JP4304597B2 - 多層ポリエステル系フィルム - Google Patents

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Description

本発明はポリエステル系フィルムに関するものである。さらに詳しくは、機械的特性、熱的特性、耐屈曲疲労性、耐破袋性に優れた包装用途に好適な多層ポリエステル系フィルムに関するものである。
従来、包装用分野において、ポリエステルフィルムの代表例である2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは良好な機械的特性及び熱的特性から広く使用されていた。しかしながら、耐衝撃性、耐屈曲疲労性が重要視される用途では、ポリエチレンテレフタレートの強靭さの裏返しである硬さにより上記特性が劣るため、2軸延伸ナイロンフィルムが多用されてきた。しかしながら、ナイロンポリマーの本質的な性質(吸湿率および温度膨張率が大きいという性質)のため、2軸延伸ナイロンフィルムは保管条件によっては寸法変化を起こすことが多く、印刷、製袋等の加工適性が低下するという欠点があった。また、耐ボイル性、耐レトルト性を要求される用途に用いる場合、さらにラミネート用基材、金属または金属酸化物を蒸着する基材として用いられる場合、制約を受けることが多いという欠点があった。
かかる欠点を解消するため、耐衝撃性または耐屈曲疲労性等が改良されたポリエステルフィルムが検討されている。
例えば、線状ポリエステル、該ポリエステルと非相溶のポリエチレン樹脂およびアイオノマー樹脂のブレンドからなるポリエステルフィルムがあるが、アイオノマー樹脂をブレンドした原料を押出機で溶融させメルトラインを通してダイスからキャストした場合、押出機またはメルトラインにポリマーが溶融状態で滞留しやすく、その結果、キャストした樹脂膜にポリマー劣化物、ゲル状物等が発生しやすいという欠点があった(例えば、特許文献1参照)。
かかる欠点を回避するため、炭素数10以上のアルキレン基を有する長鎖脂肪族ジカルボン酸を含有したポリエステルを2軸配向させてヤング率が10〜250kg/mm2で、かつ突刺強度が10kg/mm以上である柔軟性ポリエステルフィルムがある(例えば、特許文献2参照)。
また、アルコール成分としてHO−(CH22n−OH(n:1〜10)から選ばれた2種以上のジオール残基と芳香族ジカルボン酸残基が40〜99モル%、長鎖脂肪族ジカルボン酸残基60〜1モル%よりなる柔軟性ポリエステルフィルムもある(例えば、特許文献3参照)。
しかしながらこれらのポリエステルフィルムは耐衝撃性または耐屈曲疲労性等は満足されるものの、ポリエステルフィルムの特徴である機械的特性(例えば、引張弾性率)が小さいため、フィルムの腰が弱いという欠点があり、さらに内容物を充填後に落袋させた場合または内容物を充填した袋をダンボール箱に詰め輸送を想定した振動を与えた場合に破れることが多く、包装材料の減量化(薄肉化)が強く要望され、かつ耐衝撃性、耐屈曲疲労性、耐破袋性が重要視される昨今の包装用分野において、これらのフィルムは満足されるものではなかった。
特公平6−68065号公報 特公平7−71820号公報 特開平3−231930号公報
本発明は前記従来技術の問題点を解消することを目的とするものである。即ち、機械的特性、寸法安定性及び熱的特性に優れるのみならず、良好な耐衝撃性、耐屈曲疲労性を兼ね備え、包装材料として腰感、耐屈曲疲労性、耐破袋性に優れ、かつ薄肉化対応が可能である多層ポリエステル系フィルムを提供するものである。
すなわち、本発明は、以下の構成を採用するものである。
1.(I)層/(II)層/(I)層の複合構成の多層ポリエステル系フィルムにおいて、(I)層がポリエチレンテレフタレートおよび/または融点が225℃以上でエチレンテレフタレート単位を主体するポリエステルAとブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルBが67〜94/33〜6の質量%で配合されてなり、(II)層がポリエチレンテレフタレートおよび/または融点が225℃以上でエチレンテレフタレート単位を主体するポリエステルAとブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルBとオレフィン系ポリマーとが60〜85/5〜30/3〜20の質量%比で配合されてなり、かつ該オレフィン系ポリマーが200〜2000当量/トンの官能基を有することを特徴とする多層ポリエステル系フィルム。
2.前記1に記載のオレフィン系ポリマーが、1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンおよび1種以上の炭素数2〜6のエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる構成単位とする共重合体、またはそれを含む他のオレフィン系ポリマーとの混合体のいずれかであることを特徴とする多層ポリエステル系フィルム。
3.前記1に記載のオレフィン系ポリマーが、1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンを主たる構成単位とする重合体および1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンとエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる構成単位とする共重合体であることを特徴とする多層ポリエステル系フィルム。
