JP4284764B2 - クロック再生方法および装置、並びにデータ再生装置 - Google Patents

クロック再生方法および装置、並びにデータ再生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばDWDD方式の光磁気ディスクの再生系に適用して好適なクロック再生方法および装置、並びにデータ再生装置に関する。詳しくは、入力2値化信号を2系統に分岐し、一方または双方に遅延処理をして第1および第2の2値化信号を得、第1の2値化信号の立上りエッジと再生クロック信号の位相を比較し、第2の2値化信号の立下りエッジと再生クロック信号の位相を比較し、それぞれの位相誤差信号の和の信号で再生クロック信号の周波数を制御し、それぞれの位相誤差信号の差の信号で上述の遅延処理における遅延量を制御することによって、第1の2値化信号の立上りエッジおよび第2の2値化信号の立下りエッジの双方に同期した再生クロック信号を得るようにしたクロック再生方法等に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
書き換え可能な高密度記録媒体として光磁気記録媒体がある。近年、その中で、少なくとも、移動層、スイッチング層、メモリ層の磁性3層膜からなり、磁性膜温度がスイッチング層のキュリー温度以上となった領域で移動層の磁壁移動が発生して実効的に記録された磁区の大きさが拡大されるようになされた光磁気記録媒体が注目されており(特開平6−290496号公報参照)、この光磁気記録媒体を取り扱う再生方式はDWDD(Domain Wall Displacement Detection)方式と呼ばれている。このDWDD方式では、光ビームの光学的な限界分解能以下の周期の微小記録磁区からも非常に大きな信号を再生することが可能であり、光の波長、対物レンズの開口数NA等を変更することなく高密度化が行える有力な方式の一つである。
【0003】
このDWDD方式に関してさらに詳細に説明する。
光磁気記録媒体10は、図12Aに示すように、移動層11、スイッチング層12、メモリ層13がこの順に積層された交換結合3層膜で構成される。メモリ層13は大きな磁壁抗磁力を呈する垂直磁化膜からなっている。移動層11は、小さな磁壁抗磁力を呈し、磁壁移動度が大きな垂直磁化膜からなっている。スイッチング層12は、移動層11およびメモリ層13よりも低いキュリー温度Tsを呈する磁性層からなっている。各層中の矢印14は、原子スピンの向きを表している。原子スピンの向きが相互に逆向きの領域の境界部には、磁壁15が形成されている。
【0004】
記録膜面上を再生用の光ビーム(レーザビーム)16を利用して局所的に加熱すると、図12Bに示すような温度Tの分布が形成され、これに伴って磁壁エネルギー密度σの分布が図12Cに示したように形成される。磁壁エネルギー密度σは一般的に温度が上昇するほど低下するので、最大温度の位置で磁壁エネルギー密度σが最も低くなるような分布になる。この結果、磁壁エネルギー密度σの低い高温側へ移動させようとする磁壁駆動力F(x)が図12Dに示したように発生する。図12Eは、光ビーム16のスポット16Pと、スイッチング層12のキュリー温度Tsよりも高い温度領域17の位置関係を示している。
【0005】
媒体10の温度がスイッチング層12のキュリー温度Tsよりも低い場所では、各磁性層は互いに交換結合しているため、上述の温度勾配による磁壁駆動力F(x)が作用しても、メモリ層13の大きな磁壁抗磁力に阻止されて磁壁15の移動はおこらない。ところが、媒体10の温度がキュリー温度Tsよりも高い場所では移動層11とメモリ層13との間の交換結合が切断されるため、磁壁抗磁力の小さな移動層11の磁壁15は、温度勾配による磁壁駆動力F(x)で移動可能になる。そのため、光ビーム16による媒体10の走査に伴って、磁壁15がキュリー温度Tsの位置を越えて結合切断領域に侵入した瞬間に、移動層12の磁壁15の高温側への移動が起こる。
【0006】
媒体10に記録信号に対応した間隔で形成されている磁壁15が光ビーム16による媒体の走査に伴ってキュリー温度Tsの位置を通過するたびに、移動層11の磁壁15の移動が発生する。これにより、実効的に記録された磁区の大きさが拡大されるため、光ビーム16の光学的な限界分解能以下の周期の微小記録磁区からも非常に大きな信号を再生することが可能となる。
【0007】
光ビーム16が媒体10を一定速度で走査すると、記録されている磁壁15の空間的間隔に対応した時間間隔で、上述した磁壁移動が発生する。この磁壁移動の発生は、光ビーム(レーザビーム)16の反射光の偏光面の変化として検知できる。
【0008】
なお、図12Aに破線で示すように、領域17の後方からも磁壁移動が発生する。そのため、前方からの磁壁移動による再生信号に上述の後方からの磁壁移動による信号がゴースト信号として重畳される。このゴースト信号に関しては、説明は省略するが、再生磁界の印加や記録膜の工夫によって解決できる。
【0009】
上述したDWDD方式の光磁気ディスク装置は、一般的な光磁気ディスクの記録再生装置とほぼ同様の構成とされる。図13は、再生系の一部の構成を示している。光学ヘッド(図示せず)からの再生信号SMOはイコライザ回路21に供給されて周波数特性が補償され、そして周波数特性が補償された再生信号SMO′は2値化回路22に供給されて2値化信号S2に変換される。
【0010】
2値化回路22より出力される2値化信号S2は、データ検出回路23およびPLL(phase-locked loop)回路24に供給される。PLL回路24では、2値化信号S2の立上りおよび立下りの両エッジに同期したクロック信号CLKが生成され、このクロック信号CLKがデータ検出回路23に供給される。データ検出回路23では、クロック信号CLKを使用して、2値化信号S2よりデータが検出され、再生データPDとして出力される。
【0011】
なお、DWDD方式の光磁気ディスクには、データビット列を例えばRLL(run length limited)変調ビットに変換し、その後にNRZI(Non Return to Zero Inverted)方式、すなわちデータの反転がある箇所を1、反転がない箇所を0とする方式で信号が記録されている。この場合、データ検出回路23では、例えばNRZIデータからNRZデータへの変換が行われ、再生データPDとしてRLL変調データが得られる。
【0012】
