JP4306081B2 - 1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法およびその製造装置 - Google Patents

1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法およびその製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄剤や溶剤として有用な1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法およびその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(以下、HFCPAと略すことがある。)は、沸点が82.5℃(常圧下)の公知物質であり、従来よりその製造方法が知られている。
【0003】
HFCPAの製造法としては、例えば、パーフルオロシクロペンテンをパラジウムなどの水素化触媒の存在下に、水素と反応させて1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロペンタンを合成する際の副生成物として得られることが報告されている(J.C.S.(C).,548(1968))。
【0004】
また、パーフルオロシクロペンテンを0.1%パラジウム担持アルミナを触媒として175〜200℃で水素により水素化することで、1,2−ジヒドロオクタフルオロシクロペンタンと共に少量成分としてHFCPAを得る方法が、英国特許第1,046,095号に記載されている。
【0005】
特開平11−322644号公報には、クロロノナフルオロシクロペンタンを出発原料として、パラジウム担持活性炭と炭酸水素ナトリウムの存在下に水素化還元してHFCPAを製造する方法が提案されている。
【0006】
さらに、WO99/33771号公報には、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを原料として、パラジウムなどの貴金属触媒の存在下に水素化してHFCPAを製造する方法が提案されている。
【0007】
この1−クロロヘプタフルオロシクロペンを原料とするHFCPAの製造方法は、原料の転化率が99%であり、前述した従来の製法と比較して著しく改善された、工業的連続生産に適した製造方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この製造方法は、水素化触媒の存在下に、水素ガスにより1−クロロヘプタシクロペンテンの脱塩素化及び二重結合の還元を行わせるものである。この反応においては、水素の必要量は理論的には原料1モルに対し2モル当量であるが、実際に反応を行う場合には、水素ガスを過剰量用いざるを得ない。そして、従来(特に小スケールで反応させる場合)は反応に用いられなかった過剰の水素ガスはそのまま反応生成物とともに後処理工程に回され、水素ガスはそのまま廃棄するのが一般的であった。
【0009】
しかしながら、HFCPAを工業的に大量生産する場合を考えると、反応に用いられなかった水素ガスをそのまま廃棄することは、資源を節約し、製造コストの低廉化を図る上で好ましいことではない。
【0010】
本発明はかかる観点に鑑み、水素化反応により1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを連続的に製造する方法であって、反応に用いれなかった水素ガスを回収し、再度水素化反応に供することにより、低廉化された製造コストで、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを原料として用い、このものを水素ガスを用いて水素化することにより、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを工業的規模で大量生産する方法を検討した。
【0012】
その結果、(1)この反応を行うためには、水素ガスを過剰量供給せざるを得ないこと、及び(2)反応混合物中には未反応の水素ガスが含まれることになるが、その水素ガスをそのまま廃棄するのは、省資源化及び製造コストの低廉化を図る上で好ましくないことに鑑み、未反応の水素ガスを回収し、再利用を図ることを考案し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、第1に、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを過剰の水素ガスを用いて水素化する、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法であって、前記水素化反応の反応混合物を得る工程と、前記反応混合物から水素ガスを回収する工程と、前記回収した水素ガスを水素化反応に再度供給する工程を有することを特徴とする、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法を提供する。
【0014】
前記1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する方法は、前記水素化反応の反応混合物を得たのち、前記水素化反応混合物から未反応の水素ガス及び反応未完結物質(反応中間体)である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを単離し、それらを再度水素化反応に供する工程を有するのが好ましい。
【0015】
また、前記水素化反応は、水素化触媒を用いる気相水素化反応であるのが好ましい。
【0016】
