JP4290643B2 - フィルタ回路 - Google Patents

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Description

本発明は、導電線上を伝搬するノイズを抑制するフィルタ回路に関する。
スイッチング電源、インバータ、照明機器の点灯回路等のパワーエレクトロニクス機器は、電力の変換を行う電力変換回路を有している。電力変換回路は、直流を矩形波の交流に変換するスイッチング回路を有している。そのため、電力変換回路は、スイッチング回路のスイッチング周波数と等しい周波数のリップル電圧や、スイッチング回路のスイッチング動作に伴うノイズを発生させる。このリップル電圧やノイズは他の機器に悪影響を与える。そのため、電力変換回路と他の機器あるいは線路との間には、リップル電圧やノイズを低減する手段を設ける必要がある。
また、最近、家庭内における通信ネットワークを構築する際に用いられる通信技術として電力線通信が有望視され、その開発が進められている。電力線通信は、電力線に高周波信号を重畳して通信を行う。この電力線通信では、電力線に接続された種々の電気・電子機器の動作によって、電力線上にノイズが発生し、このことが、エラーレートの増加等の通信品質の低下を招く。そのため、電力線上のノイズを低減する手段が必要になる。また、電力線通信では、屋内電力線上の通信信号が屋外電力線に漏洩することを阻止する必要がある。
なお、2本の導電線を伝搬するノイズには、2本の導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモード(ディファレンシャルモード)ノイズと、2本の導電線を同じ位相で伝搬するコモンモードノイズとがある。
これらのノイズを抑制するために、電源ラインや信号ラインなどにラインフィルタを設けることが有効である。ラインフィルタとしては、インダクタンス素子(インダクタ)とキャパシタとを含むフィルタ、いわゆるLCフィルタがよく用いられている。LCフィルタには、インダクタンス素子とキャパシタとを1つずつ有するものの他に、T型フィルタやπ型フィルタ等がある。
図19は、従来のT型フィルタの構成を示している。このT型フィルタは、導電線103上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタL101,L102と、一端が第1および第2のインダクタL101,L102の間に接続され、他端が接地されたキャパシタC101とを備えている。第1のインダクタL101は、磁性材料よりなる第1のコア121に導体よりなる第1の巻線111を巻くことで形成されている。第2のインダクタL102は、磁性材料よりなる第2のコア122に導体よりなる第2の巻線112を巻くことで形成されている。
特許文献1には、T型フィルタにおいて、隣接するインダクタ間の相互の電磁的結合が少ない高密度実装を実現するために、電気的に短絡したショートリングを有するコイルタイプのインダクタを使用することが記載されている。
特許文献2には、3つのインピーダンス素子で構成されたローパスフィルタが記載されている。このローパスフィルタは、3つのインピーダンス素子をT型に配置する点で、基本構造はT型フィルタと同様である。このローパスフィルタは、2本の導電線のうちの一方に直列に挿入された2つの高インピーダンス素子と、一端が2つの高インピーダンス素子の間に接続され、他端が2本の導電線のうちの他方に接続された低インピーダンス素子とを備えている。2つの高インピーダンス素子は、それぞれ、コイルと抵抗との並列接続回路で構成され、低インピーダンス素子はキャパシタで構成されている。このローパスフィルタは、ノーマルモードノイズを低減する。
特開2003−198305号公報(図1) 特開平5−121988号公報(図1)
T型フィルタでは、インダクタンスとキャパシタンスとによって決まる固有の共振周波数を有し、その共振周波数に応じた減衰特性が得られる。また、T型フィルタでは、第1のインダクタL101と第2のインダクタL102との結合度を変えることによっても減衰特性が変化し、減衰のピーク点も変化する。従って例えば、第1および第2の巻線111,112の磁気的な結合度を示す係数をk1とすると、この結合係数k1を変えることによって、フィルタの使用目的に応じた所望の減衰特性を得ることができる。結合度を調整する方法としては、基板への実装時に配置位置を調整することなどが考えられる。しかしながら、近年では回路の小型化等への要求があり、その配置位置の制限が顕著になってきている。そのため、配置による結合度の調整を自由に行うことができない状況にある。さらに、量産時のばらつきを考慮すると、物理的な配置によって結合度の調整、管理を行うことは困難である。また特に、結合度を小さくするためには特許文献1に記載のように巻線間にショートリングを配置することが考えられるが、この場合にも同様の問題がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のインダクタを有する回路において、各インダクタの物理的な配置にかかわらず、所望の減衰特性となるように各インダクタ間の結合度の調整を行うことができるようにしたフィルタ回路を提供することにある。
本発明の第1の観点に係るフィルタ回路は、第1の導電線上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタと、一端が第1および第2のインダクタの間に接続され、他端が接地された第1のキャパシタと、第1のインダクタに磁気的に結合された第1の結合用巻線と、第2のインダクタに磁気的に結合された第2の結合用巻線と、第1および第2の結合用巻線に接続され、第1および第2のインダクタ間の磁気的な結合度を調整するための結合調整用回路とを備えたものである。
本発明の第1の観点に係るフィルタ回路では、第1および第2のインダクタがそれぞれ第1および第2の結合用巻線に磁気的に結合される。第1および第2の結合用巻線は結合調整用回路に接続されているので、第1および第2のインダクタ同士が結合調整用回路を介して間接的に接続される。結合調整用回路の回路構成および回路値を調整することで、第1および第2のインダクタの結合度が電気的に調整、制御される。
