JP4296653B2 - コリンモノオキシゲナーゼ遺伝子 - Google Patents

コリンモノオキシゲナーゼ遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾燥土壌又は塩性土壌により引き起こされる植物の障害の発生に関与しており、植物の乾燥土壌又は塩性土壌耐性の向上に寄与していると考えられ、乾燥土壌又は塩性土壌で誘導される植物のコリンモノオキシゲナーゼ及びその遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在地球の多くの地域で砂漠化あるいは耕作地等の塩類集積が進行しており、これらの環境の変化は、環境問題及び21世紀の食糧問題との関係から深刻な問題と捉えられている。その解決手段として、潅漑などの工学的解決策とともに、環境ストレスに抵抗性のある植物の育成が注目されている。
塩類集積による害として、(1)蓄積した塩類のために土壌の水分ポテンシャルが低下し、植物体が水分を吸収できなくなる、(2)植物体中に吸収された(侵入した)塩により代謝が撹乱される、(3)塩により生育に必要な他のイオンの吸収が阻害される、などが挙げられている(佐藤文彦、植物細胞工学、別冊、「環境問題とバイオテクノロジー」、p33-39,1994)。特に、乾燥や塩害によって引き起こされる水吸収の阻害は、結果的に光合成活性を低下させ、植物の生育を大きく阻害することになる。
【0003】
乾燥、塩といったストレスに対する適応機構の存在が、微生物や植物において明らかにされてきており、そのなかでも適合溶質(低分子有機化合物、浸透圧調節物質)に関する研究は活発に進められている。適合溶質は低分子で水溶性に富み、代謝されにくく、かつ代謝に影響を及ぼさないなどの特徴を有する物質であり、グリシンベタイン、プロリンなどの両極性化合物、ピニトール、ソルビトール、マンニトールなどのポリオール類が知られている。とりわけ、グリシンベタイン(以下においてベタインと記載する)は、アカザ科、イネ科、ナス科などの高等植物に限らず、微生物においても広く利用されており、高温ストレスに対するタンパク質の保護 (Paleg, L.G. et al., Aust. J. Plant Physiol. 8:107-114, 1981、Allakhverdiev S.I., J. Photochem. Photoiol. 34:149157, 1996)、環境に対する浸透圧バランスの維持(Robinson, S.P. and Jones, G.P., Aust. J. Plant Physiol. 13:659-668, 1986)、塩ストレスに対する可溶性酵素の保護(Gabbay-Azaria et al., Arch. Biochem. Biophys. 264:333-339,1988)などに機能していると報告されている。
【0004】
高等植物の中でも研究の進んでいるホウレンソウでは、ベタインは、コリンからベタインアルデヒドを経て2段階で合成される。すなわち、フェレドキシン依存性のコリンモノオキシゲナーゼにより第1段階の酸化が触媒され(Brouquisse, R. et al., Plant Physiol. 90:322-329, 1989)、第2段階の酸化はNAD依存性のベタインアルデヒド脱水素酵素(Weretilnyk, E.A. et al., Planta. 178:342-352, 1989)によって触媒される。このような植物を塩ストレスにさらすと、それぞれの酵素活性が上昇し、ベタイン量が増加することが確認されている。(Hanson, A.D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:3678-3682, 1985)。
【0005】
グラム陽性の土壌菌であるアルスロバクター・グロビフォルムス(Arthrobacter globiformis)から得られるコリンオキシダーゼは、1段階の酸化反応でコリンをベタインに酸化することができる。(Ikuta, S. et al., J. Biochem. 82:1741-1749, 1977)。
大腸菌及び高等植物の2種類の遺伝子、またはコリンオキシダーゼ遺伝子を植物体に組み込んで恒常的発現をさせることによりベタインを蓄積させ、耐塩性を付与する試みがなされてきており、アルスロバクター・グロビフォルムスcodA遺伝子(WO96/29857)、大腸菌betA遺伝子(特開平10-191983号公報)、ホウレンソウCMO遺伝子(Nuccio, M.L. et al., The Plant J. 16:487-496, 1998)においてベタインの植物体への蓄積が報告されている。しかし、これまでの試みで耐塩性植物にみられるレベルでのベタインの蓄積を実現した例は報告されておらず、このため、植物中に高レベルのベタインを蓄積しうるベタイン合成系の確立が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、コリンモノオキシゲナーゼ、コリンモノオキシゲナーゼ遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベクターを含む形質転換体、ストレス耐性植物、ベタインの蓄積誘導方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、乾燥、塩性土壌に耐性を示し、塩ストレス時に約60μmol/g生重量ものベタインを蓄積することのできるシロザ(Chenopodium Album L.)から、乾燥、塩性土壌で誘導されうる完全長のコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子を取得し、植物体内にベタインを蓄積させうることを見出した。また、コリンモノオキシゲナーゼ遺伝子のトランジットペプチド配列が塩ストレスによるタンパク質蓄積を誘導することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質である。
(a) 配列番号2、4若しくは6で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b) 配列番号2、4若しくは6で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつコリンモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質
【0009】
さらに、本発明は、上記タンパク質をコードするコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子である。
さらに、本発明は、以下の(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子である。
(c) 配列番号1、3若しくは5で表される塩基配列を含むDNA
(d) 配列番号1、3若しくは5で表される塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコリンモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【0010】
さらに、本発明は、上記遺伝子を含む組換えベクターである。
さらに、本発明は、上記組換えベクターを含む形質転換体である。
さらに、本発明は、上記形質転換体を培養し、得られる培養物からコリンモノオキシゲナーゼを採取することを特徴とするコリンモノオキシゲナーゼの製造方法である。
【0011】
