JP4296686B2 - 走行車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、機体に対して操向可能な車軸を備える走行車両に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラクタや乗用型田植機等の農作業機において、左右それぞれの前輪へ伝動するにあたり、原動機であるエンジンからの動力を上側の上部伝動ケース内から上下方向の伝動軸を介して下側の下部伝動ケース内へ伝達して該下部伝動ケースから突出する前輪車軸を駆動する構成とし、前記上部伝動ケースを機体側に固定し、前記下部伝動ケースを前記上部伝動ケースに対して前記伝動軸回りに回動可能に構成し、左右それぞれの前輪を前記伝動軸回りに操向可能に構成した走行車両を備えている。そして、前記上部伝動ケース及び前記下部伝動ケースは、それぞれ筒状の一体ケースにより構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、上記上部伝動ケース及び上記下部伝動ケースがそれぞれ筒状の一体ケースにより構成されているので、上記上下方向の伝動軸を含む部品をケース内に組み付けたりメンテナンス等のために該ケース内から取り外したりするのが容易に行えないという課題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決すべく次の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、エンジン(5)からの動力を主ミッションケース(15)内を介して該主ミッションケース(15)の左右端部に設けた前輪アクスル(16)内へ伝達し、該前輪アクスル(16)内で上側の上部伝動ケース(101)内から上下方向の伝動軸(104)を介して下側の下部伝動ケース(17)内へ伝達して該下部伝動ケース(17)から突出する車軸(18)を駆動する構成とし、前記上部伝動ケース(101)を主ミッションケース(15)に固定し、前記下部伝動ケース(17)を前記上部伝動ケース(101)に対して前記伝動軸(104)回りに回動可能に構成した走行車両において、主ミッションケース(15)内の副変速駆動ギヤ(60)に噛み合う副変速従動側ギヤ(61)と、該副変速従動側ギヤ(61)と一体回転する主変速伝動軸(62)と、該主変速伝動軸(62)と一体回転する主変速ギヤ(69)と、主変速ギヤ(69)に選択的に噛み合う大径カウンタギヤ(73)及び小径カウンタギヤ(72)と、該大径カウンタギヤ(73)及び小径カウンタギヤ(72)と一体回転するカウンタ軸(71)と、該カウンタ軸(71)の左端部に設けた4輪ブレーキ装置(46)と、小径カウンタギヤ(72)と噛み合う前輪デフ入力ギヤ(76)とを設け、大径カウンタギヤ(73)を前輪デフ入力ギヤ(76)の左側に配置し、前輪デフ入力ギヤ(76)の左側に左側のケース体(77a)を設け、前輪デフ入力ギヤ(76)の右側に右側のケース体(77b)を設け、前輪デフ入力ギヤ(76)と左側のケース体(77a)と右側のケース体(77b)とを備えて前輪デフ装置(77)を構成し、左側のケース体(77a)の左右幅を右側のケース体(77b)の左右幅よりも大きく構成し、左側のケース体(77a)と右側のケース体(77b)とに内ギヤ(85)を設け、該内ギヤ(85)と噛み合うギヤ(86)を備えるサイドクラッチ体(38)を左右それぞれ設け、該サイドクラッチ体(38)から左右それぞれの後輪伝動軸(20)を介して左右の後輪(23)を駆動する構成とし、サイドクラッチ体(38)が前輪デフ装置(77)から左右に延びるデフ出力軸(78)上で左右にスライドしてサイドクラッチ体(38)のギヤ(86)と内ギヤ(85)との噛み合いを解除する構成とし、前記上部伝動ケース(101)及び前記下部伝動ケース(17)を前記伝動軸(104)に沿った分割面(b1,b2,b3)より分割可能に構成したことを特徴とする走行車両とした。
