光ディスクのような可換型情報記録媒体では、様々な規格やメーカの情報記録装置に対する互換性を確保することは極めて重要である。例えばDVD−RAM媒体を例にとると、既にCLV回転制御による2倍速(データ転送レート:22Mbps、線速度8.2m/s)に対応したDVD−RAMドライブが市場に存在する。しかしながら、転送レート、アクセススピード向上の市場の要求を満たすため、記録の線速度を高めたCLV対応ドライブ、さらには、CAV対応ドライブが今後主流になると考えられる。このため、記録の線速度、転送レートが異なる、CAV対応ドライブとCLV対応ドライブ間で、あるいはレーザー光源の応答性の異なるドライブ間で、記録の互換性を保証することは、消費者の利益には欠かせないことであり、非常に重要である。
ところが、記録の線速度が速く、データ転送レートが高いほど、記録信号の周波数を高くする必要がある。前述したようなレーザー光をパルス変調して照射する場合、パルス列を構成するそれぞれのパルスの時間幅は著しく短くなる。これに対し、レーザー発光素子は、駆動電流が印加されてから発光強度がその電流値に対応する強度に達するまで時間を要する。したがって、転送レートを高くするために上記パルスの幅が、発光素子の発光強度が駆動電流値に対応する強度に達するまでの時間より短くなった場合、各パルスに対応するレーザー発光はピーク値に達する前に減衰してしまう。その結果、レーザーパワーにより記録媒体に加わる単位面積あたりのエネルギーが最適値からずれ、記録媒体に書かれる記録マークの形状が歪み、正確な情報の記録再生ができなくなってしまう。特に、線速度が速くなった場合、慣用のパルス列を用いた記録ストラテジでは確実に情報を記録することができないという問題がある。
また一方で、発光素子の駆動電流が印加されてから発光強度がその電流値に対応する強度に達するまで時間は、同じ波長のレーザー発光素子であっても、情報記録装置に搭載されている発光素子の種類によって大きく異なるため、同じストラテジで記録を行っても、発光素子の種類によって記録媒体に加わる単位面積あたりのエネルギーが最適値からずれ、記録媒体に書かれる記録マークの形状が歪み、正確な情報の記録再生ができなくなってしまう。すなわち、記録ストラテジが同一であっても用いる記録装置の性能、特にレーザー光源の応答性が異なるために、同じ記録マークが記録される保証はない。
このように、記録媒体に情報を記録する際のパワーの設定は非常に重要であるが、記録の線速度によるレーザーパワーの未飽和現象や、発光素子の種類によるレーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間によりの差により複雑に変化するため、情報記録装置において最適なパワーの設定を行なうことが容易ではない。
したがって、本発明の第1の目的は、上記問題点を解決し、データ記録の線速度、データ転送レートが速くなった場合に、情報記録装置において最適な記録のレーザーパワーの設定を簡単に行なうことができる情報記録方法および光パワー制御方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記問題点を解決し、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が異なる発光素子を搭載している情報記録装置間においても記録互換性を確保し得る情報記録方法および光パワー制御方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記問題点を解決し、データ記録の線速度、データ転送レートが速くなった場合に、情報記録装置において最適な記録のレーザーパワーの設定を簡単に行なうことができ、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が異なる発光素子を搭載している情報記録装置間の影響を考慮したうえで、記録互換性を確保し得る情報記録方法および光パワー制御方法を提供することにある。
本発明の第4目的は、マルチパルスを有するレーザー光を情報記録媒体に照射して情報を情報記録媒体に記録する際に、用いるレーザーの性能及び線速度に依存せずに理想的な記録マークを形成することができるように光パワーを制御することができる光パワー制御方法を提供することにある。
本発明者らは、上記問題解決のため、記録の線速度が速くなる場合において最適な記録パワーの設定を簡易に行なうことができる記録方法を達成し、また、記録の線速度が異なる情報記録装置およびそれに用いる情報記録媒体において記録の互換性を確保するため以下の情報記録方法および光パワー制御方法を達成した。
本発明の第1の態様に従えば、情報記録媒体に情報を記録する情報記録方法であって、
情報記録媒体に相対して、光ビームを、選択された線速度で移動することと;
前記光ビームを、第1のパワーレベルPhと第1のパワーレベルよりも低い第2のパワーレベルPlとそれらの間の第3のパワーレベルPmとの少なくとも3種のパワーレベルを有し且つ第1パワーレベルPhと第3パワーレベルPmとの間で繰り返し変調されるマルチパルスが生じるように、制御することと;
第3パワーレベルPmを、前記選択された線速度に応じて調整することと;
前記調整された第3パワーレベルPmを伴う制御されたパワーの光ビームを前記情報記録媒体に照射して照射された情報記録媒体の部分の状態を変化させることにより情報を記録することと;を含む情報記録方法が提供される。
本発明者の知見によると、記録の線速度が速くなり、データの転送レートが上がり、記録データのクロック長が短くなった場合に、レーザーパワーの未飽和が生じる。このレーザーパワーの未飽和は、情報記録媒体に最適値を超える記録パルスのレーザーパワーのエネルギーを加えることになる。なお、本文において用語「レーザーパワーの未飽和」とは、レーザーの駆動信号の高周波数化により、レーザーパワーが駆動信号に対して追従できなくなる現象をいい、例えば、レーザーパワーの立上がりや立下りが遅延したり、予定した設定パワーが発生しないことである。本発明では、図20(a)〜図20(c)に示すように、記録の線速度、データ転送レートあるいは記録データのクロック長に応じて第3のPmレベルパワーを変化させることで、記録パルスのレーザーパワーのエネルギーを最適値に保つことができる。図20(a)は、線速度が低い場合(例えば1倍速(×1))のマルチパルスのパワーレベル(駆動信号レベルと見ることもできる)を示しており、マルチパルスは、第1パワーレベルPh(アモルファス化レベル)と第3パワーレベルPmとの間を繰り返し変調しており、第2パワーレベルPl(結晶化レベル)と第3パワーレベルPmがほぼ同一である。線速度が高くなると(例えば2倍速(×2)になると)図20(b)に示すように、第3パワーレベルPmが第2パワーレベルPlよりも高くなり、比Pm/Phも低線速時に比べて高くなる。さらに線速度が高くなると(例えば5倍速(×5)になると)図20(c)に示すように、第3パワーレベルPm及び比Pm/Phが一層高くなる。このように、線速度に応じてマルチパルスの低パワーレベルを調整することで、いずれの線速度においてもまた異なる応答性を有するレーザーにおいても一定の光エネルギーを情報記録媒体に与えて、良好な記録マークを形成することができる。これにより、記録の線速度およびレーザーパワーの立ち下がり時間、立ち上がり時間が異なる情報記録装置において記録の互換性を確保することができる。記録の速度はユーザーにより、記録モードにより、あるいは情報記録媒体により選択され得る。