4.前記1〜3のいずれかに記載のオレフィン系ポリマーの分散径が2〜10μmであることを特徴とする多層ポリエステル系フィルム。
5.前記1〜4のいずれかに記載のフィルムの引張弾性率が2500MPa以上であることを特徴とする多層ポリエステル系フィルム。
本発明の多層ポリエステル系フィルムは、機械的特性、寸法安定性及び熱的特性に優れるのみならず、良好な耐衝撃性、耐屈曲疲労性を兼ね備えたフィルムである。このため、包装材料として腰感、耐屈曲疲労性、耐破袋性に優れ、かつ薄肉化対応が可能であり、包装用フィルムとして極めて有用なフィルムである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における多層ポリエステル系フィルムの(I)層および(II)層の構成成分として配合されるポリエステルAは、機械的特性を確保するため、ポリエチレンテレフタレートおよび/または融点が225℃以上でエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであり、エチレンテレフタレート単位は全繰返し単位の60%以上であることが好ましい。エチレンテレフタレート以外の繰返し単位を主成分とするポリエステルを使用した場合、ポリエステル系フィルムの機械的特性が損なわれることが多い。また、融点が225℃未満のエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルを使用した場合、ポリエステル系フィルムが延伸後に寸法安定化のために実施する熱処理工程で破断することが多い。また、(I)層でのポリエステルAの配合比率は67〜94質量%が必要である。ポリエステルAの配合比率が67質量%未満の場合、ポリエステル系フィルムの機械的特性が損なわれることが多い。逆に、94質量%を超える場合、耐破袋性の改良効果が小さいた。また、(II)層でのポリエステルAの配合比率は60〜85質量%が必要である。ポリエステルAの配合比率が60質量%未満の場合、ポリエステル系フィルムの機械的特性が損なわれることが多い。逆に、85質量%を超える場合、耐屈曲疲労性と耐破袋性の改良効果が小さい。
本発明における多層ポリエステル系フィルムの(I)層および(II)層に配合されるポリエステルBは、耐破袋性を確保するため、ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであり、ブチレンテレフタレート単位は全繰返し単位の60%以上であることが好ましい。また、(I)層でのポリエステルBの配合比率は6〜33質量%が必要である。ポリエステルBの配合比率が6質量%未満の場合、ポリエステル系フィルムの耐破袋性が劣る。逆に、33質量%を超える場合、耐破袋性の改良効果が飽和するばかりでなく、ポリエステル系フィルムが延伸後に寸法安定化のために実施する熱処理工程で破断しやすくなり好ましくない。また、(II)層でのポリエステルBの配合比率は5〜30質量%が必要である。ポリエステルBの配合比率が5質量%未満の場合、ポリエステル系フィルムの耐破袋性が劣るため好ましくない。逆に、30質量%を超える場合、耐破袋性の改良効果が飽和するばかりでなく、ポリエステル系フィルムが延伸後に寸法安定化のために実施する熱処理工程で破断しやすくなる。
本発明における多層ポリエステル系フィルムの(I)層および(II)層に配合されるポリエステルAは、機械的特性が損なわれない範囲であれば、テレフタル酸以外の酸成分および/またはエチレングリコール以外のグリコール成分よりなるポリエステルを使用できる。特に、エチレンテレフタレート単位とエチレンイソフタレート単位よりなり、融点が225℃以上のポリエステルは本発明の目的を達成する上で好ましい。また、ポリエステル系フィルムの(I)層および(II)層に配合されるポリエステルBでは、耐破袋性が損なわれない範囲であれば、テレフタル酸以外の酸成分および/またはブタンジオール以外のグリコール成分よりなるポリエステルを使用できる。
テレフタル酸および/またはイソフタル酸以外のジカルボン酸として、オルソフタル酸,ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。また、エチレングリコールおよび/またはブタンジオール以外のグリコール成分として、プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコールが使用できる。
本発明におけるポリエステルAおよび/またはポリエステルBには、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤、無機または有機粒子よりなる滑剤等を配合させてもよい。
本発明におけるポリエステルAおよびポリエステルBの製造方法については特に限定されない。即ち、エステル交換法または直接重合法のいずれの方法で製造されたものであっても使用できる。また、分子量を高めるために固相重合法で製造されたものであってもかまわない。さらに、減圧固相重合法で製造されたオリゴマー含有量が低いポリエステルも使用できる。
本発明のポリエステル系フィルムの(II)層中におけるオレフィン系ポリマーは、200〜2000当量/トン(オレフィン系ポリマー全体の質量1トン中に存在する官能基の当量)の官能基を有することが必要である。官能基濃度が200当量/トン未満の場合、耐屈曲疲労性の改良効果が小さいため好ましくない。逆に、2000当量/トンを超える場合、ポリエステル系フィルムの耐屈曲疲労性の改良効果が飽和するばかりでなく、ポリエステル系フィルムの機械的特性が損なわれることが多く、さらに、溶融押出し工程での熱安定性の低下による製膜性の低下を招くことが多くなる。
