JP4303455B2 - ハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法 - Google Patents

ハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製筒状部材内に緩衝部材を介してハニカム構造体を保持する流体処理装置の製造方法に関し、例えば、同筒状部材内に緩衝マットを介してハニカム構造体の触媒担体を保持する触媒コンバータの製造方法として好適な製造方法に係る。
【0002】
【従来の技術】
流体に対してフィルタ機能を有するハニカム構造体が、金属製筒状部材内に緩衝部材を介して内蔵された流体処理装置が知られており、種々の流体の浄化に供されている。例えば、自動車の排気系においては触媒コンバータやディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)が搭載されており、触媒担体あるいはフィルタ等(総称して担体といい、以下、触媒担体いうときはこれらを代表する)としてセラミック製の脆弱なハニカム構造体が用いられている。
【0003】
例えば、特開2002−205124号公報には、自動車の触媒コンバータに関しては、内蔵する触媒の大型化によって車両への搭載が困難となると共に、触媒の早期活性化のためにますます内燃機関に近接した配置が要請されるに至っており、このような要請に対しては、配管構造の変更のみでは対処することができず、触媒コンバータの外筒端部を所望の形状に形成し得ることが必要となるとして、スピニング加工等による管端の成形方法が有効であり、この方法によれば、例えばワークの端部に形成する縮径部を、ワークの中心軸に対し偏芯あるいは傾斜させる等、異径部を形成することが可能となる旨記載されている。
【0004】
そして、管状のワークの端部に、本体部の外周面の仮想延長面より外側に突出する縮径部を、容易且つ適切に形成し得るワークの端部成形方法を提供することを課題として、以下の端部成形方法が提案されている。即ち、本体部の最終目標形状の外形を有する非加工部と、該非加工部に隣接し該非加工部より大径の加工対象部を有する管状の段付ワークに対し、前記非加工部から、前記非加工部の中心軸に対して少なくとも偏芯、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を有し、一部が前記非加工部の外周面の仮想延長面より外側に突出する最終目標加工部に至るまでに複数の目標加工部を設定し、該複数の目標加工部に基づき複数の加工目標軸を設定し、該複数の加工目標軸のうちの一つと前記加工対象部の中心軸が略同軸となるように前記段付ワークを支持し、前記加工対象部の中心軸を前記複数の加工目標軸のうちの各加工目標軸と一致させると共に、各加工目標軸における前記加工対象部の外径を縮小させるようにスピニング加工を行なって前記加工対象部を成形し、前記最終目標加工部形状に形成する方法である。更に、上記の一例として触媒コンバータへの適用例も開示されている。
【0005】
ところで、前述の流体処理装置の製造方法として、前述のハニカム構造体の外周に、シール機能を有する緩衝部材としてセラミック製の緩衝マットを巻回し、これらを、筒状部材内に緩やかに挿入した後、緩衝マットが最適圧縮量となる径まで筒状部材を縮径するサイジング(sizing又はcalibrating)と呼ばれる方法が知られている。例えば、特開昭64−60711号、特開平8−42333号、特開平9−170424号、特開平9−234377号、米国特許第5329698号、米国特許第5755025号等の公報に開示されている。
【0006】
更に、特開2001−355438号公報には、外周に保持材が装着された触媒担体を保持筒に圧入するに際し、上記触媒担体の外径を計測し、この計測値に適合する内径を有する保持筒に保持材が装着された触媒担体を圧入する触媒コンバータの製造方法が提案されている。また、触媒担体の外周に装着された保持材の外径を計測し、この計測値に適合する内径を有する保持筒に保持材が装着された触媒担体を圧入する方法も提案されている。更に、保持材の外径を計測するに際し、所定の圧力を加えた状態で計測することも提案されている。そして、同公報においては、内径が異なる多数の保持筒の素材を予め準備しておき、その中から適正な内径を有するものを選択することが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前掲の特開2002−205124号公報に記載のワークの端部成形方法においては、管状の段付ワークを形成することとしている。即ち、筒状部材に対し所望の相対的段差を設けることとしている。その方法として、筒状部材の端部を拡径して大径端部を形成し、あるいは本体部(胴部)を縮径して小径本体部を形成することにより、相対的段差を形成しておき、相対的に大径の端部に対し、少なくとも偏芯、傾斜及び捩れの何れかの軸を中心にスピニング加工を行うことにより、本体部(胴部)の外周面の仮想延長面より外側に縮径部の一部(例えば先端)を突出させて張出縮径部(ネッキング部)を形成することとしている。
【0008】
然し乍ら、相対的段差を形成する方法として、端部を拡径して大径端部を形成する場合、あるいは本体部(胴部)を縮径して小径本体部を形成する場合の何れにおいても、冷間塑性加工における拡径限界、あるいは縮径限界が20%程度であり、成形後の板厚精度等を考慮すると実際に可能な拡径率又は縮径率は10数%程度となるため、前掲の特開2002−205124号公報に記載の方法によっては、所望の張出量(本体部の外周面の仮想延長面より縮径部先端が外側に突出する量)を確保できない場合が生ずる。従って、搭載レイアウトの制約が大となり、ひいては設計上の制約が大となる。
【0009】
一方、前述の圧入による方法においては、一般的に、緩衝部材たる緩衝マットの充填密度(GBD値と呼ばれる)を基準に触媒担体の外径と筒状部材の内径との間隙が設定される。このGBD値は、緩衝マットの単位面積当り重量/充填間隙寸法であり、緩衝マットの充填密度に応じて面圧(単位:パスカル)が発生し、この面圧によって触媒担体が保持されるのであるが、面圧は、当然乍ら触媒担体の強度を超えない値に調整すると共に、振動や排気ガス圧力が加わる触媒担体に対し、これが筒状部材内を移動しないように保持し得る値に調整しなければならない。このためには、緩衝マットは設計範囲内のGBD値で圧入され、且つこのGBD値を製品のライフサイクルの間は維持しなければならない。
