JP4303763B2 - 情報記録方法、情報記録媒体及び情報記録装置 - Google Patents

情報記録方法、情報記録媒体及び情報記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、レーザービームの照射により情報の記録が可能な情報記録方法に関する。より詳しくは、高速記録におけるオーバーライト特性、特に、高温の環境に媒体を一定時間保存したのち情報を重ね書きするアーカイバルオーバーライト特性を改善し得る情報記録方法に係る。
近年、DVD−ROM、DVD−Video等の再生専用型光ディスク市場が拡大している。また、DVD−RAMやDVD−RW、DVD+RWといった書き換え可能なDVDが市場投入され、コンピュータ用バックアップ媒体、VTRに代わる映像記録媒体として、市場が拡大しつつある。さらに、ここ数年、記録型DVDにおける転送レート、アクセススピード向上に対する市場の要求が増大してきている。
DVD−RAM、DVD−RW等の記録消去可能な記録型DVD媒体では、相変化記録方式が採用されている。相変化記録方式では、基本的に「0」と「1」の情報を結晶とアモルファスに対応させて記録を行なっている。この結晶化した部分とアモルファス化した部分にレーザービームを照射し、反射光を再生させることにより、記録された「0」と「1」を検出できる。
所定の位置をアモルファスにするためには、比較的高いパワーのレーザービームを照射することにより、記録層の温度が記録層材料の融点以上になるように加熱する。また、所定の位置を結晶にするためには、比較的低いパワーのレーザービームを照射することにより、記録層の温度が記録層材料の融点以下の結晶化温度付近になるように加熱する。こうすることにより、アモルファス状態と結晶状態を可逆的に変化させることができる。通常の記録型DVD媒体において、オーバーライトを行なう際には、記録レーザーパワーとそれよりも低い消去レーザーパワーの間で記録パルスの変調を行ない、既に記録されているアモルファスのマークを消去しながら新しい記録を行なう。
良好なオーバーライト特性を実現する光記録媒体として、例えば、特許文献1に記載されているように、記録パワーレベルが最適記録パワー以下の値であってかつ消去パワーレベルが最適消去パワーより高い値であるパワーでオーバーライトすることを特徴とする光記録媒体が知られている。
消去パワーの最適化方法に関して、DVD−RAMの2倍速記録(記録速度8.2m/sec、転送レート22Mbps)のドライブを例にとると、ディスクに書かれている記録パワーの情報を用いて、データの試し書きを行ない、消去パワーを求めている。このとき、エラーレートの閾値を超える低パワー側と高パワー側の消去パワーの値を求め、最適な消去パワーをちょうど両者の中心となるように設定する。
特開平08−007343号公報
このような記録型DVD媒体において転送レート、アクセススピードを向上するためには、記録速度を高めて、短時間で記録消去を行なうことが必要である。しかしながら、高速記録を行なうにあたり問題となるのが、媒体に情報をオーバーライトする際の記録消去特性である。高速記録を行なう場合、レーザービームが、情報を記録したアモルファス状態のマーク位置を通過する時間が短くなり、さらに、結晶化温度に保持される時間も短くなる。結晶化温度に保持される時間が短すぎると、十分な結晶成長することができないため、上記従来技術では、高速記録を行なうとオーバーライト特性が劣化してしまう。本発明者らがさらに検討した結果、高速記録を行なった媒体を、高温の環境に一定時間保存したのち、常温にとりだして重ね書きを行なった場合に、著しくオーバーライト特性が劣化することが分かった。本発明では、この高温の環境に媒体を一定時間保存したのち情報を重ね書きする際の特性を、通常のオーバーライト特性と特に区別し、アーカイバルオーバーライト特性と呼ぶ。
上述した特許文献1の技術は、初期化処理を高速化したときの結晶化むらによるオーバーライト特性の劣化を改善するものであり、実施例における記録速度も7.5m/secと現行のDVD−RAMの2倍速記録である8.2m/sec以下であり、特に8.0m/secを超えるような高速記録における問題、さらには、アーカイバルオーバーライト特性の問題を考慮した解決策ではない。また、消去パワーの範囲も最適消去パワーより高くかつ記録層が溶融しない最大パワーより低いとしか記載されておらず、この方法では高速記録を行なった場合に、隣接トラックの記録によりマークが消去されてしまう、あるいは、隣接トラックからの再生信号の漏れこみが発生しやすくなるという問題が発生する場合があることが分った。
したがって、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、高速記録におけるオーバーライト特性、特に、高温の環境に媒体を一定時間保存したのち情報を重ね書きするアーカイバルオーバーライト特性を改善し得る情報記録方法を提供することにある。
本発明は、情報記録媒体に、記録パワーレベルと消去パワーレベルにパワー変調された光を照射して情報を記録する方法であって:
予め定められた記録パワーと種々の消去パワーの光で、ランダムパターンを情報記録媒体にオーバーライトし;
オーバーライトしたランダムパターンを再生して、再生ジッターまたは再生エラーが所定の閾値を超えるパターンを消去したときの消去パワーの最小値Pb1及び最大値Pb2を求め;
求めた最小値Pb1及び最大値Pb2と、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2で表される関係式から、記録を行なうための最適な消去パワーPbを求め;
求めた最適な消去パワーPbを用いて情報を記録することとを備え、情報が異なる記録速度で記録されるときに、記録速度に応じてαが0<α≦0.50の範囲で異なり且つ記録速度が大きくなるほどαが小さくなり、
更に、前記マーク部の前後のスペース長に応じて、前記マルチパスの先頭パルス幅Tfpと最後尾のパルス幅Tlpを変化させることを特徴とする情報記録方法が提供される。
