JP4303439B2 - 1,2−エタンジオール誘導体またはその塩を含有する脳由来神経成長因子の作用増強剤並びに1,2−エタンジオール誘導体またはその塩と脳由来神経成長因子を含有する医薬組成物。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,2−エタンジオール誘導体またはその塩を有効成分とする脳由来神経成長因子の作用増強剤並びに1,2−エタンジオール誘導体またはその塩と脳由来神経成長因子を含有する医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
脳由来神経成長因子 (Brain-derived neurotrophic factor:以下BDNFと称する。)が、末梢神経系において運動神経細胞、感覚神経細胞、挫骨神経細胞の生存維持・増強や再生・修復促進作用を有すること[ニューロン(Neuron)、第10巻、第359-367頁(1993年);ネイチャー(Nature)、第374巻、第450-453頁(1995年)]、中枢神経系において前脳基底野コリン作動性神経細胞、小脳顆粒細胞、大脳皮質神経細胞、海馬神経細胞、中脳黒質神経細胞に存在し,神経栄養因子であることが知られている[エンボ・ジャーナル(EMBO J.)、第9巻、第2459-2464頁(1990年);ネイチャー(Nature)、第350巻、第230-232頁(1991年)]。
また、BDNFは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病などの中枢神経の疾患[トレンド・ニューロサイエンス(Trends Neurosci.)、第17巻、第182-190頁(1994年)];各種ニューロパシー[ニューロケミカル・リサーチ(Neurochem. Res.)、第23巻、第821-829頁(1998年)]、外傷性神経障害[エクスペリメンタル・ニューロロジー(Exp. Neurol.)、第144巻、第273-286頁(1997年)]、網膜変性疾患[ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(J. Neurosci.)、第16巻、第3887-3894頁(1996年)]および筋萎縮性側索硬化症(ALS)[サイエンス(Science)、第265巻、第1107-1110頁(1994年)]などの末梢神経の疾患との関連が注目されている。
一方,特開平3-232830、特開平4-95070に記載の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩は、脳機能改善剤として有用な化合物であり、特に、(R)−1−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール塩酸塩(以下、T−588と称する。)は、好ましい化合物である。そして、T−588は、アミロイドβタンパク質による神経細胞死に対し保護作用[ソシエティ・フォー・ニューロサイエンス・アブストラクツ(SOCIETY FOR NEUROSCIENCE, Abstracts)、第24巻、パート1、第228頁(1998年)および神経成長因子の作用増強作用(国際公開WO96/12717)を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
BDNFまたはBDNF様神経保護作用を示す生体内物質を、上記の中枢性神経疾患および末梢性神経疾患の治療に用いる試みがなされている[サイエンス(Science)、第264巻、第772-774頁(1994年)]。しかし、その効果は十分なものでなく、BDNFの神経保護作用を増強し、強い神経保護効果を発揮する薬剤が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、BDNFの神経保護作用を増強をする低分子化学物質の研究を進めたところ、
次の一般式、
【化2】
「式中、R1は、置換されていてもよい複素環式基を;R2は、水素原子またはヒドロキシル保護基を;R3は、水素原子または低級アルキル基を;n個のR4は、同一または異なって水素原子または低級アルキル基を;n個のR5は、同一または異なって水素原子または低級アルキル基を;R6は、置換されていてもよいアミノ基またはアンモニオ基を;およびnは、1〜6の整数を、それぞれ示す。」で表される1,2−エタンジオール誘導体またはその塩が、BDNFの神経保護作用の増強作用を有するばかりでなく、相乗的に神経保護効果を発揮することを見出し、本発明を完成させた。以下、本発明について詳述する。
【0005】
本明細書において、特に断らない限り、各用語は、次の意味を有する。
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を;低級アルキル基とは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチルおよびヘキシル基などのC1-6アルキル基を;低級アルケニル基とは、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニル基などのC2-6アルケニル基を;シクロアルキル基とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基などのC3-6シクロアルキル基を;低級アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシ基などのC1-6アルキルオキシ基を;低級アルケニルオキシ基とは、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、ペンテニルオキシおよびヘキセニルオキシ基などのC2-6アルケニルオキシ基を;低級アルキルチオ基とは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオおよびヘキシルチオなどのC1-6アルキルチオ基を;ハロ低級アルキル基とは、クロルメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、クロルエチルなどのハロゲン−C1-6アルキル基を;
【0006】
アリール基とは、フェニル、ナフチル、インダニルおよびインデニル基を;アリールオキシ基とは、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、インダニルオキシおよびインデニルオキシ基を;アル低級アルキル基とは、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチルおよびフェネチル基などのアルC1-6アルキル基を;アル低級アルコキシ基とは、ベンジルオキシ、ジフェニルメチルオキシ、トリチルオキシなどのアルC1-6アルキル−O−基を;アル低級アルキルチオ基とは、ベンジルチオ、ジフェニルメチルチオなどのアルC1-6アルキル−S−基を;アル低級アルケニル基とは、スチリル、シンナミルなどのアルC1-6アルケニル基を;低級アルキレンジオキシ基とは、たとえば、メチレンジオキシおよびエチレンジオキシ基などのC1-4アルキレンジオキシ基を;
【0007】