ところで、DWDD方式では、記録マークの拡大方向への磁壁移動時と縮小方向への時壁移動時とで光ビーム位置に対する時壁移動開始時刻に差が生じることがある。このため、上述したようにNRZI方式で信号が記録される場合、図14B,Cに示すように、2値化信号S2の立上りエッジおよび立下りエッジが、クロック信号CLKに対して異なる位相オフセットを持つことがある。すなわち、2値化信号S2の立上りエッジはクロック信号CLKの立下りエッジより位相が遅れ、逆に2値化信号S2の立下りエッジはクロック信号CLKの立下りエッジより位相が進んだ状態となることがある。なお、図14Aは、イコライザ回路21より出力される再生信号SMO′を示している。
【0013】
このように2値化信号S2の立上りエッジおよび立下りエッジがクロック信号CLKに対して異なる位相オフセットを持つときには、クロック信号CLKのジッターが増加してデータ検出時の位相マージンが減少し、エラーレートの悪化等の弊害を招くこととなる。
【0014】
そこで、このような弊害を防止するするため、2値化信号の立上りエッジと立下りエッジに対してそれぞれ別個のPLL回路を用いてクロック信号を再生してデータ検出を行う方式が提案されている(特開平10−92039号公報参照)。図15は、その場合の回路構成例を示している。この図15において、図13と対応する部分には同一符号を付して示している。
【0015】
光学ヘッド(図示せず)からの再生信号SMOはイコライザ回路21に供給されて周波数特性が補償され、そして周波数特性が補償された再生信号SMO′は2値化回路22に供給されて2値化信号S2に変換される。
【0016】
2値化回路22より出力される2値化信号S2は、データ検出回路23U,23DおよびPLL回路24U,24Dに供給される。PLL回路24Uでは、2値化信号S2の立上りエッジに同期したクロック信号CLKuが生成され、このクロック信号CLKuがデータ検出回路23Uに供給される。データ検出回路23Uでは、クロック信号CLKuを使用して、2値化信号S2よりデータPDuが検出される。
【0017】
同様に、PLL回路24Dでは、2値化信号S2の立下りエッジに同期したクロック信号CLKdが生成され、このクロック信号CLKdがデータ検出回路23Dに供給される。データ検出回路23Dでは、クロック信号CLKdを使用して、2値化信号S2よりデータPDdが検出される。そして、これらデータ検出回路23U,23Dで検出された2系統のデータPDu,PDdがデータ合成回路25で1系統のデータに合成され、このデータ合成回路25より再生データPDとして出力される。
【0018】
このような方式では、図16B,C,Dに示すように、2値化信号S2の立上りエッジおよび立下りエッジが、クロック信号CLKu,CLKdに対して異なる位相オフセットを持つということが回避される。すなわち、2値化信号S2の立上りエッジはクロック信号CLKuの立下りエッジと一致し、また2値化信号の立下りエッジはクロック信号CLKdの立下りエッジと一致した状態となる。したがって、クロック信号CLKu,CLKdは安定して得られ、データ検出回路23U,23Dでは安定したデータ検出が可能となる。なお、図16Aは、イコライザ回路21より出力される再生信号SMO′を示している。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように2値化信号S2の立上りエッジと立下りエッジに対してそれぞれ別個のPLL回路24U,24Dを用いてクロック信号CLKu,CLKdを再生してデータ検出を行う方式を採用した場合、以下のような点が問題となる。
【0020】
すなわち、2つのPLL回路24U,24Dを設けることで回路規模が増大する。また、ほぼ等しい周波数で動作する2つのPLL回路24U,24Dが相互に干渉を起こすことも心配される。さらに、2つのデータ検出回路23U,23Dで検出された2系統のデータPDu,PDdをデータ合成回路25で1系統のデータに合成する必要がある。その際の同期合わせは、上述せずも、例えば既知のシンクパターンを利用してパターンマッチングを行うこと等で実現可能であるが、データ検出回路が1つである場合に比べて処理がはるかに複雑になる。
【0021】
そこで、この発明では、上述した問題点を解決するクロック再生方法等を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るクロック再生方法は、入力2値化信号を2系統に分岐し、分岐した双方に遅延処理をして第1および第2の2値化信号を得る第1のステップと、第1の2値化信号の立上りエッジと再生クロック信号との位相を比較して第1の位相誤差信号を得る第2のステップと、第2の2値化信号の立下りエッジと再生クロック信号との位相を比較して第2の位相誤差信号を得る第3のステップと、第1の2値化信号の立上りエッジが第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、第1のステップの一方の遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、第2の2値化信号の立下りエッジが第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、当該第1のステップの遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御する第4のステップと、第1および第2の位相誤差信号の和の信号に基づいて、再生クロック信号の周波数を制御する第5のステップとを有するものである。
【0023】
また、この発明に係るクロック再生装置は、入力2値化信号を2系統に分岐し、分岐した双方に遅延処理をして第1および第2の2値化信号を得る遅延処理手段と、再生クロック信号を出力するクロック発生手段と、第1の2値化信号の立上りエッジと再生クロック信号との位相を比較して第1の位相誤差信号を得る第1の位相比較手段と、第2の2値化信号の立下りエッジと再生クロック信号との位相を比較して第2の位相誤差信号を得る第2の位相比較手段と、第1の2値化信号の立上りエッジが上記第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、遅延処理手段の一方の遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、第2の2値化信号の立下りエッジが第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、当該遅延処理手段の一方の遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御する遅延量制御手段と、第1および第2の位相誤差信号の和の信号に基づいて、クロック発生手段より出力される再生クロック信号の周波数を制御するクロック周波数制御手段とを備えるものである。
【0024】