本発明におけるポリエステル系フィルムの構成成分として配合することができるオレフィン系ポリマーは、1種又は2種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンおよび1種又は2種以上の炭素数2〜6のエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる構成単位とする共重合体やそれを含む他のオレフィン系ポリマーとの混合体であることが好ましい。共重合体中の前記構成単位は60%以上であることが好ましい。
本発明におけるオレフィン系ポリマーの主要な例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−メタアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。
本発明におけるオレフィン系ポリマーの官能基としては、極性を有し、ブレンドするポリエステル樹脂との親和性を高める効果のある官能基であればよく、例えば、カルボキシル基、グリシジル基、酸無水物基やそれらのエステル等があげられる。
本発明の目的とする効果を得るために好適な樹脂や樹脂組成物の例として、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンと官能基含有ビニルモノマーの共重合体やその樹脂組成物を例示することができる。具体的には各種製法及び触媒により製造されたエチレン−(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸系共重合体が挙げられる。
但し、官能基を有するビニルモノマーの共重合体としてα,β−不飽和カルボン酸のカルボン酸基の一部または全部をNa、K、Li、Zn、Mg、Ca等の金属イオンで中和したアイオノマーを用いる場合は、溶融押出し工程で金属粒子を核とする異物が発生しやすいため、金属イオン量がオレフィン系ポリマーの総量に対して200ppmを超えないようにすることが好ましい。
また、本発明のより良い効果を得るために、さらに好適なオレフィン系ポリマーの例として、架橋構造および/または枝分かれ構造を形成し得るモノマー成分を各々5%未満の範囲で有するポリマーを例示することができる。このようなモノマーとしては、2つ以上の付加重合性の反応基をもつ不飽和モノマーが挙げられる。
架橋結合性モノマーの例としては、ブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。これらの中でブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレートが好ましく使用できる。
グラフト結合(枝分かれ)性モノマーの例としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸モノアリル、フマル酸モノアリル、イタコン酸モノアリル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。これらの中でアリルメタクリレート、ジアリルメタクリレートが好ましく使用できる。
本発明における(II)層中に存在するオレフィン系ポリマーの分散径が2〜10μmの範囲であることが好ましい。オレフィン系ポリマーの分散径が2μm未満の場合、オレフィン系ポリマーの一部がポリエステルに見かけ上均一に溶解した状態となり、耐屈曲疲労性の改良効果が小さくなることがある。逆に、10μmを超える場合、オレフィン系ポリマーとポリエステルとの界面での相互作用が小さくなり、ポリエステル系フィルムの耐屈曲疲労性の改良効果が発現しにくくなることがある。
本発明における(II)層中にオレフィン系ポリマーが島状に分散し、オレフィン系ポリマーの分散径が上記範囲となるオレフィン系ポリマーの選択例の一つとして、官能基を含有しないポリオレフィンと、官能基を有するポリオレフィンを含む2種類以上のオレフィン系ポリマーの併用が挙げられる。かかる構成からなるポリオレフィン群をポリエステルにブレンドすることにより、中心層(核)がポリオレフィン、表層(殻)が官能基含有ポリオレフィンからなるコア/シェル構造のオレフィン分散粒子が生成し、効果的に微分散されると考えられる。具体的な例として、ポリエチレンとエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の併用、エチレン−α−オレフィン共重合体とエチレン−α−オレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体の併用が挙げられる。
本発明の(II)層におけるオレフィン系ポリマーの配合量は、(II)層用樹脂組成物に対して1〜20質量%であることが必要である。オレフィン系ポリマーが1質量%未満の場合、ポリエステル系フィルムの耐屈曲疲労性の改良効果が小さい。逆に、オレフィン系ポリマーが20質量%を超える場合、ポリエステル系フィルムの機械的特性が損なわれることが多い。
本発明において、ポリエステル樹脂にオレフィン系ポリマーを配合する方法は、公知の樹脂混合方法を広く用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂とオレフィン系ポリマーをブレンダー等で均一にドライブレンドする方法、ドライブレンドした混合物を1軸または2軸押出機等で溶融混練してポリマーを得る方法等が挙げられる。
