本実施形態では、水晶発振器の発振周波数制御を行う水晶発振制御装置の例として、温度補償型水晶発振器モジュールを構成する際に水晶振動子及び水晶発振回路と共に用いる水晶発振制御装置について説明する。本実施形態の水晶発振制御装置は、一般に半導体基板上に形成される電子回路を含む半導体素子によって構成される。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る温度補償型水晶発振器モジュールの構成を示すブロック図である。温度補償型水晶発振器モジュール100は、水晶発振制御装置を構成する発振制御回路102と、水晶発振回路150と、水晶振動子195とを備えて構成される。発振制御回路102と水晶発振回路150とは、同一の基板上に配設されて水晶発振器制御用ICを構成する。この水晶発振器制御用ICに対して水晶振動子195が接続されて外付けの形で設けられる。
この図1の温度補償型水晶発振器モジュールにおいて、水晶発振回路150と水晶振動子195とにより電圧制御型水晶発振器が構成され、この電圧制御型水晶発振器に対して発振制御回路102より周囲温度に応じた制御電圧を供給することにより、発振周波数の制御を行う構成となっている。
発振制御回路102は、周囲温度に対応した電流Iを生成する温度センサ110と、温度センサ110の出力電流Iに基づき水晶発振回路150の周波数の温度特性を打ち消す方向の温度特性をもつ制御電圧を発生する制御電圧発生回路120と、水晶発振器の検査モードにおける検出感度向上のための増幅を行う検査用増幅手段140と、この検査用増幅手段140の有効、無効を切り替えるためのスイッチSW1、SW2を有してなる第1のスイッチ手段130と、検査モード等の動作モードを切り替えるための制御データを記憶するメモリ180と、制御電圧を検査用端子T5を介して外部に導出するためのスイッチSW3を有してなる第2のスイッチ手段190とを備える。上記構成において、第1のスイッチ手段130及びメモリ180によってモード切替手段の機能が実現される。
また、図1において、端子T1、T2は、水晶振動子195を接続するための端子であり、端子T3は、温度補償型水晶発振器の発振出力を取り出すための発振出力端子であり、端子T4は、動作モード切替を指示する信号(モード切替信号)PVをメモリ180に入力するための端子(モード切替用端子)である。
メモリ180は、例えば、ROMやRAM、あるいはEEPROM、PROM等の不揮発性メモリ等により構成され、制御データとなる0,1等の記憶情報に応じて制御信号S1、S2を出力するものである。したがって、メモリ180への記憶情報として0,1等の値をセットすることによって、スイッチSW1、SW2、SW3のオンオフ状態を切り換えることができる。
このメモリ180は、制御信号S1を出力することにより、第1のスイッチ手段130のスイッチSW1、SW2の選択的な開閉(オン、オフ)を制御する。スイッチSW1がオンするとき(通常モード時)は、制御電圧発生回路120から発生する制御電圧は、検査用増幅手段140を介さずに水晶発振回路150に供給されることになる。この場合、検査用増幅手段140は無効(非動作状態)となり、検査用増幅手段140による増幅は行われない。
一方、スイッチSW2がオンするとき(検査モード時)は、制御電圧発生回路120から発生する制御電圧は、検査用増幅手段140を介して水晶発振回路150に供給されることになる。この場合、検査用増幅手段140は有効(動作状態)となり、検査用増幅手段140による検査モード時の検出感度向上のための所定ゲインの増幅が行われる。検査用増幅手段140では、例えば、ゲイン10倍で制御電圧の増幅を行う。
また、メモリ180は、制御信号S2を出力することにより、第2のスイッチ手段190のスイッチSW3の開閉(オン、オフ)を制御する。このスイッチSW3は、検査モードにおいてオン状態となる。
水晶発振回路150は、発振周波数を調整するための可変容量ダイオード(バラクタダイオード)160と、発振回路170とを備える。
なお、発振制御回路102と水晶発振回路150とは、上記のように同一の基板上に形成してワンチップのICに集積した水晶発振器制御用ICとして構成してもよいし、これに限らず、別体のICチップにより構成して1つのパッケージに搭載したり、個別の単体ICで構成することも可能である。
ただし、発振制御回路102が単独のICであるか、水晶発振回路150を含むワンチップICであるか、または、2つのチップが同一パッケージに組み込まれるマルチチップモジュールタイプのICであるかによって、制御電圧を外部に導出するための特別な構成の有無が異なる。
すなわち、図1において、発振制御回路102が単独のICならば、そのICの製造時において、検査のために出力端子T6から出力される制御電圧を直接測定することができる。また、水晶発振回路150を含むワンチップICであるか、または、2つのチップが同一パッケージに組み込まれるマルチチップモジュールタイプのICである場合には、検査モードとして動作させ、スイッチ手段190のスイッチSW3を閉じて、検査用端子T5から出力される制御電圧(SV)を測定する。
