JP4282086B2 - 乳癌に対するマーカーとしてのタンパク質細胞性レチノイン酸結合タンパク質ii(crabpii)の使用 - Google Patents

乳癌に対するマーカーとしてのタンパク質細胞性レチノイン酸結合タンパク質ii(crabpii)の使用 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、乳癌の診断に関する。本発明は、乳癌の診断における細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの使用を開示する。さらに、本発明は特に個体由来の液体試料からの、該試料における細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの測定による乳癌の診断方法に関する。細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの測定は、例えば乳癌の早期の検出または診断において使用され得る。
癌は、検出および治療の発達にも関わらず、主要な公衆の健康課題のままである。様々な型の癌の中で、乳癌(=BC)は、西洋において女性の間で最も頻度の高い癌の一つである。
癌が早期に検出/診断され得るほど、総合的な生存率はより良くなる。これは BCに対して特に当てはまる。進行した段階の腫瘍における予後は不良である。3分の1より多くの患者は診断後5年以内に進行性の疾患で死亡し、これは5年間で約40%の生存率に相当する。現在の治療は、ごく一部の患者を治療するのみで、疾患の早期で診断された患者について明らかに最大の効果がある。
公衆の健康問題としてのBCに関して、乳癌に対するより効果的なスクリーニングおよび予防的な手段が開発されることが必須である。
現在、乳癌に対して有用で最も早期な検出手順は、臨床的な乳房の検査および乳房撮影を使用することを含む。しかし、腫瘍が触診できるかまたは乳房撮影で検出し得る前に、重大な腫瘍のサイズが典型的に存在することが必要である。乳房組織の密度および年齢は、乳房撮影のスクリーニングの正確度の重要な予測材料である。感度は、極端な密度の乳房を有する女性における63%からほとんど全体的に脂肪の乳房を有する女性における87%まで変化する。感度は、約40歳の女性における69%から80歳以上の女性における83%までの、年齢とともに高くなっている(Carney, P.A.ら, Ann. Intern. Med. 138 (3) (2003) 168-175)。生検された、乳房撮影で検出した異常の20〜25%のみが、悪性であると判明した。前癌および癌病変の視覚化は、早期の検出に最も良いアプローチであるが、乳房撮影は費用のかかる検査であり、それは実行するためにおよび結果の解釈において、大変な注意および専門技術を必要とする(WHO, Screening for Breast Cancer, 2002年5月10日; Esserman, L.ら,J. Natl. Cancer Inst. 94 (2002) 369-375)。
近年、多大な量のいわゆる乳房特異的なまたはいわゆる乳癌に特異的な遺伝子が報告されている。相当する研究論文または特許出願の大部分は、乳房(癌)組織対異なる組織または近接した正常組織のそれぞれにおけるRNAの発現パターンの解析で得たデータを基にしている。かかるアプローチはディファレンシャルmRNAディスプレイ技術として要約され得る。
mRNAディスプレイ技術から得られるデータの例として、WO 00/60076が言及され、議論されるはずである。この出願は、200より多くの単離したポリヌクレオチドおよび相当するポリペプチドそのもの、およびBCの検出におけるそれらの使用を記載し、特許請求している。しかし、mRNAのレベルでの差が、相当するタンパク質のレベルに反映されないことが一般的な知識である。希少なmRNAでコードされたタンパク質が非常に多くの量で見出され得、豊富なmRNAでコードされたタンパク質が検出され、発見されるのがそれでもなお困難であり得る(Chen, G.ら, Molecular and Cellular Proteomics, 1.4 (2002) 304-313)。mRNAのレベルとタンパク質のレベルの間でのかかる相関性の欠如は、mRNAの安定性、翻訳の効率性、タンパク質の安定性等のような理由による。
