JP4292737B2 - 繊維の染色仕上げ処理システム - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維の染色仕上げ処理で発生する使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離膜を用い分離し、濃縮する染色仕上げ処理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、繊維の染色仕上げ処理(染色処理、その他仕上げ処理を総称して、以下「染色仕上げ処理」という)においては、大量の水を使用し、同時に大量の排水を行うものであった。このように大量の用水を使用することは染色仕上げ処理の処理コストに繁栄され、また、地下水などを使用する場合は、地盤沈下や環境破壊などの問題を含むものであった。
【0003】
染色仕上げ処理で大量に排出される排水には染料をはじめとする各種薬剤が含まれており、排水処理に多大な負荷がかかっていたものである。また、近年においては排水の規制は年々強化されており、より効果的な排水処理方法、排水量削減技術が望まれている。
【0004】
排水処理の方法としては各工程で排出される排水を1箇所に集め、凝集沈殿法、活性汚泥法、イオン吸着法、酸化処理法、中和法、活性炭処理、濾過処理の各種方法を単独、あるいは組み合せで使用し、一括で排水基準水質になるように処理を行った後、河川や下水道などに放流されている。
【0005】
一方、繊維の染色仕上げ処理工場の排水は大量に用水を使用する製紙工業などに比較して、加工素材、加工内容により排水成分は大きく異なり、また、時間的変動、時期的変動も大きく、排水処理を一層手のかかる困難なものにしている。
【0006】
特に、染色工程は染色仕上げ処理工場における排水量の大部分を占めており、また、未吸着の染料を大量に含む着色排水であるため、より高度な排水処理を必要としているのが実情である。
【0007】
染色工程の排水量を削減する手段として、より多くの繊維をより少ない水によって染色が可能となる低浴比型の染色機が開発されているが、染色で排出される排水量は削減できるものの、逆に排水中に含まれる未吸着染料は高濃度となるため、繊維への汚染が大きく、その後の洗浄工程で大量の水を必要としている。
【0008】
そこで、未吸着の染料を大量に含む染色排水を分離膜を用いて未吸着染料を分離し、水を再利用することで大幅に用水使用量を削減する技術開発が進んでいるが、未吸着染料を大量に含む染色排水の分離処理は分離膜の性能低下を引き起こし高価な分離膜の交換周期を早めることとなるため、分離膜の性能低下を引き起こさない限界の濃縮管理が必要であった。
【0009】
従来は、分離膜を多段に配し、分離回数により濃縮を行っているが、加工素材、加工内容および時間的変動、時期的変動によって排水成分が大きく異なる染色排水を効率よく濃縮することは事実上困難であり、また、高価な分離膜を多段に配するため、設備的費用も大きくなる欠点を有するものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、染色仕上げ処理で発生する未吸着染料を含む染色排水を分離膜を用い、分離し、水を再利用するとともに染色排水を濃縮させる処理技術に鑑み、分離した使用済み薬剤を貯蔵するタンクと該貯蔵タンクに貯蔵した使用済み薬剤を前記分離処理部入口へ循環する機構を有し、該分離膜により分離した使用済み薬剤の分離処理部出口の流量Fcと分離した溶媒の分離処理部出口の流量Fpを測定し、流量比Fc/Fpが6以上で、使用済み薬剤の分離を行うことで分離膜への性能低下を抑制し、使用済み薬剤を濃縮することができるとともに効率よく排水量を削減できる繊維の染色仕上げ処理システムを提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)繊維処理用薬剤を溶媒に溶解および/または分散させて行う繊維の染色仕上げ処理システムであって、染色仕上げ処理で発生した使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離膜を用いて分離する分離処理部と、分離した使用済み薬剤を貯蔵するタンクと、該タンクに貯蔵した使用済み薬剤を前記分離処理部入口へ循環する機構とを有し、前記分離膜により分離した使用済み薬剤の前記分離処理部出口での流量Fcと分離した溶媒の前記分離処理部出口での流量Fpとを測定し、流量比Fc/Fpが6以上で使用済み薬剤の分離を行い、濃縮するものであることを特徴とする繊維の染色仕上げ処理システム。