なお、図1では温度補償型水晶発振器モジュールの全体構成を示しているが、水晶発振制御装置を構成する発振制御回路102を含むICにおいて必須の構成ではないものについては、図中破線で示している。これら破線で示したスイッチ手段190、スイッチSW3、制御信号S2、検査用端子T5、制御電圧SV、出力端子T6などは、構成に応じて適宜選択的に用いればよい。例えば、出力端子T6と、スイッチ手段190及び検査用端子T5とは、発振制御回路102の検査を行うために制御電圧を測定する手段として、水晶発振器制御用ICの構成に応じて選択的に使用される。また、半導体メーカー等において、発振制御回路102を含む水晶発振器制御用ICの製造時等にノイズ検査を行って選別する場合には、水晶振動子195は必須ではないため、同様に破線で示している。一方、水晶振動子のメーカーにおいては、製造時等に水晶振動子の検査を行う場合に、基準となる水晶発振器制御用ICを用いて水晶振動子と接続し、発振周波数の短期安定度の測定等を行って選別すればよい。
ここで、発振制御回路102のノイズ検査の内容について図2及び図3を用いて説明する。図2は水晶発振器に要求される短期安定度について説明するための図であり、図3は水晶発振器制御用ICのノイズ特性を示す図である。
例えば、温度補償型水晶発振器をGPS機能を搭載したカーナビゲーションシステムやGPS受信機を搭載した携帯電話装置などに用いる場合、発振周波数の短期安定度が悪いと、GPSシステムの位置検出精度の低下を招いたり、あるいは測位が不可能となることがある。このため、特に最近では発振周波数の短期安定度について高い性能を満たすことが必要となってきている。
このような温度補償型水晶発振器では、周波数の許容誤差は例えば2.5ppm以内であり、さらに、短期安定度の性能として、図2に示すように、電源オン直後の期間(例えば、電源オンから1秒経過する期間)において、発振周波数が変化せずに一定であることが求められる。この短期安定度は、発振制御回路102においては、出力される制御電圧の低周波数のノイズ特性、特に1/fノイズ特性に大きく影響されることが確認されている。
図3に示すように、発振制御回路102を含む水晶発振器制御用ICのノイズ特性は、高周波域では、サーマルノイズ(熱雑音)が支配的になり、これがフロアノイズのレベルを決定する。また、低周波数域においては、低周波になるにつれてノイズレベルが上昇する1/fノイズが支配的になる。
1/fノイズは、半導体ウェハーの製造段階から素子を構成する製造段階の間に結晶欠陥が生じた場合に、これに起因してノイズレベルが上昇する。この結晶欠陥は、半導体ウェハー上でランダムな箇所に発生し、半導体ウェハーを複数の半導体チップに分割した際にどれかのチップにランダムに出現する。したがって、ランダムに発生する結晶欠陥によってイレギュラーに低周波のノイズレベルが著しく上昇し、結晶欠陥が生じた個体では破線で示すW1、W2のようなノイズ特性となることがある。このように1/fノイズによる低周波のノイズレベルが大きい場合は、発振周波数に低周波数のゆらぎが生じ、短期安定度が悪化する。
そこで、発振制御回路102のノイズ検査を行って低周波のノイズレベルが大きい個体を除外するよう選別する必要がある。結晶欠陥に起因して低周波のノイズレベルが許容値を超えるような不良品は、例えば100ppm程度の割合で発生するが、製品出荷前にはこのような不良品を確実に除外する必要がある。しかし、1/fノイズは、低周波でかつ極めて微小なレベルであるため、測定が容易ではない。また、微小レベルの測定を行う場合、測定結果の精度が低いので、検査の再現性を高めて検査精度を向上させるために、測定を多くの回数行って十分な数のデータをとり、平均をとる必要がある。このため、測定に長い時間が必要となる。
そこで、本実施形態では、検査用増幅手段140を設け、発振制御回路102の動作モードとして通常モードと検査モードとを有するようにし、メモリ180からの制御信号によって動作モードを切り替える。この場合、メモリ180から制御信号S1を出力してスイッチSW1、SW2を切り替え、検査用増幅手段140を動作させ、発振制御回路102から出力される制御電圧を増幅する。これにより、1/fノイズによる低周波の微小なノイズレベルを容易に、かつ短時間で精度良く測定することが可能となる。したがって、半導体メーカー等においては、製造時や出荷時などに容易でかつ効率良く高精度にノイズ検査を実行でき、良品と不良品とを選別することができる。このため、高品質な温度補償型水晶発振器を安定して生産する体制を実現することが可能になる。
ここで、図1における制御電圧発生回路120の内部構成例について、図4〜図7を用いて説明する。
図4に示す第1例の制御電圧発生回路120は、1次関数回路及び3次関数回路を用いたものである。この第1例では、温度センサ110a、110bと、温度センサ110aが生成する周囲温度に対応して変化する電流に基づいて3次関数的に変化する電流信号を生成する3次関数回路300と、温度センサ110bが生成する周囲温度に対応して変化する電流に基づいて1次関数的に変化する電流信号を生成する1次関数回路310とを備える。