【0005】
【0006】
【0007】
【発明の効果】
請求項1に係る走行車両によると、上記上部伝動ケース及び上記下部伝動ケースを上記上下方向の伝動軸に沿った分割面より分割可能に構成しているので、これらのケースを分割することにより、前記伝動軸及び該伝動軸に関連する部品をケース内に組み付けたりメンテナンス等のために該ケース内から取り外したりするのを容易に行える。また、部品の組み付けや分解のためにケース内の形状が制限されず該形状の自由度が増すので、前記上部伝動ケース及び前記下部伝動ケースのコンパクト化を図ることができ、機体のコンパクト化及び軽量化を図ることができる。
【0008】
そして、主ミッションケース内の副変速駆動ギヤに噛み合う副変速従動側ギヤと、該副変速従動側ギヤと一体回転する主変速伝動軸と、該主変速伝動軸と一体回転する主変速ギヤと、主変速ギヤに選択的に噛み合う大径カウンタギヤ及び小径カウンタギヤと、該大径カウンタギヤ及び小径カウンタギヤと一体回転するカウンタ軸と、該カウンタ軸の左端部に設けた4輪ブレーキ装置と、小径カウンタギヤと噛み合う前輪デフ入力ギヤとを設け、該前輪デフ入力ギヤの左側に左側のケース体を設け、前輪デフ入力ギヤの右側に右側のケース体を設け、前輪デフ入力ギヤと左側のケース体と右側のケース体とを備えて前輪デフ装置を構成し、左側のケース体の左右幅を右側のケース体の左右幅よりも大きく構成したので、例えば鋳物でケース体を製造する場合、鋳造における鋳型を左右のケース体で共用して鋳型の製造費用を低減し、鋳造後に左右のケース体で異なる加工を施すことで左右それぞれのケース体を製造することができ、製造上のコストを低減することができる。
【0009】
【0010】
また、左側のケース体と右側のケース体とに内ギヤを設け、該内ギヤと噛み合うギヤを備えるサイドクラッチ体を左右それぞれ設け、該サイドクラッチ体から左右それぞれの後輪伝動軸を介して左右の後輪を駆動する構成とし、サイドクラッチ体が前輪デフ装置から左右に延びるデフ出力軸上で左右にスライドしてサイドクラッチ体のギヤと内ギヤとの噛み合いを解除することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は乗用型田植機1を示したものであり、この乗用型田植機1は、走行車両2と該走行車両2の後側に昇降リンク機構3を介して設けた4条植えの苗植付部4とで構成され、前記走行車両2により機体を走行させながら前記苗植付部4を駆動して圃場に同時に4条分の苗を移植していくものである。
【0012】
走行車両2の前後左右略中央には駆動源であるエンジン5を設け、該エンジン5の上方に操縦席6を配設している。このエンジン5の駆動により、エンジン出力軸5aから該軸5aと一体回転するエンジン出力プーリ7、エンジン出力ベルト8を介して2連の中継プーリ9,10及び該中継プーリ9,10と一体回転する中継軸11を駆動し、前記中継プーリ10から主ミッションケ−ス入力ベルト12、主ミッションケース入力プーリ13を介して該プーリ13と一体回転する主ミッションケース入力軸14へ伝動し、該入力軸14により主ミッションケ−ス15内へ動力を伝達する。そして、前記主ミッションケ−ス15の左右端部に固着した前輪アクスル16の前輪下部伝動ケ−ス17内へ伝動し、該ケース17の下部に突出している前輪車軸18を駆動して左右の前輪19を駆動するようになっている。また、前記主ミッションケ−ス15の後部から後方に動力を伝達する左右の後輪伝動軸20を設け、該左右の後輪伝動軸20の駆動により左右それぞれの後輪伝動ケ−ス21内に伝動し該後輪伝動ケ−ス21から突出する後輪車軸22を駆動して左右の後輪23を駆動するようになっている。従って、走行車両2は、前輪19及び後輪23を駆動して走行する構成となっている。
【0013】
