JP4294202B2 - 摩擦撹拌接合法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、アルミニウム材(その合金材を含む、以下同じ)等の金属材を突合せ接合する摩擦撹拌接合法に関し、詳述すれば、例えば、自動車、鉄道車両、船舶等のボディパネルを製作する際に用いられ、あるいは自動車のサスペンションアームやエンジンマウントを製作する際に用いられる摩擦撹拌接合法に関する。
【0002】
【従来の技術】
摩擦撹拌接合法は、固相接合法の範疇に入り、接合部材である金属材の種類に制限を受けない、接合時の熱歪みによる変形が少ない等の利点を有し、近年、様々な構造物の接合手段として用いられている。
【0003】
この摩擦撹拌接合の接合方法を図5に基づいて説明する。同図において、(101)(102)は2個の平板状の金属接合部材であって、両接合部材(101)(102)のうち一方の接合部材(101)は他方の接合部材(102)よりも肉厚が厚肉に形成されている。ここでは、説明の便宜上、この2個の接合部材(101)(102)において、厚肉のもの(101)を第1接合部材、薄肉のもの(102)を第2接合部材ということにする。これら両接合部材(101)(102)は、表面同士が面一に連なる態様にして幅方向の端面同士が突き合わされており、そして両接合部材(101)(102)の裏面に当てられた裏当て(105)によってこの状態に保持されている。
【0004】
同図において、(120)は摩擦撹拌接合用の接合工具である。この接合工具(120)は、径大の円柱状回転子(121)と、該回転子(121)の端面(121a)の回転軸線(Q')上に一体に突設された径小のピン状プローブ(122)とを備えている。前記回転子(121)の端面(121a)は平坦面からなる。
【0005】
この接合工具(120)を用い、回転子(121)を回転させることによりプローブ(122)を回転させながら、該プローブ(122)を突合せ部(103)に両接合部材(101)(102)の表面側から挿入するとともに、回転子(121)の端面(121a)を両接合部材(101)(102)の表面に圧接させる。そしてこの状態でプローブ(122)を突合せ部(103)に沿って両接合部材(101)(102)に対して相対的に移動させる。
【0006】
プローブ(122)の回転により発生する摩擦熱と、回転子(121)の端面(121a)と接合部材の表面との摺動に伴い発生する摩擦熱とによって、プローブ(122)との接触部分近傍において両接合部材(101)(102)は軟化し、且つ該軟化部中の肉がプローブ(122)の回転力を受けて撹拌されるとともに、プローブ(122)の移動に伴い、該軟化中の肉がプローブ(122)の進行圧力を受けてプローブ(122)の通過溝を埋めるようにプローブ(122)の進行方向後方へと回り込む態様で塑性流動したのち、摩擦熱を急速に失って冷却固化される。この現象がプローブ(122)の移動に伴って順次繰り返されていき、最終的に両接合部材(101)(102)が突合せ部(103)において接合一体化され、もって所望する突合せ継手(A3)が得られる。なお、(W')は突合せ継手(A3)の接合部を示している。また、P'は両接合部材(101)(102)のプローブ挿入位置における表面の法線を示している。
【0007】
また、図6は、断面円形状の金属中実材からなる第1接合部材(111)と、断面円形状の金属中空材からなる第2接合部材(112)とを用い、両者の端面同士を突き合わせて該突合せ部(113)を摩擦撹拌接合により接合する場合について、示している。
【0008】
両接合部材(111)(112)において、第1接合部材(111)の外径寸法と第2接合部材(112)の外径寸法とは同寸に設定されている。そして、表面(即ち、外周面)同士が面一に連なる態様にして両接合部材(111)(112)の長さ方向の端面同士が突き合わされている。この状態において、第2接合部材(112)の中空部(112a)内には、第1接合部材(111)の端面の中央部に一体に突設された嵌合凸部(111a)がぴったりと又はきつく嵌合されている。
【0009】