1次関数回路310は、図5(a)に示すような、周囲温度Taに比例して変化する電流Imを生成する。また、3次関数回路300は、図5(b)に示すような、周囲温度Taに対応して3次関数的に変化する電流Inを生成する。そして、1次関数回路310及び3次関数回路300の各出力電流Im、Inを合成し、その電流を電圧に変換することで、図5(c)に示すような、水晶発振器の周波数の温度特性を打ち消す方向の温度特性をもつ制御電圧が得られる。
図6に示す第2例の制御電圧発生回路120は、折れ線近似関数回路を用いたものである。折れ線近似関数回路は、温度補償の対象となる温度範囲を複数の領域に分割し、各温度領域において、周囲温度に対応して線形に変化する電圧信号を生成し、各電圧信号を結合することで、図7に示すような、3次関数を折れ線近似した制御電圧を発生させる回路である。
この第2例では、周囲温度に対して温度特性をもたない基準電流(A01〜A03)を生成する基準電流源10と、周囲温度(常温)に比例して線形に変化する電流信号(B01〜B03)を生成する常温用温度センサ20と、低温域における温度特性を実現するための低温用折れ線回路30と、高温域における温度特性を実現するための高温用折れ線回路40と、電流−電圧変換を行うI/V変換器50と、I/V変換器50からの3つの出力信号を結合する結合回路60とを備える。
低温部折れ線回路30及び高温部折れ線回路40は、常温センサ20から与えられる周囲温度(常温)に比例して線形に変化する電流信号(B01、B03)をカレントミラーで反転させ、かつ、基準電流源10から与えられる基準電流A01、A03を、その反転させた電流に重畳することで、温度軸上でのオフセット(温度軸上での折れ線の平行移動に相当する)を与える。これにより、低温域及び高温域における温度特性を実現するための電流信号(B11、B13)を得る。
I/V変換器50は、常温センサ120から出力される電流信号B02、低温部折れ線回路30から出力される電流信号B11、高温部折れ線回路40から出力される電流信号B13を各々電圧信号に変換し、これにより、周囲温度Taに比例して変化する電圧信号y1、y3、y5を生成する。結合回路60は、電圧信号y1、y3、y5の各々を滑らかに結合させて、図7に示すような制御電圧を生成して出力する。
また、図4に示した第1例の制御電圧発生回路120を本実施形態に適用した場合の発振制御回路102の構成例を示す。図8は本発明の第1の実施形態に係る発振制御回路102の要部構成を示すブロック図である。
この図8では、図1における温度センサ110及び制御電圧発生回路120に図4の構成を適用した水晶発振器制御用ICの構成例を示している。すなわち、2つの温度センサ110a、110bと、3次関数回路300及び1次関数回路310を含む制御電圧発生回路120とを備え、さらに検査用増幅手段140及びスイッチ手段130を有して構成される。
次に、上記のような発振制御回路102におけるノイズ検査のための検査モードの動作について説明する。発振制御回路102から出力される制御電圧のノイズ検査を行う場合には、モード切替手段として機能するメモリ180より制御信号S1をスイッチ手段130に供給し、スイッチSW1をオフさせ、スイッチSW2をオンさせて検査モードとする。また、発振制御回路102が水晶発振回路150を含むワンチップICである場合など、制御電圧を直接取り出して測定できない場合は、制御信号S1に加えてメモリ180より制御信号S2をスイッチ手段190に供給し、スイッチSW3をオンさせる。このように検査モードでは、検査用増幅手段140が機能するよう能動状態とする。
制御電圧発生回路120は、3次関数回路300及び1次関数回路310によって上述した動作を行い、温度センサ110の出力電流Iに基づいて図5(c)に示されるような水晶発振器の周波数の温度特性を打ち消す方向の温度特性をもつ制御電圧を発生する。
検査用増幅手段140は、制御電圧を所定ゲインで(例えば、10倍のゲインで)増幅し、発振制御回路102からの出力として電圧レベルが増幅された制御電圧が出力されるようにする。なお、水晶発振器の制御信号が電圧ではなく、電流で得られる場合には、内部抵抗の値を1/10に設定する等して、電流の増幅を行う。
この状態で、発振制御回路102の出力端子T6、あるいは検査用端子T5から出力される、増幅された制御電圧を直接観測し、測定を行う。この場合、制御電圧のノイズ検出感度が増幅しない場合に対して10倍となり、低周波の1/fノイズを比較的容易に検査できるようになる。
このとき、低周波数域における制御電圧のノイズレベルを測定し、図3において破線の波形W1、W2で示されるようなイレギュラーな大きなノイズが含まれているか否かを判定する。そして、所定値よりもノイズレベルが高い発振制御回路102を含む水晶発振器制御用ICは、不良品として除外する。
上記のように、本実施形態では、検査用増幅手段140を作動させる検査モードを設け、この検査モードにおいて、検査用増幅手段140によって制御電圧を増幅することにより、ノイズ検出感度を格段に向上させるようにしている。このため、発振制御回路102を含む水晶発振器制御用ICのノイズ検査を容易化でき、温度補償型水晶発振器モジュールとして組み立てる前に、ICの製造段階で迅速かつ効率的にノイズ検査を行って良品、不良品の選別を行うことができる。このことは、品質管理や製造効率の面で有効である。なお、検査用増幅手段140は、検査モード以外でも、温度補償型水晶発振器の発振周波数を意図的に変更する手段としても使用することが可能である。