本発明の情報記録方法は、さらに、求めた最適な消去パワーPbを用いて最適記録パワーPpを決定することを含み得る。また、情報記録媒体に上記αの値が予め記録されており、情報記録の際に、情報記録媒体から上記αの値が読み出され得る。再生パワーをPrとしたときに、Pr<Pb1<Pb及びPb<Pb2<Ppが満たされ得る。本発明の記録方法において情報が異なる記録速度で記録されるときに、記録速度に応じてαがα≦0.50の範囲で異なる。
本願明細書記載の情報記録媒体は、情報が記録及び再生される情報記録媒体であって、
記録パワーPp及び記録パワーPpよりも低い消去パワーPbを有する光ビームが照射されて情報が記録され、消去パワーPbより低い再生パワーPrの光ビームが照射されて情報の再生が行なわれる情報記録部と;
コントロールデータ部と;を備え、
コントロールデータ部に、Pr<Pb1<Pbを満たす最低消去パワーPb1と、Pb<Pb2<Ppを満たす最高消去パワーPb2とから、最適な消去パワーPbを求めるための情報が予め記録されていることを特徴とする情報記録媒体である
本願明細書記載の情報記録装置は、情報記録媒体に、記録パワーレベルと消去パワーレベルにパワー変調された光を照射して情報を記録する情報記録装置であって:
情報記録媒体に光を照射する光ヘッドと;
光ヘッドから記録パワーレベルと消去パワーレベルにパワー変調された光を出力するように光ヘッドを駆動するドライバと;
予め定められた記録パワーと種々の消去パワーの光でオーバーライトされたランダムパターンを再生して、再生ジッターまたは再生エラーが所定の閾値を越えるパターンを消去したときの消去パワーの最小値Pb1及び最大値Pb2を求め、情報記録媒体に予め記録された、式Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2で使われる係数αを読み出し、求めた最小値Pb1及び最大値Pb2と読み出した係数αから、記録を行なうときの最適な消去パワーPbを求めるPb算出制御部と;を備える情報記録装置である
本発明者らは、高速記録における従来技術の問題点を改善すべく、高速記録におけるアーカイバルオーバーライト特性の劣化を以下のように考えた。図1に示すように、レーザービームの通過位置と情報記録媒体上に記録されるマークの形状の位置関係から分るように、レーザービーム通過位置の中心付近のマークの領域Aと、レーザービームの中心から離れた場所のマークの領域Bとでは、記録の高速化によって、レーザービームの通過に伴う温度履歴が異なると考えられる。
まず、最初に、データの記録工程について考える。図2に、記録パワーが照射された場合の、領域Aおよび領域Bの時間に対する温度履歴の模式図を示す。レーザービーム通過の中心付近のマーク領域Aにおける温度履歴は、融点を超えた後、緩やかに、結晶成長温度から結晶核生成温度、室温へと下がる。これに対し、レーザービーム通過の中心付近から離れた領域Bにおける温度履歴は、領域Aの温度履歴と比較し、特に結晶核生成の時間が短くなると考える。オーバーライトを行なう際には、一度、アモルファスの状態から結晶の状態にマークを消去したのち、アモルファス状態のマーク記録を行なう。領域Bでは、領域Aと比較してアモルファス中の結晶核が少ないために、結晶状態に戻す消去が促進されず、その結果、全体のマークのオーバーライト特性が悪くなると考える。つまり、高速記録になればなるほど、領域Aと領域Bの温度履歴に差が生じ、かつ、領域Bの結晶核生成が少なくなるために、特に、高温の環境に媒体を一定時間保存したのち情報を重ね書きするアーカイバルオーバーライト特性が悪くなると考えられる。
次に、データの消去工程について考える。図3に、消去パワーが照射された場合の、領域Aおよび領域Bの時間に対する温度履歴の模式図を示す。レーザービーム通過の中心付近のマーク領域Aにおける温度履歴は、結晶化温度に一定時間保持された後、徐々に室温へと下がる。これに対し、レーザービーム通過の中心付近から離れた領域Bにおける温度履歴は、領域Aの温度履歴と比較し、結晶化温度に保たれる時間が短くなると考える。その結果、領域Bでは領域Aと比較し、アモルファス状態から結晶化状態に戻すデータの消去が十分に行なわれず、特に、高温の環境に媒体を一定時間保存したのち情報を重ね書きする際に、全体のマークのアーカイバルオーバーライト特性が悪くなると考える。すなわち、上記データの記録過程における結晶核生成の減少、および、消去過程における結晶化の不充分が、記録の高速化に伴ってアーカイバルオーバーライト特性が悪くなる現象の原因と考えられる。
本発明者らは、上記知見に基づいて、本発明の情報記録方法を完成した。本発明の情報記録方法を用いれば、情報記録装置が、情報記録に先立ってレーザーパワー設定のための試し書きを行なう際に、情報記録媒体にとって、アーカイバルオーバーライト性能が最良となる消去レーザーパワーレベルPbを設定することが可能となる。
例えば、通常、光ディスクドライブのような情報記録装置では、光ディスクに情報記録を行なう前に、最適なPp、Pbを求めるため、試し書きを行なう。この際、光ディスクドライブでは、レーザーパワーを変化させながら、情報の記録を行ない(オーバーライト)、このときに記録された情報のエラー数を測定する。例えば、最適な消去パワーレベルPbを決定する際には、上記エラー数が一定の基準以上となる最低消去パワーレベルPb1と、最高消去パワーレベルPb2を測定し、その中間のパワーレベルをPbとする。発明者らは、このようにして、決定された消去パワーレベルはアーカイバルオーバーライト性能にとっては、必ずしも、最適な消去パワーレベルではないことを明らかにした。あらかじめ、Pb1、Pb2と最適な消去パワーレベルPbの関係、特に、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2における係数αを情報記録媒体上に記録しておくことにより、長期間保存後においても、記録性能が劣化が少ない情報記録媒体が提供される。