BCの診断に使用され得る候補マーカー分子を同定するために、異なる組織間であるいは健常組織と病理組織との間でのタンパク質のパターンにおける差を調査する近年のアプローチもある。WulfkuhleらCancer Research 62 (2002) 6740-6749は、57個のタンパク質を同定し、それらは、BCの組織と近接した正常組織の間で異なって発現していた。個体から得た液体試料からのデータは報告されていない。
WO 02/23200は表面増強レーザーの脱離またはイオン化(SELDI)で見出された12個の乳癌関連スポットについて報告している。これらのスポットは健常な対照から得た血清と比較して、BCを有する患者から得た血清においてより頻度高く見られる。しかし、係るスポットにおける分子(ら)の同定、例えばその配列、は知られていない。
乳頭吸引液(NAF)は、乳癌特異的なマーカーを同定する潜在的な非侵襲性の方法として何年もの間使用されてきた。Kuererらは、片側の浸潤性の乳癌を有する女性からの両側の組み合わせた対の乳頭吸引液を2次元電気泳動によって比較した(Kuerer, H.M.ら, Cancer 95 (2002) 2276-2282)。30から202の異なるタンパク質のスポットを、乳癌を患っている乳房のNAFにおいて検出したが、健常な乳房の組み合わせたNAFにおいては検出されなかった。これらのスポットをゲル画像解析で検出した。しかし、タンパク質のスポットの同定は知られていない。
BCの分野で、候補タンパク質マーカーのリストが多く、また増加する傾向にあるにも拘らず、現在までこれらの分子の臨床/診断的な有用性は知られていない。臨床上有用であるには、単一のマーカーとしての新しい診断マーカーは少なくとも当該分野で公知の一番良い単一のマーカーと同程度に優れているべきである。または、新しいマーカーは、単独で使用するかまたは1つ以上の他のマーカーと組み合わせて使用するかのいずれかの場合で、診断的な感度および/または特異性において進歩をもたらすべきである。検査の診断的な感度および/または特異性は、以下で詳細に記載するその受信者動作特性で最も評価される。
現在、癌抗原15-3(CA 15-3)、腫瘍関連ムチン、および癌胎児抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質の検出に基づく診断性の血液検査だけがBCの分野で診断を補助するのに有用である。CA 15-3は、進行した乳癌を有する患者で通常増加している。CA 15-3のレベルは早期乳癌を有する女性ではめったに上昇していない(Duffy, M.J., Critical Reviews in Clinical Laboratory Sciences 38 (2001) 225-262)。卵巣、肺および前立腺の癌もまた、CA 15-3のレベルを上昇させ得る。上昇したCA 15-3のレベルは、良性の乳房または卵巣の疾患、子宮内膜症、骨盤腹膜炎、および肝炎等の非癌性の状態と関連し得る。妊娠および乳汁分泌もまた、CA 15-3のレベルを上昇させ得る(National Cancer Institute, Cancer Facts, Fact Sheet 5.18 (1998)1-5)。CEAの主たる使用は、特に疾患が転移する場合、結腸癌のモニタリングにおいてである。しかし、乳癌を含む、様々な癌が、上昇したCEAのレベルをもたらし得る。
器官または腫瘍の特異性の欠如により、CA 15-3の測定もCEAの測定もBCのスクリーニングには推奨しない。これらの腫瘍マーカーはBC患者の追跡ケアでの有用な診断ツールとなる(Untch, M.ら, J. Lab. Med. 25 (2001) 343-352)。
全血、血清、血漿または乳房吸引液が臨床慣例において最も広く使用される試料の供給源である。信頼できる癌の検出を可能にするか、または早期の予後の情報を提供する早期BCの腫瘍マーカーの同定が、この疾患の診断および管理において大変手助けとなる診断アッセイをもたらし得る。それゆえに、緊急な臨床上の必要性があり、血液からのBCの診断が改良されている。疾患の進行した段階で診断される患者と比べて、早期に診断される患者にとって生存の機会は遥かに高くなるので、BCの早期診断を改良することが特に重要である。
BCの診断で役立ち得る新しいマーカーを同定し得るか調査することが、本発明の課題であった。
驚くべきことに、マーカー細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの使用は、当該分野の状態から公知の問題を少なくとも部分的に克服し得るということが見出されている。