本発明は、第2に、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを、過剰の水素ガスを用いて水素化することにより、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する装置であって、原料となる1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンおよび水素ガスを反応部に供給する原料供給部と、水素化触媒が充填され、前記供給された1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンの水素化反応を行う反応部と、前記反応部で生成した反応混合物を前記反応部から取り出し、該反応混合物から未反応の(余剰の)水素ガスを回収する回収部と、前記回収された水素ガスを再度前記反応部に供給する再供給部とを有する、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する装置を提供する。
【0017】
前記回収部は、反応混合物から未反応の水素ガスおよび1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを単離するものであり、再供給部は、前記回収された水素ガスおよび1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを再度反応部へ供給するものであるのが、それぞれ好ましい。
【0018】
また、本発明の製造装置は、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを、過剰の水素ガスを用いて連続的に気相水素化する製造装置であるのが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法によれば、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを連続的に水素化することにより、資源を節約して低廉化された製造コストで、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造することができる。
【0020】
また、本発明の製造装置は、本発明の製造方法を具体的に実現するものであって、従来の製造ラインに、未反応の水素ガス、好ましくは未反応の水素ガスと反応中間体である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを単離・回収し、それらを再度反応部へ供給する機能を付加したものである。
【0021】
従って、従来の製造ラインに、回収・再供給機能を付加するだけでよいので、従来の製造ラインを大幅に変更を加えることなく、より低廉化された製造コストで1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを原料として、このものを水素化することにより、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する方法およびそれを製造する装置に関する。
【0023】
本発明で用いる原料化合物は、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンである。このものは、分子量228.5、常圧下での沸点が56℃の公知物質である。
【0024】
1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンの製造方法としては、特に制限はないが、一般的には、1,2−ジクロロヘキサフルオロシクロペンテンを公知のフッ素化剤と反応させることにより製造することができる。すなわち、原料である1,2−ジクロロヘキサフルオロシクロペンテンの2つの塩素原子のうち、いずれか一方の塩素原子をフッ素原子に置換させればよい。
【0025】
用いられるフッ素化剤としては、フッ素イオンを放出しうる化合物であれば特に制限されないが、通常、金属フッ化物、無水または水溶液のフッ化水素酸、フッ化水素酸とアミンまたは4級アミンからなる会合体、フッ化水素酸と極性溶媒との会合体などが挙げられる。これらの中でも金属フッ化物が好ましい。
【0026】
金属フッ化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属などの金属のフッ化物などが挙げられ、アルカリ金属のフッ化物であるのが好ましい。アルカリ金属のフッ化物の具体例としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムなどが挙げられる。これらの中でもフッ化カリウムがより好ましい。これらのフッ素化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
フッ素化剤の使用量は、原料となる1,2−ジクロロヘキサフルオロシクロペンテンに対し、0.5倍モル以上であればよいが、1,2−ジクロロヘキサフルオロシクロペンテンの2つの塩素原子が2個とも置き換わる反応を防止する観点からは2倍モル以下が好ましく、0.5〜1.2倍モルであるのがより好ましい。
【0028】
このフッ素化反応は液相で行っても気相で行ってもよいが、液相で常圧下に行うのが一般的である。反応が液相反応であるときは不活性溶媒を用いるのが好ましい。かかる不活性溶媒としては、通常、非プロトン性極性溶媒が用いられる。かかる非プロトン性極性溶媒の具体例としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなどを挙げることができる。これらのうち、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また必要に応じて、上記の非プロトン性極性溶媒と相溶性のあるベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素との混合溶媒も用いることができる。
【0029】
溶媒の使用量は特に制限されないが、原料である1,2−ジクロロヘキサフルオロシクロペンテン100重量部に対して、通常、0〜1,000重量部である。
【0030】