また、そのような情報記録媒体からPb=α×Pb1+(1−α)×Pb2における係数αの値を読み出して、最適な消去パワーレベルPbを決定し、記録速度ごとに好適な消去パワーレベルPbを用いて記録を実行することができる記録方法が提供される。Pb2の物理的な意味は、結晶状態からアモルファス状態に変化し始めるレーザーパワーレベルであり、Pb1はアモルファス状態から結晶状態に変化し始めるレーザーパワーレベルである。Pb1、Pb2を、例えば、再生信号のジッターレベルを閾値としたパワーレベルによって、定義することもできるし、先に説明したように、情報のエラー数を閾値にして定義することもできる。いずれにしても、上記αの値が記録されている情報記録媒体から再生された情報により、アーカイバルオーバーライト特性が最良となる消去レーザーパワーレベルPbを、Pb1とPb2の値を用いて設定することができ、アーカイバルオーバーライト特性を改善することが可能となる。
本願明細書記載の情報記録媒体において、上記PbとPb1とPb2の関係に関する情報が、記録速度に関する情報とともに記録されている情報記録媒体を用いれば、CAV(Constant Angular Velocity)方式の情報記録装置のように、記録半径毎に記録速度が変わる場合、各記録速度に応じてアーカイバルオーバーライト特性が最良となる消去パワーを、設定することができ、アーカイバルオーバーライト特性を改善することが可能となる。
また、本願明細書記載の情報記録媒体において、上記PbとPb1とPb2の関係に関する情報が、PbをPb1とPb2との比率αを用いて、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2で定義され得る。この情報記録媒体を用いれば、現在市販されているDVD−RAMの2倍速記録(記録速度8.2m/sec、転送レート22Mbps)のドライブで消去パワーの最適化を行なう際に用いている消去パワーのマージン曲線をもとにして、アーカイバルオーバーライト特性を最良にする最適な消去パワーを各々の記録速度毎に設定することが可能となり、記録速度によるアーカイバルオーバーライト特性のばらつきがなくなり、特にドライブの複雑な設計変更も必要でないことから、記録速度の高速化におけるドライブの下位互換を保証することが可能となる。
また、本願明細書記載の情報記録媒体において、αの値がα≦0.50であれば、消去パワーPbの値を0.50×Pb1+0.50×Pb2以上の値に設定することで、高速オーバーライトの消去時のレーザーエネルギーを高め、結晶化温度以上に保つ時間を相対的に長くし、さらには、アモルファス状態から結晶化状態に戻すデータの消去を十分に行なうことで、高速記録時のアーカイバルオーバーライト特性を改善することが可能となる。特に、αの値が0.25≦α≦0.50であれば、Pbの値を0.50×Pb1+0.50×Pb2以上、0.25×Pb1+0.75×Pb2以下に設定することで、記録マークサイズが大きくなることによって起こる隣接トラックのマーク信号の消去を抑えることができる。また、異なる情報記録装置で記録した場合に、記録パワーが異なることを想定したオーバーライト特性であるクロスパワーオーバーライト特性も良好な値に保つことができる。ここで、クロスパワーオーバーライト特性とは、最適な記録パワーを100%とした時に、105%のパワーで記録したのちに、90%の記録パワーでオーバーライトした時の特性である。
また本願明細書記載の情報記録媒体を用いれば、記録の線速度が9m/sec以上のような高速記録が可能であり、データ記録時の結晶核の生成およびデータ消去時の結晶化時間の保持が促進され、高速記録時のアーカイバルオーバーライト特性を改善することが可能となる。
また、本願明細書記載の情報記録媒体を用いて情報の記録を行なう情報記録装置を用いることで、同じ情報記録媒体を用いて、記録速度が異なる複数の情報記録装置により記録を行なう場合において、あらかじめ情報記録媒体に記載されている記録速度と消去パワーの情報を、情報記録装置が読み出し、情報の記録を行なうことで、情報記録装置の記録互換を得ることができる。
本発明の情報記録方法を用いれば、記録速度に応じて最適化された消去パワーで記録を行うことができ、しかもアーカイバルオーバーライト特性が最良となる。本願明細書記載の情報記録装置は、最適化された消去パワーに関する情報を情報記録媒体から読み出して、最適化された消去パワーで記録を実行することが可能となる。
以下、本発明者らが行なった実験の結果をもとに本発明の実施例を説明する。
情報記録媒体として、4.7GBDVD−RAMのフォーマットを基準とする、トラックピッチ1.2μm、溝深さ63nmの凹凸の案内溝で表面が覆われている半径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板の上に、スパッタリングプロセスにより、第1保護層としてZnS−SiOを100nm、第1界面層としてGeCrNを10nm、記録層としてBiGeTeを10nm、第2界面層としてGeCrNを10nm、第2保護層としてZnS−SiOを50nm、熱吸収率補正層層としてGeCrを50nm、熱拡散層としてAlを120nm、順次成膜し、実施例に使用した情報記録媒体を得た。
この情報記録媒体を、レーザー初期化装置を用いて結晶化させた後、記録再生特性を調べるにあたり、図4示す光記録媒体情報記録再生装置を用いた。
以下に本実施例で用いた光記録媒体情報記録再生装置の動作、記録再生過程を説明する。まず、記録装置外部からの情報は8ビットを1単位として、8−16変調器47に伝送される。情報記録媒体41に情報を記録する際には、情報8ビットを16ビットに変換する変調方式、いわゆる8−16変調方式を使う。この変調方式では情報記録媒体上に、8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報の記録を行なっている。図中8−16変調器47はこの変調を行なっている。なお、ここでTとは情報記録時のデータのクロック長を表しており、本実施例では、記録の線速度8.2m/secのときに17.1ns、16.4m/secのときに8.6ns、24.6m/secのときに5.7nsとした。