さらに、本発明は以下の(e)又は(f)のペプチド又はその塩である。
(e) 配列番号17で表されるアミノ酸配列を含むペプチド
(f) 配列番号17で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシグナルペプチド活性を有するペプチド
さらに、本発明は、上記ペプチドをコードする遺伝子である。該遺伝子としては、以下の(g)又は(h)のDNAを含むものが挙げられる。
(g) 配列番号16で表される塩基配列を含むDNA
(h) 配列番号16で表される塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシグナルペプチド活性を有するペプチドをコードするDNA
【0012】
さらに、本発明は、上記ペプチドをコードする遺伝子と目的遺伝子とを含む組換えベクターである。該目的遺伝子としては、ポリペプチドの生産又は植物の代謝産物(例えばストレス耐性を付与するもの)の生産をもたらすもの、あるいはシロザコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子が挙げられる。
さらに、本発明は、上記ペプチドをコードする遺伝子と目的遺伝子とを含有する組換えベクターを含む形質転換体である。該形質転換体としては、植物体、植物器官、植物組織又は植物培養細胞が挙げられる。
さらに、本発明は、上記組換えベクターを含む形質転換植物を環境ストレス(例えば塩ストレス)の条件下で培養又は栽培することを特徴とする環境ストレス耐性植物の作出方法又はその環境ストレス耐性植物である。
【0013】
さらに、本発明は、上記形質転換体を環境ストレスの条件下で培養又は栽培することを特徴とする、ポリペプチド又は植物の代謝産物(例えば環境ストレス耐性を付与する物質)の蓄積誘導方法である。環境ストレス耐性を付与する物質としては、例えばベタインが挙げられる。
さらに、本発明は、前記ペプチドをコードする遺伝子とコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子とを含有する組換えベクターを含む形質転換体を培養又は栽培し、得られる培養物又は栽培物からベタインを採取することを特徴とするベタインの製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は植物の乾燥、塩性土壌で誘導されるコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子に関する。一例としてシロザのコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子を示す。但し、シロザと同じように乾燥、塩性土壌に耐性を示すような植物種でも乾燥、塩性土壌で誘導されるコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子が存在すると考えられる。従って、シロザ以外の植物由来のコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子も本発明の遺伝子に含まれる。
【0015】
本発明のコリンモノオキシゲナーゼは配列番号2、4又は6に示したアミノ酸配列を有する。しかし、植物間でも品種等によって多少のアミノ酸配列の相違は生じてもよい。また、同一植物品種であっても突然変異等によってアミノ酸配列が変化する場合がある。よって、本発明では、配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列のうち複数個(好ましくは1若しくは数個、例えば1〜10個)のアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有し、かつコリンモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質も本発明に含まれる。
【0016】
さらに、本発明は、配列番号1、2又は3に示したコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子を提供する。但し、これらの遺伝子に限定されず、配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列をコードするすべての遺伝子を含む。また、本発明では、配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列のうち複数個(好ましくは1若しくは数個、例えば1〜10個)のアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有し、実質的なコリンモノオキシゲナーゼをコードするすべての遺伝子を含む。
【0017】
1.本発明の遺伝子のクローニング
(1) cDNAライブラリーの作製及びスクリーニング
本発明の遺伝子は、乾燥、塩処理等のストレスを負荷した植物からRNAを抽出し、RT-PCRにより単離することができる。mRNAの供給源となる植物としては、例えばシロザなどの属するアカザ科の植物が挙げられるが、これに限定されるものではない。mRNAの調製は、通常行われる手法により行うことができる。例えば、上記供給源から、グアニジウムチオシアネート-塩化セシウム法などにより全RNAを抽出した後、オリゴdT-セルロースやポリU-セファロース等を用いたアフィニティーカラム法により、あるいはバッチ法によりポリ(A)+RNA(mRNA)を得ることができる。さらに、ショ糖密度勾配遠心法等によりポリ(A)+RNAをさらに分画してもよい。このようにして得られたmRNAを鋳型として、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する。RT-PCR法に用いる2種類のプライマーには、他の植物のコリンモノオキシゲナーゼ間で相同性の高い部分に対応するオリゴヌクレオチド(例えばホウレンソウ由来のもの)を使用することができる。
【0018】
さらに、cDNAからRT-PCR法によりコリンモノオキシゲナーゼの一部をコードするcDNA断片をクローニングし、そのcDNA断片より作製したプライマーを用いて両末端にアダプター配列を接続したテンプレートcDNAに対するRACE-PCRを行ない(RACE法)、該タンパク質の全長をコードするcDNAを取得することができる。RACE(Rapid Amplification of cDNA ends)法とは、cDNAの5'又は3'欠失部位をPCRにより迅速に回収する方法である。
すなわち、RT-PCRにより得られた部分 cDNA 断片の配列を決定した後、該部分cDNA配列を基に遺伝子特異的プライマー(GSP)を設計する。GSPは、当該部分cDNA配列より5'側及び3'側の領域に存在するDNA断片であって配列が未知のDNA断片を増幅するために必要とされるプライマーである。GSPの配列は、当該部分cDNA配列から任意に選択することができる。
【0019】
次に、部分cDNAよりも外側(5'側(上流側)及び3'側(下流側))の DNA断片を増幅する。この鋳型となる DNA断片の配列は未知であるが、各DNA断片の末端にはアダプター配列が付加されている。そこで、アダプター配列にハイブリダイズするプライマー(アダプタープライマー(AP)という)及び前記GSPをプライマーとして用いて、アダプターが連結された、配列が未知のcDNA断片の増幅反応を行う。
【0020】
本発明においては、RACE法は、市販のキット(MarathonTM cDNA Amplification Kit(Clonetech社))を用いて行うことができる。