【0010】
しかし、前述の圧入による方法においては、製造上必然的に生ずる触媒担体の外径の誤差、筒状部材の内径の誤差、及びこれらの間に介装される緩衝マットの単位面積当り重量の誤差が重畳されてGBD値の誤差となる。従って、このGBD値の誤差を最小とするための各部材の最適組合せを見い出すことは、量産のための現実的な解決とはなりえない。また、GBD値自体も、緩衝マットの特性や個体差に左右され、しかも平面上における測定値に依拠しており、触媒担体に対し緊密に巻回された状態における測定値を表すものではない。このため、従来のようにGBD値に依存することなく、触媒担体を適切に筒状部材内に収容することが望まれている。
【0011】
これに対し、サイジングによる方法においては、触媒担体の外径と筒状部材の内径を予め計測しておき、緩衝マットの適正圧縮量を求め、この圧縮量だけ縮径することが企図されるが、この方法では最終的に緩衝マットの圧縮量が最適か否かを判定することは困難である。これは、金属製の筒状部材を縮径する際には、筒状部材のスプリングバックを考慮して、目標とする径より予め小さく縮径加工(所謂オーバーシュート)する必要があるからである。このため、過剰な圧縮力が付与されるおそれがある。また、筒状部材の縮径加工時には板厚の変化が不可避であるため、真の内径(内壁面位置)、即ち正確な縮径量を設定することが一層困難になっている。
【0012】
上記のオーバーシュートに起因する問題を解決する方法として、前掲の米国特許第5755025号の明細書においては、予め触媒担体の外径を計測しておき、それに緩衝マットの圧縮量を加味して保持範囲の最適外径を算出し、それに基づいて筒状部材を全長に亘って数種類の径まで拡径して、その後選択した筒状部材内に、圧入方式と同様の治具を用いて触媒担体と緩衝マットを圧入することとしている。しかし、緩衝マットの単位面積当り重量の誤差については何等考慮されていないため、触媒担体に付与される面圧に誤差が生ずることは避けられない。
【0013】
ここで、触媒担体を筒状部材内の所定位置に保持するために必要とされる保持力について説明すると、筒状部材の径方向の保持力は、触媒担体の外面及び筒状部材の内面に対し直交する方向に働く緩衝マットの圧縮復元力である。一方、例えば自動車の排気装置に固定された筒状部材に対し、触媒担体及び緩衝マットには振動や排気ガス圧力によって軸方向の力が生ずるので、これに抗する力として筒状部材の軸方向(長手方向)の保持力が必要であり、これは緩衝マットと触媒担体との間の摩擦力、及び緩衝マットと筒状部材との間の摩擦力が資するところとなる。
【0014】
上記の緩衝マットと触媒担体との間の摩擦力、及び緩衝マットと筒状部材との間の摩擦力は夫々、触媒担体の外面と緩衝マットとの間の静摩擦係数を緩衝マットの圧縮復元力(面圧)に乗じた積、及び筒状部材の内面と緩衝マットとの間の静摩擦係数を緩衝マットの圧縮復元力(面圧)に乗じた積として表される。このとき、軸方向(長手方向)の保持力としては、静摩擦係数が低い方の部材と緩衝マットとの間の摩擦力が支配的となる。従って、静摩擦係数が判明している触媒担体及び筒状部材に関し、必要な摩擦力が明らかとなり、これを確保するためには緩衝マットに対する面圧を高くする必要があるが、触媒担体が脆弱な場合は径方向の荷重が過大となることを回避するためには、緩衝マットに対する面圧の限度内で、軸方向の保持力を確保し得るように設定する必要がある。
【0015】
而して、緩衝マットに対する面圧は、触媒担体の外面の静摩擦係数と筒状部材の内面の静摩擦係数のうちの低い方の部材の静摩擦係数に基づいて設定し、その面圧に応じて筒状部材を縮径するとよい。しかし、従来方法においては、前述のGBD値に基づく管理が一般的であり、いわば代用値による推定管理が行なわれているということになる。このため、推定要因が重畳されて誤差が不可避となるというだけでなく、結果的に、緩衝マットと触媒担体との間の摩擦力による保持力と、緩衝マットと筒状部材との間の摩擦力による保持力が混同されて、各部品の寸法関係が設定されている。
【0016】
結局、筒状部材内に緩衝マットを介して触媒担体を保持するに際し、最も適切な制御パラメータは、緩衝部材(緩衝マット)を介して触媒担体(触媒担体あるいはフィルタ)に付与される面圧(単位:パスカル)であり、これを直接検出し、あるいはこれになるべく近似した値を間接的に検出し、その検出結果に基づいて筒状部材を縮径することが可能であれば、従前のサイジングによっても良好な精度で筒状部材を縮径することができる。
【0017】
そこで、本発明は、金属製筒状部材内に緩衝部材を介してハニカム構造体を保持するハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法において、筒状部材に対し、その胴部の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を有し、端部が胴部の外周面の仮想延長面より外側に突出するネッキング部を、容易且つ適切に形成することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、上記に加え、圧縮された緩衝部材の圧縮復元力によってハニカム構造体に付与される面圧に基づき、緩衝部材を巻回したハニカム構造体を、適切に筒状部材の胴部内に保持することを別の課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載のように、金属製筒状部材内に緩衝部材を介してハニカム構造体を保持するハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法において、前記ハニカム構造体の外周に前記緩衝部材を装着した状態で、押圧体によって前記ハニカム構造体の軸芯に対して直交する方向に前記緩衝部材を押圧して前記緩衝部材を圧縮すると共に、前記緩衝部材の圧縮復元力によって前記ハニカム構造体に付与される面圧を検知し、該面圧が所定の値となるときの前記ハニカム構造体の軸芯と前記押圧体の先端との間の距離を測定し、該測定結