本発明はそれゆえに、a)個体から得た液体試料を提供すること、b)該試料と、細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIに特異的な結合試薬とを、該結合試薬と細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIとの間での複合体の形成に適切な条件下で、接触させること、およびc)(b)で形成した複合体の量を乳癌の診断に相関させることを含む、乳癌の診断方法に関する。
本発明の別の好ましい態様は、a)個体から得た液体試料と、細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIに特異的な結合試薬とを、該結合試薬と細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの間での複合体の形成に適切な条件下で接触させること、およびb)(a)で形成した複合体の量を乳癌の診断に相関させることを含む、乳癌の診断方法である。
当業者が認めるように、任意のかかる診断はインビトロで行なう。患者試料は以後、廃棄する。患者試料は本発明のインビトロの診断方法に対して使用されるだけであり、患者試料の物質は患者の体内に戻されない。典型的には、試料は液体試料である。
細胞性レチノイン酸結合タンパク質II(CRABP-II)(Swiss-PROT: P29373)は、配列番号:1に示す配列で特徴づけられる。この配列は、15,562 Daの分子量およびpH5.43での等電点となる。
細胞性レチノイン酸結合タンパク質の2つの異性体(CRABP-Iおよび-II)は、最初Siegenthalerら1992によって特徴づけられた。CRABP-IIは繊維芽細胞およびケラチノサイトによってヒトの上皮で高く発現する、主な異性体であると示された(Siegenthaler, G., Biochemical Journal 287 (1992) 383-389)。
増加したCRABP-IIの濃度は、Andersら(Anders, V.ら, Journal of Investigative Dermatology 106 (1996) 1070-1074)によって、皮膚の基底細胞の癌腫ではなく、角化棘細胞腫および扁平上皮癌で見出された。
細胞質において、CRABP-IIは、細胞内のレチノイン酸(RA)の濃度、輸送、および代謝を制御する。RAは転写のアップレギュレーションによって扁平上皮癌において2倍のCRABP-II mRNAレベルを誘導するということが示された(Vo, H.P., Crowe, D.L., Anticancer Research 18 (1998) 217-224)。
ヒトの乳癌細胞におけるCRABP-IIの存在は、最初Wangら1998によって記載された。彼らは、免疫組織化学によってヒトの乳癌細胞におけるCRABP-IIの局在を決定した(Wang, Y.ら,Laboratory Investigation 78 (1998) 30 A)。
哺乳類の癌腫細胞におけるCRABP-IIの機能は、最初BudhuおよびNoy 2002によって記載された(Molecular and Cellular Biology 22 (2002) 2632-2641)。細胞質のCRABP-IIはRAと結合すると核局在化を受け、一時的な
CRABP-II-RAR-複合体を構築することでレチノイン酸レセプター(RAR)と相互作用する。MCF7の哺乳類細胞株におけるCRABP-IIの過剰発現は、レチノイン酸誘導性成長阻害に対するそれらの感受性を増強する(Budhu, A.S., Noy, N.,前掲)。
ヒト乳房の組み合わせた正常な腺管/小葉ユニットおよび上皮内腺管癌(DCIS)の、最初のプロテオミクス解析において、Wulfkuhle ら(Cancer Research 62 (2002) 6740-6749)は正常細胞および前癌細胞において異なる発現をした57個のタンパク質を同定した。CRABP-IIのレベルは正常な細胞におけるよりもDCISにおいて5倍高いと報告された。匹敵する増加が23個ものタンパク質に対して報告されている。しかし、さらなる調査、例えばCRABP-IIは液体試料中で検出され得るか、は実行されていない (Wulfkuhle、J.D.ら,前掲)。
