JP4298016B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体を超音波で走査して得られる受信信号に含まれる位相情報や振幅情報に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置に関し、特に、複数枚の超音波画像から立体視画像を高速に生成して表示する超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波の医学的な応用例として種々の装置が知られているが、その主流は超音波パルス反射法を用いて生体の軟部組織の断層像を得る超音波診断装置である。この超音波診断装置は、無侵襲で組織の断層像を表示するものであり、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴イメージング装置(MRI)あるいは核医学診断装置など他の診断装置に比べて、リアルタイム表示が可能である、装置が小型で安価である、X線などの被爆がなく安全性が高い、超音波ドプラ法により血流イメージングが可能である、といった特徴を有している。
【0003】
このような利用から、内科における心臓,腹部,乳腺,泌尿器といった臓器の診断や、産婦人科における胎児の観察等において広く超音波診断装置が用いられている。
【0004】
特に、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作により、心臓の拍動や胎児の動きの様子をリアルタイムで表示させることができ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行え、ベッドサイドの近傍に装置を移動させての検査も容易に行えるなど簡便であるという利点がある。
【0005】
また、超音波ドプラ法による振動子へ向かう(あるいは遠ざかる)血流の速度分布や、パワードプラ法による血流エコー信号のパワー値の分布を表示させることも可能となっている。特にパワードプラ法は、より高感度に血管系のパフュージョンの検出が可能であり、腎臓のより末梢レベルの血流異常や肝癌などの診断に用いられつつある。
【0006】
このような超音波診断の分野においても、CTやMRIと同様に3次元画像のニーズが高まってきている。例えばBモードイメージングやカラードプライメージングにおいて、臓器の形状や血管の走行などの鑑別診断や機能診断を行う目的で3次元の立体視画像の表示が行われるようになってきた。3次元の立体視画像は、2次元方向の画像情報(断層像)に加えてその奥行き方向の情報も加味されるので、組織の形状、血管の走行の様子をより明確に知ることが出来るものと期待されている。
【0007】
ところが、3次元情報を有する画像の構築には相当量の演算が必要であり、一画像を再構築・表示させるために数十秒〜数分の長い時間を要するという問題点がある。
【0008】
CTやMRIにおいては、その診断の性質上、3次元画像構築に少なからず時間をかけても問題とはならない場合が多い。一方、超音波診断においては、本来、リアルタイムに観測を行うため、3次元表示が通常の診断において用いられることは非常に少ない。超音波診断において3次元画像を構築する際も、CTやMRIの場合と同様に、データを取り込んだ後(例えば検査後)に改めて画像を再構築して観察するといった形式を取らざるを得ない。
【0009】
3次元情報を含んだ画像は、任意の視点から観測した画像を再構築できるが、複数の視点から観察することはそれなりに時間を要する。ある時刻の3次元画像(静止画)に対してこれを行うのであればよいが、超音波診断画像のようにリアルタイムで次々と得られる画像に対しては、それらの画像を再構築して別の視点から見ること自体、必ずしも有用であるとは言えず、かえって複雑さ、繁雑さをともなう場合も起こり得る。
【0010】
また、厳密な3次元情報を必要としない場合もある。例えばある一定の奥行き感のある画像が得られさえすれば、組織の形状や血管の走行などの情報をより明確に知るためにこれが有用となる場合がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、奥行き立体感を伴った超音波診断画像を高速に表示可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明の超音波診断装置は次のように構成されている。