尚、前記後輪伝動軸20の上方にエンジン5を配置した構成となっており、後輪23の上端より前記エンジン5の上端が低く構成している。従って、前輪19の操向可能角度が大きくなるように後輪伝動軸20を機体の左右中央に寄せてエンジン5と上下に重複する構成としながら、後輪23の上端よりエンジン5の上端が低くなるようにエンジン5と後輪伝動軸20との上下方向の間隔を狭くしてエンジン5を低位に配置することにより、機体の低重心化を図ることができ、左右の車輪トレッドが小さい4条植えの田植機の機体の左右方向への転倒を抑制することができる。また、エンジン5を低位に配置することにより、エンジン5の上方の操縦席6の低位置化を図ることができ、機体の低重心化を図ることができる。また、前輪19の上端よりエンジン出力軸5aが低位となるようにエンジン5を配置しており、エンジン5を低位に配置することにより機体の低重心化を図っている。また、エンジン出力軸5a、中継軸11及び主ミッションケース入力軸14を略同高さに構成し、エンジン出力ベルト8及び主ミッションケース入力ベルト12の上面を前後方向において略水平に構成しているので、ステップフロアSを低く構成でき、それに伴って操縦席6の低位置化を図ることができ、機体の低重心化を図ることができる。また、前輪アクスルの上方に主ミッションケース入力ベルト12を配置し、前後方向において前記前輪アクスルを中継プーリ10と主ミッションケース入力プーリ13との間に設けているので、前記中継プーリ10や前記主ミッションケース入力プーリ13を下位に配置しても前記前輪アクスルと干渉しないため、主ミッションケ−ス入力ベルト12を前記前輪アクスルに干渉しない極限まで下げることができ、これに伴ってステップフロアSを低く構成できて操縦席6の低位置化を図ることができ、機体の低重心化を図ることができる。
【0014】
苗植付部4は、油圧昇降シリンダ24の伸縮による昇降リンク機構3の上下方向の回動により、上下に昇降するように設けられている。また、苗植付部4は、前記主ミッションケ−ス15からの動力により、該ケース15から後方へ延びる中途部で屈曲可能な植付伝動軸26により伝動されて作動する構成となっている。尚、前記主ミッションケ−ス15内には、苗植付部4の駆動の入切を行う植付クラッチ(図示せず)を設けている。
【0015】
また、走行車体2の前部となる前記操縦席6の前方にはステアリングハンドル27を設け、該ステアリングハンドル27の操作によりステアリング軸28及び主ミッションケ−ス15の下部に設けたピットマンア−ム29及びタイロッド29aを介して前輪アクスル16の前輪下部伝動ケ−ス17を横方向に回動して左右の前輪19を操向させ、操舵するようになっている。前記ステアリングハンドル27の左側には、主ミッションケ−ス15内のギヤの噛み合いを切り替えて変速するための主変速レバ−30を設けている。前記ステアリングハンドル27の右側には、エンジン5の回転数を変更させるためのスロットルレバー31を設けている。前記主変速レバ−30及び前記スロットルレバー31は、走行車両2の前部ボンネット32の左右側面部32aからそれぞれ上側に延びた構成となっている。
【0016】
走行車両2の前部ボンネット32の左右には、それぞれ前記前部ボンネット32より低くステップフロアSより高い膨出部33を設けている。左側の前記膨出部33には、機体の走行及び苗植付部4の駆動の停止操作が行える停止レバー34を設けている。また、右側の前記膨出部33には、油圧昇降シリンダ24及び植付クラッチを作動させることにより苗植付部4の昇降及び該苗植付部4の駆動の入切が行える植付・昇降レバー35を設けている。
【0017】
前部ボンネット32の後面部32bには、主ミッションケ−ス15内のギヤの噛み合いを切り替えて変速するための副変速レバ−36を設けている。尚、この副変速レバー36は、通常速と超低速との2段階に切り替えられるようになっており、圃場の畦越え時やトラックへの機体の積込時に超低速に切り替えて安全に機体を走行させることができる。
【0018】
