JP4282793B2 - ヘルニア管栓塞用の補綴栓塞具 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘルニア管（hernial canal ）を栓塞するのに用いる補綴栓塞具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
公知の技術においては、ヘルニア管の修復は、通常、縫合によって行う。しかし、この修復方法は、必ずしも満足のいくものではない。なぜなら、縫合線に大きな引張り力がかかるため、破断により再度ヘルニアが生ずる危険性があるからである。さらに、破断が生じない場合でも、引張り力は、患者にとって手術後の痛みとなる。
【０００３】
この欠点を解消するため、様々な引張り力を伴わないヘルニア修復方法が提案されてきた。特に知られているのは、弱体化した組織の補強乃至代替のため、ヘルニア管表面の穴に、チュール（tulle ）メッシュあるいはこれに似た型の、合成補綴材料でできたシートを配置する方法である。例えば、鼠径部ヘルニアの開放修復においては、鼠径部環の腹膜から離れた側に小帯を配置する。この小帯は、精索が通過できるよう切込みを入れる。そして、小帯の二つの端は、精索の周りに巻き付ける。こうしてつくり上げた障壁は、鼠径部の管床が再生するのを可能にする。
【０００４】
このような障壁となるパッチ（当てつぎ）は、非侵襲手術によって配置される。腹腔内の腹膜上で補綴シートを広げるのにトロカールを用いる装置は、例えば欧州特許第第０，５４４，４８５号に記載されている。
【０００５】
上述の方法と組み合わせて用いることもできる、引張り力を生じないもう一つの修復方法は、補綴具または栓塞具でヘルニアの穴を栓塞するというものである。
【０００６】
外科医は、通常、適当な寸法の円筒を得るべく、パッチを補綴材料から切り出して、栓塞具をつくる。しかし、ヘルニアの穴に合うよう、矩形、錐形、環状形などの他の形状の補綴用栓塞子も用いることができる。この点については、Robert Bendavid 著、「Prosthesis and Ａbdominal Wall Hernias」、RG Landes 社（オースチン）の第３７５頁〜第３７９頁、第３８０頁〜第３８２頁、第３８３頁〜第３８８頁、第３８９頁〜第３９８頁、第４０８頁〜第４１０頁、第４１１頁〜第４１２頁、第４１３頁〜第４１４頁および第４４６頁〜第４４９頁と、米国特許第５,１１６,３５７号ならびに同第５,３５６,４３２号が参考になる。
【０００７】
もう一つの公知の補綴方法は、ヘルニア穴のどちらか一方で弱っていない筋肉に縫合する補綴シートの一端で終端する円筒形の栓塞子を用いる。この栓塞子を用いれば、栓塞は完遂される。この点については、例えば米国特許第５，２１９，０７７号ならびに同第５，２４９，６８２号が参考になる。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、構造と操作が簡単で、かつ非常に効率的な補綴栓塞具を提供することである。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ヘルニア管栓塞用の補綴栓塞具であって、ヘルニア管を通って延びる、シート材から形成される第１の部分であって、ヘルニア空隙（腹腔）に隣接する端部において、ヘルニア空隙の内部に入り込む第１の部分と、同じくシート材から形成され、ヘルニア管の穴を覆う第２の部分を備える補綴栓塞具を提供する。
【００１０】
この構成により、第１の部分は、ヘルニア管を栓塞するためにこれに挿入され、障壁となる第２の部分によって補強される。そして、第１の部分は、ヘルニア空隙の外部ではなく、内部に位置するため、ヘルニア空隙内において腹圧に対して良好な抵抗力を示す。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、添付の図面を参照した以下の説明から明らかになるであろう。この説明は、例示のためであって、本発明をこれに限定する意味ではない。
【００１２】
図１および図２に示した栓塞具は、二つの主要部分を含む。一つは、栓塞子１であり、もう一つは、ヘルニア管内側の穴で障壁となるよう、ヘルニアの空隙３（図２参照）内に配置される補綴シート（障壁部）２である。栓塞子１の一般的な形は、図示のような円錐形乃至円筒形である。より正確にいうと、栓塞子１は好ましくは中空で、例えば補綴シートを自身の周りに約３６０度巻き、隣り合う縁を繋げてつくられる。
【００１３】
障壁部２は円形である。この障壁部２は、その中心で接着材またはヒートシール４によって、栓塞子１の先端に取り付けられる。この接着材またはヒートシール４による取り付けは、障壁部２がわずかに円錐形となり、かつ栓塞子１と同軸的で、栓塞子１と同じ向きに漏斗形となるように行われる。
【００１４】