(2)前記分離膜が逆浸透膜であることを特徴とする前記(1)に記載の繊維の染色仕上げ処理システム。
(3)繊維処理用薬剤を溶媒に溶解および/または分散させて行う繊維の染色仕上げ処理方法であって、染色仕上げ処理で発生した使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離膜を備えた分離処理部で分離し、分離した使用済み薬剤をタンクに貯蔵するとともに、該タンクに貯蔵した使用済み薬剤を前記分離処理部入口へ循環する際に、前記分離膜により分離した使用済み薬剤の前記分離処理部出口での流量Fcと分離した溶媒の前記分離処理部出口での流量Fpとを測定し、流量比Fc/Fpが6以上で使用済み薬剤の分離を行い、濃縮することを特徴とする繊維の染色仕上げ処理方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、前述した課題、染色仕上げ処理で発生した使用済み溶媒から溶媒を再利用しながらも、使用済み薬剤の濃縮による分離膜の性能低下を抑制し、効率よく排水量を削減する繊維の染色仕上げ処理システムについて鋭意検討し、染色仕上げ処理で発生する使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離膜を用い分離し、使用済み薬剤の分離処理部出口の流量Fcと分離した溶媒の分離処理部出口の流量Fpとの流量比Fc/Fpを用いて濃縮を行うことでかかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0013】
本発明における使用済み溶媒とは繊維の染色仕上げ処理により排出される溶媒であり、糊抜き、精練、漂白、シルケット、減量、染色、捺染、洗浄、仕上げ処理などで、目的とする繊維の処理が完了した後に残った溶媒であり、繊維処理用薬剤が溶解、分散または混合された状態の溶媒を対象とするものである。
【0014】
かかる溶媒としては、主として液体が使用され、水、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、塩化メチル、トルエン、ターペン、アルコール類などが単独、または混合して使用されるものであるが、これら液体に限定されるものではなく、繊維の染色仕上げ処理の処理液の主成分として使用される溶媒であれば本発明に使用することができる。
【0015】
本発明においては、前記使用済み溶媒から使用済み薬剤の分離を行い、使用済み薬剤の濃縮を行うものであるが、かかる使用済み薬剤の分離とは、溶媒から各種物質を分離することをいう。各種物質とは、例えば、各種染料あるいは顔料、各種イオン性の界面活性剤、糊剤と呼ばれる天然、半合成、合成高分子類、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩類、硫酸、酢酸などの酸類、水酸化ナトリウムなどのアルカリ類、油剤、酸化剤、還元剤などであり、これら分解物および凝集物も含まれる。さらに、繊維くず、繊維溶解物なども含まれる。
【0016】
このように、使用済み溶媒の組成は非常に複雑であり、かつ、対象とする繊維素材や加工によっても組成は大きく変化する。
【0017】
さらに、季節差、月間差、日間差の変動も多く、これらを効率的に分離することは困難であるため、好ましくは同一の染色仕上げ処理で発生した使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離し、濃縮することがよい。そうすれば使用済み溶媒に含まれる使用済み薬剤の履歴が明確であり、使用済み薬剤の濃縮管理が容易である。
【0018】
使用済み溶媒の分離手段は、分離膜を用いるが、既存の技術を単独あるいは組合せて使用することができ、例えば、凝集沈殿法、活性汚泥法、イオン吸着法、酸化処理法、中和処理、活性炭処理、濾過処理、蒸留などを使用することができる。分離膜は各種濾過処理が使用できるが、好ましくは、限外濾過膜、ナノ分離膜、逆浸透膜から選ばれた少なくとも1種を使用し、さらに好ましくは逆浸透膜を使用して使用済み薬剤の分離を行う機構を有することである。