走行車両2の前部の右寄りの位置には左右それぞれのブレ−キペダル37を設け、該ブレ−キペダル37の踏み込み操作により主ミッションケ−ス15内に設けた左右それぞれのサイドクラッチ体38を作動させて左右それぞれの後輪23への伝動を断つと共に該後輪23を制動する構成となっている。
【0019】
また、走行車両2の前部の左寄りの位置には、主クラッチペダル39を設けている。該主クラッチペダル39は、機体側面視において左右のブレ−キペダル37と同位置に配置されている。そして、停止レバー34の後方への操作又は前記主クラッチペダル39の踏み込み操作により、主ミッションケ−ス入力ベルト12の上側のテンションプ−リ40を支持するテンションプ−リア−ム41を上側へ回動させることで前記テンションプ−リ40を前記主ミッションケ−ス入力ベルト12から退避させて、前記主ミッションケ−ス入力ベルト12を非伝動状態に切り替え、機体の走行及び苗植付部4の駆動を停止するようになっている。また、テンションプ−リア−ム41の上側への回動に伴って4輪ブレーキ作動アーム45を操作し、主ミッションケース15内の4輪ブレーキ装置46を作動させて左右の前後輪19,23を制動する。
【0020】
苗植付部4は、主として苗載置台50と植付伝動部51及び4条分の苗植付装置52からなり、前記植付伝動軸26の動力が入力される前記植付伝動部51を介して伝動され作動する構成となっている。また、苗植付部4の下部には中央部にセンタ−フロ−ト53及び両側部にサイドフロ−ト54を設けており、該フロ−ト53,54が圃場面を滑走するようになっている。また、該苗植付装置52が作動すると共に、植付伝動部51からの動力により左右移動する左右移動棒55により苗載置台50を左右移動させ、マット状の苗を苗植付装置52により一株づつ掻き取って圃場に植え付ける構成となっている。
【0021】
苗載置台50には、各条に苗送りベルト56が設けられている。各条の前記苗送りベルト56は、下側の駆動ロ−ラ57と上側の従動ロ−ラ58とに巻回されている。そして、前記駆動ロ−ラ57が植付伝動部51からの動力により回転する構成となっており、苗載置台50の左右移動終端において苗送りベルト56が苗を苗植付装置52側に所定量づつ順次移送する。
【0022】
次に、主ミッションケース15内の伝動構成について説明すると、主ミッションケース入力プーリ13と一体回転する主ミッションケース入力軸14により主ミッションケース15内に伝動され、該入力軸14と一体回転する副変速駆動側ギヤ60と噛み合う副変速従動側ギヤ61が駆動し、該ギヤ61と一体回転する主変速伝動軸62へ伝動する。尚、前記副変速駆動側ギヤ60と前記副変速従動側ギヤ61とはそれぞれ大径ギヤ60a,61aと小径ギヤ60b,61bとを備えると共に、前記副変速駆動側ギヤ60は副変速レバ−36の操作により作動する副変速操作シフタ63により主ミッションケース入力軸14に沿ってスライド可能に設けられている。従って、副変速操作シフタ63により2段階に伝動比が切り替えられるようになっており、副変速駆動側の小径ギヤ60bと副変速従動側の大径ギヤ61aとが噛み合う状態(図5に示す状態)のとき低速(超低速)で伝動され、副変速駆動側の大径ギヤ60aと副変速従動側の小径ギヤ61bとが噛み合う状態のとき高速(通常速)で伝動される。
【0023】
前記主変速伝動軸62の右端部には該軸62と一体回転する植付駆動ギヤ64を設け、該ギヤ64と噛み合う植付従動ギヤ65を介して植付ベベルギヤ66,67へ伝動し、後方へ延びる植付伝動軸26へ伝動して苗植付部4を駆動するようになっている。尚、前記植付駆動ギヤ64及び前記植付従動ギヤ65はこれらのギヤの右側に設けたカバー68を開けて互いのギヤ64,65を入れ換えることができ、機体の走行速度に対する苗植付部4の駆動速度を変更して植付株間を変更することができる。
【0024】