この発明においては、入力2値化信号が2系統に分岐され、分岐した双方が遅延処理されて第1および第2の2値化信号が得られる。また、再生クロック信号と第1の2値化信号の立上りエッジとの位相が比較されて第1の位相誤差信号が得られ、同様に再生クロック信号と第2の2値化信号の立下りエッジとの位相が比較されて第2の位相誤差信号が得られる。
【0025】
そして、第1の2値化信号の立上りエッジが第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、第1のステップの一方の遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、第2の2値化信号の立下りエッジが第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、当該第1のステップの遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御される。これにより、第1の2値化信号の立上りエッジおよび再生クロック信号の位相関係と、第2の2値化信号の立下りエッジおよび再生クロック信号の位相関係とが等しくなるように制御される。また、第1および第2の位相誤差信号の和の信号に基づいて、上述した再生クロック信号の周波数が制御される。これにより、第1の2値化信号の立上りエッジおよび再生クロック信号の位相関係と、第2の2値化信号の立下りエッジおよび再生クロック信号の位相関係とが逆の関係となるように制御される。
【0026】
上述した遅延量制御と再生クロック信号の周波数制御とが相俟って、第1の2値化信号の立上りエッジおよび第2の2値化信号の立下りエッジに同期した再生クロック信号が得られる。
【0027】
また、この発明に係るデータ再生装置は、ディスク状記録媒体に光ビームを照射して再生信号を得る信号再生部と、この再生信号を2値化信号に変換する2値化部と、この2値化信号を用いて再生データの検出を行うデータ検出部とを備えるものであって、データ検出部は、第1および第2の2値化信号より再生クロック信号を得るクロック再生手段と、第1および第2の2値化信号より上記再生クロック信号を使用して再生データの検出を行う単一のデータ検出手段とを有するものである。
【0028】
そして、クロック再生手段は、2値化信号を2系統に分岐し、分岐した双方に遅延処理をしてなる第1および第2の2値化信号を得る遅延処理手段と、再生クロック信号を出力するクロック発生手段と、第1の2値化信号の立上りエッジと再生クロック信号との位相を比較して第1の位相誤差信号を得る第1の位相比較手段と、第2の2値化信号の立下りエッジと上記再生クロック信号との位相を比較して第2の位相誤差信号を得る第2の位相比較手段と、第1の2値化信号の立上りエッジが第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、遅延処理手段の一方の遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、第2の2値化信号の立下りエッジが第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、当該遅延処理手段の一方の遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御する遅延量制御手段と、第1および第2の位相誤差信号の和の信号に基づいて、クロック発生手段より出力される再生クロック信号の周波数を制御するクロック周波数制御手段とからなるものである。
【0029】
この発明において、クロック再生手段からは、上述したクロック再生方法およびクロック再生装置の発明と同様の作用により、第1の2値化信号の立上りエッジおよび第2の2値化信号の立下りエッジに同期した再生クロック信号が得られる。そのため、データ検出手段では、第1および第2の2値化信号より、この再生クロック信号を使用して、安定した再生データの検出が可能となる。そのため、例えばDWDD方式において記録マークの拡大方向への磁壁移動時と縮小方向への時壁移動時とで光ビーム位置に対する時壁移動開始時刻に差が生じ、その差によって2値化信号にエッジシフトを伴う場合であっても、再生データの検出が良好に行われる。
【0030】
この発明においては、1つのPLL回路を備えるものである。したがって、2つのPLL回路を設けることによる回路規模の増大、相互干渉等の問題が発生することはない。また、この発明においては、単一のデータ検出手段で再生データを検出するのみである。したがって、2系統のデータ検出をし、その後に合成して1系統の再生データを得るものでなく、複雑なデータ合成処理を回避することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態としてのDWDD方式の光磁気ディスク装置100を示している。このディスク装置100で取り扱う光磁気ディスク111は、ガラスあるいはプラスチックを素材とした基板上に、上述した図12Aに示すような光磁気記録媒体10を記録膜として被着し、さらにその上に保護膜を形成してなるものである。
【0032】
ディスク装置100は、上述した光磁気ディスク111を回転駆動するためのスピンドルモータ113を有している。光磁気ディスク111は、記録時および再生時には角速度一定で回転駆動される。スピンドルモータ113の回転軸には、その回転速度を検出するための周波数発電機114が取り付けられている。
【0033】
また、ディスク装置100は、外部磁界発生用の磁気ヘッド115と、この磁気ヘッド115の磁界発生を制御する磁気ヘッドドライバ116と、半導体レーザ、対物レンズ、光検出器等から構成される光学ヘッド117と、この光学ヘッド117の半導体レーザの発光を制御するレーザドライバ118とを有している。磁気ヘッド115と光学ヘッド117は光磁気ディスク111を挟むように対向して配設されている。
【0034】
レーザドライバ118には、後述するサーボコントローラ141よりレーザパワー制御信号SPCが供給され、光学ヘッド117の半導体レーザより出力されるレーザ光のパワーが、記録時には記録パワーPWとなり、再生時には記録パワーPWより低い再生パワーPRとなるように制御される。
【0035】
データ書き込み時(記録時)には、後述するように磁気ヘッドドライバ116にNRZIデータとしての記録データDrが供給され、磁気ヘッド115よりその記録データDrに対応した磁界が発生され、光学ヘッド117からの光ビーム(レーザビーム)との共働により光磁気ディスク111に記録データDrが記録される。
【0036】