8−16変調器47により変換された3T〜14Tのデジタル信号は、記録波形発生回路45に転送され、記録パワーである第1のパワーレベルPpのパワーのパルスの幅を約T/2とし、Ppのレーザー照射時間に幅が約T/2の、第1のパワーレベルPpと消去パワーである第2のパワーレベルPbのパワーのレーザー照射を行ない、上記一連のPpレベルのパルス間にパワーレベルPbのレーザー照射が行なわれるマルチパルス記録波形が生成される。また、上記記録波形発生回路45内において、3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させ、「0」の場合にはPbのパワーレベルのレーザーパワー、「1」の場合にはPbのパワーレベルのレーザーパワーを照射している。この際、情報記録媒体41上のPbのパワーレベルのレーザービームが照射された部位は結晶となり、Ppのパワーレベルのパルスを含む一連のパルス列で照射された部位はアモルファス(マーク部)に変化する。また、上記記録波形発生回路45は、マーク部を形成するためのPpのパワーレベルのパルスを含む一連のパルス列を形成する際に、マーク部の前後のスペース長に応じて、図5に示すようなマルチパルス波形の先頭パルスの幅Tfpと最後尾のパルス幅Tlpを変化させる方式(適応型記録波形制御)に対応したマルチパルス波形テーブルを有しており、これによりマーク間に発生するマーク間熱干渉の影響を極力排除できるマルチパルス記録波形を発生している。
記録波形発生回路45により生成された記録波形は、レーザー駆動回路(ドライバ)46に転送され、レーザー駆動回路46はこの記録波形をもとに、光ヘッド43内の半導体レーザーを発光させる。本光記録媒体情報記録再生装置に搭載された光ヘッド43は、情報記録用のレーザービームとして、波長655nmの半導体レーザーが使用されている。また、このレーザー光をNA0.6の対物レンズにより上記情報記録媒体41の記録層上に絞込み、上記記録波形に対応したレーザーのレーザービームを照射することにより記録を行なった。
また、本光記録媒体情報記録再生装置は、グルーブとランド(グルーブ間の領域)の両方に情報を記録する方式(いわゆるランドグルーブ記録方式)に対応している。本光記録媒体情報記録再生装置ではL/Gサーボ回路48により、ランドとグルーブに対するトラッキングを任意に選択することができる。記録された情報の再生も上記光ヘッド43を用いて行なった。レーザービームを記録されたマーク上に照射し、マークとマーク以外の部分からの反射光を検出することにより、再生信号を得る。この再生信号の振幅をプリアンプ回路44により増大させ、8−16復調器49に転送する。8−16復調器49では16ビットごとに8ビットの情報に変換する。以上の動作により、記録されたマークの再生が完了する。以上の条件で上記光情報記録媒体41に記録を行なった場合、最短マークである3Tマークのマーク長は約0.42μm、最長マークである14Tマークのマーク長は約1.96μmとなる。
ジッタの評価を行なう際には、3T〜14Tを含むランダムパターンの信号の記録再生を行ない、再生信号に波形等価、2値化、PLL(Phase Locked Loop)処理を行ない、ジッタを測定した。なお、信号の再生は、記録速度によらず、線速度8.2m/secで一定とした。
特性の評価に関し、以下に示すアーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタの測定を行なった。
まず、アーカイバルオーバーライトジッタとして、トラックにランダムパターンを10回記録した後に、加速試験として、90℃30%R.H.環境に20時間保存したのち、室温に戻し、ランダムパターンを上書きして、再生のレーザーパワーPrを1.0mWに設定し、ジッタを測定した。本発明者らが検討した結果、アーカイバルオーバーライトジッタの上昇は、90℃30%R.H.環境に20時間保存することでほぼ飽和することから、本環境で特性を保証できれば、室温で10年相当のオーバーライト特性を保証できると考える。本実施例では、アーカイバルオーバーライトジッタとして、2〜6倍速記録である線速度8.2〜24.6m/sec、クロック長17.1〜5.7ns、データ転送レート22〜66Mbpsで記録を行なったときのジッタの目標値を10%以下、規格上限値として11%以下に設定している。ここで規格上限値とは、実際にドライブで問題なく使用することのできる特性の上限値を示している。
また、クロスパワーオーバーライトジッタとして、トラックにランダムパターンを10回最適レーザーパワーで記録した後に、最適レーザーパワーの105%のパワーで1回オーバーライトし、さらに最適レーザーパワーの90%のパワーでその上に1回オーバーライトして、再生のレーザーパワーPrを1.0mWに設定し、ジッタを測定した。クロスパワーオーバーライトジッタは、異なるドライブで異なる記録パワーで重ね書きしたときのデータの信頼性を保証する特性すなわちドライブの記録互換をあらわす特性である。本実施例では、クロスパワーオーバーライトジッタとして、ジッタの目標値を11%以下、規格上限値として12%以下に設定している。
さらに、クロスイレーズジッタとして、真中のトラックにランダムパターンを10回記録したのち、両脇のトラック、および、さらにその両脇のトラックに内周から外周に順番にランダムパターンを10回記録した後に、5トラックの中心のトラックで、再生のレーザーパワーPrを1.0mWに設定し、ジッタ値を測定した。クロスイレーズジッタは、隣接トラックの記録によるマークの消去、および、隣接トラックからの再生信号の漏れこみをあらわす特性である。本実施例では、クロスイレーズジッタとして、ジッタの目標値を8%以下、規格上限値として9%以下に設定している。