この両接合部材(111)(112)についても上記同様の接合手順により突合せ接合を行うことにより、所望する突合せ継手(A4)を得ることができる。すなわち、接合工具(120)のプローブ(122)を回転させながら、該プローブ(122)を突合せ部(113)に両接合部材(111)(112)の表面側から挿入するとともに、回転子(121)の端面(121a)を表面に圧接させる。そして、この状態でプローブ(122)を突合せ部(113)に沿って移動させて両接合部材(111)(112)の回りを一回転させる。あるいは、接合工具(120)のプローブ(122)の位置を固定しておき、突合せ部(113)が順次プローブ(122)を通過するように両接合部材(111)(112)をその軸線を中心に一回転させる。こうすることにより、突合せ部(113)がその全長に亘って摩擦撹拌接合されて両接合部材(111)(112)が接合一体化され、もって所望する突合せ継手(A4)が得られる。
【0010】
ところで、摩擦撹拌接合を行う場合には、接合時に、回転子(121)の端面(121a)を両接合部材の表面に圧接させることが望ましく、こうすることにより、回転子(121)の端面(121a)で軟化部を加圧し得て、良好な接合部(W')を形成できるようになる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、軟化部を加圧するために回転子(121)の端面(121a)を両接合部材の表面に圧接させると、図5(ロ)及び図6(ロ)に示すように、軟化部が回転子(121)の端面(121a)からの圧力を受けて凹み、この状態で摩擦熱を失って冷却固化されることとなるため、接合部(W')が凹んだ状態になってしまい、この結果、各接合部材(101、111)(102、112)の接合部(W')近傍における肉厚が減少してしまう。このようになると、第2接合部材(102、112)の肉厚減少部位がこの突合せ継手(A3、A4)における最小肉厚部位となるため、この突合せ継手(A3、A4)に引張荷重や曲げ荷重等の荷重が加わると、該突合せ継手(A3、A4)がこの部位にて破断したり屈曲したりすることになる。つまり、第2接合部材(102、112)の肉厚の減少に伴って突合せ継手(A3、A4)の引張強度や曲げ強度等の様々な強度が低下することになる。なお、同図では、説明の便宜上、接合部(W')の凹部(107)を誇張して示している。
【0012】
一方、このような接合部(W')の凹みに伴う突合せ継手(A3、A4)の強度低下を防止するため、図7(イ)及び図8(イ)に示すように、予め肉厚の減少分を見込んで、各接合部材(101、111)(102、112)の突き合わされる端部の肉厚を厚肉することが提案される。図7(イ)では、各接合部材(101)(102)の幅方向の端部における表面部に凸条(101b)(102b)が側縁に沿って設けられている。一方、図8(イ)では、第2接合部材(112)の長さ方向の端部における表面部(外周面部)に凸条(112b)が周縁に沿って設けられており、また第1接合部材(111)は前記凸条(112b)の肉厚分だけ厚肉に形成されている。
【0013】
このような両接合部材(101、111)(102、112)を用いて、その突合せ部(103)(113)を摩擦撹拌接合することにより、図7(ロ)及び図8(ロ)に示すように、接合部(W')が凹んだ状態になった場合であっても、第2接合部材(102、112)の肉厚減少部位がこの突合せ継手(A3、A4)の最小肉厚部位ではなくなるから、突合せ継手(A3、A4)の強度低下を防止できるようになる。
【0014】
しかしながら、この提案方法によれば、凸条(101b、102b、112b)の分や厚肉(厚肉部111b)に形成した分だけ重量が増大するという難点があった。さらに、わざわざ凸条(101b、102b、112b)を形成しなければならないので、製造の際に手間がかかって製造コストがアップするし、また凸条(101b、102b、112b)に対応して突合せ継手(A3、A4)の形状に関する設計変更を行わなければならないという難点もあった。
【0015】
この発明は、このような技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、厚肉の第1接合部材と薄肉の第2接合部材を、表面同士が面一に連なる態様にして突き合わせるとともに、この両接合部材を突合せ接合する摩擦撹拌接合法であって、優れた強度的信頼性を有する突合せ継手を得ることができ、且つ突合せ継手の形状に関する設計を変更することなく突合せ接合を行うことができ、さらに、製造コストをできる限り抑えることができ、しかも、得られる突合せ継手の軽量化を図ることのできる摩擦撹拌接合法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明は、径大の回転子と、該回転子の端面の回転軸線上に設けられた径小のプローブとを備えた接合工具を用い、厚肉の第1接合部材と薄肉の第2接合部材を、表面同士が面一に連なる態様にして突き合わせるとともに、この両接合部材の突合せ部又はその近傍に表面側から前記接合工具の回転しているプローブを挿入するとともに、回転子の端面を接合部材の表面に当接させ、この状態で該プローブを突合せ部に沿って相対的に移動させることにより、両接合部材を突合せ接合する摩擦撹拌接合法であって、回転子の回転軸線を第1接合部材側に傾けた状態で、前記突合せ接合を行うことを特徴としている。