CRABP-IIは、乳癌の発達または進行を診断しあるいは予後判断するための多数の遺伝子またはそれらのタンパク質のほかに、種々の特許出願で言及されている(WO 02/77176, WO 02/101075, WO 02/59377)。しかし、診断的な応用は記載されていない。

当業者に明らかなように、本発明は、配列番号:1の全長タンパク質CRABP-IIに限定されると解釈すべきではない。CRABP-IIの生理的または人工的な断片、CRABP-IIの二次修飾,およびCRABP-IIの対立形質変異体もまた、本発明によって包括される。人工断片は、好ましくは合成によってまたは組み替え技術によって産生したペプチドを包括し、配列番号:1に開示した配列由来の少なくとも6つの連続したアミノ酸からなる診断上意義のある1つのエピトープを少なくとも含む。かかる断片は抗体の産生に対してまたはイムノアッセイにおける基準として有利に使用され得る。更に好ましくは、人工断片はサンドイッチアッセイをセットアップするのに適切な、少なくとも2つの目的のエピトープを含む。
好ましい態様において、新規のマーカーCRABP-IIはモニタリングのためおよびスクリーニングの目的に使用され得る。
患者のモニタリングに使用した場合、本発明の診断方法は、患者の追跡管理における腫瘍負荷、治療の効能および腫瘍の再発を評価するのに役立ち得る。上昇したCRABP-IIのレベルは腫瘍負荷と直接的に相関する。化学療法の後、CRABP-IIにおける短期間(数時間〜14日)の増加は、腫瘍細胞の死の指標として役立ち得る。患者の追跡管理(3ヶ月〜10年)において、CRABP-IIの増加は、腫瘍の再発に対する指標として使用され得る。
好ましい態様において、本発明の診断方法は、スクリーニング目的に使用される。つまり、CRABP-IIのレベルを測定することでおよび測定したレベルをBCの有無と相関させることでBCの事前の診断なしに被検体を評価することに使用される。
癌の病期分類は、程度、進行、および重篤度に関する疾患の分類である。これは一般化が予後および治療の選択について行われ得るように、癌患者を分類する。
今日では、TNM系が癌の解剖学的な程度の、最も広く使用されている分類である。これは国際的に承認され、統一された病期分類の系である。3つの基本的な変数がある:T(原発腫瘍の程度)、N(局所的なリンパ節の状態)およびM(遠隔転移の有無)。TNMの基準はUICC(International Union Against Cancer)(Sobin, L.H., Wittekind, Ch.(編):TNM Classification of Malignant Tumours,第5版,1997)によって公表されている。乳癌に対する病期分類の系は最近改定されている(Singletary, S.E.ら,Journal of Clinical Oncology 20 (2002) 3628-3636)。
特に重要なことは、BCの早期の診断は遥かにより良い予後をうみ出すことである。それゆえに、一番の予後はステージTis、N0、M0またはT1〜3; N0; M0ほど早期の患者にあり、遠隔の転移が既に存在する時に診断された患者に対してわずか18%の5年生存率と比較して、適切に処置された患者は診断後5年の生存の機会が90%より高い。
本発明の意味において、BCの早期診断は前癌状態(DCIS)または転移の全くない、つまりTis、N0、M0またはT1〜4; N0; M0(Tis〜3; N0; M0)が存在する腫瘍段階(近位でも遠位でもない)での診断を指す。Tisはインシチュの癌腫を示す。
好ましい態様において、CRABP-IIは非転移性の段階においてBCの診断に使用される。つまり、診断は、Tis,N0, M0またはT1〜3; N0; M0(=Tis〜3; N0; M0)の時期に行われる。
本発明の診断方法は、個体由来である液体試料を基にする。当該分野から公知の方法とは異なり、CRABP-IIは特異的な結合試薬の使用によってこの液体試料から特異的に測定される。
特異的な結合試薬は、例えばCRABP-IIに対するレセプター、CRABP-IIに結合するレクチンまたはCRABP-IIに対する抗体である。特異的な結合試薬はその対応する標的分子に対して少なくとも107l/molの親和性を有する。特異的な結合試薬は好ましくは、その標的分子に対して108 l/molの親和性またはさらにより好ましくは109l/molの親和性を有する。当業者が認めるように、用語「特異的」は、試料中にある他の生体分子がCRABP-IIに特異的な結合試薬と実質的に結合しないことを指すのに使用する。好ましくは、標的分子以外の生体分子に結合するレベルは、標的分子の親和性のわずか10%、より好ましくはわずか5%またはそれより低い結合親和性となる。最も好ましい特異的な結合試薬は、親和性および特異性に対する上記の最小な基準の両方を満たす。