すなわち、本発明の超音波診断装置は、超音波送受信手段により被検体に対し超音波を送受信して得られたエコー信号に基づき、前記被検体の所望の断層面の超音波画像を得る超音波診断装置において、前記超音波を送受信する面に直交する方向に沿って、任意の基準画像を含み、互いに平行でない複数の超音波画像を得る画像収集手段と、前記複数の超音波画像をそのまま加算合成して立体視用の右眼画像又は左眼画像を合成するとともに、予めメモリに記憶された複数の異なるずらし幅により前記複数の超音波画像の各々を断層面の方向に沿って前記基準画像に対してずらし、かつ、前記超音波を送受信する深さに応じて前記ずらし幅を異ならせて加算合成することにより前記立体視用の左眼画像又は右眼画像を合成する画像合成手段と、前記右眼画像及び左眼画像をそれぞれ別に表示する表示手段と、を具備する。
前記画像収集手段は、前記視線方向から見た奥行き方向に沿って断層面が異なる複数の超音波画像に代えて、造影剤存在部位のエコー輝度が高い超音波画像と、当該画像とは異なる時刻に収集され、前記造影剤存在部位のエコー輝度が低い一連の超音波画像とを含む複数の超音波画像を収集し、前記合成手段は、前記複数の超音波画像をそのまま加算合成して立体視用の右眼画像又は左眼画像を合成するとともに画像の収集時刻の違いに応じて前記複数の超音波画像の各々を断層面の方向に沿って基準画像に対してずらして加算合成することにより前記立体視用の左眼画像又は右眼画像を合成してもよい。
これら本発明の超音波診断装置によれば、ある程度の奥行き立体感を伴った超音波診断画像を高速に表示することができる。
【0013】
また、本発明の他の超音波診断装置は、造影剤存在部位のエコー輝度が高い超音波画像と、当該画像とは異なる時刻に収集され、前記造影剤存在部位のエコー輝度が低い一連の超音波画像とを収集する画像収集手段と、前記収集手段により収集された複数枚の超音波画像から立体視用の右眼画像及び左眼画像を得る画像合成手段と、前記右眼画像及び左眼画像をそれぞれ別に表示する表示手段と、を具備する。
これら本発明の超音波診断装置によれば、ある程度の奥行き立体感を伴った超音波診断画像を高速に表示することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
まずは具体的な実施形態(第1〜第3実施形態)の説明の前に、奥行き標本化方式の原理と立体視の原理について説明する。
【0015】
超音波診断装置に限らず、CT、MRIなどによって得られる複数の2次元断層像は、その平面に垂直な方向から見ることで、各断面は異なる奥行きを持つと考えることが出来、結果としてこれらは3次元的な情報を持つと言える(図9参照)。このような複数の断層像(「奥行き標本化断層像」と称する)から構築した3次元画像を表示する方式は幾つか知られており、その例を以下に説明する。
【0016】
一例としては、図10に示すような移動スクリーン式(参考文献「山田博昭他著,“移動スクリーン式3次元ディスプレイ”,3D画像,6-6 ,pp.36-41(1992)」)と呼ばれる方法であって、レーザ光51をスキャンして、移動(振動)しているスクリーン50上に断層面像を順次投射するものである。このように表示面を振動させる方式としては、他に振動するミラーに映像を反射させて立体視画像を得るバリフォーカルミラー方式も知られている。
【0017】
他の例は、表示面を積層したディスプレイによる方式(参考文献「T.S.Bugak,SID Digest(1985)」)であって、図11に示すように、CRT60からの表示光を奥行きに対応した液晶セル62で反射させる方式である。この方式においては、πセルドライバ61が液晶セル62を選択的に駆動するものとなっており、機械的な可動部が不要であるという利点が得られるが、画像の明るさが液晶セルの通過枚数に比例して暗くなるという欠点もある。
【0018】
次に、立体視の原理とその実現方法について説明する。立体写真や立体テレビジョンにおいて利用されるような立体感のある画像は、左右の眼に写る像のずれ、いわゆる「両眼視差」を利用したものである。これを用いれば、1枚のスクリーン(左右の眼に違う画像が入るので2枚とも言える)によって、奥行きのある画像を得ることが可能である。例えば、図12に示すように遠くに家70があり、近くに木71がある場合を考える。適当な場所にスクリーン72を置くと、このスクリーン72に投影される画像には図13に示すようにずれが生じていることがわかる。図13において、L画像は左眼のみ、R画像は右眼のみによって視覚されるように「空間分離」して見ると、手前に木、奥に家が定位する。
