以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
A.実施形態の構成
本発明は、光ディスクの記録面に対してレーザ光を照射して情報を記録する光ディスク記録装置であり、このような記録面に対する情報記録だけではなく、記録面と反対側の面に感熱面が形成された光ディスクの当該感熱面にレーザ光を照射することにより画像データに対応する可視画像を形成する機能を有している。以下においては、まず上記のような可視画像を形成することが可能な光ディスクの構成について説明し、その後当該光ディスクに対して情報記録および可視画像の形成を実施することができる光ディスク記録装置の構成について説明する。
A−1.光ディスクの構成
まず、図1は、一方の面に情報を記録することが可能であり、他方の面に可視画像を形成することが可能な円盤状の光ディスクの構成を示す側断面図である。図1に示すように、この光ディスクDは、保護層201と、記録層(記録面)202と、反射層203と、保護層204と、感熱層(感熱面)205と、保護層206とを有しており、これらが上記の順序で積層された構造となっている。なお、図は光ディスクDの構造を模式的に示しており、各層の寸法比等はこの図に示される通りではない。
記録層202には、その面上に螺旋状にプリグルーブ(案内溝)202aが形成されており、当該光ディスクDに対して情報を記録するときには、このプリグルーブ202aに沿ってレーザ光を照射することになる。したがって、情報を記録する時には、当該光ディスクDの保護層201側(図の上側)の面(以下、記録面という)を光ディスク記録装置の光ピックアップと対向するようにセットし、当該光ピックアップが照射するレーザ光を上記プリグルーブ202aに沿って移動させることにより情報記録が行われる。一方、当該光ディスクDの面上に可視画像を形成する場合には、保護層206側の面(以下、感熱面という)が本発明に係る光ディスク記録装置の光ピックアップと対向するように光ディスクDをセットする。そして、感熱層205にレーザ光を照射することにより、感熱層205の所望の位置を熱変色させて可視画像を形成する。以上のようにこの光ディスクDは、感熱層205が設けられている以外は従来から使用されているCD−Rとほぼ同様の構成であり、記録層202等の詳細な構成についてはその説明を省略する。なお、本明細書において、「感熱面」は、レーザ光が照射された場合に発色が変化する面であり、このような性質を有する感熱層205によって形成される面である。
A−2.光ディスク記録装置の構成
次に、図2は本発明の一実施形態に係る光ディスク記録装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この光ディスク記録装置100は、ホストパーソナルコンピュータ(PC)110に接続されており、光ピックアップ10と、スピンドルモータ11と、RF(Radio Frequency)アンプ12と、サーボ回路13と、デコーダ15と、制御部16と、エンコーダ17と、ストラテジ回路18と、レーザドライバ19と、レーザパワー制御回路20と、周波数発生器21と、ステッピングモータ30と、モータドライバ31と、モータコントローラ32と、PLL(Phase Locked Loop)回路33と、FIFO(First In First Out)メモリ34と、駆動パルス生成部35と、バッファメモリ36とを備えている。
スピンドルモータ11は、データを記録する対象となる光ディスクDを回転駆動するモータであり、サーボ回路13によりその回転数が制御される。本実施形態における光ディスク記録装置100では、CAV(Constant Angular Velocity)方式で記録等を実施するようになっているので、スピンドルモータ11は制御部16等からの指示で設定された一定の角速度で回転するようになっている。
光ピックアップ10は、スピンドルモータ11によって回転させられる光ディスクDに対してレーザ光を照射するユニットであり、その構成を図3に示す。同図に示すように、光ピックアップ10はレーザービームBを出射するレーザーダイオード53と、回折格子58と、レーザービームBを光ディスクDの面に集光する光学系55と、反射光を受光する受光素子56とを備えている。
光ピックアップ10において、レーザーダイオード53は、レーザドライバ19(図2参照)から駆動電流が供給されることにより該駆動電流に応じた強度のレーザービームBを出射する。光ピックアップ10は、レーザーダイオード53より出射されたレーザービームBを回折格子58により主ビームと先行ビームと後行ビームに分離し、この3つのレーザービームを偏光ビームスプリッタ59、コリメータレンズ60、1/4波長板61、対物レンズ62を経て、光ディスクDの面に集光させる。そして、光ディスクDの面で反射された3つのレーザービームを、再び対物レンズ62、1/4波長板61、コリメータレンズ60を透過させて、偏光ビームスプリッタ59で反射させ、シリンドリカルレンズ63を経て、受光素子56に入射させるようになっている。受光素子56は受光した信号をRFアンプ12(図2参照)に出力し、該受光信号がRFアンプ12を介して制御部16やサーボ回路13に供給されるようになっている。
対物レンズ62は、フォーカスアクチュエータ64およびトラッキングアクチュエータ65に保持されて、レーザービームBの光軸方向および光ディスクDの径方向に移動できるようになっている。フォーカスアクチュエータ64およびトラッキングアクチュエータ65の各々は、サーボ回路13(図2参照)から供給されるフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号に応じて対物レンズ62を光軸方向および径方向に移動させる。なお、サーボ回路13は、受光素子56およびRFアンプ12を介して供給される受光信号に基づいてフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成し、上記のように対物レンズ62を移動させることでフォーカス制御およびトラッキング制御を行う。
また、光ピックアップ10には、図示しないフロントモニターダイオードを有しており、レーザーダイオード53がレーザ光を出射しているときに、当該出射光を受光したフロントモニタダイオードに電流が生じ、当該電流が光ピックアップ10から図2に示すレーザパワー制御回路20に供給されるようになっている。
RFアンプ12は光ピックアップ10から供給されたEFM(Eight to Fourteen Modulation)変調されたRF信号を増幅し、増幅後のRF信号をサーボ回路13およびデコーダ15にRF信号を出力する。デコーダ15は、再生時にはRFアンプ12から供給されるEFM変調されたRF信号をEFM復調して再生データを生成する。
サーボ回路13には、制御部16からの指示信号、周波数発生器21から供給されるスピンドルモータ11の回転数に応じた周波数のFGパルス信号、およびRFアンプ12からのRF信号が供給される。サーボ回路13は、これらの供給される信号に基づいて、スピンドルモータ11の回転制御および光ピックアップ10のフォーカス制御、トラッキング制御を行う。光ディスクDの記録面(図1参照)に情報を記録する時や、光ディスクDの感熱面(図1参照)に可視画像を形成する場合のスピンドルモータ11の駆動方式としては、光ディスクDを角速度一定で駆動する方式(CAV:Constant Angular Velocity)方式や、一定の記録線速度となるように光ディスクDを回転駆動する方式(CLV:Constant Linear Velocity)のいずれを用いるようにしてもよく、本実施形態に係る光ディスク記録装置100では、CAV方式を採用しており、サーボ回路13はスピンドルモータ11を制御部16によって指示された一定の角速度で回転駆動させる。
バッファメモリ36は、ホストPC110から供給される、光ディスクDの記録面に記録すべき情報(以下、記録データという)および光ディスクDの感熱面に形成すべき可視画像に対応した情報(以下、画像データ)を蓄積する。そして、バッファメモリ36に蓄積された記録データをエンコーダ17に出力され、画像データは制御部16に出力される。
エンコーダ17は、バッファメモリ36から供給される記録データをEFM変調し、ストラテジ回路18に出力する。ストラテジ回路18は、エンコーダ17から供給されたEFM信号に対して時間軸補正処理等を行い、レーザドライバ19に出力する。
レーザドライバ19は、ストラテジ回路18から供給される記録データに応じて変調された信号と、レーザパワー制御回路20の制御にしたがって光ピックアップ10のレーザダイオード53(図3参照)を駆動する。
レーザパワー制御回路20は、光ピックアップ10のレーザダイオード53(図3参照)から照射されるレーザパワーを制御するものである。具体的には、レーザパワー制御回路20は、制御部16によって指示される最適なレーザパワーの目標値と一致する値のレーザ光が光ピックアップ10から照射されるようにレーザドライバ19を制御する。ここで行われるレーザパワー制御回路20によるレーザパワー制御は、光ピックアップ10のフロントモニタダイオードから供給される電流値を用い、目標となる強度のレーザ光が光ピックアップ10から照射されるように制御するフィードバック制御である。