得られたcDNAの塩基配列の決定は、PCRをベースにした方法により行う。例えば、Perkin Elmer社製の蛍光ダイデオキシターミネーターを含有するPRISMシークエンシングキット等を使って反応を行い、Applied Biosystem 社製のオートシークエンサー(モデルABI 373)等で塩基配列を決定する。
【0021】
上記のようにして得られた既知の部分配列、5' RACE産物及び3' RACE産物の塩基配列からアセンブリにより全長cDNAの塩基配列を得ることができる。すなわち、各DNA断片の塩基配列間でオーバーラップしている部分をつないで5'及び3'部分を含む全長の塩基配列を得る。
配列番号1、3及び5に本発明の遺伝子の塩基配列を、配列番号2、4及び6に本発明のコリンモノオキシゲナーゼのアミノ酸配列を例示するが、このアミノ酸配列を含むタンパク質がコリンモノオキシゲナーゼ活性を有する限り、当該アミノ酸配列において複数個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。
【0022】
例えば、配列番号2、4又は6で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2、4又は6で表わされるアミノ酸配列に1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2、4又は6で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
ここで、本発明においてコリンモノオキシゲナーゼ活性とは、コリンからベタインアルデヒドまでの第1段階の酸化を触媒する活性を意味する。なお、本発明のタンパク質の上記活性は、植物体の粗抽出液に塩化コリン、DCPIPを含む組成液を添加した反応液の吸光度変化を測定することでその有無を確認することができる(特開平10-191983号公報)。
【0023】
また、上記遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAも本発明の遺伝子に含まれる。ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高い核酸同士、すなわち60%以上、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸同士がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましくは65℃での条件をいう。
【0024】
なお、配列番号1、3及び5に示す塩基配列を有する遺伝子をそれぞれタイプA、タイプB、タイプCとすると、タイプAとBとの間では97.0%、タイプAとCとの間では98.2%、タイプBとCとの間では97.5%の相同性を有する。従って、タイプAの遺伝子と90%以上、好ましくは97%以上の相同性を有する塩基配列を有し、かつコリンモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も、本発明の遺伝子に含まれる。
【0025】
一旦本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又はクローニングされたcDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって、本発明の遺伝子を得ることができる。さらに、部位特定変異誘発等によってコリンモノオキシゲナーゼをコードする修飾されたDNAを合成することもできる。
なお、遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異の導入が行われる。
【0026】
2.組換えベクター及び形質転換体の作製
(1) 組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド DNA、ファージ DNA等が挙げられる。
プラスミド DNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119, pUC18, pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
【0027】
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0028】
(2) 形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母が挙げられ、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞が挙げられ、あるいはSf9等の昆虫細胞が挙げられる。
【0029】
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli) DH5α、Y1090などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
プロモーターは、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えばtrpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなどの、大腸菌やファージに由来するプロモーターが用いられる。tacプロモーターなどのように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。
細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110(1972)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0031】
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。この場合、プロモーターは酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等を用いることができる。
酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法[Becker, D.M. et al.:Methods. Enzymol., 194: 182(1990)]、スフェロプラスト法[Hinnen, A. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929(1978)]、酢酸リチウム法[Itoh, H.:J. Bacteriol., 153:163(1983)]等が挙げられる。
【0032】
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。プロモーターとしてSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等が用いられ、また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
【0033】
宿主が植物である場合は、形質転換植物は以下のようにして得ることができる。
本発明において形質転換の対象となる植物は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織等)又は植物培養細胞のいずれをも意味するものである。形質転換に用いられる植物としては、例えばアカザ科、ナス科、イネ科、マメ科、バラ科、キク科、ユリ科、ナデシコ科、ウリ科、ヒルガオ科、アブラナ科等に属する植物が挙げられるが、これらの植物に限定されるものではない。
