JP4305467B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
従って、リッチスパイク操作を適切に行うためにはNOX吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOX量を正確に知る必要がある。ところが、実際には機関運転中にNOX吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOX量を直接計測することは困難である。このため、直接計測に代えてNOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵量を推定する方法が種々考案されている。
例えば特許文献1に開示された排気浄化装置では、機関がリーン空燃比運転されている時には機関の運転状態に応じて定まる量を一定時間毎にNOXカウンタに加算し、機関が理論空燃比またはリッチ空燃比で運転されているときには、機関の空燃比やNOX吸蔵還元触媒温度等に応じて定まる量を一定時間毎にNOXカウンタから減算することにより、NOXカウンタの値が常にNOX吸蔵還元触媒の現在のNOX吸蔵量に対応して変化するようにしている。
例えば、リーン空燃比運転時のNOXの吸蔵の際にはNOXはまずNOX吸蔵還元触媒の上流側に近い側に主に吸蔵されるため下流側にはほとんど到達しない。このため、リーン空燃比運転開始後しばらくは触媒の下流側部分にはNOXが吸蔵されにくい。また、同様に再生操作時にも、NOXはまず上流側に近い側から脱離し、排気中の未燃炭化水素等が上流側に近い部分で消費されるため、下流側に近い側ではNOXの脱離は生じにくくなる。
例えば、NOXの吸蔵及び脱離速度として触媒上流側部分のものに近い値を使用していると、NOX吸蔵還元触媒のリッチスパイク操作の際に実際には触媒下流側ではNOXの脱離が開始していないか、或いは吸蔵NOXが残っているうちにNOXの脱離が完了したとしてリッチスパイク操作が終了してしまい、下流側部分では吸蔵NOXが残った状態で再度吸蔵を開始することとなる。このため、NOX吸蔵還元触媒の下流側部分では次第にNOX吸蔵量が増大し、NOXカウンタを用いて推定したNOX吸蔵量に基づいてリッチスパイク操作を行っているにもかかわらず、部分的にNOX吸蔵還元触媒の吸蔵能力が大幅に低下するような問題が生じるのである。
従って、NOX吸蔵還元触媒の吸蔵能力を有効に活用するためには、NOXの場合と同様にNOX吸蔵還元触媒に吸蔵されたSOX量を正確に推定しSOX離脱のための適切な再生操作を実行することが必要となる。
図1は、本発明を自動車用ガソリン機関に適用した実施形態の装置全体の基本構成概略を示す図である。
本実施形態では、機関1は負荷条件に応じて運転空燃比が変更されるが、その運転領域の大部分で理論空燃比よりリーンな空燃比で運転される、いわゆるリーンバーンエンジンとされている。
本実施形態では、排気通路5にはNOX吸蔵還元触媒20が配置されている。
また、図に符号30で示すのは機関1の電子制御ユニット(ECU)である。ECU30は、RAM、ROM、CPU、入出力ポートを備えた公知のマイクロコンピュータとして構成され、本実施形態では機関1の燃料噴射制御や点火時期制御などの基本制御を行う他、後述するNOX吸蔵還元触媒20の再生操作(リッチスパイク操作)や、触媒20のNOX吸蔵量(またはSOX吸蔵量)の推定計算等の操作を行う。
NOX吸蔵還元触媒は、NOX吸蔵量が増大するにつれてNOX吸蔵能力(ここでは、流入する排気中のNOXのうちNOX吸蔵還元触媒に吸蔵されるNOXの割合をNOX吸蔵能力またはNOX浄化率と呼ぶ)は低下する。そして、NOX吸蔵還元触媒が吸蔵可能な最大量のNOXを吸蔵した状態(飽和状態)では、NOX吸蔵還元触媒20は排気中のNOXを全く吸蔵することができなくなりNOX吸蔵還元触媒20のNOX浄化率はゼロになる。