以下、上記光記録媒体情報記録再生装置を使用して、記録パルス列の構成(記録ストラテジ)と線速度を変えてデータを記録再生し、ジッタの値を調べた手順について説明する。本実施例では、2倍速記録として、記録の線速度を8.2m/sec、記録データのクロック長を17.1ns、データ転送レートを22Mbpsに設定している。また、4倍速記録として、記録の線速度を16.4m/sec、記録データのクロック長を8.6ns、データ転送レートを44Mbpsに設定している。また、6倍速記録として、記録の線速度を24.6m/sec、記録データのクロック長を5.7ns、データ転送レートを66Mbpsに設定している。
また、各線速度における記録ストラテジおよび記録パワーPp、消去パワーPbの決定は以下のように行なった。
まず、ランドにおいて、仮のレーザーパワーとして、2倍速記録のときにPp0=10.5mW,Pb0=4.0mW、4倍速記録のときにPp0=13.0mW,Pb0=5.0mW、6倍速記録のときにPp0=14.0mW,Pb0=5.5mWに設定した。各記録速度において、この仮のレーザーパワーを用いて3T〜14Tのマークの記録を行ない、マーク間に発生するマーク間熱干渉が最小になるように、図5に示す記録波形において、3T〜14Tのマーク前後の先頭パルスの幅Tfpと最後尾のパルス幅Tlpを決め、これを記録ストラテジとした。このときマルチパルスの幅Tmpは各記録速度のクロック長の半分とした。
次に、各記録速度において、上記記録ストラテジを用いて、記録パワーを上記仮の記録パワーPp0に設定し、消去パワーPbを2.0mWから8.0mWまで0.2mW刻みに設定し、ランダムパターンを10回記録した後に、再生のレーザーパワーPrを1.0mWに設定して、ジッタを測定し、図6に示すジッタの消去パワー依存性を調べた。実際にデータを記録するときに用いる消去パワーPbを決める方法として、図6のジッタの消去パワー依存性において、ジッタが13%となる消去パワーのうち、低い方の消去パワーをPb1、高い方の消去パワーをPb2とした。なお、本検討に関し、2倍速記録においてPb1=2.5mW,Pb2=6.1mW、4倍速記録においてPb1=3.5mW,Pb2=6.8mW、6倍速記録においてPb1=4.3mW,Pb2=7.4mWであった。また、このときの各記録速度における記録パワーに対するジッタをプロットしたカーブの形状は、Pb1、Pb2のパワーレベルが異なってシフトしているだけでなく、ジッタが低く安定しているパワー範囲や、その低ジッタパワー範囲が、2倍速ではPb1−Pb2の中心値であったのに対し、記録速度が高速になると、Pb1−Pb2の中心値から高パワー側にシフトしたカーブになっていることがわかった。このことから、Pbを単に(Pb1−Pb2)/2に設定しただけでは、記録速度によっては、最小のジッタが得られることは限らないと言える。
さらに、各記録速度において、データを記録するときに用いる消去パワーPbを決める方法として、Pb1とPb2の比率から、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2として設定し、上記消去パワーにおいてα=0.2〜0.6とαの値を変化させてPbの値を求めた。
求めた各Pbの値に対して、上記記録ストラテジを用いて、記録パワーを8.0mWから16.0mWまで0.5mW刻みに設定し、ランダムパターンを10回記録した後に、再生のレーザーパワーPrを1.0mWに設定して、ジッタを測定し、図7に示すジッタの記録パワー依存性を調べた。図7のジッタの記録パワー依存性において、ジッタが13%となる記録パワーPplに対し、最適記録パワーPpはPplの関数としてPp=K×Pplとして求めた。ここで最適記録パワーは、2倍速記録ではK=1.25、4倍速記録ではK=1.30、6倍速記録ではK=1.30とした。
このようにして求めた記録ストラテジと記録パワーPpと消去パワーPbを用いて、ランドにおいて、各記録速度に関し、記録信号の品質として上記アーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタの測定を行ない、消去パワーPbを決定する際のαの値と、記録信号の品質の関係を調べた。
2倍速記録である線速度8.2m/secにおいて、αの値を0.50、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20と変化させて、各消去パワーにおける記録パワーを求めたのち、各αの値におけるアーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを調べた。また、比較のため、αの値を0.60とした場合についてもアーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを調べた。結果を表1に示す。
Figure 0004303763
線速度8.2m/secで2倍速の記録を行なった場合、アーカイバルオーバーライトジッタに関しては、α=0.60〜0.25まではほぼ一定で、αの値がこの値より小さいと少しジッタが悪くなっている。また、クロスパワーオーバーライトジッタに関しては、α=0.60〜0.35までほぼ一定で、これよりαの値が小さいとジッタが悪くなる傾向が見える。また、クロスイレーズジッタに関しては、α=0.60〜0.40までほぼ一定で、これよりαの値が小さいとジッタが悪くなっている。
アーカイバルオーバーライトジッタの目標値を10%、クロスパワーオーバーライトジッタの目標値を11%、クロスイレーズジッタの目標値を8%とした場合、線速度8.2m/secの2倍速記録では、α=0.50において、目標値を達している。また、特性の許容限界として、アーカイバルオーバーライトジッタの規格上限値を11%、クロスパワーオーバーライトジッタの規格上限値を12%、クロスイレーズジッタの規格上限値を9%とした場合、線速度8.2m/secの2倍速記録では、α=0.60〜0.40において、規格値を満たしている。しかしながら、各特性のマージンを考慮すると、線速度8.2m/secの2倍速の記録では、α=0.50に設定するのがもっとも好ましいといえる。
