JP4287701B2 - エスカレータの踏段 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、エスカレータの踏段に関する発明であって、特に繊維強化樹脂材を使用した踏段に係る発明である。
【0002】
【従来の技術】
従来のエスカレータの踏段は、アルミニウムダイカストで鋳造成形したものに、付着性、耐摩耗性及びスリップ防止効果等を配慮した塗料が表面に塗装されていた。しかし、踏板の踏面は、乗客に頻繁に踏まれるために塗装が剥がれ易く、使用による意匠性の低下が著しいので、踏面の塗装は、通常、予め削り取って工場から出荷されていた。このため、踏面はアルミニウム素材の地色が露出していた。踏面の着色の有無は踏段の意匠性に大きく影響し、アルミニウム素材の地色のみでは意匠性に富んだ踏段を提供することは困難であった。
【0003】
これに対して、繊維強化樹脂(以下、「FRP」という。)は、樹脂自体への着色が可能なことから色落ちがなく、また、着色も容易であって、アルミニウム製の踏段では実現困難な特性を有することから、踏段をFRP製とすることが提案されている。
即ち、踏板と踏段本体を樹脂製とし、踏板はボルトをインサートして一体射出成形し、上記ボルトにナットを螺合させて踏段本体に固定する(例えば、特許文献1参照)。
また、踏板の四隅に一体射出成形によってリベットを設け、このリベットによって踏段本体に踏板を固定するようにしたものも提案されている(同じく特許文献1参照)。
更に、踏板を樹脂材のモールド成形品とし、踏段本体を金属製とした踏段(例えば、特許文献2参照)は、製作及び組立てに多大な時間を要するとして、この点を改良するため、踏段全体を樹脂製とし、踏板の裏面に長手方向に補強リブを設けようにしたものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−316064号公報(段落番号10〜11、図1〜図3)
【特許文献2】
実公昭40−7155号公報
【特許文献3】
特開2001−316065号公報(段落番号2、4、12、14、図1〜図3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のエスカレータの踏段において、上記のとおり踏段全体を樹脂製とした場合、高い剛性を必要とする踏板部やライザ部は、肉厚を増すか、又は、補強リブを多数具えなければならなかった。このため、材料コストが大幅に増加する、という問題があった。
特に、踏段の両端に設けられるブラケットは、前部に前輪軸が取り付けられ、後部には後輪が取り付けられ、踏段全体を支持してレールに沿って周回するものである。このため、ブラケットは多軸の応力を受け、樹脂製とする場合は特に肉厚を増すか、多数の補強リブを配置する必要があり、形状が複雑化する、という問題もあった。
また、踏板を樹脂材のモールド成形品とし、踏段本体を金属製とした踏段では、金具を介して踏板を踏段本体にボルトで固定していたので、製作が面倒である、という問題があった。
【0006】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、樹脂材を採用して意匠性を向上させると共に、構造の簡素なエスカレータの踏段を得るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るエスカレータの踏段は、ブラケットをアルミニウム材で成形して踏板とライザを取り付ける取付座を設け、FRPで成形した踏板及びライザを取付座にそれぞれ接着剤で取り付けるようにしたものである。
【0008】
また、左右のブラケットを強固に連結すると共に、踏板及びライザをブラケットに強固に取り付けるため、ブラケットをアルミニウム材で成形して左右のブラケット相互を連結具で連結し、FRPで成形した踏板及びライザを上記連結具に接着剤で取り付けるようにしたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1及び図2は、この発明の実施の形態1を示す。図1は、エスカレータの踏段の中間部の縦断面図であり、図2は踏段を展開した斜視図である。図において、踏段は、前輪軸2を介して踏段チェーン1に取り付けられて循環する。
