JP4295902B2 - ピアスナット及びピアスナットシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として2枚重ねの板材から成るワークに上方から打ち込んで使用するピアスナット及びピアスナットシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平11−193808号公報により、ねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部の外周面に下方に向って拡径するテーパーを付けると共に、外筒部の内周面に周方向に間隔を存して複数の歯溝を形成したピアスナットが知られている。
【0003】
このピアスナットを上方からワークに打ち込むと、内筒部がピアスパンチとして機能してワークの孔明けが行われると共に、ピアスナットの環状凹部にワークが押し込まれてかしめられる。その結果、内筒部の外周面にワークが密着して、この外周面のテーパーによりワークに対しピアスナットが抜け止めされると共に、外筒部の内周面の歯溝にワークの肉が食い込んでワークに対しピアスナットが回り止めされ、かくて、ワークに対しピアスナットが強固に結合される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ワークが2枚重ねの板材から成るものである場合、ピアスナットの環状凹部の内面に直接接触する上側の板材とピアスナットとの結合力は確保されるが、下側の板材に対するピアスナットの結合力が不足し易く、ピアスナットが上側の板材と共に下側の板材から脱落したり、下側の板材に対し回転してしまうことがある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、下側の板材に対する結合力も十分に確保し得るようにした、2枚重ねワークに好適なピアスナット及びピアスナットシステムを提供することを課題としている。
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、2枚重ねのワークに上方から打ち込むピアスナットであって、ねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部の外周面に下方に向って拡径するテーパーを付けると共に、外筒部の内周面に周方向に間隔を存して複数の歯溝を形成するものにおいて、各歯溝を溝深さが外筒部の下端から上方に向って次第に深くなるように形成すると共に、環状凹部の内容積を環状凹部に押し込まれる前記2枚重ねのワークの体積よりも大きく設定している。また、2枚重ねのワークに上方から打ち込むピアスナットと、前記ピアスナットを前記2枚重ねのワークに結合させるピアスダイからなるピアスナットシステムであって、前記ピアスナットはねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部の外周面に下方に向って拡径するテーパーを付けると共に、外筒部の内周面に周方向に間隔を存して複数の歯溝を形成するものにおいて、各歯溝を溝深さが外筒部の下端から上方に向って次第に深くなるように形成すると共に、環状凹部の内容積を環状凹部に押し込まれる前記2枚重ねのワークの体積よりも大きく設定され、前記2枚重ねのワークの孔明け孔に前記内筒部が嵌合されるボス部が、前記ピアスダイの上面に突設され、前記ボス部上端面には径方向外方に向う下り勾配が設けられている。
【0007】
環状凹部の内容積を上記の如く設定すると、2枚重ねの板材から成るワークの下側の板材が環状凹部内に外筒部の下端よりも上方の位置に達するように押し込まれる。また、ワークの上側の板材の肉が環状凹部内でのかしめにより外筒部の内周面の歯溝に充填される。そして、歯溝への肉の充填によって生ずる径方向外方への肉の流動に伴い、環状凹部に押し込まれた下側の板材の部分の外周コーナ部の肉が歯溝に合致する部分において径方向外方に張り出す。そして、この張り出し部分は、歯溝の溝深さの変化に対応するオーバーハング形状になる。かくて、張り出し部によりピアスナットが上側の板材を介して下側の板材に対し抜け止めされると共に回り止めされ、下側の板材に対するピアスナットの結合力が高められる。さらに、ボス部上端面には径方向外方に向う下り勾配が設けられているために、ワークの上側の板材の押し込み部分の外周コーナ部における径方向外方への肉の張り出しが助長される。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、自動車のボンネット等の蓋部材のインナパネルW1の上にスティフナW2を重ねたワークWに、蓋部材用のヒンジ部材を締結するためのピアスナット1を結合した状態を示している。尚、インナパネルW1は厚さが例えば1mmのアルミ製薄板から成り、スティフナW2は厚さが例えば2mmのアルミ製厚板から成る。
【0009】