FIFOメモリ34には、ホストPC110から供給されバッファメモリ36に蓄積された画像データが制御部16を介して供給され順次蓄積される。ここで、FIFOメモリ34に蓄積される画像データ、すなわちホストPC110から当該光ディスク記録装置100に供給される画像データは以下のような情報を含んでいる。この画像データは、円盤状の光ディスクDの面上に可視画像を形成するためのデータであり、図4に示すように、光ディスクDの中心Oを中心とした多数の同心円上のn個の各座標(図中黒点で示す)毎にその階調度(濃淡)を示す情報が記述されている。当該画像データは、これらの各座標の階調度を示す情報が最内周側の円に属する座標点P11、P12……P1n、その1つ外周側の円に属する座標P21、P22……P2n、さらにその1つ外周側の円に属する座標といった順序で最外周の円の座標Pmnまでの各々座標点の階調度を示す情報が記述されたデータであり、FIFOメモリ34にはこのような極座標上の各座標の階調度を示す情報が上記のような順序で供給されることになる。なお、図4は各座標の位置関係を明瞭に示すために模式的に示す図であり、実際の各座標は図示したものよりも密に配置されることになる。また、ホストPC110において、一般的に使用されるビットマップ形式等で光ディスクDの感光面に形成する画像データを作成した場合には、当該ビットマップデータを上記のような極座標形式のデータに変換し、変換後の画像データをホストPC110から光ディスク記録装置100に送信するようにすればよい。
上記のように供給される画像データに基づいて、光ディスクDの感熱面に対して可視画像を形成する際、FIFOメモリ34には、PLL回路33から画像記録用のクロック信号が供給されるようになっている。FIFOメモリ34は、この画像記録用のクロック信号のクロックパルスが供給される毎に、最も先に蓄積された一つの座標の階調度を示す情報を駆動パルス生成部35に出力するようになっている。
駆動パルス生成部35は、光ピックアップ10から照射するレーザ光の照射タイミング等を制御する駆動パルスを生成する。ここで、駆動パルス生成部35は、FIFOメモリ34から供給される各座標毎の階調度を示す情報に応じたパルス幅の駆動パルスを生成する。例えば、ある座標の階調度が比較的大きい場合(濃度が大きい場合)には、図5上段に示すようにライトレベル(第2の強度)のパルス幅を大きくした駆動パルスを生成し、一方階調度が比較的小さい座標については図5下段に示すようにライトレベルのパルス幅を小さくした駆動パルスを生成する。ここで、ライトレベルとは、そのレベルのレーザパワーを光ディスクDの感熱面に照射した際に感熱面(感熱層205)が明らかに変色するパワーレベルであり、上記のような駆動パルスがレーザドライバ19に供給された場合、そのパルス幅に応じた時間だけライトレベルのレーザ光が光ピックアップ10から照射される。したがって、階調度が大きい場合にはより長くライトレベルのレーザ光が照射され、光ディスクDの感熱面の単位領域中のより大きな領域が変色することになり、この結果ユーザ等はこの領域が濃度の濃い領域であると視覚的に認識することになる。本実施形態では、このように単位領域(単位長さ)あたりの変色させる領域の長さを可変することにより、画像データに示される階調度を表現するようにしているのである。なお、サーボレベル(第1の強度)とは、そのレベルのレーザパワーを光ディスクDの感熱面に照射した際に感熱面がほとんど変化しないパワーレベルであり、変色させる必要がない領域に対してはライトレベルのレーザ光を照射せずに当該サーボレベルのレーザ光を照射すればよい。
また、駆動パルス生成部35は、上記のような各座標毎の階調度を示す情報にしたがった駆動パルスを生成するとともに、レーザパワー制御回路20によるレーザパワー制御や、サーボ回路13によるフォーカス制御およびトラッキング制御を実施するために必要がある場合には、各々上記階調度を示す情報に拘わらず、非常に短い期間のライトレベルのパルスを挿入したり、サーボレベルのパルスを挿入する。例えば、図6上段に示すように、画像データ中のある座標の階調度にしたがって可視画像を表現するために、時間T1の期間ライトレベルのレーザ光を照射する必要がある場合であって、該時間T1がレーザパワーを制御するための所定のサーボ周期STよりも長い場合には、ライトレベルのパルスを生成した時点からサーボ周期STが経過した時点で非常に短い時間tのサーボ用オフパルス(SSP1)を挿入する。一方、図6下段に示すように、画像データ中のある座標の階調度にしたがって可視画像を表現するためにサーボ周期ST以上の期間サーボレベルのレーザ光を照射する必要がある場合には、サーボレベルのパルスが生成されてからサーボ周期ST経過後にサーボ用オンパルス(SSP2)を挿入する。
上述したようにレーザパワー制御回路20によるレーザパワー制御は、光ピックアップ10のレーザーダイオード53(図3参照)から照射されるレーザ光を受光したフロントモニターダイオードから供給される電流(照射レーザ光の強度に応じた値の電流)に基づいて実施されることになる。より具体的には、図7に示すように、レーザパワー制御回路20は、上記のようなフロントモニターダイオード53aによって受光される照射レーザ光の強度に応じた値をサンプルホールドする(S201、S202)。そして、ライトレベルを目標値として照射しているとき、すなわちライトレベルの駆動パルス(図5,図6参照)が生成されているときにサンプルホールドした結果に基づいて、制御部16から供給されるライトレベル目標値のレーザ光が照射されるようレーザパワー制御を行う(S203)。また、サーボレベルを目標値として照射しているとき、すなわちサーボレベルの駆動パルス(図5,図6参照)が生成されているときにサンプルホールドした結果に基づいて、制御部16から供給される目標サーボレベル値のレーザ光が照射されるようレーザパワー制御を行う(S204)。したがって、ライトレベルもしくはサーボレベルのパルスが所定のサーボ周期ST(サンプル周期)より長い時間継続して出力されない場合には、画像データの内容に拘わらず上記のようにサーボ用オフパルスSSP1、サーボ用オンパルスSSP2を強制的に挿入し、上記のような各々のレベル毎にレーザパワー制御ができるようにしているのである。
また、上述したようにサーボ用オフパルスSSP1を挿入するのは、レーザパワーを制御するためだけではなく、サーボ回路13によるフォーカス制御やトラッキング制御を行うためにも実施されている。すなわち、トラッキング制御およびフォーカス制御は、光ピックアップ10の受光素子56(図3参照)によって受光されたRF信号、つまりレーザーダイオード53が出射したレーザ光の光ディスクDからの戻り光(反射光)に基づいて行われる。ここで、図8に感熱層205(図1参照)にレーザ光を照射した時に受光素子56によって受光される信号の一例を示す。同図に示すように、ライトレベルのレーザ光を照射した時の反射光は、レーザ光立ち上がり時のピーク部分K1、その後レベルが一定になる肩部分K2の要素を含んでおり、図中斜線で示す部分が感熱層205の変色のために用いられたエネルギーであると考えられる。そして、このような感熱層205の変色に用いられるエネルギーは常に安定した値となるとは限らず、種々の状況に応じて変動することが考えられる。したがって、図中斜線部分の形状はその都度変動することが考えられ、つまりライトレベルのレーザ光の反射光はノイズ等が多く安定した反射光が得られるとは限らず、この反射光を用いると、正確なフォーカス制御およびトラッキング制御の妨げとなってしまうおそれがある。したがって、上述したようにライトレベルのレーザ光が継続して長時間照射された場合には、サーボレベルのレーザ光の反射光を得ることができず、正確なフォーカス制御およびトラッキング制御が行えなくなってしまう。
そこで、上述したようにサーボ用オフパルスSSP1を挿入することにより、サーボレベルのレーザ光の反射光を周期的に取得できるようにし、該取得した反射光に基づいてフォーカス制御およびトラッキング制御を実行しているのである。光ディスクDの感熱面に可視画像を形成する際には、記録面に対して記録する際と異なり、予め形成されたプリグルーブ(案内溝)等に沿ってトレースするといった必要がない。したがって、本実施形態では、トラッキング制御の目標値は固定値(一定のオフセット電圧を設定しておく)としている。
なお、このような制御方法は、感熱面に画像情報を形成する場合のみならず、記録面に画像情報を形成する場合にも適用できる。すなわち、レーザ光を照射したときに反射率だけでなく発色も変化する材質を記録面(記録層202)に用いれば、感熱面と同様、記録面にも画像を形成させることが可能である。このように記録面に可視画像を形成させると、可視画像を形成した部分には当然ながら本来のデータ記録はできなくなるので、データ記録をする領域と可視画像を形成させる領域とを予め分けておくのが好ましい。
なお、上記のようにサーボ用オフパルスSSP1やサーボ用オフパルスSSP2を挿入する時間は、レーザパワー制御、トラッキング制御およびフォーカス制御といった各種サーボの実行に支障をきたさない範囲で最小の時間とすることが好ましく、挿入時間を非常に短くすることで、形成される可視画像にほとんど影響を与えることなく、上記のような各種サーボを行うことができる。
