JP4292559B2 - 多官能ポリイソシアネート組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多官能芳香族ポリイソシアネート組成物の製造方法に関する。更に詳しくは、温度及び圧力が物質固有の臨界値を超える超臨界状態にある分離溶媒と相溶化剤である環状炭酸エステルとの存在下、芳香族ポリイソシアネート組成物に連続的に接触混合させて生成される製造が容易で他樹脂との相溶性に優れた高性能で安定な多官能芳香族ポリイソシアネート組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、生成するポリイソシアネートの組成は原料のポリアミンの組成によって決まるが、2核体イソシアネートの単離は蒸留あるいは晶析方法により比較的容易に得られることは知られているが、3核体以上のポリイソシアネートは通常の蒸留法では単離することは困難であり、自由に調整できない。従って比較的高分子量の樹脂成分、実質的に不揮発性の塩素または鉄分含有化合物および他の特に着色への悪影響を及ぼす不純物を蒸留によって除去することができないため、外観上安定した淡い製品を得られないのが現状である。
従って安定した芳香族ポリイソシアネートの多官能化の方法は、各種用途により、既知の方法で種々の変性法が取られて来た。
【0003】
例えば、特開昭63−309512号に示されるように、多核体の含有量を増大したポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(以後ポリメリックMDIと略称する)からは、耐炎性及び低い表面脆性を有するポリウレタン発泡体が製造されている。
また、特開平3−20322号、特公平8−32759号には、イソシアヌレート環を有する芳香族ポリイソシアネート変性体の製造方法により得られる生成体は、耐熱性、難燃性、剛直性、強靱性等を有したポリウレタンフォームを提供することが記述されている。
また、特開平7−316123号に示されるように、イソシアネートと抽出溶媒との溶解性パラメーターの相違を利用した溶媒抽出方法により、特定の多核体成分を抽出した芳香族ポリイソシアネートの製造方法が示されている。
【0004】
しかしながら、この方法では所望の特定成分を得るためには、抽出液から溶媒を留去するという複雑な工程と長い蒸留時間を要する。また高温下、長時間の蒸留時間は得られた生成物の着色増加をもらたす原因となり、品質安定性の点から好ましくない。
また、近年VOC規制等により環境にやさしい原料の選択が望まれている中で、溶媒抽出法においては濃縮されたポリイソシアネート混合物に多量の溶剤が残存すると塗料、接着剤、エラストマー、フォーム用原料として使用した場合、残存溶剤の影響により製品の品質低下の要因にもなる。
更に、作業環境の悪化及び引火性を有する等好ましくない原因となるために残存する溶剤は出来るだけ少なくする必要があり、これが作業工程をさらに複雑にしている。
【0005】
ところで、近年、低分子化合物の抽出方法として超臨界状態の流体を溶媒として使用する超臨界流体抽出分離法が注目を集めており、ポリイソシアネート化合物の精製に関してもその応用例が報告されている。例えば特開平2−758号ではトルエンジイソシアネートの製造工程からの残査物中のトルエンジイソシアネートを分離する方法として、超臨界炭酸ガスによって処理する方法が報告されている。
この方法では被抽出物が高粘度であるため、希釈剤として環境に悪影響を及ぼす恐れのある芳香族系溶剤が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、ウレタン成形時の反応性や分子構造によって左右される耐熱性、高強度、強化された表面特性、優れた貯蔵安定性及び着色の低減した安定したポリイソシアネート組成物を得るため、ジイソシアネート含量及び高分子量ポリイソシアネート含量を低減し、トリないしはテトライソシアネート含有量の高いポリメリックMDI組成物が強く望まれている。
【0007】
