以下、本発明の遊技機を実施例に基づいて更に詳細に説明する。図1は、実施例に係るパチンコ機の全体構成を図示したブロック図である。
図示のパチンコ機は、遊技動作を中心的に制御する主制御基板1と、表示装置8の動作を制御する図柄制御基板2と、音声的な遊技演出を実現する音声制御基板3と、ランプ類を点滅動作させるランプ制御基板4と、遊技球を払出す払出制御基板5と、払出制御基板5に制御されて遊技球を発射する発射制御基板7と、AC24Vを受けて装置各部に直流電圧を供給する電源基板6とを中心に構成されている。
主制御基板1、図柄制御基板2、音声制御基板3、ランプ制御基板4、払出制御基板5は、それぞれワンチップマイコンを備えるコンピュータ回路で構成されており、サブ制御基板2〜5は、主制御基板1からの制御コマンドに基づいて個別的な制御動作を実現している。なお、図柄制御基板2は、主制御基板1と共に、外部接続端子を通して、遊技ホールを一元管理しているホールコンピュータに接続されている。そして、主制御基板1においてRAMクリア処理が生じる毎に、図柄制御基板2が、その事態をホールコンピュータに通知するようになっている。そのため、営業中にRAMクリア処理が生じるような異常事態はホールコンピュータの側で集中的に管理できることになる。
図2は、主制御基板1の回路構成を示すブロック図である。図示の通り、主制御基板1は、ワンチップマイコンからなるCPU回路1aと、CPU動作クロックCLKの整数倍の周波数であるクロック信号Φ0を発生するシステムクロック発生部1bと、CPUからのアドレス信号に基づき各部のチップセレクト信号を生成するデコード回路1cと、CPUからのデータを出力するための出力ポート回路1dと、外部データをCPUが取り込むための入力ポート回路1eと、各サブ制御基板2〜5に制御コマンドを出力する出力駆動回路1fと、遊技盤各部のスイッチ類のON/OFF状態を入力するスイッチ入力回路1gとを中心に構成されている。なお、CPU回路1aには、Z80CPU(Zilog社)相当品のCPUコアが内蔵されている。
図3〜図5は、主制御基板1の制御プログラムを示すフローチャートである。主制御基板1の制御プログラムは、電源投入後に実行され通常は割込み許可処理(ST13)で終わるシステムリセット処理プログラム(図3)と、所定時間毎に起動されるタイマ割込み処理(Maskable Interrupt禁止可能割込み)プログラム(図4)と、電源電圧が所定値を下回るとNMI(Non Maskable interrupt)信号によって駆動されてCPUのレジスタ値をバックアップするNMI処理プログラム(図6)とで構成されている。
以下、図3を参照しつつシステムリセット処理プログラム(メインルーチン)について説明する。このメインルーチンが開始されるのは、電源がON状態になる場合の他に、プログラムの暴走によってウォッチドッグタイマの計数値が所定値に達してCPUがリセットされた場合もある。なお、不正回路の搭載によってCPUが違法にリセットされる可能性も考えられる。また、電源がON状態になる場合にも2つのパターンがあり、停電状態からの復旧時とパチンコホールの開店時とが考えられる。
図3に示すメインルーチンでは、最初に、Z80CPUは、自らを割込み禁止状態に設定し、Z80CPUコアを含むワンチップマイコンの各部を初期設定する(ST1)。また、CPUは自らを割込みモード2に設定した後(ST2)、RAMクリアスイッチをチェックする(ST3)。
RAMクリアスイッチとは、営業終了や営業開始に当ってRAM領域をクリアするためのスイッチである。営業開始時を想定すると、前日の遊技状態は、特別な処理をしない限りNMI処理プログラム(図6)によって保存され、そのRAMの内容がバックアップ電源で保持されている。そのため、例えば、前日の営業終了時が大当りゲームの途中であったような場合には、営業開始時に係員がRAMクリアスイッチをON状態として電源投入して、RAMクリアスイッチをON状態とするのである。但し、通常は、煩雑であるのでRAMクリアスイッチが操作されることはなく、OFF状態のままで電源投入となる。
したがって、通常は、ステップST3の判定に続いて、バックアップフラグBFLの内容が判定される(ST4)。バックアップフラグBFLとは、NMI処理において退避されていたバックアップデータが、元の状態に復帰されているか否かを示すデータであり、この実施例では、図6のステップST74の処理でバックアップフラグBFLが5AHとされ、図3のステップST11の処理においてゼロクリアされるようになっている。