本発明の記録方法において、第3パワーレベルPmが、前記線速度に比例して増大するように調整され得る。慣用の方法を用いると、レーザーパワーPh、Pl、Pmの最適値を決定するにあたり、本来記録するレーザーパワー値を変えてエラーレートが最小となるように最適なパワーを各々別々に三つ決めなければならない。本発明では、レーザーパワーPmの最適値は記録の線速度に比例して決めることができるので、実際に記録するレーザーパワーの値を変えて最適値を求めるのはPhとPlの二つに減ることから、最適な記録パワーの設定を簡易に行なうことができる。
特に、本発明では、第3パワーレベルPmの第1パワーレベルPhに対する比Pm/Phが、線速度に応じて調整される。マルチパルスを用いて情報記録媒体に与える光の積算エネルギーは第3パワーレベルPmと第1パワーレベルPhで決定され、また、レーザーの未飽和状態は、変調する第1パワーレベルPhの大きさによっても変化するので、Pm/Phの値を記録の線速度により応じて変化させることで、マルチパルスを用いた記録時のパワー調整が一層容易となる。また、このパワーレベルの調整において、高線速度における(Ph−Pm)の値が低線速度における(Ph−Pm)の値よりも小さくなる。高速記録時にPhレベルとPmレベルの間のパルスの変調を小さくすることにより、レーザーの応答性を向上させるとともに、レーザの負荷を低下することができる。
本発明では、第3パワーレベルPmの第1パワーレベルPhに対する比Pm/Phが、前記線速度に比例して増大するように調整され得る。こうすることで、最適な記録パワーの設定を一層簡易に行なうことができる。
第1パワーレベルPhと第2パワーレベルPlの差に対する第3パワーレベルPmと第2のパワーレベルPlの差の比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)が、線速度に応じて調整され得る。(Pm−Pl)/(Ph−Pl)は、後述するように、レーザーパワーの未飽和状態を表すパラメータとなる。このパラメータを用いることにより、マルチパルスを用いた記録パワーの最適化を一層容易にすることができ、記録の線速度およびレーザーパワーの立ち下がり時間、立ち上がり時間が異なる情報記録装置において記録の互換性を確保する効果が高くなる。
さらに、第3パワーレベルPmの第1パワーレベルPhに対する比Pm/Phが、線速度に応じて調整される替わりに、前記比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)が、前記線速度に比例して調整され得る。これにより、最適な記録パワーの設定を一層簡易に行なうことができる。
本発明の方法において、前記マルチパルスの先頭パルスまたは最後尾のパルスのパルス幅が第3パワーレベルPmに応じて調整され得る。この調整により、レーザーパワーの未飽和現象による先頭パルスあるいは最後尾パルスのパルス幅の影響を緩和することができる。この場合、先頭パルスあるいは最後尾パルスのパルス幅をPmに比例して決めることができるので、記録ストラテジの最適化の工程を簡略化でき、ひいては、最適なストラテジを用いて行なう記録パワーの最適化も簡易に行なうことができる。
また、前記マルチパルスの先頭パルスまたは最後尾のパルスのパルス幅が、第3パワーレベルPmの第1パワーレベルPhに対する比Pm/Phに応じて調整され得る。こうすることで、先頭パルスあるいは最後尾のパルスのパルス幅をPmに応じて変化させる場合よりも、記録の線速度およびレーザーパワーの立ち下がり時間、立ち上がり時間が異なる情報記録装置において記録の互換性を一層容易に確保することができる。この場合、前記マルチパルスの先頭パルスあるいは最後尾のパルスのパルス幅が、第3パワーレベルPmの第1パワーレベルPhに対する比Pm/Phに比例して増大するように調整され得る。
また、前記マルチパルスの先頭パルスまたは最後尾のパルスのパルス幅が、第1パワーレベルPhと第2パワーレベルPlの差に対する第3パワーレベルPmと第2のパワーレベルPlの差の比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)に応じて調整されてもよい。第3パワーレベルPmだけをパラメータとする場合に比べて最適パワー調整が一層容易となる。この場合、前記マルチパルスの先頭パルスまたは最後尾のパルスのパルス幅が、第1パワーレベルPhと第2パワーレベルPlの差に対する第3パワーレベルPmと第2のパワーレベルPlの差の比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)に比例して増大するように調整され得る。こうすることで、記録ストラテジの最適化の工程を簡略化でき、ひいては、最適なストラテジを用いて行なう記録パワーの最適化も簡易に行なうことができる。
本発明の方法において、さらに、情報の記録を行う前に、前記線速度を情報記録媒体から読み出すことを含み得る。記録の線速度は情報記録媒体により異なり、線速度に関する情報は情報記録媒体に記録されている場合には、そこから読み出すことができる。なお、情報記録媒体には予め複数の線速度に対応する複数のPm、Pm/Ph、Pm/Pl、あるいは(Pm−Pl)/(Ph−Pl)を記憶しておくことができ、それらの情報(管理情報)を、情報記録媒体に情報(ユーザー情報)を記録する前に読み出すことができる。記録モードに応じて、例えば、コピーモードが選択されている場合には、コピーモードの線速度に対応するPm、Pm/Ph、Pm/Pl、あるいは(Pm−Pl)/(Ph−Pl)を読み出すこともできる。
前記情報は、CLV方式またはCAV方式で記録され得る。CAV方式で記録される場合、前記選択された線速度が情報記録媒体の情報を記録する位置に応じて異なる。
本発明では、光ビームが情報記録媒体に照射されて照射された情報記録媒体の部分の状態が変化することにより情報が記録される情報記録媒体であって:
前記状態変化を起す記録層と;
前記記録層を支持する基板と;
基板または記録層に記録された管理情報と;を含み、
上記照射される光ビームが、第1のパワーレベルPhと第1のパワーレベルよりも低い第2のパワーレベルPlとそれらの間の第3のパワーレベルPmとの少なくとも3種のパワーレベルを有し、第1のパワーレベルPhと前記調整された第3のパワーレベルPmとの間で繰り返し変調されるマルチパルスを含むように変調されており;
上記管理情報が、情報記録媒体に相対して光ビームを移動させるための線速度に関する情報と、第1パワーレベルPh、第2パワーレベルPl及び線速度に応じて調整された第3パワーレベルPmに関する情報とを含む情報記録媒体を用い得る。この情報記録媒体を用いることにより、異なる記録の線速度、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間を有する情報記録装置によらず、情報記録媒体に記載されている記録速度とそれに応じて決定されたPmの情報から、最適な記録パワーを求める工程を簡易に行なうことができ、さらには異なる情報記録装置間で記録互換を実現することができる。
この情報記録媒体において、前記管理情報が、第1パワーレベルPhと第3パワーレベルPmの比Pm/Phを含み得る。マルチパルスを用いた場合の光の積算エネルギーはPmのみならずPhのレベルでも決定されるために、比Pm/Ph、特に線速度に応じて決定された比Pm/Phを用いると最適記録パワーを一層容易に調整することができる。
前記管理情報が、第1パワーレベルPhと第2パワーレベルPlの差に対する第3パワーレベルPmと第2のパワーレベルPlの差の比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)を表す情報、特に線速度に応じて決定された比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)を含み得る。比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)は、レーザーパワーの未飽和状態を表すので、このパラメータを用いると、記録の線速度およびレーザーパワーの立ち下がり時間、立ち上がり時間が異なる情報記録装置において記録の互換性を一層容易に確保することができる。