反応温度は、20℃から用いられる溶媒の沸点までの温度範囲で適宜選択されるが、50〜150℃が好ましく、80〜130℃が特に好ましい。
【0031】
反応終了後は、通常の有機合成化学的手法による後処理操作を行い、必要に応じて蒸留などの生成工程を経て目的とする、1−クロロヘプタフルロシクロペンテンを得ることができる。
【0032】
なお、この1−クロロヘプタシクロペンテンの製造については、例えば、米国特許第3,024,290号公報、米国特許第3,567、788号公報、WO99/33771号公報等に具体的に記載されている。
【0033】
次に、本発明の水素化反応について説明する。
本発明の水素化反応の一般式を下記に示す。
【0034】
【化1】
Figure 0004306081
【0035】
すなわち、原料の1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン(以下、MCLと略す場合がある。)に、水素化触媒(Cat.)の存在下に水素ガスを作用させることにより、脱塩素化反応および炭素−炭素二重結合の還元反応を行わせて、目的とするヘプタフルオロシクロペンタン(以下、F7Aと略す場合がある。)を得るものである。
【0036】
この反応の詳細な反応機構は明らかではないが、塩素原子が脱塩素化され、二重結合が還元されていない化合物であるヘプタフルオロシクロペンテン(F7E)や、塩素原子が脱塩素化され、二重結合が還元され、さらに一つのフッ素原子が水素原子に置き換えられた化合物であるヘキサフルオロシクロペンタン(F6A)などが副生成物として得られることが知られている(下記、化学式参照。)。
【0037】
【化2】
Figure 0004306081
【0038】
本水素化反応は、水素化触媒(Cat.)の存在下に水素化反応を行う。使用できる水素化触媒としては、例えば、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、白金、イリジウム、オスミウムなどの周期律表第VIII族元素の単体またはこれらの化合物が挙げられる。これらの中でもパラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはこれらの化合物が好ましく、パラジウムまたはパラジウム化合物が特に好ましい。金属化合物としては、例えば、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化白金などの周期律表第VIII族元素の化合物などが挙げられる。
【0039】
これらの金属触媒は、単一金属からなるものを使用してもよいし、2種類以上の金属の合金、いわゆるバイメタル触媒として用いてもよい。かかる合金としてはパラジウムを主成分とするものが好ましい。
【0040】
本発明においては、水素化触媒は上記金属以外の金属成分(添加金属成分)を含むことができる。添加金属成分としては、銀、銅、金、テルル、亜鉛、クロム、モリブデン、タリウム、錫、ビスマス、鉛などが挙げられる。添加金属成分の量は、金属100重量部に対して0.01〜500重量部、好ましくは0.1〜300重量部が金属の特性を活かす意味で好適である。合金触媒においては、合金組成に応じて、その成分元素の特性を出現させたり、触媒活性を変動させたりすることができる。
【0041】
水素化触媒を担持させる担体としては、比表面積が大きく耐熱性の高いものであれば、その種類、形状、大きさなどは特に制限されるものではない。担体の種類としては活性炭、アルミナ、シリカゲル、チタニア、ジルコニアおよびこれらをフッ化水素処理したものが挙げられる。担体の形状としては、粉末でも、球形、ペレット状などの粒状物であってもよい。粒状物は、加工された成形体であっても、破砕物であってもよい。好ましい形状としては、粒状物である。担体に対する水素化触媒の担持量は、通常、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%である。
【0042】
水素化反応に用いられる水素は、ガス状であればよい。また、水素ガスのほかに、窒素、炭化水素ガス、ハイドロフルオロカーボンガス、希ガスなどの希釈剤を併用することもできる。炭化水素ガスとしては、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガスなどを、ハイドロフルオロカーボンガスとしては、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロブタン、デカフルオロペンタンなどを、また希ガスとしては、ヘリウム、アルゴンなどをそれぞれ例示することができる。
【0043】
これらの希釈剤は単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。希釈剤の使用量は特に制限はないが、例えば、原料の1−クロロヘプタシクロペンテン100重量部に対して、通常、0〜500重量部、好ましくは0〜200重量部である。
【0044】
用いる水素と原料の割合は大幅に変動させ得る。しかしながら、少なくとも化学量論量の水素を使用して、脱塩素化(炭素−塩素結合の水素化分解)と炭素−炭素二重結合の水素化(還元)を行うだけの水素が必要である。通常、出発物質1モルに対し、2モル以上、好適には2モル〜50モルの水素を使用する。連続的に反応を行う場合には連続的に水素ガスを供給する必要があるため、用いる水素ガスは過剰量となる。従って、後述するように、過剰に供給された水素ガスの再利用を図る。
【0045】
本水素化反応の反応系の圧力は、通常、常圧〜50kgf/cm2程度であり、好ましくは常圧〜20kgf/cm2である。反応温度は、通常、常温から350℃程度であり、好ましくは常温〜200℃程度である。
【0046】
水素化の方式としては、水素ガスを用いる還元反応により、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを連続生産できる方式であれば特に制限はなく、液相反応または気相反応が可能である。