【0034】
上記組換えベクターは、通常の形質転換方法、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法等によって植物中に導入することができる。 例えばアグロバクテリウム法を用いる場合は、構築した植物用発現ベクターを適当なアグロバクテリウム、例えばアグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) LBA4404株に導入し、この株をリーフディスク法(内宮博文著,植物遺伝子操作マニュアル,1990,27-31pp,講談社サイエンティフィック,東京)等に従って宿主(例えばタバコ)の無菌培養葉片に感染させ、形質転換タバコを得ることができる。
【0035】
また、パーティクルガン法を用いる場合は、植物体、植物器官、植物組織自体をそのまま使用してもよく、切片を調製した後に使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい。このように調製した試料を遺伝子導入装置(例えばPDS-1000(BIO-RAD社)等)を用いて処理することができる。処理条件は植物又は試料により異なるが、通常は450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行う。
【0036】
植物培養細胞を宿主として用いる場合は、形質転換は、組換えベクターをパーティクルガン法、エレクトロポレーション法等で培養細胞に導入する。
形質転換の結果得られる腫瘍組織やシュート、毛状根などは、そのまま細胞培養、組織培養又は器官培養に用いることが可能であり、また従来知られている植物組織培養法を用い、適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライド等)の投与などにより植物体に再生させることができる。
【0037】
遺伝子が宿主に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行うことができる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法も採用することができる。
【0038】
3.本発明のタンパク質の生産
本発明のタンパク質は、本発明のコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を有するもの、又は該アミノ酸配列において複数個のアミノ酸に前記変異が導入されたアミノ酸配列を有し、かつコリンモノオキシゲナーゼ活性を有するものである。なお、本発明のタンパク質をコリンモノオキシゲナーゼタンパク質ともいう。
本発明のコリンモノオキシゲナーゼタンパク質は、前記形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清、あるいは培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。
【0039】
本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0040】
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。
窒素源としては、無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩(例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等)が挙げられ、その他含窒素化合物(例えばペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等)が挙げられる。
無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0041】
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で行う。なお、培地のpHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。
培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドール酢酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0042】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地として、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。 培養は、通常、5%CO2存在下、37℃で1〜30日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりコリンモノオキシゲナーゼタンパク質を抽出する。また、本発明のタンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
【0043】
宿主が植物の場合は、形質転換植物を培養又は栽培すれば、コリンモノオキシゲナーゼを生産することができる。さらに、コリンモノオキシゲナーゼによって触媒される反応の産物、又は該反応に続く一連の生合成反応経路上の中間体及び/又は最終生産物(例えばベタイン)も生産することができる。
形質転換体が植物細胞又は植物組織である場合は、培養は、通常の植物培養用培地、例えばMS基本培地(Murashige, T. & Skoog, F. (1962) Physiol. Plant. 15: 473)、LS基本培地(Linsmaier, E. M. & Skoog, F. (1965) Physiol. Plant. 18: 100)、プロトプラスト培養培地(LS培地を改変したもの)等を用いることにより行うことができる。培養方法は、通常の固体培養法でもよいが、液体培養法を採用することが好ましい。
【0044】
上記培地に、細胞、組織又は器官を0.1〜2.0g新鮮重/l接種し、必要によりNAA、2,4-D、BA、カイネチン等を適宜添加して培養する。培養開始時の培地のpHは5〜7に調節し、培養は通常20〜30℃、好ましくは25℃前後で、また、0.2〜1 vvm通気、50〜200rpm攪拌で1〜6週間培養する。
形質転換体が植物体である場合は、圃場やガラスハウスなどで栽培又は水耕培養することができる。
培養細胞又は培養組織から本発明のタンパク質を採取するには、セルラーゼ、ペクチナーゼ等の酵素を用いた細胞溶解処理、超音波破砕処理、磨砕処理等により細胞を破壊する。次いで、濾過又は遠心分離等を用いて不溶物を除去し、粗タンパク質溶液、あるいは植物の一次及び/又は二次代謝産物を含む溶液を得る。
【0045】
上記粗タンパク質溶液から本発明のタンパク質をさらに精製するには、通常のタンパク質精製法を使用することができる。例えば、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法等を、単独又は適宜組み合わせることにより行う。
植物器官又は植物体から本発明のタンパク質を採取するには、超音波破砕処理、磨砕処理等を行って上記有用物質の抽出液を調製し、その後は上記の精製手法と同様にして行うことができる。
【0046】
4.トランジットペプチド
(1) トランジットペプチド配列の特定