前記管理情報が、第3パワーレベルPmと第2パワーレベルPlの比Pm/Plを表す情報を含み、前記比Pm/Plが、線速度に応じて調整され得る。情報記録媒体に記載されている線速度とPlとPmの比の情報から、最適な記録パワーを求める工程を簡易に行なうことができ、さらには異なる情報記録装置間で記録互換を実現することができる。
前記管理情報は、複数の記録速度における、第1パワーレベルPh、第2パワーレベルPl、第3のパワーレベルPmの値をそれぞれ含み得る。こうすることにより、記録速度に応じて適切なパワーレベルが情報記録媒体から読み出され、本発明の情報記録方法を実行することができる。管理情報は、例えば、2倍速記録におけるパワーレベルPl(2)、Pm(2)及びPh(2)、3倍速記録におけるパワーレベルPl(3)、Pm(3)及びPh(3)、5倍速記録におけるパワーレベルPl(5)、Pm(5)及びPh(5)を含み得、ここで、それらのパワーレベルは、Pl(2)=Pm(2)<Ph(2)、Pl(3)=Pm(3)<Ph(3)、Pm(3)≠Pm(2)、Pl(5)<Pm(5)<Ph(5)を満たすようにし得る。
パワーレベルの調整において、高線速度における(Ph−Pm)の値が低線速度における(Ph−Pm)の値よりも小さくし得る。また、高線速度における(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の値が低線速度における(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の値よりも大きくし得る。高速記録時にPhレベルとPmレベルの間のパルスの変調を小さくすることにより、あるいは高速記録時の(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の値を低速記録時の(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の値よりも大きくすることにより、レーザーの応答性を向上させるとともに、レーザの負荷を低下することができる。
本発明の第2の態様に従えば、第1パワーレベルPhと第1のパワーレベルよりも低い第2パワーレベルPlとそれらの間の第3パワーレベルPmとの少なくとも3種のパワーレベルの光を用いて情報記録媒体に情報を記録するときの光パワー制御方法であって、
第3パワーレベルPmを、前記情報記録媒体により定められている線速度に応じて調整することと;
前記光のパワーを、少なくとも第1パワーレベルPhと前記調整された第3パワーレベルPmとの間で繰り返し変調されるマルチパルスが生じるように制御することとを含む情報記録媒体に情報を記録するときの光パワー制御方法が提供される。
本発明の光パワーの制御方法によれば、線速度に応じて最適な第3パワーレベルPmが選定されるので、いかなる倍速度にもかかわらず、良好な記録マークを形成することができる。また、第3パワーレベルPmを最適化することにより、生産者の異なる種々のレーザーを用いても良好で均一な記録特性が得られる。
第3パワーレベルPmを前記情報記録媒体により定められている線速度に応じて調整するときに、Pm/Pl、Pm/Ph及び比(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の少なくとも一種を前記線速度に応じて調整することで、マルチパルスを用いる記録パワーを一層容易に最適化することができる。
本発明では、マルチパルスの第3パワーレベルPmを第1パワーレベルPhと第2パワーレベルPlの間のレベルであって、線速度に応じて調整したレベルにすることで、記録時の線速度およびレーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が異なる情報記録装置間において記録の互換性を確保することができる。
また、上記Pmを上記線速度に比例して増大させることで、記録パワーの最適化を簡易に行なうことができる。
以下、本発明者らが行なったシミュレーションの結果と実験の結果を詳細に説明する。
本発明者らは、記録の線速度が速くなり、データ転送レートが高くなるにつれ、記録のパルス波形(レーザーの発光波形)が歪む現象を、下記の条件のもとにシミュレーションした。
(1)パルスのクロック周波数は、記録の線速度、データ転送レートに比例する。(2)レーザーパワーの立ち上がりおよび立ち下がりの波形はコサインカーブで近似計算される。(3)レーザーパワーは、記録の線速度のルートに比例して計算される。(4)レーザーパワーの立ち上がり時間Trおよび立ち下がり時間Tfは、変調振幅に比例して計算される。(5)記録パワーの最適値は、レーザーの立ち上がりおよび立ち下がり時間がゼロの場合を基準として、記録膜に加わるパルスの積算エネルギーが基準(レーザーの立ち上がりおよび立ち下がり時間がゼロの場合の積算エネルギー)と等しくなるように計算される。すなわち、本シミュレーションでは、レーザーの発光波形は時間に対しコサインで近似される応答時間の遅延を持つと仮定する。記録の線速度が上がると、レーザーの発光パワーが100%あるいは0%に達する前に、発光の極性が反転するため、レーザーの発光パワーが100%あるいは0%にならず、レーザーの発光波形が記録波形(レーザー駆動電流波形)に対し歪んだ形となる。また、記録のレーザーパワー、すなわち、発光波形の0%から100%で変調する振幅が大きいほど、立ち上がり、立下り時間の絶対値は大きくなる。一方、記録速度が上がると、記録に必要なレーザーパワーも大きくなる。このことから、本シミュレーションでは、記録速度が上がるほど、発光波形の変調振幅が大きくなり、レーザーの立ち上がり、立ち下がり時間が大きくなり、レーザーの発光波形の記録波形に対する歪みが大きくなることを想定している。
図1および図2は、光記録媒体情報記録再生装置において、実機のレーザー発光波形の、レーザーパワーの立ち上がりおよび立ち下がり応答を調べた結果(オシロスコープ画面の模式図)である。図中の点線は、コサインで近似したカーブであり、実機のレーザー発光波形(実線)の応答と照合することから、本レーザーパワーの立ち上がりおよび立ち下がりの近似計算は妥当であると言える。
図3に、レーザーパワーの立ち上がり時間と立ち下がり時間を説明するレーザーパルスの模式図を示す。本計算では、レーザーパワーの立ち上がり時間Trは、レーザーパワーのピーク値の10%に到達したときからピーク値の90%までに増加するのに要する時間である。また、レーザーパワーの立ち下り時間Tfは、レーザーパワーのピーク値の90%に到達したときからピーク値の10%までに減少するまでに要する時間である。Tr及びTfが小さいほど理想的なレーザー光源といえるが、レーザー光源及び情報記録装置の生産者により、Tr及びTfは異なる。
次に、シミュレーションを用いて、実際に計算を行なった結果について説明する。以下のシミュレーションでは、相変化型記録媒体の記録膜に、図4に示すようなマルチパルスを有する波形で表されるレーザーパワーを照射する。レーザーパワーPhは非晶質化(アモルファス化)レベルであり、Plは結晶化レベルであり、Pmはマルチパルスにおける低パワーレベルを示す。このシミュレーションの場合、Pl=Pmとした。レーザーパワーレベルがPhとPmに繰り返し変調されるマルチパルスを用いるのは、記録マークが比較的長いマークを形成するときに、記録マークの形及び幅(トラックと垂直方向)を調整するためである。