【0019】
かかる分離膜を用い、使用済み溶媒から溶媒と使用済み薬剤を分離する分離処理機構としては特に限定するものではなく、分離膜とその容器で構成され、1種の分離膜を単独で使用、あるいは数種の分離膜を直列あるいは並列に組み合わせて構成することができ、また、分離処理部として複数を設置してもよく、使用済み溶媒に含まれる使用済み薬剤の濃度、分離処理温度、使用済み溶媒の分離処理量等の分離条件によって決定されるものである。
【0020】
かかる使用済み薬剤を貯蔵するタンクとは分離処理部で分離した使用済み薬剤を貯蔵するタンクのことであり、容量、形状、材質ともに特に限定されるものではなく、使用済み溶媒の組成、分離条件によって1つあるいは複数個を設置することができる。該貯蔵タンクに貯蔵された使用済み薬剤は、再度、前記分離処理部入口へ循環し、分離処理を繰返し行うことで使用済み薬剤の濃縮を行うものであるが、複数の分離処理部を形成する場合は分離処理部で分離した使用済み薬剤を前記分離処理部とは異なる別の分離処理部へ循環することもでき、特に限定されることなく使用できる。
【0021】
本発明では分離処理部で分離した溶媒の出口配管に溶媒の流量Fpを測定する流量計と分離した使用済み薬剤の出口配管に使用済み薬剤の流量Fcを測定する流量計を設置し、それぞれの流量値から流量比Fc/Fpを算出し、流量比Fc/Fpが6以上で使用済み薬剤の分離を行い、使用済み薬剤を濃縮した後、使用済み溶媒を分離処理部へ供給するポンプに停止信号を送り、濃縮を停止する処理システムである。本発明において、流量比Fc/Fpの測定は、分離処理における温度条件、圧力条件、分離処理部への使用済み溶媒の供給条件等が分離処理中は一定条件下にあることが好ましい。
【0022】
一定分離条件下の流量比Fc/Fpは分離する使用済み溶媒に含まれる使用済み薬剤濃度に比例する。すなわち、使用済み薬剤の濃縮により使用済み薬剤の濃度が増加すると流量比Fc/Fpも比例して増加することから、流量比Fc/Fpを用いて濃縮管理を行うことは可能であることを見出した。しかも、加工素材、加工内容によって排水成分、排水濃度が異なり、また時間的変動、時期的変動も大きい染色排水、つまり本発明でいう使用済み溶媒にかかわらず、Fc/Fpが6以上で使用済み薬剤を分離し、濃縮を行えば、分離膜の性能がほとんど低下しないことを見出した。Fc/Fpが6未満であると、分離膜面近傍の使用済み溶媒の流速が低く、汚染物質が膜面に堆積しやすくなり、耐久性低下、分離性能低下を引き起こす原因となる。
【0023】
また、分離膜近傍の使用済み薬剤濃度が増加し、分離処理量が低下するため、濃縮時間が必要以上に長くなるなどの欠点を有している。
【0024】
また、流量計としては特に限定されるものではなく、分離した溶媒および使用済み薬剤の流量を正確に測定できるものあれば本発明に適用できる。
【0025】
本発明における濃縮を停止する条件は、流量比Fc/Fpを用いることであるが、分離する使用済み溶媒に含まれる使用済み薬剤の履歴が明確であれば、分離膜の浸透圧から使用済み薬剤の濃度を試算し濃縮を停止する、あるいは使用済み薬剤の特性値を監視するセンサーを有し、濃縮を停止する方法を単独あるいは組み合わせてもなんら問題はなく使用することができる。
【0026】
該使用済み薬剤の濃縮液は排水処理へ送られる、あるいは別に設けられた外部タンクへ回収し、さらに濃縮し、再利用することも可能である。
【0027】
本発明における繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば素材としては綿、麻などの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、アクリルなどの合成繊維などが使用される。
【0028】
かかる繊維からなる構造物としては、糸、織物、編物、不織布、ガーメントなどが使用される。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
図1の繊維の染色仕上げ処理システムを用いて処理した。
【0031】
