
    前記防刃服を支える支え部材を、さらに備え、
    前記裏生地は、前記支え部材の一方の先端部を挿入して前記防刃服に係着させる、前記防刃服着用時の下部が開口し上部が閉じている逆さポケット部を備え、
    前記連結部材は、1つの前記防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の前記防刃エレメント部材とを、それぞれの前記防刃エレメント部材が内部に備える孔に前記連結部材を遊嵌して前記防刃エレメント部材同士を連結し、
    前記防刃体は、隣接する前記防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する前記防刃エレメント部材同士間の隙間を備え、
    前記支え部材の他方の先端部は、人体に装着している衣服固定物に前記支え部材を保持させる保持部を備える、防刃服。
  3. 板状の小片からなる防刃エレメント部材所定幅内の間隔を有して平面状に配置、隣接する前記防刃エレメント部材同士を連結部材で互いに、前記平面の垂直方向に移動可能で、且つ、屈曲可能に連結して形成した防刃体と、
    記防刃体を挟み込んで持着する裏生地および表生地とを備えた防刃服であって、
    前記防刃服を支える支え部材を、さらに備え、
    前記裏生地は、前記支え部材の一方の先端部を挿入して前記防刃服に係着させる、前記防刃服着用時の下部が開口し上部が閉じている逆さポケット部を備え、
    前記連結部材は、1つの前記防刃エレメント部材と、該防刃エレメント部材に隣接する他の前記防刃エレメント部材とを、それぞれの前記防刃エレメント部材が内部に備える孔に前記連結部材を遊嵌して前記防刃エレメント部材同士を連結し、
    前記連結部材が遊嵌する、前記防刃エレメント部材の内部に備える孔の内側の端部から該孔を囲む全方位中の3/4以上を占める方位の前記防刃エレメント部材の外形を構成する各辺までのそれぞれの各最短直線距離が、該孔の内側両端間の最長直線距離よりもいずれも小さく、
    前記防刃体は、隣接する前記防刃エレメント部材同士が重なり合うことなく、且つ、他の防刃機能をもつ部材で遮蔽されることの無い、隣接する前記防刃エレメント部材同士間の隙間を備え、
    前記支え部材の他方の先端部は、人体に装着している衣服固定物に前記支え部材を保持させる保持部を備える、防刃服。
  4. 前記支え部材の前記一方の先端部と前記他方の先端部との間は、弾力性を有する部材で構成されている、請求項2または3に記載の防刃服。
  5. 前記逆さポケット部は、前記裏生地において、前記防刃服着用時に上下方向となる高さが異なる位置に複数個設けられている、請求項〜4のいずれかに記載の防刃服。
  6. 前記連結部材は、前記防刃エレメント部材の外形が突部となる角部同士で、所定幅内の間隔を有して平面状に配置し、隣接する前記防刃エレメント部材同士をも連結する、請求項1〜5のいずれかに記載の防刃服。
  7. 首周りにも装着可能とした、請求項1〜6のいずれかに記載の防刃服。
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