今、RAMクリアスイッチをON操作しない通常の電源投入時や、停電状態からの復旧時であれば、バックアップフラグBFL=5AHであるから、次に、チェックサム処理が行なわれる(ST5)。ここでチェックされるサム値(SUM番地の値)は、NMI処理(図6)において計算されて格納されたものであり(ST75)、電源遮断後もバックアップ電源によって保持されている。したがって、異常に速く電源電圧が降下したような場合を除き、ステップST5の処理において、再度、RAM領域のデータを8ビット加算して得られた合計値は、SUM番地の値と一致することになる。
そして、再計算(8ビット加算)した合計値とSUM番地の値とが一致する場合には、SP記憶エリア(図6(b))から読み出した16ビットデータを、CPUのスタックポインタSPに書き込む(ST6)。次に、停電時のNMI処理においてバックアップされていたRAMエリアのデータを読み出して、バックアップ復帰コマンドを作成する(ST7〜ST9)。
ステップST7に示す、払出制御基板用バックアップ復帰コマンド作成処理とは、エラー信号を再チェックして、遊技機の現状に合わせた制御コマンドを払出制御基板5に出力するための準備動作を意味する。例えば、停電前に下皿が満杯であるエラー状態であった場合、バックアップデータによってエラー状態が保存されているが、停電によって遊技者が遊技球を回収する可能性も高いので、改めてエラー信号の現状を確認しているのである。
また、図柄制御基板用やランプ制御基板用のバックアップ復帰コマンド作成処理(ST8、ST9)とは、停電前の遊技機が、大当り状態であった場合や、当選確率が増加しているいわゆる確変状態であった場合もあるので、そのような場合には、動作状態に合わせた表示装置8の背景色を設定したり、効果音を発生できるようにするための処理である。
ステップST8〜ST9の処理が終われば、POP命令を実行して、スタックエリアから各レジスタの値を復帰させる(ST10)。この処理によって、電源遮断時からの復帰処理は一応完了するので、そのことを示すべくバックアップフラグBFLをゼロクリアする(ST11)。そして最後に、電源遮断前が割込み禁止状態であったか否かを、復帰されたAFレジスタの値に基づいてチェックして(ST12)、割込み禁止状態のままで処理を終えるか、或いは、割込み許可状態に戻した(ST13)後に処理を終える。なお、RET命令が実行されることによって、スタック領域にPUSH処理されていた中断時のPC(プログラムカウンタ)の値が復元され、電源遮断前の処理に戻ることになる。
一方、RAMクリアスイッチがON状態であるか、バックアップフラグBFL=0であるか、或いは、チェックサム処理が異常を示す場合には、ワンチップマイコンに内蔵されているRAMエリアをゼロクリアする(ST14)。このステップST14の処理が実行されるのは、RAMクリアスイッチをON状態にした電源投入時や、何らかのトラブルによってSUM番地の値と再計算値とが不一致となる場合のほか、CPUの暴走などによってウォッチドッグタイマが作動してCPUが強制リセットされた場合や、違法行為によってCPUが強制リセットされた場合が考えられる。
上記いずれの場合にもステップST14の動作によって、それまで(又は前日)の遊技状態が全て消滅するので、CPUが暴走したり、昨日大当りゲーム中に遊技ホールの営業を終了したような場合にも、初期状態に復帰した状態で遊技が開始されることになる。
但し、この実施例では、特定のCT番地の値を大当り用カウンタとして使用しているので、この大当り用カウンタCTについても、それまでの値に関係なく強制的にゼロクリアされることになる。そのため、遊技ホールの営業中に、このRAMクリア処理を実行させるべく、不正にCPUをリセット状態にする不正遊技の可能性も考えられる。そのような場合には、RAMクリアスイッチ=OFF、バックアップフラグBFL=0となるので、不正遊技者の意図通りにRAMクリア処理が行われる(ST14)。しかし、この実施例では、その後、各サブ基板に対して、主制御基板1でRAMクリア処理を行なったことを制御コマンド(RAMクリアコマンド)で通知すると共に(ST15)、各サブ制御基板で対抗処理を行なうことで、不正遊技者が不当な利益を得ることを防止している。なお、この点は更に後述する。
何れにしても主制御基板1では、RAMクリアコマンドの送信の後、CPUを割込み禁止状態(DI)に設定し(ST16)、大当り用カウンタCTの初期値を決定するサブカウンタBGNの値を更新する(ST17)。なお、サブカウンタBGNの値は、大当り用カウンタCTと同じ数値範囲(0〜MAX−1)を循環するように更新される。また、このサブカウンタBGNの更新は、CPUが割込みを受け付けない状態(DI)で行なわれるので、サブカウンタBGNの更新処理中であって、流動的なサブカウンタBGNの値がタイマ割込み処理において使用されることがない。