図中、繊維処理槽1には使用済み溶媒を外部に排出するための配管とポンプ1が設置され、該使用済み溶媒を分離前処理として限外濾過モジュール11で各種不要な物質を分離し外部タンク2に排出できる構造を持つ。また、前処理が不要である場合には繊維処理槽1から直接貯蔵タンク3に排出することも可能である。各種不要な物質を分離した外部タンク2の使用済み溶媒は、ポンプ2により貯蔵タンク3に送られる。貯蔵タンク3には、分離処理部に送るポンプ3があり、該使用済み溶媒は逆浸透モジュール12で溶媒と使用済み薬剤を分離する。分離した溶媒は繊維処理槽1あるいは繊維処理槽1とポンプ4により連結された外部タンク4に連結し、溶媒を再利用する。また、逆浸透膜モジュール12において分離した使用済み薬剤は貯蔵タンク3に送られ、繊維処理槽1あるいは外部タンク2より送られてくる使用済み溶媒と混合し、再度、逆浸透膜モジュール12へ循環し、使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離することで、貯蔵タンク3の使用済み薬剤を濃縮する。限外濾過モジュールおよび逆浸透モジュールの本数は使用済み溶媒の分離処理量によって任意に決めることができ、通常は直列に設置され、使用済み薬剤の分離を行う。また、逆浸透モジュールの溶媒出口配管には流量計Fpを設置し、逆浸透膜モジュールの使用済み薬剤出口配管には流量計Fcを設置した。
【0032】
該装置を用いて繊維処理槽1より送られてくる使用済み溶媒を分離処理温度30℃、分離処理圧力0.75MPaの分離条件下で分離処理を開始し、分離処理開始直後の流量比Fc/Fpを6に設定した。約30分間、分離処理を実施した結果、流量比Fc/Fpが15に達し、自動的にポンプP1およびP3が停止し、電磁弁28により濃縮液を系外に排出した。繊維処理槽で排出される使用済み溶媒をランダムに分離処理し、1ヶ月間で100回繰返した結果、分離膜の性能低下はなく良好な結果が得られた。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、使用済み溶媒に含まれる使用済み薬剤を分離膜を用い分離し、溶媒の再利用ができる上に、分離膜の性能低下を抑制しながらも、使用済み薬剤を濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維の染色仕上げ処理システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・繊維処理槽
2、4・・・外部タンク
3・・・貯蔵タンク
11・・・限外濾過モジュール
12・・・逆浸透モジュール
21〜28・・・バルブ
P1〜P4・・・ポンプ
Fp、Fc・・・流量計
Claims (3)
- 繊維処理用薬剤を溶媒に溶解および/または分散させて行う繊維の染色仕上げ処理システムであって、染色仕上げ処理で発生した使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離膜を用いて分離する分離処理部と、分離した使用済み薬剤を貯蔵するタンクと、該タンクに貯蔵した使用済み薬剤を前記分離処理部入口へ循環する機構とを有し、前記分離膜により分離した使用済み薬剤の前記分離処理部出口での流量Fcと分離した溶媒の前記分離処理部出口での流量Fpとを測定し、流量比Fc/Fpが6以上で使用済み薬剤の分離を行い、濃縮するものであることを特徴とする繊維の染色仕上げ処理システム。
- 前記分離膜が逆浸透膜であることを特徴とする請求項1に記載の繊維の染色仕上げ処理システム。
- 繊維処理用薬剤を溶媒に溶解および/または分散させて行う繊維の染色仕上げ処理方法であって、染色仕上げ処理で発生した使用済み溶媒から使用済み薬剤を分離膜を備えた分離処理部で分離し、分離した使用済み薬剤をタンクに貯蔵するとともに、該タンクに貯蔵した使用済み薬剤を前記分離処理部入口へ循環する際に、前記分離膜により分離した使用済み薬剤の前記分離処理部出口での流量Fcと分離した溶媒の前記分離処理部出口での流量Fpとを測定し、流量比Fc/Fpが6以上で使用済み薬剤の分離を行い、濃縮することを特徴とする繊維の染色仕上げ処理方法。
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