図2に戻り、PLL回路(信号出力手段)33は、周波数発生器21から供給されるスピンドルモータ11の回転速度に応じた周波数のFGパルス信号を逓倍し、後述する可視画像形成のために用いられるクロック信号を出力する。周波数発生器21は、スピンドルモータ11のモータドライバにより得られる逆起電流を利用してスピンドル回転数に応じた周波数のFGパルス信号を出力する。例えば、図9上段に示すように、周波数発生器21がスピンドルモータ11が1回転、すなわち光ディスクDが1回転している間に8個のFGパルスを生成するものである場合に、図9下段に示すように、PLL回路33は当該FGパルスを逓倍したクロック信号(例えばFGパルス信号5倍の周波数、光ディスクDが1回転中にHレベルのパルスが40個)を出力する、つまりスピンドルモータ11によって回転させられる光ディスクDの回転速度に応じた周波数のクロック信号を出力する。このようにFGパルス信号を逓倍したクロック信号がPLL回路33からFIFOメモリ34に出力され、該クロック信号に1周期毎、つまりある一定角度分ディスクDが回転する毎に1つの座標の階調度を示すデータがFIFOメモリ34から駆動パルス生成部35に出力されるのである。なお、上記のようにPLL回路33を用いてFGパルスを逓倍したクロック信号を生成するようにしてもよいが、スピンドルモータ11として、回転駆動能力が十分に安定しているモータを用いた場合には、PLL回路33に代えて水晶発振器を設け、上記のようなFGパルスを逓倍したクロック信号、すなわち光ディスクDの回転速度に応じた周波数のクロック信号を生成するようにしてもよい。
ステッピングモータ30は、光ピックアップ10を当該光ディスクDにセットされた光ディスクDの径方向に移動させるためのモータである。モータドライバ31は、モータコントローラ32から供給されるパルス信号に応じた量だけステッピングモータ30を回転駆動する。モータコントローラ32は、制御部16から指示される光ピックアップ10の径方向への移動方向および移動量を含む移動開始指示にしたがって、移動量や移動方向に応じたパルス信号を生成し、モータドライバ31に出力する。ステッピングモータ30が光ピックアップ10を光ディスクDの径方向に移動させること、および光ディスクDをスピンドルモータ11が光ディスクDを回転させることにより、光ピックアップ10のレーザ光照射位置を光ディスクDの様々な位置に移動させることができ、これらの構成要素が照射位置調整手段を構成しているのである。
制御部16は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等から構成されており、ROMに格納されたプログラムにしたがって当該光ディスク記録装置100の装置各部を制御し、光ディスクDの記録面に対する記録処理および光ディスクDの感熱面に対する画像形成処理を中枢的に制御するように構成されている。
以上説明したのが本実施形態に係る光ディスク記録装置100の構成である。
B.実施形態の動作
次に、上記構成の光ディスク記録装置100の動作について説明する。上述したようにこの光ディスク記録装置100は、光ディスクDの記録面に対してホストPC110から供給された音楽データ等の情報を記録することが可能であるとともに、光ディスクDの感熱面に対してホストPC110から供給される画像データに対応した可視画像を形成することができるように構成されている。以下、情報記録および可視画像形成といった処理を行うことが可能な光ディスク記録装置100の動作について図10および図11を参照しながら説明する。
まず、当該光ディスク記録装置100に光ディスクDがセットされると、制御部16は光ピックアップ10等を制御し、セットされた光ディスクDの光ピックアップ10と対向する面にATIP(Absolute Time In Pregroove)情報が記録されているか否かを検出する(ステップSa1)。周知の通り、ATIP情報はCD−Rの記録面のプリグルーブに予め記録された情報であり、このようにATIP情報が記録されている場合には光ディスクDの記録面が光ピックアップ10と対向するようにセットされていることがわかる。一方、ATIP情報が記録されていない場合には光ディスクDの感熱面が光ピックアップ10と対向するように光ディスクDがセットされていることがわかる。すなわち、制御部16は、上記のようにATIP情報の有無を検出することにより、光ディスクDがどちら側の面を光ピックアップ10側に向けてセットされたかを検出しているのである。なお、上記のようにATIP情報の有無によっていずれの面が光ピックアップ10側に向けてセットされたかを検出する方法以外にも、他の方法、例えばフォーカスサーボを実施した際に、そのサーボ内容に応じていずれの面が光ピックアップ10側に向けてセットされたかを検出するようにしてもよい。すなわち、いずれの面が光ピックアップ10側に向けてセットされるかに応じて、光ピックアップとこれに対向する光ディスクDの対向面との間の距離が大きく異なるので、この距離の差がフォーカスサーボの制御量に現れることになり、この制御量からいずれの面を向けて光ディスクDがセットされたかを検出することができるのである。
ここで、セットされた光ディスクDからATIP情報が検出された場合には、記録面が光ピックアップ10と対向するように光ディスクDがセットされていると判断し、制御部16は記録面に対してホストPC110から供給される記録データを記録するための制御を行う(ステップSa2)。ここで行われる記録データを記録するための制御は、従来の光ディスク記録装置(CD−Rドライブ装置)と同様であるため、その説明を省略する。
一方、セットされた光ディスクDからATIP情報が検出されない場合には、感熱面が光ピックアップ10と対向するように光ディスクDがセットされていると判断し、制御部16はセットされた光ディスクDのディスクIDを取得することができるか否かを判断する(ステップSa3)。本実施形態において、光ディスクDのディスクIDとは、記録面および感熱面を有する光ディスクD(図1参照)の感熱面に記録されたディスクIDであり、例えば図12に示すように、ディスクIDをコード化した情報に対応する可視画像を光ディスクDの感熱面側の最外周部分の円周に沿って記述しておく。本実施形態では、図示のように、最外周部分の円周に沿って上記コードに応じた長さの反射領域301aと非反射領域301bとを形成することによりディスクIDを光ディスクDの感熱面に記述している。制御部16は光ディスクDの最外周の円周に沿って光ピックアップ10のレーザ光の照射位置をトレースすることにより、その反射光からディスクIDを取得する。
したがって、感熱面の最外周部分に上記のようなディスクIDに対応する反射領域301aおよび非反射領域301bが形成されていない場合には、当該光ディスクDは感熱面を有しない一般的な光ディスク(CD−R等)であると判別することができる。このようにディスクIDを取得できない場合は、制御部16は可視画像の形成が不可能な光ディスクDであると判断し(ステップSa4)、その旨をユーザに通知等するための処理を行う。
一方、光ディスクDからディスクIDを取得することができた場合には、ホストPC110から画像データを含む画像形成指示があるまで待機し(ステップSa5)、画像形成指示があった場合には制御部16は光ディスクDの感熱面に可視画像を形成するための初期化制御を行う(ステップSa6)。より具体的には、制御部16は、所定の角速度でスピンドルモータ11が回転させられるようサーボ回路13を制御したり、光ピックアップ10を光ディスクDの径方向の最内周側の初期位置に移動させるための指示をモータコントローラ32に送出し、ステッピングモータ30を駆動させたりする。
また、画像形成のための初期化制御において制御部16は、記録面に対して情報記録を行う時よりも、大きいビームスポット径のレーザ光が光ディスクDの感熱面に照射されるようなフォーカス制御の目標値をサーボ回路13に対して指示する。
上記のような目標値を指示した際のフォーカス制御内容をより具体的に説明すると、次の通りである。上述したようにサーボ回路13によるフォーカス制御は、光ピックアップ10の受光素子56から出力される信号に基づいて行われる。光ディスクDの記録面に対する情報記録時には、図13に示す受光素子56の4つのエリア56a,56b,56c,56dの中心に円形の戻り光(図のA)が受光されるようサーボ回路13がフォーカスアクチュエータ64(図3参照)を駆動する。すなわち、エリア56a,56b,56c,56dの各々の受光量をa,b,c,dとした場合に、(a+c)−(b+d)=0となるようにフォーカスアクチュエータ64を駆動するのである。
一方、光ディスクDの感熱面に対して可視画像を形成する場合には、上述したように記録面に対する情報記録時よりも径の大きいレーザ光が感熱面に照射されるようフォーカス制御が行われる。図13に示す受光素子56に受光される戻り光の形状が楕円形状(図のBやC)である場合には、そのレーザ光のスポットサイズは上記円形Aの場合よりも大きいので、サーボ回路13はこのような楕円形状の戻り光が受光素子56に受光されるようフォーカスアクチュエータ64を駆動する。すなわち、(a+c)−(b+d)=α(αは0ではない)を満たすようにフォーカスアクチュエータ64を駆動するのである。したがって、本実施形態において、制御部16、サーボ回路13はビームスポット制御手段を構成している。