次に、CPUを割込み許可状態(EI)に戻した状態で、外れ図柄用カウンタの値が更新される。外れ図柄用カウンタは、図4の特別図柄処理(ST44)における大当り判定において、外れ状態となった場合にどのような態様の外れゲームを演出するかを決定するものである。なお、外れ図柄用カウンタの更新とサブカウンタBGNの更新は、図3に示すように無限ループ状に実行されるので、各カウンタの値は、十分なランダム性を有する乱数値として使用できる。
図4は、図3に示すメインルーチンの無限ループ処理(ST8)の間に2msec毎に生じるタイマ割込みINT(Maskable Interrupt禁止可能割込み)の割込み処理プログラムの内容を示すフローチャートである。タイマ割込みが生じると、各レジスタの内容がスタック領域に退避された後(ST20)、最初に乱数作成処理が行なわれる(ST21)。乱数作成処理とは、普通図柄処理ST29や特別図柄処理ST34における抽選動作で使用される当り用カウンタRGや大当たり用カウンタCTの更新処理を含んでいる。
図5は、この乱数作成処理について、具体的内容を例示したものである。図5(a)に示すように、乱数作成処理(ST21)は、当り判定用乱数として機能する当り用カウンタRGの更新処理(ST40)と、当り図柄を決定するための当り図柄用乱数作成処理(ST41)と、初期値乱数として機能するサブカウンタBGNの更新処理(ST42)と、大当り判定用乱数として機能する大当り用カウンタCTの更新処理(ST43)と、大当り図柄を決定するための大当り図柄用乱数作成処理(ST44)とで構成されている。
初期値乱数として機能するサブカウンタBGNは、図3のステップST17において無限ループ状に更新されているが、タイマ割込み処理でも改めてインクリメント(+1)した後、インクリメント後の値が数値範囲(0〜MAX−1)を超えた場合には補正を施して所定の数値範囲内に収めている(ST42)。また、大当り判定用乱数作成処理としては、図5(c)に示すように、先ず、大当り用カウンタCTをインクリメントした後(ST50)、所定の数値範囲を越えたか否かが判定され(ST51)、大当り用カウンタCTの値がMAXに一致したら(CT=MAX)、その値をゼロに戻している(ST52)。
次に、大当り用カウンタCTの値が初期値STARTに達したか否かを判定して(ST53)、数値範囲を一周して初期値STARTに達していたら、ステップST22の処理で更新されているサブカウンタBGNの値を大当り用カウンタCTに書き込む(ST54)。また、サブカウンタBGNの値を新たな初期値としてSTART番地に書き込んで処理を終える(ST55)。なお、当り判定用乱数作成処理は、図5(b)に示す通りであり(ST60〜ST62)、この当り用カウンタRGの値は、遊技球がゲートを通過した場合に、普通図柄処理(ST29)における抽選動作に使用される。
以上のようにして乱数作成処理(図4のST21)が終わると、各遊技動作の時間を管理しているタイマについてタイマ減算処理が行なわれた後(ST22)、図柄始動口やゲートの検出スイッチを含む各種スイッチ類の信号が入力され記憶される(ST23)。なお、ステップST22の処理で減算される各タイマは、電動チューリップや大入賞口の開放時間やその他の遊技演出時間を管理するためのものである。
続いて、この段階で生成されているコマンドを該当するサブ制御基板に伝送した後(ST24)、エラー管理処理が行われる(ST25)。エラー管理処理は、遊技球の補給が停止したり、遊技球が詰まっていないかなど、機器内部に異常が生じていないかの判定である。次に、払出制御基板向けの制御コマンドを作成した後(ST26)、上記の各処理で生成されている制御コマンドを該当するサブ制御基板に伝送する(ST27)。
次に、現在が当り中の動作モードでないことを条件に、普通図柄処理を行う(ST29)。普通図柄処理とは、電動チューリップなど、普通電動役物を作動させるか否かの判定を意味する。具体的には、ステップST23のスイッチ入力結果によって遊技球がゲートを通過していると判定された場合に、乱数生成処理(ST21)で更新された当り用カウンタRGを、当り当選値と対比して行われる。そして、対比結果が当選状態であれば当り中の動作モードに変更する。また、当り中となれば、電動チューリップなど、普通電動役物の作動に向けた処理を行う(ST31)。
続いて、必要な制御コマンドを該当するサブ制御基板に伝送し(ST32)、現在が大当り中の動作モードでないことを条件に、特別図柄処理を行う(ST34)。特別図柄処理とは、大入賞口など、第1種特別電動役物を作動させるか否かの判定である。具体的には、ステップST23のスイッチ入力結果によって遊技球が図柄始動口を通過していると判定された場合に、乱数生成処理(ST21)で更新された大当り用カウンタCTを、大当り当選値Hitと対比して行われる。そして、対比結果が当選状態であれば大当り中の動作モードに変更する。また、大当り中となれば、大入賞口など第1種特別電動役物の作動に向けた処理を行う(ST36)。