【課題を解決しようとする手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために、特定の多核体を有する芳香族ポリイソシアネート組成物の製造方法を鋭意検討した結果、原料となるポリメリックMDI混合物を相溶化剤として環状炭酸エステルの存在下、温度及び圧力が物質固有の臨界値を超える超臨界状態である分離溶媒と連続的に接触混合させることにより特定成分を選択的に分離抽出することにより、安定した多官能芳香族ポリイソシアネート組成物が得られる事を見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート混合物である芳香族ポリイソシアネート組成物を、相溶化剤として環状炭酸エステルの存在下、温度及び圧力が物質固有の臨界値を超える超臨界状態にある分離溶媒により連続的に抽出させて、3核体を47〜51重量%、4核体を8〜10重量%含有する多官能芳香族ポリイソシアネート組成物の製造方法である。
【0009】
また、本発明は前記環状炭酸エステルが、下記一般式(1)で示されこと、を特徴とする請求項1記載の多官能ポリイソシアネート組成物の製造方法である。
【0010】
【化2】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリメリックMDI混合物は、酸触媒の存在下、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合により生成するポリアミン混合物のホスゲン化によって得られるポリイソシアネート混合物あるいは、この混合物から蒸留または晶析によって2核体のジフェニルメタンジイソシアネート(以後MDIと略称する)の一部が除去されたポリイソシアネート混合物が挙げられる。
【0012】
特に有用なポリイソシアネートは下記一般式(2)で示されるポリメリックMDI及びこれらを含有する混合物が挙げられる。
【0013】
【化3】
超臨界流体を用いる抽出操作においては超臨界ガスの溶解力がその効率を決定し、そして溶解力の支配因子は密度であり、超臨界ガス密度が大きくなれば溶解力は増大する。
このため超臨界ガス抽出法の特徴は、溶解力を支配する密度が圧力及び温度を変化させることにより制御できるため、抽出条件が容易に且つ任意に選べることができ、幅広い選択的分離が可能である。
【0014】
本発明に用いられる超臨界流体は、イソシアネート基に対して不活性なものであれば制限はなく、例えば、炭酸ガス、窒素、メタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ペンタン、モノクロロトリフルオロカーボン、ジクロロジフルオロカーボン、トリクロロフルオロカーボン、モノクロロジフルオロハイドロカーボン、ジクロロフルオロハイドロカーボン、ジクロロテトラフルオロジカーボン、トリクロロテトラフルオロジカーボン、オクタフルオロシクロブタン、メチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルエーテル、アセトンヘキサン類等及びこれらの混合物が挙げられる。
本発明に特に好ましい超臨界流体は臨界温度31℃、臨界圧力7.38MPaを有している炭酸ガスである。
また、超臨界炭酸ガスは臨界温度が低いため、低温で操作でき、無味、無臭、無害、不燃で化学的に安定、しかも安価であり、製品中に溶媒が残らないなどの長所がある。
【0015】
本発明の方法では、分離抽出に必要な抽出温度圧力はその超臨界流体の臨界温度、臨界圧力により異なり、通常は臨界点以上の条件で実施する。
従って多核体含有ポリイソシアネートの分離抽出量は、分離時の温度、圧力を変えることによって達成される。
【0016】
本発明におけるポリイソシアネート混合体と超臨界流体の接触条件は、目的に応じて任意に決定することが可能であり、特に制限されないが、工業的な観点からは、温度条件として超臨界流体の臨界温度の100〜300%の範囲が好ましく、100〜200%の範囲が特に好ましい。一方、圧力条件としては、超臨界流体の臨界圧力(MPa)の100〜600%の範囲が好ましく、100〜400%の範囲が特に好ましい。
【0017】
本発明における最も好ましい超臨界流体である、二酸化炭素(CO2)の場合には、温度条件として31〜80℃の範囲が好ましく、圧力条件としては7.3〜40MPaの範囲が好ましい。
80℃以上及び40MPa以上の条件下では、抽出生成物の貯蔵安定性の低下、着色大等の品質安定性への悪影響、更には高温・高圧のため複雑な装置となり、効率のよい分離制御ができなくなるため好ましくない。