以上のように上述した可視画像形成のための初期化制御において制御部16がα(0ではない)をサーボ回路13に指示設定することで、記録面に対する情報記録時よりも大きいスポット径のレーザ光を光ディスクDの感熱面に照射することができる。このように光ディスクDの感熱面に対する可視画像を形成するときに、記録面に対する情報記録時よりも大きいスポット径のレーザ光を照射することで以下のような効果を得ることができる。すなわち、本実施形態では、可視画像を形成する際にも、記録面に情報記録を行う際と同様、光ディスクDを回転させながらレーザ光を照射することとしている。したがって、レーザ光のビームスポット径を大きくすることで、より短時間で光ディスクDの感熱面の全領域に対して可視画像を形成することができる。この理由について、図14を参照しながら説明する。同図に模式的に示すように、照射するレーザ光のビームスポット径BSが大きい場合と小さい場合とを比較すると、光ディスクDを1回転させたときに画像形成の対象となる領域の面積がビームスポット径BSが大きい時の方が大きくなる。このため、ビームスポット径BSが小さい場合には全領域を画像形成の対象とするためにより多く光ディスクDを回転させなければならず(図示の例では、大きい場合は4回転、小さい場合は6回転)、画像形成のために多くの時間を要してしまう。以上のような理由から、この光ディスク記録装置100では、可視画像を形成する際に情報記録時よりも大きいスポット径のレーザ光が照射されるようにしているのである。
また、画像形成のための初期化制御において制御部16は、取得したディスクIDに応じたライトレベルおよびサーボレベルのレーザ光が光ピックアップ10から照射されるよう、各々のレベルの目標値をレーザパワー制御回路20に指示する。すなわち、制御部16のROMには、複数種類のディスクID毎に、ライトレベルおよびサーボレベルとして設定すべき目標値が記憶されており、制御部16は取得されたディスクIDに対応するライトレベルおよびサーボレベルの目標値を読み出し、これらの目標値をレーザパワー制御回路20に指示するのである。
このようにディスクIDに応じてパワーの目標値を設定するのは以下のような理由に基づくものである。すなわち、光ディスクDの種類によって感熱層205(図1参照)として用いられる感熱フィルム等の特性が異なることが考えられ、特性が異なる場合、どの程度のパワーのレーザ光を照射すれば変色するといった特性も当然変化することになる。このため、ある光ディスクDの感熱層205に対してはあるライトレベルのレーザ光を照射することにより、その照射領域を十分変色させることができた場合にも、他の光ディスクDの感熱層205に対して同じライトレベルのレーザ光を照射させた場合にその照射領域を変色させることができるとは限らない。したがって、本実施形態では、上記のように種々のディスクID毎に対応する光ディスク毎に、予め正確な画像形成が行えるようなライトレベルおよびサーボレベルの目標値を実験により求めておく。そして、求めた目標値を各々のディスクIDに対応付けてROMに格納しておくことにより、上記のような種々の光ディスクDの感熱層205の特性に応じて最適なパワー制御を行うことができるようにしている。
以上説明したような初期化制御が制御部16によって行われると、実際に光ディスクDの感熱面に可視画像を形成するための処理が行われることになる。図11に示すように、まず制御部16は、ホストPC110からバッファメモリ36を介して供給された画像データをFIFOメモリ34に転送する(ステップSa7)。そして、制御部16は、周波数発生器21から供給されるFGパルス信号から、スピンドルモータ11によって回転させられる光ディスクDの所定の基準位置が、光ピックアップ10のレーザ光照射位置を通過したか否かを判断する(ステップSa8)。
ここで、図15および図16を参照しながら所定の基準位置、およびレーザ光照射位置がその位置を通過したか否かの検出方法について説明する。図15に示すように、周波数発生器21は、スピンドルモータ11が1回転する間、つまり光ディスクDが1回転する間に所定個(図示の例では8個)のFGパルスを出力する。したがって、制御部16は、周波数発生器21から供給されるFGパルスのいずれか1つを基準パルスと立ち上がりタイミングを同期させて基準位置検出用パルスを出力し、その後は基準位置検出パルスから1回転分の個数目(図示の例では8個目)のパルスの立ち上がりタイミングと同期させて基準位置検出用パルスを出力する基準位置検出用パルス信号を生成する。このような基準位置検出用パルスを生成することで、当該パルスが生成された時が光ディスクDの基準位置を光ピックアップ10のレーザ光照射位置が通過したタイミングであると検出できるのである。すなわち、図16に示すように、最初の基準位置検出用パルスを生成したタイミングにおける光ピックアップ10のレーザ光照射位置が図中太線(光ピックアップ10は径方向に移動可能であるため、照射位置が取り得る位置は線で表される)で示す位置であるとすると、その1回転後に生成される基準位置検出用パルスの生成した時にも当然光ピックアップ10のレーザ光照射位置は図中太線で示す位置にある。このように最初に基準位置検出用パルスを生成したタイミングにレーザ光の照射位置が属する径方向の線を基準位置となり、制御部16は、上記のように光ディスクDが1回転する毎に生成される基準位置検出用パルス信号に基づいて、レーザ光の照射位置が光ディスクDの基準位置を通過したことを検出することができるのである。なお、図中一点鎖線は、ある基準位置検出用パルスが生成されてから、次の基準位置検出用パルスが生成されるまでにレーザ光の照射位置の移動軌跡の一例を示す。
ホストPC110から画像形成指示を受けた後、以上のような手法で光ディスクDの基準位置がレーザ光の照射位置を通過したことを検出すると、制御部16は、回転数を示す変数Rに1をインクリメントした後(ステップSa9)、Rが奇数であるか否かを判別する(ステップSa10)。
ここで、画像形成指示を受けた後、最初に基準位置を通過したことを検出した際には、R=0(初期値)+1=1であり、この場合、ステップSa10においてRは奇数であると判別されることになる。このようにRが奇数であると判別した場合、制御部16は、光ピックアップ10から光ディスクDの感熱面にレーザ光を照射して可視画像を形成するための制御を行う(ステップSa11)。より具体的には、制御部16は、上記の基準位置検出用パルスを受け取った時点から、PLL回路33から出力されるクロック信号に同期してFIFOメモリ34から画像データを順次出力するよう各部を制御する。この制御により、図17に示すように、FIFOメモリ34は、PLL回路33からクロックパルスが供給される毎に、1つの座標の階調度を示す情報を駆動パルス生成部35に出力し、駆動パルス生成部35は当該情報に示される階調度にしたがったパルス幅の駆動パルスを生成してレーザドライバ19に出力する。この結果、光ピックアップ10は、各座標の階調度に応じた時間だけライトレベルでレーザ光を光ディスクDの感熱面に照射し、その照射領域が変色することにより、図18に示すような可視画像を形成することができる。
同図に模式的に示すように、光ディスクDはスピンドルモータ11によって回転させられているので、光ピックアップ10のレーザ光の照射位置はクロック信号の1周期(パルスの立ち上がりタイミングから次のパルスの立ち上がりタイミングまでの期間)中に図中Cで示す領域分だけ円周に沿って移動することになる。この領域Cをレーザ光照射位置が通過する間にライトレベルでレーザ光を照射すべき時間を上記のように階調度に応じて変化させることで、図示のように領域C毎に異なる階調度に応じて異なる面積を変色させることができる。このように各座標の階調度に応じて各々の領域Cを通過するときのライトレベルのレーザ光の照射時間を制御することにより、画像データに応じた可視画像を光ディスクDの感熱面に形成することができるのである。
以上のように画像データに応じて制御されるレーザ光照射によって可視画像の形成を実行するための制御を実行すると、制御部16の処理はステップSa7に戻り、バッファメモリ36から供給された画像データをFIFOメモリ34に転送する。そして、光ディスクDの基準位置を光ピックアップ10のレーザ光照射位置が通過したか否かを検出し、基準位置を通過したことが検出された場合、Rに1をインクリメントする。この結果、Rが偶数となった場合には、制御部16は上記のようなレーザ光照射制御による可視画像形成を停止させるよう装置各部を制御する(ステップSa12)。より具体的には、FIFOメモリ34に対して、PLL回路33から供給されるクロック信号に同期して各座標の階調度を示す情報を駆動パルス生成部35に出力しないよう制御する。つまり、制御部16は、光ディスクDの感熱面に対してライトレベルのレーザ光を照射して可視画像を形成した後、次に光ディスクDが1回転している間は感熱面を変色させるためのレーザ光の照射を行わないように制御しているのである。
このように可視画像形成のためのレーザ光照射を停止させると、制御部16は、モータコントローラ32に対して所定量だけ光ピックアップ10を径方向の外周側に移動させるよう指示し(ステップSa13)、該指示に応じてモータコントローラ32がモータドライバ31を介してステッピングモータ30を駆動し、これにより光ピックアップ10が所定量だけ外周側に移動させられる。