【0017】
これによれば、回転子の回転軸線を第1接合部材側に傾けた状態にすることにより、軟化部中の肉が回転子の端面からの圧力を受けて第2接合部材側に片寄り、この状態で該軟化分中の肉が摩擦熱を失って冷却固化される。この結果、第2接合部材の肉厚減少量が小さくなり、もって第2接合部材の肉厚の減少に伴う突合せ継手の強度低下を防止し得るようになる。
【0018】
さらに、回転子の回転軸線を第1接合部材側に傾けた状態にするだけで、突合せ継手の強度低下を防止できるから、作業能率良く突合せ接合を行うことができるようになり、この結果、製造コストが引き下げられる。また、凸条を設ける必要がないので、軽量化を図り得るし、突合せ継手の形状に関する設計変更を行う必要もなくなる。
【0019】
また、この発明において、両接合部材のプローブ挿入位置における表面の法線に対する回転子の回転軸線の第1接合部材側への傾き角をθとすると、傾き角θが0°<θ≦10°となる条件下で、回転子の回転軸線を傾けることが、望ましい。こうすることにより、突合せ継手の強度低下を確実に防止し得るようになるし、更に次のような不具合を防止できるようになる。すなわち、傾き角θが10°を超えると、軟化部中の肉が第2接合部材側に片寄り過ぎてしまい、接合部の第2接合部材側の部分が盛上り状態になる結果、接合部の表面状態が低下するという不具合が発生し易くなる。そのため傾き角θを10°以下にすることが望ましい。こうすることにより、かかる不具合を防止できるようになる。特に、傾き角θが2°≦θ≦6°となる条件下で、回転子の回転軸線を傾けることが、望ましく、こうすることにより、突合せ継手の強度低下をより一層確実に防止し得るようになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2はこの発明の第1実施形態を示し、図3及び図4はこの発明の第2実施形態を示している。まず第1実施形態について説明し、次いで第2実施形態について説明する。
【0022】
図1及び図2に示された第1実施形態は、2個の平板状のアルミニウム接合部材を突合せ接合する場合について示している。図1において、(1)は厚肉の第1接合部材、(2)は薄肉の第2接合部材である。各接合部材(1)(2)は幅方向の端面を突合せ面とするものである。そして、この両接合部材(1)(2)は表面同士が面一に連なる態様にして幅方向の端面同士が突き合わされており、かつ両接合部材(1)(2)の裏面に当てられた裏当て(5)によってこの状態に保持されている。
【0023】
(20)は摩擦撹拌接合用の接合工具であって、径大の円柱状回転子(21)と、該回転子(21)の端面(21a)の回転軸線(Q)上に一体に突設された径小のピン状プローブ(22)とを備えている。前記回転子(21)及びプローブ(22)は、いずれも両接合部材(1)(2)よりも硬質で且つ接合時に発生する摩擦熱に耐えうる耐熱材料から形成されている。また、前記プローブ(22)の外周面には、軟化部中の肉を撹拌するための凸部(図示せず)が設けられている。前記回転子(21)の端面(21a)は、接合時に両接合部材(1)(2)の表面に圧接される部位となるものであって、回転軸線(Q)に直交する平面内にある。この実施形態では回転子(21)の端面(21a)は平坦面からなる。なお、この発明では、回転子(21)の面(21a)は、図示していないが、中央部が窪んだ形状になっていても良い。
【0024】