リッチスパイク操作を行うことにより、一時的に機関1の排気空燃比はリッチ空燃比になり、酸素濃度が低下するとともに排気中の未燃炭化水素やCO2、還元成分であるCO等の量が増大する。これにより、NOX吸蔵還元触媒からは吸蔵されたNOXが脱離し、触媒上で排気中の未燃炭化水素やCO2、還元成分であるCO等と反応し、N2に還元浄化される。
このため、NOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵能力を有効に活用して排気浄化を行い、燃料消費量の増大や排気性状の悪化を防止するためには、NOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵量を正確に把握して適切なタイミングで再生操作を実行する必要がある。
従って、SOXの吸蔵についてもNOXの吸蔵と同様に吸蔵量を正確に把握して適切なタイミングで再生操作を実行する必要がある。
以下の実施形態では、NOX吸蔵還元触媒のNOXの吸蔵と脱離とに例をとって説明するが、SOXの場合についても以下の実施形態が成立する。
従って、本明細書では重複を避けるためSOXの場合についての実施形態を別途記載することはしないが、以下の各実施形態で適宜「NOX」を「SOX」と読み替えることによりSOXの場合についても全く同じ実施形態が成立することに留意されたい。
すなわち、NOX吸蔵還元触媒の各部分のNOXの吸蔵、脱離特性はそれぞれ異なっている。例えば、NOX吸蔵還元触媒にはNOXを吸蔵しやすい部分(NOXの吸蔵速度が大きい部分)と吸蔵しにくい部分(吸蔵速度が小さい部分)とがあり、触媒に流入する排気中のNOXはまず吸蔵しやすい部分に優先的に吸蔵され、ある程度吸蔵しやすい部分のNOX吸蔵量が増大してから吸蔵しにくい部分でのNOX吸蔵がはじまる傾向がある。また、NOX吸蔵還元触媒の再生操作時にもNOXはまず上記吸蔵しやすい部分から脱離し、この部分である程度脱離が進んでから吸蔵しにくい部分で脱離が始まる傾向がある。
本実施形態では、NOX吸蔵還元触媒のNOXを吸蔵しやすい部分の吸蔵、脱離特性に適合した増減特性を設定した第1のNOXカウンタと、吸蔵しにくい部分の吸蔵、脱離特性に適合した増減特性を設定した第2のNOXカウンタとを用いることにより、それぞれの部分に吸蔵されたNOX量を推定する。
図2のフローチャートでは、ステップ203から209がリーン空燃比運転時におけるNOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵に対応してNOXカウンタNC1、NC2を増大させる操作、ステップ211から223が再生操作(リッチスパイク操作)や運転条件の変化による負荷の増大などによる理論空燃比運転またはリッチ空燃比運転が行われた場合のNOX吸蔵還元触媒からのNOXの脱離に対応してNOXカウンタNC1、NC2を減少させる操作である。
機関の単位時間当たりのNOX発生量は、機関の回転数、負荷(燃料噴射量またはアクセルペダル踏み込み量)等の運転条件により定まる。また、リーン空燃比運転中には、NOX吸蔵還元触媒20のNOX吸蔵能力が高い間は、機関で発生したNOX(すなわちNOX吸蔵還元触媒に流入するNOX)の全量がNOX吸蔵還元触媒に吸蔵されると考えられる。
すなわち、本実施形態では、NOX吸蔵還元触媒20内にNOXを吸蔵しやすい部分と吸蔵しにくい部分とがあることを考慮して、NOX吸蔵還元触媒20に流入するNOXの量NAを各部分のNOX吸蔵特性(吸蔵しやすさ)に応じて各部分に分配しているのである。
本実施形態では、カウンタNC1は比較的NOXを吸蔵しやすい部分(第1の部分、例えば触媒上流側部分やコート層上層部等)に吸蔵されたNOXの量を表し、カウンタNC2は比較的NOXを吸蔵しにくい部分(第2の部分、例えば触媒下流側部分やコート層下層部等)に吸蔵されたNOXの量を表している。分配係数rは、これらの部分のNOXの吸蔵速度(吸蔵しやすさの程度)に応じて定められる係数(0≦r≦1)である。このように、NOX吸蔵還元触媒20の各部分のNOX吸蔵特性に応じて各部分に吸蔵されるNOX量を分配することにより、NOX吸蔵還元触媒が吸蔵するNOXの量を正確に推定することが可能となる。