その後、上記の各処理で生成された制御コマンドを該当するサブ制御基板に伝送する。例えば、特別図柄処理(ST34)が実行された場合には、その抽選結果に係わらず、制御コマンドの伝送を契機として、表示装置8では図柄変動動作が開始されることになる。何れにしてもステップST37の処理が終われば、ステップST20の処理で退避しておいたレジスタを復帰させて(ST38)、割込み処理を終える。その結果、通常は、割込み処理ルーチンからメインルーチンの無限ループ処理(ST16〜ST19)に戻ることになる。
図6は、停電などによって電源電圧が降下した際に生じるNMIの割込み処理プログラムの内容を示すフローチャートである。この割込み処理では、先ず、各レジスタ(AF,I,BC,DE,HL)の内容がスタックエリアにPUSHされる(ST70)。次に、ステップST70におけるPUSH命令実行後のスタックポインタSPの値が、RAMのSP記憶エリアに保存される(ST71)。図6(b)には、SP記憶エリアを図示している。
続いて、現在、賞球を払出し中の場合もあるので、賞球計数スイッチの状態を検出して記憶する(ST72)。なお、所定時間待機するのは(ST73)、払出し中の賞球が移動する時間を考慮したものである。その後、バックアップフラグBFLのRAMエリアにフラグ値5AHを記憶した後(ST74)、RAMの使用領域について順番に8ビット加算演算を行い、その加算結果(サム値)をSUM番地に記憶する(ST75)。
そして、RAMのアクセスを禁止して電源電圧が降下してCPUが非動作状態になるのを待つ(ST76)。その後、CPUは非動作状態となるが、RAMにはバックアップ電源が供給されているので、バックアップされたデータがそのまま保存され続ける。すなわち、電源が完全に遮断された後もRAMエリアの内容は現状のまま維持される。そして、データバックアップ処理が正常に終了し、且つその後も正常な状態に維持されているか否かは、SUM番地のサム値と、電源投入後のサム値の再計算結果との対比によって確認される(図3のST5参照)。
図7(a)は、サブ制御基板のうち、ランプ制御基板と音声制御基板における制御コマンドの受信処理を説明するフローチャートである。なお、各サブ制御基板には制御コマンド伝送時に、ストローブ信号STBが追加的に伝送されており、このストローブ信号STBの伝送を契機にして、図7(a)に示すデータ受信割込み処理(IRQ INT)が開始される。
受信割込みでは、レジスタが退避された後、コマンド入力ポートから制御コマンドが入力される(STIN1)。次に、入力された制御コマンドを解析して、それがRAMクリアコマンドか否かが判定される(STIN2)。なお、RAMクリアコマンドとは、主制御基板においてRAMがクリアされたことを示す制御コマンドであり、図3のステップST15のタイミングで伝送される。
ステップSTIN2の判定で、RAMクリアコマンドでないと判定された場合には、入力した制御コマンドを受信バッファに記憶する(STIN8)。受信バッファはリングバッファ構造になっており、書込み用ポインタWR POINTの指示する場所に制御コマンドを格納する。そして、書込み用ポインタWR POINTの値を、リングバッファ的に循環させるべく更新する(STIN9)。一方、ステップSTIN2の判定で、RAMクリアコマンドを受信したと判定された場合には、先ず、サブ制御基板におけるRAMエリアに初期値(例えばゼロ)を設定する(STIN3)。
従来の遊技機では、主制御基板1と特定のサブ制御基板とで同期してRAMエリアをクリアするという着想はなかったので、主制御基板1においてウォッチドッグタイマに基づくリセット動作が生じて遊技制御動作が初期状態に戻っても、サブ制御基板ではそれまでの遊技状態が維持され、その結果、遊技制御に不整合が生じる可能性があった。
しかし、本実施例の構成によれば、主制御基板1の遊技制御動作が初期状態に戻れば、ランプ制御基板と音声制御基板ではRAMクリア処理が行われるので遊技制御の不整合は生じない。もっとも、払出制御基板5には、RAMクリアコマンドは送信されず、RAMクリア処理が行われないので、遊技球の発射が禁止されたり、動作中の賞球動作が、主制御基板1のCPUの暴走などのために消滅するおそれはない。