【0047】
液相反応による場合には、原料の1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン、水素化触媒及び所定圧力の水素ガスを充填した反応器を密閉し、反応器を攪拌または振とうすることにより行うのが好ましい。
【0048】
液相反応で使用する溶剤は特に制限はないが、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハイドロスルオロカーボン類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、水などが挙げられる。
【0049】
脂肪族炭化水素類は、その炭素数が、通常、4〜15程度であればよい。脂肪族炭化水素類の具体例としては、n−ヘプタン、n−ペンタン、メチルペンタン、n−ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、トリフルオロメチルベンゼンなどが挙げられる。
ハイドロフルオロカーボン類としては、例えば、ペンタフルオロエタン、オエンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロブタン、デカフルオロペンタンなどが挙げられる。
【0050】
アルコールは、通常、その炭素数が、通常、1〜10であればよく、好ましくは1〜6である。アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、シクロペンタノール等が挙げられる。
エーテル類は、その炭素数が、通常、4〜10であればよく、好ましくは4〜6である。エーテル類の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどが挙げられる。
【0051】
ケトン類は、その炭素数が、通常、3〜10であればよく、好ましくは4〜8である。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどが挙げられる。
エステル類は、その炭素数が、通常、4〜10であればよく、好ましくは4〜8である。エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、吉草酸メチルなどが挙げられる。
これらの溶剤は、単独で使用してもよく、または2種以上組み合わせて使用してもよい。溶剤の使用量は、特に制限はなく、原料となる1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン100重量部に対して、通常、80重量部、好ましくは0〜50重量部である。
【0052】
気相反応による場合には、固定床型気相反応、流動床型気相反応などの方式を採ることができる。例えば、原料である1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを加熱して気体状態とし、水素ガスとともに、水素化触媒が充填された反応器中に連続的に供給し、所定温度に加熱することにより還元反応を行わしめる方法がある。
【0053】
本発明の水素化反応は、バッチ反応または原料を連続的に反応器へ供給し、反応生成物を連続的に抜き出す連続反応が好ましく、連続反応により好適な気相反応によるのがより好ましい。
【0054】
本発明の連続水素化反応が可能である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造装置の一例を図1に概念図で示す。
【0055】
図1に示す製造装置は、原料供給部1、反応部2、回収部3および再供給部4とからなっている。原料供給部1は、原料となる1−クロロヘプタフルロロシクロペンテン(MCL)及び水素ガスを反応部2に供給する。製造装置が気相反応装置である場合には、MCLを気化器にて加熱して気体状態として、水素ガスと共に反応部2へ供給する。また、気体状態のMCLおよび水素ガスのほかに、前記列記した適当な希釈剤を併用することもできる。液相反応装置である場合には、MCLを液体状態で供給することができる。この場合には、MCLを適当な溶媒で希釈して反応部2へ供給することもできる。また、水素ガスは反応部2へ原料が供給された後に、所定圧力で反応部2へ供給されるのが好ましい。
【0056】
反応部2は水素化触媒が充填された反応器からなる。反応器は、直列に連結した1個またはそれ以上の反応器、例えばカスケード式反応器を使用することができる。反応容器の材料としては、例えば、ステンレススチールなどが適している。この水素化反応においては、酸性物質が生成するので、微量の水分により反応器などが腐食しやすい。従って、反応器などは、使用前に例えば硝酸処理してコンディショニングしておくことも好ましい。
【0057】
水素化触媒を反応器に充填する方法としては、気相反応装置の場合は、例えば円筒状のカラム中に、前記した水素化触媒を充填する。反応器を2個以上用いる場合には、触媒活性の異なる水素化触媒をそれぞれの反応器に充填することもできる。この場合には、水素化反応を段階的に温和な条件で行わせることができるので、触媒寿命を長くし、副生成物の生成を抑制することができるので好ましい。また、液相反応装置の場合は、反応液中に所定量の金属触媒を分散させる。この場合には、反応終了後、金属触媒を回収して再度反応に供することができる。
【0058】
反応終了後は、反応混合物を取り出し、冷却したのち、酸性成分を吸収または中和させる。通常、反応混合物の温度が50℃以下になるまで冷却する。本発明においては、塩化水素ガスなどの酸性成分が副生成物として発生する。気相反応の場合には、反応器から留出する反応混合物を取り出し、反応混合物を冷却したのち、中和成分を添加する。液相反応の場合には、反応液を冷却し、水またはアルカリ水で洗浄したのち、有機層から溶媒を除去する必要がある。この場合、回収した溶媒を再度反応溶媒として用いることができる。
【0059】