この第1の観点に係るフィルタ回路において、第1および第2の結合用巻線のインダクタンスは、第1および第2のインダクタのインダクタンスに比べて小さくなっていることが好ましい。
また、結合調整用回路のインピーダンスは、第1および第2の結合用巻線のインピーダンスに比べて高くなっていることが好ましい。
また、この第1の観点に係るフィルタ回路において、第1の導電線上において、第1のインダクタと第2のインダクタとが磁気的に分離されていても良い。
また、この第1の観点に係るフィルタ回路において、第2の導電線上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタと、一端が第3および第4のインダクタの間に接続され、他端が接地された第2のキャパシタとをさらに備えていても良い。そして、第1のインダクタ、第3のインダクタおよび第1の結合用巻線が互いに磁気的に結合されると共に、第2のインダクタ、第4のインダクタ、および第2の結合用巻線が互いに磁気的に結合された構成にするようにしても良い。
この場合、第1および第2の導電線を同じ位相で伝搬するコモンモードノイズを抑制するコモンモードフィルタが構成される。この場合において、第1および第2の導電線間で対応する第1および第3のインダクタの組と第2および第4のインダクタの組とが、結合調整用回路を介して間接的に接続される。結合調整用回路の回路構成および回路値を調整することで、第1および第3のインダクタの組と第2および第4のインダクタの組との結合度が電気的に調整、制御される。
またこの場合、第1および第2の導電線上において、第1および第3のインダクタの組と第2および第4のインダクタの組とが、磁気的に分離されていても良い。
本発明の第2の観点に係るフィルタ回路は、第1および第2の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路であって、第1の導電線上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタと、第2の導電線上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタと、一端が第1および第2のインダクタの間に接続され、他端が第3および第4のインダクタの間に接続されたキャパシタと、第1のインダクタに磁気的に結合された第1の結合用巻線と、第2のインダクタに磁気的に結合された第2の結合用巻線と、第1および第2の結合用巻線に接続され、第1および第2のインダクタ間の磁気的な結合度を調整するための第1の結合調整用回路と、第3のインダクタに磁気的に結合された第3の結合用巻線と、第4のインダクタに磁気的に結合された第4の結合用巻線と、第3および第4の結合用巻線に接続され、第3および第4のインダクタ間の磁気的な結合度を調整するための第2の結合調整用回路とを備えたものである。
本発明の第2の観点に係るフィルタ回路では、平衡型で、第1の導電線上のインダクタと第2の導電線上のインダクタとが分離されたノーマルモードフィルタが構成される。第1の導電線上の第1および第2のインダクタがそれぞれ第1および第2の結合用巻線に磁気的に結合される。第1および第2の結合用巻線は第1の結合調整用回路に接続されているので、第1および第2のインダクタ同士が第1の結合調整用回路を介して間接的に接続される。第1の結合調整用回路の回路構成および回路値を調整することで、第1の導電線上における第1および第2のインダクタの結合度が電気的に調整、制御される。
第2の導電線上でも同様に、第3および第4のインダクタがそれぞれ第3および第4の結合用巻線に磁気的に結合される。第3および第4の結合用巻線は第2の結合調整用回路に接続されているので、第3および第4のインダクタ同士が第2の結合調整用回路を介して間接的に接続される。第2の結合調整用回路の回路構成および回路値を調整することで、第2の導電線上における第3および第4のインダクタの結合度が電気的に調整、制御される。
本発明の第3の観点に係るフィルタ回路は、第1および第2の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路であって、第1の導電線上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタと、第2の導電線上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタと、一端が第1および第2のインダクタの間に接続され、他端が第3および第4のインダクタの間に接続されたキャパシタと、第1のインダクタおよび第3のインダクタに磁気的に結合された第1の結合用巻線と、第2のインダクタおよび第4のインダクタに磁気的に結合された第2の結合用巻線と、第1および第2の結合用巻線に接続され、第1および第3のインダクタと第2および第4のインダクタとの間の磁気的な結合度を調整するための結合調整用回路とを備えたものである。
本発明の第3の観点に係るフィルタ回路では、平衡型で、第1および第2の導電線間の対応するインダクタ同士が磁気的に結合されたノーマルモードフィルタが構成される。このフィルタ回路では、第1および第2の導電線間において、第1および第3のインダクタが第1の結合用巻線に磁気的に結合されると共に、第2および第4のインダクタが第2の結合用巻線に磁気的に結合される。第1および第2の結合用巻線は結合調整用回路に接続されているので、第1および第3のインダクタの組と第2および第4のインダクタの組とが、結合調整用回路を介して間接的に接続される。結合調整用回路の回路構成および回路値を調整することで、第1および第3のインダクタの組と第2および第4のインダクタの組との結合度が電気的に調整、制御される。
本発明の各観点に係るフィルタ回路において、結合調整用回路は例えばインダクタで構成することができる。また、結合調整用回路を抵抗素子で構成しても良い。また、結合調整用回路をインダクタとキャパシタとを含む共振回路で構成しても良い。
本発明の第1の観点に係るフィルタ回路によれば、第1および第2のインダクタをそれぞれ第1および第2の結合用巻線に磁気的に結合すると共に、第1および第2の結合用巻線を結合調整用回路に接続し、第1および第2のインダクタを、結合調整用回路を介して間接的に接続するようにしたので、結合調整用回路での調整により、第1および第2のインダクタの結合度を電気的に調整、制御することが可能となる。これにより、各インダクタの物理的な配置にかかわらず、所望の減衰特性となるように各インダクタ間の結合度の調整を行うことができる。