【0019】
ここで、図12及び図13に示される物体(家及び木)は2次元的な絵であったが、現実の3次元物体を見る場合には、厳密には両眼の距離だけ異なる視点から見た分だけ、形状が変わるであろう。そこで、前述の奥行き標本化断層像を図14に示すように配置し、図12と同様にしてスクリーン72に投影すると、立体視による立体視画像が得られることになる。より具体的には、左眼用の画像は、手前の断層像ほど右へずらし、右眼用の画像は手前の断層像ほど左へずらすようにして合成すればよい。なお、いわゆる「交叉法」で画像を観察する場合は逆にずらせば良い。
【0020】
しかしながら、ここで2つの問題が生じる。まず、(1)上述したように厳密には両眼がそれぞれ異なる角度から見ているとは限らないということである。しかし、その角度(輻輳角)がそれほど厳密さを必要としないならば、このことは無視できると思われる。また、(2)図12に示したように点在する物体を表示対象物とするならば、1つのスクリーンに投影を行なうことは容易であるが、画像の殆どの領域が3次元の奥行き情報を有する断層像の場合には、同様に投影を行なうことは容易でない。
【0021】
また、断層像が多くなっていくと、これが更に困難となっていくことも予想される。以下では、この(2)の問題を解決するような画像合成法の例を説明する。
【0022】
(A)透過画像を用いる方法
図15(a),(b)は、奥行き標本化断層像として手前側と奥側の2枚の透過画像を用意し、これを元に作成した立体視画像の一例を示す図である。図15(a)は立体視用の左眼画像、図15(b)は立体視用の右眼画像を示している。これら左眼画像及び右眼画像の各々は、例えば次のようして作成する。
【0023】
まず、立体視用の左眼画像については、2枚の透過画像の各々の輝度を2分の1にした後にこれらを加算合成することによって得る。
つぎに、立体視用の右眼画像については、2枚の透過画像の各々の輝度を2分の1にするとともに手前側の透過画像を画面左方向に8ピクセルほどずらした後、これらを加算合成することによって得る。
【0024】
ここでは、左眼用と右眼用の透過画像の相対的なずらし方が重要であり、同様の結果が得られるのであれば、ずらし方を任意に変えても良い。例えば、画面左方向に4ピクセルずれた透過画像を原画像と考えれば、手前側の透過画像を画面右方向に4ピクセルずらし、手前側の透過画像を画面左方向に4ピクセルずらした場合であっても上記と同様の立体視画像が得られる。
【0025】
結果として、半透明な断層像が奥行き感を持って重層されて観察される。なお、2〜4枚程度の透過画像の重層では、超音波Bモード画像は立体視画像に適していると思われる。しかしながら、断層像の数が多くなれば、各々の画像の輝度は低くなってしまい、良好な像が得られないとこが予想される(透過率の悪い像になる)。
【0026】
(B)MIPを用いる方法
図16(a),(b)は最大輝度投影法(MIP)を適用した場合であって、手前側から奥側への4枚の奥行き標本化断層像を用意し、これを元に作成した立体視画像の一例を示す図である。図16(a)は立体視用の左眼画像、図16(b)は立体視用の右眼画像を示している。これら左眼画像及び右眼画像の各々は、例えば次のようして作成する。
【0027】
まず、立体視用の左眼画像については、4枚の奥行き断層像を最大輝度投影法によって合成して得る。
つぎに、立体視用の右眼画像については、手前側から奥側への4枚の奥行き断層像を画面左方向にそれぞれ8,6,4,2ピクセルずつずらし、最大輝度投影法によって合成して得る。
【0028】
立体視画像の各ピクセルには、合成する4枚の奥行き断層像の最大の輝度が表示される。この方法では、実質全域に見られるスペックルについては均一化されるので、奥行き感は得られないが、その一方で、血管壁など高輝度な輪郭が奥行き感を伴って抽出される。このように、超音波Bモード画像で血管の走行などの奥行き情報を得るためには、この方法は有用と思われる。またこの方法では比較的多数枚の断層像を用いても立体視画像が生成可能となる。
【0029】
なお、カラー画像に関しても、現在ディスプレイに使用されている赤・緑・青の3原色に対して各々独立に考えることで、上記(A),(B)の両者の方法を採ることが可能である。