本発明のトランジットペプチドは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有するものである。該アミノ酸配列は、クローニングしたCMO遺伝子の配列解析から位置を特定することができ、配列番号16に示す塩基配列によりコードされる。
アミノ酸配列が分かった後は、以下の化学合成により得ることも可能である。
【0047】
(2) トランジットペプチドの化学合成
本発明のトランジットペプチドは、上記のようにして特定されたアミノ酸配列に基づいて、ペプチド合成の常法手段で製造することができる。この場合、液相合成法及び固相合成法のいずれを用いることもできる。このようなペプチド合成の手段は、任意の公知の方法に従えばよい(例えばBodanszky, M and M.A. Ondetti, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966)、Schroeder and Luebke, The Peptide, Academic Press, New York (1965)、F. M. Finn及びK. Hofmann著、The Proteins、第2巻、H.Nenrath、R. L. Hill編集、Academic Press Inc., New York (1976);泉屋信夫他著「ペプチド合成の基礎と実験」丸善(株) 1985年;矢島治明、榊原俊平他著、生化学実験講座1、日本生化学会編、東京化学同人 1977年;木村俊他著、続生化学実験講座2、日本生化学会編、東京化学同人 1987年などを参照)。従って、例えばアジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混酸無水物法、DCC法、活性エステル法、ウッドワード試薬Kを用いる方法、カルボニルイミダゾール法、酸化還元法、DCC/HONB法、BOP試薬を用いる方法などにより、本発明のペプチドを得ることができる。通常は、市販の自動ペプチド合成装置により化学合成することも可能である。
【0048】
本発明のペプチドは、そのペプチド断片に目的とする他のペプチドを縮合させ、ついで生成物のC末端α-カルボキシル基およびN末端α-アミノ基の保護基を同時にまたは段階的に脱離することにより製造することができる。
このようにして製造されたペプチドは、反応終了後、ペプチドの分離精製手段、たとえば、溶媒抽出、蒸留、分配、再沈殿、再結晶、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーなどを組み合わせて採取される。
【0049】
本発明のペプチドは、上記の金属塩、塩基又は塩基性化合物との塩、無機酸付加塩、有機酸塩などとして得ることができる。特に、薬理学的に許容される酸付加塩、例えば無機酸又は有機酸との塩としても得ることができる。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0050】
塩は、塩酸などの適切な酸、又は水酸化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製し得る。なお、処理温度は0〜100℃であるが、室温が好ましい。
なお、本発明のペプチドの生化学的、物理化学的性質は、質量分析、核磁気共鳴、電気泳動、高速液体クロマトグラフィー等により分析することができる。
【0051】
5.目的遺伝子-トランジットペプチド遺伝子複合体の構築及び物質の蓄積誘導本発明においては、目的となる遺伝子の上流に本発明のトランジットペプチド(シグナルペプチドとしての機能を有するペプチド)遺伝子を連結する。上記目的遺伝子とトランジットペプチド遺伝子との複合体DNAは適当な制限酵素で処理したのち、リガーゼを用いて連結することができる。この連結されたDNAを、適当な制限酵素で処理したベクターにつないで組換えベクターを得る。得られた組換えベクターを宿主に導入して形質転換体を得る。得られる形質転換体を培養又は栽培すれば、目的遺伝子の発現産物又は該目的遺伝子の発現産物の宿主による代謝産物を蓄積することができる。組換えベクターの構築、宿主、形質転換方法等については前記と同様にして行うことができる。
【0052】
ここで、目的遺伝子は、ポリペプチド又は酵素等をコードする遺伝子が挙げられるが、特に限定されるものではない。目的の発現産物が酵素である場合には、その酵素によって触媒される反応の産物、又は該反応に続く一連の生合成反応経路上の中間体及び/又は最終生産物(植物の一次又は二次代謝産物)をも有用物質として蓄積することができる。有用物質としては、例えばベタインなどの環境ストレス耐性を付与する物質が挙げられる。さらに、目的遺伝子が、タンパク質リン酸化酵素やG-プロテインなどの情報伝達機構において、生合成等の反応経路全体の機能調節を司る制御遺伝子(マスター遺伝子などとも呼ばれる)である場合には、該制御遺伝子の情報伝達下流に存在する反応経路上の中間体及び/又は最終生産物も有用物質として蓄積することができる。これらの物質は、環境ストレス耐性に関与する物質であると関与しない物質であるとを問わない。
【0053】
このようにして得られた形質転換体(特に形質転換植物)を環境ストレスの条件下で培養又は栽培すると、当該環境ストレスをシグナルとして受けて植物内に目的遺伝子の発現産物又は植物の代謝産物が蓄積される。なお、環境ストレスとしては、例えば塩ストレス、乾燥ストレス、低温ストレス、高温ストレス等が挙げられる。
塩ストレスは、所定の水耕液に50〜600mMになるように塩化ナトリウムを添加し、通常条件で栽培することによって負荷する。
乾燥ストレスは、植物個体全体を土壌又は水耕液等から引き抜いて空気中で一定時間さらすことにより、あるいは水耕液、培地等にポリエチレングリコールなどを添加すること等により負荷する。
【0054】
高温ストレス及び低温ストレスは、培養器又は温室等の気温を、高温ストレスについては上げることにより、低温ストレスについては下げることにより負荷する。
ストレスを負荷した後は、前記形質転換体を培養又は栽培したときと同様にして培養又は栽培し、環境ストレスに耐性な植物を得る。「環境ストレス耐性」とは、特定のストレス(塩ストレス、乾燥ストレス等)を負荷したときに、非耐性植物が枯死するような条件であっても枯死せず、あるいは非耐性植物が生育を停止するような条件であっても生育し得る状態を意味する。
【0055】
本発明においては、例えば目的遺伝子としてコリンモノオキシゲナーゼをコードするDNA(配列番号1、3又は5)に、トランジットペプチドをコードするDNA(配列番号16)を連結し、これを発現ベクターに組み込んでコリンモノオキシゲナーゼ-トランジットペプチド複合タンパク質を発現させることができる。この場合、本発明の環境ストレス耐性植物には、トランジットペプチドをコードするDNAをもつコリンモノオキシゲナーゼ遺伝子が組み込まれている。従って、上記複合タンパク質をコードするDNAが植物中に組み込まれると、上記環境ストレスを負荷して栽培することによりコリンモノオキシゲナーゼの蓄積が誘導され、その結果、コリンからのベタインアルデヒドの合成が触媒され、最終的にベタインが植物中に蓄積される。このようにベタインが蓄積されることは、植物に環境ストレスに対する耐性を付与し得る点で意義がある。ベタインを植物から採取するには、第四級アンモニウム化合物の精製法を採用することができる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。なお、本実施例においてコリンモノオキシゲナーゼは「CMO」又は「CMOタンパク質」と表示し、コリンモノオキシゲナーゼ遺伝子は「cmo」又は「cmo遺伝子」と表示する。