また、ディスク装置100は、CPU(central processing unit)を備えるサーボコントローラ141を有している。このサーボコントローラ141には、光学ヘッド117で生成されるフォーカスエラー信号SFEおよびトラッキングエラー信号STE、さらに上述した周波数発電機114より出力される周波数信号SFGが供給される。
【0037】
サーボコントローラ141の動作は、後述するシステムコントローラ151によって制御される。このサーボコントローラ141によって、トラッキングコイルやフォーカスコイル、さらには光学ヘッド117をラジアル方向に移動させるためのリニアモータを含むアクチュエータ145が制御され、トラッキングやフォーカスのサーボが行われ、また光学ヘッド117の半径方向(ラジアル方向)への移動が制御される。また、サーボコントローラ141によってスピンドルモータ113が制御され、上述したように記録時や再生時に光磁気ディスク111が角速度一定で回転するように制御される。
【0038】
また、ディスク装置100は、CPUを備えるシステムコントローラ151と、データバッファ152と、ホストコンピュータとの間でデータやコマンドの送受を行うためのSCSI(Small Computer System Interface)153とを有している。システムコントローラ151はシステム全体を制御するためのものである。
【0039】
また、ディスク装置100は、ホストコンピュータからSCSI153を通じて供給される書き込みデータに対して誤り訂正符号の付加を行うと共に、後述するデータ復調器160の出力データに対して誤り訂正を行うためのECC(error correction code)回路154と、このECC回路154で誤り訂正符号が付加された書き込みデータのデータビット列を例えばRLL変調ビットに変換し、その後にNRZIデータに変換して記録データDrを得るデータ変調器155とを有している。
【0040】
また、ディスク装置100は、光学ヘッド117より得られる再生信号SMOの周波数特性を補償するためのイコライザ回路156と、このイコライザ回路156で周波数特性が補償された再生信号SMO′を2値化信号S2に変換する2値化回路157と、この2値化信号S2より再生データPDを検出するデータ検出部158と、この再生データPD(例えば、RLL変調データ)に対して復調処理をして読み出しデータを得るデータ復調器160とを有している。
【0041】
データ検出部158の構成を説明する。図2は、データ検出部158の構成例を示している。このデータ検出部158は、2値化信号S2を分岐し、双方に遅延処理をして第1および第2の2値化信号S21,S22を得る遅延処理手段170と、これら第1および第2の2値化信号S21,S22より再生クロック信号CLKを得るクロック再生手段180と、これら第1および第2の2値化信号S21,S22より再生クロック信号CLKを使用して再生データPDの検出を行うデータ検出回路(データ検出手段)190とを有している。
【0042】
遅延処理手段170について説明する。この遅延処理手段170は、2値化信号S2を遅延させて第1の2値化信号S21を得る遅延回路171と、2値化信号S2を遅延させて第2の2値化信号S22を得る遅延回路172とからなっている。遅延回路171は固定の遅延量を持つ遅延回路である。一方、遅延回路172は、供給される制御信号の値に応じて遅延量が変化する可変遅延回路であって、ここでは制御信号が大きくなると遅延量が増加し、小さくなると遅延量が減少するものとする。
【0043】
次に、クロック再生手段180について説明する。このクロック再生手段180は、再生クロック信号CLKを出力するクロック発生手段としての電圧制御発振器181と、上述した第1の2値化信号S21の立上りエッジと再生クロック信号CLKとの位相を比較して位相誤差信号PE1を得る位相比較回路182Uと、上述した第2の2値化信号S22の立下りエッジと再生クロック信号CLKとの位相を比較して位相誤差信号PE2を得る位相比較回路182Dとを有している。
【0044】
また、このクロック再生手段180は、位相誤差信号PE1,PE1の差の信号EDを得る減算器183と、この差の信号EDを上述した遅延回路172に制御信号として供給するループフィルタ184と、位相誤差信号PE1,PE1の和の信号EAを得る加算器185と、この和の信号EAを上述した電圧制御発振器181に制御信号として供給するループフィルタ186とを有している。
【0045】
図3は、位相比較回路182Uおよび位相比較回路182Dの構成を示している。まず、位相比較回路182Uについて説明する。第1の2値化信号D21は直接Dフリップフロップ201のクロック端子に供給される。このDフリップフロップ201のデータ端子Dには電源Vccが供給される。また、第1の2値化信号S21はDフリップフロップ202のデータ端子Dに供給され、このDフリップフロップ202の非反転出力端子Qに得られる信号はDフリップフロップ203のデータ端子Dおよびアンド回路204の入力側に供給される。Dフリップフロップ202,203のクロック端子には再生クロック信号CLKが供給される。
【0046】
また、再生クロック信号CLKおよびDフリップフロップ203の反転出力端子Qバーに得られる信号が、それぞれアンド回路204の入力側に供給される。また、アンド回路204の出力信号はDフリップフロップ201のクリア端子CLRに供給される。そして、Dフリップフロップ201の反転出力端子Qバーに得られる信号およびアンド回路204の出力信号が抵抗器205,206をもって加算され、位相誤差信号PE1が得られる。
【0047】
図4A〜Cの波形図を使用して、上述したように構成された位相比較回路182Uの動作を説明する。図4Aは第1の2値化信号S21、図4Bは再生クロック信号CLK、図4Cは位相誤差信号PE1を示している。2値化信号S21の立上りエッジに同期して、Dフリップフロップ201の反転出力端子Qバーに−1の信号が得られるため、位相誤差信号PE1は−1となる。そして、その後にくる再生クロック信号CLKの立上りエッジに同期して、アンド回路204の出力側に+1の信号が得られると共に、Dフリップフロップ201がクリアされるため、位相誤差信号PE1は+1となる。さらに、その直後の再生クロック信号CLKの立下りに同期して、アンド回路204の出力信号は0となるため、位相誤差信号PE1も0となる。
【0048】
このように得られる位相誤差信号PE1を時間平均すると、図中の斜線で示した部分が相殺されることから、再生クロック信号CLKの立下りエッジが2値化信号S21の立上りエッジに対して遅れている場合は負の値となり(矢印Q1部分参照)、進んでいる場合は正の値となり(矢印Q2部分参照)、その大きさは両者の位相差に比例する。
【0049】