本発明の第2の観点に係るフィルタ回路によれば、第1の導電線上の第1および第2のインダクタをそれぞれ第1および第2の結合用巻線に磁気的に結合すると共に、第1および第2の結合用巻線を第1の結合調整用回路に接続し、第1および第2のインダクタを第1の結合調整用回路を介して間接的に接続するようにしたので、第1の結合調整用回路での調整により、第1の導電線上における第1および第2のインダクタの結合度を電気的に調整、制御することが可能となる。同様に、第2の導電線上の第3および第4のインダクタを第2の結合調整用回路を介して間接的に接続するようにしたので、第2の結合調整用回路での調整により、第2の導電線上における第3および第4のインダクタの結合度を電気的に調整、制御することが可能となる。これにより、各インダクタの物理的な配置にかかわらず、所望の減衰特性となるように、第1および第2の導電線上のそれぞれにおいて各インダクタ間の結合度の調整を行うことができる。
本発明の第3の観点に係るフィルタ回路によれば、第1および第2の導電線間の対応する第1および第3のインダクタの組と第2および第4のインダクタの組とを、結合調整用回路を介して間接的に接続するようにしたので、結合調整用回路での調整により、第1および第3のインダクタの組と第2および第4のインダクタの組との結合度を電気的に調整、制御することが可能となる。これにより、各インダクタの物理的な配置にかかわらず、所望の減衰特性となるように、第1および第2の導電線間での対応する各インダクタ間の結合度の調整を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ回路について説明する。図1は、本実施の形態に係るフィルタ回路の基本構成を示している。このフィルタ回路は、ノーマルモードノイズを抑制する不平衡型のフィルタ回路である。このフィルタ回路は、入出力端子1A,2A間において第1の導電線3上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタL1,L2と、一端が第1および第2のインダクタL1,L2の間に接続され、他端が接地された第1のキャパシタC1とを備えている。第1のインダクタL1は、第1のコア21に第1の巻線11が巻かれることにより形成されている。第2のインダクタL2は、第2のコア22に第2の巻線12が巻かれることにより形成されている。
このフィルタ回路はまた、第1のインダクタL1に磁気的に結合された第1の結合用巻線31と、第2のインダクタL2に磁気的に結合された第2の結合用巻線32と、第1および第2の結合用巻線31,32の一端に接続された結合調整用回路30とを備えている。第1および第2の結合用巻線31,32の他端は接地されている。第1の結合用巻線31は、例えば第1の巻線11と共通の第1のコア21に巻かれることで、第1のインダクタL1に磁気的に結合されている。第2の結合用巻線32は、例えば第2の巻線12と共通の第2のコア22に巻かれることで、第2のインダクタL2に磁気的に結合されている。
第1および第2の結合用巻線31,32は、インピーダンスロスが少なくなるよう、そのインダクタンスL11,L12は、第1および第2のインダクタL1,L2のインダクタンスに比べて十分小さくなっていることが好ましい。このため、第1および第2の結合用巻線31,32を例えば1ターンのみの巻線で構成することが好ましい。また同様にインピーダンスロスが少なくなるよう、結合調整用回路30のインピーダンスが、第1および第2の結合用巻線31,32のインピーダンスに比べて十分高くなっていることが好ましい。
このフィルタ回路において、第1および第2の結合用巻線31,32は結合調整用回路30に接続されているので、第1および第2のインダクタL1,L2は、結合調整用回路30を介して間接的に接続されている。結合調整用回路30の回路構成および回路値を調整することで、第1および第2のインダクタL1,L2の結合度を電気的に調整、制御することが可能とされている。
なお、第1および第2のインダクタL1,L2間の磁気的な結合度合いは、フィルタの使用目的、所望とする特性に応じて任意の値に設定される。図示したように第1および第2のインダクタL1,L2間の磁気的な結合度を示す結合係数をk1とすると、k1=0として磁気的に完全に分離するようにしても良いし、任意の磁気的な結合を持たせるようにしても良い。結合係数k1は、各インダクタL1,L2を構成する巻線11,12の極性方向に応じて、プラスまたはマイナスとなるが、このフィルタ回路ではいずれの場合であっても結合調整用回路30により、結合度の電気的な制御が可能であり、フィルタの使用目的に応じた所望の減衰特性を得ることができる。これにより、第1および第2のインダクタL1,L2は、回路基板上において任意の位置に配置することが可能である。例えば図において破断線で囲んだ部分、第1のインダクタL1の構成部分(第1の巻線11、第1のコア21および第1の結合用巻線31)と、第2のインダクタL2の構成部分(第2の巻線11、第2のコア22および第2の結合用巻線32)とにそれぞれ磁気的なシールドなどを施し、それらを任意の位置に近接配置して省スペース化を図ることなどが可能となる。なお、結合係数k1がマイナスとなる場合は、符号31Aで示したように例えば第1の結合用巻線31と結合調整用回路30との接続関係を変えることが好ましい。
一方、第1のインダクタL1と第1の結合用巻線31との結合係数をk11、第2のインダクタL2と第2の結合用巻線32との結合係数をk12とすると、これらの結合係数は1に近い(磁気的な結合度合いが強い)方が好ましい。なお、結合調整用回路30による調整、制御の具体例、および結合度の違いによる減衰特性の違いの具体的考察については後述する。
次に、結合調整用回路30の具体的な構成例を示す。図2は結合調整用回路30の第1の構成例として、可変インダクタL31のみで構成した例を示している。図3は結合調整用回路30の第2の構成例として、可変抵抗素子R11のみで構成した例を示している。図4は結合調整用回路30の第3の構成例として、可変インダクタL31とキャパシタC11とからなる直列共振回路で構成した例を示している。なお、キャパシタC11は可変キャパシタであっても良い。