また、基準となる水晶発振器制御用ICを用いて、水晶振動子を接続した状態で発振周波数の短期安定度等を測定し、水晶振動子の検査、選別を行うこともできる。この場合、発振制御回路102及び水晶発振回路150を含む水晶発振器制御用ICに水晶振動子を接続し、温度補償型水晶発振器モジュール100を構成した状態で、モード切替用端子T4から制御信号PVを入力して検査モードとし、検査用増幅手段140によるノイズの検出感度の向上のための増幅を有効化し、水晶発振器の発振状態を観測する。
水晶発振器の発振状態としては、発振周波数の変動幅や変動の周期、あるいは、短期安定度(電源オン直後の発振周波数の安定性)などを観測する。このとき、水晶発振器制御用ICから出力される制御電圧のレベルは、通常動作時に比べて、検査用増幅手段140で増幅された分だけ、例えば10倍高くなっており、ノイズ成分のレベルも10倍になっている。したがって、発振周波数の変動の検出感度が向上し、また、迅速かつ効率的な検査(良品、不良品の選別)を行うことが可能となる。
このように、本実施形態の水晶発振制御装置の機能を活用することで、水晶発振器制御用IC単体の検査だけでなく、水晶振動子の検査、あるいは水晶発振器制御用ICと水晶振動子とを組み合わせた温度補償型水晶発振器モジュールの完成品としての検査についても、精度良く効率的に行うことができる。このため、厳格な仕様を満足する水晶発振制御装置や温度補償型水晶発振器の良品のみを安定的に供給することができる。
そして、検査が終了した後は、メモリ180に通常モードを指定するデータを書き込むことで、スイッチSW1、SW2へ供給する制御信号S1を切り替える。この制御信号S1により、スイッチSW1がオンし、スイッチSW2がオフした状態となり、検査モードが解除されて通常モードに移行する。また、発振制御回路102が水晶発振回路150を含むワンチップICである場合などは、制御信号S1に加えてスイッチSW3へ供給する制御信号S2も切り替え、この制御信号S2によってスイッチSW3をオフし、通常モードに切り替える。このようにすると、以後、検査モード時の機能は使用されることがなく、通常動作には何ら影響を与えない。ただし、通常モードにおいて、メモリ180に検査モードを指定するデータを書き込むことで、任意に検査モードに移行させることも可能である。水晶発振器制御用ICの製造時や出荷時などには、検査モードでのノイズ検査後、通常モードにおいて温度補償型水晶発振器モジュールとして温度調整を行うことにより、安定して高品質の温度補償型水晶発振器を製造することができる。
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態に係る温度補償型水晶発振器モジュールの構成を示すブロック図である。図9において、図1と共通する部分には同一の符号を付している。
第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、検査用増幅手段の構成を変更したものである。ここでは、図1に示したように検査用増幅手段140を別個に設ける代わりに、制御電圧発生回路120において出力段に可変利得増幅器による出力段増幅器200を備えている。すなわち、図9の構成では、制御電圧発生回路120の出力段増幅器200がノイズ検出感度向上のための増幅手段も兼ねている。なお、発振制御回路102の基本的な構成及び動作は、図1に示した第1の実施形態と同様である。
この第2の実施形態では、検査モード時において、メモリ180から出力段増幅器200へ制御信号S3を供給し、出力段増幅器200の増幅率(ゲイン)を変更する。このとき、出力段増幅器200のゲインが所定量増加するよう、例えば、通常動作モード時の10倍に変更する。これにより、出力段増幅器200において、通常の利得よりも高い利得でノイズ検出感度向上のための増幅を行う。
ノイズ検査は、前述した第1の実施形態と同様に、発振制御回路102の出力端子T6から出力される制御電圧、あるいは、スイッチ手段190のスイッチSW3を介して検査用端子T5に導出される制御電圧のノイズレベルを測定することによって行われる。
そして、通常モード時には、メモリ180からの制御信号S3によって出力段増幅器200のゲインを通常動作時の値に変更する。これにより、制御電圧発生回路120の出力段増幅器200では、制御電圧を通常の利得で増幅して出力する。
第2の実施形態では、出力段増幅器200の利得を連続的、あるいは段階的に変化させ、所望のレベルの制御電圧を出力させるようにすることができる。したがって、ノイズ検査における柔軟性(多様性)が向上し、種々の検査条件に容易に対応させることが可能である。なお、出力段増幅器200は、検査モード以外でも、温度補償型水晶発振器の発振周波数を意図的に変更する手段としても使用することが可能である。
(第3の実施形態)