次に、位相比較回路182Dについて説明する。この位相比較回路182Dでは、第2の2値化信号S22がインバータ207で反転された後にDフリップフロップ201のクロック端子およびDフリップフロップ202のデータ端子Dに供給される。その他の部分は、上述した位相比較回路182Uと同様に構成される。
【0050】
図5A〜Dの波形図を使用して、上述したように構成された位相比較回路182Dの動作を説明する。図5Aは第2の2値化信号S22、図5Bは2値化信号S22の反転信号、図5Cは再生クロック信号CLK、図5Dは位相誤差信号PE2を示している。2値化信号S22の立下りエッジに同期して、Dフリップフロップ201の反転出力端子Qバーに−1の信号が得られるため、位相誤差信号PE2は−1となる。そして、その後にくる再生クロック信号CLKの立上りエッジに同期して、アンド回路204の出力側に+1の信号が得られると共に、Dフリップフロップ201がクリアされるため、位相誤差信号PE2は+1となる。さらに、その直後の再生クロック信号CLKの立下りに同期して、アンド回路204の出力信号は0となるため、位相誤差信号PE2も0となる。
【0051】
このように得られる位相誤差信号PE2を時間平均すると、図中の斜線で示した部分が相殺されることから、再生クロック信号CLKの立下りエッジが2値化信号S22の立下りエッジに対して遅れている場合は負の値となり(矢印Q3部分参照)、進んでいる場合は正の値となり(矢印Q4分部参照)、その大きさは両者の位相差に比例する。
【0052】
図6Aは、ループフィルタ186の構成を示している。このループフィルタ186はローパスフィルタで構成されている。すなわち、入力信号が抵抗器211を介して演算増幅器214の反転入力端子に供給され、この演算増幅器214の非反転入力端子は接地され、その出力側はコンデンサ213および抵抗器212の直列回路を介して反転入力端子に接続され、そして演算増幅器214の出力側より出力信号が得られる。
【0053】
また、図6Bは、ループフィルタ184の構成を示している。このループフィルタ184は、積分回路で構成されている。すなわち、入力信号が抵抗器215を介して演算増幅器217の反転入力端子に供給され、この演算増幅器217の非反転入力端子は接地され、その出力側はコンデンサ213を介して反転入力端子に接続され、そして演算増幅器217の出力側より出力信号が得られる。
【0054】
上述したクロック再生手段180においては、位相誤差信号PE1,PE2の差の信号EDがループフィルタ184を介して遅延回路172に制御信号として供給される。そのため、第1の2値化信号S21の立上りエッジおよび再生クロック信号CLKの位相関係と、第2の2値化信号S22の立下りエッジおよび再生クロック信号CLKの位相関係とが等しくなる(PE1=PE2,ED=0)ように遅延回路172の遅延量が制御される。
【0055】
また、上述したクロック再生手段180においては、位相誤差信号PE1,PE2の和の信号EAがループフィルタ186を介して電圧制御発振器181に制御信号として供給される。そのため、第1の2値化信号S21の立上りエッジおよび再生クロック信号CLKの位相関係と、第2の2値化信号S22の立下りエッジおよび再生クロック信号CLKの位相関係とが逆の関係となる(PE1=−PE2,EA=0)ように、再生クロック信号CLKの周波数が制御される。結局、これら遅延量制御と周波数制御とが相俟って、再生クロック信号CLKは、第1の2値化信号S21の立上りエッジおよび第2の2値化信号S22の立下りエッジに同期したものとなる。
【0056】
図7A〜Kの波形図を参照して、クロック再生手段180の動作を、さらに詳細に説明する。図7Aに示すような記録マークに対して、光学ヘッド117より図7Bに示すような再生信号SMOが得られ、この再生信号SMOに対応して、イコライザ回路156より図7Cに示すように波形等化された再生信号SMO′が得られ、2値化回路157より図7Dに示すように2値化された2値化信号S2が得られる場合を考える。
【0057】
2値化信号S2に対して遅延回路171,172によって一定の遅延が加えられて得られる第1の2値化信号S21、第2の2値化信号S22は、それぞれ図7E,Fに示すようになる。ここで、2つの遅延回路171,172の遅延量は初期状態(時間領域A)では等しいものとする。第1の2値化信号S21の立上りエッジと、図7Gに示すような再生クロック信号CLKとの位相比較が位相比較回路182Uで行われ、図7Hに示すような位相誤差信号PE1が得られる。同様に、第2の2値化信号S22の立下りエッジと、再生クロック信号CLKとの位相比較が位相比較回路182Dで行われ、図7Iに示すような位相誤差信号PE2が得られる。
【0058】
そして、減算器183で、位相誤差信号PE2より位相誤差信号PE1が減算され、図7Jに示すような差の信号EDが得られる。この場合、斜線部分は相殺されるため、初期状態において、信号EDの時間平均は負の値となる。この差の信号EDが、図6Bに示すような回路構成のループフィルタ184に入力されると、その出力信号は徐々に増加し、遅延回路172の遅延量が増加することになる。
【0059】
また、加算器185で、位相誤差信号PE1,PE2が加算され、図7Kに示すような和の信号EAが得られる。この和の信号EAは全体の位相誤差を表し、図6Aに示すような回路構成のループフィルタ186を介して再生クロック信号CLKを出力する電圧制御発振器181に制御信号として供給されることで、PLL(Phase Lock Loop)が形成される。初期状態(時間領域A)では、この和の信号EAは交互に極性が変化するため、再生クロック信号CLKのジッタが大きく不安定なものとなる。
【0060】
このような初期状態(時間領域A)から一定時間が経過した後には、上述したような動作から遅延回路172の遅延量は遅延回路171の遅延量よりも増加しており、各部の波形は時間領域Bに示したように変化する。すなわち、2つの位相誤差信号PE1,PE2の差の信号EDおよび和の信号EAの双方とも、時間平均はほぼ0となり、しかも各エッジに対応する位相誤差信号がいずれもゼロまたは非常に小さい値となる。これは、第1の2値化信号S21の立上りエッジ、第2の2値化信号の立下りエッジと、再生クロック信号CLKの立下りエッジとがほぼ一致するように、遅延回路172の遅延量および再生クロック信号CLKの周波数が制御されたことを意味し、ジッタの増加などの問題が回避される。
【0061】
なお、図7に示す動作例は、初期状態(時間領域A)において2値化信号S21の立上りエッジが2値化信号S22の立下りエッジに比較して遅れている場合を示したが、逆に初期状態において2値化信号S22の立下りエッジが2値化信号S21の立上りエッジに比較して遅れている場合には、遅延回路172の遅延量が減少する方向に制御され、一定時間が経過した後には同様の作用効果が得られることとなる。