ピアスナット1は、鋼鉄製であって、ねじ孔1aを形成したナット本体の下面に、ねじ孔1aと同心の内筒部1bと、内筒部1bとの間に環状凹部1cを画成する外筒部1dとを垂設して成り、内筒部1bの外周面に下方に向って拡径するテーパーを付けている。外筒部1dの長さは内筒部1bよりも短く、また、外筒部1dの内周面には、図2に示す如く、周方向に間隔を存して複数の歯溝1eが形成されている。各歯溝1eは、溝深さが外筒部1dの下端から上方に向って次第に深くなるように形成されている。また、外筒部1dより上方に位置する環状凹部1cの内容積は、環状凹部1dに後記する如く押し込まれるワークWの体積よりも大きくなるように設定されている。
【0010】
ワークWにピアスナット1を結合する際は、内筒部1bが嵌合可能なボス部2aを上面に突設したピアスダイ2を用い、ピアスダイ2上にセットしたワークWに上方からピアスナット1を打ち込む。これによれば、内筒部1bがピアスパンチとして機能してワークWの孔明けが行われると共に、環状凹部1cに対向するワークWの部分がピアスダイ2のボス部2aによって環状凹部1cに押し込まれ、ワークWのかしめが行われる。
【0011】
ここで、インナパネルW1のボス部2a上端面上の押し込み部分W1aは最終的に外筒部1bの下端よりも上方の位置に達する。また、スティフナW2が内筒部1bの外周面と外筒部1dの内周面とに密着するように押し潰され、外筒部1dの内周面の歯溝1eにスティフナW2の肉が充填される。そして、歯溝1eに向う径方向外方への肉の流動に伴い、インナパネルW1の押し込み部分W1aの外周コーナ部の肉が歯溝1eに合致する部分において径方向外方に張り出し、外周コーナ部に、歯溝1eに合致する位相で、歯溝1eの溝深さの変化に対応するオーバーハング形状の張り出し部W1bが成形される。かくて、これら張り出し部W1bによりピアスナット1がスティフナW2を介してインナパネルW1に対し抜け止めされると共に回り止めされ、内筒部1bに対するインナパネルW1のかしめが不足しても、ピアスナット1とインナパネルWとの結合力を十分に確保できる。
【0012】
尚、ピアスダイ2のボス部2aの上端面には径方向外方に向う若干の下り勾配αが付けられており、この勾配αによってインナパネルW1の押し込み部分W1aの外周コーナ部における径方向外方への肉の張り出しが助長されるようにしている。
【0013】
以上、インナパネルW1の上にスティフナW2を重ねたワークWに打ち込むピアスナット1について説明したが、対象ワークはこれに限るものではなく、2枚重ねの板材から成るワークに打ち込むピアスナットに本発明は広く適用できる。
【0014】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、2枚重ねの板材から成るワークの下側の板材に対する結合力不足を解消して、下側の板材に対しピアスナットを確実に抜け止め及び回り止めできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明ピアスナットの一例の截断面図
【図2】 図1のII-II線截断面図
【符号の説明】
W ワーク W1 インナパネル(下側の板材)
W2 スティフナ(上側の板材) 1 ピアスナット
1a ねじ孔 1b 内筒部
1c 環状凹部 1d 外筒部
1e 歯溝

Claims (2)

  1. 2枚重ねのワークに上方から打ち込むピアスナットであって、
    ねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部の外周面に下方に向って拡径するテーパーを付けると共に、外筒部の内周面に周方向に間隔を存して複数の歯溝を形成するものにおいて、
    各歯溝を溝深さが外筒部の下端から上方に向って次第に深くなるように形成すると共に、
    環状凹部の内容積を環状凹部に押し込まれる前記2枚重ねのワークの体積よりも大きく設定する、
    ことを特徴とするピアスナット。
  2. 2枚重ねのワークに上方から打ち込むピアスナットと、
    前記ピアスナットを前記2枚重ねのワークに結合させるピアスダイからなるピアスナットシステムであって、
    前記ピアスナットはねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部の外周面に下方に向って拡径するテーパーを付けると共に、外筒部の内周面に周方向に間隔を存して複数の歯溝を形成するものにおいて、
    各歯溝を溝深さが外筒部の下端から上方に向って次第に深くなるように形成すると共に、
    環状凹部の内容積を環状凹部に押し込まれる前記2枚重ねのワークの体積よりも大きく設定され、
    前記2枚重ねのワークの孔明け孔に前記内筒部が嵌合されるボス部が、前記ピアスダイの上面に突設され、前記ボス部上端面には径方向外方に向う下り勾配が設けられている
    ことを特徴とするピアスナットシステム。
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