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明の超音波診断装置の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【0031】
アレイプローブ1は、圧電セラミック等から成る電気/機械可逆的変換素子としての複数の圧電振動子を有する。これら複数の圧電振動子は並列してアレイプローブ1の先端に装備される。パルサ2は、レートパルスを入力し、そのタイミングに従い、アレイプローブ1に対してチャンネル毎に電圧パルスを印加する。これにより超音波ビームが被検体に向けて送信される。可動揺動モータ3は、アレイプローブ1をアレイ方向と直交する方向へ機械的に動かすために設けられている。また、プローブ移動制御器4は、可動揺動モータ3とパルサ2との同期を図るために設けられている。
【0032】
被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射した反射波はアレイプローブ1で受信される。このプローブ1からチャンネル毎に出力されるエコー信号は、超音波受信部5に取り込まれる。超音波受信部5は,プリアンプ5A,受信遅延回路5B,加算器5Cを有する。エコー信号は、チャンネル毎にプリアンプ5Aにより増幅され、受信遅延回路5Bにより受信指向性を決定するのに必要な遅延時間が与えられ、さらに加算器5Cによって加算される。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。この送信指向性と受信指向性とにより送受信の総合的な超音波ビームが形成される。
【0033】
次にレシーバ部6以降の構成を説明する。レシーバ部6は、図示しないが、対数増幅器、包絡線検波回路、アナログディジタルコンバータ(A/Dコンバータ)から構成される。レシーバ部6からの出力は、Bモード用ディジタルスキャンコンバータ(DSC)部7により、超音波スキャンのラスタ信号列からビデオフォーマットのラスタ信号列に変換され、メモリ合成部8に送られる。メモリ合成部8は画像及び設定パラメータ等の情報を並べて、あるいは重ねるなどしてビデオ信号として出力する。これは表示部9に送られ、被検体組織形状の断層像が表示される。
【0034】
立体視画像ではない通常の診断画像を表示する場合は、上記のようにDSC7からの信号がメモリ合成部8へ直接送られる。一方、本発明に係る立体視画像を表示する場合は、DSC7からの信号が立体表示用画像メモリ10へ送られ、ここで立体視画像が生成された後、メモリ合成部8に送られる。立体表示用画像メモリ10は本発明の主要部分であり、この部分の動作については後述する。
【0035】
(奥行き断層画像の取り込み方法)
次に、奥行き断層画像の取り込み方法について述べる。
本実施形態においては、図2(a),(b)に示すような揺動機構を具備したアレイプローブ1を機械的に動かすことで、スキャン面に直交する方向の複数枚の断層像を得る。この揺動機構を持ったアレイプローブ1のより具体的な構成については、例えば特開昭55−116342号公報、特開昭61−154653号公報等にそれぞれ開示されている。
【0036】
なお本実施形態は上記のような公知例を利用するが、次の点で公知例とは異なる。すなわち、上記公知例は、空間的に稠密な3次元データを収集するものであり、アレイ方向に例えば120ラスタの走査線を持つ場合、スキャン面に直交する方向について120枚程度の奥行き断層画像を収集する必要がある。このため3次元データ収集に時間がかかる。
【0037】
一方、本実施形態は、厳密な3次元情報は必要とせず、スキャン面に直交する方向について、奥行き断層画像を2,3枚乃至10枚程度得る。したがって3次元データ収集に要する時間は100msecから高々300msec程度で完了する。
【0038】
次に、取り込まれた複数枚の奥行き断層像から立体視画像を合成し、これを表示するための機能について説明する。
図1に示した立体表示用画像メモリ10において、プローブ1のアレイに直交する方向への複数枚の奥行き断層像に対し、前述した立体視の原理に基づく画像処理演算を行なう。
【0039】
図3は、奥行き断層像のずらし幅を示す図である。先ず、立体視用の左眼画像については、断面a〜dの画像をそのまま加算合成することによって得る。次に立体視用の右眼画像については、断面a〜dから成る奥行き断層像のうち、断面bの画像を基準とし、断面aの画像は基準に対して4ピクセルほど左(−4ピクセル右)にずらし、断面cの画像は基準に対して4ピクセルほど右にずらし、断面dの画像は基準に対して8ピクセルほど右にずらし、これら断面a〜dの画像を加算合成することによって得る。