【0062】
次に、データ検出回路190について説明する。このデータ検出回路190は、2値化信号S21,S22より再生クロック信号CLKに同期化した1系統の同期化データSYDを得る同期化部と、この同期化データSYDを復調してNRZデータとしての再生データPDを得る復調部とを有している。
【0063】
図8は、同期化部の構成例を示している。この図8において、同期化部は、アンド回路191,192、オア回路193およびDフリップフロップ194を有して構成される。遅延回路171(図2に図示)より出力される第1の2値化信号S21はアンド回路192の入力側に供給される。遅延回路172(図2に図示)より出力される第2の2値化信号S22はアンド回路191の入力側に供給される。
【0064】
また、アンド回路191,192のそれぞれの出力信号はオア回路193の入力側に供給され、このオア回路193の出力信号はDフリップフロップ194のデータ端子Dに供給される。電圧制御発振器181(図2に図示)より出力される再生クロック信号CLKはDフリップフロップ194のクロック端子に供給される。このDフリップフロップ194の反転出力端子Qバーに得られる信号はアンド回路192の入力側に供給される。また、このDフリップフロップ194の非反転出力端子Qに得られる信号はアンド回路191の入力側に供給されると共に、その信号は同期化データSYDとして導出される。
【0065】
図9A〜Gを使用して、上述したように構成されたデータ検出回路190の動作を説明する。図9A〜Cは、それぞれ図7の時間領域Bにおける第1の2値化信号S21、第2の2値化信号S22および再生クロック信号CLKを示している。このような状態にあるとき、アンド回路191,192の出力信号Sb,Saはそれぞれ図9F,Gに示すように変化し、Dフリップフロップ194の端子Q,Qバーに得られる信号Sc,Sdはそれぞれ図9D,Eに示すように変化する。そして、Dフリップフロップ194の非反転出力端子Qより、図9Dに示すような1系統の同期化データSYDが得られる。
【0066】
上述したように再生クロック信号CLKは第1の2値化信号S21の立上りエッジおよび第2の2値化信号S22の立下りエッジに同期したものとなるが、同期化データSYDは第1の2値化信号S21の立上り部分と第2の2値化信号S22の立下り部分とを利用して得られる。したがって、例えばDWDD方式において記録マークの拡大方向への磁壁移動時と縮小方向への時壁移動時とで光ビーム位置に対する時壁移動開始時刻に差が生じ、その差によって2値化信号S2にエッジシフトを伴う場合であっても、同期化データSYDを充分な位相マージンをもって得ることができ、よってデータ検出回路190では再生データPDの検出が良好に行われる。
【0067】
次に、図1に示す光磁気ディスク装置100の動作を説明する。ホストコンピュータよりシステムコントローラ151にデータライトコマンドが供給される場合には、データ書き込み(記録)が行われる。この場合、SCSI153で受信されてデータバッファ152に格納されているホストコンピュータからの書き込みデータに対して、ECC回路154で誤り訂正符号の付加が行われ、さらにデータ変調器155でRLL変調ビットへの変換やNRZIデータへの変換が行われる。データ変調器155より磁気ヘッドドライバ116にNRZIデータとしての記録データDrが供給され、光磁気ディスク111のターゲット位置としてのデータ領域に記録データDrが記録される。
【0068】
また、ホストコンピュータよりシステムコントローラ151にデータリードコマンドが供給される場合には、データ読み出し(再生)が行われる。この場合、光磁気ディスク111のターゲット位置としてのデータ領域より再生信号SMOが得られる。この再生信号SMOはイコライザ回路156で周波数特性が補償され、再生信号SMO′として2値化回路157に供給される。そして、この2値化回路157より出力される2値化信号S2はデータ検出部158に供給され、2値化信号S2より再生データPDが検出される。この場合、上述したように、2値化信号S2が2系統に分岐され、遅延回路171,172でそれぞれ遅延されて第1および第2の2値化信号S21,S22とされ、これら2値化信号S21,S22よりクロック再生手段180で再生クロック信号CLKが得られ、そしてデータ検出回路190で2値化信号S21,S22より再生クロック信号CLKを使用して1系統の再生データPDが得られる(図2参照)。
【0069】
この再生データPDに対して、データ復調器160で復調処理が行われ、さらにECC回路154で誤り訂正が行われて読み出しデータが得られる。この読み出しデータはデータバッファ152に一旦格納され、その後に所定タイミングでSCSI153を介してホストコンピュータに送信される。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態においては、データ検出部158内に1つのPLL回路を備えるものである(図2参照)。したがって、2つのPLL回路を設けることによる回路規模の増大、相互干渉等の問題が発生することはない。また、データ検出部158内のデータ検出回路190では、2値化信号S21,S22より再生クロック信号CLKを使用して1系統の再生データPDを検出するものである。したがって、2系統のデータ検出をし、その後に合成して1系統の再生データを得るものでなく、複雑なデータ合成処理を回避することができる。
【0071】
なお、上述実施の形態においては、図2に示すように、遅延回路171を固定遅延回路とし、遅延回路172を可変遅延回路として、遅延回路172の遅延量を制御するようにしたものであるが、逆に遅延回路171を可変遅延回路とし、遅延回路172を固定遅延回路として、遅延回路171の遅延量を制御する構成としてもよい。この場合、遅延量の制御を実施の形態とは逆方向に行う必要があるため、ループフィルタ184より供給される制御信号の極性を反転する必要がある。
【0072】
また、遅延回路171,172の双方とも可変遅延回路とし、これら遅延回路171,172の双方を遅延量を対称的に制御する構成としてもよい。この場合、遅延回路171,172には、極性が逆で絶対値が等しい制御信号が供給されることとなる。図10は、その場合における遅延処理手段170およびクロック再生手段180の構成例を示している。この図10において、図2と対応する部分には同一符号を付して示し、その詳細説明は省略する。この場合、ループフィルタ184の出力信号は遅延回路172に直接制御信号として供給されると共に、このループフィルタ184の出力信号は符号反転回路187で極性が反転された後に遅延回路171に制御信号として供給される。