最も好ましい分離条件は31〜50℃の温度、7.38〜40MPaの圧力である。
【0018】
またポリイソシアネート混合体と超臨界流体との接触時間については、必要とされる所望の多官能ポリイソシアネートの多核体含有量によって任意に設定するため特に限定されないが、工業的、経済的な観点から、一般には1分〜24時間の範囲で実施することが好ましい。
なお、ポリイソシアネート混合体に対する分離溶媒の混合量は、使用される分離溶媒の溶解に左右されるが、CO2 を用いた場合、ポリイソシアネートに対して1〜10重量倍であり、好ましくは容積効率を考慮すると1〜5重量倍である。当然のことながら、溶媒量/原料比も多核体MDI含有量に影響を与える。
溶媒量/原料比が大きくなるにしたがい、2核体MDI含有量が増大すると同時に、3、4核体MDI含有量も増大する。しかし3、4核体P−MDI含有量を高めるためには溶媒量の変化よりも抽出時の圧力を変える事によって達成される。
【0019】
超臨界流体抽出による液体混合物の分離は超臨界流体と液相の界面での分配と物質移動による現象である。従来公知の方法、例えば抽出器内に重合混合体を仕込み、上方、下方、又は側方より超臨界状態の抽出溶媒を抽出器内に流し込み、重合混合体との接触を生じさせる抽出分離方法を用いた場合、混合体からの低分子量化合物の除去は、混合体が液滴になりにくいために表面積が小さく、表面の更新も起こりにくい。更に超臨界状態の流体が混合体に拡散しにくく、物質移動が有効に起こらないために低分子化合物の除去が不十分であった。
よって本発明方法では、抽出効率を高めるため、すなわち、容器内での超臨界流体と原料液との液界面で表面接触効率を高めるために、特定の相溶化剤を併用することにより、超臨界流体との気液平衡を円滑にして分離効率を高める事が可能である。
【0020】
本発明で使用される相溶化剤として下記の一般式(1)で示される環状炭酸エステル化合物が挙げられる。
【0021】
【化4】
【0022】
環状炭酸エステルの例として、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
環状炭酸エステルの使用量はポリイソシアネートに対して0.5重量%以上が好ましい。特に好ましい量はポリイソシアネートに対して0.5〜5重量%である。また、相溶化剤は当該分離溶媒と接触する前に予めポリイソシアネート混合体に混合させるのが好ましい。
【0023】
一方、本発明において、ポリイソシアネート混合体と超臨界流体の接触装置については、従来公知の装置をそのまま適応することが可能であり、例えば流通形式、セミバッチ形式、バッチ形式等の装置を必要に応じて任意に選択し、分離された多核体含有混合体を製造することが可能である。
重合混合体を超臨界流体と接触させ、効率的に分離された多官能混合体を製造するためには、混合体の形状を出来る限り微紛状、薄膜あるいはポーラス性の高い形状にしておくことは、本発明の製造方法においては特に好ましい方法である。
【0024】
上記ポリイソシアネート混合物と分離溶媒及び相溶化剤との連続的な接触混合は攪拌機付きの混合槽でも、配管内の混合でもかまわない。大きな設備を有しない点では配管内の混合が有利である。
この場合、単純な配管混合でもよいが、より均一に混合するためには、ラインミキサーを設置するか、超臨界流体あるいはポリイソシアネートのいずれかを微細な口径のノズルで噴出させて混合することが望ましい。
これによって配管内でも若干の予備的な抽出が起こる。予めポリイソシアネート混合体と当該分離溶媒を接触混合させる事は、微細な液滴が形成し易く、均一に分散されるため、抽出効率を高めるには有効な方法である。また抽出器内の分離溶媒は、抽出器内に放出されるポリイソシアネート混合体に対して向流又は並流のいずれにおいても可能であるが、流体の接触と物質移動を有効に生じさせるためには、向流が好ましい。
【0025】
本発明では、主として超臨界流体の溶解力が液体溶媒に比べて小さいことにより、抽出工程のみに簡略された分離プロセスをとることができる。
すなわち、余分な成分まで溶解せず、選択的抽出が可能となる。また本発明における被抽出物質が非揮発性物質であるため、減圧操作により抽出後の溶媒分離も完全に行うことができる。