低級アシル基とは、ホルミル、アセチル、ブチリルおよびエチルカルボニル基などのC1-6アシル基を;アロイル基とは、ベンゾイルおよびナフチルカルボニル基などのアリールカルボニル基を;低級アルキルスルホニル基とは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、n-ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニルまたはペンチルスルホニルなどのC1-6アルキルスルホニル基を;アル低級アルキルスルホニル基とは、ベンジルスルホニルなどのアルC1-6アルキル−SO2−基を;アリールスルホニル基とは、フェニルスルホニル、p-トルエンスルホニル、ナフチルスルホニル基などのアリール−SO2−基を;アリールスルホニルアミノ基とは、フェニルスルホニルアミノ、ナフチルスルホニルアミノなどのアリール−SO2NH−基を;低級アルキルスルホニルアミノ基とは、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノなどのC1-6アルキル−SO2NH−基を;アンモニオ基とは、トリメチルアンモニオおよびトリエチルアンモニオ基などのトリ低級アルキルアンモニオ基を;
【0008】
複素環式基とは、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ホモピペリジニル、モルホリル、チオモルホリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリル、キヌクリジニル、イミダゾリニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジル、キノリル、キノリジニル、チアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピロリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、プリニル、フリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノキサリル、ジヒドロキノキサリル、2,3−ジヒドロベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾピロリル、2,3−4H−1−チアナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾ[b]ジオキサニル、イミダゾ[2,3-a]ピリジル、ベンゾ[b]ピペラジニル、クロメニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジニル、イソインドリル、イソキノリル、1,3−ベンゾジオキソニルおよび1,4−ベンゾジオキサニル基などの該環を形成する異項原子として一つ以上の酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい、窒素、酸素もしくは硫黄原子から選ばれる少なくとも一つ以上の異項原子を含有する5員もしくは6員環、縮合環または架橋環の複素環式基を;そして複素環式カルボニル基とは、複素環式−CO−基を意味する。
【0009】
R1における複素環式基の置換基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ、低級アルキル、アリール、アル低級アルキル、低級アルコキシ、アル低級アルコキシ、アリールオキシ、カルバモイルオキシ、低級アルキルチオ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、アル低級アルキルチオ、アル低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル、低級アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノもしくは複素環式基または保護されているアミノ基、保護されていてもよいヒドロキシル基、ニトロ基、オキソ基および低級アルキレンジオキシ基などが挙げられる。
【0010】
R1の複素環式基の置換基における低級アルキル、アリール、アル低級アルキル、低級アルコキシ、アル低級アルコキシ、アリールオキシ、カルバモイルオキシ、低級アルキルチオ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、アル低級アルキルチオ、アル低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル、低級アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノおよび複素環式基の置換基としては、ハロゲン原子、保護されていてもよいヒドロキシル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいヒドロキシル基で置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよいアリール基、ハロゲンで置換されていてもよいアロイル基、低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルコキシ基、ハロ低級アルキル基、低級アシル基、アル低級アルキル基、アル低級アルケニル基、複素環式基、複素環式カルボニル基、オキソ基、低級アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基が挙げられ、これら1種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0011】
R1における置換基としてのアミノ基およびR6におけるアミノ基の置換基としては、保護されていてもよいヒドロキシル基、保護されていてもよいヒドロキシまたは保護されていてもよいカルボキシル基で置換されていてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、低級アシル基、アル低級アルキル基、複素環式基、オキソ基で置換されていてもよい複素環式カルボニル基、アダマンチル基、低級アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基が挙げられ、これら1種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0012】
R2のヒドロキシル保護基および置換基中にあるヒドロキシル基、カルボキシル 基およびアミノ基の保護基としては、プロテクティブ・グル―プス・イン・オ―ガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、セカンドエディション(Second Edition)[セオドラ・ダブリュー・グリーン(Theodora W. Greene)(1991年)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons. Inc.)]に記載された通常のヒドロキシル基、カルボキシル基およびアミノ基の保護基が挙げられる。