そして、前記主変速伝動軸62と一体回転する主変速ギヤ69が駆動する。尚、主変速ギヤ69は、大径ギヤ69aと小径ギヤ69bとを備えると共に、主変速レバ−30の操作により作動する主変速操作シフタ70により主変速伝動軸62に沿ってスライド可能に設けられている。そして、主変速大径ギヤ69aとカウンタ軸71と一体回転する小径カウンタギヤ72とが噛み合う状態(図5に示す状態)のとき高速(路上走行速)で伝動され、それから主変速ギヤ69が左方にスライドし主変速小径ギヤ69bとカウンタ軸71と一体回転する大径カウンタギヤ73とが噛み合う状態のとき低速(植付作業速)で伝動される。更に主変速ギヤ69が左方にスライドすると、主変速小径ギヤ69bと主ミッションケース入力軸14上の逆転用小径カウンタギヤ74bとが噛み合い、該逆転用小径カウンタギヤ74bと一体の逆転用大径カウンタギヤ74aと噛み合うカウンタ軸71上の後進用カウンタギヤ75へ伝動され、前記カウンタ軸71へ前述とは逆方向の回転で伝動され、機体を後進させる後進速となる。尚、前記逆転用小径カウンタギヤ74b及び前記逆転用大径カウンタギヤ74aは、主ミッションケース入力軸14に対して遊転するように設けられている。また、主変速操作シフタ70により主変速ギヤ69をどのギヤとも噛み合わない状態とすることができ、主変速レバー30の操作により前輪19及び後輪23へ伝動しない状態(中立)とすることができる。尚、前記カウンタ軸71の左端部にはシュー式の4輪ブレーキ装置46を設けており、この4輪ブレーキ装置46により左右の前後輪19,23に制動力を付与する構成となっている。
【0025】
そして、カウンタ軸71と一体回転する前記小径カウンタギヤ72から該ギヤ72と噛み合う前輪デフ入力ギヤ76により前輪デフ装置77へ伝動し、該前輪デフ装置77から左右それぞれに延びるデフ出力軸78により左右それぞれの前輪アクスル16を介して左右それぞれの前輪19へ伝動する。前記前輪デフ装置77は、前記前輪デフ入力ギヤ76の左右にデフケースを構成するケース体77a,77bを設けている。この左右のケース体77a,77bは、左側のケース体77aが左右幅が若干大きい略同形状に構成されているので、例えば鋳物でケース体77a,77bを製造する場合、鋳造における鋳型を左右のケース体77a,77bで共用して鋳型の製造費用を低減し、鋳造後に左右のケース体77a,77bで若干異なる加工を施すことで左右それぞれのケース体77a,77bを製造することができ、製造上のコストを低減することができる。尚、左右のケース体77a,77bを同形状としてもよく、同様に鋳物でケース体77a,77bを製造する場合に鋳造における鋳型を左右のケース体77a,77bで共用することができ、製造上のコストを低減することができる。
【0026】
前輪デフ装置77の左側のケース体77aの左端部にはデフロック爪部79を構成しており、該爪79部と噛み合うデフロック爪80を備えるデフロック体81をデフ出力軸78上に該軸78と一体回転するように設けている。前記デフロック体81は、デフ出力軸78に沿って左右にスライド可能に設けられると共にデフロック体付勢スプリング82により左側のケース体77aとは反対側に付勢されており、ステップフロアSに設けた前輪デフロックペダル83の踏み込み操作により作動するデフロック操作シフタ84により、前記デフロック体付勢スプリング82に抗して前記左側のケース体77a側(右側)へスライドするようになっている。従って、デフロック操作シフタ84により前記デフロック体81をスライドさせてデフロック爪80と前記左側のケース体77aのデフロック爪部79とを噛み合わせ、前記ケース体77aと左右のデフ出力軸78とを一体回転させて左右の前輪19をデフロックする構成となっている。
【0027】