果の距離に基づき、前記筒状部材の少なくとも一端部の最終目標形状の内側の半径を設定し、該内側の半径が所定の最大内側半径となるまで拡径して拡径部を形成し、前記緩衝部材を前記ハニカム構造体周りに装着して前記筒状部材内に収容し、少なくとも前記緩衝部材を収容する部分の内側の実質的な半径が前記測定結果の距離となるように、前記緩衝部材の存在する範囲に亘って前記緩衝部材を圧縮しつつ前記筒状部材の軸方向の所定範囲を縮径し胴部を形成し、胴部の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を有し、前記拡径部の外周面に至るまでに複数の目標加工部を設定し、該複数の目標加工部に基づき複数の加工目標軸を設定し、該複数の加工目標軸のうちの一つと前記拡径部の中心軸が略同軸となるように前記筒状部材を支持し、前記拡径部の中心軸を前記複数の加工目標軸のうちの各加工目標軸と一致させると共に、各加工目標軸における前記拡径部の外径を縮小させるようにスピニング加工を行なって前記拡径部を成形し、前記一端部最終目標形状のネッキング部を形成することとしたものである。
【0021】
前記請求項記載の製造方法において、更に、請求項に記載のように、前記胴部の少なくとも一端側の所定範囲を含み前記筒状部材の開口端に至るまで、前記胴部の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸に沿ってスピニング加工を行い、前記ネッキング部を形成するとよい。これにより、縮径後の胴部の一端側の所定範囲がスピニング加工されて重合加工部となり、低剛性部分が形成されることはない。
【0022】
また、前記請求項1又は2記載の製造方法において、請求項に記載のように、前記筒状部材内の前記緩衝部材を収容する部分の外周面の仮想延長面より外側に突出する外周面を有する前記筒状部材の一端部の最終目標形状の内面と、前記筒状部材内の前記緩衝部材を収容する部分の中心軸との距離を、前記所定の最大内側半径として設定するとよい。あるいは、前記請求項1又は2記載の製造方法において、請求項に記載のように、前記筒状部材の少なくとも一端部に、前記筒状部材の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を中心として、前記一端部の最終目標形状の最大内側半径となるまで拡径して前記拡径部を形成することとしてもよい。
【0023】
更に、上記各請求項において、請求項に記載のように、前記筒状部材の軸方向に沿って、前記緩衝部材を夫々巻回した複数個の前記ハニカム構造体を、所定の間隔を以て並設し、前記緩衝部材の各々が存在する範囲毎に前記緩衝部材を圧縮するように、前記筒状部材の軸方向の所定範囲を縮径して前記胴部を形成することとしてもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
上記のように金属筒状部材内に緩衝部材を介してハニカム構造体を保持する流体処理装置の製造方法に関し、その具体的一態様として、触媒コンバータの製造方法について図面を参照して説明する。本発明の流体処理装置としては、触媒コンバータのほか、例えばDPフィルタ装置や、浄化フィルタがあり、更に、特開2002−50383号及び68709号公報等に記載の燃料電池用改質器も包含される。筒状部材は外筒、ハウジングあるいはケーシングとも呼ばれ、触媒コンバータの場合には、ハニカム構造体は触媒担体に対応し、緩衝部材は触媒担体保持用の緩衝マットに対応する。また、DPフィルタ装置の場合には、ハニカム構造体はフィルタに対応し、緩衝部材はDPフィルタ用の緩衝マットに対応する。図1に示すように、先ず、金属製の筒状部材(図1に加工前の部分を10で示し、一端部を拡径した状態を101で示す)の一端部に対する最終目標形状の内側の半径(R2)を設定する。即ち、筒状部材10の胴部(図1の中間部に2点鎖線で示す部分)の外周面の仮想延長面より外側に突出する外周面を有する一端部の最終目標形状(図1の左端部に2点鎖線で示すネッキング部)の内面と、前記胴部の中心軸Cとの距離を、最大内側半径R2として設定する。
【0025】
そして、図1の左側に示すように、筒状部材の一端部を、その最終目標形状の最大内側半径R2となるまで拡径して拡径部10aを形成する。以後、このように拡径部10aが形成された筒状部材を特定する場合には1次加工部材101という。このときの拡径手段としては、一般的なパンチの圧入によるプレス加工があるが、スピニング等、他の方法を用いてもよい。このときの拡径量(d2)は、最終目標形状の最大内側半径R2から筒状部材(の加工前の部分)の内側半径R0を減算した値である。尚、図1に記載のR1及びd1については後述する。
【0026】
上記の拡径工程の前(又は後)に測定工程を設けることとしてもよく、以下、図2を参照して説明する。先ず、セラミック製のハニカム構造体に触媒を担持した触媒担体2の外周に、緩衝部材3を一層巻回し、必要に応じ可燃性テープ等によって固定し、一体品1を形成する。本実施形態の触媒担体2は各セル(流路)間の壁が薄く形成されており、従来品に比べて脆弱である。緩衝部材3もセラミック繊維製で、非膨張性のアルミナマットで構成されているが、熱膨張型のバーミキュライト等を用いた緩衝マットや、それらを組み合わせた緩衝マットとしてもよい。また、バインダーが含浸されていない無機質繊維マットでもよい。尚、バインダーの有無及び含有量によって面圧が変わるので、面圧設定においてはこれを加味する必要がある。あるいは、金属細線を編成したワイヤメッシュ等を用いてもよいし、それをセラミックマットと組み合わせて使用してもよい。更に、それらと金属円環状のリテーナや、ワイヤメッシュ製のシールリング等と組み合わせてもよい。図示は省略するが、緩衝部材3の両端には凸部と凹部を形成しておき、これらが相互に嵌合する一般的な巻回方法を用いるとよい。また、予め円筒状に形成された緩衝部材も存在するので、その場合には円筒状の緩衝部材内に触媒担体2を収容するだけで、緩衝部材3が触媒担体2周りに装着された状態となる。
【0027】