特に、ヒドロキシル基の保護基としては、低級アルキル、低級アシル、テトラヒドロピラニルおよびアル低級アルキル基が挙げられる。
【0013】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体の塩としては、医薬として許容される塩であればよく、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸およびアスパラギン酸などのカルボン酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩並びにナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩などが挙げられる。
【0014】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、本発明は、それらすべての異性体を包含し、また、水和物、溶媒和物およびすべての結晶形を包含するものである。
【0015】
本発明のBDNFの神経保護作用増強剤として好ましい一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩は、R1が、置換されていてもよいベンゾチエニル基;R2が、水素原子;R3が、水素原子;n個のR4およびn個のR5が、水素原子;R6が、置換されていてもよいアミノ基である1,2−エタンジオール誘導体またはその塩である。さらに好ましいものは、R1がベンゾチエニル基;R2が、水素原子;R3が、水素原子;n個のR4およびn個のR5が、水素原子;R6が、低級アルキル基で置換されたアミノ基である1,2−エタンジオール誘導体またはその塩である。具体的には、1−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エトキシ]エタノールまたはその塩であり、より具体的には、(R)−1−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール塩酸塩(T−588)である。
【0016】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩は、特開平3-47158、特開平3-232830または特開平4-95070などに記載の方法で製造することができる。
【0017】
本発明に使用されるBDNFは、Barde,Y.Eらによって、ブタ脳から単離されたもの[ザ・エンボ・ジャーナル(EMBO J.)、第5巻、第549-553頁(1982年)]であり、その後ブタ、ヒト、マウスなどのBDNF遺伝子がクローニングされ(ネイチャー(Nature)、第341巻、第149頁(1989年))、119個のアミノ酸から成る一次構造が解析されたものである。
【0018】
BDNFの生産方法は種々報告されており、何れの製法によるBDNFも本発明に用いることができる。
動物組織からの抽出品の場合、医薬として使用できる程度に精製されたものであれば良い。また、BDNFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞)から分離精製してBDNFを得ることもできる。
さらに、遺伝子工学的手法によりBDNFをコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適切な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清から得ることのできる組み換えBDNF[プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテェッド・オブ・アメリカ(Proc. Natl. Acad. Sci.)、第88巻、第961頁(1991年)、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミニュケーションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.)、第186巻、第1553頁(1992年)など]を使用することができる。また、遺伝子工学的手法により、公知の方法にて製造される天然型のBDNFアミノ酸配列の一部を付加、置換、欠失あるいは除去されたBDNFの改変タンパク(マチュアBDNF、N末端にメチオニンの付加したMet・BDNFなど)を使用することもできる。
【0019】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩をBDNFの作用増強剤として製剤化する場合は、医薬上許容される賦形剤、担体、希釈剤および安定化剤などの製剤助剤を適宜用いて、常法により錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、注射剤または点眼剤などの製剤とすることができる。この製剤は、経口または非経口で投与することができる。また、投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択できるが、経口投与の場合、通常成人に対して1日0.01〜500mgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【0020】
上記の製剤において、錠剤およびカプセル剤に使用される製剤補助剤について説明する。
錠剤の形態に成形するに際に使用される製剤補助剤としては、賦形剤として、たとえば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、無水第二リン酸カルシウム、アルギン酸など;結合剤として、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水、エタノールなど;崩壊剤として、たとえば、乾燥デンプン、アルギン酸、かんてん末、デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウムなど;崩壊抑制剤として、たとえば、ステアリルアルコール、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油など;吸収促進剤として、たとえば、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなど;吸収剤(デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、コロイド状ケイ酸などおよび滑沢剤として、たとえば、精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。さらに、錠剤は、必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、たとえば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、胃溶性被覆錠、腸溶性被覆錠または水溶性フィルムコーティング錠とすることができる。
また、カプセル剤は、上記で例示した各種の製剤補助剤と混合し、硬質ゼラチンカプセルまたは軟質カプセル等に充填して調製することができる。