また、前輪デフ装置77の左右それぞれのケース体77a,77bには、内径に歯面を有する内ギヤ85を設けている。また、該内ギヤ85と噛み合うギヤ86を備えるサイドクラッチ体38を左右それぞれ設けており、前記ケース体77a,77bとサイドクラッチ体38とが一体回転するようになっている。そして、前記サイドクラッチ体38の前記ギヤ86と噛み合う左右それぞれの後輪伝動ギヤ88へ伝動する。そして、前記左右それぞれの後輪伝動ギヤ88から後輪カウンタ軸89を介して後輪伝動ギヤ88と一体回転する左右それぞれの駆動ベベルギヤ90へ伝動し、該駆動ベベルギヤ90と噛み合う左右それぞれの従動ベベルギヤ91を介して左右それぞれの後輪伝動軸20へ伝動する構成となっている。
【0028】
尚、左右の後輪伝動軸20は、左右に分割される主ミッションケース15の左側のケース部15aに設けられ、互いの間隔を小さくして機体の左右中央に寄せ、左右トレッドの狭い前輪19の操向において邪魔にならないように配置している。
【0029】
前記サイドクラッチ体38には、ブレーキディスク92を設けている。また、前記サイドクラッチ体38は、前輪デフ装置77のケース体77a,77bに案内されてデフ出力軸78上で左右にスライド可能に設けられると共にサイドクラッチ体付勢スプリング93により前記ケース体77a,77bに備える内ギヤ85側(左右中央方向)に付勢されており、左右それぞれのブレ−キペダル37の踏み込み操作により作動するサイドクラッチ操作シフタ94により、前記サイドクラッチ体付勢スプリング93に抗して前記内ギヤ85とは反対側(右側)へスライドするようになっている。従って、サイドクラッチ操作シフタ94によりサイドクラッチ体38をスライドさせ、該サイドクラッチ体38のギヤ86と前輪デフ装置77のケース体77a,77bの内ギヤ85との噛み合いを解除すると共にブレーキディスク92を主ミッションケース15の内壁面に圧接し、左右それぞれの後輪19への伝動を断つと共に該後輪19を制動する構成となっている。尚、サイドクラッチ体38のギヤはサイドクラッチ体38の左右スライドに拘らず後輪伝動ギヤ88と噛み合うように構成されており、前記ブレーキディスク92による制動力が後輪23へ伝達されるようになっている。
【0030】
図6に示すように、前輪アクスル16は、前輪上部伝動ケ−ス101と前輪下部伝動ケ−ス17で構成され、前記前輪上部伝動ケ−ス101を主ミッションケ−スに固着して設けられている。主ミッションケ−スから突出するデフ出力軸78の端部が前記前輪上部伝動ケ−ス101内の駆動ベベルギヤ102に係合し、該ギヤ102へ伝動する構成となっている。そして、前輪上部伝動ケ−ス101内において、前記駆動ベベルギヤ102と噛み合う従動ベベルギヤ103へ伝動し、該従動ベベルギヤ103と一体回転する上下方向の伝動軸104へ伝動する。尚、前記上下方向の伝動軸104を軸受するベアリング105,106を前記従動ベベルギヤ103の上下に設けており、下側のベアリング106の下方には前輪上部伝動ケ−ス101内の潤滑油が外へ漏れ出さないようにオイルシ−ル107を設けている。また、前輪上部伝動ケ−ス101は、背面視で前記上下方向の伝動軸104に沿って該軸104と重複する位置に分割面b1を設けて左右に分割可能に構成しており、締付ボルト(図示せず)により前記分割面で左右の割りケ−ス101a,101bを合わせて締め付けることによりケ−スが構成されるようになっている。
【0031】
前記上下方向の伝動軸104は、前記前輪上部伝動ケ−ス101から下方に突出しており、その突出部が前輪下部伝動ケ−ス17内に突入している。上下方向の伝動軸104の下端部には該軸104と一体回転する下部駆動ベベルギヤ108を設けており、該ギヤ108と噛み合う下部従動ベベルギヤ109へ伝動する。そして、前記下部従動ベベルギヤ109と一体回転する左右方向の前輪車軸18を駆動する構成となっている。尚、前輪下部伝動ケ−ス17内において、前記上下方向の伝動軸104を軸受するベアリング110,111を前記下部駆動ベベルギヤ108の上側に2個設けており、前輪車軸18を軸受するベアリング112,113を下部従動ベベルギヤ109の左右に設けている。