4倍速記録である線速度16.4m/secにおいて、αの値を0.50、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20と変化させて、各消去パワーにおける記録パワーを求めたのち、各αの値におけるアーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを調べた。また、比較のため、αの値を0.60とした場合についてもアーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを調べた。結果を表2に示す。
Figure 0004303763
線速度16.4m/secで4倍速の記録を行なった場合、アーカイバルオーバーライトジッタに関しては、α=0.40〜0.20まではほぼ一定で、αの値がこれより大きい場合にジッタが悪くなっている。また、クロスパワーオーバーライトジッタに関しては、α=0.40〜0.30までほぼ一定で、αの値がこの前後でジッタが悪くなる傾向が見える。クロスイレーズジッタに関しては、α=0.60〜0.25までほぼ一定で、αの値がこれより小さい場合にジッタが悪くなる傾向が見える。
線速度16.4m/secの4倍速の記録では、α=0.40〜0.35で目標値を満たしている。また、α=0.50〜0.25で規格上限値を満たしている。この範囲で、アーカイバルオーバーライトジッタとクロスイレーズジッタが最小になるところを考慮すると、線速度16.4m/secの4倍速の記録では、α=0.35に設定するのがもっとも好ましいといえる。
線速度8.2m/secで記録した場合と較べて、線速度16.4m/secでより高速に記録した場合では、明らかに、αを0.5よりも小さくしたときに、アーカイバルオーバーライトジッタが改善している。特にアーカイバルオーバーライトジッタに関しては、αの最適値が小さいほうにシフトしているだけでなく、αの範囲自体が2倍速時の半分程度に狭まっており、最適な記録ストラテジーを設定することがより重要になる。
6倍速記録である線速度24.6m/secにおいて、αの値を0.50、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20と変化させて、各消去パワーにおける記録パワーを求めたのち、各αの値におけるアーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを調べた。また、比較のため、αの値を0.60とした場合についてもアーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを調べた。結果を表3に示す。
Figure 0004303763
線速度24.6m/secで6倍速の記録を行なった場合、アーカイバルオーバーライトジッタに関しては、α=0.35〜0.25まではほぼ一定で、αの値がこれより大きい場合にジッタが悪くなっている。また、クロスパワーオーバーライトジッタに関しては、α=0.35〜0.20までほぼ一定で、αがこの値より大きいとジッタが悪くなる傾向が見える。クロスイレーズジッタに関しては、α=0.60〜0.25までほぼ一定で、αの値がこれより小さい場合にジッタが悪くなる傾向が見える。
線速度24.6m/secの6倍速の記録では、α=0.35〜0.25で目標値をみたしている。また、α=0.40〜0.20で規格上限値を満たしている。この範囲で、アーカイバルオーバーライトジッタとクロスイレーズジッタが最小になるところを考慮すると、線速度24.6m/secの6倍速の記録では、α=0.30に設定するのがもっとも好ましいといえる。線速度8.2m/secで記録した場合、線速度16.4m/secで高速に記録した場合と較べて、線速度24.6m/secでより高速に記録した場合では、明らかに、αの値を線速度が2倍速(線速度8.2m/sec)あるいは4倍速(線速度16.4m/sec)の場合のαの値よりも小さくしたときに、アーカイバルオーバーライトジッタが改善している。またαの最適値は4倍速時よりもさらに小さいほうにシフトしているだけでなく、αの範囲自体もさらに4倍速時の半分程度にまで狭まっており、最適な記録ストラテジーを設定することがより重要になる。
以上、実施例1の結果をまとめると、消去パワーレベルPbを、再生パワーPrよりも大きくPbよりも小さい値Pb1と、Pbよりも大きく記録パワーPpよりも小さい値Pb2を用いてPb=α×Pb1+(1−α)×Pb2と定義するとき、アーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを良くするもっとも好ましいαの値は、線速度8.2m/secで記録するときはα=0.50、線速度16.4m/secで記録するときはα=0.35、線速度24.6m/secで記録するときはα=0.30である。
実施例1のαの最適範囲についての比較を表4に示す。アーカイバルオーバーライトジッタとクロスパワーオーバーライトジッタについては、記録速度に対応するαの値、範囲ともに大きく異なり、クロスイレーズジッタを含めて全ての特性で良好であり、且つ、全ての記録速度をカバーできるαは存在しないので、記録速度に応じたαを設定し、記録パワーPpと消去パワーPbを設定する必要がある。
Figure 0004303763
このように、記録の線速度によって最適なαが異なる理由は次のように考えられる。記録の高速化に伴い、記録過程における結晶核生成の減少、および、消去過程における結晶化の不充分が生じ、アーカイバルオーバーライト特性が悪くなる。これに対し、記録の線速度に伴い、消去パワーのジッタ依存性から求める消去パワーの定義を変えて、最適な消去パワーで記録を行なうことにより、記録過程における結晶核の生成と消去過程における結晶化を促進していると考える。