【0073】
また、予め、立上り、立下りのいずれのエッジが遅れる傾向にあるかがわかっている場合には、その遅れる傾向にあるエッジとは逆のエッジで位相比較する2値化信号のみを遅延回路を介して得る構成とすることができる。図11は、立上りエッジが立下りエッジに比較して遅れる傾向にある場合における遅延処理手段170およびクロック再生手段180の構成例を示している。この図11において、図2と対応する部分には同一符号を付して示し、その詳細説明は省略する。この場合、2値化信号S2はそのまま第1の2値化信号S21とされ、2値化信号S2が遅延回路172で遅延されて第2の2値化信号S22とされる。そして、この遅延回路172にループフィルタ184より制御信号が供給される。このように一方のみに遅延回路を挿入することで、遅延回路を節約できる。
【0074】
また、上述実施の形態においては、この発明をDWDD方式の光磁気ディスク装置100に適用したものであるが、この発明は通常の光磁気ディスクや、相変化記録を行うディスクを取り扱う光ディスク装置等にも同様に適用することができる。
【0075】
さらに、図1に示した光磁気ディスク装置100は、SCSI153を備え、ホストコンピュータとデータのやり取りを行うが、代わりに例えばMPEGのエンコーダ/デコーダを備えてビデオやオーディオの信号データの記録/再生を行うものにも、この発明を同様に適用することができる。
【0076】
【発明の効果】
この発明に係るクロック再生装置および方法によれば、入力2値化信号を2系統に分岐し、分岐した双方に遅延処理をして第1および第2の2値化信号を得、第1の2値化信号の立上りエッジと再生クロック信号の位相を比較し、第2の2値化信号の立下りエッジと再生クロック信号の位相を比較し、それぞれの位相誤差信号の和の信号で再生クロック信号の周波数を制御し、第1の2値化信号の立上りエッジが第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、位相誤差信号の差の信号に基づいて、上述の一方の遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、第2の2値化信号の立下りエッジが第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、位相誤差信号の差の信号に基づいて、上述の一方の遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御するものであり、第1の2値化信号の立上りエッジおよび第2の2値化信号の立下りエッジの双方に同期した再生クロック信号を得ることができる。
【0077】
また、この発明に係るデータ再生装置によれば、データ検出手段では、第1および第2の2値化信号より上述の再生クロック信号を使用して再生データを得るものであり、例えばDWDD方式において記録マークの拡大方向への磁壁移動時と縮小方向への時壁移動時とで光ビーム位置に対する時壁移動開始時刻に差が生じ、その差によって2値化信号にエッジシフトを伴う場合であっても再生データの検出を良好に行うことがでいる。また、この発明に係るデータ再生装置によれば、1つのPLL回路を備えるものであり、2つのPLL回路を設けることによる回路規模の増大、相互干渉等の問題が発生することはない。さらに、この発明に係るデータ再生装置によれば、単一のデータ検出手段で1系統の再生データを得るものであり、2系統のデータ検出をした後に合成して1系統の再生データを得るものでなく、複雑なデータ合成処理を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態としての光磁気ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】光磁気ディスク装置の再生系のデータ検出部の構成例を示すブロック図である。
【図3】データ検出部内の位相比較回路の構成例を示すブロック図である。
【図4】位相比較回路(立上りエッジ)の動作を説明するための波形図である。
【図5】位相比較回路(立下りエッジ)の動作を説明するための波形図である。
【図6】ループフィルタの構成例を示す回路接続図である。
【図7】データ検出部内のクロック再生手段の動作を説明するための波形図である。
【図8】データ検出部内のデータ検出回路の同期化部の構成例を示すブロック図である。
【図9】同期化部の動作を説明するための波形図である。
【図10】データ検出部の他の例を示すブロック図である。
【図11】データ検出部の他の例を示すブロック図である。
【図12】DWDD方式を説明するための図である。
【図13】従来の光磁気ディスク装置の再生系の一部を示すブロック図である。
【図14】図13に示す再生系の一部における2値化信号とクロック信号との位相関係を示す波形図である。
【図15】従来の光磁気ディスク装置の再生系の一部を示すブロック図である。
【図16】図15に示す再生系の一部における2値化信号とクロック信号との位相関係を示す波形図である。
【符号の説明】
10・・・光磁気記録媒体、11・・・移動層、12・・・スイッチング層、13・・・メモリ層、14・・・原子スピンの向き、15・・・磁壁、16・・・再生用の光ビーム、16P・・・光ビームスポット、17・・・スイッチング層のキュリー温度Tsよりも高い温度領域、100・・・DWDD方式の光磁気ディスク装置、111・・・光磁気ディスク、115・・・外部磁界発生用の磁気ヘッド、117・・・光学ヘッド、141・・・サーボコントローラ、151・・・システムコントローラ、154・・・ECC回路、155・・・データ変調器、156・・・イコライザ回路、157・・・2値化回路、158・・・データ検出部、160・・・データ復調器、170・・・遅延処理手段、171,172・・・遅延回路、180・・・クロック再生手段、181・・・電圧制御発振器、182U,182D・・・位相比較回路、183・・・減算器、184,186・・・ループフィルタ、185・・・加算器、187・・・符号反転回路、190・・・データ検出回路、191,192・・・アンド回路、193・・・オア回路、194・・・Dフリップフロップ

Claims (5)

  1. 入力2値化信号を2系統に分岐し、分岐した双方に遅延処理をして第1および第2の2値化信号を得る第1のステップと、
    上記第1の2値化信号の立上りエッジと再生クロック信号との位相を比較して第1の位相誤差信号を得る第2のステップと、