次に、図2に示すように、上記の一体品1を一対のクランプ装置CH間に把持し、測定装置DTの押圧体PMによって、緩衝部材3を介して触媒担体2をその軸芯に対して直交する方向に押圧すると共に、触媒担体2に付与される面圧を検知し、該面圧が所定の値となるときの、触媒担体2の軸芯Zと押圧体PMとの間の距離R1を測定する。そして、測定後、押圧体PMを原位置に復帰させた後、クランプ装置CHによる把持を解除する。以下、本実施形態で用いるクランプ装置CH及び測定装置DTについて説明する。
【0028】
クランプ装置CHは、例えばコレットチャックで構成され、これによって触媒担体2の上下端部が挟持されてその軸芯Zが所定の測定位置にセットされる。本実施形態の測定装置DTは、モータMT駆動のボールスクリュー式アクチュエータΑCと、その先端にロードセルLCを介して支持された反力検知手段たる押圧体PMと、後端に配置された位置検知手段たるロータリエンコーダREを備えている。ロードセルLC及びロータリエンコーダREの検知信号は電子制御装置(以下、コントローラという)CTに入力され、後述の各種データに変換されてメモリ(図示せず)に記憶されると共に、モータMTはコントローラCTによって駆動制御されるように構成されている。
【0029】
押圧体PMは触媒担体2の軸芯Zに対して直交する方向(図2の左右方向)に進退し、緩衝部材3に当接後これを圧縮し得るように配置される。押圧体PMの当接面積は既知であるので、この押圧体PMによって測定対象たる触媒担体2及び緩衝部材3が押圧されたときの反力が、触媒担体2に対する面圧としてロードセルLCによって検知され、コントローラCTに入力される。コントローラCTにおいては、ロードセルLCの検知信号が面圧値に換算されてメモリに記憶され、別途予め入力された所定の面圧値と比較される。また、ロータリエンコーダREによって押圧体PMの進退量及び停止位置がボールスクリュー(図示せず)の回転情報として検知され、コントローラCTに入力される。コントローラCTにおいては、ロータリエンコーダREの検知信号がリアルタイムで押圧体PMの進退量及び停止位置の値に変換されてメモリに記憶される。尚、これらの検知手段とコントローラCTとの間は電気的に接続してもよいし光学的に接続してもよい。
【0030】
上記のように構成された測定装置DTを以下のように駆動することによって、触媒担体2の軸芯Zと押圧体PMとの間の距離と、そのときに触媒担体2に付与される面圧との関係を測定することができる。即ち、押圧体PMを初期位置(図2のP0点)から前進(図2の左方向に移動)させて緩衝部材3の一部を押圧し、押圧部における緩衝部材3の圧縮反力が所定の値に到達したときの位置(図2のP1点)を検出する。この位置(図2のP1点)は、製品となった後の緩衝部材3の面圧値が所定の値となるときの、筒状部材の(縮径加工後の)内壁面の位置に相当する。従って、触媒担体2に付与される押圧力とそれによって生ずる反力(面圧)との関係を、予めコントローラCTのメモリに記憶しておき、この関係に基づきロードセルLCの検知信号(反力)を面圧値に変換し、これと所定の面圧値とを比較しながら押圧体PMを上記の位置(図2のP1点)まで前進させ、押圧体PMの移動距離を求める。
【0031】
而して、押圧体PMの先端の初期位置(図2のP0点)と触媒担体2の軸芯Zとの間の所定距離から、ロータリエンコーダREによって検知される押圧体PMの移動距離を差し引けば押圧体PMの先端の位置(即ち、軸芯Zからの距離R1)を判定することができ、この位置が、製品状態(即ち、後述する図4の2次加工部材102内で触媒担体2に対する面圧が所定の面圧値で保持されている状態)における筒状部材の(縮径加工後の)内壁面の位置ということになる。このように、本実施形態によれば触媒担体2及び緩衝部材3の寸法や特性値を個別に測定することなく、また前述のGBD値を用いることもなく、所定の面圧値となる位置(図2のP1点)を判定することができる。即ち、上記の触媒担体2の軸芯Zと押圧体PMの先端との間の距離R1は、結果的に触媒担体2の外径誤差のみならず緩衝部材3の単位面積当り重量の誤差をも考慮した値となるので、これらの誤差を別途測定する必要はない。
【0032】
尚、上記測定結果の距離R1は、後述するサイジング工程に備え、コントローラCTのメモリに記憶されるが、必要に応じて表示するように構成してもよい。また、触媒担体2の軸芯Zの回りに放射状に複数の測定装置DTを配置し多点測定を行ない、あるいは、軸芯Zの回りにクランプ装置CH及び一体品1を回動(割り出し)させて多点測定を行なうように構成し、各測定値の平均を求めることとしてもよい。特に、触媒担体2が円形断面でない場合には、触媒担体2の形状に応じて多点測定を行なう必要があるので、複数の測定装置DTを配置することが望ましい。押圧体PMは、必ずしも所定の位置(図2のP1点)で停止させる必要はなく、この位置を検知後そのまま連続して後退させ、更に、この押圧体PMの後退に同期してクランプ装置CHによる把持を解除させるように構成してもよい。
【0033】
面圧検知手段としては、図2に破線で示すように、触媒担体2と緩衝部材3との間に感圧素子PSを介装し、この感圧素子PSの検知信号に基づき面圧を直接検知するように構成してもよい。この感圧素子PSとしては、例えば、マトリックス状に電極を配置したセンサシートを利用して圧力分布をリアルタイムで検出するものが市販されているので、これを用いてもよい。このように面圧検知手段を構成すれば、予め測定装置DTによって前述の距離R1を求める必要はなく、図3の1次加工部材101のうちの緩衝部材3を含む胴部を、前記面圧が所定の圧力範囲内となるように緩衝部材3と共に縮径して触媒担体2を保持するように構成することができる。従って、製造時間を大幅に短縮することができる。尚、感圧素子PSが安価で、且つ、触媒コンバータの機能に悪影響を与えないのであれば、サイジング後に抜き出すことなくそのまま放置することとしてもよい。
【0034】