特異的な結合試薬は好ましくは、CRABP-IIと反応する抗体である。用語「抗体」とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、かかる抗体の断片、および抗体の結合領域を含む遺伝子構築物を指す。特異的な結合試薬の上記の基準を保持する任意の抗体断片もまた使用され得る。
例えば、Tijssen(Tijssen, P., Practice and theory of enzyme immunoassays 11 (1990)本全体、特に43〜78ページ;Elsevier, Amsterdam)に記載されるように、抗体は最先端技術の手順で産生される。加えて、当業者は、抗体の特異的な単離に使用され得る抗体吸着剤を基にした方法を充分承知している。これらの手段によって、ポリクローナル抗体の質および、そのためイムノアッセイにおけるそれらの性能が、増強され得る(Tijssen, P.,前掲 108-115頁)。
本発明で開示した達成のために、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が使用されている。ポリクローナル抗体はウサギで惹起されている。しかし、異なる種、例えばラットまたはモルモットからのポリクローナル抗体はまた明らかに使用され得る。モノクローナル抗体は免疫したマウスからの脾臓細胞を用いて産生されている。モノクローナル抗体は一定の特性を有し、必要な任意の量で産生され得るので、それらは臨床慣例のためのアッセイの開発における理想的なツールとなる。本発明の方法におけるCRABP-IIに対するモノクローナル抗体の産生および使用は、さらに別の好ましい態様である。
当業者が認めるように、今やCRABP-IIがBCの診断に有用なマーカーとして同定されているので、本発明の達成に匹敵する結果に到達するように代替方法が使用され得る。例えば、抗体を産生する代替戦略が使用され得る。かかる戦略は、中でも合成ぺプチドの使用を含み、これは免疫化のためのCRABP-IIのエピトープとなる。好ましくは、合成ペプチドはCRABP-IIに特異的である、すなわち他の/関連するポリペプチドに対して比較的低いホモロジーを有する配列番号:1の部分配列を含む。合成ぺプチドは配列番号:1の5〜25のアミノ酸残基からなる連続した部分配列を含むことが好ましい。更に好ましくは、ペプチドは配列番号:1の10〜15のアミノ酸残基からなる連続した部分配列を含む。
CRAP-IIの非常に好ましい部分配列は、配列番号:1のアミノ酸残基85〜96からなる。さらに好ましい部分配列は、配列番号:1のアミノ酸残基106〜120およびSH化学を介したカップリングを容易にするためにそのC末端に付加したシステイン残基からなる。
あるいは、DNAワクチンとしても知られるDNA免疫が使用され得る。
測定のために、個体から得た液体試料をCRABP-IIに特異的な結合試薬と、結合試薬CRABP-II複合体の形成に適切な条件下でインキュベートする。かかる条件は特定される必要はない、というのも当業者は発明の努力なしにかかる適切なインキュベーション条件を容易に同定し得るからである。
本発明に開示した方法の最終工程として、複合体の量を測定し、BCの診断に相関させる。当業者が認めるように、特異的な結合試薬CRABP-II複合体の量を測定する多数の方法があり、全ては関連する教科書で詳細に記載されている(例えば、Tijssen P.,前掲またはDiamandis ら,編(1996) Immunoassay, Academic Press, Bostonを参照)。
好ましくは、CRABP-IIはサンドイッチ型のアッセイ形式で検出する。かかるアッセイにおいて、第一の特異的な結合試薬は一方でCRABP-IIを補足するのに使用され、かつ第二の特異的な結合試薬は、それは直接的にまたは間接的に検出できるように標識されて、他方で使用される。
上記のように、CRABP-IIは個体試料から得た液体試料から測定され得るということが驚くべきことに見出された。組織および生検試料はBCの診断においてマーカーCRABP-IIを適用する必要はない。