    上記第2の2値化信号の立下りエッジと上記再生クロック信号との位相を比較して第2の位相誤差信号を得る第3のステップと、
    上記第1の2値化信号の立上りエッジが上記第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、上記第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、上記第1のステップの一方の遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、上記第2の2値化信号の立下りエッジが上記第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、上記第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、当該第1のステップの一方の遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御する第4のステップと、
    上記第1および第2の位相誤差信号の和の信号に基づいて、上記再生クロック信号の周波数を制御する第5のステップと
    を有するクロック再生方法。
  2. 入力2値化信号を2系統に分岐し、分岐した双方に遅延処理をして第1および第2の2値化信号を得る遅延処理手段と、
    再生クロック信号を出力するクロック発生手段と、
    上記第1の2値化信号の立上りエッジと上記再生クロック信号との位相を比較して第1の位相誤差信号を得る第1の位相比較手段と、
    上記第2の2値化信号の立下りエッジと上記再生クロック信号との位相を比較して第2の位相誤差信号を得る第2の位相比較手段と、
    上記第1の2値化信号の立上りエッジが上記第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、上記第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、上記遅延処理手段の一方の上記遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、上記第2の2値化信号の立下りエッジが上記第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、上記第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、当該遅延処理手段の一方の上記遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御する遅延量制御手段と、
    上記第1および第2の位相誤差信号の和の信号に基づいて、上記クロック発生手段より出力される上記再生クロック信号の周波数を制御するクロック周波数制御手段と
    を備えるクロック再生装置。
  3. ディスク状記録媒体に光ビームを照射して再生信号を得る信号再生部と、
    上記再生信号を2値化信号に変換する2値化部と、
    上記2値化信号を用いて再生データの検出を行うデータ検出部とを備え、
    上記データ検出部は、
    上記第1および第2の2値化信号より再生クロック信号を得るクロック再生手段と、
    上記第1および第2の2値化信号より上記再生クロック信号を使用して上記再生データの検出を行うデータ検出手段とを有し、
    上記クロック再生手段は、
    上記2値化信号を2系統に分岐し、分岐した双方に遅延処理をしてなる第1および第2の2値化信号を得る遅延処理手段と、
    再生クロック信号を出力するクロック発生手段と、
    上記第1の2値化信号の立上りエッジと上記再生クロック信号との位相を比較して第1の位相誤差信号を得る第1の位相比較手段と、
    上記第2の2値化信号の立下りエッジと上記再生クロック信号との位相を比較して第2の位相誤差信号を得る第2の位相比較手段と、
    上記第1の2値化信号の立上りエッジが上記第2の2値化信号の立下りエッジに比較して遅れている場合は、上記第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、上記遅延処理手段の一方の上記遅延処理における遅延量を減少すると共に、他方の遅延処理における遅延量を増加し、上記第2の2値化信号の立下りエッジが上記第1の2値化信号の立上りエッジに比較して遅れている場合は、上記第1および第2の位相誤差信号の差の信号に基づいて、当該遅延処理手段の一方の上記遅延処理における遅延量を増加すると共に、他方の遅延処理における遅延量を減少するように互いに逆方向に制御する遅延量制御手段と、
    上記第1および第2の位相誤差信号の和の信号に基づいて、上記クロック発生手段より出力される上記再生クロック信号の周波数を制御するクロック周波数制御手段とを含むデータ再生装置。
  4. 上記データ検出手段は、上記2値化信号より上記再生クロック信号に同期した同期化データを得る同期化部を有し、
    上記同期化部は、
    上記再生クロック信号がクロック端子に供給され、その非反転出力端子に上記同期化データが得られるDフリップフロップと、
    上記第1の2値化信号と上記Dフリップフロップの反転出力端子に得られる信号との論理積をとる第1のアンド回路と、
    上記第2の2値化信号と上記同期化データとの論理積をとる第2のアンド回路と、
    上記第1および第2のアンド回路の出力信号の論理和をとり、その出力信号を上記Dフリップフロップのデータ端子に供給するオア回路とからなる請求項3に記載のデータ再生装置。
  5. 上記ディスク状記録媒体は、少なくとも、移動層、スイッチング層、メモリ層がこの順に積層されて形成され、上記メモリ層は垂直磁化膜からなり、上記移動層は上記メモリ層に比べて相対的に磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度が大きな垂直磁化膜からなり、上記スイッチング層は上記移動層および上記メモリ層よりもキュリー温度の低い磁性層からなる光磁気記録媒体であって、
    上記信号再生部は、光ビームを上記光磁気記録媒体に対して相対的に移動させながら上記移動層の側から照射し、上記磁気記録媒体上に上記光ビームのスポットの移動方向に対して勾配を有すると共に少なくとも上記スイッチング層のキュリー温度よりも高い温度領域を有する温度分布を形成することで上記移動層に形成されていた磁壁を移動させ、上記光ビームの反射光の偏光面の変化に対応した再生信号を得る請求項3に記載のデータ再生装置。
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