例えば、栓塞子１および障壁部２は、同じかまたは異なる合成乃至天然の材料から形成される。これらの材料は、不活性で耐感染性があり、かつ組織と生体適合性があるものから選択される。
【００１５】
したがって、栓塞子１および障壁部２には、数多くの、生体適合性、生体吸収性または生体非吸収性の材料が用いられる。適当な生体非吸収性材料としては、以下のものに限定するものではないが、綿、亜麻、絹、ポリアミド（ポリヘキサメチレンアジパミド（ナイロン６６）、ポリヘキサメチレンセバカミド（ナイロン６１０）、ポリカプラミド（ナイロン６）、ポリドデカンアミド（ナイロン１２）とポリヘキサメチレンイソフタルアミド（ナイロン６１）のコポリマーおよびこれらのブレンド）、ポリエステル（例えばポリエチレンテレフタラート、ポリブチルテルフタラートのコポリマーおよびこれらのブレンド）、フルオロポリマー（例えば発泡させたもしくは発泡させないポリテトラフルオロエチレン）およびポリオレフィン（例えばアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレンおよびこれらのブレンドを含むポリプロピレン、ならびに主にヘテロタクチックポリプロピレンおよびポリエチレンとブレンドされたアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレンからなるブレンド）がある。
【００１６】
栓塞子１および障壁部２の適当な生体吸収性材料としては、以下のものに限定するものではないが、グリコリド、ラクチド（ＬおよびＤ形ならびにメソ、さらにはこれらの混合物を含む）、ε−カプララクトン、ｐ−ジオキサノン、トリメチレンカーボナート、１，４−ジオキセパン−２−オンおよびポリ（アルキレンオキサラート）のホモポリマーとコポリマー、ならびにこれらポリマーの混合物（ポリマー同士の混合物、あるいは例えば米国特許第２，６３６，９５２号および同第２，６８３，１３６号に記載されているような他の生体適合性・生体吸収性組成物との混合物）がある。
【００１７】
栓塞子１および障壁部２の材料となるシートは、種々の方法で製造することができ、また、フィルム、フェルト、ニット、織布、かぎ針編み物、編織物あるいはこれらの混合物の形とされる。手術用のものとしては、多数のメッシュ、ネットあるいはフィルム形状のものが、米国特許第２，７６１，４４４号、同第３，０５４，４０６号、同第３，１２４，１３６号、同第４，３４７，８４７号、同第４，６３３，８７３号、同第４，７６９，０３８号、同第５，０９２，８８４号、同第５，２９２，３２８号、同第５，５６９，２７３号、国際特許出願第ＧＢ９５／０１７８６号、および欧州特許出願公開第０，６９８，３９５，Ａ１号の文献に紹介されている。
【００１８】
障壁部２の円錐形は、栓塞子１の円錐形よりも拡がり方が大きい。これは、障壁部２が栓塞子１よりより開き角が大きく、また半径も大きいことを意味する。
【００１９】
一例として、栓塞子１は、底部における直径を３ｃｍ、高さを２．５ｃｍとし、他方障壁部２は、外部からの応力がない場合に、底部における直径を８ｃｍ、高さを１ｃｍとすることができる。
【００２０】
このような補綴栓塞具は、開放手術時に挿入される。腹膜嚢を切開して、これを（腹部）ヘルニア空隙に押し戻した後、外科医は、栓塞具をヘルニア管３の正面にもっていき、栓塞子１の先端をヘルニア管３に直接向かう合う位置（すなわち空隙に向いた外側）に置く。次いで、障壁部２がヘルニア管３が形成されている壁の内側に貫通するよう栓塞具をヘルニア管３に導く。そして弾性を利用して展開し、ヘルニア管の内側の穴を覆う。一方、栓塞子１はヘルニア管３を栓塞し、栓塞子の縫合箇所をいくつか使い、その底部近傍における周辺部分のヘルニア管３の穴の周縁に対する摩擦力によって、ヘルニア管３の定位置に保持される。
【００２１】
必要ならば、外科医は栓塞子１を縫合し、ヘルニア管３の表面にある穴にこれを保持する。したがって、上述の構造ならば、定位置に置くことは非常に容易である。特にこの例においては、障壁となる障壁部２は、ヘルニアの空隙に導入されるや否や、自身の弾性の下で自らを適切な位置に位置づけることが観察される。
【００２２】
この構造は他の点でも非常に有効である。特に、障壁部２のわずかに弾性をもつ形状は、栓塞子１をヘルニア管に保持するのに役立つ。なぜならば、この構造がヘルニア管壁の内側で支え、栓塞子１が外側に逃げようとする自然の動きを抑えるからである。さらに、障壁部２はヘルニア管の外側ではなく内側に配置されるため、ヘルニア空隙内の腹圧に対する抵抗力が強い。
【００２３】
もう一つの態様を図３に示す。図３の態様においては、栓塞子１は底辺部６から少なくとも一部が、栓塞子１の軸方向とはほぼ垂直な平面内において外側に延び出す。この底辺６はヘルニア管壁の外側のへりを圧迫する。したがって外科医にとっては栓塞具を縫合するのが容易になる。
【００２４】