ここで、光ピックアップ10を光ディスクDの径方向に移動させる所定量は、上述したように光ピックアップ10から照射されるビームスポット径BS(図14参照)に応じて適宜決定すればよい。すなわち、円盤状の光ディスクDの感熱面に可視画像を形成する際には、光ピックアップ10のレーザ光照射位置を光ディスクDの面上ほぼ隙間なく移動させることが、より高品位の画像形成を実現するために必要となる。したがって、上記のような径方向への光ピックアップ10の単位移動量を、光ディスクDに対する照射レーザ光のビームスポット径BSとほぼ同じ長さとすれば、光ディスクDの面上にほぼ隙間なくレーザ光を照射することができ、より高品位な画像形成が可能となる。なお、感熱面の性質等の種々の要因によって照射したビームスポット径よりも大きい領域が発色するケースもあり、このようなケースでは、その発色領域の幅を考慮し、隣り合う発色領域が重ならないよう単位移動量を決めるようにすればよい。本実施形態では、ビームスポット径BSを記録面に対する記録時より大きくしているので(例えば、20μm程度)、制御部16は、このビームスポット径BSとほぼ同じ長さ分だけ光ピックアップ10を径方向に移動させるようモータコントローラ32を制御し、ステッピングモータ30を駆動させている。なお、近年のステッピングモータ30は、μステップ技術を利用することで、10μm単位でその移動量を制御することが可能であり、上記のようにステッピングモータ30を用いて光ピックアップ10を20μm単位で径方向に移動させることは十分に実現可能である。
上記のように光ピックアップ10を径方向に所定量だけ移動させる制御を行うと、制御部16は、目標となるレーザ光のライトレベル値を変更するべく、ライトレベルでレーザ光を照射する際に目標とすべき変更後のライトレベル値をレーザパワー制御回路20に対して指示する(ステップSa14)。本実施形態では、可視画像を形成する際の方式として光ディスクDを角速度を一定に維持して回転させながらレーザ光を照射するCAV方式を採用しており、上記のように光ピックアップ10が外周側に移動させられると、線速度が大きくなる。したがって、レーザ光をこのように光ピックアップ10を径方向(外周側)に移動させた時には、上記のようにライトレベルの目標値をその時点までよりも大きくなるように変更し、これにより線速度が変化しても光ディスクDの感熱面が十分に変色できる強度のレーザパワーを照射できるようにしているのである。
以上のように光ピックアップ10の径方向への移動制御およびライトレベルの目標値を変更する制御を実行すると、制御部16は可視画像形成のために未処理の画像データ、つまり駆動パルス生成部35に供給されていない画像データがあるか否かを判別し、当該画像データがない場合には処理を終了する。
一方、モータコントローラ32に供給されていない未処理の画像データがある場合には、ステップSa7に戻り、可視画像形成のための処理を続行する。すなわち、制御部16からFIFOメモリ34に画像データを転送し(ステップSa7)、レーザ光の照射位置が光ディスクDの基準位置を通過したか否かを判別する(ステップSa8)。そして、基準位置を通過した際には、回転数を示す変数Rに1をインクリメントし(ステップSa9)、インクリメント後のRが奇数であるか否かを判別する(ステップSa10)。ここで、Rが奇数である場合には、制御部16は上記のような可視画像を形成するためのレーザ光照射がなされるよう装置各部を制御し、Rが偶数である場合には可視画像を形成するためのレーザ光照射を停止し(サーボレベルのレーザ光は照射する)、上記のような光ピックアップ10の径方向への移動制御や、ライトレベルの目標値変更といった制御を行う。すなわち、制御部16は、ある周回中に光ディスクDに対して画像形成のためのレーザ光照射(ライトレベルを含む)を行った場合、その次の周回中には画像形成のためのレーザ光照射が行われないよう制御し、その周回中に光ピックアップ10の径方向への移動制御等を実施するようにしている。このように画像形成を行わない周回中に光ピックアップ10を移動させる制御やライトレベル目標値の変更制御等を実施することで、当該制御に伴って照射位置や照射されるレーザ光のパワー値等が変動している間に画像形成されることがなく、照射位置やレーザ光の強度が安定してから画像形成のためのレーザ光照射を実行することができる。したがって、上記のような光ピックアップ10の径方向の移動制御等に起因して形成される可視画像の品位が低下してしまうことを抑制できる。
以上説明したのが、本実施形態に係る光ディスク記録装置100の主要な動作であり、光ディスク記録装置100によれば、新たに印刷手段等を搭載することなく、記録面に対して情報記録を行うために用いられる光ピックアップ10等の装置各部を可能な限り利用し、感熱面が形成された光ディスクDの当該感熱面に対してレーザ光を照射して画像データに対応した可視画像を形成することができる。
また、本実施形態では、スピンドルモータ11の回転に応じて生成されるFGパルスを用いて生成したクロック信号、すなわち光ディスクDの回転量に応じて生成されるクロック信号に基づいてレーザ光照射タイミングを制御しているので、光ディスクD側から位置情報等を取得することなく、光ディスク記録装置100においてレーザ光照射位置を把握することができる。したがって、光ディスク記録装置100によれば、感熱面にプリグルーブ(案内溝)を形成するといった特別な加工等を施した光ディスクDを用いなくてはならないといった制限はなく、プリグルーブや位置情報等が予め形成されていない感熱面に対しても、画像データに対応する可視画像を形成することができる。
C.変形例
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような種々の変形が可能である。
(変形例1)
上述した実施形態では、ホストPC110から供給される可視画像に対応した画像データに含まれる各座標毎の階調度に応じて、レーザ光の照射時間を制御することにより光ディスクDの感熱面に形成される可視画像の濃淡を表現するようにしていたが、各座標毎の階調度を示す情報にしたがって照射するレーザパワーのライトレベルを変更し、可視画像の濃淡を表現するようにしてもよい。例えば、図19に示すように、光ディスクDの感熱面(感熱層205:図1参照)が加えられる熱エネルギーの量に応じてその変色の度合いが緩やかに変化する特性を有しているものであれば、エネルギーE1、E2、E3といったように異なるエネルギーを加えることにより、感熱面の変色の度合いもD1,D2,D3といったように変化することになる。したがって、上記のような特性を有する感熱面が形成された光ディスクDに対しては、画像データに示される各座標毎の階調度に応じて照射するレーザ光のライトレベル値を変更することにより、光ディスクDにおける各々座標位置を、その階調度に応じて変色させることができ、これにより濃淡を表現することができる。
また、上記のようにライトレベル値を階調度に応じて変更する方法以外にも、以下のような隣接する複数の座標を階調度を表現するための1つの単位領域として捉え、当該単位領域に含まれる複数の各座標に対するレーザ光の照射時間を違いに関連付けて制御することで、光ディスクDの感熱面に形成される可視画像の濃淡を表現するようにしてもよい。より具体的には、図20に模式的に示すように、本実施形態に係る光ディスク記録装置100では、光ピックアップ10のレーザ光照射位置を図示のような円周経路TR(図中一点鎖線)に沿って複数周相対移動させ、その移動中に照射するレーザ光のパワー値を画像データに応じてライトレベルとサーボレベルとに適宜切り換えることにより可視画像形成が実施される。
この変形例では、光ディスクDを複数に分割した扇形部分の各々に属する隣接する所定数(図示の例では、3つ)の円周経路TRを含む扇型の領域を単位領域TA(図中太線で示す)とし、可視画像における当該単位領域TA毎に濃淡が表現されるように当該単位領域TAに属する3つの円周経路TRの各々に照射するレーザ光の照射タイミングを制御する。
例えば、ある単位領域TAの濃度を濃く表現した画像を形成する場合には、図21上段に示すように、当該単位領域TAに属する3つの円周経路TRを全て変色(変色部分は図中黒色で示す)させるようにレーザ光の照射時間を制御する、つまり図21下段に示すような駆動パルスが駆動パルス生成部35によって生成されるような画像データを作成しておき、当該単位領域TAに属する3つの円周経路TRをレーザ光照射位置が通過している時間中、ライトレベルのレーザ光を照射し続けるといった制御を行う。
一方、単位領域TAの濃度を非常に薄く表現した画像(濃度が0ではない)を形成する場合には、図22上段に示すように、当該単位領域TAに属する3つの円周経路TRのうち、最内周側の円周経路TRの僅かな部分だけ変色させるようにレーザ光の照射時間を制御する、つまり図22下段に示すように、内周側の円周経路TRをレーザ光照射位置が通過する時間中の一部の時間のみにライトレベルのレーザ光が照射されるような駆動パルスが駆動パルス生成部35によって生成されるような画像データを作成しておくのである。