而して、筒状部材の内側半径R0から上記測定結果の距離R1を減算した値が縮径量(d1)である。即ち、図1に二点鎖線で示す位置が筒状部材の胴部の中心軸Cから距離R1の位置で、このR1が図4に示す胴部11の最終目標形状の内側半径とされる。従って、図4に示す胴部11の内側半径R1と拡径部10aの最大内側半径R2との差(d0=R2−R1)が、胴部11の外周面の仮想延長面より外側に突出する最大幅であり、d0=d1+d2の関係にある。換言すれば、図1に示すように、筒状部材の一端部に対して拡径される変形量は拡径量(d2)のみであるが、最終的には、胴部11の外周面に対して変形量(d0)が確保されることになる。つまり、筒状部材の一端部(図1の拡径部10a)の最終目標形状の最大内側半径R2と縮径後の胴部(縮径部)11の最終目標形状の内側半径R1との差が、胴部11の外周面の仮想延長面より外側に突出する最大幅(d0)となるので、拡径及び縮径による変形量を最小限に抑えることができる。尚、上記の測定工程は、触媒担体2及び緩衝部材3が許容誤差範囲内の品質を確保し得るものであれば、個体毎に行うことなくサンプルの測定結果を利用することとし、簡略化することもできる。
【0035】
そして、図1に示すように筒状部材の一端部を拡径した1次加工部材101内に、図3に示すように、触媒担体2に緩衝部材3を装着した一体品1を一対収容して並設し、所定位置に保持する。この場合において、各緩衝部材3の外面は筒状部材の内面に圧接されず、接触しないか、あるいは、緩く接触している程度の関係に設定し、各緩衝部材3は殆ど圧縮力を受けないように設定することが望ましい。尚、図1に示す拡径工程と図3に示す収容工程を逆にしてもよく、また収容工程の前に測定工程を行うこととしてもよい。
【0036】
次に、上記一対の一体品1を収容し所定位置に保持した1次加工部材101に対し、図4に示すようにサイジングを行い、緩衝部材3が最適圧縮量となる径まで1次加工部材101の非加工部(即ち、筒状部材の胴部)を縮径する。サイジング方法としては種々の方法が知られているが、本実施形態では図9に示す縮径装置RDが用いられている。これはフィンガー式と呼ばれ、コレットチャックが利用されている。即ち、図9に示すように、円筒状のハウジングGD内に、内側がテーパ面の円筒状の押型DPが液密的摺動自在に収容され、更にこの押型DPに対して、複数の割り型(コレット型)DVが摺動自在に収容されている。図4に示すように、各々の割り型DVの外側はテーパ面に形成されており、押型DPの内側のテーパ面に対し摺動自在に配設される。押型DP及び割り型DVは、油圧駆動装置(図示せず)によって駆動されるように構成されており、油圧によって押型DPがハウジングGDの軸方向(長手方向)に駆動され、この押型DPの軸方向移動に応じて割り型DVが径方向(軸芯方向)に駆動されるように構成されている。尚、油圧駆動装置(図示せず)は図2に示すコントローラCTによって制御されるように構成することができる。
【0037】
而して、図4に示すサイジング工程において、油圧駆動装置(図示せず)を駆動し、押型DPを油圧によってハウジングGDの軸方向に駆動すると(図4の左方に移動すると)、割り型DVは径方向(軸芯方向)に移動し、筒状部材(1次加工部材101)の胴部及び緩衝部材3を圧縮しつつ縮径することとなる。このときの縮径量は油圧駆動装置の制御によって正確に制御され、筒状部材(1次加工部材101)の中心軸C(前述の触媒担体2の軸芯Zと一致)と内壁面との間の距離が、前述の測定結果の距離R1となるまで、調心されつつ1次加工部材101及び緩衝部材3が縮径され胴部11が形成される。これにより、触媒担体2は緩衝部材3を介して筒状部材(サイジング後の状態を2次加工部材102とする)内で安定した状態で支持される。この場合において、測定工程を省略する場合には、距離R1を予め実験、演算等によって求め、所定の値に設定することになる。
【0038】
尚、本実施形態の縮径装置RDに縮径時の反力検出手段を設け、前述の測定装置DTとしても機能し得るように構成することができる。このように構成することにより、1台の装置で測定とサイジングを行うことができるので、製造効率が極めて良好となる。更に、測定とサイジングとの間の時間間隔を短く設定することができ、測定時の押圧によって全周に亘って均等に薄肉化した緩衝マットが復元する前に筒状部材をセットすればよくなるので、製造効率が一層良好となる。また、例えば図2に記載の感圧素子PSによって、触媒担体2に付与される面圧を監視(モニター)しながら1次加工部材101を縮径することとしてもよい。
【0039】
縮径装置RDの油圧駆動装置(図示せず)はNC制御により任意量のサイジングを行なうことができるように構成されており、微細制御が可能である。更に、縮径時において、例えば逐次(随時)ワークを回転し、割り出し制御(インデックス制御)を行なうこととすれば、全周に亘って一層均一に縮径することができる。縮径装置RDの駆動及び制御媒体として、本実施形態では油圧を用いることとしているが、これに限らず、その駆動及び制御形式については、機械式、電気式、空気圧式等、任意の駆動方法を用いることができ、制御はCNCコントロールを用いることが好適である。
【0040】
尚、筒状部材(1次加工部材101)の少なくとも緩衝部材3を収容する部分の内側の実質的な半径が測定結果の距離R1を下回り、触媒担体2が破壊する直前まで、図2の押圧体PMによって緩衝部材3を押圧したときの限界距離(Rxとする)を予め測定しておくとよい。そして、NC制御による縮径装置RDに用い、縮径後に2次加工部材102がスプリングバックしたときに2次加工部材102の実質的な半径が距離R1となるように、半径が限界距離Rxより大の範囲で距離R1を下回る距離となるまで、1次加工部材101を緩衝部材3と共に縮径すれば、スプリングバックに影響されることなく、触媒担体2の軸芯Zと1次加工部材101の内壁面との間の距離が前述の測定結果の距離R1となるように、1次加工部材101の胴部及び緩衝部材3を縮径することができる。
【0041】
このように、少なくとも緩衝部材3の存在する範囲に亘って1次加工部材101が縮径されるので、緩衝部材3が圧縮状態に保持され、その圧縮復元力によって触媒担体2に付与される所定値の面圧によって、触媒担体2が胴部11内で安定した状態で支持されると共に、軸方向摩擦力が付与される。而して、図4に示す2次加工部材102が形成され、スプリングバックも考慮して形成された胴部11内に、触媒担体2が緩衝部材3を介して適切に保持される。従って、特に脆弱な触媒担体2に対しても、これを破壊することなく適切に胴部11内に保持することができる。
【0042】