図３の態様においては、底辺部６は栓塞子１から延び出す環となっている。他の態様においては、図４に示すように、障壁部２から離れて栓塞子１の端部に丁度合うディスク状のシートにすることもできる。さらに円形以外の形状でもよい。特に、底辺部６はこの部分における縫合を容易にするため、一個またはそれ以上の端片が一またはそれ以上の好ましい方向に延び出るようにすることもできる。
【００２５】
本発明の具体的な実施態様は、以下の通りである。
（Ａ）ヘルニア管栓塞用の補綴栓塞具であって、ヘルニア管を通って延びる、シート材から形成される第１の部分であって、ヘルニア空隙に隣接する端部において、ヘルニア空隙の内部に入り込む第１の部分と、同じくシート材から形成され、ヘルニア管の穴を覆う第２の部分を備える補綴栓塞具。
（１）前記第１の部分は中空である実施態様（Ａ）記載の補綴栓塞具。
（２）前記第１の部分は円形乃至円錐形である実施態様（Ａ）または実施態様（１）記載の補綴栓塞具。
（３）前記第１の部分は補綴シートを自身の周りに約３６０度巻き、シートの二つの隣り合う縁部を接続させて形成される実施態様（Ａ）または実施態様（１）または実施態様（２）のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
（４）前記第２の部分は、ほぼ円錐形の弾性のある形状をしている実施態様（Ａ）または実施態様（１）乃至実施態様（３）のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
（５）前記第１の部分と第２の部分は、同じ方向を向いた空隙部を有する同軸的な円錐形状に形成される実施態様（Ａ）または実施態様（１）乃至実施態様（４）のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
【００２６】
（６）前記第１の部分と第２の部分を形づくる円錐形状はその先端において互いに接続される実施態様（５）記載の補綴栓塞具。
（７）前記第２の部分を形づくる円錐形状は、第１の部分を形づくる円錐形状より拡がり方が大きい実施態様（５）または実施態様（６）記載の補綴栓塞具。
（８）前記第１の部分は、その端部において、この第１の部分の延びる方向とはほぼ直角に第１の部分から外側に突出する底辺部６の分だけ、ヘルニア空隙の外側に延び出す実施態様（Ａ）または実施態様（１）乃至実施態様（７）のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
（９）前記底辺部６は前記第１の部分から延びる環状である実施態様（８）記載の補綴栓塞具。
（１０）前記底辺部６は前記第１の部分上に位置する少なくとも一枚のシートから構成される実施態様（８）記載の補綴栓塞具。
【００２７】
（１１）前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、生体非吸収性材料から形成される実施態様（Ａ）または実施態様（１）乃至実施態様（１０）のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
（１２）前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、綿、亜麻、絹、ポリアミド、ポリエステル、フルオロポリマーおよびポリオレフィンからなる群より選択される材料から形成される実施態様（１１）記載の補綴栓塞具。
（１３）前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリカプラミド、ポリドデカンアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチルテルフタラート、ポリテトラフルオロエチレン、アイソタクチックおよびシンジオタクチックポリプロピレン、ならびに主にヘテロタクチックポリプロピレンおよびポリエチレンとブレンドされたアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレンを主成分とするブレンド、ならびにこれらのブレンドからなる群より選択される材料から形成される実施態様（１２）記載の補綴栓塞具。
（１４）前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、生体吸収性材料から形成される実施態様（Ａ）または実施態様（１）乃至実施態様（１３）のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
（１５）前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、グリコリド、ラクチド（ＬおよびＤ形ならびにメソ、さらにはこれらの混合物を含む）、ε−カプララクトン、ｐ−ジオキサノン、トリメチレンカーボナート、１，４−ジオキセパン−２−オンおよびポリ（アルキレンオキサラート）のホモポリマーとコポリマー、ならびにこれらポリマー同士の混合物、ならびにこれらポリマーと他の生体適合性・生体吸収性組成物との混合物からなる群より選択される材料から形成される実施態様（１４）記載の補綴栓塞具。