ステップ203から209の操作により、リーン空燃比運転中にNOX吸蔵還元触媒20に流入する排気中のNOXはNOX吸蔵還元触媒の各部分に、それぞれの部分の吸蔵特性に応じた量だけ吸蔵されるようになる。
次にステップ211から223のNOXカウンタ減少操作について説明する。
すなわち、図2のステップ201で理論空燃比またはリッチ空燃比運転が行われている場合には、ステップ211に進み第1と第2のNOXカウンタの減少速度NR1とNR2とが算出される。ここで、NR1とNR2とは、排気空燃比が低い(リッチな)ほど大きな値に設定され、更にリッチ空燃比運転開始後の経過時間に応じて変更される。なお、減少速度NR1とNR2との設定については後に詳述する。
次に、図2のステップ205で設定される分配係数rの設定例について説明する。
(1)rを固定値とする方法。
(2)NOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵量に応じてrを設定する方法。
(3)NOX吸蔵還元触媒の劣化程度に応じてrを設定する方法。
(4)NOX吸蔵還元触媒の温度に応じてrを設定する方法。
(5)排気流量に応じてrを設定する方法。
(6)流入する排気中のNOX濃度に応じてrを設定する方法。
以下、それぞれについて説明する。
前述のように、触媒の第1の部分ではNOXが吸蔵されやすく、第2の部分では吸蔵され難い。このため、第1のNOXカウンタの増大速度は第2のNOXカウンタの増大速度より大きくなる。従って、近似的にrの値を(1−r)>rとなるように固定して第1と第2のNOXカウンタを増大させるようにすることもできる。
この場合、rの値(固定値)は実際のNOX吸蔵還元触媒を用いた実験により使用する触媒に最適な値を設定する。
前述したように、NOX吸蔵還元触媒の第1の部分のNOX吸蔵能力が大きい状態では、流入する排気中のNOXのほとんどは第1の部分に吸収されてしまい、第2の部分にはNOXがほとんど到達しない。しかし、第1の部分に吸蔵されたNOX量が増大するにつれて第1の部分のNOX吸蔵能力は低下するため、次第に第1の部分に吸蔵されるNOX量が低下する。これにより、第2の部分に到達して吸蔵されるNOX量が増大するようになる。
図3は、本実施形態における第1のNOXカウンタNC1と分配係数rとの関係を示す図である。図3に示すように、NC1の値が小さく第1の部分にほとんどNOXが吸蔵されていない状態ではrの値は略0に近い値にセットされ、NC1の増大速度はNAに近い値になる(図2ステップ207)。すなわち、流入するNOXの略全量がNOX吸蔵還元触媒20の第1の部分に吸蔵される。
なお、上記のように吸蔵量に応じて分配係数rの値を設定する場合に、近似的に再生操作完了後のリーン空燃比運転開始からの経過時間に応じてrを設定するようにすることもできる。図4は、リーン空燃比開始後の経過時間に応じてrを設定する場合の設定カーブを示し、縦軸はrを、横軸は再生操作終了後のリーン空燃比運転開始からの経過時間を示している。図4のようにrを経過時間に応じて変化させることによっても各部分のNOX吸蔵量を正確に推定することができる。
NOX吸蔵還元触媒20の第1の部分(例えば触媒上流側部分やコート層の上層部分)はNOXが吸蔵されやすい部分であるが、このことは逆に言えば触媒の劣化の進行が速い部分であるとも言える。例えば、触媒上流側部分やコート層上層部分では接触する排気の温度が高いために熱劣化が生じやすい。また、排気中に硫黄分が含まれると、硫黄はNOXと同様にNOX吸蔵還元触媒に吸蔵され、硫黄分の蓄積により再生操作によってもNOX吸蔵能力が回復しない、いわゆる硫黄被毒が生じる。この硫黄被毒も当然にNOXが吸蔵されやすい第1の部分に生じやすい。