また、単位領域TAの濃度を中間程度の濃さにする場合には、図23上段に示すように、当該単位領域TAに属する3つの円周経路TRのうち、最内周側の円周経路TRの全ての部分が変色し、中間の円周経路TRの半分が変色するようにレーザ光の照射時間を制御する。つまり、図23下段に示すように、円周経路TRのうち内周側の円周経路TRをレーザ光の照射位置が通過している時間および中間の円周経路TRをレーザ光照射位置が通過している時間の一部の時間だけライトレベルのレーザ光が照射されるような駆動パルスが駆動パルス生成部35によって生成されるような画像データを生成しておくのである。
予めホストPC110において、上記のような単位領域TA毎の階調表現がなされるような画像データを生成しておき、当該画像データを光ディスク記録装置100に供給することにより、上記のような単位領域TA毎の階調表現がなされた可視画像を光ディスクDの感熱面に形成することができる。
(変形例2)
また、上述した実施形態では、光ディスクDを基準位置から1回転させている間にレーザ光を照射して可視画像を形成すると、光ピックアップ10を径方向の外周側に所定量だけ移動させるといったフィード制御を行うことにより、光ディスクDの全面に隙間がほとんどできないようにレーザ光照射位置を移動させるようにしていた。しかしながら、径方向へ光ピックアップ10を駆動する機構が20μmといった単位で駆動量を制御できない場合もある。このような駆動機構を搭載した光ディスク記録装置では、光ディスクDにおけるレーザ光が照射できない隙間の領域が大きくなり、この結果、光ディスクDの感熱面に形成される可視画像の品位が低下してしまうことになる。
そこで、光ピックアップ10を径方向に移動させる駆動手段の分解能が低い場合には、当該駆動手段による径方向への光ピックアップ10の移動制御と、光ピックアップ10のトラッキング制御とを併用することにより、より微小な単位、例えば20μmといった単位でレーザ光の径方向の照射位置を制御できるようにしてもよい。より具体的には、図24に示すように、まずステッピングモータ等の径方向駆動手段によって光ピックアップ10を位置Aに移動させる。そして、この位置Aに光ピックアップ10を固定した状態で、レーザ光の径方向の照射位置がA1となるようトラッキング制御を行う。このように照射位置をA1にした状態で光ディスクDを1回転させながらレーザ光を制御して可視画像の形成を行う。照射位置をA1にした状態での可視画像の形成が終了すると、光ピックアップ10は位置Aに固定したまま、トラッキング制御によってレーザ光の照射位置を距離aだけ外周側に移動させて照射位置を位置A2にする。そして、この状態で光ディスクDを1回転させながらレーザ光を照射することで可視画像形成を行う。以降も同様に、光ピックアップ10は位置Aに固定したまま、トラッキング制御によりレーザ光の照射位置をA3,A4,A5といった順序で移動させながら画像形成を行う。
そして、レーザ光の照射位置をA5にした状態で画像形成が終了すると、駆動手段によって光ピックアップ10を距離Aだけ外周側に移動させ光ピックアップ10を位置Bに移動させる。そして、この位置Bに光ピックアップ10を固定した状態でトラッキング制御を行うことにより、レーザ光の照射位置を位置B1,B2,B3,B4,B5といったように外周側に順次距離aずつ移動させながら画像形成を行う。このようにステッピングモータ等による光ピックアップ10の径方向への移動制御とトラッキング制御とを併用することで、径方向への光ピックアップ10の駆動手段の駆動制御の分解能が低い場合にも、レーザ光の照射位置をより微小な距離単位で移動させることができる。
(変形例3)
また、上述した実施形態に係る光ディスク記録装置100では、光ディスクDを一定の角速度で回転させながらレーザ光を照射して可視画像を形成するCAV方式を採用するようにしていたが、線速度が一定となるCLV方式を採用するようにしてもよい。上述したようにCAV方式を採用する場合には、高品位の可視画像を形成するために、レーザ光の照射位置が光ディスクDの外周側に移動するに伴って照射するレーザ光のライトレベル値を大きくする必要があるが、CLV方式の場合にはライトレベル値を変更する必要がない。したがって、目標レーザパワー値の変動に起因して、光ディスクDの感熱面に形成される画像の画質が劣化するといったことが生じない。
(変形例4)
また、上述した実施形態では、レーザパワー制御回路20は、光ピックアップ10のフロントモニターダイオード53aの受光結果に基づいて、ライトレベル目標値もしくはサーボレベル目標値のレーザ光が照射されるようレーザパワー制御を行うようになっていた(図7参照)。そして、上記実施形態においては、レーザーダイオード53から照射されるレーザ光の強度がライトレベル目標値と一致するように制御するために、ライトレベルを目標としてレーザーダイオード53が出射した時のフロントモニターダイオード53aの受光結果を用いている。また、レーザーダイオード53から照射されるレーザ光の強度がサーボレベル目標値と一致するように制御するために、サーボレベルを目標としてレーザーダイオード53が出射した時のフロントモニターダイオード53aの受光結果を用いていた。
このようにライトレベルおよびサーボレベルの各々のレベルを目標値としてレーザパワー制御を行う際に、各々のレベルを目標値として照射したレーザ光の受光結果を用いる以外にも、サーボレベルを目標値として照射したレーザ光の受光結果から、サーボレベルだけではなくライトレベルを目標値とするレーザパワー制御をレーザパワーを行うようにしてもよい。より具体的には、レーザパワー制御回路20は、サーボレベルを目標値として出射したレーザ光の受光結果(電流値)から、図25上段に示すようにサーボレベル目標値SMの強度のレーザ光をレーザーダイオード53から出射するためにレーザーダイオード53に供給すべき電流値SIを求める。このようにサーボレベル目標値SMのレーザ光を出射するために供給すべき電流値SIを求めると、該電流値SIと予め実験等により求められた供給電流値と出射レーザパワーとの関係を一次関数で表すための傾きαとから、図25下段に示すように、当該レーザーダイオード53に関して供給電流値と出射レーザパワーとの関係(一次関数)を導出する。次に、レーザパワー制御回路20は、導出した両者の関係と、制御部16によって設定されたライトレベル目標値WMとから、ライトレベルのレーザ光を出射するためにレーザーダイオード53に供給すべき電流値WIを求める。そして、ライトレベルのレーザ光を照射する際には、レーザパワー制御回路20は上記のように求めた電流値WIをレーザーダイオード53に供給するようレーザドライバ19を制御する。このようにしてライトレベルを目標値として出射したレーザ光の受光結果を用いることなく、ライトレベルのレーザ光を出射するための制御を行うことができる。
なお、上述した実施形態および当該変形例においては、可視画像形成のためにレーザ光を照射している時にフロントモニターダイオード53aの受光結果に基づいてレーザパワーのフィードバック制御を行うようにしているが、可視画像形成時にはフィードバック制御を行わず、可視画像形成前にレーザ光のテスト照射を実施し、該テスト照射した時のフロントモニターダイオード53aの受光結果に基づいて電流値をレーザーダイオード53に供給するといったレーザパワー制御を行うようにしてもよい。画像形成のために必要となる時間が短い場合には、光ピックアップ10や、その周囲の環境(温度)等の変動が少なく、上記のようにフィードバック制御を行わなくても、十分に正確なレーザパワー制御が行える場合もある。したがって、短時間で画像形成を行える光ディスク記録装置においては、上記のようにフィードバック制御を行わないレーザパワー制御を採用することも可能である。
(変形例5)
また、上述した実施形態では、光ディスクDの感熱面の最外周部分等に記録されたディスクIDを読み取ることにより、光ディスク記録装置100にセットされたディスクの種類を識別し、識別したディスク種類に応じたレーザパワー制御等を行うようにしていたが(図12参照)、光ディスクDの記録面のリードインに記録されたディスクIDを読み取り、当該光ディスクDの感熱面に対する可視画像形成時に読み取ったディスクIDによって識別されるディスク種類に応じたレーザパワー制御等を行うようにしてもよい。このように記録面のリードインに記録されたディスクIDを取得するために、ユーザはまず光ディスクDを記録面が光ピックアップ10と対向するようにセットし、光ディスク記録装置100がセットされた光ディスクDのリードイン領域からディスクIDを読み取る。そして、光ディスク記録装置100は、ディスクを裏返して再挿入するようユーザに促し、感熱面が光ピックアップ10と対向するように光ディスクDがセットされると、当該光ディスクDの感熱面に対して、リードイン領域から読み取ったディスクIDに応じたレーザパワー制御を行って可視画像を形成するようにすればよい。
(変形例6)
上述した実施形態で説明したように光ディスク記録装置100は、記録面に対して情報記録を実施するための光ピックアップ10等の装置各部を利用し、記録面と反対側の面に形成された感熱面に対して可視画像を形成することができるようにしている。ところで、CD−Rの場合には、図1に示す記録層202の上層に設けられる保護層201の厚みは1.2mmであるのに対し、反対側の面に設けられる保護層206の厚みは非常に小さい。したがって、図26に示すように、光ディスクDのレーザ光の照射すべき層の位置と、光ピックアップ10の位置との間の距離d1,d2(相対的な位置関係)は、記録面と感熱面のいずれを光ピックアップ10と対向するように光ディスクDをセットするかによって約1.2mm程度異なることになる。