以上の通り、ランプ制御基板4と音声制御基板3では、RAMクリアコマンドの受信に基づいてRAMエリアがクリアされ(STIN3)、その後、この制御コマンドの受信回数NUMがインクリメントされる(STIN4)。そして、インクリメント後の受信回数NUMがNUM=1であれば、RAMクリア報知処理を行い(STIN6)、NUM>1であれば例外報知処理を行う(STIN7)。ここで、NUM>1となるのは、技術的にみて本来は殆どあり得ない主制御基板1のCPUの暴走の他には、違法行為によって主制御基板1のCPUを強制的に暴走させるか、他の方法によって強制的にCPUをリセットさせた場合などであると考えられる。なお、変数NUMはサブ制御基板の電源投入時にゼロに設定されているのは勿論である。
ステップSTIN6のRAMクリア報知処理の内容は、適宜に設定されるが、この実施例では、ランプ制御基板4及び音声制御基板3は、遊技機が未使用状態に出力される「客待ち状態のランプ表示」と「客待ち状態の音声出力(消音を含む)」の動作を開始させている。なお、RAMクリア報知処理の具体的内容に係わらず、ステップSTIN6の処理は直ちに終了し、サブ制御基板における本来の動作に復帰する。また、ステップSTIN6の処理で開始されたRAMクリア報知処理の動作は、所定時間経過するか、次の制御コマンドを受信した段階で終了する。
例外報知処理(STIN7)の具体的内容も特に限定されないが、例えば、ランプ消灯で且つ消音の状態とすることが考えられる。但し、NUM>1となるのは違法行為を原因としている可能性も高いので、ランプを派手に点滅させると共に、大声で「異常はっせーい!!」と出力することが考えられる。例外報知処理の具体的内容に係わらず、例外報知状態(STIN7)は、30秒程度持続させるのが好適であり、その結果、異常状態の発生が周知されると共に係員の適切な対応が可能となる。このように、例外報知処理の実行が完了するまでに主制御基板1から送信された制御コマンドは無視されることになる。なお、例外報知状態(STIN7)を所定時間継続させる構成に代えて、ステップSTIN7の処理を報知動作の開始処理に止め、直ちに次の処理に移行させても良い。但し、この場合には、所定時間後に報知動作を終了させる制御コマンドを伝送させるなどの処置が必要となる。
なお、上記の説明では音声制御基板3とランプ制御基板4のRAMクリア状態を報知したが、この動作を省略しても良いのは勿論である。また、上記の例ではカウンタを使用したが、カウンタに代えて、RAMが既にクリアされたことを示すRAMクリア済フラグを設けても良い。この場合にはRAMエリアのクリア処理(STIN3)を条件に、前記RAMクリア済フラグがオンに設定される。そして、RAMクリアコマンド受信の度に、RAMクリア済フラグを確認し、すでにオン状態に設定されている場合は、例外報知処理(STIN7)を行い、一方、オフの場合は、RAMクリア報知処理(STIN6)を行うことが考えられる。このとき、RAMクリア済フラグを複数ビット(例えば、8または16ビット)で構成するのが好適であり、オンに設定する設定値も、瞬停、ノイズなど例外事態によってフラグ内容が変更されないよう配慮した構成が好ましい。
また、受信回数NUMの値によって報知内容を異ならせるのも好適である。例えば、1<NUM<所定値1の場合は、第1の例外報知処理を実行し、所定値1<NUM<所定値2の場合は、第2の例外報知処理を実行し、所定値2<NUM、の場合は第3の例外報知処理を実行するように段階的なものにすれば良い。また、例外事態が発生すると外部信号を出力するように構成しても良い。この場合も、受信回数NUMの値によって出力する信号の種別や出力時間などを異ならせても良い。
なお、例外報知処理を実行するか否かを受信した制御コマンドの履歴から決定しても良い。例えば、RAMクリアコマンドの後、最初に受信した変動パターンコマンドが大当り変動パターン(主制御基板での大当り抽選に当選した状態)を指定するコマンドである場合、または、最初に受信した停止図柄指定コマンドから大当りと判定される場合(主制御基板での大当り抽選に当選した状態であると判定される場合)に、例外報知処理を行うように構成しても良い。
図7(b)は、サブ制御基板のうち、図柄制御基板2における制御コマンドの受信処理を説明するフローチャートである。図柄制御基板2でもRAMクリアコマンドを受信すると、RAMクリア報知処理の動作を開始させる(STIN3’)。また、受信回数NUMをインクリメントした後(STIN4’)、NUM>1となれば、ホールコンピュータにその旨を連絡して割込み処理を終える(STIN6’)。何れにしても受信割込みの処理は直ちに終了するので、主制御基板1からのその後の制御コマンドを受信し損なうことはない。なお、ステップSTIN3’で開始されたRAMクリア報知処理の動作は、所定時間経過するか、その後、新規の制御コマンドを受信すれば終了されるようになっている。