【0040】
なお、この例において立体視用の左眼画像は、各々の奥行き断層像をずらさずにそのまま加算合成するものとなっているが、右眼画像をずらさずに左眼画像をずらすようにしても良い。あるいは、左眼画像及び右眼画像の両者をずらすようにしても良い。
【0041】
立体表示用画像メモリ10においては、図3において説明したような画像のずらし幅(ピクセル値)が定義されており、それに従って画像の合成が行われる。これにより既に図15(a),(b)又は図16(a),(b)に示したような輝度重畳画像が作成される(図4参照)。
【0042】
本実施形態では、(A)透視画像を用いる手法、(B)MIPを用いる手法、について既に説明したが、重畳する画像の枚数(奥行き断層像の枚数)によって、オペレータが最も適当な手法を選択可能とする。
【0043】
奥行き感は立体視画像を作成する際のずらし幅によって変化する。立体視画像によれば、相対的な前後関係を知ることができるが、上述のように厳密な3次元情報を持っていないので、奥行き方向の距離等の計測には不向きである。したがって、画像合成の際のずらし幅には厳密な規制はない(ずらし幅を大きくすれば、奥行き感が強調されるのみである)。
【0044】
また、例えば図5の様に不等間隔で取った場合は、ずらし幅を比例的に変化させることで、不等間隔な奥行き感を実現することもできる。
ここで問題となるのは、図3及び図5からも明らかなように、アレイプローブ1による実際の断層平面は互いに平行ではないので、深さによって奥行き方向の距離が異なってしまうことである。ただし、奥行き感を出すためだけに本発明を用いるのであれば、図3及び図5で示した手法によって十分な効果が得られる。なお、前後の関係、またはスキャン面を横断する血管とスキャン面に垂直方向に走る血管との関係などの相対位置関係などを知ることも容易である。
【0045】
深さによって奥行き方向の距離が異なってしまうことを補正するためには、図6に示すように、断層像の深さによってずらし幅をかえるという手法で達成可能である。図6の例によれば、深さが0〜1cmの部分は1ピクセル、1〜2cmの部分は2ピクセル、…という具合に画像をずらすように定義されている。
【0046】
立体表示用画像メモリ10は、上述のようにして、送られてきた画像を次々に合成するとともにメモリ合成部8を介して表示部9による表示に供する。そのため、例えば3〜4枚を用いて立体視画像を作成するならば、診断画像のフレームレートは高々1/4〜1/3に下がる程度で、リアルタイム性を保ったまま、奥行き感のある画像を表示可能である。
【0047】
なお、この手法は特別なディスプレイを用いなくとも、従来の診断装置のモニタに表示が可能であり、非常に効果的である。もちろん、立体像を表示させるための特別なディスプレイを用いることも可能であり、これは次の第2実施形態において説明する。
【0048】
(第2実施形態)
ところで、裸眼による立体視にはいわゆる「慣れ」が必要であり、容易に立体視が出来るようになるまでには個人差がある。一般的な検査ではディスプレイと被検体を交互に見る場合が多く、裸眼による立体視は困難が生じることが考えられる。そこで第2実施形態では、図7に示すような、X線診断装置等でよく用いられる液晶シャッタメガネ20を利用した時分割立体テレビジョン方式を、超音波診断装置のディスプレイ21に適用する。これはディスプレイ21のフィールド周期t毎に左右画像を交互に提示し、これと同期させて液晶シャッタメガネ20を開閉して立体視する方式である。
【0049】
また、立体視を見るために特別なメガネをかけることはわずらわしいことであるとも言える。そこで、液晶シャッタメガネを利用した時分割立体テレビジョン方式の代わりに、パララックスステレオグラムを表示系に適用しても良い。パララックスステレオグラムによる表示法は近年、立体カラー液晶ディスプレイとして利用され、細いスリット上の開口部より左右の画像を分離して見せるという手法である。
【0050】