光ディスクDの記録面との距離d1が焦点距離となることを前提として設計されている光ピックアップ10のフォーカスアクチュエータ64(図3参照)では、光ピックアップ10と照射対象面との距離がd2となった場合に十分なフォーカス制御ができなくなる場合もある。そこで、光ディスクDが感熱面を光ピックアップ10と対向するようにセットされた場合に、その感熱面と光ピックアップ10との間の距離がd1とほぼ一致するように約1.2mm分だけ光ピックアップ10から離間する方向に移動させた位置で光ディスクDを保持するような機構を設けるようにしてもよい。
このような機構としては、図27に示すように、光ディスクD中央のチャッキング部270に装着可能なアダプタ(相対位置調整手段)271を用いるようにし、上記のように光ディスクDの感熱面が光ピックアップ10に対向するように当該光ディスクDを光ディスク記録装置100にセットする際には、上記アダプタ271を光ディスクDに装着するようにすればよい。
また、光ディスク記録装置100の光ディスクDをセットする部位近傍と、該部位から離間した位置との間で移動可能な機構であって、上記のように光ディスクDの保持位置を変更するための機構を光ディスク記録装置100に設けるようにし、光ディスクDの感熱面が光ピックアップ10と対向するようにセットされた場合にのみ上記セットする近傍に上記機構を移動させて光ディスクDの保持位置を調整するようにしてもよい。
また、上記のようなアダプタ271等を用いることにより光ディスクDの保持位置を光ピックアップ10から離間する位置に移動させる以外にも、図28に示すように、感熱面が光ピックアップ10と対向するように光ディスクDがセットされた場合に、感熱面と光ピックアップ10との距離がd1となるように光ピックアップ10の位置を光ディスクDから離間する位置に移動させる駆動機構(相対位置調整手段)280を設けるようにしてもよい。
(変形例7)
また、上述した実施形態では、光ピックアップ10の受光素子56(図3参照)が受光した光ディスクDからの戻り光に応じてフォーカス制御を行い、このフォーカス制御においては記録面に対して記録を行う時よりもスポット径が大きいレーザ光が光ディスクDの感熱面に照射されるようにしていた。そして、上記実施形態においては、スポット径を大きくするために、受光素子56の受光結果が図13に示す楕円形状B、Cとなるようフォーカスアクチュエータ64を駆動するようにしていた。このような楕円形状B、Cが受光結果として得られる場合のスポット径よりも大きいスポット径のレーザ光を光ディスクDの感熱面に照射するために、受光素子56の4つのエリア56a,56b,56c,56dの各々受光量に応じたフォーカス制御ではなく、受光素子56の全てのエリアの総受光量に応じたフォーカス制御を行うようにしてもよい。すなわち、光ディスクDの感熱面に照射するレーザ光のスポット径を大きくすると、その戻り光の全てを受光素子56で受光することができず、図29中円形Zで示すように受光素子56の受光エリアよりも大きいエリアの戻り光が得られることになる。すなわち、受光素子56の総受光量が少なくなるのである。したがって、サーボ回路13が受光素子56の総受光量が図13に示す円形A、楕円形B、Cのような受光結果が得られる場合の総受光量よりも少なくなるようにフォーカスアクチュエータ64を駆動することで、より大きなスポット径のレーザ光を光ディスクDの感熱面に照射することができる。
(変形例8)
また、光ディスクDの感熱層205(図1参照)として透明度の高いものを利用すると、感熱面と光ピックアップ10とが対向するように光ディスクDをセットした場合にも、光ディスク記録装置100では、光ディスクDからの戻り光(反射光)から、光ディスクDの記録面に形成されたプリグルーブ(案内溝)を検出することができる。より具体的には、記録面に対してレーザ光を照射している場合とは逆に、プリグルーブにレーザ光を照射している時の戻り光レベルが大きく、ランド部分を照射しているときの戻り光が小さい。したがって、戻り光のレベルを検出することによってプリグルーブを検出することができ、この結果該プリグルーブに沿ってトラッキング制御を行うことも可能となる。
以上のように感熱面を光ピックアップ10と対向するように光ディスクDをセットした時に、反対側の記録面に形成されたプリグルーブに沿ったトラッキング制御が可能である場合には、当該プリグルーブに沿ってレーザ光照射位置を移動させながら、可視画像形成のためのレーザ光照射制御を行うようにしてもよい。このように感熱面の反対側の記録面に形成されたプリグルーブを検出し、該プリグルーブに沿ってレーザ光照射位置が移動するようトラッキング制御を行う場合には、スピンドルモータ11の回転方向を記録面に対する記録時とは逆方向にし、光ディスクDを逆方向に回転させる。このように逆回転させる理由について図30を参照しながら説明する。同図上段に示すように、光ディスクDの記録面に記録面側から見て時計回りの螺旋状のプリグルーブPBが形成されている場合に、図30下段に示すように、そのプリグルーブPBは反対側の面である感熱面側からは反時計回りの螺旋状に形成されているように見えることになる。したがって、プリグルーブPBに沿った位置の最内周の位置PBSから、記録時と同じ回転方向に光ディスクDを回転させた場合には、レーザ光の照射位置をプリグルーブPBに沿って移動させることができない。したがって、光ディスクDの感熱面に対してレーザ光を照射して可視画像を形成する際に、プリグルーブPBに沿ってレーザ光照射位置を移動させる場合には、記録面に対して記録を実行する時と逆方向に光ディスクDを回転させているのである。
したがって、プリグルーブPBに沿ってレーザ光の照射位置を移動させながら、画像データに応じてレーザ光の照射タイミングおよびパワーを制御することにより、上記実施形態と同様の可視画像形成を行う場合には、制御部16はスピンドルモータ11を記録面に対する記録時と逆方向に回転させるようにサーボ回路13に指示すればよい。
また、上記のように記録面に形成されたプリグルーブPBに沿ってレーザ光照射位置を移動させながら感熱面に対して可視画像形成を行う場合、レーザ光の照射開始位置をプリグルーブPBの最も外周側の位置PBEとすれば、光ディスクDの回転方向が記録時と同一方向であってもプリグルーブPBに沿ってレーザ光照射位置を移動させることができる。
(変形例9)
また、上述した実施形態において、制御部16が、図31に示す光ディスクDの感熱面における所定の禁止領域KAに対して、画像形成のためのレーザ光(ライトレベルのレーザ光)の照射を行わないよう制御するようにしてもよい。同図に示すように、禁止領域KAは、上述した基準位置(図16参照)から時計回りにレーザ光照射位置が移動させられる場合には、基準位置からその反時計回りの方向に所定角度θの扇形の領域である。すなわち、光ディスクDを回転させることにより、基準位置からレーザ光照射位置を移動させながら可視画像形成のためのレーザ光照射を行った際に、その基準位置にレーザ光の照射位置が戻る直前にレーザ光照射位置が通過する領域が禁止領域KAである。
このような禁止領域KAに対する可視画像の形成を禁止するための制御としては、制御部16がホストPC110から供給された画像データ中の当該禁止領域KAに属する座標の階調度を「0」に変更するといったデータ変換を行うようにすればよい。このようなデータ変換を行えば、そのデータにしたがって駆動パルス生成部35が忠実に駆動パルスを生成したとしても、レーザ光照射位置が禁止領域KAを通過するときにはライトレベルのレーザ光は照射されず、この結果、禁止領域KAには可視画像が形成されなくなる。
以上のように禁止領域KAに対して可視画像形成のためのレーザ光照射を行わないようにすることで、以下のような効果が得られる。すなわち、上述したようにPLL回路33から供給されるクロック信号に同期して画像形成を行った場合にも、スピンドルモータ11が1回転する間の回転速度が微妙に揺れ、これに伴ってPLL回路33から出力されるクロック信号の周期が揺れることがある。このように画像形成のための同期信号となるクロック信号が揺れることに起因し、図31に示すように基準位置KKから可視画像形成のためのレーザ光を照射を開始してからほぼレーザ光照射位置の軌跡(図中一点鎖線で示す)が1回転し、本来その基準位置の直前の位置KCの画像を表現するために照射されるレーザ光が基準位置を通過した位置KTに照射されるといったことが起こりうる。つまり、本来その基準位置の直前の位置KCの画像を表現するために照射されるレーザ光が、既に可視画像形成のためにレーザ光が照射されている領域中の位置KTに照射されるといった重なるレーザ光照射が行われ、この結果形成される可視画像に不具合が生じてしまうこともあり得るのである。そこで、PLL回路33によって生成されるクロック信号に揺れ等があった場合にも、上記のような禁止領域KAが設定されるよう画像データを変換することで、同じ位置に2度可視画像形成のためのレーザ光が照射されるといった不具合を未然に防止することができる。
(変形例10)