また、以下のシミュレーションでは、DVD−RAMの2倍速記録の場合の、転送レート22Mbps、線速8.2m/s、クッロク長T=17.13nsで、Ph=11.0mW、Pl=5.0mWを基準としてシミュレーションする。記録速度が5倍、線速が20.1m/sになった場合を計算すると、クロック長T=6.85ns、Ph=17.4mW、Pl=7.9mWとなる。5倍速でTr=Tf=0.0nsとすると、記録のパルス波形は図4のようになる。図4中において、記録膜に加わる積算エネルギーは、陰影部の面積で計算される。すなわち、積算エネルギーは、パワーレベルPh及びPmとそれらのパワーレベルの光の照射時間で決定される。線速度が高くなれば、照射時間が短くなるので、レーザーパワーPh及びPmを増大するような制御が必要となる。
本発明者らは、パルス波形において、先頭パルスと最後尾パルスの間のマルチパルスの部分の長さが最も短く、レーザー発光の遅延の影響を最も受けると考える。そこで、本シミュレーションでは、先頭パルスと最後尾パルスの間のマルチパルスの一周期分の、レーザー発光により記録膜に加わる積算エネルギーを計算している。
つぎに、5倍速でTr=Tf=3nsになった場合を計算すると、記録のパルス波形は図5のようになる。図5からわかるように、記録の線速度が上がり、クロック長が短くなることで、本来、Plレベルまで下がらなければいけないパルスの立ち下がりが、レーザーパワーが飽和しなくなることにより、Pmレベルまでしか下がらなくなってしまう。これにより、図5中の陰影部の面積で計算される記録膜に加わるパルスの積算エネルギーは、図4の場合よりも相対的に大きくなり、図4の記録パルス波形で記録したマークとは異なる。図4の記録パルス波形の光で形成されるマークと同じマークの記録を行なうためには、レーザーパワーの未飽和を考慮して、記録するPhレベルをあらかじめ低めに設定して、積算エネルギーを合わすようにしなければならないことを発明者は見出した。
図6に、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍速記録において、Tr(=Tf)が0.5nsから3.5nsまで変化したときに、レーザーパワーのパルスの積算エネルギーがTr(=Tf)が0.0nsの場合と等しくなるPhの値を、上記レーザーパワーの未飽和を考慮してシミュレーションにより求めた結果を示す。図6のシミュレーション結果からわかるように、2倍速記録においては、Tr(=Tf)が0.5nsから3.5nsまで、Phは等しいパワーレベルで記録することが可能である。即ち、2倍速記録を行う限りは、レーザーの応答性に関わらず、レーザーは同じ高レベルパワーPhで記録することができる。しかしながら、5倍速記録においては、Tr(=Tf)が1.5nsよりも大きいと、レーザーパワーの未飽和現象が起こるため、Tr(=Tf)が0.0nsと同じ積算エネルギーで記録するためには、Tr(=Tf)が0.0nsの場合よりも低いレーザーパワーで記録しなければならなくなる。8倍速記録に至っては、Tr(=Tf)が1.0nsでも飽和しなくなり、Tr(=Tf)が1.0nsとTr(=Tf)が2.5nsでは、レーザーパワーレベルPhも異なってしまう。すなわち、8倍速記録では、レーザーの応答性が比較的良好であっても(Tr(=Tf)≒1.0ns)、最適なパワーレベルPhが理想的なレーザー応答(Tr(=Tf)=1.0ns)のパワーレベルと異なる。これは、レーザーの未飽和現象によりパワーレベルPmがパワーレベルPlまで下がらなくなるので、理想的なレーザー応答が行われる場合と同じ積算エネルギーで記録を行うためにはPhのパワーレベルを相対的に低下する必要があるからである。この現象は、線速度が上がるほど顕著になり、また、レーザーの応答性(Tr、Tf)が低下するほど顕著になることが図6より分る。さらに、図6から、レーザーの応答性が極めて良好の場合(Tr(=Tf)≦0.8ns)に限り、記録の線速度が2倍速から8倍速の範囲内で理想的なレーザー応答(Tr(=Tf)=1.0ns)のパワーレベルPhと同じパワーレベルPhで記録することができることになる。
このように、レーザーパワーの未飽和現象により、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が異なると、最適なレーザーパワーレベルPhが異なること、さらには記録の線速度が速くなればなるほどこの傾向が顕著になることは、レーザーパワーの立ち上がり、立ち下がり時間および記録の線速度の異なる記録装置、記録媒体の記録互換をとる上で著しい問題となる。
また、図7に、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍速記録において、Tr(=Tf)が0.5nsから3.5nsまで変化したときに、上記レーザーパワーの未飽和を考慮して、Tr(=Tf)が0.0nsの場合と積算エネルギーが等しくなるように設定したPhの値におけるPmの値をシミュレーションにより求めた結果を示す。なお、Phの値を設定するときに用いたPmの値は、レーザー応答の遅延(Tr>0)によりPmがPlと異なる値になった場合の最も低いPmの値を用いている。2倍速記録においては、Tr(=Tf)が0.5nsから3.5nsまで、レーザーパワーの未飽和現象が起こらないので、Pm=Plのパワーレベルで記録することが可能である。しかしながら、記録速度が速くなるにつれ、レーザーパワーの未飽和現象が起こるため、例えば8倍速記録においては、Tr(=Tf)が1.0nsと2.5nsでは、レーザーパワーPmの値が異なってしまう。これは、Tr=2.5nsの方がTr=1.0nsよりもパワーレベルPmがパワーレベルPlまで下がらなくなる現象が顕著に現れるからである。
このように、レーザーパワーの未飽和現象により、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が異なると、最適なレーザーパワーレベルPmのみならず最適なレーザーパワーレベルPhが異なること、さらには記録の線速度が速くなればなるほどこの傾向が顕著になることは、レーザーパワーの立ち上がり、立ち下がり時間および記録の線速度の異なる記録装置、記録媒体の記録互換をとる上で著しい問題となる。
また、図6および図7において、横軸を記録速度に取り直した結果を図8および図9に示す。ここで記録速度は、1倍速(データ転送レート:11Mbps、線速度4.1m/sec)に対する倍数であらわしている。図8および図9に示すように、レーザーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が同じ場合においても、レーザーパワーレベルPh,Pmが記録速度に対して非線形に変化する。また、その傾向は、レーザーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が大きいほど顕著である。このように、記録速度に対して、レーザーパワーPh,Pmが非線形に変化することは、記録の線速度が変わる情報記録装置において、最適な記録のレーザーパワーを決定する際に、エラーレートが最小となるように、Ph、Pl、Pmの三つのパワーを、各記録線速度ごとに各々別個に変化させなければならず、レーザーパワーの試し書きの手順が複雑になり、著しい問題となる。
本発明者らは、上記のようなレーザーパワーの未飽和現象により、レーザーパワーの立ち上がり、立ち下がり時間および記録時の線速度が異なると、記録装置、記録媒体の記録互換をとることが難しくなること、さらに、最適なレーザーパワーレベルPh、Pl、Pmを決定する工程が複雑になることを解決する方法として、以下の方法を提案する。