図10は本発明の第3の実施形態に係る温度補償型水晶発振器モジュールの構成を示すブロック図である。図10において、図1と共通する部分には同一の符号を付している。
第3の実施形態は、前述した第1の実施形態に加えて、常温状態においても低温用及び高温用の回路を動作させるように、温度オフセット調整手段を設けたものである。水晶発振器制御用ICの製造過程でランダムな箇所に発生する結晶欠陥は、ICチップ上のどの回路の部分に結晶欠陥が生じるかは予測できないため、IC全体を検査するために、全ての部分の回路を動作させてノイズの測定を行う必要がある。温度補償型水晶発振器に用いる制御電圧発生回路120は、温度センサ110から出力される周囲温度の変化に追従して変化する電流に基づき、水晶発振器の周波数の温度特性を打ち消す方向の温度特性をもつ信号を生成するものであり、例えば常温状態では常温用の回路のみが動作し、高温用の回路や低温用の回路は動作しない。したがって、全ての部分の回路を動作させるためには、周囲温度を全温度範囲にわたって変化させる必要がある。例えば、温度補償の対象となる温度範囲として、−30℃〜+85℃の広範囲な全温度範囲について検査を行う場合は、周囲温度を常温、高温、低温に変化させて測定を行うことになる。このため、高温状態や低温状態を実現する恒温槽が必要であったり、各温度域で測定するのに検査時間がかかり、検査を行うのに設備やコストの負担が大きくなる。
そこで、第3の実施形態では、温度オフセット調整回路210によって擬似的な高温状態及び低温状態をつくり出すことにより、常温状態で高温用の回路や低温用の回路を動作させ、常温下において全温度範囲の検査を一度に行えるようにする。これにより、広い温度範囲のノイズ検査を短時間で効率良く行うことが可能となる。
第3の実施形態の発振制御回路102は、図1の構成に、温度オフセット調整回路210を追加するとともに、温度オフセット調整回路210から制御電圧発生回路120に供給するオフセット電流をオンオフするためのスイッチSW4を第1のスイッチ手段130に追加した構成となっている。
温度オフセット調整回路210は、可変定電流源回路などで構成されるもので、温度センサ110の出力電流に対して、常温状態と検査の対象となる温度状態(低温状態または高温状態)との温度差に相当するオフセット電流を生成する。
この第3の実施形態では、検査モード時において、メモリ180から出力される制御信号S4により、スイッチ手段130のスイッチSW1がオフし、スイッチSW2及びSW4がオンする。このとき、温度オフセット調整回路210により生成されたオフセット電流は、スイッチSW4を介して制御電圧発生回路120に与えられる。このオフセット電流は、制御電圧発生回路120の内部で、温度センサ110から出力される電流(常温状態に対応した電流である)に重畳され、常温状態においても擬似的な高温状態、低温状態をつくり出すことができる。したがって、周囲温度が通常の状態(常温状態)であっても、制御電圧発生回路120において低温用の回路及び高温用の回路を動作させることができる。
そして、制御電圧発生回路120からの出力電圧を検査用増幅手段140により増幅し、発振制御回路102の出力端子T6、あるいは検査用端子T5から出力される増幅された制御電圧を測定することによって、低周波のノイズ成分の測定を行う。
通常モード時では、スイッチ手段130のスイッチSW1がオンし、スイッチSW2及びSW4がオフする。これにより、制御電圧発生回路120から周囲温度に応じた制御電圧が出力される。
ここで、図4に示した第1例の制御電圧発生回路120を本実施形態に適用した場合の発振制御回路102の構成例を示す。図11は本発明の第3の実施形態に係る発振制御回路102の要部構成を示すブロック図である。
この図11では、図10における温度センサ110及び制御電圧発生回路120に図4の構成を適用した水晶発振器制御用ICの構成例を示している。すなわち、2つの温度センサ110a、110bと、3次関数回路300及び1次関数回路310を含む制御電圧発生回路120とを備え、さらに検査用増幅手段140、スイッチ手段130、及び温度オフセット調整回路210a、210bを有して構成される。3次関数回路300は、低温域における温度特性を実現するための低温側回路410と、高温域における温度特性を実現するための高温側回路400とを備えており、これらの低温側回路410、高温側回路400に対応して、低温用の温度オフセット調整回路210aと高温用の温度オフセット調整回路210bとが設けられている。
各温度オフセット調整回路210a、210bから出力されるオフセット電流は各々、スイッチ手段130のスイッチSW6、SW7を介して、3次関数回路300の高温側回路400及び低温側回路410に供給される。スイッチ手段130の各スイッチSW1、SW2、SW6、SW7の開閉(オン、オフ)は、メモリ等からの制御信号S8によって制御される。