反応混合物に含まれる酸性成分を吸収または中和して除去する中和成分及び洗浄に用いるアルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、弱酸塩、有機酸塩などが挙げられる。たとえば、ソーダライム、生石灰、炭酸アルカリ、酢酸アルカリなどである。これらの添加剤は1種または2種以上の組み合わせで用いることができる。これらの使用量は、原料となる1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン1モルに対して、1モル以上である。
【0060】
反応混合物から酸性成分を除去したのち、反応混合物は回収部3へ送られる。回収部3では、先ず、反応混合物の圧縮を行う。圧縮圧力は、ガスブースター、ダイアフラム式ポンプ、ピストン(プランジャー)式ポンプ、チューブ式ポンプ、ロータリー式エアーコンプレッサーなどの公知の圧縮機を用いて行うことができる。圧縮圧力は、ゲージ圧で1〜50kg/cm2(5Mpa)、好ましくは3〜10kg/cm2、より好ましくは5〜10kg/cm2である。圧縮圧力をこの範囲にすることにより、水素ガス、好ましくは水素ガスとF7Eを高い率で単離・回収することができる。
【0061】
反応混合物は圧縮により液化し、圧縮機の後段に設置された液化回収タンクに移される。この場合、液化回収タンクは、タンク内を所定圧力に保持するために保圧弁を取り付けておくことが好ましい。
【0062】
また、液化回収タンク内は、断熱圧縮効果により温度が上昇し、蒸気圧が上がることによって、反応生成物の収率、および再利用可能な水素ガス、好ましくは水素ガスと1,3,3,4,4,5、5−ヘプタフルオロシクロペンテンの回収率が低下するので、所定温度以下に冷却しておくことが望ましい。
【0063】
前記冷却は、液化回収タンクに取り付けられた冷却装置を用いるのが好ましい。冷却温度は、製品が凝固して詰まりなどを生じない温度以下であって、冷却しても、再利用したい水素および1,3,3,4,4,5、5−ヘプタフルオロシクロペンテン(F7E)が飽和蒸気圧以下となって、圧縮タンクから排出される温度であればよい。好ましくは−50〜30℃、より好ましくは−20〜20℃である。
【0064】
液化してタンク内に送られた反応混合物は、連続的にまたは断続的に液化回収タンクから抜き出されて、再供給部4へ送られ、分離精製される。このとき、上記圧縮タンクから排出される水素は、飽和蒸気圧以下の1,3,3,4,4,5−ヘプタフルオロシクロペンテンとともに、圧縮時の圧力を利用して、再度反応器に原料とともに原料供給部1へ送られ、反応に再度用いることができる。再供給部4から原料供給部1へ供給するときの圧力は、一般的に用いられるマスフローコントローラなどの流量自動制御装置、または手動制御による設定流量の調節に差し支えない範囲であればよく、通常、反応器内の圧力(通常、常圧に近い)との圧力差が0.5−5kg/cm2程度であればよい。
【0065】
この圧力調節は、上記回収タンク内の圧力をそのまま、あるいは段階的に低圧化させることにより行うことができる。なお、水素ガス中に酸素、窒素などの他の気体(ガス)が混入し、これらがリサイクルされることによって、反応機内で濃縮されるおそれがある場合には、安全上または反応効率を向上させる観点からその一部を外部に抜き出し、フレッシュな水素ガスをその分導入して水素ガス濃度を異って一以上に保つようにすることが、長期稼働する上で好ましい。
【0066】
また、リサイクルされる水素中には、上記の不要ガスのほかに水分(水蒸気)も除去しておくことが、再反応時に副生する酸性ガスによる反応器などの腐食を防止する上で好ましい。さらに、反応設備は耐腐食性を有する材料を用いるのが好ましい。
【0067】
なお、回収される1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(F7E)は、下記に示すように、炭素−炭素二重結合を還元することにより目的物(F7A)を得ることができる。
【0068】
【化3】
Figure 0004306081
【0069】
以上のようにして、1−クロロヘプタシクロペンテンを水素化する場合に、過剰の水素ガスを回収し、再度水素化反応に供することにより、低廉化された製造コストで1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造することができる。
【0070】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、以下の実施例および第1表〜第3表において用いる略号の意味は次の通りである。
MCL:1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン
F7E:1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン
F7A:1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン
【0071】
実施例1 1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの合成外部に電気炉を備えた内径2.54cm、長さ40cmのSUS管に、炭素担体に対し5重量%のパラジウムを担持した金属触媒(5%Pd/C触媒、デグサ(株)製)70gを充填したものを用意し、これを反応器とした。
【0072】
反応を開始する前には、窒素ガスを第1の反応器から流しながら昇温を開始した。次に、その反応器中へ窒素を流しながら昇温を開始した。150℃において、窒素を流量1360sccmで2時間流し、反応器内部の空気を完全に除去した後、150℃で水素を流量1360sccmで2時間流すことにより、触媒を水素還元した。
【0073】