ブラケット3はアルミニウム材で成形され、前部下端が取付金具4とボルト4aによって前輪軸2に取り付けられており、この取付部から後方へ延びる傾斜梁3aと、この傾斜梁3aの上記取付部から上方へ立設された前柱3bと、傾斜梁3aの後部から上方へ立設された後柱3cとからなる。従って、左右のブラケット3は前輪軸2によって連結されている。前柱3bの上端には上面が平坦な前部取付座5が設けられている。後柱3cの中間部には外側面が湾曲した下部取付座10が後方へ向けて突設されており、後柱3cの上端には上面が平坦な後部取付座6が設けられている。
【0010】
ここで、前部取付座5の上面と後部取付座6の上面とは同一平面となるように仕上られていて、後述の踏板8の裏面が接着固定される。
また、後部取付座6の後部は、上部取付座9として機能し、その外側面は下部取付座10の外側面と対をなし、後述のライザ11の裏面が接着固定される。
いずれの取付座5、6、9及び10も、必要な接着強度を得るのに十分な接着面積を具えている。
【0011】
乗客を載せて移動する踏板8と、この踏板8の後端部から垂下して隣接する踏板8相互の段差を塞ぐライザ11は、いずれもFRPで成形されている。踏板8は前部取付座5と後部取付座6に載置されて接着剤7で固着されている。また、ライザ11は、上部取付座9の外側面と下部取付座10の外側面に接着剤7で固着されている。
前輪12は、左右両側のブラケット3と踏段チェーン1の間で前輪軸2に取り付けられている。また、後輪13はブラケット3を構成する傾斜梁3aの後端部に取り付けられている。それぞれ傾斜レール(図示しない。)に沿って転動して踏段を周回移動させる。
なお、ブラケット3はアルミニウムの成形品としたが、アルミニウム又はアルミニウム合金の鋳物、特にダイカストによる成形品が適する。
また、FRPは、強度及び量産性の点から、エポキシアクリレート樹脂又はポリアミド樹脂等が適する。
接着剤7は、例えば、エポキシ樹脂系の弾性接着剤が適する。
【0012】
上記実施の形態1によれば、踏板8とライザ11は、FRPで成形されたので、FRP自体を着色することにより色褪せのない踏段とすることができる。このため、踏段の意匠性を向上させることができる。
また、踏板8及びライザ11をアルミニウム材に替えてFRPとしたので、踏段の軽量化が可能となった。
また、ブラケット3はアルミニウム材で成形したので、FRPで製作する場合に比べて製造コストを抑えることができると共に、踏段の周回移動時に発生する多軸の応力にも十分耐え得るので、強度上の信頼を低下させることはない。
更に、踏板8は、前部取付座5と後部取付座6に接着剤7で接着され、ライザ11は、上部取付座9と下部取付座10に接着剤7で接着固定されるので、取付けが容易である。しかも、十分な接着面積を具えているので、強固に接着することができた。
【0013】
実施の形態2.
この実施の形態2は、踏板8及びライザ11の裏面に、長手を左右方向へ向けて補強材を貼着して強度を向上させたものである。
図3及び図4は、この発明の実施の形態2を示し、図3は、エスカレータの踏段の中間部の縦断面図であり、図4は、踏段を裏側下方から見た斜視図である。図中、図1及び図2と同符号は同一部分を示す。
【0014】
踏板8の裏面前部には、前部取付座5に隣接して前部補強材21が長手を左右方向へ向けて接着剤7で接着されている。前部補強材21の後方で踏板8の裏面中央部に後部補強材22が長手を左右方向へ向けて接着剤7で接着されている。また、ライザ11の裏面には、上部取付座9と下部取付座10との中間部に、長手を左右方向へ向けてライザ補強材23が接着剤7で接着されている。
なお、補強材21、22及び23は、その質量、強度及びコストの点から、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金の鋳物、特にダイカストによる成形品が適し、断面形状は、溝形の他に、ハット形又は角パイプ形であってもよい。
【0015】
上記実施の形態2によれば、実施の形態1と同様にFRPを使用したことにより、踏段の意匠性の向上と軽量化を図ることができた。
また、踏板8の裏面に前部補強材21と後部補強材22を貼着して補強したので、踏板8を薄くさせることができ、コストを下げることができた。特に、乗客の乗降する踏板8の中央部に後部補強材22を貼着したので、踏板8は十分な強度を有し、乗客は違和感なく踏段に乗降することができる。
更に、ライザ11の裏面にライザ補強材23を貼着して補強したので、ライザ11を薄くすることができ、コストを下げることができた。
更にまた、各補強材21、22及び23は、接着剤7で接着することができるので、取付けが容易である。
【0016】
実施の形態3.