更に、上記のサイジング後の2次加工部材102の一端部に対し、図5に示すようにスピニングローラSPによるネッキング加工を行なう。先ず、2次加工部材102の胴部11をスピニング装置用のクランプ装置CLによって挟持し、回転不能且つ軸方向移動不能に固定する。そして、胴部11の中心軸(図4のC)に対して少なくとも偏芯、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を有し、一部が胴部11の外周面の仮想延長面より外側に突出する最終目標加工部(図5に示すテーパ部13b及び首部(ボトルネック部)13cから成るネッキング部13に至るまでに複数の目標加工部(図示せず)を設定する。この場合において、図5の上方の胴部11の左端近傍を図6に拡大して示すように、胴部11の左端側の所定範囲11yを含みネッキング部13を形成するように設定する。即ち、図6にネッキング部13を実線で示すように、胴部11の所定範囲11y(図6に1点鎖線で示す範囲)に対してもスピニングローラSPによるネッキング加工を行ない、所定範囲11yに対応する部分がネッキング部13の一部を構成し、重合加工部13aとなる。
【0043】
そして、上記複数の目標加工部に基づき複数の加工目標軸(図示せず)を設定し、これら複数の加工目標軸のうちの一つと拡径部10aの中心軸(図示せず)が略同軸となるように2次加工部材102(図4に示す状態)を支持し、その一端部の外周回りを同径の円形軌跡にて公転する複数のスピニングローラSPによって当該一端部に対しスピニング加工を行なう。即ち、2次加工部材102の一端部の外周回りに望ましくは等間隔で配置したスピニングローラSPを、当該一端部の外周面に密着させて公転させると共に、径方向に駆動して公転軌跡を縮小しつつ軸方向(図5の左方向)に駆動してスピニング加工を行なう。これにより、図5に示す3次加工部材103が形成され、一端部が最終目標形状の傾斜軸を有するネッキング部13に形成される。
【0044】
続いて、図7に示すように、ネッキング部13が加工された3次加工部材103(図5に示す状態)を180度反転させて配置し、他方の端部についても上記と同様にスピニングローラSPによるネッキング加工を行なう。この場合における3次加工部材103の反転作業は、ネッキング部13の加工終了後、クランプ装置CLによる3次加工部材103の挟持状態を解放し、図示しないロボットハンドによってクランプ装置CLから3次加工部材103を取り出し、これを反転させて再度クランプ装置CLに装着することによって行なう。
【0045】
そして、クランプ装置CLによって胴部11を再度挟持し、他方の端部に対し、スピニングローラSPによって前述と同様に加工し、図7に示すように胴部11の中心軸(図4のC)と同軸のテーパ部12b及び首部12cから成るネッキング部12を形成する。この場合において、図7の下方の胴部11の左端近傍を図8に拡大して示すように、胴部11の左端側の所定範囲11xを含みネッキング部12を形成するように設定する。即ち、図8にネッキング部12を実線で示すように、胴部11の所定範囲11x(図8に1点鎖線で示す範囲)に対してもスピニングローラSPによるネッキング加工を行ない、所定範囲11xに対応する部分がネッキング部12の一部を構成し、重合加工部12aとなる。
【0046】
本実施形態によれば、上記のようにスピニング加工時に2次加工部材102(又は3次加工部材103)は回転しないため、2次加工部材102を確実に保持する構造を容易に構成することができると共に、2次加工部材102(又は3次加工部材103)に収容された触媒担体2及び緩衝部材3もスピニング加工中に回転(軸芯を中心とする自転)することはないので、安定した保持状態を維持することができる。また、2次加工部材102及び3次加工部材103の各一端部に対するネッキング加工を容易に連続して行なうことができる。
【0047】
特に、本実施形態においては、図6及び図8に示すように、胴部11の所定範囲11x及び11yに対してもスピニングローラSPによるネッキング加工が行なわれ、所定範囲11x及び11yに対応する部分がネッキング部12及び13の一部を構成し、重合加工部12a及び13aとなる。この場合において、ネッキング部13は傾斜スピニング加工によって形成され、スピニングローラSPの公転軌道が筒状部材の軸芯に対して斜めになるので、重合加工部13aは、同軸スピニング加工によって形成されるネッキング部12の重合加工部12aより広い範囲とすることが望ましい(偏芯スピニング加工による場合も同様)。
【0048】
つまり、ネッキング部13に関しては、図6に示すように、胴部11のサイジング時に形成された折り曲げ部B1とは異なる折り曲げ部B2からネッキング加工が行なわれて重合加工部13aとなるので、折り曲げ部が重なることはない。しかも、サイジング時に形成された折り曲げ部B1は、スピニング加工によるヘリカル方向への積極的な材料の塑性流動によって、全体として均一な板厚に形成される。同様に、ネッキング部12に関しても、図8に示すように、胴部11のサイジング時に形成された折り曲げ部B3からネッキング加工が行なわれるが、折り曲げ部B3とは異なる折り曲げ部B4で折り曲げられるので、折り曲げ部が重なることはなく、折り曲げ部B4は、スピニング加工によるヘリカル方向への積極的な材料の塑性流動によって、全体として均一な板厚に形成される。
【0049】
而して、図10に示すように触媒コンバータC1が形成される。この触媒コンバータC1には、所定範囲SAに対するサイジングによって胴部11の外面に形成された平行な複数の痕跡11e、並びにスピニング加工によってネッキング部12及び13の外面に形成された複数の条痕12j及び13jが残り、図10に破線で示すように痕跡11eの縮径時の両端部はネッキング部12及び13の形成時に消失し、痕跡11eは、その両側で条痕12j及び13jに交差するように連結された形態を呈している。尚、上記の痕跡11eは、図9に示す縮径装置RDを用いた工法特有のものであるが、図10における線条は説明の便宜上、強調して描いたものであって、実際は薄く、できれば視認できない程度であることが望ましい。また、スピニング加工による条痕12j及び13jについても同様である。
【0050】
尚、本実施形態においては、2次加工部材102の一端部に対し傾斜スピニング加工(特許第29571534号に記載)を適用しているが、これに限らず、偏芯スピニング加工(特許第2957153号に記載)を適用してオフセット状のネッキング部を形成することとしてもよい。また、サイジング方法として、例えば特開2001−107725号に記載のようにスピニングローラSPを用い、スピニング加工によるサイジングを行うこととしてもよい。