このような第2実施形態によれば、特殊な表示系を用いる手法ではあるが、オペレータが立体像を観測する際の負担は軽減されるという効果が得られる。また、第1実施形態において述べたように立体視に必要な奥行き断層画像の枚数は稠密な3次元画像を構成する場合に比べて少ないため、表示系への負荷も軽く、リアルタイム性が損なわれることがない。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態として、複数の断層像を得るために2次元(2D)アレイプローブを用い、カラードプライメージングを行なう超音波診断装置について説明する。図8は本発明の第3実施形態に係る超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【0052】
2次元アレイプローブ30を用いることによりアレイ方向とスライス方向の両方向に3次元的なスキャンを行う手法は既に知られているが、これを先の第1実施形態において述べた揺動機構を具備するアレイプローブ1の代わりに用いることとで、複数枚の断層像を迅速に得ることが可能となる。また、本実施形態は、本発明をカラードプライメージング(Color Doppler Imaging )に応用したものであって、当該イメージングに係るCFM処理を含む装置の構成について説明する。
【0053】
カラードプラ画像生成のための信号は、CFMユニット11に送られる。CFMユニット11は、ここでは図示はしないが、検波器、クラッタ除去フィルタ、ドプラ偏移波数解析器から構成され、移動物体(例えば血流)の速度V、パワーPあるいは分散σの情報を得ることができる。CFMユニット11からの出力信号は、CFM用ディジタルスキャンコンバータ(DSC)12に供給されたのち、メモリ合成部8に送られる。
【0054】
そして本実施形態においては、CFMのための立体表示用画像メモリ13が設けられており、これは前述のBモードの立体表示用画像メモリと重複しても良いが、こちらはカラーイメージの合成が可能なものとする。カラーイメージは、基本色、例えば赤、緑、青をそれぞれ独立した単色を考えれば、既に説明した透過画像を用いる方法、MIPを用いる方法、グレースケールで用いられる手法等を同様に適用できる。
【0055】
以上に説明したように、第1乃至第3実施形態によれば、比較的少ない枚数の画像を用いて、奥行き立体感のある簡易的な超音波3次元イメージを高速に表示できる。これにより、断層像に直交する奥行き方向の血管走向、スキャン面を横断する血管とスキャン面に垂直方向に走る血管との関係などの相対位置関係などを、迅速に知ることができるようになる。
【0056】
(第4実施形態)
造影剤を用いた診断の最も基本的なものとして、造影剤による輝度増強の有無を調べることにより、診断部位における血流の有無を知るという診断がある。さらに進んだ診断は、診断部位における造影剤の空間分布の時間変化の様子を輝度変化の広がりや輝度増強の程度に基づいて観察する診断である。また、造影剤注入から関心領域(ROI)にそれが到達するまでの時間およびROI内での造影剤によるエコー輝度の経時変化(TIC:Time Intensity Curve)、あるいは最大輝度などを観測するといった診断である。
【0057】
このように造影剤を用いたコントラストエコー法は、ハーモニックイメージングという手法により更に効果的なものとなる。ハーモニックイメージングは、微小気泡が超音波励起されることによって起こる非線形挙動による高調波成分を基本周波数成分から分離して映像化するという手法であり、生体臓器は比較的非線形挙動を起こしにくいため、良好なコントラスト比で造影剤を観測できる。
【0058】
超音波照射によって消滅してしまう現象を積極的に活用するイメージング方法として、“フラッシュエコーイメージング(参考文献:6795フラッシュエコー影像法の検討(1),神山直久他,第67回日本超音波医学会研究発表会,1996.6)”、あるいは“Trangient Response Imaging”が知られている。
【0059】
フラッシュエコーイメージング法の原理は、次の通りである。
すなわち、従来のような1秒間に数十フレームといった連続スキャンを、数秒間に1フレームといった間欠的スキャンに切り替えることで、関心領域へ微小気泡が流入して密集するための時間を与える。関心領域に微小気泡が密集したときを見計らって音圧の高い超音波を用いて送受信を行い、コントラストの強いエコー信号を得る。このようなフラッシュエコーイメージング方法によれば、輝度増強が改善される。
【0060】