レーザーレベルの未飽和をあらわす因子として(Pm−Pl)/(Ph−Pl)を考える。図4に示したように未飽和が生じない理想的にはPm=Plとなるが、未飽和が起こると、図5に示したようにPl<Pmになる。従って、(Pm−Pl)/(Ph−Pl)により、未飽和の度合いを表すことができる。未飽和が生じない場合は、Pm=Plであるので、(Pm−Pl)/(Ph−Pl)=0である。上記図6および図7の結果を、横軸を記録速度、縦軸を[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]×100とし、Tr(=Tf)が0.5nsから3.5nsの場合に、未飽和レベルがどのように変化するかまとめた結果を図10に示す。Tr(=Tf)が0.5nsであると、2から8倍速記録までレーザーパワーの未飽和現象が起きないので、未飽和レベル[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]×100は0%となる。しかしながら、Tr(=Tf)が1.0nsから3.5nsでは、この未飽和レベルが非線形に変化する。このままでは、各Tr(=Tf)、記録速度における、未飽和レベル、パワーレベルPh、Pmを簡便に求めることができない。特に、図10は、記録速度(線速度)と、レーザーの応答性(Tr、Tf)により未飽和レベルが異なることが明らかなので、異なるレーザーを搭載する情報記録装置ごとにパワーレベルPh、Pmを調整する必要性を示唆している。
しかしながら、図11中の設定ラインで示すように、あらかじめ生じる未飽和レベルを超えるように、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度の関係を簡便に線形になるように設定しておけば、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間による未飽和現象に左右されず、記録速度を決めることにより、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]の値を用いて、パワーレベルPh、Pmを求めることができる。
今、図11中に示す設定ラインで[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度の関係をあらわすとすると、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]=(記録速度)×(80/6)−(80/3)(%)となる。ここで記録速度は、1倍速に対する倍数であらわしている。この設定は、レーザーの応答性を良好にするために、図20(a)〜20(c)に示すように、記録速度に応じてPmの値(あるいはPm/Ph)が大きくなるように調整することを意味する。このことは、PmとPhの差が小さくなることによってレーザーの出力変動の負荷が軽減されるので、レーザーの応答性が向上すると考えることもできる。
上記[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度の関係式を用い、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍速記録において、Tr(=Tf)が0.5nsから3.5nsまで変化したときに、Tr(=Tf)が0.0nsの場合と積算エネルギーが等しくなるように求めたPhの値およびPmの値を図12と図13に示す。
図12と図6を較べて分かるように、図6のレーザーパワーの未飽和の影響を受ける場合とくらべ、図11の未飽和レベルを超えるように、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度において一定の関係式を立てる場合では、各記録速度においてTr、TfによるパワーレベルPhの変動が生じていない。
また、図13と図7を較べて分かるように、図7のレーザーパワーの未飽和の影響を受ける場合とくらべ、図11の未飽和レベルを超えるように、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度において一定の関係式を立てる場合では、各記録速度においてTr、TfによるパワーレベルPmの変動が生じていない。
図12、13の結果から、レーザーパワーの立ち上がり、立ち下がり時間が異なっても、記録時の線速度によって記録するレーザーパワーレベルPh,Pmは一定であることから、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間および記録時の線速度が異なっても、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度において一定の関係式を立てておくことで、情報記録装置間の記録互換をとることが可能であることがわかる。
図12と図13において、横軸を記録速度に取り直した結果を図14および図15に示す。ここで記録速度は、1倍速に対する倍数であらわしている。図14と図8を較べて分かるように、図8のレーザーパワーの未飽和の影響を受ける場合とくらべ、図14の未飽和レベルを超えるように、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度において一定の関係式を立てる場合では、レーザーの立ち上がり時間、立ち下がり時間に依存せず、記録速度からレーザーパワーPhを一意に決めることができる。
図15と図9を較べて分かるように、図9のレーザーパワーの未飽和の影響を受ける場合とくらべ、図15の未飽和レベルを超えるように、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録速度において一定の関係式を立てる場合では、レーザーの立ち上がり、立ち下がり時間に依存せず、記録速度からレーザーパワーPmを一意に決めることができる。
図14、15の結果から、レーザーパワーの立ち上がり、立ち下がり時間が異なっても、記録の線速度によって記録するレーザーパワーレベルPh,Pmを一意に決めることができることから、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間および記録時の線速度が異なっても、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録の線速度において一定の関係式を立てておくことで、記録の線速度からPhとPmの最適な記録パワーを一意に求めることができることがわかる。
このように、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間および記録の線速度の使用する範囲で生じる未飽和レベルを超えるように、[(Pm−Pl)/(Ph−Pl)]と記録の線速度において一定の関係を設定しておけば、レーザーパワーの立ち上がり時間、立ち下がり時間によるレーザーの未飽和現象を考慮せず、レーザーパワーPmを、記録線速度による一定の関係から導き出すことができる。つまり、レーザーパワーPhとPlを決めることにより、Pmの値を計算により求めることができる。このことにより、本来最適な記録パワーとして、Ph、Pl、Pmの3つの値を別々に決定しなければならないのに対し、PhとPlを決めることによりおのずとPmの値も決まることから、最適な記録レーザーパワーの決定を行なう工程が簡単になる。
また、この方法を記録装置に使用するか、あるいは記録媒体にあらかじめ情報(管理情報)として記録しておけば、記録時の線速度、レーザービームの立ち上がり時間、立ち下がり時間が異なる装置において、最適な記録パワーを求める工程が簡単になるとともに、記録の互換性も確保することができる。