続いて、以上の図3〜図7の動作内容を踏まえて、違法に主制御基板のRAMがクリアされた場合の動作を確認する。図8は、この動作を説明するためのタイムチャートである。CPUが強制的にリセットされると(t1)、図3のステップST14のRAMクリア処理が実行され(t2〜t3)、次に、RAMクリアコマンドが図柄制御基板2とランプ制御基板4と音声制御基板3に伝送される(t4)。
すると、図柄制御基板2では、RAMクリア報知処理が開始され(STIN3’)、ランプ制御基板と音声制御基板では、RAMクリア処理(STIN3)と例外報知処理(STIN7)が実行される。なお、図8の異常報知動作は、RAMクリア処理と例外報知処理を含んだものである。
このような動作中、違法遊技者は、最適なタイミングで図柄始動口の入賞状態を発生させると思われる(t4)。すると、主制御基板1では、特別図柄処理(ST34)において大当り抽選に当選するので、これに対応する制御コマンドをサブ制御基板に伝送する(ST37)。
図8では伝送される制御コマンドを変動パターンコマンドと表記しているが、図柄制御基板2は、この制御コマンドを受信すると、RAMクリア報知動作を中断して図柄変動動作を開始する。これは、極めて稀には、健全な遊技中に主制御基板のCPUが暴走してRAMクリア動作が発生し、その後直ちに図柄始動口に遊技球が入賞することもあるので、かかる事態の発生を考慮したためである。すなわち、健全に遊技しているにも係わらず、図柄始動口への入賞後に図柄変動が開始されないと健全な遊技者に不信感を与えてしまうからである。
このように、違法行為によっても図柄変動動作は開始するが、一方、ランプ制御基板や図柄制御基板では、この段階では例外報知処理中であり(図7のSTIN7)、割込み禁止状態ゆえに伝送された制御コマンドは無視される。すなわち、依然として例外状態の発生を報知したままである。また、遊技ホールを管理しているホールコンピュータにはタイミングt1の段階で異常事態の発生が連絡されているので、これらの情報に基づいて係員は適切な処置をとることが可能となる。したがって、違法な遊技によって利益を得ることはできない。
なお、図柄制御基板2は、RAMクリアコマンドの受信後、最初に受信した変動パターンコマンドが大当り変動パターンを指定するコマンドである場合、または、最初に受信した停止図柄指定コマンドから大当りと判定される場合には例外報知処理をおこなうように構成しても良い。
続いて、本発明が好適に適用される弾球遊技機について確認的に説明する。図図9は、本実施例のパチンコ機22を示す斜視図であり、図10は、同パチンコ機22の側面図である。なお、パチンコ機21は、カード式球貸し機22に電気的に接続された状態で、パチンコホールの島構造体の長さ方向に複数個が配設されている。
図示のパチンコ機21は、島構造体に着脱可能に装着される矩形枠状の木製外枠23と、外枠23に固着されたヒンジHを介して開閉可能に枢着される前枠24とで構成されている。この前枠24には、遊技盤25が裏側から着脱自在に装着され、その前側には、ガラス扉26と前面板27とが夫々開閉自在に枢着されている。
前面板27には発射用の遊技球を貯留する上皿28が装着され、前枠24の下部には、上皿28から溢れ出し又は抜き取った遊技球を貯留する下皿29と、発射ハンドル30とが設けられている。発射ハンドル30は発射モータと連動しており、発射ハンドルの回動角度に応じて動作する打撃槌31(図12参照)によって遊技球が発射される。
上皿28の右部には、カード式球貸し機22に対する球貸し操作用の操作パネル32が設けられ、この操作パネル32には、カード残額を3桁の数字で表示するカード残額表示部32aと、所定金額分の遊技球の球貸しを指示する球貸しスイッチ32bと、ゲーム終了時にカードの返却を指令する返却スイッチ32cとが設けられている。ガラス扉26の上部には、大当り状態を示す大当りLEDランプP1が配置されている。また、この大当りLEDランプP1に近接して、補給切れ状態や下皿の満杯状態を示す異常報知LEDランプP2,P3が設けられている。
図11に示すように、遊技盤25には、金属製の外レールと内レールとからなるガイドレール33が環状に設けられ、その内側の遊技領域25aの略中央には、表示装置8(例えば、液晶カラーディスプレイ、CRTディスプレイ、ドットマトリクス、7セグメントLEDなどを使用)が配置されている。また、遊技領域25aの適所には、図柄始動口35、大入賞口36、複数個の普通入賞口37(大入賞口36の左右に4つ)、2つの通過口であるゲート38が配設されている。これらの入賞口35〜38は、それぞれ内部に検出スイッチを有しており、遊技球の通過を検出できるようになっている。