また、上述した実施形態に係る光ディスク記録装置100に代えて、図32に示すような構成の光ディスク記録装置100’を用いるようにしてもよい。同図に示すように、この光ディスク記録装置100’と、上記実施形態における光ディスク記録装置100との相違点は、FIFOメモリ34および駆動パルス生成部35を有しておらず、エンコーダ17に代えてエンコーダ320を備えている点である。
エンコーダ320は、上述した実施形態におけるエンコーダ17と同様、供給されるデータに対してEFM変調やCIRC(Cross Interleave Reed-Solomon Code)変換等を施す回路であり、供給されたデータを一時的にメモリに蓄積し、該蓄積したデータに対して上記のような変調処理等を施してストラテジ回路18’に出力する。また、エンコーダ320は、制御部16から供給される変調オン/オフ信号に基づいて、バッファメモリ36から供給されたデータに対し、EFM変調等の処理を施して出力するか、EFM変調等を施さないでデータを出力するかを切り換えることができるよう構成されている。そして、制御部16から変調オンを示す信号が供給された場合、エンコーダ320はバッファメモリ36から供給されるデータに対してEFM変調等を施してストラテジ回路18に出力する。一方、制御部16から変調オフ信号が供給された場合、エンコーダ320はバッファメモリ36から供給されたデータに対して変調等は行わず、PLL回路33から供給されるクロック信号に同期してデータを出力する。
制御部16は、図示せぬユーザインターフェース等を介して入力されるユーザからの指示にしたがってエンコーダ320に対して変調オン/オフ信号を出力する。より具体的には、ユーザから感熱面に対して可視画像形成を行う旨の指示を受けた場合には、変調オフ信号を出力し、ユーザから記録面に対して情報記録を行う旨の指示を受けた場合には、変調オン信号を出力する。なお、上記のようにユーザからの指示にしたがって制御部16が変調オン/オフ信号を出力するようにしてもよいが、光ディスクDがいずれの面を光ピックアップ10と対向するようにセットされたかに応じて変調オン/オフ信号を出力するようにしてもよい。この場合、感熱面が光ピックアップ10と対向するように光ディスクDがセットされた時には変調オフ信号を出力し、記録面が光ピックアップ10と対向するように光ディスクDにセットされた時には変調オン信号を出力するようにすればよい。
上記構成の下、ユーザから記録面に対して情報記録を行う旨が指示された場合、制御部16は変調オン信号をエンコーダ320に出力する。そして、ホストPC110から光ディスクDの記録面に対して記録すべき記録データがバッファメモリ36に供給され、バッファメモリ36からエンコーダ320に転送される。変調オン信号を受けたエンコーダ320は、バッファメモリ36から供給される記録データに対してEFM変調等を施してストラテジ回路18に出力する。ストラテジ回路18’は、EFM変調されたデータの時間軸補正等を行い、レーザドライバ19を駆動するための駆動パルスを生成し、レーザドライバ19に出力する。この駆動パルスに応じてレーザドライバ19が光ピックアップ10のレーザーダイオード53(図3参照)に駆動電流を供給することにより光ピックアップ10からレーザ光が照射され、光ディスクDの記録面に対して、ホストPC110から供給された記録データの記録が行われる。
一方、ユーザから感熱面に対して可視画像形成を行う旨が指示された場合、制御部16は変調オフ信号をエンコーダ320に出力する。そして、ホストPC110から光ディスクDの感熱面に対して形成すべき可視画像に対応した画像データがバッファメモリ36に供給され、バッファメモリ36からエンコーダ320に内蔵されるメモリに転送される。変調オフ信号を受けたエンコーダ320は、バッファメモリ36から転送された画像データに対して変調等の処理は行わず、PLL回路33から供給されるクロック信号に同期して、各座標毎のデータ(階調度を示す情報)を順次ストラテジ回路18に出力する。ストラテジ回路18’は、上述した実施形態における駆動パルス生成部35と同様、順次供給される各座標毎の階調度を示すデータに基づいて駆動パルスを生成し、生成した駆動パルスをレーザドライバ19に出力する。この駆動パルスに応じてレーザドライバ19が光ピックアップ10のレーザーダイオード53(図3参照)に駆動電流を供給することにより光ピックアップ10からレーザ光が照射され、光ディスクDの感熱面に対して、ホストPC110から供給された画像データに対応する可視画像形成が実施される。
以上説明したように可視画像を形成する場合と情報記録を行う場合とでエンコーダ320が変調を行うか否かを切り換えることができるようにすることで、可視画像形成のためだけに用いられるFIFOメモリ34や駆動パルス生成部35といった構成を省略することができ、より簡易な構成でありながら、光ディスク記録装置100’に可視画像形成機能および情報記録機能を持たせることができる。
(変形例11)
光ディスクDの記録面(記録層202)に対しても可視画像を形成するようにしてもよい。周知のように記録層202に所定強度以上のレーザ光を照射すると照射部分の反射率は変化するから、可視的に識別することができる程度の広範囲にレーザ光を照射することにより、可視画像を形成させることができる。あるいは、レーザ光照射領域が空洞化あるいは隆起する、といったように、状態が変化する材質で記録層202を構成すれば、かかる材質の性質を利用して、可視画像を形成させることもできる。
記録面(記録層202)に可視画像を形成する場合は、記録層202に形成されている案内溝(プリグルーブ)に沿って可視画像を形成するためのデータを記録するようにすればよい。あるいは、感熱面(感熱層205)に可視画像を形成するときと同様、記録層202に照射するレーザ光のビームスポット径を大きく調整し、案内溝によらずに記録するようにしてもよい。すなわち、案内溝の間隔(トラックピッチ)は数μm程度の狭小値であり、案内溝に沿った記録を行わなくても、形成される可視画像の分解能が落ちるような問題は生じない。また、記録層205の面には案内溝が設けられているため、厳密にいえば凹凸が存在するが、溝の深さも数μm程度の狭小値であり、可視画像を形成する上では、記録層202を平面として扱うことができる。
いずれにしても、本発明に関わる技術を用いれば、何ら特別の装置を用いることなく、感熱面(感熱層205)だけでなく、記録面(記録層202)にも可視画像を形成することができる。
(変形例12)
光ディスクDの記録層202に可視画像を形成させる場合、可視画像を形成した領域には、当然ながら本来のデータ記録はすることができない。このため、光ディスクDの記録領域(記録層202)のうち、可視画像を形成するための領域を予め決めておくようにしてもよい。たとえば、ディスクの最内周位置から所定位置(アドレス)までの領域には本来のデータ記録を行い、それよりも外周の領域に可視画像を形成する、と決めておけば、本来のデータ記録をするための領域がなくなるといった不都合は生じない。
あるいは、本来のデータ記録をした後に、記録していない領域(未記録領域)を検出し、検出した未記録領域に可視画像の形成を行うようにしてもよい。
(変形例13)
可視画像を形成するために記録すべきデータ(画像データ)を、光ディスク記録装置100のメモリ(図示せず)に予め格納しておいてもよい。たとえば、光ディスクD上に、数字0〜9を可視画像として形成するために記録すべきデータをメモリに用意しておく。そして、ユーザが光ディスクD上に形成する数字を指定すると、指定された数字に関わる記録データをメモリから読み出し、これを光ディスクDに記録して可視画像の形成をするようにしてもよい。
また、ディスク内周から外周にかけて本来のデータ記録をしていき、データ記録を終了した後、ユーザの指示によることなく、記録時の日時や時刻に関わるタイムスタンプ情報を可視画像として自動形成するようにしてもよい。タイムスタンプ情報は、外部装置(ホストPC110)から光ディスク記録装置100に供給すればよい。
また、本来のデータ記録を終了した後、ユーザ名や記録データの内容を示すシグニチュア情報を可視画像として形成するようにしてもよい。シグニチュア情報は、ユーザがホストPC110を操作して光ディスク記録装置100に供給すればよい。あるいは、ユーザが直接光ディスク記録装置100を操作して、シグニチュア情報を入力(登録)できるようにしてもよい。
10……光ピックアップ、11……スピンドルモータ(回転駆動手段)、12……RFアンプ、13……サーボ回路、16……制御部、17……エンコーダ、18……ストラテジ回路、19……レーザドライバ、20……レーザパワー制御回路、21……周波数発生器、30……ステッピングモータ、31……モータドライバ、32……モータコントローラ、33……PLL回路、34……FIFOメモリ、35……駆動パルス生成部、36……バッファメモリ、53……レーザーダイオード、53a……フロントモニターダイオード、56……受光素子、64……フォーカスアクチュエータ、65……トラッキングアクチュエータ、100……光ディスク記録装置、201……保護層、202……記録層、203……反射層、204……保護層、205……感熱層、206……保護層、270……チャッキング部、271……アダプタ、280……駆動機構、320……エンコーダ、D……光ディスク。