【0057】
〔実施例1〕 RNAの調製
シロザ成葉4gを収穫後直ちに液体窒素中でブレンダーにより破砕した。これに20mlのグアニジンチオシアネート溶液(4.2Mグアニジンチオシアネート/25mMクエン酸ナトリウム2水和物/使用直前に上記溶液1mlにつき7μlの2-メルカプトエタノールと5mgのラウロイルサルコシン酸ナトリウムを加える)を加え、室温で10分激しく振とうした。10,000rpmで10分遠心分離した上清に2ml当たり1gのCsClを加えた。5.7M CsCl液(5.7M CsCl/0.1M EDTA(pH7.5))4mlを入れたポリアロマーチューブに6〜7mlを重層し、20℃、35000rpmで18時間超遠心した。
【0058】
沈殿を5mlのトリス-SDS溶液(50mM Tris-HCl(pH9.0)/1% SDS)に完全に溶解し、5mlのフェノール(pH9.0)を加えて室温で10分振とう後、20℃、5,000rpmで10分遠心した。上清に5mlのフェノール・クロロホルムを加えて室温で10分振とう後、20℃、5,000rpmで10分遠心した。上清に5mlのクロロホルムを加えて室温で10分振とう後、20℃、5,000rpmで10分遠心した。上清に1/10容の3M NaOAcを加え、2倍容のEtOHを加えて混合し、-20℃に30分放置した後、4℃、10,000rpmで10分遠心した。沈殿を1mlのH2Oに溶解し、シロザ成葉のRNAとした。
【0059】
〔実施例2〕 RT-PCRによる遺伝子断片の取得及び全長遺伝子のクローニング(1) RT-PCRによる遺伝子断片の取得
RT-PCR Kit(Stratagene)を用いて、基本的にキットのプロトコルに従って遺伝子断片を取得した。PCRプライマーはホウレンソウのCMOのアミノ酸配列を基にして設計した。
シロザRNA9.5μgを、DEPC処理した38μlのH2Oに溶解した。3μlのランダムプライマー(100ng/μl)を加えて65℃で5分インキュベートした後、ゆっくり室温まで冷やした。これに5μlの10×第1鎖バッファー、1μlのRNase block Ribonuclease Inhibitor(40U/μl)、2μlの100mM dNTPs、1μlのMMLV-逆転写酵素(50U/μl)を加え、37℃で1時間反応後、90℃で5分インキュベートして氷上に置いた。こうして得た第1鎖cDNA溶液の5μlをテンプレートにして、以下のPCR反応溶液を調製し、91℃で5分、54℃で5分インキュベートした。
【0060】

PCR反応溶液組成:
第1鎖cDNA溶液 5μl
10×Ex Taqバッファー(宝酒造) 10μl
dNTPs ミックス(各2.5mM) 8μl
プライマー1(配列番号:7)100pmol
プライマー2(配列番号:8)100pmol
全量 99.5 μ l
【0061】
その後、0.5μlのTakara Ex Taq DNAポリメラーゼ(5U/μl)を加え、PCR((91℃ 1分、54℃ 1分、72℃ 2分)×30サイクル)を実施し、反応液のアガロース電気泳動を実施した。目的産物と考えられる約600bpをゲルより切り出して精製し、pT7 Blue T-ベクター(Novagen)にクローニングしてシークエンスを行ない、シロザのCMO遺伝子断片とした。
【0062】
(2) mRNAの精製
mRNA Purification Kit(Phamacia)を用いて、キットのプロトコルに従って行なった。 シロザの全RNA0.9mgを、1mlの溶出バッファーに溶解した。65℃で5分加温した後、直ちに氷冷し、0.2mlのサンプルバッファーを加えた。これをあらかじめHigh-Saltバッファーで平衡化したoligo(dT)-セルロース・スピンカラムにアプライし流出させた後、カラムを350×gで2分遠心した。次いで0.25mlのHigh-saltバッファーを添加し、350×gで2分遠心する洗浄操作を2回行なった。同様に、0.25mlのLow-saltバッファーによる洗浄操作を3回行なった。
【0063】
65℃に加温した0.25mlの溶出バッファーを添加し、350×gで2分遠心する操作を4回繰り返し、RNAを回収した。得られたRNA溶液1mlを再度同様の方法でカラム精製し、得られたRNA溶液1mlに100μlのサンプルバッファー、10μlのGlycogen溶液、5mlのEtOHを加えて-20℃に2時間放置した。4℃、14,000rpmで10分遠心し、沈殿を20μlのH2Oに溶解し、吸光度を測定した。
その結果、21μgのmRNAを得た。
【0064】
(3)cDNAの合成
▲1▼第1鎖(First-strand) cDNA合成
シロザmRNA1μgと1μlのcDNA合成プライマー(10μM)にH2Oを加えて5μlにし、70℃で2分加温した後、直ちに氷上で2分冷やした。これに、2μlの5×第1鎖バッファー、1μlのdNTPミックス(10mM)、1μlのMMLV逆転写酵素(100U/μl)、1μlのH2Oを加え、42℃で1時間加温した後、直ちに氷上で冷やした。
【0065】
▲2▼第2鎖(Second-strand) cDNA合成
10μlの第1鎖反応溶液、16μlの5×第2鎖バッファー、1.6μlのdNTPミックス(10mM)、4μlの20×第2鎖酵素カクテル、48.4μlのH2Oを氷上で穏やかに混合し、16℃で45分インキュベートした後、4μlのEDTA/Glycogen混合物を加えて反応を停止した。100μlのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を加えてボルテックスし、14,000rpmで10分遠心分離した上清に、100μlのクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を加えてボルテックスし同様に遠心分離した。上清に1/2容の4M酢酸アンモニウムと2.5倍容のEtOHを加え、14,000rpmで20分遠心分離した。沈殿を80%EtOHでリンスして真空乾燥した後、10μlのH2Oに溶解した。2μlを0.8%アガロースゲル電気泳動で確認し、ds cDNAを得た。
【0066】
5μlのds cDNAに、2μlのMarathon cDNAアダプター(10μM)、2μlの5×DNA ライゲーションバッファー、1μlのT4 DNAリガーゼ(1U/μl)を加え、16℃で一晩インキュベートした。70℃で5分熱処理してリガーゼを失活した後、反応溶液の1μlを250μlのTricine-EDTAバッファーで希釈した。94℃で2分加温し、氷上で2分冷やした後、RACE PCRに用いるアダプター結合cDNAとした。
【0067】
(4) 5'及び3'-RACE-PCR
5μlのアダプター結合cDNAをテンプレートにして、Advantage Klen Taqポリメラーゼ(CLONTECH)を用いてPCRを行ない、反応液の5μlを0.8%アガロースゲル電気泳動して増幅産物の確認を行なった。
5'RACE-PCR反応ではプライマー3(配列番号9)、3' RACE PCRではプライマー4(配列番号10)を用いた。
【0068】
Figure 0004296653
Figure 0004296653
【0069】
PCRは、94℃ 1分、次に94℃ 30秒、72℃ 4分の条件で5回繰り返し、次に94℃ 30秒、70℃ 4分の条件で5回繰り返し、そして、94℃ 30秒、68℃ 4分を25回繰り返し反応させた。