好ましい態様において、本発明の方法は、液体試料物質としての血清を用いて実施される。
さらに好ましい態様において、本発明の方法は、液体試料物質としての血漿を用いて実施される。
さらに好ましい態様において、本発明の方法は、液体試料物質としての全血を用いて実施される。
さらに好ましい態様において、本発明の方法は、液体試料物質としての乳頭吸引液を用いて実施される。
組織試料に対する慣例的なプロテオミクス法の適用は、選択した組織に対する多くの潜在的なマーカー候補の同定をもたらす一方で、本発明の発明者らは個体の体液試料においてCRABP-IIを驚くべきことに検出し得た。更に驚くべきことに、本発明者らは、個体から得たかかる液体試料におけるCRABP-IIの存在を乳癌の診断に相関させ得るということを示すことができた。
大変有利なCRABP-IIに対する抗体は、確立した手順、例えばインシチュ、生体組織検査、または免疫組織学的手順において乳癌細胞を検出する手順で使用され得る。
好ましくは、CRABP-IIに対する抗体は定性的(CRABP-IIの有無)または定量的(CRABP-IIの量を決定する)イムノアッセイで使用され得る。
タンパク質CRABP-IIのレベルを測定することは、BCの分野で非常に有利であると判明した。それゆえに、更に好ましい態様において、本発明は個体から得た液体試料からの、乳癌の診断におけるマーカー分子としてのタンパク質CRABP-IIの使用に関する。
用語マーカー分子は、個体の体液から測定した、被検体の上昇したCRABP-IIのレベルがBCの存在の兆候であるということを示すのに使用する。
乳癌の早期診断において新規のマーカーのCRABP-IIを使用することが特に好ましい。
タンパク質CRABP-IIそれ自体の使用は、BC診断の難しい分野への重大な進歩を意味する。CRABP-IIの測定と他の公知のマーカー、例えばCA 15-3およびCEA、または現在知られているか、もしくは未だ発見されていないBCの他のマーカーとの組み合わせは、更なる改良をもたらす。それゆえに、さらに好ましい態様において、本発明は、個体から得た液体試料からの乳癌の診断における、乳癌に対する一つ以上のマーカー分子と組み合わせた、乳癌に対する分子マーカーとしてのCRABP-IIの使用に関する。これに関して、語句「一つ以上」は、1〜10、好ましくは1〜5、更に好ましくは3を表す。好ましく選択される、CRABP-IIの測定と組み合わせ得る他のBCのマーカーは、CEAおよびCA 15-3である。最も好ましくは、CRABP-IIは少なくともCRABP-IIおよびCA 15-3を含むマーカーの枠の一部として使用される。このように、本発明の更に好ましい態様は、個体から得た液体試料からの乳癌の診断における、乳癌に対する一つ以上のマーカー分子と組み合わせた乳癌のマーカー分子としてのタンパク質CRABP-IIの使用であり、ここで少なくとも一つの他のマーカー分子はCA 15-3である。
好ましくは、本発明の方法は、乳癌を患っている疑いのある患者の試料を用いて使用される。乳癌を患っている疑いのある個体は他の型の癌を除外した個体である。他の癌としては結腸、肺、胃、卵巣、および前立腺の癌が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の好ましい態様はそれゆえに、a)乳癌を患っている疑いのある個体から得た液体試料を提供すること、b)該試料と、細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIに特異的な結合試薬とを、該結合試薬と細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの間での複合体の形成に適切な条件下で接触させること、およびc)(b)で形成した複合体の量を乳癌の診断に相関させることを含む、乳癌の診断方法である。
イムノアッセイのような、特異的な結合アッセイの分野における診断試薬は、通常、キットの形態で最もよく提供され、これは特異的な結合試薬およびアッセイを行なうのに必要な補助試薬を含んでいる。本発明はまたそれゆえに、少なくとも一つのCRABP-IIに特異的な結合試薬およびCRABP-IIの測定のための補助試薬を含む免疫学的なキットに関する。