検査モード時には、スイッチSW6、SW7をオンし、温度オフセット調整回路210aからの低温用オフセット電流を低温側回路410に、温度オフセット調整回路210bからの高温用オフセット電流を高温側回路400にそれぞれ供給することによって、制御電圧発生回路120において、常温状態で全温度範囲での動作を実現することが可能となる。また、スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンして検査用増幅手段140を動作させ、制御電圧発生回路120から出力される制御電圧を増幅して容易に低周波のノイズ測定を行えるようにする。
したがって、第3の実施形態によれば、検出感度向上によるノイズ検査の高精度化及び効率化に加えて、常温時に擬似的な高温状態や低温状態をつくり出すことで、温度補償の対象となる温度範囲の全領域におけるノイズ検査を一度で効率的に行うことが可能となる。また、常温状態で高温時や低温時の短期安定度の測定が可能になる。このため、水晶発振器制御用ICや温度補償型水晶発振器モジュールの検査に関して、さらなる効率化を図ることができる。
(第4の実施形態)
図12は本発明の第4の実施形態に係る温度補償型水晶発振器モジュールの構成を示すブロック図である。図12において、図10と共通する部分には同一の符号を付している。
第4の実施形態は、前述した第2の実施形態において、第3の実施形態と同様に温度オフセット調整手段を追加して設けたものである。すなわち、制御電圧発生回路120の出力段に可変利得増幅器による出力段増幅器200を備えたものに、温度オフセット調整回路210を追加するとともに、温度オフセット調整回路210から制御電圧発生回路120に供給するオフセット電流をオンオフするためのスイッチSW5を第1のスイッチ手段130に設けた構成となっている。共通する各部の構成及び動作は、第1〜第3の実施形態と同様である。
この第4の実施形態においても、第3の実施形態と同様に、温度オフセット調整手段により擬似的な高温状態、低温状態をつくり出すことによって、常温状態においても全温度範囲の動作を実現できる。これにより、温度補償の対象となる全温度範囲におけるノイズ検査を一度に行うことができ、検査の効率化を図ることができる。また、常温状態で高温時や低温時の短期安定度の測定が可能になる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、上述した本実施形態の発振制御回路のより具体的な回路構成及び動作を説明する。ここでは、図11に示される発振制御回路における、温度センサ110a、110bの具体的な回路構成、及び3次関数回路300における高温側回路400及び低温側回路410の具体的な回路構成の例について説明する。
図13は温度センサ110a、110bの回路構成例を示す回路図である。また、図14(a)、(b)は、図13の温度センサにおいて使用される2つの抵抗R3、R4の抵抗値の温度特性を示す図である。
温度センサ110a、110bは、低ノイズ設計のバンドギャップ回路(周囲温度に関わらず一定の電圧を発生させる定電圧回路)500と、周囲温度に追従して線形的に変化する電流を生成する電流生成回路600とを備えている。
まず、周囲温度に関わらず定電圧を発生させるバンドギャップ回路500について説明する。バンドギャップ回路500は、PNPトランジスタのベース−コレクタ間の接合を利用した接合ダイオードQ1と、抵抗R1と、エミッタ面積比が5:1のトランジスタQ6、Q7で構成されるカレントミラーと、抵抗R2と、カレントミラーからなる負荷回路Q8、Q9とを有して構成される。このバンドギャップ回路500の出力電圧は、抵抗R1の両端の電圧に、接合ダイオードQ1の順方向電圧を加算した電圧となる。
ここで、抵抗R1は、周囲温度の上昇に伴って抵抗値が増大する正の温度係数をもつが、抵抗R2も同様に、正の温度係数をもつため、両者の温度特性はキャンセルされ、無視することができる。ここで、周囲温度が増大して、抵抗R1の抵抗値が増大すると、抵抗R2の抵抗値も増大して、電源(Vcc)側から流れてくる電流の電流量が減少し、抵抗R1における電圧降下量は周囲温度に関係なく一定となる。
したがって、バンドギャップ回路500において問題となるのは、接合ダイオードQ1の順方向電圧の温度依存性である。接合ダイオードQ1は負の温度係数をもつから、例えば、周囲温度が高くなると、その電流能力が増大する。したがって、周囲温度が変化する前と同じ量の電流が電源(Vcc)側から供給され続けると、PN接合ダイオードの順方向電圧は増大し、これにより、バンドギャップ回路500の出力電圧が変動してしまう。
しかし、バンドギャップ回路500では、周囲温度が高くなると、電源(Vcc)側から供給される電流が自動的に減少し(つまり、電源側から供給される電流に正の温度係数が付与され)、PN接合ダイオードQ1の順方向電圧のもつ負の温度係数は打ち消される。これより、周囲温度に関わらず、PN接合ダイオードQ1の順方向電圧は一定に保たれ、バンドギャップ回路500の出力電圧は、一定値に保たれる。
ここで、電源(Vcc)側から供給される電流に正の温度係数をもたせるために、エミッタ面積比が異なる2つのトランジスタ(ダイオード)Q6とQ7が設けられている。すなわち、抵抗R2を流れる電流の電流量は、ダイオードQ7の順方向電圧から、ダイオードQ6の順方向電圧を引いた電圧を、抵抗R2の抵抗値で除算して求められる。