また、図5は結合調整用回路30の第4の構成例として、T型フィルタで構成した例を示している。このT型フィルタは、互いに直列接続されたインダクタL41,L42と一端がインダクタL41,L42の間に接続され、他端が接地されたキャパシタC11とからなる。インダクタL41,L42の一端が、第1および第2の結合用巻線31,32の一端に接続されている。なお、インダクタL41,L42とキャパシタC11とのいずれか一つが可変素子であっても良い。
図6(A),(B)は、結合調整用回路30の他の構成例を示している。図6(A)は、結合調整用回路30として、π型フィルタで構成した例を示している。このπ型フィルタは、インダクタL41と一端がそれぞれインダクタL41の両端に接続されたキャパシタC11,C12とからなる。キャパシタC11,C12の他端は接地されている。インダクタL41の両端が第1および第2の結合用巻線31,32の一端に接続されている。なお、インダクタL41とキャパシタC11,C12とのいずれか一つが可変素子であっても良い。
図6(B)は、結合調整用回路30として、L型フィルタで構成した例を示している。このL型フィルタは、インダクタL41と一端がインダクタL41の一方の端部に接続されたキャパシタC11とからなる。キャパシタC11の他端は接地されている。インダクタL41の両端が第1および第2の結合用巻線31,32の一端に接続されている。なお、インダクタL41とキャパシタC11とのいずれか一つが可変素子であっても良い。
なお、結合調整用回路30の構成は以上で挙げた構成例に限らず、さらに他の構成も可能である。例えば図6(B)に示したL型フィルタにおいて、キャパシタC11がインダクタL41の他方の端部に接続されていても良い。
次に、このフィルタ回路の作用を説明する。
このフィルタ回路では、第1および第2のインダクタL1,L2同士が、第1および第2の結合用巻線31,32および結合調整用回路30を介して間接的に接続される。まず、図7(A),(B)および図8を参照して、このフィルタ回路における結合作用の原理を説明する。図7(A),(B)は、結合調整用回路30を除いた各巻線部分での結合作用を説明するための図である。
図7(A)に示したように、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2とでコア21,22が分離されると共に、それらが第1および第2の結合用巻線31,32を用いた結合電線で接続されている場合を考える。この場合において、第1のインダクタL1と第1の結合用巻線31の部分との間の相互インダクタンスをM1,結合係数をk11、第2のインダクタL2と第2の結合用巻線32の部分との間の相互インダクタンスをM2,結合係数をk12とすると、
M1=k11√L1×L11
M2=k12√L2×L12
となる。なお、√L1×L11はL1×L11の平方根、√L2×L12はL2×L12の平方根を表す。
第1のインダクタL1を構成する第1の巻線11と第1の結合用巻線31との巻数比と、第2のインダクタL2を構成する第2の巻線12と第2の結合用巻線32との巻数比とを同じ比率にすることで、等価的に第1のインダクタL1と第2のインダクタL2との結合が行われる。すなわち巻数比が同じなので、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2とのインダクタンスがL1=L2で等しく、第1の結合用巻線31の部分と第2の結合用巻線32の部分とにおけるインダクタンスがL11=L12で等しいものとすると、等価的には図7(B)のように結合した回路となる。
そこでさらに、図8に示したように第1の結合用巻線31と第2の結合用巻線32との間に周波数特性を持たせた結合調整用回路30を挿入することで、電気的に第1のインダクタL1と第2のインダクタL2との間の結合係数k1の値の制御を行うことができる。以下、その制御の具体例を述べる。
図9(A),(B)は、従来のT型フィルタ(図19)における結合係数k1の違いによる減衰量の周波数特性を計算してグラフ化して示したものである。横軸は周波数(Hz)、縦軸は減衰量(dB)を示す。図9(A)はk1がプラスの場合、図9(B)はk1がマイナスの場合の特性を示す。比較のためにk1=0の場合の特性も示す。なお、第1および第2のインダクタL101,L102のインダクタンスは互いに等しくそれぞれ2mH、キャパシタC101のキャパシタンスは2000pFに設定した。第1および第2のインダクタL101,L102の浮遊容量として、それぞれ10pFを設定した。信号の入出力インピーダンスは50Ωとした。
図9(A)の結果から分かるように、純粋なT型フィルタではk1がプラスの場合、k1=0の場合に比べて結合度が強くなるに従い(結合係数が1に近づくと)、高域側で減衰特性が悪化する傾向にある。特に、k1=0のときに見られた減衰のピークが平坦化して行く傾向にある。一方、k1がマイナスの場合、図9(B)の結果から分かるように、k1=0の場合に比べて結合度がマイナス側に強くなるに従い(結合係数が−1に近づくと)、高域側で減衰特性が悪化する部分があるが、k1=0の場合とは異なるピーク点が現れ、その部分ではk1=0の場合よりも減衰量が大きくなるような特性が得られる。このように、純粋なT型フィルタでは結合係数k1の違いにより減衰特性が変化する。
図10は、図2の第1の構成例(結合調整用回路30が可変インダクタL31のみの構成)において、第1および第2のインダクタL1,L2間の結合係数k1=0とした場合の減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。なお、上記従来のT型フィルタの場合と同様、第1および第2のインダクタL1,L2のインダクタンスは互いに等しくそれぞれ2mH、キャパシタC1のキャパシタンスは2000pFに設定した。第1および第2のインダクタL1,L1の浮遊容量として、それぞれ10pFを設定した。信号の入出力インピーダンスは50Ωとした。第1のインダクタL1と第1の結合用巻線31との結合係数k11、第2のインダクタL2と第2の結合用巻線32との結合係数k12は、共にk11,k12=0.99である。そして、結合調整用回路30である可変インダクタL31のインダクタタンス値を変化させた。インダクタタンス値が無限大の場合は、従来の純粋なT型フィルタにおいてk1=0とした場合の特性に相当する。図10の結果から分かるように、結合調整用回路30のインダクタタンス値を変えることで、従来のT型フィルタにおいてk1をマイナスにした場合の特性(図9(B))と同様な特性が得られている。すなわち、インダクタタンス値が0に近づくに従い、従来のT型フィルタにおいて結合係数k1を−1に近づけた場合と同様の特性が得られている。これは、インダクタタンス値を変えることで、従来のT型フィルタでk1を変えた場合と同様の特性が得られることを示している。