【0051】
図11は、筒状部材の少なくとも一端部に、筒状部材の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を有し、一端部の最終目標形状の最大内側半径となるまで拡径して拡径部を形成した1次加工部材の一態様として、予め偏芯した中心軸Coの拡径部10bを有する1次加工部材101xを示すものである。同様に、図12は、他の態様として、予め傾斜した中心軸Ciの拡径部10cを有する1次加工部材101yを示している。これらの拡径手段としては前述のスピニング加工があるが、他の方法を用いてもよい。これにより、前述の実施形態に比べて偏芯量αあるいは傾斜角θ分の量だけ大径の拡径部を形成することができ、後段の工程における加工量を低減することができる。但し、これらの拡径手段として、塑性加工による拡径は必ずしも容易ではないので、端部形状等に応じて適用可能か否かを判定して採用することが望ましい。
【0052】
また、図13は、図4に示すサイジング工程の他の実施形態を示すもので、内側面が所定の形状に形成された割り型DVoによって、緩衝部材3が最適圧縮量となる径まで1次加工部材101の非加工部(筒状部材の胴部)を縮径し、両端の加工前の一般部の中心軸Cに対して所定量βだけ偏芯した中心軸Csの胴部111を有する2次加工部材102xを形成する工程を示している。これにより、図1の実施形態に比べて予め偏芯量βだけ張り出した拡径部を形成することができ、後段の工程における加工量を低減することができる。但し、胴部111から両端の拡径部に至るまでの総型の割り型DVoが必要になるので、サイジング時の困難性、加工費用等と、上記の偏芯量βによる効果とを比較考量して採用することが望ましい。
【0053】
更に、図14は、筒状部材の軸方向に沿って、緩衝部材を夫々巻回した複数個のハニカム構造体を、所定の間隔を以て並設し、緩衝部材の各々が存在する範囲毎に緩衝部材を圧縮するように、筒状部材の軸方向の所定範囲を縮径して胴部を形成する工程の一実施形態を示すものである。即ち、本実施形態のサイジング工程においては、外径及び軸方向長さが異なる2個の触媒担体2a,2bに夫々緩衝部材3を巻回し、図1と同様の1次加工部材101内に収容した後、触媒担体2a,2bの各々に対応した軸方向長さを有する2組の割り型DVa,DVbによって、緩衝部材3が最適圧縮量となる径まで1次加工部材101の非加工部(筒状部材の胴部)を縮径し、胴部112,113を有する2次加工部材102yを形成することとしている。
【0054】
尚、上記の各実施形態においては、触媒担体2の断面は略円形であるが、これに限らず、楕円形断面、長円断面、複数の曲率を有する面を組み合わせた断面、及び多角形断面等の非円形断面としてもよい。また、触媒担体2の流路(セル)断面は、ハニカム(六角形)に限らず、正方形等、任意である。本実施形態では触媒担体2は2個としたが、1個でもよい。あるいは、3個以上の触媒担体を直列に配置してもよく、胴部は、各ハニカム構造体に対応する部分毎に縮径してもよいし、連続して縮径してもよい。そして、最終製品としては、自動車の排気系部品に限らず、前掲の公報に記載の燃料電池用改質器等、種々の流体処理装置に適用することができる。
【0055】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下に記載の効果を奏する。即ち、請求項1に記載のハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法においては最終目標形状の筒状部材の胴部を基準に筒状部材の一端部を拡径することができるので、拡径量を必要最小限に抑えることができる。また、筒状部材の変形量を縮径量と拡径量に分担することができるので、縮径量と拡径量の負担割合を適切に調整しつつ、筒状部材の許容変形量を最大限に活用することができる。しかも、ハニカム構造体の外径の誤差、筒状部材の内径の誤差、緩衝部材の誤差等に影響されることなく、筒状部材の胴部を良好な精度で縮径することができる。従って、筒状部材内に緩衝部材を介してハニカム構造体を適切に支持した流体処理装置を、迅速且つ容易に製造することができ、製造コストも低減することができる。
【0057】
更に、請求項に記載のように前記ネッキング部を形成することとすれば、胴部の少なくとも一端に連続して、十分な剛性を有する所望の形状のネッキング部を容易に形成することができる。
【0058】
また、請求項に記載のように構成すれば、拡径部の最終目標形状の最大内側半径と胴部の最終目標形状の半径との差が、胴部の外周面の仮想延長面より外側に突出する最大幅となるので、拡径及び縮径による変形量を最小限に抑え、筒状部材の許容変形量を最大限に活用することができる。
【0059】
あるいは、請求項に記載のように、筒状部材の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を中心として、一端部の最終目標形状の最大内側半径となるまで拡径して拡径部を形成することとすれば、複雑な最終目標形状の一端部に対する加工を、一般的な装置によって容易に行うことができる。
【0060】
更に、請求項に記載のように、緩衝部材を夫々巻回した複数個のハニカム構造体を、所定の間隔を以て並設し、緩衝部材の各々が存在する範囲毎に緩衝部材を圧縮するように、筒状部材の軸方向の所定範囲を縮径して胴部を形成することとすれば、収容する複数個のハニカム構造体に応じて縮径量を適切に調整して筒状部材を縮径し、複数個のハニカム構造体を適切に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの製造方法において、筒状部材の一端部を拡径し、拡径部を形成した1次加工部材を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの製造方法において、ハニカム構造体及び緩衝部材の測定工程を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの製造方法において、ハニカム構造体に緩衝部材及び弾性支持部材を装着した一体品を1次加工部材内に収容する状態を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの製造方法において、サイジング工程での1次加工部材の縮径状態を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの製造方法において、2次加工部材の一端部に対しスピニングローラによるネッキング加工を行う状態を示す断面図である。