また、同様に、上記図5および図6の結果を、横軸を記録速度、縦軸をPm/Phとし、Tr(=Tf)が0.5nsから3.5nsの場合に、未飽和レベルがどのように変化するかまとめた結果を図16に示す。上記図11の場合と同様に、図16中の設定ラインで示すように、あらかじめ生じる未飽和レベルを超えるように、Pm/Phと記録速度の関係を簡便に線形近似しておけば、レーザーパワーの立ち上がり、立ち下がり時間による未飽和現象に左右されず、記録速度を決めることにより、Pm/Phの値をから、Phの値を用いて、Pmの値を求めることも可能である。
また、同様に、図16における縦軸のPm/Phの比を、ある記録の線速度、例えば図17に示すように、2倍速記録におけるPm/Phの比Pm×2/Ph×2で規格化した場合でも、図17中の設定ラインで示すように、あらかじめ生じる未飽和レベルを超えるように、(Pm/Ph)/(Pm×2/Ph×2)と記録速度の関係を簡便に線形近似しておけば、レーザーパワーの立ち上がり、立ち下がり時間による未飽和現象に左右されず、記録速度を決めることにより、Pm/Phの値から、Phの値を用いて、Pmの値を求めることも可能である。
なお、本シミュレーションでは、Tr=TfであるTr/Tf=1の場合について述べたが、Tr/Tf<1あるいはTr/Tf>1の場合でも、あらかじめTr/Tfを別の値に決めた上で、上記した場合と同様にレーザーパワーPh、Pm、Plと記録の線速度に一定の関係を設定することで、Tr/Tfの値によらずTr/Tf=1.0の場合と同様の効果が得られる。また、想定される変動のほぼ中心にTr/Tfの値を決定したのちに、上記した場合と同様にレーザーパワーPh、Pm、Plと記録時の速度に一定の関係を設定すれば、Tr/Tfの値が変動することによるレーザーパワーの最適値の変動を、最小に抑えることができる。
さらに、上記シミュレーションにより得た結果をもとに、実際に実験を行なった本発明の実施例を示す。
4.7GBDVD−RAMのフォーマットを基準とする、トラックピッチ1.2μm、溝深さ65nmの凹凸の案内溝で表面が覆われている半径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板の上に、スパッタリングプロセスにより、第1保護層としてZnS−SiO2を100nm、第1界面層としてGeCrNを10nm、記録層としてBiGeTeを10nm、第2界面層としてGeCrNを10nm、第2保護層としてZnS−SiO2を50nm、熱吸収率補正層層としてGeCrを50nm、熱拡散層としてAlを80nm、順次成膜し、実施例に使用した情報記録媒体(相変化型記録媒体)を得た。
この情報記録媒体を、レーザー初期化装置を用いて結晶化させた後、記録再生特性を調べるにあたり、図18に示す光記録媒体情報記録再生装置を用いた。
以下に本実施例で用いた光記録媒体情報記録再生装置の動作、記録再生過程を説明する。まず、記録装置外部からの情報は8ビットを1単位として、8−16変調器18−7に伝送される。情報記録媒体18−1に情報を記録する際には、情報8ビットを16ビットに変換する変調方式、いわゆる8−16変調方式を使う。この変調方式では情報記録媒体上に、8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報の記録を行なっている。図中8−16変調器18−7はこの変調を行なっている。なお、ここでTとは情報記録時のデータのクロック長を表しており、本実施例では、記録の線速度8.2m/sのときに17.1ns、20.5m/sのときに6.9nsとした。
8−16変調器18−7により変換された3T〜14Tのデジタル信号は、記録波形発生回路18−5に転送され、高パワーである第1のパワーレベルPhのパワーのパルスの幅を約T/2とし、Phのレーザー照射時間に幅が約T/2の、第2のパワーレベルPlあるいは第1のパワーレベルPhと第2のパワーレベルPlの間の第3のパワーレベルPmのレーザー照射を行ない、上記一連のPhレベルのパルス間に中間パワーレベルPlあるいはPmのレーザー照射が行なわれるマルチパルス記録波形が生成される。また、上記記録波形発生回路18−5内において、3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」と「2」に対応させ、「0」の場合にはPlのパワーレベルのレーザーパワー、「1」の場合にはPmのパワーレベルのレーザーパワー、「2」の場合にはPhのパワーレベルのレーザーパワーを照射している。この際、情報記録媒体18−1上のPlのパワーレベルのレーザービームが照射された部位は結晶となり、Phのパワーレベルのパルスを含む一連のパルス列で照射された部位はアモルファス(マーク部)に変化する。また、上記記録波形発生回路18−5は、マーク部を形成するためのPhのパワーレベルのパルスを含む一連のパルス列を形成する際に、マーク部の前後のスペース長に応じて、図19に示すようなマルチパルス波形の先頭パルスの幅Tfpと最後尾のパルス幅Tlpを変化させる方式(適応型記録波形制御)に対応したマルチパルス波形テーブルを有しており、これによりマーク間に発生するマーク間熱干渉の影響を極力排除できるマルチパルス記録波形(レーザー駆動信号)を発生している。
波形発生回路18−5により生成された記録波形は、レーザー駆動回路18−6に転送され、レーザー駆動回路18−6はこの記録波形をもとに、光ヘッド18−3内の半導体レーザーを発光させる。本光記録媒体情報記録再生装置に搭載された光ヘッド18−3は、情報記録用のレーザービームとして、波長655nmの半導体レーザーが使用されている。また、このレーザー光をNA0.6の対物レンズにより上記情報記録媒体18−1の記録層上に絞込み、上記記録波形に対応したレーザーのレーザービームを照射することにより記録を行なった。
また、本光記録媒体情報記録再生装置は、グルーブとランド(グルーブ間の領域)の両方に情報を記録する方式(いわゆるランドグルーブ記録方式)に対応している。本光記録媒体情報記録再生装置ではL/Gサーボ回路18−8により、ランドとグルーブに対するトラッキングを任意に選択することができる。記録された情報の再生も上記光ヘッド18−3を用いて行なった。レーザービームを記録されたマーク上に照射し、マークとマーク以外の部分からの反射光を検出することにより、再生信号を得る。この再生信号の振幅をプリアンプ回路18−4により増大させ、8−16復調器18−9に転送する。8−16復調器18−9では16ビットごとに8ビットの情報に変換する。以上の動作により、記録されたマークの再生が完了する。以上の条件で上記光情報記録媒体18−1に記録を行なった場合、最短マークである3Tマークのマーク長は約0.42μm、最長マークである14Tマークのマーク長は約1.96μmとなる。
なお、ジッタの評価を行なう際には、3T〜14Tを含むランダムパターンの信号の記録再生を行ない、再生信号に波形等価、2値化、PLL(Phase Locked Loop)処理を行ない、ジッタを測定した。
なお、本発明の実施例では、上記光記録媒体記録再生装置において、図18中の光ヘッド18−3とレーザー駆動回路18−6のみ特性の異なる装置Aおよび装置Bを使用した。装置Aおよび装置Bにおけるレーザーパワーの立ち上がり時間Tr、立ち下がり時間Tfの値は、装置AにおいてはTr=2.7ns、Tf=2.4ns、装置BにおいてはTr=1.1ns、Tf=0.9nsである。ここで、Tr、Tfは以下の手順で測定した。レーザー光を光電力変換器により電圧変換してオシロスコープに表示させ、出力が10%から90%まで上昇する時間をTr、出力が90%から10%に降下する時間をTfとした。