図11(A),(B)はそれぞれ、図2の第1の構成例において結合係数k1=0.1,−0.1とした場合の減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。なお、結合係数k1がマイナスの場合には、第1の結合用巻線31と結合調整用回路30との接続関係を符号31Aで示したように変えている。計算条件は図10の場合と同様として、結合調整用回路30である可変インダクタL31のインダクタタンス値を変化させた。「補正無し」とは、インダクタタンス値をゼロにした場合を示す。また比較のために、k1=0とした理想状態での特性も示す。図11(A),(B)の結果から分かるように、インダクタタンス値を変えることで減衰のピーク位置の制御が可能である。特に図11(A)の結果から分かるように、k1=0.1の場合、ノイズフィルタとして利用することを考えると、結合調整用回路30のインダクタタンス値として28μH〜30μHのときに性能的に好ましい特性が得られている。また図11(B)の結果から分かるように、k1=−0.1の場合も同様に、結合調整用回路30のインダクタタンス値として28μH〜30μHのときに性能的に好ましい特性が得られている。このように第1および第2のインダクタL1,L2間に比較的小さい磁気結合がある場合においても、結合調整用回路30の回路値を調整することでノイズフィルタとして良好な特性が得られている。
図12(A),(B)はそれぞれ、図2の第1の構成例において結合係数k1=0.3,−0.3とした場合の減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。その他の計算条件は図11(A),(B)の場合と同様である。図12(A),(B)の結果から分かるように、図11(A),(B)に示した結合係数k1が比較的小さい場合と同様に、インダクタタンス値を変えることで減衰のピーク位置の制御が可能である。すなわち、第1および第2のインダクタL1,L2間に比較的大きい磁気結合がある場合においても、結合調整用回路30の回路値を調整することでノイズフィルタとして良好な特性を得ることができる。
図13(A),(B)はそれぞれ、図3の第2の構成例(結合調整用回路30が可変抵抗素子R11のみの構成)において、結合係数k1=0.1,−0.1とした場合の減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。なお、結合係数k1がマイナスの場合には、第1の結合用巻線31と結合調整用回路30との接続関係を符号31Aで示したように変えている。結合調整用回路30が可変抵抗素子R11であること以外、基本的な計算条件は図10の場合と同様であり、その計算条件で結合調整用回路30である可変抵抗素子R11の抵抗値を変化させた。「補正無し」とは、抵抗値をゼロにした場合を示す。また比較のために、k1=0とした理想状態での特性も示す。図13(A),(B)の結果から分かるように、結合調整用回路30を可変抵抗素子R11で構成した場合、減衰のピーク位置の制御はできないものの、周波数に依存されない平坦な減衰特性が得られている。
図14は、図4の第3の構成例(結合調整用回路30が直列共振回路の構成)において、結合係数k1を変えたときの減衰量の周波数特性を計算してグラフ化して示したものである。直列共振回路におけるインダクタンスの値は300μH、キャパシタンスの値は1000pFに設定した(共振周波数は300kHz)。その他の基本的な計算条件は図10の場合と同様である。なお、結合係数k1がマイナスの場合には、第1の結合用巻線31と結合調整用回路30との接続関係を符号31Aで示したように変えている。比較のために、従来の純粋なT型フィルタにおいてk1=0とした理想状態での特性も示す。図14の結果から分かるように、結合調整用回路30を直列共振回路で構成した場合、低域側において減衰幅の大きい減衰ピークが得られている。
以上の各計算結果から分かるように、結合調整用回路30の回路構成および回路値を調整することで、様々な特徴のある減衰特性が得られる。従って、それらを任意に選択、調整することでフィルタの使用目的に応じた所望の減衰特性を得ることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1および第2のインダクタL1,L2をそれぞれ第1および第2の結合用巻線31,32に磁気的に結合すると共に、第1および第2の結合用巻線31,32を結合調整用回路30に接続し、第1および第2のインダクタL1,L2を結合調整用回路30を介して間接的に接続するようにしたので、結合調整用回路30での調整により、第1および第2のインダクタの結合度を電気的に調整、制御することが可能となる。これにより、各インダクタの物理的な配置にかかわらず、所望の減衰特性となるように各インダクタ間の結合度の調整を行うことができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るフィルタ回路について説明する。本実施の形態に係るフィルタ回路は、第1および第2の導電線を同じ位相で伝搬するコモンモードノイズを抑制する回路である。
図15は、本実施の形態に係るフィルタ回路の一構成例を示している。なお、上記第1の実施の形態におけるフィルタ回路と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付している。ここでは、上記第1の実施の形態において、結合調整用回路30を可変インダクタL31のみで構成した第1の構成例(図2)に対応する構成を示す。なお、上記第1の実施の形態と同様、調整用回路30がその他の構成であっても良い。