本発明では、(I)層を構成するポリエステルを公知の1軸または2軸押出機内で溶融させ、(II)層を構成するポリエステルとオレフィン系ポリマーの混合物を公知の1軸または2軸押出機内で溶融させた後、T−ダイスの内部または外部で(I)層/(II)層/(I)層に結合させ、T−ダイスから(I)層/(II)層/(I)層構成の溶融樹脂を回転させた冷却ロールに接触させ樹脂膜を得ることができる。溶融樹脂を冷却ロールに接触させる際、強制的にエアーを吹き付ける方法または静電気で密着させる方法を採用することが好ましい。さらに、溶融樹脂が冷却ロールに接触する際、反対側を減圧して随伴流を低減させる方策(例えば、バキュームチャンバー、バキュームボックス等の装置)を併用することがより好ましい。
本発明では、冷却固化させた樹脂膜をポリエステルのガラス転移点以上の温度で少なくとも1軸方向に2倍以上延伸した後、緊張下でポリエステルAの融点−60℃からポリエステルAの融点−10℃までの間の温度で1〜20秒間熱処理し、次いで必要に応じて加熱下で緩和処理を実施し、次いで両端部を切断除去し、さらに必要に応じてコロナ処理等の表面処理を実施した後巻取って、ポリエステル系フィルムを得る。なお、延伸方法はロール法による縦1軸延伸、テンター法による横1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸(チューブラー法、テンター法)等の公知の方法が使用できる。
以下、実施例をもとに本発明をさらに詳細に説明する。
[評価方法]
(1)ポリエステルの融点
ポリエステル組成物を300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して
得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とした。
(2)オレフィン系ポリマーの官能基濃度
オレフィン系ポリマーをクロロホルム−d/トリフロロ酢酸の混合溶媒に溶解し、H−NMRスペクトル分析によりオレフィン系ポリマーの分子構造及び官能基濃度(モル%)を求め、これを質量換算し、オレフィン系ポリマー1トン当りの官能基含有量(当量)を算出して官能基濃度とした。
(3)オレフィン系ポリマーの平均分散径
ポリエステル樹脂とオレフィン系ポリマーを押出機で溶融混練し、Tダイより層状に押出したシートを延伸して得られたフィルムを、エポキシ樹脂に包埋して硬化させたものをクライオミクロトームにて各延伸方向と平行となる断面で切開し、超薄切片を作製した。これを酸化ルテニウムで染色したのち室温で10分間保持し、次いでカーボン蒸着して透過型電子顕微鏡で観察した。オレフィン系ポリマーの平均分散径は画像解析装置(東洋紡績製、V10)を用いて長径の加重平均から求めた。
(4)引張弾性率
JIS K 7127に準じて評価した。
(5)耐屈曲疲労性(屈曲ピンホール数)
ポリエステル系フィルムから直径150mmの円形状に切取った試料フィルムの中に空気を入れて風船型の袋状にし、屈曲機のガラス管の先端に装着した。屈曲機で圧空(加圧70kPa)の送気と排気(減圧1000hPa)を交互に行い、23℃、65%RH下で7.5回/分の速度で風船型の袋状フィルムに膨張と収縮を5000回繰り返し屈曲疲労を与えた。5000回屈曲疲労後に発生した孔の数を目視により、n数=3で測定した。孔の数の最小値と最大値をもって屈曲ピンホール数評価とした。
(6)耐破袋性
ポリエステル系フィルムとシーラントフィルム(東洋紡績社製:L4104、厚み40μm)をポリエステル系接着剤(東洋モートン社製:TM590[主剤]、CAT56[硬化剤])を用いてドライラミネートして得たラミネートフィルムより14cm×14cmのラミネートサンプルを切り出した。次いで、160℃×2kg/cm2G×2秒の条件で三方シール(シール巾:1cm)した後、200gの水を詰め、残る一方をシールして水充填袋を作製した。この水充填袋中の残存空気を注射器で除去して(注射針痕をエステルテープで密封して)、評価用袋を作製した。
評価用袋を1.4mの高さから防塵塗装を施したコンクリート上に繰り返し水平落下させ、評価用袋が破れるまでの回数を測定し(n数=3)、○を実用性ありと評価した。
○:落下回数30回で破袋なし
× :落下回数10回までに破袋
(7)極限粘度(IV)
オルトクロルフェノール中25℃で測定した値(dl/g)である。
[実施例・比較例に用いたポリエステルの略号と内容]
・PET:ポリエチレンテレフタレート(IV:0.75、融点254℃)
・PET−I(5):ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(エチレ
ンイソフタレートの繰り返し単位5モル%、IV:0.80、融点242℃)
・PET−I(15):ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(エチ
レンイソフタレートの繰り返し単位15モル%、IV:0.79、融点21
5℃)
・PBT:ポリブチレンテレフタレート(IV:1.2、融点224℃)
・PTIAB:テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸[モル%比:65
/25/10]とブタンジオール[100モル%]との共重合体(IV:0.