以下、Tr、Tfが異なる光記録媒体評価装置を使用して、記録パルス列の構成(記録ストラテジ)と記録の線速度を変えてデータを記録し、さらに再生の線速度を変えてデータを再生し、装置間において記録再生の互換としてデータ再生時のジッタの値を調べた手順について説明する。本実施例では、2倍速記録として、記録の線速度を8.2m/s、記録データのクロック長を17.1ns、データ転送レートを22Mbpsに設定している。また、5倍速記録として、記録の線速度を20.5m/s、記録データのクロック長を6.9ns、データ転送レートを55Mbpsに設定している。
なお、ジッタの測定は、連続5トラックに内周から外周に順番にランダムパターンを10回記録した後に、5トラック中の中心のトラックで、再生のレーザーパワーを1.0mWに設定し、ジッタ値を測定した。本実施例では、5倍速記録の記録の線速度20.5m/s、クロック長6.9ns、データ転送レート55Mbpsのときのジッタの目標値を8%以下、規格上限値として9%以下を設定している。
以下に、本発明の記録方法の実施例を記載する。説明の都合上、比較例を最初に説明する。
[比較例1]
(手順1−1)まず最初に、Tr、Tfの値が小さい装置B(レーザー応答性が比較的良好)において、上記情報記録媒体を線速度8.2m/sの条件で、PmとPlのパワーレベルが等しくなるようにランドで適応型記録波形制御によりマルチパルス波形の先頭パルスの幅と最後尾のパルス幅の最適化を行ない、作成した記録ストラテジSb0を用いて最適なパワーでグルーブおよびランドにランダム信号の記録を行ない、線速度8.2m/sで信号を再生し、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。なお、最適な記録パワーの決定として、ジッタが最小となるように、PhとPlの値を各々パワーを変化させて決定した。
(手順1−2)次に、Tr、Tfが大きい装置A(レーザー応答性が比較的劣る)において、上記情報記録媒体を線速度8.2m/sの条件で、手順1−1で作成した記録ストラテジSb0を用いて最適なパワーをグルーブおよびランドで決定したのち、ランダム信号の記録を行ない、線速度8.2m/sで信号を再生し、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。なお、最適な記録パワーの決定として、ジッタが最小となるように、PhとPlの値を各々変化させて決定した。
[比較例2]
(手順2−1)今度は、装置Bにおいて、上記情報記録媒体を線速度20.5m/sの条件で、PmとPlのパワーレベルが等しくなるようにランドで適応型記録波形制御によりマルチパルス波形の先頭パルスの幅と最後尾のパルス幅の最適化を行ない、作成した記録ストラテジSb1を用いて最適なパワーでグルーブおよびランドにランダム信号の記録を行ない、線速度20.5m/sで信号を再生し、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。なお、最適な記録パワーの決定として、ジッタが最小となるように、PhとPlの値を各々変化させて決定した。
(手順2−2)次に、装置Aにおいて、上記情報記録媒体を線速度20.5m/sの条件で、手順2−1で作成した記録ストラテジSb1を用いてPmとPlのパワーレベルが等しくなるようにグルーブおよびランドで最適なパワーを決定したのち、ランダム信号の記録を行ない、線速度20.5m/sで信号を再生し、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。なお、最適な記録パワーの決定として、ジッタが最小となるように、PhとPlの値を各々変化させて決定した。
(手順4−1)さらに、装置Bにおいて、Pm/Ph=0.75となるように適応型記録波形制御によりランドでマルチパルス波形の先頭パルスの幅と最後尾のパルス幅の最適化を行ない、作成した記録ストラテジSb3を用いて最適なパワーでグルーブおよびランドにランダム信号の記録を行ない、線速度20.5m/sで信号を再生し、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。なお、最適な記録パワーの決定として、ジッタが最小となるように、PhとPlの値を各々変化させて決定し、Pmの値は決定したPhの値からPm=0.75×Phの関係式を用いて求めた。
(手順4−2、3−3)また、装置Aにおいて、装置Bで記録したこの信号を、線速度20.5m/sと線速度8.2m/sで再生を行ない、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。
(手順4−4)次に、装置Aにおいて、上記情報記録媒体を線速度20.5m/sの条件で、装置Bで最適化した記録ストラテジSb3を用いてPm/Ph=0.75となるように最適なパワーをグルーブおよびランドで決定したのち、ランダム信号の記録を行ない、線速度20.5m/sで信号を再生し、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。なお、最適な記録パワーの決定として、ジッタが最小となるように、PhとPlの値を各々変化させて決定し、Pmの値は決定したPhの値からPm=0.75×Phの関係式を用いて求めた。
(手順4−5、4−6)また、装置Bにおいて、装置Aで記録したこの信号を、線速度20.5m/sと線速度8.2m/sで再生を行ない、グルーブおよびランドで再生ジッタを調べた。
上記、Tr、Tfが異なる光記録媒体評価装置を使用して、記録パルス列の構成(記録ストラテジ)と記録の線速度を変えてデータを記録し、さらに再生の線速度を変えてデータを再生し、装置間において記録再生の互換としてデータ再生時のジッタの値を調べた結果を表1にまとめる。なお、表1において未飽和レベルは、(Pm−Pl)/(Ph−Pl)で計算される数値である。
まず、表1の比較例1をみて分かるように、第2の記録パワーレベルPlと第3のパワーレベルPmが同じ場合、2倍速記録の記録の線速度8.2m/s、クロック長17.1nsのときは、レーザーパワーの立ち上がり時間Tr、立ち下がり時間Tfが各々1.1ns、0.9nsと小さい装置Bにおいて最適化を行なった記録ストラテジSb0を用いて、Tr、Tfが各々2.7ns、2.4nsと比較的大きい装置Aにおいて最適なパワーで記録を行なうと、装置Aで記録再生されるジッタは、装置Bで記録再生されるジッタとほぼ同じ値になる。
しかしながら、比較例2をみても分かるように、第2の記録パワーレベルPlと第3のパワーレベルPmが同じ場合、5倍速記録の記録の線速度20.5m/s、クロック長6.9nsのときは、装置Bにおいて最適化を行なった記録ストラテジSb1を用いて、装置Aにおいて最適なパワーで記録を行なうと、装置Bで記録再生されるジッタが目標の8%以下であるのに対し、装置Aで記録再生されるジッタは規格の上限値である9%を超えてしまっている。このことから、記録の線速度が上がることにより、Tr、Tfの異なる装置において記録の互換がとれなくなることが分かる。なお、比較例1において、第1のパワーレベルPhと第3のパワーレベルPmの比Pm/Ph=0.43〜0.46であり、レーザーパワーの未飽和レベルを表す数値(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の値は0である。