【００２８】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、引張り力を伴わないヘルニア修復ができ、構造および操作が簡単で、かつ非常に効率的な補綴栓塞具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一態様に係る補綴栓塞具の斜視図である。
【図２】図１の栓塞具のヘルニア管における位置を示す断面図である。
【図３】本発明のもう一つの態様に係る補綴栓塞具の斜視図である。
【図４】図２の栓塞具のヘルニア管における位置を示す断面図である。

Claims (13)

1. ヘルニア管栓塞用の補綴栓塞具であって、
   ヘルニア管を通って延びる、シート材から形成される第１の部分であって、ヘルニア空隙に隣接する端部において、ヘルニア空隙の内部に入り込む第１の部分と、
   同じくシート材から形成され、ヘルニア管の内側に配置されて、前記ヘルニア管の穴を覆う第２の部分を備える補綴栓塞具であって、
   前記第２の部分は、円錐形の弾性のある形状であり、
   前記第１の部分と第２の部分は、同じ方向を向いた空隙部を有する同軸的な円錐形状に形成され、
   前記第１の部分と第２の部分を形づくる円錐形状はその先端において互いに接続される、補綴栓塞具。
2. 前記第１の部分は中空である請求項１記載の補綴栓塞具。
3. 前記第１の部分は円形乃至円錐形である請求項１または請求項２記載の補綴栓塞具。
4. 前記第１の部分は補綴シートを自身の周りに約３６０度巻き、シートの二つの隣り合う縁部を接続させて形成される請求項１から請求項３のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
5. 前記第２の部分を形づくる円錐形状は、第１の部分を形づくる円錐形状より拡がり方が大きい請求項１から請求項４記載の補綴栓塞具。
6. 前記第１の部分は、その端部において、この第１の部分の延びる方向とはほぼ直角に第１の部分から外側に突出する底辺部６の分だけ、ヘルニア空隙の外側に延び出す請求項１から請求項５のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
7. 前記底辺部は前記第１の部分から延びる環状である請求項６記載の補綴栓塞具。
8. 前記底辺部は前記第１の部分上に位置する少なくとも一枚のシートから構成される請求項６記載の補綴栓塞具。
9. 前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、生体非吸収性材料から形成される請求項１から請求項８のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
10. 前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、綿、亜麻、絹、ポリアミド、ポリエステル、フルオロポリマーおよびポリオレフィンからなる群より選択される材料から形成される請求項９記載の補綴栓塞具。
11. 前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリカプラミド、ポリドデカンアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチルテルフタラート、ポリテトラフルオロエチレン、アイソタクチックおよびシンジオタクチックポリプロピレン、ならびに主にヘテロタクチックポリプロピレンおよびポリエチレンとブレンドされたアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレンを主成分とするブレンド、ならびにこれらのブレンドからなる群より選択される材料から形成される請求項１０記載の補綴栓塞具。
12. 前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、生体吸収性材料から形成される請求項１から請求項１１のいずれか１項記載の補綴栓塞具。
13. 前記第１の部分と第２の部分の少なくとも一部は、グリコリド、ラクチド（ＬおよびＤ形ならびにメソ、さらにはこれらの混合物を含む）、ε−カプララクトン、ｐ−ジオキサノン、トリメチレンカーボナート、１，４−ジオキセパン−２−オンおよびポリ（アルキレンオキサラート）のホモポリマーとコポリマー、ならびにこれらポリマー同士の混合物、ならびにこれらポリマーと他の生体適合性・生体吸収性組成物との混合物からなる群より選択される材料から形成される請求項１２記載の補綴栓塞具。

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