図5は、本実施形態における分配係数rの設定例を説明する図である。図5の例では、毎回のNOX吸蔵時には図4と同様にリーン空燃比運転開始後の経過時間に応じてrを設定するが、触媒の劣化程度が進むにつれてrの値が短時間で増大するようにrの設定カーブ自体を変更するようにしている。
このように、劣化程度に応じてrの値を変化させることにより、触媒の劣化状態にかかわらず触媒のNOX吸蔵量を正確に推定することが可能となる。
NOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵能力は触媒温度に応じて変化する。例えば、通常のNOX吸蔵還元触媒は比較的狭い温度範囲で高いNOX吸蔵能力を示すが、この温度範囲から外れるとNOX吸蔵能力が低下する。
一方、NOX吸蔵還元触媒の第1の部分は第2の部分に較べて排気温度の影響を受けやすく、排気温度とともに触媒温度が変化する。このため、排気温度が高くなると第1の部分では少ないNOX吸蔵量でも大きくNOX吸蔵能力が低下するようになり、リーン空燃比運転開始後短時間でNOX吸蔵能力が低下する。
そこで、本実施形態では触媒温度(排気温度)に応じてrの設定を変化させるようにしている。
図6は、図4のように毎回のNOX吸蔵時に時間とともにrの値を変化させる際に上記触媒温度の変化を考慮する場合を示している。
図6においてカーブ1は、触媒の吸蔵能力が最も高くなる温度(例えば670°K程度)の場合のr設定カーブを示し、カーブ2及びカーブ3は触媒のNOX吸蔵能力が許容限度付近まで低下する高温側の温度(例えば720°K程度)と低温側の温度(例えば570°K程度)におけるr設定カーブをそれぞれ示している。
図6のように触媒温度(排気温度)に応じてrの値を設定することにより、触媒温度(排気温度)の変化にかかわらず正確にNOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵量を推定することが可能となる。
排気流量が大きい場合には、触媒における空間速度が大きくなり触媒にNOXが吸蔵されやすくなる。このため、特に触媒の第1の部分ではNOXの吸蔵量の増大速度が速くなり、リーン空燃比運転開始後比較的短時間でNOX吸蔵能力が低下する。このため、排気流量が大きい場合には、排気流量が小さい場合にくらべで分配係数rがリーン空燃比運転開始後短時間で増大するように設定することにより、排気流量によるNOX吸蔵量推定の誤差を排除することができる。
図7においてカーブ1は排気流量が比較的少ない場合のrの設定カーブを、カーブ2はカーブ1より流量が増大した場合、カーブ3はカーブ2より更に流量が増大した場合のrの設定カーブを、それぞれ示している。図7に示すように、Rの値は排気流量が増大するにつれて、リーン空燃比運転開始後短い時間で増大するように設定されている。
排気NOX濃度が高い場合には、触媒にNOXが吸蔵されやすくなり特に触媒の第1の部分ではNOX吸蔵量が速く増大する。この場合も、リーン空燃比運転開始後短時間で第1の部分ではNOX吸蔵量の増大のためにNOX吸蔵能力が低下する。従って、排気のNOX濃度が高い場合には分配係数rの値もリーン空燃比運転開始後短時間で増大するように設定する必要がある。
図8においてカーブ1、カーブ2、カーブ3は排気NOX濃度が低い場合(カーブ1)からNOX濃度が増大した場合(カーブ2、3)のrの設定を示している。図8に示すように、rの値は排気NOX濃度が増大するにつれて、リーン空燃比運転開始後短時間で増大するように設定されている。
なお、上記(5)、(6)では排気流量と排気NOX濃度とに応じて別個に分配係数rを設定する方法を説明したが、触媒に単位時間当たりに流入するNOX量が大きいほど触媒の第1の部分に吸蔵されるNOX量は増大する。従って、排気流量と排気NOX濃度とを別個に考慮するのではなく、排気流量と排気NOX濃度との積、或いは機関の単位時間当たりのNOX発生量NAに応じて(例えばNAが大きいほど短時間でrが増大するように)rの値を設定することも可能である。