5'RACE産物と思われる1.3kbpのバンド、3'RACE産物と思われる約1.2kbpのバンドが確認できたため、これらをアガロースゲルから切り出して精製し、pT7 Blue T-ベクターにクローニングした。Dye-Terminator法で塩基配列決定を行ない、各クローンの塩基配列を解析した結果、Type A(配列番号1)、Type B(配列番号3)、Type C(配列番号5)の3つのcmo遺伝子が存在することがわかった。
なお、Type A、Type B及びType Cの遺伝子によりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2、4、6に示す。
【0070】
(5) Type C cmo全長遺伝子の取得
3つのcmo遺伝子のうちType Cを今後の解析に用いることとし、Type C cmo遺伝子の全長塩基配列の単離を行なった。
Sma Iサイトを付加したプライマー 5(配列番号11)、Xba Iサイトを付加したプライマー 6(配列番号12)を用いて、KOD DNA ポリメラーゼ(東洋紡)によるPCR(プライマー 6, プライマー 7)を行ない、増幅産物をpT7Blue T-ベクター (Novagen)にライゲーションした。PCRは、94℃ 1分、60℃ 1分、 72℃ 2分の条件で30回繰り返し反応させて行なった。
【0071】
Figure 0004296653
増幅産物についてDye-Terminator法で塩基配列決定を行ない、Type Cであることを確認し、これをpT7cmoと名付けた。
【0072】
(6) cmoタンパク質抗体の作製
cmoタンパク質の発現解析を行なうために、Xpress system(Invitrogen)を用いて抗体の作製を行なった。
タンパク質のトランジットペプチドを除いた領域のコード配列を増幅するためのBamH Iサイトを付加した5'側のプライマー7(配列番号13)とKpn Iサイトを付加した3'側のプライマー 8(配列番号14)を作製し、PCR(5'プライマー:配列番号13、3'プライマー:配列番号14)により約1.2kbpの断片を増幅した。PCRは94℃ 1分、60℃, 1分、72℃ 2分の条件で30回繰り返し反応させて行なった。
【0073】
Figure 0004296653
【0074】
増幅産物をpT7Blue T-ベクター(Novagen)にライゲーションし、pT7cmoAと命名した。PT7cmoA及びpTrcHisをBamHI、KpnIで酵素処理後、それぞれを0.8%アガロース電気泳動し、ゲルからGene Clean Spin Kit(BIO 101)を用いてキットのマニュアルに従って約1.3kbpのcmo遺伝子断片と約4.4kbのベクター断片を回収した。精製した両DNA断片をT4 DNAリガーゼを利用したDNA Ligation Kit(宝酒造)を用いてキットのマニュアルに従って全50μlの反応系で結合し、大腸菌(JM109, 宝酒造)に導入することで融合タンパク質発現ベクターpTHCを作製した。
【0075】
作製したpTHCをミニプレップ法により精製し、TOP10のマニュアルに従って大腸菌(TOP10、Invitrogen)に導入した。このpTHCが導入された大腸菌を、Xpress System(Invitrogen)のマニュアルに従って培養を行ない、400mlの培養液から、ヒスチジンで標識したcmoタンパク質約10mgを結合させたProbond樹脂カラム(Invitrogen)を得た。このカラムから350mM イミダゾール画分を採取し、PB-10(Phamacia)によりイミダゾールを除去した。この液を再度Probond樹脂カラム(Invitrogen)に固定し、固定した約4.5mgの融合タンパク質に対して、200unitのエンテロキナーゼ(Invitrogen)を混合し、室温で10時間振とう処理を行なった。このカラムの溶出液4mlから1.6mgのCMO成熟タンパク質に相当する43kDaのタンパク質の存在をSDS-PAGEにより確認した。
この精製CMOタンパク質を抗原としてウサギに投与し、抗血清を作製、抗体として用いた。
【0076】
〔実施例3〕発現ベクターの構築
シロザcmo遺伝子をタバコで発現させることを目的として、トランジットペプチド(配列番号17)をコードするDNA(配列番号16)を含む発現ベクターpBIcmoと、トランジットペプチドを含まない発現ベクターpBIcmoSの2種類の作製を試みた。
まず、トランジットペプチドを含まないcmo遺伝子配列を増幅するためのSma Iサイトを付加したプライマー 9(配列番号15)を作製した。
このプライマーを用いてPCR(5'プライマー:配列番号15、3'プライマー:配列番号12)によりトランジットペプチドを含まない遺伝子断片を増幅してpT7Blue T-ベクター(Novagen)にライゲーションし、pT7cmoSと名付けた。PCRは94℃ 1分、60℃ 1分、72℃ 2分の条件で30回繰り返し反応させて行なった。
【0077】
Figure 0004296653
【0078】
PT'7cmoおよびpT7cmoSを制限酵素Sac I、Sma Iで処理し、アガロース電気泳動した後、約1.2kbp、1.4kbpのバンドを切り出して精製を行なった。pBI121(Clontechより購入)を制限酵素Sac I、Sma Iで処理し、同様に約11kbpのバンドを精製して、先の断片とそれぞれライゲーションし、pBIcmoおよびpBIcmoSを作製した。
【0079】
〔実施例4〕タバコへの遺伝子導入
(1)アグロバクテリウム・チュメファシエンスの形質転換
アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)LBA4404(Clontechより購入)を250μg/mlのストレプトマイシンと50μg/mlのリファンピシンを含むL培地中、28℃で培養した。Nagelら(1990)(Microbiol. Lett., 67:325)の方法に従って、細胞懸濁液を調製し、pBIcmo及びpBIcmoSをエレクトロポレーションにより、上記菌株に導入した。
【0080】
(2) CMOをコードするポリヌクレオチドのタバコ細胞への導入
上記(1)で得られた形質転換アグロバクテリウムを用いて、ホルシュ等の方法に従いニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum cv.SR1)の形質転換を行った(Horschet, et al., Science 277, 1229-1231:1985)。
以下の実施例はいずれも、再分化して得られたcmo遺伝子導入タバコのR1世代の導入遺伝子がホモになった系統を使用した。上記実施例で得られたcmo遺伝子導入タバコにおいては、CMOをコードする本発明のポリヌクレオチドは、高発現プロモーターであるCaMV35Sプロモーターの制御下にあるため、常時、CMOタンパク質が発現される組換えタバコである。
【0081】
〔実施例5〕タバコの栽培方法
タバコ種子の滅菌は、10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ナカライテスク)40mlにTritonX-100を10μl添加した溶液中で10分振とう処理し、500mlの滅菌水で数回に分けて洗浄して行なった。滅菌処理を施したタバコ種子をMurashige and Skoog(MS)培地(Murashige, et al. Physiol. Plant. 15:473-497, 1962)の各成分を半分とした1/2MS培地(ショ糖濃度1.5%)にて25℃、16時間明条件、8時間暗条件で2週間生育させ、その後、1/2MS培地の角型ポットへ移植し、各種実験を実施した。
