JP4297548B2 - 車体用フレームの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車等の車体に使用される車体用フレーム及びその製造方法に関し、特に、高精度に位置決め及び仮付けがされた車体用フレーム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スポット溶接により自動車の車体等を組み立てる場合、先ず、車体を構成するユニットを夫々ジグ上で位置決めした状態で仮付し、ユニットとして自立した状態で搬送する。その後、各ユニットから車体全体を組み立て、この時点で本溶接(増打)を行っている。これらの工程は、スポット溶接による場合のものであるが、アーク溶接による場合にも、同様の工程により自動車車体が組み立てられている。
【0003】
図9(a)及び(b)は従来の自動車フレームの製造法を工程順に示す模式図である。図10はジグベースを示す模式図である。また、図11(a)及び(b)は従来の仮付け状態を示す模式図である。
【0004】
パイプ状アルミニウム形材23でフレームを構成する場合、図9(a)に示すように、ポジショナ機能を有するジグベース22が使用される。更に、現場に設けられたレール24上を移動しジグベース22と連動して溶接を行う溶接ロボットアーム25が使用される。ジグベース22上には、アルミニウム形材23の位置決めを行う位置決め具21a及びこの位置決め材21aにアルミニウム形材を固定するクランプ21bが設けられている。そして、仮付け工程においては、アルミニウム形材23を位置決め具21a上にクランプ21bにより高精度に固定することにより、位置決めを行った後、図9(a)に示すように、ジグベース22と溶接ロボットアーム25とを連動させて開先を一点ずつアーク溶接トーチ28を使用して確実に仮付け溶接することにより、仮付け部29を形成する。
【0005】
次に、図9(b)に示すように、クランプ21bを開放して仮付けされたアルミニウム形材23を自立させる。そして、仮付けされたアルミニウム形材23の一部をハンドリングロボット26に掴ませた状態で、このハンドリングロボット26と連動する溶接ロボットアーム27を使用して本溶接を行う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車体を構成するユニットが大きくなるほど、必然的にジグの大型化が必要となり、併設される溶接ロボットアームも複数用意する必要がある等設備全体が大規模化する。更に、特にパイプ状形材によりフレームを形成する場合に、ジグにポジショナ機能をもたせ溶接ロボットアームとの連携により一点ずつ確実に溶接する必要があるので、高精度の位置決めを行うときには、溶接作業が極めて複雑なものとなり、生産性が低くなるという問題点がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、高精度の仮付けを容易に行うことができる車体用フレーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る車体用フレームの製造方法は、第1の中空形材に第2の中空形材を嵌合する工程と、ジグベース上に配置され下部ハウジングとこの下部ハウジングに対して開閉可能に設けられ下部ハウジングと共に単巻コイルを構成する上部ハウジングとを備えた電磁成形器を使用し、前記第1の中空形材と前記第2の中空形材とが重なり合った領域を前記上部ハウジング及び下部ハウジングで挟んで位置決め及びクランプした後、電磁成形することにより前記第1の中空形材と前記第2の中空形材とをかしめる仮付け工程と、前記上部ハウジングを開き仮付けされた形材を取り出す工程と、前記形材の端部をすみ肉溶接する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る他の車体用フレームの製造方法は、第1の中空形材に中空の連結部材を嵌合する工程と、前記連結部材に第2の中空形材を嵌合する工程と、ジグベース上に配置され下部ハウジングとこの下部ハウジングに対して開閉可能に設けられ下部ハウジングと共に単巻コイルを構成する上部ハウジングとを備えた電磁成形器を使用し、前記第1の中空形材と前記連結部材とが重なり合った領域及び前記第2の中空形材と前記連結部材とが重なり合った領域を前記上部ハウジング及び下部ハウジングで挟んで位置決め及びクランプした後、電磁成形することにより前記第1及び第2の中空形材と前記連結部材とをかしめる仮付け工程と、前記上部ハウジングを開き仮付けされた形材を取り出す工程と、前記第1及び第2の形材及び連結部材とを突合せ溶接する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明方法においては、電磁成形により、第1の中空形材と第2の中空形材とをかしめるか、又は第1及び第2の中空形材と連結部材とをかしめているので、高い精度の位置決め及び仮付けを容易に行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例に係る車体用フレームの製造方法について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施例に係る車体用フレームの製造方法に使用されるジグベースを示す模式図である。