また、上下方向の伝動軸104部の前輪下部伝動ケ−ス17の上端部及び前輪車軸18部の前輪19側の前輪下部伝動ケ−ス17の端部には、前輪下部伝動ケ−ス17内の潤滑油が外へ漏れ出さないようにオイルシ−ル114,115をそれぞれ設けている。また、前輪下部伝動ケ−ス17は、側面視で前記上下方向の伝動軸104に沿って該軸104と重複する位置に分割面b2を設けて前後に分割可能に構成しており、締付ボルト(図示せず)により前記分割面b2で前後の割りケ−ス17a,17bを合わせて締め付けることによりケ−スが構成されるようになっている。尚、前記分割面b2は、前輪車軸18を通過するように設けられている。また、前輪下部伝動ケ−ス17は、前輪上部伝動ケ−ス101に対して上下方向の伝動軸104回りに回動するように設けられ、ステアリングハンドル27の操作により作動するタイロッド29aにより回動操作される構成となっている。
【0032】
以上により、この乗用型田植機1は、エンジン5からの動力を上側の前輪上部伝動ケ−ス101内から上下方向の伝動軸104を介して下側の前輪下部伝動ケ−ス17内へ伝達して該前輪下部伝動ケ−ス17から突出する前輪車軸18を駆動する構成とし、前記前輪上部伝動ケ−ス101を機体側に固定し、前記前輪下部伝動ケ−ス17を前記前輪上部伝動ケ−ス101に対して前記伝動軸104回りに回動可能に構成し、前記前輪上部伝動ケ−ス101及び前記前輪下部伝動ケ−ス17を前記伝動軸104に沿った分割面b1,b2より分割可能に構成している。更に、前輪上部伝動ケ−ス101の分割面b1と前輪下部伝動ケ−ス17の分割面b2との方向を互いに異ならせ、また前輪下部伝動ケ−ス17の分割面b2を前輪車軸18に沿って設けている。
【0033】
よって、前輪上部伝動ケ−ス101及び前輪下部伝動ケ−ス17を上下方向の伝動軸104に沿った分割面b1,b2より分割可能に構成しているので、これらのケース101,17を分割することにより、前記伝動軸104や該伝動軸104に関連するベアリング105,106,110,111及びオイルシ−ル107,114をケース内に組み付けたりメンテナンス等のために該ケース内から取り外したりするのを容易に行える。また、前記前輪上部伝動ケ−ス101及び前記前輪下部伝動ケ−ス17において、部品の組み付けや分解のためにケース内の形状が制限されず該形状の自由度が増すので、コンパクト化を図ることができ、機体のコンパクト化及び軽量化を図ることができる。尚、前記伝動軸104を軸受する前輪上部伝動ケ−ス101における下側のベアリング106及び前輪下部伝動ケ−ス17における下側のベアリング111はそれぞれケ−スの内面の溝形状により固定されており、これらのベアリング106,111等を固定するためのスナップリング等を不要として部品点数の低減化を図り、コストダウンを図っている。
【0034】
また、前輪上部伝動ケ−ス101の分割面と前輪下部伝動ケ−ス17の分割面とをこれらの分割面が略垂直に交差するように方向を互いに異ならせているので、これらのケース101,17で構成される前輪アクスル16全体は機体の自重による左右方向の曲げの負荷が生じても前輪19の走行抵抗による前後方向の曲げの負荷が生じても所望の強度を得ることができ、どの方向の負荷に対しても強度を保つことができて前輪アクスル16全体の剛性の向上を図ることができ、これらのケース101,17を割りケースで構成しながら全体の強度を向上させることができる。
【0035】
また、前輪下部伝動ケ−ス17の分割面b2を前輪車軸18に沿って設けているので、前記前輪車軸18及び該車軸18に関連するベアリング112,113及びオイルシ−ル115をケース内に組み付けたりメンテナンス等のために該ケース内から取り外したりするのを容易に行える。
【0036】