【0082】
(1) ウェスタン解析
上記cmo遺伝子導入タバコと野生型非組換えタバコSR1を用いて、CMOタンパク質の発現をタンパク質レベルで調べた。
cmo遺伝子導入タバコ(pBIcmo 4-2系統、pBIcmoS 53-1系統)及び非組換えタバコ(Nicotiana Tabacum cv. SR1)の完全に展開した上位葉0.2gを採取した。このサンプルを液体窒素を用いて破砕し、抽出バッファー(1%SDS/0.1M NaHCO3/5% 2-メルカプトエタノール) 0.4mlに懸濁して5分煮沸の後、15000rpm、5分(室温)で遠心分離し、上清をタンパク質抽出液とした。このタンパク質抽出液をSDS-PAGEで分離し、ナイロン膜(Imobilon, MILLIPORE)に移した。膜を上述のCMOに対する抗体(抗血清5000倍希釈)とインキュベートし洗浄ののち、さらに3000倍希釈の2次抗体(アフィニティ精製ヤギ抗ウサギIgG(H+L)アルカリフォスファターゼコンジュゲート:BIORAD)でインキュベートして洗浄し、発色溶液(コニカイムノステインHRP-1000:Konica)でCMOを検出した。
【0083】
ウェスタンブロットの結果を図1に示す。CMOに対する43kDaの免疫応答性タンパク質の存在が確認された。pBIcmo遺伝子導入タバコでは、150mMのNaClストレスを1日間加えることで、トランジットペプチドが切除されたCMOタンパク質の蓄積が数倍上昇することが示された。pBIcmoSでは150mMのNaClストレスによるタンパク質蓄積誘導は見られなかった。この結果から、シロザCMOのトランジットペプチドに相当するポリペプチド配列が、塩ストレスに応答したタンパク質蓄積の促進を行なうことを示した。
【0084】
(2) 形質転換植物におけるベタイン蓄積の測定
植物の葉中のベタイン含量は、4級アンモニウム化合物のNMRスペクトルを測定することによって算出した(Wall, J. et al., Analyt. Chem. 32;870-874,1960)。野性株および形質転換植物の葉1gを液体窒素中でセラミックモーターを用いて粉末にした。この粉末を1.0M H2SO4 4ml中に懸濁し、25℃で24時間振とうした。不溶物を除去した後、1000×gで10分遠心することにより上清を回収した。上清1mlに対してKI-I2溶液0.4mlを加えて、4℃で80分振とうした。13000×gで10分遠心することにより、ベタインとコリンのパーアイオダイト付加物を回収し、内部標準としてt-ブチルアルコール(ナカライテスク)を含むD2O(EURISO-TOP)0.6mlに溶解し、1H-NMRスペクトルを測定した。
【0085】
その結果、ベタイン及びコリンの2つの主要ピークが観察され、ベタインピークの積分値を濃度の定量に用いた。
播種後2週間生育させたタバコを、1/2MS培地に20mMコリン(ナカライテスク)、100mM NaClを添加した角型ポットへ移植し、2週間栽培後、サンプルを採取し、ベタイン定量に用いた。
その結果、野生株ではコリンのみが観察されたが、形質転換植物ではベタインとコリンの両方が観察された。図2に示すようにpBIcmo4-2植物体ではベタイン含量は2.0μg/g新鮮重であった。このことから、CMO成熟タンパク質がベタイン合成能を有することを示した。
【0086】
【発明の効果】
本発明により、コリンモノオキシゲナーゼ及びその遺伝子が提供される。該遺伝子は、乾燥土壌又は塩性土壌に耐性の高い植物の育種に利用可能なものである。また、該遺伝子を用いて乾燥土壌又は塩性土壌に耐性の高い植物を作出することにより、乾燥土壌又は塩性土壌による荒廃地の植栽回復や乾燥土壌又は塩性土壌地域での農作物の収穫量の増大等に役立てることができる。
【0087】
【配列表】
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【0088】
【配列表フリーテキスト】
配列番号7:nはa、g、c又はtを表す(存在位置:9)。
配列番号7:nはa、g、c又はtを表す(存在位置:15)。
配列番号7:nはa、g、c又はtを表す(存在位置:18)。
配列番号8:nはa、g、c又はtを表す(存在位置:9)。
配列番号8:nはa、g、c又はtを表す(存在位置:15)。
配列番号8:nはa、g、c又はtを表す(存在位置:18)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 CMOトランジットペプチドの塩ストレス応答性を示す図である。
【図2】遺伝子導入タバコのベタインの蓄積量を示す図である。

Claims (16)

  1. 配列番号17で表されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードするトランジットペプチド遺伝子。
  2. 配列番号16で表される塩基配列を含むDNAであることを特徴とする請求項1記載のトランジットペプチド遺伝子。
  3. 目的遺伝子の上流に請求項1記載のトランジットペプチド遺伝子が連結された複合体DNAを含む組換えベクター。
  4. 上記目的遺伝子は、植物の代謝産物の生産に関与する酵素をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項3記載の組換えベクター。
  5. 上記代謝産物が植物に環境ストレス耐性を付与する物質であることを特徴とする請求項4記載の組換えベクター。
  6. 上記物質がベタインであることを特徴とする請求項5記載の組換えベクター。
  7. 上記複合体DNAがシロザコリンモノオキシゲナーゼをコードすることを特徴とする請求項3記載の組換えベクター。
  8. 上記トランジットペプチド遺伝子及び目的遺伝子のプロモーターが高発現プロモーターであることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項記載の組換えベクター。
  9. 請求項3〜8のいずれか1項に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  10. 植物体、植物器官、植物組織又は植物培養細胞である請求項9記載の形質転換体。
  11. 請求項3に記載の組換えベクターを導入した組換え植物を環境ストレス条件下で培養又は栽培し、上記組換えベクターに含まれる目的遺伝子の産物を高蓄積する方法。
  12. 請求項4に記載の組換えベクターを導入した組換え植物を環境ストレス条件下で培養又は栽培し、上記組換えベクターに含まれる目的遺伝子がコードする酵素及び/又は当該酵素が関与する代謝産物を高蓄積する方法。
  13. 上記酵素がシロザコリンモノオキシゲナーゼであり、上記代謝産物がベタインであることを特徴とする請求項12記載の方法。
  14. 請求項5〜7のいずれか1項記載の組換えベクターを導入した組換え植物を環境ストレス条件下で培養又は栽培することを特徴とする、環境ストレス耐性植物の作出方法。
  15. 請求項7に記載の組換えベクターを導入した組換え植物を環境ストレス条件下で培養又は栽培し、得られる培養物又は栽培物からベタインを採取することを特徴とするベタインの製造方法。
  16. 上記組換えベクターに含まれる複合体DNAのプロモーターが高発現プロモーターであることを特徴とする請求項15記載のベタインの製造方法。
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