この実施の形態3は、左右のブラケット25相互を連結具で連結し、この連結具にFPRで成形して踏板8及びライザ11を貼着したものである。
図5及び図6は、この発明の実施の形態3を示し、図5は、エスカレータの踏段の中間部の縦断面図であり、図6は、踏段を裏側下方から見た斜視図である。図中、図1及び図2と同符号は同一部分を示す。
【0017】
ブラケット25はアルミニウム材で成形され、前部下端が取付金具4とボルト4aによって前輪軸2に取り付けられており、この取付部から後方へ延びる傾斜梁25aと、この傾斜梁25aの上記取付部から上方へ立設された前柱25bと、傾斜梁25aの後部から上方へ立設された後柱25cと、前柱25bと後柱25cとを連結する上梁25dとからなる。上梁25dの前部には、左右両側に前部取付座26が、また、後部の左右両側に後部取付座27が、それぞれ水平方向へ突設されている。上記各部からなるブラケット25は一体成形されたものである。
【0018】
左右の前部取付座26には中空の平角柱からなる前部連結具31がボルト31aによって締結されて両ブラケット25を前部で連結している。
また、左右の後部取付座27には中空の平角柱からなる後部連結具32がボルト32aによって締結されて両ブラケット25を後部で連結している。
更に、溝形の下部連結具28は、両端を左右の後柱25cの内側側面に当接させ、ボルト29aによって締結されている。
更にまた、左右のブラケット25の後柱25cの外側側面には、下部連結具28の延長線上に溝形のライザ補強材29がボルト29aによって締結されている。
従って、前部連結具31、後部連結具32及び下部連結具28は、左右のブラケット25相互を連結する連結具として機能するものである。
【0019】
また、前部連結具31と後部連結具32の上面は同一平面上にあり、踏板8の下面が接着剤7によって固着されている。従って、前部連結具31と後部連結具32は、左右方向の全幅に亙って踏板8が貼着される取付座として、また、踏板8を下支えする補強材としても機能する。
同様に、後部連結具32の外側面、下部連結具28及びライザ補強材29には、ライザ11が接着剤7によって固着されている。従って、後部連結具32、下部連結具28及びライザ補強材29は、左右方向の全幅に亙ってライザ11に貼着される取付座として、また、ライザ11を裏側から支えする補強材としても機能する。
なお、各連結具28、31、32及びライザ補強材29は、ボルト29a、31a、32aによって踏板8及びライザ11に締結される、としたが、一体成形されるものとしてもよい。
また、上記実施の形態3では、各連結具28、31、32が補強材としても機能することから、補強材を明示しなかったが、必要に応じて使用することができる。その具体的な内容は、実施の形態2と同様であり、容易に類推できるので、説明を省略する。
【0020】
上記実施の形態3によれば、左右のブラケット25を、前部連結具31、後部連結具32及び下部連結具28で連結したので、ブラケット25相互を一体化することができ、強固に組み立てることができる。このため、踏段の周回移動時に発生する多軸の応力にも十分耐えることができ、局部的な応力集中にも耐えることができる。即ち、FRPが使用された踏段であっても、強度を向上させることができた。
【0021】
また、実施の形態1及び実施の形態2と同様にFRPを使用したことにより、踏段の意匠性の向上と軽量化を図ることができた。
更に、前部連結具31と後部連結具32で踏板8を補強したので、踏板8を薄くさせることができ、コストを下げることができた。
同様に、後部連結具32の外側面と下部連結具28及びライザ補強材29を、ライザ11の裏側に貼着して補強したので、ライザ11を薄くさせることができ、コストを下げることができた。