ところで、上述した第1実施形態乃至第3実施形態の超音波診断装置は、被検体の異なる断面に関する複数枚の超音波画像を収集し、これに基づいて奥行き立体感のある超音波3次元イメージを生成して表示するものであった。一方、第4実施形態の超音波診断装置は、上述したフラッシュエコーイメージングを実施し、当該イメージング中において、被検体の同一断面に関し収集時刻の異なる複数枚の超音波画像を収集し、これらの画像から立体視画像を生成して表示する。
【0061】
図17は、本発明の第4実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の超音波診断装置は、異なる断面ではなく同一断面の複数枚の画像を得て、これらを立体視に供するので、第1実施形態にて説明したような可動揺動モータ3によりアレイプローブ1をアレイ方向と直交する方向へ機械的に動かす機構は不要である。また、本実施形態の超音波診断装置は、フラッシュエコーイメージングを行うための手段として、フラッシュエコーイメージング制御部100とパワーボタン101とを備える。本実施形態のフラッシュエコーイメージングは、図示しない操作者によって手動により行われるものとなっており、操作者がパワーボタン101を操作することにより音圧の切り替えが行われる。フラッシュエコーイメージング制御部100は、パワーボタン101の操作に従ってアレイプローブ1を駆動するパルサ2を制御し、これにより音圧が切り替わる。
【0062】
図17におけるその他の構成については第1実施形態と同様である。
このような本実施形態の超音波診断装置によりフラッシュエコーイメージングを実施すると、比較的低い音圧から比較的高い音圧に変化させた最初のスキャンによる1フレーム分のエコー信号は、その高い音圧に比例した高い感度で得られる。これにより、図18(a)に示すように、造影剤の存在部位R1が高輝度で鮮明に描出されたBモード画像を得ることができる。もちろん、このBモード画像では、造影剤が存在しないあらゆる部位でもその輝度は高くなると考えられる。しかしながら、比較的高い音圧の超音波を受けた微小気泡の大部分は消滅してしまう。このため、比較的高い音圧の変化後、2回目のスキャンまたは数回目のスキャンで得られるBモード画像では、図18(b)に示すように、造影剤が存在していた部分R2の輝度は減少する。もちろん、造影剤が存在しない部位の輝度は変化しない。
【0063】
以上のようにして、図18(a)に示したような、瞬間的ではあるが造影剤存在部位のエコー輝度が極めて高いフレームと、図18(b)に示したような、微小気泡崩壊後の、造影剤存在部位のエコー輝度が低い一連のフレームとを得る。なお、エコー輝度が低い一連のフレームは、ここでは例えば3枚とする。なお、このフレーム数が3枚のみに限定されないことは言うまでもない。また、エコー輝度が極めて高いフレームも1枚のみに限定されない。
【0064】
ここで、上述した第1実施形態の断面a,b,c,dのフレームを本実施形態のフレームで差し替える。具体的には、断面aのフレームを本実施形態のエコー輝度が極めて高いフレームに差し替えるとともに、断面b,c,dのそれぞれのフレームを本実施形態のエコー輝度が低い一連のフレーム(3枚)に差し替えることで、上述した第1実施形態において述べた手法と同様に、これらのフレームのずらし方を変えて加算合成を行なうことにより、右眼画像及び左眼画像を得ることができるようになる。
【0065】
右眼画像及び左眼画像の具体的な求めかたや、表示方法については、第1及び第2実施形態に記載の内容を容易に適用できる。
以上述べたように第4実施形態の超音波診断装置は、フラッシュエコーイメージングを実施し、当該イメージング中において、被検体の同一断面に関し収集時刻の異なる複数枚の超音波画像を収集し、これらの画像から立体視画像を生成して表示する。
【0066】
このような本実施形態の立体視画像では、関心領域に微小気泡が密集した時点で音圧を高くして得たフレームに描出されている造影剤存在部位が、立体的に浮き出て観察される。このことは、フラッシュエコーイメージングにより得た多数フレームの画像を表示画面上に単に並べて表示して見比べる場合とは異なる診断能を与える。また、造影剤による染影部位の同定も容易である。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず種々変形して実施可能である。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、奥行き立体感を伴った超音波診断画像を高速に表示可能な超音波診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の機能構成を示すブロック図