このとき、ダイオードQ6の電流密度は、ダイオードQ7の電流密度の5倍に設定されているから、ダイオードQ6の負の温度係数の値は、ダイオードQ7の負の温度係数の値よりも大きい。したがって、ダイオードQ7の順方向電圧からダイオードQ6の順方向電圧を引いた電圧についての温度係数は、下記のとおり、正の温度係数を有することになる。
(小さな負の温度係数)−(より大きな負の温度係数)=(正の温度係数)
つまり、温度上昇に伴い、ダイオードQ7の順方向電圧からダイオードQ6の順方向電圧を引いた電圧は減少し、したがって、抵抗R2を流れる電流の電流量も減少する。
このように、周囲温度が高くなると、電源(Vcc)側から供給される電流が自動的に減少し(つまり、電源側から供給される電流に正の温度係数が付与され)、PN接合ダイオードQ1の順方向電圧がもつ負の温度係数は打ち消される。したがって、周囲温度に関わらず、PN接合ダイオードQ1の順方向電圧は一定に保たれ、バンドギャップ回路500の出力電圧は常に一定値となる。
ここで、注目すべき点は、定電流を生成するための抵抗R1には、差動構成の回路(カレントミラー)の左右の電流経路における各電流が合算された電流が流れ込むことであり、電流量が2倍になっている分、抵抗R1の抵抗値を1/2とすることができることである。抵抗のサーマルノイズは、抵抗値を小さくすることで減少させることができるため、図13のバンドギャップ回路500は、ノイズを低減できるように設計されていることになる。
次に、周囲温度に追従して線形的に変化する電流を生成する電流生成回路600について説明する。電流生成回路600では、温度係数の値が異なる2つの抵抗R3、R4を用いて電流を生成し、生成された各電流を減算する電流減算方式により、周囲温度に比例して変化する電流Iを生成する。
電流生成回路600は、バンドギャップ回路500の出力電圧によってベースがバイアスされるNPNトランジスタQ10、Q11と、抵抗R3、R4と、カレントミラーからなる負荷回路(Q12、Q13)とを有して構成される。
抵抗R3の温度係数(正の温度係数)は、図14(a)に示すように、周囲温度Taに対して緩やかな変化を示し、一方、抵抗R4の温度係数(正の温度係数)は、図14(b)に示すように、周囲温度Taに対して、より急な変化を示す。このような温度特性の差は、例えば、拡散抵抗のシート抵抗値を変化させることで実現することができる。
ここで、図14(a)、(b)に示される、抵抗値Rの温度に対する変化を示す特性線を重ね合わせると、ある温度において2つの特性線は交わり、その温度より高い温度範囲では、抵抗R4の抵抗値の方が大きくなり、その抵抗値の差は温度上昇に比例して増大する。一方、2つの特性線が交わる温度より低い温度範囲では、逆に、抵抗R3の抵抗値の方が大きくなり、その抵抗値の差は温度の低下に比例して増大する。このように、2つの特性線が交わる点を境として、2つの抵抗R3、R4の抵抗値の差は、周囲温度Taに比例して増大する。
したがって、図13の電流生成回路600では、周囲温度の変化に伴う抵抗R3、R4の抵抗値の変動を電流の変動に変換し、両者の電流の差を取ることで、周囲温度Taに比例して変化する電流Iを生成する。すなわち、抵抗R3に流れる電流をカレントミラーQ12、Q13で反転し、カレントミラーの出力側トランジスタQ13の出力電流(押し出し電流)から、トランジスタQ11の出力電流(吸い込み電流)を減算する(電流的に減算する)ことにより、各抵抗R3、R4の抵抗値の差に相当する電流Iを生成することができる。この電流Iは、周囲温度に対応して線形に変化する電流である。
図15は3次関数回路300の回路構成例を示す回路図である。ここでは、温度オフセット調整回路210a、210bによるオフセット電流を利用して、擬似的な高温状態、低温状態をつくり出すための具体的な構成について説明する。
温度オフセット調整回路210a、210bは、一種の可変電流源回路であり、オフセット電流I1、I3(電流量は可変)をスイッチ手段のスイッチSW6、SW7を介して高温側回路400及び低温側回路410に供給する。このオフセット電流の電流量を調整することにより、見掛け上、温度センサ110a、110bの出力電流Iを変化させることが可能となる。
高温側回路400は、直列接続された3個のPN接合ダイオードD1、D2、D3と、周囲温度に対して温度特性を有さない基準電流源81から出力される定電流Irによりバイアスされる直列接続された2個のダイオードD4、D5と、周囲温度に比例した電流を生成する電流生成回路74と、温度オフセット調整回路210aからのオフセット電流I1を反転させて出力電流I2を生成するカレントミラー74とを備える。電流生成回路74は、電圧/電流変換素子として機能するPNPトランジスタQ20と、エミッタ電圧を安定させるためのボルテージフォロワ73とを有して構成される。
直列接続された3個のPN接合ダイオードD1、D2、D3は、温度センサ110aが出力する周囲温度に比例する電流I(吸い込み電流)に、オフセット電流I1をカレントミラー74で反転させて得られる電流I2を加算した電流によりバイアスされる。したがって、オフセット電流量を調整することにより、見掛け上、温度センサ110aの出力電流Iを変化させ、結果的に直列接続された3個のPN接合ダイオードD1、D2、D3のバイアス電流を変化させることができる。これにより、擬似的な高温状態をつくり出すことが可能である。