表示装置8は、大当り状態に係わる特定図柄を変動表示すると共に背景画像や各種のキャラクタなどをアニメーション的に表示する装置である。この表示装置8は、中央部に特別図柄表示部Da〜Dcと右上部に普通図柄表示部39を有している。普通図柄表示部39は普通図柄を表示するものであり、ゲート38を通過した遊技球が検出されると、表示される普通図柄が所定時間だけ変動し、遊技球のゲート38の通過時点において抽出された抽選用乱数値により決定される停止図柄を表示して停止するようになっている。
図柄始動口35は、左右1対の開閉爪35aを備えた電動式チューリップで開閉されるよう例えば構成され、普通図柄表示部39の変動後の停止図柄が当り図柄を表示した場合には、開閉爪35aが所定時間だけ開放されるようになっている。図柄始動口35に遊技球が入賞すると、特別図柄表示部Da〜Dcの表示図柄が所定時間だけ変動し、図柄始動口35への遊技球の入賞タイミングに応じた抽選結果に基づいて決定される停止図柄で停止する。
大入賞口36は、例えば前方に開放可能な開閉板36aで開閉制御されるが、特別図柄表示部Da〜Dcの図柄変動後の停止図柄が「777」などの大当り図柄のとき、「大当り」と称する特別遊技が開始され、開閉板36aが開放されるようになっている。大入賞口36の内部に特定領域36bがあり、この特定領域36bを入賞球が通過すると、遊技者に有利な特別遊技が継続される。
大入賞口36の開閉板36aが開放された後、所定時間が経過し、又は所定数(例えば10個)の遊技球が入賞すると開閉板36aが閉じる。このとき、遊技球が特定領域36bを通過していない場合には特別遊技が終了するが、特定領域36bを通過していれば、最大で例えば15回まで特別遊技が継続され、遊技者に有利な状態に制御される。さらに、変動後の停止図柄が特別図柄のうちの特別状態発生図柄であった場合には、特別状態を発生させる。
特別状態の例としては、次のいずれかが好適である。すなわち、(1)非特別状態の場合に比べて、特別図柄表示部の図柄変動後の停止図柄が「777」などの大当り図柄となる確率を高くする特別図柄高確率状態や、(2)非特別状態の場合に比べて、遊技球がより多く入賞し易いように大入賞口の開放時間を長くする大入賞口開放時間延長状態や、(3)非特別状態の場合に比べて、遊技球がより多く入賞し易いように大入賞口の開放回数を増加する大入賞口開放回数増加状態や、(4)非特別状態の場合に比べて、遊技球がより多く入賞し易いように大入賞口の開口量を増大する大入賞口開口量増大状態や、(5)非特別状態の場合に比べて、普通図柄表示部の図柄変動後の停止図柄が当り図柄となる確率を高くする普通図柄高確率状態や、(6)非特別状態の場合に比べて、遊技球がより多く入賞し易いように電動チューリップの開放時間を長くする電動チューリップ開放時間延長状態や、(7)非特別状態の場合に比べて、遊技球がより多く入賞し易いように電動チューリップの開放回数を増加する電動チューリップ開放回数増加状態や、(8)非特別状態の場合に比べて、遊技球がより多く入賞し易いように電動チューリップの開口量を増大する電動チューリップ開口量増大状態や、(9)非特別状態の場合に比べて、特別図柄の変動時間を短縮する特別図柄変動短縮状態や、(10)非特別状態の場合に比べて、特別図柄の有効停止ラインを増加する有効停止ライン増加状態や、(11)非特別状態の場合に比べて、普通図柄の変動時間を短縮する普通図柄変動短縮状態などが考えられる。
なお、これらのうちのいずれか複数を組合せても良く、また、発生した特別状態は、所定条件の成立で終了させるのが好ましい。ここで所定条件とは、所定回の特別図柄表示部の図柄変動、所定回の普通図柄表示部の図柄変動、所定時間の経過、普通図柄表示部の図柄変動後に所定図柄を停止表示した場合、特別図柄表示部の図柄変動後に所定図柄を停止表示した場合、所定の入賞口に遊技球が入賞した場合、所定のゲートを遊技球が通過した場合などが典型的である。
図12に示すように、前枠24の裏側には、遊技盤25を裏側から押さえる裏機構板40が着脱自在に装着されている。この裏機構板40には開口部40aが形成され、その上側に賞球タンク41と、これから延びるタンクレール42とが設けられている。裏機構板40の側部には、タンクレール42に接続された払出装置43が設けられ、裏機構板40の下側には払出装置43に接続された通路ユニット44が設けられている。払出装置43から払出された遊技球は、通路ユニット44を経由して上皿排出口28a(図9)から上皿28に払出されることになる。
裏機構板40の開口部40aには、遊技盤25の裏側に装着された裏カバー45と、入賞口35〜37に入賞した遊技球を排出する入賞球排出樋(不図示)とが嵌合されている。この裏カバー45に装着されたケースCA1の内部に主制御基板1が配設され、その前側に図柄制御基板2が配設されている(図23参照)。主制御基板1の下側で、裏カバー45に装着されたケースCA2の内部にランプ制御基板4が設けられ、隣接するケースCA3の内部に音声制御基板3が設けられている。