更にまた、各補強材21、22及び23は、踏板8及びライザ11に接着剤7で貼着されるので、取付けが容易である。
【0022】
【発明の効果】
この発明に係るエスカレータの踏段は、以上説明したとおり、ブラケットをアルミニウム材で成形して踏板とライザを取り付ける取付座を設け、FRPで成形した踏板及びライザを取付座にそれぞれ接着剤で取り付けたものである。
このため、FRP自体を着色することにより色褪せのない踏段とすることができ、踏段の意匠を向上させることができる。また、軽量化が可能となった。更に、踏板及びライザは取付座に貼着されるので、強固に取り付けることができる、という効果を併せて奏する。
【0023】
また、ブラケットをアルミニウム材で成形して左右のブラケット相互を連結具で連結すると共に、この連結具にFRPで成形した踏板及びライザを接着剤で取り付けたものである。
このため、左右のブラケット相互を一体化して強固に組み立てることができ、踏段の周回移動時に発生する多軸の応力にも十分耐えることができると共に、局部的な応力集中にも耐えることができる。即ち、強度上の信頼を低下させることはない、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段の中間部の縦断面図。
【図2】 この発明の実施の形態1におけるエスカレータの踏段を展開した斜視図。
【図3】 この発明の実施の形態2におけるエスカレータの踏段の中間部の縦断面図。
【図4】 この発明の実施の形態2におけるエスカレータの踏段を裏側下方から見た斜視図。
【図5】 この発明の実施の形態3におけるエスカレータの踏段の中間部の縦断面図。
【図6】 この発明の実施の形態3におけるエスカレータの踏段を裏側下方から見た斜視図。
【符号の説明】
1 踏段チェーン、 2 前輪軸、 3 ブラケット、 3a 傾斜梁、 3b 前柱、 3c 後柱、 4 取付金具、 4a ボルト、 5 前部取付座、 6 後部取付座、 7 接着剤、 8 踏板、 9 上部取付座、 10 下部取付座、 11 ライザ、 12 前輪、 13 後輪、 21 前部補強材、 22 後部補強材、 23 ライザ補強材、 25 ブラケット、 25a 傾斜梁、 25b 前柱、 25c 後柱、 25d 上梁、 26 前部取付座、 27 後部取付座、 28 下部連結具、 29 ライザ補強材、 29a ボルト、 31 前部連結具、 31a ボルト、 32 後部連結具、 32a ボルト。
Claims (3)
- 前輪軸を介して踏段チェーンに取り付けられて斜路を循環する左右一対のブラケットと、このブラケットに取り付けられて乗客を載せて移動する踏板と、この踏板の後端部から垂下されて上記踏板相互の段差を塞ぐライザとからなるエスカレータの踏段において、上記ブラケットをアルミニウム材で成形して上記踏板と上記ライザを取り付ける取付座を設け、上記踏板及び上記ライザを繊維強化樹脂材で成形して上記取付座にそれぞれ接着剤で取り付けたことを特徴とするエスカレータの踏段。
- 前輪軸を介して踏段チェーンに取り付けられて斜路を循環する左右一対のブラケットと、このブラケットに取り付けられて乗客を載せて移動する踏板と、この踏板の後端部から垂下されて上記踏板相互の段差を塞ぐライザとからなるエスカレータの踏段において、上記ブラケットをアルミニウム材で成形して左右の上記ブラケット相互を連結具で連結し、上記踏板及び上記ライザを繊維強化樹脂材で成形して上記連結具に接着剤で取り付けたことを特徴とするエスカレータの踏段。
- 踏板及びライザの裏面に補強材を固着したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエスカレータの踏段。
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