【図6】図5の上方の胴部の左端近傍を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの製造方法において、一端部にネッキング部が形成された3次加工部材の他方の端部に対し、スピニングローラによるネッキング加工を行なう状態を示す断面図である。
【図8】図7の下方の胴部の左端近傍を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの製造に供する縮径装置を示す斜視図である。
【図10】本発明の流体処理装置の一実施形態に係る触媒コンバータの正面図である。
【図11】本発明の流体処理装置の製造方法において、拡径工程の他の実施形態によって形成し、予め偏芯した中心軸の拡径部を有する1次加工部材を示す断面図である。
【図12】本発明の流体処理装置の製造方法において、拡径工程の更に他の実施形態によって形成し、予め傾斜した中心軸の拡径部を有する1次加工部材を示す断面図である。
【図13】本発明の流体処理装置の製造方法において、サイジング工程の他の実施形態における1次加工部材の縮径状態を示す断面図である。
【図14】本発明の流体処理装置の製造方法において、サイジング工程の更に他の実施形態における1次加工部材の縮径状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 一体品, 2 触媒担体, 3 緩衝部材, 10 筒状部材,
11 胴部, 10a,10b,10c 拡径部, 13 テーパ部,
14 首部, 15 ネッキング部,
101,101x,101y 1次加工部材,
102,102x,102y 2次加工部材, 103 3次加工部材,
DT 測定装置, PM 押圧体, LC ロードセル,
RE ロータリエンコーダ, CH,CL クランプ装置,
GD ハウジング, DP 押型, DV 割り型,
SP スピニングローラ

Claims (5)

  1. 金属製筒状部材内に緩衝部材を介してハニカム構造体を保持するハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法において、前記ハニカム構造体の外周に前記緩衝部材を装着した状態で、押圧体によって前記ハニカム構造体の軸芯に対して直交する方向に前記緩衝部材を押圧して前記緩衝部材を圧縮すると共に、前記緩衝部材の圧縮復元力によって前記ハニカム構造体に付与される面圧を検知し、該面圧が所定の値となるときの前記ハニカム構造体の軸芯と前記押圧体の先端との間の距離を測定し、該測定結果の距離に基づき、前記筒状部材の少なくとも一端部の最終目標形状の内側の半径を設定し、該内側の半径が所定の最大内側半径となるまで拡径して拡径部を形成し、前記緩衝部材を前記ハニカム構造体周りに装着して前記筒状部材内に収容し、少なくとも前記緩衝部材を収容する部分の内側の実質的な半径が前記測定結果の距離となるように、前記緩衝部材の存在する範囲に亘って前記緩衝部材を圧縮しつつ前記筒状部材の軸方向の所定範囲を縮径して胴部を形成し、該胴部の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を有し、前記拡径部の外周面に至るまでに複数の目標加工部を設定し、該複数の目標加工部に基づき複数の加工目標軸を設定し、該複数の加工目標軸のうちの一つと前記拡径部の中心軸が略同軸となるように前記筒状部材を支持し、前記拡径部の中心軸を前記複数の加工目標軸のうちの各加工目標軸と一致させると共に、各加工目標軸における前記拡径部の外径を縮小させるようにスピニング加工を行なって前記拡径部を成形し、前記一端部に最終目標形状のネッキング部を形成することを特徴とするハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法。
  2. 前記胴部の少なくとも一端側の所定範囲を含み前記筒状部材の開口端に至るまで、前記胴部の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸に沿ってスピニング加工を行い、前記ネッキング部を形成することを特徴とする請求項記載のハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法。
  3. 前記筒状部材内の前記緩衝部材を収容する部分の外周面の仮想延長面より外側に突出する外周面を有する前記筒状部材の一端部の最終目標形状の内面と、前記筒状部材内の前記緩衝部材を収容する部分の中心軸との間の距離を、前記所定の最大内側半径として設定することを特徴とする請求項1又は2記載のハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法。
  4. 前記筒状部材の少なくとも一端部に、前記筒状部材の中心軸に対して少なくとも偏心、傾斜及び捩れの何れか一つの関係にある中心軸を中心として、前記一端部の最終目標形状の最大内側半径となるまで拡径して前記拡径部を形成することを特徴とする請求項1又は2記載のハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法。
  5. 前記筒状部材の軸方向に沿って、前記緩衝部材を夫々巻回した複数個の前記ハニカム構造体を、所定の間隔を以て並設し、前記緩衝部材の各々が存在する範囲毎に前記緩衝部材を圧縮するように、前記筒状部材の軸方向の所定範囲を縮径して前記胴部を形成することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のハニカム構造体内蔵流体処理装置の製造方法。
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