これらケースCA2,CA3の下側で、裏機構板40に装着されたケースCA4の内部には、電源基板6と払出制御基板5が設けられている。この電源基板6には、電源スイッチ53とRAMクリアスイッチ54とが配置されている。これら両スイッチ53,54に対応する部位は切欠かれ、両スイッチを指で同時に操作可能になっている。発射ハンドル30の後側に装着されたケースCA5の内部には、発射制御基板7が設けられている。そして、これらの回路基板1〜7は夫々独立して構成され、電源基板6と発射制御基板7を除く制御基板2〜6には、ワンチップマイコンを備えるコンピュータ回路が搭載されている。
以上、本発明の一実施例について具体的に説明したが、本発明の遊技機は、上記した各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。例えば、上記の実施例では、主制御基板と複数のサブ制御基板とをそれぞれ別の基板構成として、主制御基板からの制御コマンドを一方向通信によって伝送したが、例えば、図14の構成も含め、任意の組合せ構成が可能である。図14では、矢印が制御コマンドなどの信号の伝送方向を示しており、例えば、図14(b)のように、確認信号(ACK)を返送するようにしても良い。また、音声制御基板を独立した回路基板に構成する必要はなく、図14(b)(c)のように、他の制御部との複合基板としても良い。
また、本発明の適用は、上記した各構成のパチンコ機に限定されるものではない。例えば、主制御基板とサブ制御基板とで構成され、ナビゲーション機能を備えた回胴遊技機にも好適に適用できる。ここで、ナビゲーション機能とは、回胴遊技機の回転リールの停止操作タイミングや停止操作すべき回転リールを正しく教示する機能である。このナビゲーション機能はサブ制御基板によって実現されており、ナビゲーションを行うか否かは、ナビゲーション抽選部60においてランダムに決定されている。
より具体的には、ナビゲーション抽選部60に関連して、乱数列を発生させる乱数生成部61と、当選確率が複数段階(=N)に区分された複数(=N)の抽選テーブル62と、複数の抽選テーブルの何れを使用するかを決定するテーブル選択部63とを備えている。なお、一般には、乱数生成部61を除いた部分は、上記した機能を発揮するようソフトウェア的に構成されている。
上記のような構成を備える回胴遊技機において、電源投入後のCPUの電源リセット状態では、当選確率が最高に設定された抽選テーブル63が選択されるよう、テーブル選択部62が設定されているのが通例であり、その後、主制御基板から送信される制御コマンドによって、改めて所定の抽選テーブルが選択されるようになっている。このような動作によって、主制御基板とサブ制御基板での当選確率が整合し、大当り状態が発生しやすい遊技機ではナビゲーション機能も高頻度で実行されて遊技者に大きな利益を与えることになる。
しかしながら、上記のような動作を悪用して、サブ制御基板のCPUを違法に強制リセットするような不正遊技も懸念されるところである。そこで、この実施例では、リセット信号の発生をカウントして、カウント値が1でない場合(>1)には、駆動制御部65の動作によって異常事態の発生を視覚的、聴覚的に報知するようにしている。このような異常報知を行うことによって違法行為を直ちに発見することができる。なお、カウント動作を実現するには、ハードウェア的なカウント64を設けるか、プログラムで使用されることのないレジスタ(例えばZ80CPUならインデックスレジスタIX,IYを活用するのが簡易的である。なお、カウント動作に限定されず、最初のCPUリセットで特定値を記憶する記憶部(フリップフロップやレジスタなど)でも良いのは勿論である。
また、本発明は、遊技者の利益に大きく関係する異常事態の発生においても、遊技操作や払出動作を禁止することなく、有効な報知をすることを趣旨とするものであるから、各種の変形態様も考えられる。遊技者の利益に大きく関係するものとしては、上記に例示したものに加えて、大当りゲーム終了後に確率変動モードにするか否かの判定割合や、電動チューリップや大入賞口の開放時間を延長するか否かの判定割合、大当りゲームにおいて大入賞口の開放回数を増加させるか否かの判定割合などが考えられ、これらの判定割合が遊技動作中に不自然に変更された場合にも報知することは有効である。なお、報知する手段としては、実施例で説明したような音声報知、ランプ報知の他、適宜な表示装置を利用しても良い。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどに限らず、ベルトやチェーンや回転体などであっても良い。