このフィルタ回路は、図2の構成要素に加え、入出力端子1B,2B間において第2の導電線4上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタL3,L4と、一端が第3および第4のインダクタL3,L4の間に接続され、他端が接地された第2のキャパシタC2とを備えている。第3のインダクタL3は、第1のインダクタL1と共通の第1のコア21に第3の巻線13が巻かれることにより形成されている。第4のインダクタL4は、第2のインダクタL2と共通の第2のコア22に第4の巻線14が巻かれることにより形成されている。なお、第1および第2のインダクタL1,L2と第3および第4のインダクタL3,L4とにおける各巻線の極性、巻き方の向きが図示したものとはすべて逆になっていても良い。
このフィルタ回路において、第1のインダクタL1、第3のインダクタL3および第1の結合用巻線31は、例えば共通の第1のコア21に巻かれることにより互いに磁気的に結合されている。また、第2のインダクタL2、第4のインダクタL4、および第2の結合用巻線32も、例えば共通の第2のコア22に巻かれることにより互いに磁気的に結合されている。
このフィルタ回路では、第1および第2の導電線3,4間で対応する第1および第3のインダクタL1,L3の組と第2および第4のインダクタL2,L4の組とが、結合調整用回路30を介して間接的に接続される。このフィルタ回路においても、上記第1の実施の形態と同様の原理で、結合調整用回路30の回路構成および回路値を調整することで、それらの組同士の結合度を電気的に調整、制御することができる。
なお、このフィルタ回路においても、上記第1の実施の形態と同様、第1および第3のインダクタL1,L3の組と第2および第4のインダクタL2,L4の組との間の磁気的な結合度合いは、フィルタの使用目的、所望とする特性に応じて任意の値に設定される。各組同士が磁気的に分離されていても良い。各インダクタの組は、回路基板上において任意の位置に配置することが可能である。例えば図において破断線で囲んだ部分、第1および第3のインダクタL1,L3の組の構成部分(第1の巻線11、第3の巻線13、第1のコア21および第1の結合用巻線31)と、第2および第4のインダクタL2,L4の組の構成部分(第2の巻線11、第4の巻線14、第2のコア22および第2の結合用巻線32)とにそれぞれ磁気的なシールドなどを施し、それらを任意の位置に近接配置して省スペース化を図ることなどが可能である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係るフィルタ回路について説明する。本実施の形態に係るフィルタ回路は、2本の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路に関する。
図16は、本実施の形態に係るフィルタ回路の一構成例を示している。なお、上記第1の実施の形態におけるフィルタ回路と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付している。ここでは、上記第1の実施の形態において、結合調整用回路30を可変インダクタL31のみで構成した第1の構成例(図2)に対応する構成を示す。
このフィルタ回路は、図2の構成要素に加え、入出力端子1B,2B間において第2の導電線4上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタL3,L4を備えている。図2の構成例では、第1のキャパシタC1の他端が接地されていたが、このフィルタ回路では、第1のキャパシタC1の他端が第3および第4のインダクタL3,L4の間に接続されている。第1および第2の結合用巻線31,32の一端には、第1の結合調整用回路30Aが接続されている。図2の構成例では、第1および第2の結合用巻線31,32の他端が接地されていたが、このフィルタ回路では、第1および第2の結合用巻線31,32の他端同士が接続されている。
このフィルタ回路はさらに、第3のインダクタL3に磁気的に結合された第3の結合用巻線33と、第4のインダクタL4に磁気的に結合された第4の結合用巻線34と、第3および第4の結合用巻線33,34の一端に接続された第2の結合調整用回路30Bとを備えている。第3のインダクタL3は、第3のコア23に第3の巻線13が巻かれることにより形成されている。第4のインダクタL4は、第4のコア24に第4の巻線14が巻かれることにより形成されている。第3および第4の結合用巻線33,34の一端には、第2の結合調整用回路30Bが接続されている。第3および第4の結合用巻線33,34の他端同士は接続されている。
なお、第1および第2のインダクタL1,L2と第3および第4のインダクタL3,L4とにおける各巻線の極性、巻き方の向きが図示したものとはすべて逆になっていても良い。また、図16では、第1および第2の結合調整用回路30A,30Bとしてそれぞれ、図2の構成例と同様、可変インダクタL31,L32のみで構成した例を示しているが、上記第1の実施の形態と同様に、各調整用回路30A,30Bがその他の構成であっても良い。
このフィルタ回路では、第1の導電線3上の各インダクタL1,L2と第2の導電線4上の各インダクタL3,L4とが分離された平衡分離型のノーマルモードフィルタが構成される。このフィルタ回路においても、上記第1の実施の形態と同様、第1および第2のインダクタL1,L2同士が第1の結合調整用回路30Aを介して間接的に接続される。このフィルタ回路においても、上記第1の実施の形態と同様の原理で、第1の結合調整用回路30Aの回路構成および回路値を調整することで、第1の導電線3上における第1および第2のインダクタL1,L2の結合度を電気的に調整、制御することができる。
第2の導電線4上でも同様に、第3および第4のインダクタL3,L4同士が第2の結合調整用回路30Bを介して間接的に接続される。このフィルタ回路においても、上記第1の実施の形態と同様の原理で、第2の結合調整用回路30Bの回路構成および回路値を調整することで、第2の導電線4上における第3および第4のインダクタL3,L4の結合度を電気的に調整、制御することができる。