超臨界ガスにより抽出された目的成分と超臨界ガスを分離する方法として、分離槽の圧力を適宜臨界圧力以下まで減圧し、超臨界ガスに対する目的成分の溶解度を下げる方法、分離槽の温度を抽出槽の温度とは変化させて、超臨界ガスに対する目的成分の溶解度を低下させる方法、分離槽に吸着剤を装填し、目的成分を吸着し分離する方法等が挙げられる。
本発明においては、減圧によって超臨界ガスと目的の抽出成分を分離する方法が最も好ましい。
留去回収された超臨界ガスは新たな精製を行わずに再度抽出に使用しても何ら問題はない。
【0026】
相溶化剤は抽出直後は、抽出成分及び抽出残分に存在することになる。この相溶化剤は必要に応じて除去してもよい。除去方法としては加熱減圧等、公知の方法が用いられる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によって得られた多官能芳香族イソシアネート組成物は、3核体以上の含有量が高いため、架橋反応し、イソシアネート側での樹脂設計の可能性が出てくる。更に無溶剤で安定な品質を有しているため、プラスチックフォーム、エラストマーはもちろんの事、塗料、接着剤等の原料としても広く有用であり、活性水素化合物との反応により得られる生成物は、難燃性、耐熱性、耐水性、強靱性等に於いて優れた性能を発揮する。
また、従来のヘキサン類の液体溶媒抽出に比較して分離溶媒としての超臨界炭酸ガスは、拡散性や浸透性に優れていることから原料の前処理工程の簡略化や抽出速度の向上、更に温度あるいは圧力操作により溶解力の調整が可能で抽出時の選択性が大であることから、目的の成分が高純度で得られ、工業的に大量に且つ連続的に製造される芳香族ポリイソシアネート組成物の製造方法として有用な方法である。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
図1に示す超臨界抽出装置を用い、超臨界炭酸ガスノズルを備えた40℃に保温された抽出槽に38重量%の2核体(2,4′−MDI:4,4′−MDI=15:85)、36重量%の3核体、12重量%の4核体、14重量%の5核体以上を含有するポリイソシアネートを100g投入後、更に相溶化剤としてプロピレンカーボネートを5g添加し、圧力が25MPaの超臨界炭酸ガスを1リットル/minの速度で2時間バブリング方式で供給した。炭酸ガス、相溶化剤を含む抽出物を抽出器の上部から、炭酸ガス、相溶化剤を含む抽出残分を抽出器の下からそれぞれの回収器に送った。
次いで各回収器を常圧に戻すことにより炭酸ガスを除去して、加熱減圧装置により相溶化剤を除去して、抽出物、抽出残分を得た。
得られた芳香族ポリイソシアネートのゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)分析結果を表1に示す。
【0030】
実施例2
相溶化剤がエチレンカーボネートであること以外は、実施例1と同様に行った。得られた芳香族ポリイソシアネートのGPCの分析値を表1に示す。
【0031】
実施例3
超臨界炭酸ガスの圧力が15MPaであること以外は、実施例1と同様に行った。得られた芳香族ポリイソシアネートのGPCの分析結果を表1に示す。
【0032】
実施例4
原料ポリイソシアネートの組成が40重量%の2核体(2,4′−MDI:4,4′−MDI=2:98)30重量%の3核体、10重量%の4核体、22重量%の5核体以上を含有するポリイソシアネートであること以外は、実施例1と同様に行った。
得られた芳香族ポリイソシアネートのGPCの分析結果を表1に示す。
【0033】
実施例5
超臨界炭酸ガス抽出槽の温度が32℃、抽出圧力が20MPaであること以外は、実施例1と同様に行った。得られた芳香族ポリイソシアネートのGPCの分析結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造に用いられる好適なプロセスフロー図である。
【符号の説明】
1 プロピレンカーボネート貯槽
2 原料貯槽
3 炭酸ガスボンベ
4 プロピレンカーボネート供給ポンプ
5 原料供給ポンプ
6 超臨界流体化装置
7 加圧ポンプ
8 抽出器
9 抽出回収器
10 抽出残分回収器
11 加熱減圧装置
12 加熱減圧装置
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