また、図2は同じく、車体用フレームの製造方法に使用される電磁成形器を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、本実施例に使用されるジグベース2上には、パイプ状形材3の位置決め及びクランプ機能を有しアルミニウム形材等のパイプ状形材3の電磁成形を行う複数個の電磁成形器1が配設されている。
【0018】
また、電磁成形器1には、図2に示すように、上部ハウジング4及び下部ハウジング5が設けられており、上部ハウジング4には、シリンダ6が連結されている。シリンダ6は、空圧式又は油圧式のものである。このシリンダ6により、上部ハウジング4が開閉される。上部ハウジング4と下部ハウジング5によって単巻コイルを構成し、上部ハウジング4と下部ハウジング5との間には、絶縁材7が設けられている。更に、図2には図示しないが、上部ハウジング4の下方及び下部ハウジングの上方には、上部ハウジング4が閉じられたときに周状に形成される1つの凸部を有する磁束集中器が取り付けられており、これらの磁束集中器の間に、パイプ状形材3が配置される。
【0019】
図3(a)乃至(c)は本発明の第1の実施例に係る車体用フレームの製造方法を工程順に示す形材の断面図である。上述のように構成された電磁成形器1を使用してパイプ状形材3の溶接接合を行う際には、先ず、上部ハウジング4をシリンダ6により開き、下部ハウジング5内の磁束集中器上にパイプ状形材3を配置する。このとき、図3(a)に示すように、接合される形材の一方の外面形状を他方の内面形状と整合するものとしておき、一方の形材を他方の形材の内部に嵌合させる。これにより、パイプ状形材3の位置決め及び固定が行われる。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、電磁成形器1に設けられた磁束集中器1aにより、嵌合された2つのパイプ状形材3の重なり部を全周かしめる。これにより、パイプ状形材3の仮付が高い精度で行われる。
【0021】
次に、電磁成形器1の上部ハウジング4を開き、ジグベース2から仮付けされたパイプ状形材3を取り出す。そして、図3(c)に示すように、露出している一方の形材の端部と他方の形材の外面とのすみ肉溶接を行い、溶接金属8を形成する。これにより、本溶接が行われる。
【0022】
このように、本実施例によれば、ジグベース2上に配設された電磁成形器1にパイプ状形材3を取り付けることのみで、パイプ状形材3の位置決め及び固定が高精度に行われる。また、仮付のための溶接は行われないので、溶接ロボットアームは不要である。従って、ジグベース2には、溶接ロボットアームと連動させるためのポジショナ機能が不要となるため、ジグベース2は単純な平置きされるもので十分である。
【0023】
また、このようにして製造された車体用フレームは、図3(c)に示す形状を有する。即ち、一方の形材が他方の形材の内面に倣って挿入され、それらが重なり合う領域において、外側の形材には、内側に突出する突出部が形成され、内側の形材には、この突出部に整合する凹みが形成されている。
【0024】
従って、仮付け溶接が不要であるので、高精度のものを低コストで容易に製造することができる。
【0025】
なお、上述の第1の実施例において接合される形材同士は重ね継手により溶接されるものであるが、形材同士が突合せ継手により溶接されるものであってもよい。この場合、両形材の内側に嵌合される連結部材が使用され、両形材をかしめるため、磁束集中器に周状に2つの凸部が形成された電磁成形器が使用される。図4(a)乃至(c)は本発明の第2の実施例に係る車体用フレームの製造方法を工程順に示す形材の断面図である。
【0026】
本実施例においては、接合されるパイプ状形材13同士は当接し合うものである。従って、上述のように、これらの内側に嵌合されるパイプ状の連結部材12が使用される。具体的には、先ず、図4(a)に示すように、連結部材12をその軸方向の半分の長さ程度一方のパイプ状形材13の内側に嵌合する。次いで、他方のパイプ状形材13と連結部材12の露出部とを嵌合する。これにより、パイプ状形材13の位置決め及び固定が行われる。