高温側回路400は、PN接合ダイオードの順方向電圧が電流に対して対数圧縮されていることを利用して、3次関数的に変化する電流を生成し、図5(b)の高温域における温度特性を実現する。ダイオードの順方向電圧は、ダイオードの整流方程式より、順方向電流と飽和電流の比の対数に所定の係数を乗算した形式で表すことができる。対数の加算は、乗算の形式に変更することができるので、3つのダイオードD1、D2、D3の順方向電圧の和は、順方向電流と飽和電流の比の3乗の対数に、所定の係数を乗算した形式で表わされる。
ここで、順方向電流には、温度センサ110から出力される周囲温度に比例して変化する電流Iが含まれるから、3つのダイオードD1、D2、D3からなるダイオード列の順方向電圧を示す式には、周囲温度に比例する電流Iの3乗の項が含まれることになる。
一方、2つのダイオードD4、D5は、温度特性をもたない基準電流Irでバイアスされており、同様に、このダイオード列の順方向電圧を示す式には、基準電流Irの2乗の項が含まれる。
そして、3つのダイオードD1〜D3で構成されるダイオード列の順方向電圧と、2つのダイオードD4、D5で構成されるダイオード列の順方向電圧との差の電圧が、電流生成回路74を構成するPNPトランジスタQ20のベース−エミッタ間に印加される。
このとき、PNPトランジスタQ20のコレクタ電流の電流量は、PN接合の整流方程式から算出することができ、結果的に、Ir×(I/Ir)3と表すことができる。ここで、Irは温度係数をもたない基準電流であり、Iは、温度センサ110aから出力される周囲温度に比例する電流である。この電流Iは、上記のとおり、オフセット電流により調整することができる。
したがって、3次関数回路300における高温側回路400は、周囲温度に従って変化する電流Iの3乗の項を含む電流を、アナログ的に生成することができる。これにより、図5(b)の高温域における温度特性が実現される。
低温側回路410は、高温側回路400と同様に、直列接続された3個のPN接合ダイオードD6、D7、D8と、周囲温度に対して温度特性を有さない基準電流源80から出力される定電流Irによりバイアスされる直列接続された2個のダイオードD9、D10と、周囲温度に比例した電流を生成する電流生成回路84とを備える。電流生成回路84は、電圧/電流変換素子として機能するPNPトランジスタQ21と、エミッタ電圧を安定させるためのボルテージフォロワ76とを有して構成される。
上述した高温側回路400と同様に、電流生成回路84におけるPNPトランジスタQ21のコレクタ電流は、周囲温度に従って変化する電流Iの3乗の項を含む電流であり、したがって、アナログ的に、3次関数的に変化する電流を生成することができる。これにより、図5(b)の低温域における温度特性が実現される。
また、上述したように、温度センサ110bから出力される電流Iの電流量は、温度オフセット調整回路210bから出力されるオフセット電流I3の電流量を調整することで、見掛け上、変化させることが可能である。これにより、擬似的な低温状態をつくり出すことができる。
このように構成された3次関数回路300の高温側回路400と低温側回路410の出力電流を加算し、さらに、1次関数回路310の出力電流を加算して、電流を電圧に変化することで、図5(c)に示す温度特性をもつ制御電圧が生成される。検査モード時には、本実施形態の検査用増幅手段140を用いて制御電圧を増幅することによって、ノイズ検出感度を向上させることができる。
上記のような本実施形態の水晶発振制御装置を用いて構成した温度補償型水晶発振器は、例えば、水晶発振器の仕様として高い短期安定度が要求される、GPS機能を搭載したカーナビゲーションシステムやGPS受信機を搭載した携帯電話装置などの通信端末装置に搭載して使用可能である。短期安定度の特性に優れた高精度の温度補償型水晶発振器を用いることによって、GPSシステムの位置検出精度を十分確保することができる。
以上のように、本実施形態の水晶発振制御装置によれば、検査モードにおいて検査用増幅手段によって制御電圧を増幅することで、ノイズ検出感度を向上でき、発振制御回路を含む水晶発振器制御用ICのノイズ検査を容易かつ効率良く行うことが可能となる。このため、水晶発振器制御用ICを製造する半導体メーカーによる製造時や出荷前の検査において、温度補償型水晶発振器の短期安定度に影響を及ぼす低周波のノイズレベルの測定を高精度かつ短時間に実行し、所定の性能を満足する個体を選別できる。
また、温度オフセット調整手段によって擬似的な高温状態や低温状態を作り出すことで、常温状態においても発振制御回路の全温度範囲での動作を実現でき、ノイズ検査を一度で効率良く行うことが可能である。これにより、さらなる検査の効率化が達成される。したがって、高品質な温度補償型水晶発振器を安定して生産することが可能となる。
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変形、応用が可能である。