この接合工具(20)を用いて、次のようにして両接合部材(1)(2)の突合せ部(3)を接合する。すなわち、接合工具(20)の回転子(21)をその回転軸線(Q)を中心に回転させることによりプローブ(22)を回転させる。そして、回転子(21)を傾動させることによって回転子(21)の回転軸線(Q)を第1接合部材(1)側に傾け、この状態で、回転しているプローブ(22)を両接合部材(1)(2)の突合せ部(3)に両接合部材(1)(2)の表面側から挿入するとともに、回転子(21)の端面(21a)を両接合部材(1)(2)の表面に、該表面に対して垂直な方向に乃至回転子の回転軸線(Q)に沿う方向に圧接させる。このとき、図1及び図2(イ)に示すように、両接合部材(1)(2)の、プローブ(22)が挿入されている位置(即ち、プローブ挿入位置)における表面の法線をPとし、この法線Pに対する回転子(21)の回転軸線(Q)の第1接合部材(1)側への傾き角をθとすると、この傾き角θが0°<θ≦10°(特に好ましくは2°≦θ≦6°)となる条件下で、回転子(21)の回転軸線(Q)を第1接合部材(1)側に傾けることが、望ましい。なお、この発明では、プローブ(22)を両接合部材(1)(2)の長さ方向の端面から突合せ部(3)に挿入することにより、プローブ(22)を両接合部材(1)(2)の表面側から挿入した状態としても良いし、プローブ(22)を突合せ部(3)に挿入した後で、回転子(21)の回転軸線(Q)を第1接合部材(1)側に傾けても良い。
【0025】
そして、この状態で、プローブ(22)を突合せ部(3)に沿って該突合せ部(3)の全長に亘って移動させる。なお、この発明では、接合工具(20)のプローブ(22)の位置を固定しておき、突合せ部(3)が順次プローブ(22)を通過するように両接合部材(1)(2)を移動させても良いことはもちろんである。
【0026】
プローブ(22)の回転に伴い発生する摩擦熱と、回転子(21)の端面(21a)両接合部材(1)(2)の突合せ部(3)における表面との摺動に伴い発生する摩擦熱とによって、プローブとの接触部分近傍において両接合部材(1)(2)は軟化し、且つ該軟化部中の肉がプローブ(22)の回転力を受けて撹拌されるとともに、該軟化部中の肉が回転子(21)の端面(21a)からの圧力を受けて第2接合部材(2)側に片寄る。この状態で該軟化部中の肉がプローブ(22)の移動に伴ってプローブ(22)の通過溝を埋めるようにプローブ(22)の進行方向後方へと回り込む態様で塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化される。この現象がプローブ(22)の移動に伴って順次繰り返されていき、最終的に両接合部材(1)(2)が突合せ部(3)において接合一体化され、もって所望する突合せ継手(A1)が得られる。(W)はこの突合せ継手(A1)の接合部を示している。また、図2(ロ)において、(7)は突合せ継手(A1)の接合部(W)の表面に形成された凹部を示している。
【0027】
こうした得られた突合せ継手(A1)は、接合時に軟化部中の肉が第2接合部材(2)側に片寄った状態で冷却固化されたものであるから、図2(ロ)に示すように、第2接合部材(2)の接合部(W)近傍における肉厚が殆ど減少していない。したがって、この突合せ継手(A1)は、引張強度の低下等の様々な強度低下が防止されており、優れた強度的信頼性を有している。
【0028】
しかも、この摩擦撹拌接合法は、接合工具(20)の回転子(21)の回転軸線(Q)を傾けた状態にするだけで、突合せ継手(A1)の強度低下を防止することができるから、作業能率良く接合を行うことができるようになって、製造コストを引き下げ得るようになるし、突合せ継手(A1)の形状に関する設計変更を行う必要もないという利点を有する。
【0029】
ここで、この第1実施形態で得られた突合せ継手(A1)の引張強度について考察する。一般に突合せ継手(A1)では、その引張強度Fは厚肉の第1接合部材(1)と薄肉の第2接合部材(2)のうちの第2接合部材(2)の厚さに依存し、次式(i)で算出することができる。
【0030】
F=(T−t)×L×σB×α ・・・(i)
なお、同式(i)において、T…第2接合部材(2)の厚さ、t…凹部(7)の第2接合部材(2)側部分の深さ、σB…第2接合部材(2)の単位断面積当たりの引張強度、L…突合せ部(3)の全長、α…接合熱による強度低下係数である。
【0031】
同式(i)から、tが小さい程、突合せ継手(A1)の引張強度Fは高くなることが分かる。すなわち、引張強度の高い突合せ継手(A1)を得るためには、tを小さくすれば良い。例えば第2接合部材(2)の厚さTが4mmである場合には、従来法によれば、tは0.5mmであったが、この発明によれば、tを0mmにすることができる。つまり、この摩擦撹拌接合法によれば、突合せ継手(A1)の引張強度Fを、従来法で得られる突合せ継手の引張強度に対して約14%高くすることができる。
【0032】