すなわち、本実施形態では第2の部分における減少速度NR2は上記脱離速度の相違を考慮して、第1の部分における減少速度NR1より小さな値に設定されている。これにより、再生操作などのリッチ空燃比運転時にNOX吸蔵還元触媒の各部分から脱離するNOX量をより正確に推定することができるため、リーン空燃比運転時にNOX吸蔵還元触媒に吸蔵されるNOX量とともに各部分から脱離するNOX量を用いることにより、NOX吸蔵還元触媒に現在吸蔵保持されているNOX量を正確に推定することが可能となる。
前述したように、本実施形態ではNOX吸蔵還元触媒からNOXを脱離させるべきときに再生操作を行い、NOX吸蔵還元触媒のNOX吸蔵力を回復させる。
また、本実施形態では、再生操作として機関1を短時間リッチ空燃比で運転し、NOX吸蔵還元触媒20にリッチ空燃比の排気を供給するリッチスパイク操作を実施し、NOX吸蔵還元触媒からNOXを脱離させるべきときか否かの判断、すなわちリッチスパイク操作を実行すべきか否かの判断は各部分のNOXカウンタNC1、NC2の値に基づいて行う。
本実施形態では、第1のNOXカウンタNC1と第2のNOXカウンタNC2との和(NC1+NC2)の値が予め定めた判定値に到達したときにリッチスパイク操作を実行するようにしている。
前述したように、触媒の第1の部分ではNOXが吸蔵されやすく、かつ脱離しやすい。このため、リッチスパイク操作を行うと触媒の第1の部分では吸蔵NOXのほとんどが脱離してNOX吸蔵量は略ゼロになる。一方、触媒の第2の部分ではNOXが吸蔵されにくく、しかも脱離しにくい。このため、リッチスパイク操作を行っても、触媒の第2の部分では吸蔵したNOXの一部が脱離せずに残留する場合がある。この場合にはNOXの吸蔵、脱離を繰り返す毎に触媒の第2の部分にはNOXが蓄積されるようになる。
また、逆にNOX吸蔵還元触媒の第1の部分で多少NOX吸蔵量が増大した場合でも、触媒の第2の部分のNOX吸蔵量が少なく、充分なNOX吸蔵能力が残っている場合には、第1の部分を通過したNOXはその全量が第2の部分に吸蔵される。
そこで、本実施形態では第1の部分と第2の部分とのNOX吸蔵量の和が所定値を越えないように、すなわちNOXカウンタNC1とNC2との和が所定の判定値に到達する毎にリッチスパイク操作を行うようにしている。
すなわち、リッチスパイク操作が開始されるとNOX吸蔵還元触媒20に流入する排気の空燃比はリッチになり、触媒からは吸蔵されたNOXが脱離して触媒上で排気中の未燃炭化水素やCO等の成分と反応してN2に還元される。従って、触媒からNOXが脱離して還元されている間は排気中の未燃炭化水素やCO等の成分がNOXの還元により消費されるため、NOX吸蔵還元触媒出口では排気中の未燃炭化水素やCO等の量が減少し、相対的に排気中の酸素濃度が増大するため空燃比は理論空燃比近傍になる。すなわち、リッチスパイク操作中、NOX吸蔵還元触媒からNOXが脱離している間は、NOX吸蔵還元触媒20下流側のO2センサ35で検出した排気酸素濃度は、理論空燃比に相当する値に維持される。また、NOX吸蔵還元触媒からのNOXの脱離が完了して触媒から脱離するNOXがなくなると、排気中の未燃炭化水素やCO等が触媒下流側にも到達するようになるため、O2センサ35で検出した排気酸素濃度は上流側と同じリッチ空燃比に対応した値になる。
ところが、このようにO2センサ35で検出した排気酸素濃度のみに基づいてリッチスパイク操作を実行していると、触媒の第2の部分ではNOXの脱離が不十分になる問題がある。
このように、再生操作時、及びその後にNOX吸蔵還元触媒20下流側のO2センサ35出力に基づいて第2のNOXカウンタを増減することにより、第2の部分に吸蔵保持されたNOXの量を正確に推測することが可能となる。