75、融点166℃)
[実施例・比較例に用いたオレフィン系ポリマーの略号と内容]
・低密度ポリエチレン[LDPE]:(住友化学社製、スミカセンG401:商品 名)、官能基量:0当量/トン。
・エチレン−アクリル酸共重合体[EAA]:(ダウ・ケミカル社製、プリマ
コール3440:商品名)、官能基量:1389当量/トン。
・エチレン−メチルアクリレート共重合体[EMA](イーストマンケミカ
ル社製、EMAC2260:商品名)、官能基量:2790当量/トン。
・エチレン−メタクリル酸共重合体[EMAA](三井デュポンポリケミカ
ル社製、ニュクレルN1108C:商品名)、官能基量:2246当量/トン。
・エチレン−エチルアクリレート共重合体[EEA](三井デュポンポリケ
ミカル社製、エバフレックスA712:商品名)、官能基量:1300当量/ト ン。
・エチレン−1−ブテン共重合体[EBM](日本合成ゴム社製、EBM2
041P:商品名)、官能基量:0当量/トン。
・スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体[SEBS、
S/EB比=30/70](旭化成社製、タフテックM1913:商品名)官能 基量:0当量/トン。
・アイオノマー(三井デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1706:商品名)
[実施例 1]
2軸ベント式押出機を用いてPET/PBT/LDPE/EAA=68.0/20.0/6.0/6.0の質量%比の樹脂混合物を270℃でストランド状に溶融押出し、水中で冷却後切断してポリエステル系樹脂組成物を得た。次いで、2軸ベント式押出機を用いて(I)層原料であるPET/PBT=80.0/20.0の質量%比の樹脂混合物と(II)層原料である上記ポリエステル系樹脂組成物をそれぞれ270℃で溶融させた後、270℃のT−ダイス内部で(I)層/(II)層/(I)層の順の3層になるように結合させ、T−ダイスから層状にキャストし、正電荷を印加しながら回転させた25℃の冷却ロールに密着させて3層からなる樹脂膜を得た。次いで、110℃で縦方向に3.3倍ロール延伸し、次いで、テンターに通して110℃で横方向に3.6倍延伸し、228℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間の緩和処理(横方向に5%)を実施した後、両端部を切断除去して厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)の多層ポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[実施例 2]
(II)層原料をPET/PBT/EAA=68.0/20.0/12.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[実施例 3]
(II)層原料をPET/PBT/LDPE/EAA=68.0/20.0/9.6/2.4の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[実施例 4]
(I)層原料をPET−I(5)/PBT=80/20質量%とし、(II)層原料をPET−I(5)/PBT/LDPE/EAA=68.0/20.0/6.0/6.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[実施例 5]
(II)層原料をPET/PTIAB/LDPE/EAA=78.0/10.0/6.0/6.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[実施例 6]
(II)層原料をPET/PBT/EBM/EAA=68.0/20.0/6.0/6.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[実施例 7]
(II)層原料をPET/PBT/LDPE/EMAA=68.0/20.0/6.0/6.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[実施例 8]
(II)層原料をPET/PBT/LDPE/EEA=68.0/20.0/6.0/6.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表1に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表3に示した。
本実施例のポリエステル系フィルムは、引張弾性率が大きいため腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れていた。
[比較例 1]
(II)層原料をPET/PBT=80.0/20.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表2に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表4に示した。
このポリエステル系フィルムは耐屈曲疲労性が劣るため好ましくない。
[比較例 2]
(I)層原料をPET単体とし、(II)層原料をPET/LDPE/EAA=88.0/6.0/6.0の質量%比とし、押出温度,T−ダイス温度を280℃とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表2に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表4に示した。
このポリエステル系フィルムは耐破袋性が劣るため好ましくない。
[比較例 3]