なお、このフィルタ回路においても、第1および第2のインダクタL1,L2間の磁気的な結合度合いは、フィルタの使用目的、所望とする特性に応じて任意の値に設定される。第3および第4のインダクタL3,L4間の磁気的な結合度合いについても同様である。各インダクタ同士が磁気的に分離されていても良い。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係るフィルタ回路について説明する。本実施の形態に係るフィルタ回路は、2本の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路に関する。
図17は、本実施の形態に係るフィルタ回路の一構成例を示している。なお、上記第1の実施の形態におけるフィルタ回路と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付している。ここでは、上記第1の実施の形態において、結合調整用回路30を可変インダクタL31のみで構成した第1の構成例(図2)に対応する構成を示す。なお、上記第1の実施の形態と同様、調整用回路30がその他の構成であっても良い。
このフィルタ回路は、図2の構成要素に加え、入出力端子1B,2B間において第2の導電線4上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタL3,L4を備えている。図2の構成例では、第1のキャパシタC1の他端が接地されていたが、このフィルタ回路では、第1のキャパシタC1の他端が第3および第4のインダクタL3,L4の間に接続されている。第3のインダクタL3は、第1のインダクタL1と共通の第1のコア21に第3の巻線13が巻かれることにより形成されている。第4のインダクタL4は、第2のインダクタL2と共通の第2のコア22に第4の巻線14が巻かれることにより形成されている。なお、第1および第2のインダクタL1,L2と第3および第4のインダクタL3,L4とにおける各巻線の極性、巻き方の向きが図示したものとはすべて逆になっていても良い。
このフィルタ回路において、第1のインダクタL1、第3のインダクタL3および第1の結合用巻線31は、例えば共通の第1のコア21に巻かれることにより互いに磁気的に結合されている。また、第2のインダクタL2、第4のインダクタL4、および第2の結合用巻線32も、例えば共通の第2のコア22に巻かれることにより互いに磁気的に結合されている。
このフィルタ回路では、第1および第2の導電線3,4間の対応する第1および第3のインダクタL1,L3の組と第2および第4のインダクタL2,L4の組とが磁気的に結合された平衡結合型のノーマルモードフィルタが構成される。このフィルタ回路では、第1および第2の導電線3,4間で対応する第1および第3のインダクタL1,L3の組と第2および第4のインダクタL2,L4の組とが、結合調整用回路30を介して間接的に接続される。このフィルタ回路においても、上記第1の実施の形態と同様の原理で、結合調整用回路30の回路構成および回路値を調整することで、それらの組同士の結合度を電気的に調整、制御することができる。
なお、このフィルタ回路においても、上記第1の実施の形態と同様、第1および第3のインダクタL1,L3の組と第2および第4のインダクタL2,L4の組との間の磁気的な結合度合いは、フィルタの使用目的、所望とする特性に応じて任意の値に設定される。各組同士が磁気的に分離されていても良い。
図18は、以上で説明した第2〜第4の実施の形態に係るフィルタ回路(図15〜図17)のそれぞれについての減衰量の周波数特性を計算してグラフ化したものである。横軸は周波数(Hz)、縦軸は減衰量(dB)を示す。図15および図17の構成例については、第1および第3のインダクタL1,L3の組と第2および第4のインダクタL2,L4の組との結合係数を0に設定して計算した。図16の構成例については、第1および第2のインダクタL1,L2と第3および第4のインダクタL3,L4とにおける各部分での結合係数を0に設定して計算した。比較のために、従来のT型フィルタ(図19)において結合係数k1=0とした場合の特性も示す(図の調整回路なしのグラフ)。計算の結果、各回路値を調整することで図15〜図17のすべての構成例において、減衰特性が同一となることが確認された(図の調整回路有りのグラフ)。
なお、各実施の形態に係るフィルタ回路は、電力変換回路が発生するリップル電圧やノイズを低減する手段や、電力線通信において電力線上のノイズを低減したり、室内電力線上の通信信号が屋外電力線に漏洩することを防止する手段として利用することができる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、調整用回路は図示したものに限らず、さらに他の構成例も考えられる。
本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ回路の基本構成を示す回路図である。 調整用回路の第1の構成例を示す回路図である。 調整用回路の第2の構成例を示す回路図である。 調整用回路の第3の構成例を示す回路図である。 調整用回路の第4の構成例を示す回路図である。 調整用回路のその他の構成例を示す回路図である。 本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ回路における結合用巻線の作用を説明するための回路図である。 本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ回路における結合用巻線の作用を説明するための回路図である。 従来のT型フィルタにおいて、ライン上のコイル間の結合係数k1をプラスにした場合(A)とマイナスにした場合(B)とについて減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。 第1の構成例において、ライン上のコイル間の結合係数k1=0とした場合の減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。 第1の構成例において、ライン上のコイル間の結合係数k1=0.1にした場合(A)とk1=−0.1にした場合(B)とについて減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。 