【図2】(a)は、第1実施形態に係る揺動機構を持つアレイプローブの斜視図、(b)は、第1実施形態に係る揺動機構を持つアレイプローブを横から見た図
【図3】第1実施形態に係るアレイと直交方向に等間隔にスキャンした場合の立体視画像の作成例を示す図
【図4】第1実施形態に係る立体視画像の表示例を模式的に示す図
【図5】第1実施形態に係るアレイと直交方向に不等間隔にスキャンした場合の立体視画像の作成例を示す図
【図6】第1実施形態に係るずらし幅の補正の例を示す図
【図7】本発明の第2実施形態に係る液晶シャッタメガネを利用した時分割立体テレビジョン方式の説明図
【図8】本発明の第3実施形態に係る超音波診断装置の機能構成を示すブロック図
【図9】奥行き断層像の概念図
【図10】移動スクリーン方式の概念図
【図11】表示面積層式3次元ディスプレイの概念図
【図12】両眼視差の説明図
【図13】両眼視差で得られる左右の眼に投影される画像の表示例を示す図
【図14】奥行き断層像と両眼視差の関係を示す図、
【図15】(a)は、透過画像の手法を用いた場合の左眼用画像の表示例を示す図、(b)は、透過画像の手法を用いた場合の右眼用画像の表示例を示す図
【図16】(a)は、MIPの手法を用いた場合の左眼用画像の表示例を示す図、(b)は、MIPの手法を用いた場合の右眼用画像の表示例を示す図
【図17】本発明の第4実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図
【図18】(a)は、造影剤の存在部位が高輝度で鮮明に描出されたBモード画像の一例を示す図、(b)は、造影剤の存在部位が低輝度のBモード画像の一例を示す図
【符号の説明】
1…アレイプローブ
2…パルサ
3…可動揺動モータ
4…プローブ移動制御器
5…超音波受信部
6…レシーバ部
7…BモードDSC部
8…メモリ合成部
9…表示部
10…立体表示用メモリ
Claims (5)
- 振動子を機械的に揺動する手段を有する超音波プローブと、
前記超音波プローブのスキャン面に直交する方向に沿って、前記揺動により互いに平行でない複数の超音波画像を得る画像収集手段と、
前記複数の超音波画像をそのまま加算合成して立体視用の右眼画像又は左眼画像を合成するとともに、予めメモリに記憶された複数の異なるずらし幅により前記複数の超音波画像の各々を前記複数の超音波画像に含まれる任意の基準画像に対して断層面の方向に沿ってずらし、かつ、前記超音波プローブから超音波を送受信する深さに応じて前記ずらし幅を異ならせて加算合成することにより前記立体視用の左眼画像又は右眼画像を合成する画像合成手段と、
前記右眼画像及び左眼画像をそれぞれ別に表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。 - 振動子を機械的に揺動する手段を有する超音波プローブと、
前記超音波プローブのスキャン面に直交する方向に沿って、前記揺動により互いに平行でない複数の超音波画像を得る画像収集手段と、
予めメモリに記憶された複数の異なるずらし幅により前記複数の超音波画像の各々を前記複数の超音波画像に含まれる任意の基準画像に対して断層面の方向に沿ってずらし、かつ、前記超音波プローブから超音波を送受信する深さに応じて前記ずらし幅を異ならせて加算合成することにより前記立体視用の右眼画像及び左眼画像の両者を合成する画像合成手段と、
前記右眼画像及び左眼画像をそれぞれ別に表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。 - 前記表示手段は、前記右眼画像及び左眼画像を並べて表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
- 前記表示手段は、前記右眼画像及び左眼画像を時分割で表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
- 前記超音波画像は、Bモード画像及びこのBモード画像に重畳されるカラードプラ画像から成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波診断装置。
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