【0021】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩とBDNFを含有する医薬組成物において、一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩の使用量は、BDNFとの相乗効果が期待される量であれば特に限定されないが、BDNFに対して3倍モル以上であればよい。
【0022】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩とBDNFを含有する医薬組成物の製剤としては、注射剤、経口剤、液剤、凍結乾燥品いずれの形態であってもよいが、注射製剤が好ましい。これら非経口投与製剤には、当該分野にて公知の安定化剤、担体を用いることができ、使用時に等張溶液として用いるのが好ましい。医薬担体としては、例えば、アルブミン等の血漿由来蛋白、グリシン等のアミノ酸、マンニトール等の糖を用いることができる。また、水溶製剤、凍結乾燥製剤として使用する場合、凝集を防ぐためにTween80などの界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0023】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩とBDNFを含有する医薬組成物の製剤は、例えば、特開平10-212241、特開2000-169389などに記載されたBDNF製剤の製造工程において、一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩を必要量添加して製造すればよい。
【0024】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩とBDNFを含有する医薬組成物の投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択できるが、静脈内、皮下、皮内または筋肉内投与の場合、BDNF量として、通常成人に対して1日0.01μg〜500mgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【0025】
【実施例】
以下に一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩が有するBDNFの神経保護作用の増強作用について説明する。
[アミロイドβ誘発神経細胞死抑制作用]
1)活性測定法
アミロイドβによる神経細胞死抑制効果は、[ブレイン・リサーチ(Brain Research)、第639巻、第240頁(1994年)]に記載の方法に改変を加え行なった。
すなわち、ラット胎仔の脳(胎齢17〜19日)より摘出した大脳皮質を細切後、トリプシン処理により神経細胞を解離した。細胞を48穴組織培養プレートに1ウエル当たり1×105個播種し、B27添加物[ギブコ・ビーアールエル(GIBCO BRL)社製]および3.6mg/mLグルコースを補足したダルベッコ改変イーグル培地下において、5% CO2、37℃の条件下で培養を行った。培養10−13日目に終濃度25mmol/Lとなるように塩化カリウム溶液を添加後、直ちに薬剤{T−588、BDNF[ペプロ・テック(PEPRO TECH)社製、組換えヒトBDNF(Recombinant Human BDNF)]単独およびT−588とBDNF}を添加した。
薬剤添加24時間後に蒸留水に溶解したアミロイドβ(25-35残基ペプチド)を終濃度20μmol/Lとなるよう添加した。アミロイドβ添加24時間後に、適用濃度のT−588または/およびBDNFを含有する、B27添加物および3.6mg/mLグルコースを補足したダルベッコ改変イーグル培地 (塩化カリウム終濃度:25mmol/L)で培地交換した。培養神経細胞死に対する薬剤の抑制作用は、MTT還元能の低下抑制作用を指標とした。培地交換の48時間後にモスマンにより開発されたMTTアッセイ[ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(Journal of Immunolgical Methods)、第65巻、第55頁(1983年)]を行い,アミロイドβによって誘発されたMTTアッセイ値の減少に対する薬剤の抑制率 (%) を計算した。
抑制率= [(アミロイドβと薬剤添加群のMTTアッセイ値)−(アミロイドβ添加群のMTTアッセイ値)]÷[(無添加群のMTTアッセイ値)−(アミロイドβ添加群のMTTアッセイ値)]×100
2)測定結果
測定結果は表1の通りである。
【0026】
【表1】
【0027】
製剤例1
成分▲1▼[T−588 50mg、乳糖20mg、コリドンCL(バスフ社製)15mg、とうもろこし澱粉25mg、アビセルPH101(旭化成社製)40mg]の混合物をポリビニルピロリドンK90の8%水溶液で練合し、60℃で乾燥した後、▲2▼成分[ポリビニルピロリドンK90 5mg、軽質無水ケイ酸18mg、ステアリン酸マグネシウム2mg]を混合し、1錠重量 175mg、直径8mmの円形錠に打錠し、T−588を50mg含有する錠剤を得る。
【0028】
製剤例2
▲1▼成分[T−588 50mg、乳糖20mg、とうもろこし澱粉53mg、コリドンCL(バスフ社製)2mg]の混合物をポリビニルピロリドンK90の8%水溶液で練合し、60℃で乾燥した後、▲2▼成分[ポリビニルピロリドンK90 5mg、アビセルPH302(旭化成社製)18mg、ステアリン酸マグネシウム2mg]を混合し、1カプセル当たり 150mgを3号ゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を得る。
【0029】
【発明の効果】
一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩、特にT−588は、BDNFの神経保護作用を相乗的に増強することから、T−588単独およびT−588とBDNFを含有する医薬組成物は、中枢神経系および末梢神経系の変性による各種疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病などの中枢神経の疾患;各種ニューロパシー、外傷性神経障害、網膜変性疾患および筋萎縮性側索硬化症などの治療および予防に有用である。
Claims (1)
- (R)−1−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エトキシ]エタノールまたはその塩と脳由来神経成長因子を含有する医薬組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002014935A JP4303439B2 (ja) | 2001-01-25 | 2002-01-24 | 1,2−エタンジオール誘導体またはその塩を含有する脳由来神経成長因子の作用増強剤並びに1,2−エタンジオール誘導体またはその塩と脳由来神経成長因子を含有する医薬組成物。 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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