第1の構成例において、ライン上のコイル間の結合係数k1=0.3にした場合(A)とk1=−0.3にした場合(B)とについて減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。 第2の構成例において、ライン上のコイル間の結合係数k1=0.1にした場合(A)とk1=−0.1にした場合(B)とについて減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。 第3の構成例において、ライン上のコイル間の結合係数k1を変えたときの減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。 本発明の第2の実施の形態に係るフィルタ回路の一構成例を示す回路図である。 本発明の第3の実施の形態に係るフィルタ回路の一構成例を示す回路図である。 本発明の第4の実施の形態に係るフィルタ回路の一構成例を示す回路図である。 本発明の第2ないし第4の実施の形態に係るフィルタ回路の減衰量の周波数特性を計算してグラフ化した図である。 従来のT型フィルタの構成を示す回路図である。
符号の説明
C1…第1のキャパシタ、L1…第1のインダクタ、L2…第2のインダクタ、L3…第3のインダクタ、L4…第4のインダクタ、L31…調整用インダクタ、R31…調整用抵抗素子、C31…調整用キャパシタ、3…第1の導電線、4…第2の導電線、11…第1の巻線、12…第2の巻線、13…第3の巻線、14…第4の巻線、21…第1のコア、22…第2のコア、30…結合調整用回路、31…第1の結合用巻線、32…第2の結合用巻線。

Claims (6)

  1. 第1の導電線上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタと、
    一端が前記第1および第2のインダクタの間に接続され、他端が接地された第1のキャパシタと、
    前記第1のインダクタに磁気的に結合された第1の結合用巻線と、
    前記第2のインダクタに磁気的に結合された第2の結合用巻線と、
    前記第1および第2の結合用巻線に接続され、前記第1および第2のインダクタ間の磁気的な結合度を調整するための結合調整用回路と
    を備え
    前記結合調整用回路は、インダクタもしくは抵抗素子のみからなる回路か、またはインダクタとキャパシタとを含む共振回路である
    ことを特徴とするフィルタ回路。
  2. 前記第1および第2の結合用巻線のインダクタンスが、前記第1および第2のインダクタのインダクタンスに比べて小さくなっている
    ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ回路。
  3. 前記結合調整用回路のインピーダンスが、前記第1および第2の結合用巻線のインピーダンスに比べて高くなっている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ回路。
  4. 第2の導電線上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタと、
    一端が前記第3および第4のインダクタの間に接続され、他端が接地された第2のキャパシタとをさらに備え、
    前記第1のインダクタ、前記第3のインダクタおよび前記第1の結合用巻線が互いに磁気的に結合されると共に、前記第2のインダクタ、前記第4のインダクタ、および前記第2の結合用巻線が互いに磁気的に結合されている
    ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  5. 第1および第2の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路であって、
    第1の導電線上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタと、
    第2の導電線上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタと、
    一端が前記第1および第2のインダクタの間に接続され、他端が前記第3および第4のインダクタの間に接続されたキャパシタと、
    前記第1のインダクタに磁気的に結合された第1の結合用巻線と、
    前記第2のインダクタに磁気的に結合された第2の結合用巻線と、
    前記第1および第2の結合用巻線に接続され、前記第1および第2のインダクタ間の磁気的な結合度を調整するための第1の結合調整用回路と、
    前記第3のインダクタに磁気的に結合された第3の結合用巻線と、
    前記第4のインダクタに磁気的に結合された第4の結合用巻線と、
    前記第3および第4の結合用巻線に接続され、前記第3および第4のインダクタ間の磁気的な結合度を調整するための第2の結合調整用回路と
    を備え
    前記第1および第2の結合調整用回路はそれぞれ、インダクタもしくは抵抗素子のみからなる回路か、またはインダクタとキャパシタとを含む共振回路である
    ことを特徴とするフィルタ回路。
  6. 第1および第2の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路であって、
    第1の導電線上で互いに直列的に接続された第1および第2のインダクタと、
    第2の導電線上で互いに直列的に接続された第3および第4のインダクタと、
    一端が前記第1および第2のインダクタの間に接続され、他端が前記第3および第4のインダクタの間に接続されたキャパシタと、
    前記第1のインダクタおよび前記第3のインダクタに磁気的に結合された第1の結合用巻線と、
    前記第2のインダクタおよび前記第4のインダクタに磁気的に結合された第2の結合用巻線と、
    前記第1および第2の結合用巻線に接続され、前記第1および第3のインダクタと前記第2および第4のインダクタとの間の磁気的な結合度を調整するための結合調整用回路と
    を備え
    前記結合調整用回路は、インダクタもしくは抵抗素子のみからなる回路か、またはインダクタとキャパシタとを含む共振回路である
    ことを特徴とするフィルタ回路。
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