【0027】
次に、図4(b)に示すように、周状に形成された2つの凸部を有する磁束集中器11aにより、2つのパイプ状形材13と連結部材12との両重なり部を全周かしめる。これにより、パイプ状形材13の仮付が高い精度で行われる。
【0028】
次に、第1の実施例と同様に、ジグベースから仮付けされたパイプ状形材13を取り出す。そして、図4(c)に示すように、両パイプ状形材13の突合せ部の溶接を行い、溶接金属18を形成する。これにより、本溶接が行われる。
【0029】
このように、本実施例によっても、パイプ状形材13の位置決め及び固定が容易に高精度に行われる。また、ジグベースは単純な平置きされるもので十分である。
【0030】
また、このようにして製造された車体用フレームは、図4(c)に示す形状を有する。即ち、一方の形材が他方の形材の内面に倣って挿入され、それらが重なり合う領域において、2つの形材12には、内側に突出する突出部が夫々形成され、パイプ状の連結部材13には、これらの突出部に整合する凹みが形成されている。
【0031】
従って、第2の実施例によっても、仮付け溶接が不要であるので、高精度のものを低コストで容易に製造することができる。
【0032】
なお、第1及び第2の実施例では、パイプ状形材は、全周かしめられているが、かしめは局部的なものであってもよい。図5(a)は全周がかしめられた形材を示す模式図、(b)は局部的にかしめられた形材を示す模式図である。
【0033】
例えば、第1の実施例と同様に、全周のかしめが行われた場合、図5(a)に示すように、角筒パイプ状の形材14の各側面に周に沿ったかしめ部14aが形成される。一方、局部的なかしめが行われた場合、図5(b)に示すように、角筒パイプ状の形材15の1外面のみにかしめ部15aが形成される。
【0034】
このように、局部的にかしめても、本発明による仮付の精度の高さ及び製造の容易性は十分に得ることができる。
【0035】
なお、かしめを局部的に行う場合には、第1の実施例では内側に嵌合される形材のかしめられる予定の領域の肉厚を他の領域のものよりうすくしておくことが望ましく、第2の実施例では予め連結部材のかしめられる予定の領域の肉厚を他の領域のものより薄くしておくことが望ましい。図6(a)はかしめが局部的に行われる場合の連結部材を示す模式図であり、(b)はかしめが局部的に行われた後のかしめ部を示す模式図である。
【0036】
かしめが行われる前のかしめ部の肉厚をt2、他の領域の肉厚をt1とすると、不等式t1>t2が成り立つことが望ましい。この不等式が成り立てば、かしめをより一層容易に行うことができるようになる。また、局部的なかしめ部は形材の周方向に複数個点在していてもよい。
【0037】
次に、電磁成形器の回路構成について説明する。図7(a)及び(b)は電磁成形器を簡略化して示す回路図である。基本的には、電磁成形器に内蔵されるコイルと電源との間にコンデンサがコイルと並列に接続され、コイルとコンデンサとの間にスイッチが設けられた構造となっている。
【0038】
コンデンサは、例えば、図7(a)に示すように、各コイルにより共用されることができる。この場合、各コイルL1a及びコイルL1bとコンデンサC1との間に、夫々スイッチS1a、S1bが設けられる。
【0039】
このような構造の電磁成形器においては、コイルL1aを内蔵する電磁成形器により1箇所をかしめた後、コンデンサC1を充電する。次に、コイルL1bを内蔵する電磁成形器により他の1箇所をかしめる。コイルの数が3個以上ある場合には、同様にしてコイルC1の充電及び放電を繰り返して全ての電磁成形器によりかしめを行えばよい。なお、電磁成形器によるかしめに要する時間は数秒程度である。
【0040】
また、コンデンサが、図7(b)に示すように、各電磁成形器に独立して設けられていてもよい。この場合、各コイルL2a及びL2bとコンデンサC2a及びC2bとの間に、夫々スイッチS2a、S2bが設けられる。
【0041】
このような構造の電磁成形器においては、スイッチS2a及びS2bを同時に導通状態とすることにより、コイルL2aを内蔵する電磁成形器及びコイルL2bを内蔵する電磁成形器を同時に動作させることができる。コイルの数が3個以上ある場合にも同様である。このため、段階的な仮付けではなくなるので、溶接等による仮付けにおいて問題となっている局部的に残留する応力等が緩和される。
【0042】
図8は本発明の第2の実施例に使用される電磁成形器を示す模式図である。図4(b)に示す磁束集中器11aの外側にコイルL11が設けられており、このコイルL11と電源との間に、コイルL11と並列にコンデンサC11が接続されている。そして、コンデンサC11とコイルL11との間にスイッチS11が設けられている。
【0043】