(I)層原料をPET/PBT=45.5/54.5の質量%比とし、(II)層原料をPET/PBT/LDPE/EAA=40.0/48.0/6.0/6.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして製膜しようとしたが、延伸後の熱処理工程で破断が発生したためポリエステル系フィルムが得られなかった。
[比較例 4]
(II)層原料をPET/PBT/LDPE/EAA=58.0/17.0/12.5/12.5の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表2に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表4に示した。
このポリエステル系フィルムは引張弾性率が小さく腰感がやや劣るため好ましくない。
[比較例 5]
(II)層原料をPET/PBT/LDPE=68.0/20.0/12.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表2に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表4に示した。
このポリエステル系フィルムは耐屈曲疲労性が劣るため好ましくない。
[比較例 6]
(II)層原料をPET/PBT/EMA=68.0/20.0/12.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表2に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表4に示した。しかし、この方法では押出機及びT−ダイス出口からの熱分解性ガスの発生が大きく、かつ冷却ロールでの低分子量物の付着が多いため好ましくない。
このポリエステル系フィルムは引張弾性率が小さく腰感がやや劣るため好ましくない。
[比較例 7]
(II)層原料をPET/PBT/SEBS=68.0/20.0/12.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして厚みが12μm((I)層厚み:3μm、(II)層厚み:6μm)のポリエステル系フィルムを得た。(I)層および(II)層の原料組成を表2に、得られた多層ポリエステル系フィルムの評価結果を表4に示した。しかし、この方法では押出機及びT−ダイス出口からの熱分解性ガスの発生が大きく、かつ冷却ロールでの低分子量物の付着が多いため好ましくない。
このポリエステル系フィルムは引張弾性率が小さく腰感がやや劣るため好ましくない。
[比較例 8]
(I)層原料をPET−I(15)/PBT=80/20の質量%比とし、(II)層原料をPET−I(15)/PBT/LDPE/EAA=68.0/20.0/6.0/6.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして製膜しようとしたが、横延伸後半から熱処理工程で破断が発生したためポリエステル系フィルムが得られなかった。
[比較例 9]
(II)層原料をPET/PBT/アイオノマー=68.0/20.0/12.0の質量%比とした以外は実施例1同様にして製膜しようとしたが、冷却ロールに密着させて得た樹脂膜にゲル状物が発生し、横延伸時にゲル状物を起点とした破断が発生したためポリエステル系フィルムが得られなかった。
Figure 0004304597
Figure 0004304597
Figure 0004304597
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本発明の多層ポリエステル系フィルムは、従来の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに近い良好な機械的特性、寸法安定性及び熱的特性を有し、かつ従来の2軸延伸ナイロンフィルムに近い良好な耐衝撃性、耐屈曲疲労性を兼ね備えたフィルムであり、腰感に優れ、かつ耐屈曲疲労性と耐破袋性に優れているため、包装材料の減量化(薄肉化)が強く要望され、かつ耐衝撃性、耐屈曲疲労性、耐破袋性が重要視される昨今の包装用分野における包装用フィルムとして極めて有用なフィルムである。

Claims (2)

  1. (I)層/(II)層/(I)層の複合構成の多層ポリエステル系フィルムにおいて、(I)層がポリエチレンテレフタレートおよび/または融点が225℃以上でエチレンテレフタレート単位を主体するポリエステルAとブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルBが67〜94/33〜6の質量%で配合されてなり、(II)層がポリエチレンテレフタレートおよび/または融点が225℃以上でエチレンテレフタレート単位を主体するポリエステルAとブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルBとオレフィン系ポリマーとが60〜85/5〜30/3〜20の質量%比で配合されてなり、(II)層中にオレフィン系ポリマーが島状に分散し、オレフィン系ポリマーの分散径が2〜10μmであり、オレフィン系ポリマーとしてポリエチレンと官能基が200〜2000当量/トンのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の併用、200〜2000当量/トンの官能基エチレン−α−オレフィン共重合体と200〜2000当量/トンのチレン−α−オレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体の併用されており、延伸後、ポリエステルAの融点−60℃からポリエステルAの融点−10℃までの間の温度熱処理されていることを特徴とする二軸延伸多層ポリエステル系フィルム。
  2. 請求項1に記載のフィルムの引張弾性率が2500MPa以上であることを特徴とする多層ポリエステル系フィルム。
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