ところで、図7は、内部の伝動構成は前述のものと同様であるが、前輪上部伝動ケ−ス101及び前輪下部伝動ケ−ス17が前述とは異なる構成を示したものである。すなわち、前記前輪上部伝動ケ−ス101は、形状は前述のものと同様であるが、側面視で前記上下方向の伝動軸104に沿って該軸104と重複する位置に分割面を設けて前後に分割可能に構成している。また、前輪下部伝動ケ−ス17は、背面視で前記上下方向の伝動軸104に沿って該軸104と重複する位置に分割面b3を設けて左右に分割可能に構成している。これにより、前輪下部伝動ケ−ス17の剛性のために前記分割面を広くとる必要がある代わりに前記前輪下部伝動ケ−ス17の左右幅を小さくすることができ、植付作業において既に苗を植え付けた位置を機体が走行するとき、該ケース17が植付苗に干渉するのを抑えることができる。
【0037】
尚、この発明の実施の形態は4条植えの乗用型田植機1について詳述したが、本発明は4条植えのものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】乗用型田植機の平面図
【図3】エンジンから主ミッションケース内への伝動構成を示す側面図
【図4】主ミッションケ−ス内の伝動構成を示す展開平面断面図
【図5】主ミッションケ−ス内の伝動軸の位置を示す側面図
【図6】前輪アクスルを示す背面断面図
【図7】他の前輪アクスルを示す背面断面図
【符号の説明】
2…走行車両、5…エンジン、16…前輪アクスル、17…前輪下部伝動ケ−ス、18…前輪車軸、19…前輪、101…前輪上部伝動ケ−ス、104…上下方向の伝動軸、b1,b2,b3…分割面
Claims (1)
- エンジン(5)からの動力を主ミッションケース(15)内を介して該主ミッションケース(15)の左右端部に設けた前輪アクスル(16)内へ伝達し、該前輪アクスル(16)内で上側の上部伝動ケース(101)内から上下方向の伝動軸(104)を介して下側の下部伝動ケース(17)内へ伝達して該下部伝動ケース(17)から突出する車軸(18)を駆動する構成とし、前記上部伝動ケース(101)を主ミッションケース(15)に固定し、前記下部伝動ケース(17)を前記上部伝動ケース(101)に対して前記伝動軸(104)回りに回動可能に構成した走行車両において、主ミッションケース(15)内の副変速駆動ギヤ(60)に噛み合う副変速従動側ギヤ(61)と、該副変速従動側ギヤ(61)と一体回転する主変速伝動軸(62)と、該主変速伝動軸(62)と一体回転する主変速ギヤ(69)と、主変速ギヤ(69)に選択的に噛み合う大径カウンタギヤ(73)及び小径カウンタギヤ(72)と、該大径カウンタギヤ(73)及び小径カウンタギヤ(72)と一体回転するカウンタ軸(71)と、該カウンタ軸(71)の左端部に設けた4輪ブレーキ装置(46)と、小径カウンタギヤ(72)と噛み合う前輪デフ入力ギヤ(76)とを設け、大径カウンタギヤ(73)を前輪デフ入力ギヤ(76)の左側に配置し、前輪デフ入力ギヤ(76)の左側に左側のケース体(77a)を設け、前輪デフ入力ギヤ(76)の右側に右側のケース体(77b)を設け、前輪デフ入力ギヤ(76)と左側のケース体(77a)と右側のケース体(77b)とを備えて前輪デフ装置(77)を構成し、左側のケース体(77a)の左右幅を右側のケース体(77b)の左右幅よりも大きく構成し、左側のケース体(77a)と右側のケース体(77b)とに内ギヤ(85)を設け、該内ギヤ(85)と噛み合うギヤ(86)を備えるサイドクラッチ体(38)を左右それぞれ設け、該サイドクラッチ体(38)から左右それぞれの後輪伝動軸(20)を介して左右の後輪(23)を駆動する構成とし、サイドクラッチ体(38)が前輪デフ装置(77)から左右に延びるデフ出力軸(78)上で左右にスライドしてサイドクラッチ体(38)のギヤ(86)と内ギヤ(85)との噛み合いを解除する構成とし、前記上部伝動ケース(101)及び前記下部伝動ケース(17)を前記伝動軸(104)に沿った分割面(b1,b2,b3)より分割可能に構成したことを特徴とする走行車両。
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