このように構成された電磁成形器においては、スイッチS11が開かれた状態で、コンデンサC11が充電される。その後、スイッチS11が閉じられると、コンデンサC112充電された電荷が放電され、コイルL11に大電流が流れる。そして、パイプ状形材13及び連結部材12に磁力が及び、これらに凹みが形成され、これらがかしめられる。
【0044】
なお、上述の実施例により製造された車体用フレームは、全て形材の外面から内面に向かってかしめられているが、内面から外面に向かってかしめられていてもよい。このような車体用フレームは、例えば、2つの形材及び連結部材の所定の位置に予め突出部及び凹部を形成しておき、これらを嵌合させることにより得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、アーク溶接用ロボット及びスポット溶接用ガン等の別のアプローチによらなくても、高精度の仮付けを容易に行うことができる。また、仮付けに使用されるジグベースにポジショナ機能は不要となるので、単純な平置きのジグベースを使用することができる。従って、生産性を向上させることができ、自動車の車体フレームに適用すれば、アルミニウム又はアルミニウム合金製の車体フレームを低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る車体用フレームの製造方法に使用されるジグベースを示す模式図である。
【図2】同じく、車体用フレームの製造方法に使用される電磁成形器を示す模式図である。
【図3】(a)乃至(c)は本発明の第1の実施例に係る車体用フレームの製造方法を工程順に示す形材の断面図である。
【図4】(a)乃至(c)は本発明の第2の実施例に係る車体用フレームの製造方法を工程順に示す形材の断面図である。
【図5】(a)は全周がかしめられた形材を示す模式図、(b)は局部的にかしめられた形材を示す模式図である。
【図6】(a)はかしめが局部的に行われる場合の連結部材を示す模式図であり、(b)はかしめが局部的に行われた後のかしめ部を示す模式図である。
【図7】(a)及び(b)は電磁成形器を簡略化して示す回路図である。
【図8】本発明の第2の実施例に使用される電磁成形器を示す模式図である。
【図9】(a)及び(b)は従来の自動車フレームの製造法を工程順に示す模式図である。
【図10】ジグベースを示す模式図である。
【図11】(a)及び(b)は従来の仮付け状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1;電磁成形器
1a、11a;磁束集中器
2;ジグベース
3、13、14、15、23;形材
4、5;ハウジング
6;シリンダ
7;絶縁材
8、18、29;溶接金属
12;連結部材
14a、15a;かしめ部
C1、C2a、C2b;コンデンサ
S1a、S1b、S2a、S2b、S11;スイッチ
L1a、L1b、L2a、L2b、L11;コイル
21a;位置決め具
21b;クランプ
22;ジグベース
24;レール
25、27;溶接ロボットアーム
26;ハンドリングロボット
28;アーク溶接トーチ
Claims (2)
- 第1の中空形材に第2の中空形材を嵌合する工程と、
ジグベース上に配置され下部ハウジングとこの下部ハウジングに対して開閉可能に設けられ下部ハウジングと共に単巻コイルを構成する上部ハウジングとを備えた電磁成形器を使用し、前記第1の中空形材と前記第2の中空形材とが重なり合った領域を前記上部ハウジング及び下部ハウジングで挟んで位置決め及びクランプした後、電磁成形することにより前記第1の中空形材と前記第2の中空形材とをかしめる仮付け工程と、
前記上部ハウジングを開き仮付けされた形材を取り出す工程と、
前記形材の端部をすみ肉溶接する工程と、
を有することを特徴とする車体用フレームの製造方法。 - 第1の中空形材に中空の連結部材を嵌合する工程と、
前記連結部材に第2の中空形材を嵌合する工程と、
ジグベース上に配置され下部ハウジングとこの下部ハウジングに対して開閉可能に設けられ下部ハウジングと共に単巻コイルを構成する上部ハウジングとを備えた電磁成形器を使用し、前記第1の中空形材と前記連結部材とが重なり合った領域及び前記第2の中空形材と前記連結部材とが重なり合った領域を前記上部ハウジング及び下部ハウジングで挟んで位置決め及びクランプした後、電磁成形することにより前記第1及び第2の中空形材と前記連結部材とをかしめる仮付け工程と、
前記上部ハウジングを開き仮付けされた形材を取り出す工程と、
前記第1及び第2の形材及び連結部材とを突合せ溶接する工程と、
を有することを特徴とする車体用フレームの製造方法。
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