次に、図3及び図4に示された第2実施形態について説明する。これらの図において、(11)は断面円形状のアルミニウム中実材からなる厚肉の第1接合部材、(12)は断面円形状のアルミニウム中空材からなる薄肉の第2接合部材である。第1接合部材(11)の外径と第2接合部材(12)の外径とは、同寸に設定されている。そして、両接合部材(11)(12)は、表面(即ち、外周面)同士が面一に連なる態様にして長さ方向の端面同士が突き合わされている。この状態において、図4(a)に示すように、第2接合部材(12)の中空部(12a)内には、第1接合部材(11)の端面の中央部に一体に突設された嵌合凸部(11a)がぴったりと又はきつく嵌合され、これにより両接合部材(11)(12)はこの状態に保持されている。
【0033】
この両接合部材(11)(12)の突合せ部(13)を上記第1実施形態と同様の接合操作により接合する。すなわち、上記第1実施形態で示した接合工具(20)を用い、回転子(21)を傾動させることによって回転子(21)の回転軸線(Q)を第1接合部材(11)側に傾け、この状態で、回転しているプローブ(22)を両接合部材(11)(12)の突合せ部(13)に両接合部材(11)(12)の表面側から挿入するとともに、回転子(21)の端面(21a)を両接合部材(11)(12)の表面に圧接させる。このとき、両接合部材(11)(12)のプローブ挿入位置における表面の法線Pに対する回転子(21)の回転軸線(Q)の第1接合部材(11)側への傾き角θが0°<θ≦10°(特に好ましくは2°≦θ≦6°)となるように回転子(21)の回転軸線(Q)を第1接合部材(11)側に傾けることが、望ましい。
【0034】
そして、この状態で、プローブ(22)を突合せ部(13)に沿って移動させて両接合部材(11)(12)の回りを一回転させる。なお、この発明では、接合工具(20)のプローブ(22)の位置を固定しておき、突合せ部(13)が順次プローブ(22)を通過するように両接合部材(11)(12)をその軸線を中心に一回転させても良い。
【0035】
こうすることにより、上記第1実施形態で説明した現象がプローブ(22)の移動に伴い順次繰り返されていき、最終的に両接合部材(11)(12)が突合せ部(13)において接合一体化されて、もって所望する突合せ継手(A2)が得られる。
【0036】
こうして得られた突合せ継手(A2)は、図4(ロ)に示すように、第2接合部材(12)の接合部(W)近傍における肉厚が殆ど減少していないから、引張強度の低下等の様々な強度の低下が防止されており、優れた強度的信頼性を有している。したがって、この突合せ継手(A2)は、例えば自動車のサスペンションアーム用部材やエンジンマウンド用部材として好適に用いることができるようになる。
【0037】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記第1及び第2実施形態に限定されるものではない。
【0038】
例えば、上記第1及び第2実施形態では、いずれも回転子(21)を傾動させることによって回転子(21)の回転軸線(Q)を第1接合部材(1、11)側に傾けた状態を実現させているが、この発明では、接合工具(20)の姿勢を固定しておき、両接合部材(1、11)(2、12)を突合せ状態のままで傾動させることによって、かかる状態を実現させても良い。
【0039】
【実施例】
次に、この発明の具体的実施例を説明する。
【0040】
以下に記載の平板状のアルミニウム第1及び第2接合部材(1)(2)を準備し、上記第1実施形態で示された接合方法に従って両接合部材(1)(2)を突合せ接合した。
<第1接合部材>
・材質…A6061−T5
・厚さ…8mm
・長さ…100mm
<第2接合部材>
・材質…A6061−T5
・厚さ…4mm
・長さ…100mm
また、接合条件及び接合工具の寸法は、次の通りである。
<接合条件及び接合工具の寸法>
・回転子の回転速度…1000rpm
・回転子の端部の外径…10mm
・プローブの寸法…径4mm×長さ3.3mm
・傾き角θ…表1に記載。
【0041】
以上により得られた突合せ継手(A1)について、引張強度を測定して評価した。その結果を表1に示す。なお、引張強度の評価として、傾き角θ=0°の条件下で突合せ接合を行った突合せ継手(比較例1)の引張強度に対して、引張強度が5%以上高くなった突合せ継手には○を、10%以上高くなった突合せ継手には◎を付した。
【0042】
【表1】
Figure 0004294202