しかしながら、消去パワーを高くすることで、アーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタが悪くなることから、各記録速度において適切な消去パワーの設定、すなわち、適切なαの値が存在する。つまり、Pb1とPb2とPbの関係に関する情報をあらかじめ媒体上に記録しておくことで、好適な消去パワーで記録を行なうことができ、アーカイバルオーバーライトジッタを改善することができる。さらには、Pbの値をPb1の値とPb2の値の比率であらわす上記αに関する情報をあらかじめ媒体上に記録しておくことで、各記録速度において、好適な消去パワーで記録を行なうことができ、アーカイバルオーバーライトジッタ、クロスパワーオーバーライトジッタ、クロスイレーズジッタを改善することができる。
以上説明したように、情報記録媒体とレーザービームを一定の範囲の線速度で相対的に走査させ、レーザービームのレーザーパワーを、少なくとも記録レーザーパワーPpと、記録レーザーパワーレベルよりも低い消去レーザーパワーレベルPbをパワー変調して、情報記録媒体の情報記録部の状態を変化させることにより情報の記録が行なわれ、上記消去レーザーパワーレベルPbより低いレベルの再生レーザーパワーレベルPrのレーザービームにより情報の再生が行なわれる情報記録媒体であって、Prよりも大きくPbよりも小さい値Pb1と、Pbよりも大きくPpよりも小さい値Pb2と、Pbの関係に関する情報が記録されていることを特徴とする情報記録媒体を用いることで、高速記録を行なったときのオーバーライト特性、特に、高温の環境に媒体を一定時間保存したのち情報を重ね書きするアーカイバルオーバーライト特性を改善することができる。
この実施例では、上記実施例1で得られたαの好適な値を予め記録した情報記録媒体を、情報記録再生装置で再生し、そのαの値を用いてデータの読み書きを行ない、アーカイバルオーバーライト特性を調べた。
4.7GBDVD−RAMのフォーマットを有するディスクであって、そのコントロールデータ部に、2倍速の場合と同じように、5倍速と6倍速の記録ストラテジに関する情報、記録の感度係数、およびαの情報を書きこんだディスクを製造するためのスタンパを作製した。このとき、5倍速、6倍速記録時のαの値がそれぞれα=0.50、α=0.50のスタンパAと、5倍速、6倍速記録時のαの値がそれぞれα=0.40、α=0.35のスタンパBの2種類を作製した。ここでαは、消去パワーPbを、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2、Pb1<Pb2の関係式から求める係数である。
スタンパAおよびスタンパBを用いて、ポリカーボネート基板Aおよび基板Bを射出成形により成形した。得られた基板上にスパッタリングにより、第1保護層としてZnS−SiOを100nm、第1界面層としてGeCrNを10nm、記録層としてBiGeTeを10nm、第2界面層としてGeCrNを10nm、第2保護層としてZnS−SiOを50nm、熱吸収率補正層層としてGeCrを50nm、熱拡散層としてAlを120nm、順次成膜して情報記録媒体を得た。得られた情報記録媒体1における情報記録部75とコントロールデータ部71を概略的に図8に示す。この情報記録媒体の初期化を行ない、ディスクAおよびディスクBとした。この作製したディスクAおよびディスクBを用いて、ドライブで5倍速記録および6倍速記録を行なった。
ここで、使用した5倍速記録および6倍速記録を行なう記録再生装置(ドライブ装置)の動作を説明する。(1)まずコントロールデータ部に書かれている各速度の記録ストラテジと試し書きの記録パワーの情報を読み込む。(2)次に、読みこんだ記録ストラテジの記録波形と記録パワーを用いて、消去パワーを変化させてランダムパターンの記録を行ない、エラーが閾値を越える消去パワーPb1、Pb2(Pb1<Pb2)を求める。ここで、エラーの閾値の判別は、エラー訂正後のエラーの個数が数百個から数個に急激にかわるパワーとした。(3)Pb1、Pb2の値を用いて、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2の式から、実際に記録を行なうときの最適な消去パワーPbの値を決める。(4)求めた最適な消去パワーPbの値を用いて、記録パワーを変化させて6Tパターンの記録を行ない、コントロールデータ部分に書かれている6Tパターンのアシンメトリの値が得られる記録補償パワーを求める。(5)この記録補償パワーと最適な消去パワーで記録ストラテジの最適化を行なう。ここで、記録ストラテジの最適化は、マーク部の前後のスペース長に応じて、マルチパルス波形の先頭パルスの幅Tfpと最後尾のパルス幅Tlpを変化させて、エラーレートが最小となるように行なった。(6)最適化した記録ストラテジの波形と、消去パワーPbを用いて、記録パワーを変化させてランダムパターンの記録を行ない、エラーが閾値を超える記録パワーを求める。(7)次に、コントロールデータ部に書かれている記録パワーの感度係数の情報を読みこみ、求めた記録パワーに感度係数を掛けて、最適な記録パワーとする。(8)上記(1)から(7)の工程を、5倍速記録、6倍速記録で各々行ない、求めた最適なストラテジ、最適な記録パワー、最適な消去パワーを用いて、記録再生装置におけるデータの記録を行なう。
図4に記録再生装置の概略を示す。ディスク上に記録された消去パワーの係数αを読み出し、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2の関係式から消去パワーPbを算出するのは、Pb算出制御部410である。本願明細書記載の情報記録装置は、主にPb算出制御部410を有する以外は、従来の2倍速または3倍速の記録装置(ドライブ装置)と同様の構造を有する。
次に、ディスクAおよびディスクBに、ドライブで5倍速記録および6倍速記録時のアーカイバルオーバーライト特性を調べる手順を示す。まず、求めた最適パワーでランダムデータの10回書きを行なう。記録が終わったディスクを、90℃30%R.H.環境に20時間保存したのち、室温に戻し、再度、同じ位置にランダムデータの1回書きを行なう。その後、記録が終わったディスクを、前記光記録媒体情報記録再生装置を用いて、記録したデータの2倍速再生を再生パワーPr=1mWで行ない、環境試験後のアーカイバルオーバーライトジッタを調べた。