次いで、反応温度を60℃に設定し、水素流量1360sccmはそのままで、原料であるMCLを2.3g/minの流速で100℃に加熱しながら反応器内に連続的に導入した。MCLと金属触媒との接触時間は40秒であった。反応管から流出するガスを炭酸カリウム水溶液で洗浄した後、ガスブースターにより所定圧力まで圧縮し、生成物を液化回収し、余剰の水素ガスおよびF7Eの回収量を測定した。圧縮率と水素供給量を種々変化させた場合の測定結果を第1表にまとめた。
【0074】
第1表において、圧縮率は常圧を1とした場合にどれくらい圧縮したのかを示す。例えば、圧縮率5とは、内部圧力を5kg/cm2とした場合である。
2希釈率(2.2、3.6、5.5及び10.9の4種類で行っている。)は単位時間あたりの水素流量(単位モル)を同じ単位時間あたりのMCL流量(単位モル)で割った値である。
2の回収率(%)は、実際に回収した水素ガスの測定値を理論回収量(過剰である水素を100%回収した場合の回収量で割り、100分率で表示した値である。
また、F7Eの回収率(%)は、反応管から流出してくる反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析した値から計算して100%回収できたとした場合の理論回収量を実際の測定値で割り、100分率で表示した値である。
【0075】
【表1】
Figure 0004306081
【0076】
第1表より、理論回収量のかなり割合の水素ガスおよびF7Eを実際に回収することができることがわかった。特に、圧縮比を5以上に設定した場合には、水素ガスは理論量の81%以上、F7Eは84%以上を回収することが可能であることがわかった。
【0077】
回収した水素ガスおよびF7Eを再度水素化反応に供することにより、資源を節約し、製造コストを低減することができる。特に大量生産する場合には、回収される水素ガスおよびF7Eの量は膨大となるため、その効果は大きい。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを連続的に水素化することにより、資源を節約して低廉化された製造コストで、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造することができる。
【0079】
また、本発明の製造装置は、本発明の製造方法を具体的に実現するものであって、従来の製造ラインに、未反応の水素ガス、好ましくは未反応の水素ガスと反応中間体である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを単離・回収し、それらを再度反応部へ供給する機能を付加したものである。
【0080】
従って、従来の製造ラインに、回収・再供給機能を付加するだけでよいので、従来の製造ラインを大幅に変更を加えることなく、より低廉化したコストで1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造装置の一例を示す概念図である。

Claims (4)

  1. 1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを過剰の水素ガスを用いて水素化する1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法であって、前記水素化反応の反応混合物を得る工程と、
    前記反応混合物を、3〜10kg/cm (0.3MPa〜1MPa)の圧縮圧力で圧縮して、水素ガス及び1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを単離する工程と、
    前記単離した水素ガス及び1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを再度水素化反応に供する工程を有することを特徴とする1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法。
  2. 前記水素化反応は、水素化触媒を用いる気相水素化反応である請求項1に記載の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法。
  3. 1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを過剰の水素ガスを用いて水素化することにより、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する装置であって、原料となる1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン及び水素ガスを反応部に供給する原料供給部と、
    水素化触媒が充填され、前記供給された1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンの水素化反応を行う反応部と、
    前記反応部で生成した反応混合物を取り出し、該反応混合物を、3〜10kg/cm (0.3MPa〜1MPa)の圧縮圧力で圧縮して、未反応の水素ガス及び1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを回収する回収部と、前記回収された水素ガス及び1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンを前記反応部に再度供給する再供給部と
    を有する1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する装置。
  4. 1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを、過剰の水素ガスを用いて連続的に気相水素化する請求項3に記載の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する装置。
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