次に、実施例1として、第3のパワーレベルPmを記録の線速度に応じて変化させ、第1のパワーレベルPhと第3のパワーレベルPmの比Pm/Ph=0.65に設定した場合を示す。5倍速記録の記録の線速度20.5m/sのときに、装置Bにおいて最適化を行なった記録ストラテジSb2を用いて、線速度20.5m/sで装置Bにおいて記録再生を行なうと、このときのジッタの値は、比較例2で示した値とほぼ同じ値になっており、目標の8%以下である。また、この装置Bで記録したデータを、装置Aにおいて線速度20.5m/sと線速度8.2m/sで再生した場合のジッタの値も、装置Bで再生した場合とほぼ同じ値で、目標の8%以下である。さらに、装置Aにおいて線速度20.8m/sで、記録ストラテジSb2を用いてPm/Ph=0.65となるように決定した最適なパワーで記録再生を行なうと、ジッタは、装置Bで記録再生した場合とほぼ同じ値となっており、目標の8%以下である。また、この装置Aで記録したデータを、装置Bにおいて線速度20.5m/sと線速度8.2m/sで再生した場合のジッタの値も、装置Bで再生した場合とほぼ同じ値で、目標の8%以下である。このことから、第3のパワーレベルPmを記録の線速度に応じて変化させ、Pm/Ph=0.65に設定することで、記録の線速度が上がっても、Tr、Tfの異なる装置において記録の互換がとれることが分かる。なお、実施例1において、レーザーパワーの未飽和レベルを表す数値(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の値は0.25〜0.27である。また、表1に示したようにパワーレベルPlに対するパワーレベルPmの比Pm/Plは1.22〜1.25である。第3のパワーレベルPmを記録の線速度に応じて調整する際に、レーザーパワーの未飽和レベルを表す(Pm−Pl)/(Ph−Pl)またはPm/Plを線速度に応じて調整してもよい。
さらに、実施例2として、第3のパワーレベルPmを記録の線速度に応じて変化させ、第1のパワーレベルPhと第3のパワーレベルPmの比Pm/Ph=0.75に設定した場合を示す。5倍速記録の記録の線速度20.5m/sのときに、装置Bにおいて最適化を行なった記録ストラテジSb3を用いて、線速度20.5m/sで装置Bにおいて記録再生を行なうと、このときのジッタの値は、比較例2で示した値とほぼ同じ値になっており、目標の8%以下である。また、この装置Bで記録したデータを、装置Aにおいて線速度20.5m/sと線速度8.2m/sで再生した場合のジッタの値も、装置Bで再生した場合とほぼ同じ値で、目標の8%以下である。
さらに、装置Aにおいて線速度20.8m/sで、記録ストラテジSb3を用いてPm/Ph=0.75となるように決定した最適なパワーで記録再生を行なうと、ジッタは、装置Bで記録再生した場合とほぼ同じ値となっており、目標の8%以下である。また、この装置Aで記録したデータを、装置Bにおいて線速度20.5m/sと線速度8.2m/sで再生した場合のジッタの値も、装置Bで再生した場合とほぼ同じ値で、目標の8%以下である。このことから、第3のパワーレベルPmを記録の線速度に応じて変化させ、Pm/Ph=0.75に設定することで、記録の線速度が上がっても、Tr、Tfの異なる装置において記録の互換がとれることが分かる。なお、実施例2において、レーザーパワーの未飽和レベルを表す数値(Pm−Pl)/(Ph−Pl)の値は0.34〜0.37である。また、表1に示したようにパワーレベルPlに対するパワーレベルPmの比Pm/Plは1.22〜1.25である。第3のパワーレベルPmを記録の線速度に応じて調整する際に、レーザーパワーの未飽和レベルを表す(Pm−Pl)/(Ph−Pl)またはPm/Plを線速度に応じて調整してもよい。
このように、本来、最適な記録パワーの決定が、PhとPlとPmの3値を決める複雑な工程であるのに対し、記録速度に応じてPh/Pm、(Pm−Pl)/(Ph−Pl)あるいはPm/Plの値を設定することにより、Pmの値をPhの値から求めることができるので、最適な記録パワーの決定を、PhとPlの2値を決める工程に簡素化することができる。
さらに、本実施例1および実施例2におけるPhの値が比較例2におけるPhの値よりも小さいことから分かるように、本発明を用いることにより、記録パワーの最大レベルを下げることが可能となる。このことから、本発明を、レーザーパワーの出力値に上限がある情報記録装置に適用すれば、記録の線速度およびデータ転送レートをより高め、記録データのクロック長をより短くする効果が得られる。さらに、レーザーの負荷を低減することも可能である。
また、実施例で用いた記録ストラテジSb1、Sb2、Sb3の、例えば3T信号のあとの7T信号におけるパルス幅に言及すれば、図19で示す先頭パルスのパルス幅Tfpと、最終パルスのパルス幅Tlpは、クロック長Tを基準として、Sb1の場合はTfp=1.75T、Tlp=0.63T、Sb2の場合はTfp=2.06T、Tlp=0.56T、Sb3の場合はTfp=2.38T、Tlp=0.50Tである。このように、各記録ストラテジにおいてTfp、Tlpの値が変化していることから、記録の線速度、あるいは第3のパワーレベルPm、あるいは第1のパワーレベルPhと第3のパワーレベルPmの比Pm/Ph、あるいはレーザーパワーの未飽和レベルを表す数値(Pm−Pl)/(Ph−Pl)、あるいはPm/Plに応じて、記録ストラテジの先頭パルスのパルス幅Tfpと、最終パルスのパルス幅Tlpを変えることにより、記録ストラテジの最適化を簡略に行なうことができ、ひいては、最適な記録ストラテジを用いて行なう記録パワーの最適化の工程も簡略化できる。
上記実施例では、CLV方式の記録を例示したが、本発明はCAV方式の記録にも適用することができる。この場合には、線速度は、2倍速、3倍速、5倍速のように記録速度のみならず、ディスク状媒体の半径位置に応じても異なる。従って、Pm、Pm/Pl、Pm/Phなどのパラメータは、本発明に従う最適記録パワーのみならずディスク状媒体の半径位置に応じて調整される。
以上説明したように、本発明によれば、データ記録の線速度、データ転送レートが速くなった場合に、レーザーの立ち上がり時間、立ち下がり時間の影響を考慮したうえで、情報記録装置において最適な記録のレーザーパワーの設定を簡単に行なうことができる。さらに、本発明によれば、データ記録の線速度、データ転送レート、レーザーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が異なる情報記録装置間において記録互換性を確保することができる。
なお、本実施例では、レーザーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が小さい装置Bで最適化したストラテジを用いて記録互換の検証を行なったが、本発明により、レーザーの立ち上がり時間、立ち下がり時間が大きい装置Aで最適化したストラテジを用いた場合でも、記録の互換性を得ることが確認できている。
なお、本明細書中では、レーザービームと表現しているが、本発明は情報記録媒体の情報記録部の状態を変化させることが可能なエネルギービームであれば本発明の効果は得られるので、電子ビーム等のエネルギービームを使用した場合にも、本発明の効果は失われない。
また、本発明の実施例では波長655nmの赤色レーザーを用いているが、本発明は特にレーザーの波長によるものではなく、青色レーザー、紫外線レーザー等の比較的短波長のレーザーを使用する情報記録装置およびこれに用いる情報記録媒体に対しても効果を発揮する。
また、本発明の実施例では、上記情報記録媒体に相変化ディスクを用いているが、本発明はエネルギービームの照射により情報の記録が行なわれる情報記録媒体であれば適用可能であるので、特に情報記録媒体を構成する材料および構造あるいは情報記録媒体の形状によらず、光カード等の円盤状情報記録媒体以外の情報記録媒体にも適用できる。