上記の実施形態ではリッチスパイク操作時に、NOX吸蔵還元触媒20下流側のO2センサ35出力が理論空燃比相当値からリッチ空燃比相当値に変化した後もリッチ空燃比運転を継続している。しかし、この場合には第2の部分では排気中の未燃炭化水素などの全量が消費されないため、残りの炭化水素が触媒を通過して大気に放出されるおそれがある。
そこで、本実施形態ではリッチスパイク実行時に、下流側O2センサ35出力が理論空燃比からリッチ空燃比に変化すると同時に機関を理論空燃比で運転するようにする。理論空燃比においても、触媒の第2の部分では吸蔵NOXが脱離して第2の部分のNOX吸蔵量が低下する。触媒に流入する排気の空燃比を理論空燃比に維持して第1の部分に続いて第2の部分からのNOXの脱離を行わせることにより、未燃炭化水素等の大気放出が防止される。
すなわち、本実施形態におけるリッチスパイク操作時には第1と第2のNOXカウンタの値に応じて以下の操作が行われる。
2)このとき、NOX吸蔵還元触媒20下流側のO2センサ35出力が理論空燃比相当値である場合には、第2のNOXカウンタNC2の値はリッチスパイク操作開始前の値に保持し減少させない。
4)第2のNOXカウンタNC2の値が上記所定値より大きい値になっている場合には、リッチスパイク操作時にO2センサ35出力が理論空燃比相当値からリッチ空燃比相当値に変化したときに機関のリッチ空燃比運転を終了し、機関を理論空燃比で運転する。
上記のようにリッチスパイク操作を行うことにより、排気性状の悪化や燃料消費量の増大を生じることなくNOX吸蔵還元触媒の各部分の吸蔵能力を効率的に使用することが可能となる。
5 排気通路
20 NOX吸蔵還元触媒
30 電子制御ユニット(ECU)
35 O2センサ
Claims (2)
- 内燃機関の排気通路に配置され、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中の窒素酸化物(NOX)または硫黄酸化物(SOX)からなる特定成分を吸着、吸収またはその両方にて選択的に吸蔵保持し、流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比となったときに、吸蔵した前記特定成分を脱離させるとともに還元浄化するNOX吸蔵還元触媒と、
前記NOX吸蔵還元触媒の少なくとも異なる2つの部分に吸蔵された前記特定成分量を部分毎に推定することにより、前記NOX吸蔵還元触媒内に吸蔵された前記特定成分量を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された特定成分吸蔵量に基づいて、前記NOX吸蔵還元触媒にリッチ空燃比の排気を供給し、NOX吸蔵還元触媒に吸蔵された前記特定成分を脱離、還元浄化する再生操作を実施する再生手段と、を備え、
前記推定手段は、NOX吸蔵還元触媒の前記特定成分吸蔵時には、流入する排気からNOX吸蔵還元触媒に吸蔵される全特定成分量をNOX吸蔵還元触媒の前記各部分毎に所定の比率で分配することにより、NOX吸蔵還元触媒の前記各部分に吸蔵された前記特定成分量を推定する、内燃機関の排気浄化装置において、
前記再生手段は、前記再生操作実行時にNOX吸蔵還元触媒に流入する排気の空燃比をリッチ空燃比に短時間維持した後更に、前記NOX吸蔵還元触媒の各部分毎に推定した前記特定成分吸蔵量のうち特定の部分の前記特定成分吸蔵量に基づいて定まる時間だけNOX吸蔵還元触媒に流入する排気の空燃比を理論空燃比に維持する、内燃機関の排気浄化装置。 - 前記特定の部分は、再生操作実行時に他の部分に較べて吸蔵された前記特定成分が脱離する速度が低い部分である、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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