【0043】
表1から分かるように、傾き角θが0°<θ≦10°(特に好ましくは2°≦θ≦6°)となる条件下で、回転子の回転軸線を第1接合部材側に傾けた状態にして突合せ接合を行えば、突合せ継手の引張強度を従来法で得られる突合せ継手(比較例1)の引張強度よりも高くできることを確認し得た。また、実施例1〜3の突合せ継手について、接合部の表面状態を調べたところ、これら突合せ継手はいずれも表面状態が良好であることを確認した。
【0044】
【発明の効果】
上述の次第で、この発明によれば、接合工具の回転子の回転軸線を第1接合部材側に傾けた状態にすることにより、摩擦熱により軟化した軟化部中の肉が第2接合部材側に片寄り、この状態で該軟化部中の肉が摩擦熱を失って冷却固化されるようになるため、第2接合部材の肉厚減少量を小さくすることができて、第2接合部材の肉厚の減少に伴う突合せ継手の強度低下を防止できる。したがって、突合せ継手における引張強度等の様々な強度を、従来法で得られたものよりも高くすることができ、もって突合せ継手の強度的信頼性を向上させることができるようになる。
【0045】
しかも、回転子の回転軸線を傾けた状態にするだけで、突合せ継手の強度低下を防止できるから、作業能率良く突合せ接合を行うことができるようになって、製造コストを引き下げ得る。また、各接合部材に凸条を設ける必要がないので、得られる突合せ継手の軽量化を図ることができるし、突合せ継手の形状に関する設計変更を行う必要もなくなる。
【0046】
また、両接合部材のプローブ挿入位置における表面の法線に対する回転子の回転軸線の第1接合部材側への傾き角をθとすると、傾き角θが0°<θ≦10°となる条件下で、回転子の回転軸線を傾ける場合には、突合せ継手の強度低下を確実に防止できるようになるし、表面状態の良好な接合部を形成することができるようになるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態を示す、両接合部材の突合せ接合途中の状態の斜視図である。
【図2】(イ)は図1中のII−II線断面図、(ロ)は接合後の状態を示す、(イ)に対応する断面図である。
【図3】この発明の第2実施形態を示す、両接合部材の接合途中の状態の斜視図である。
【図4】(イ)は図3中のIV−IV線断面図、(ロ)は接合後の状態を示す、(イ)に対応する断面図である。
【図5】従来の摩擦撹拌接合法の第1実施例を示す図で、(イ)は両接合部材の突合せ接合途中の状態の斜視図、(ロ)は接合後の状態の断面図である。
【図6】従来の摩擦撹拌接合法の第2実施例を示す図で、(イ)は両接合部材の突合せ接合途中の状態の斜視図、(ロ)は接合後の状態の断面図である。
【図7】従来の摩擦撹拌接合法の第3実施例を示す図で、(イ)は両接合部材の突合せ接合途中の状態の斜視図、(ロ)は接合後の状態の断面図である。
【図8】従来の摩擦撹拌接合法の第4実施例を示す図で、(イ)は両接合部材の接合前の状態の断面図、(ロ)は接合後の状態の断面図である。
【符号の説明】
1…第1接合部材
2…第2接合部材
3…突合せ部
7…凹部
20…接合工具
21…回転子
21a…回転子の端面
22…プローブ
W…接合部

Claims (2)

  1. 径大の回転子(21)と、該回転子の端面(21a)の回転軸線(Q)上に設けられた径小のプローブ(22)とを備えた接合工具(20)を用い、厚肉の第1接合部材(1、11)と薄肉の第2接合部材(2、12)を、表面同士が面一に連なる態様にして突き合わせるとともに、この両接合部材の突合せ部(3、13)に表面側から前記接合工具の回転しているプローブ(22)を挿入するとともに、回転子の端面(21a)を接合部材の表面に当接させ、この状態で該プローブ(22)を突合せ部(3、13)に沿って相対的に移動させることにより、両接合部材(1、11)(2、12)を突合せ接合する摩擦撹拌接合法であって、
    回転子の回転軸線(Q)を第1接合部材(1、11)側に傾けた状態で、前記突合せ接合を行うことを特徴とする摩擦撹拌接合法。
  2. 両接合部材(1、11)(2、12)のプローブ挿入位置における表面の法線(P)に対する回転子(21)の回転軸線(Q)の第1接合部材(1、11)側への傾き角をθとすると、
    傾き角θが0°<θ≦10°となる条件下で、回転子の回転軸線(Q)を傾ける請求項1記載の摩擦撹拌接合法。
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