ドライブでディスク記録を行なう半径位置として、5倍速記録は半径43.30mmから44.20mm、6倍速記録は半径45.23mmから46.13mmに記録を行なった。また、環境試験後にジッタを調べる際には、記録領域に対し、5トラックおきに再生ジッタを調べ、その平均値を環境試験後のアーカイバルオーバーライトジッタとした。
なお、環境試験後にドライブでランダムデータの1回書きを行なう際、ドライブは前述の最適なストラテジ、最適な記録パワー、最適な消去パワーを求める工程を再度行なうが、環境試験前後で、求まる最適なストラテジ、最適な記録パワー、最適な消去パワーは変化していなかった。
上記ディスクAおよびディスクBを用いて、ドライブで5倍速記録および6倍速記録時のアーカイバル特性を調べた結果を表5に示す。
Figure 0004303763
表5の結果からも分かるように、Prよりも大きくPbよりも小さい値Pb1と、Pbよりも大きくPpよりも小さい値Pb2と、Pbの関係に関する情報αが記録されていることを特徴とする情報記録媒体を用いて高速記録を行なう場合、記録速度に応じてαを好適な値に設定することにより、高温の環境に媒体を一定時間保存したのち情報を重ね書きするアーカイバルオーバーライト特性を改善することができることが分る。
上記実施例では、ランドでデータの記録を行なっているが、グルーブで記録を行なった場合でも同様の効果が得られている。また、本実施例では特に記録の半径位置を記していないが、半径24〜58mmの任意の半径で同様の効果が得られている。さらに、本実施例では信号の再生を線速度8.2m/secで行なっているが、本発明の本質は高速記録過程の改善にあるので、特に再生の速度によらず本発明の効果を得ることができる。
また、本発明は、記録の高速化に伴うアーカイバルオーバーライト特性を改善するため、情報記録媒体上に記録速度の情報とともに消去パワーの定義に関する情報を記録することに特徴があり、情報記録媒体の構成、組成およびその結晶化速度、結晶化温度、結晶核生成温度、融点によらず、本発明の効果を得ることができる。
また、本実施例では、消去パワーのジッタ依存性からPb1とPb2の値を求めるのに閾値として13%としているが、上記本発明の本質はジッタの閾値によるものではなく、また、Pb1とPb2の値を求める際にジッタではなく、例えば、消去パワーのエラーレート依存性あるいは信号の振幅、S/N、アシンメトリ依存性から任意の閾値を用いて求めた場合でも本発明の効果は失われない。
また、本発明の実施例では波長655nmの赤色レーザーを用いているが、本発明は特にレーザーの波長によるものではなく、青色レーザー、紫外線レーザー等の比較的短波長のレーザーを使用する情報記録装置およびこれに用いる情報記録媒体に対しても効果を発揮する。
本発明の情報記録方法によって、高速記録におけるオーバーライト特性、特に、高温の環境に媒体を一定時間保存した後、情報を重ね書きするアーカイバルオーバーライト特性を改善することができる。それゆえ、本発明は、周囲環境に拘わらず、大容量で且つ高速のデータ記録の信頼性を一層向上することができる。
図1は、レーザービームの通過位置と媒体上に記録されるマークの形状を模式的に示す図である。 図2は、記録パワーが照射された場合の、領域Aおよび領域Bの時間に対する温度履歴を模式的に示す図である。 図3は、消去パワーが照射された場合の、領域Aおよび領域Bの時間に対する温度履歴を模式的に示す図である。 図4は、本発明の実施例で記録再生特性を調べるのに用いた情報記録媒体記録再生装置の概略図である。 図5は、本発明の実施例で記録再生特性を調べるのに用いた記録パルスのストラテジを説明する図である。 図6は、本発明の実施例で用いた消去パワーの定義を説明するジッタの消去パワー依存性の概略図である。 図7は、本発明の実施例で用いた記録パワーの定義を説明するジッタの記録パワー依存性の概略図である。 図8は、本願明細書記載の情報記録媒体における情報記録部とコントロールデータ部を示す概略図である。
符号の説明
41 情報記録媒体
42 モータ−
43 光ヘッド
44 プリアンプ回路
45 記録波形発生回路
46 レーザー駆動回路
47 8−16変調器
48 L/Gサーボ回路
49 8−16復調器

Claims (3)

  1. 相変化記録方式の情報記録媒体に、記録パワーレベルと消去パワーレベルにパワー変調されたパルス列を含むマルチパルス波形の光を照射して複数のマーク部を形成することにより情報を記録する方法であって:
    予め定められた記録パワーと種々の消去パワーの光で、ランダムパターンを情報記録媒体にオーバーライトすることと;
    オーバーライトしたランダムパターンを再生して、再生ジッターまたは再生エラーが所定の閾値を超えるパターンを消去したときの消去パワーの最小値Pb1及び最大値Pb2を求めることと;
    求めた最小値Pb1及び最大値Pb2と、Pb=α×Pb1+(1−α)×Pb2で表される関係式から、記録のための最適な消去パワーPbを求めることと;
    求めた最適な消去パワーPbを用いて情報を記録することと;を備え
    情報が異なる記録速度で記録されるときに、記録速度に応じてαが0<α≦0.50の範囲で異なり且つ記録速度が大きくなるほどαが小さくなり、
    更に、前記マーク部の前後のスペース長に応じて、前記マルチパスの先頭パルス幅Tfpと最後尾のパルス幅Tlpを変化させることを特徴とする情報記録方法。
  2. さらに、求めた最適な消去パワーPbを用いて最適記録パワーPpを決定することを含むことを特徴とする請求項1に記載の情報記録方法。
  3. 上記情報記録媒体に上記αの値が予め記録されており、情報記録の際に、情報記録媒体から上記αの値が読み出されることを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録方法。
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