検査の正確度は、その受信者動作特性(ROC)によって最もよく記載される(特に、Zweig, M. H.およびCampbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577を参照)。ROCグラフは、観察したデータの全範囲にわたって連続的に変化する判定基準から生じる全ての感度/特異性対のプロットである。
検査室検査の臨床的な性能は、その診断の正確度、または被検体を臨床上関係するサブグループに正しく分類する能力に依存する。診断の正確度が、調査した被検体の二つの異なる状態を正しく区別する検査の能力を評価する。かかる状態は例えば、健常および疾患または良性疾患対悪性疾患である。
各場合において、ROCプロットは判定基準の全範囲に対する感度対1-特異性をプロットすることによって二つの分布間での重複を記述している。y軸に感度つまり真陽性分数[(真陽性検査結果の数)(真陽性の数+偽陰性検査結果の数)として定義する]がある。これはまた、疾患または状態の存在における確実性とも呼ばれている。これは罹患のサブグループからのみ計算される。x軸に偽陽性分数つまり1-特異性[(偽陽性結果の数)/(真陰性の数+偽陽性結果の数)として定義する]がある。これは特異性の指標であり、または非罹患のサブグループから完全に計算される。2つの異なるサブグループからの検査結果を用いて、真または偽陽性分数が完全に別々に計算されるので、ROCプロットは試料における疾患の有病率には依存しない。ROCプロット上の各点は特定の判定基準に相当する感度/-特異性対を表す。完全に区別された検査(二つの結果の分布に重複がない)は、左上角を通過するROCプロットを有し、ここでは真陽性分数は1.0、つまり100%(完全な感度)であり、かつ偽陽性分数は0(完全な特異性)である。区別されない検査(二つの集団に対する結果の同一の分布)に対する理論的なプロットは、左下角から右上角への45°の対角線である。ほとんどのプロットはこれら2つの端の間に入る(ROCプロットが45°の対角線の下に完全に入る場合、これは、「より大きい」から「より小さい」へと「確実性」の判定基準を逆転させることで容易に修正され、またはその逆も同じである。)。定性的には、プロットが左上角に近くなるほど、検査の総合的な正確度は高くなる。
検査室検査の診断上の正確度を定量化するためのある便利な目標は、一つの数字でその性能を表すことである。最も普遍的で世界的な測定はROCプロット下の面積である。慣例として、この面積は常に0.5以上(そうでない場合、そうするために決定規則を逆転し得る)である。値は、1.0(二つの群の検査値の完全な分離)と0.5(二つの群の検査値の間で明らかな分布差がない)の間で変化する。面積は、対角線に一番近い点または90%の特異性での感度等のプロットの特定の部分に依存するだけでなく、全プロットにも依存する。これは、ROCプロットが完全なもの(面積=1.0)にどれくらい近いかについての、定量的で記述的な表示である。
新規のマーカーCRABP-IIの臨床的な有用性は、受信者動作特性曲線解析(ROC; Zweig, M. H.およびCampbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577)を用いて、確立したマーカーCA 15-3との比較および組み合わせで評価される。この解析は、T1〜3; N0; M0における浸潤性の腺管癌または小葉癌、さらに進行した腫瘍、つまり、T4および/または様々な重篤度の転移(N+および/または M+)、髄様癌、乳頭状癌、粘液性癌腫および管状腺癌、非浸潤性腺管癌ならびに健常対照のそれぞれの患者からの各50の試料からなる明確な患者のコホートを基にしている。
確立したマーカーCA 15-3のみと比較して、CRABP-IIのみの測定に基づく診断方法は、曲線下の面積で示されるのと少なくとも同程度に優れている診断の正確度(感度/特異性プロファイル)を有することが見出された。
以下の実施例、参考文献、配列表及び図面は、本発明の理解を補助するために提供され、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示される。本発明の意図から逸脱すること無く、示した手順において変更がなされ得ることが理解されよう。

略語
ABTS 2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸(6)]二アンモニウム塩
BSA ウシ血清アルブミン
cDNA 相補DNA
CHAPS (3-[(3-コールアミドプロピル)-ジメチルアンモニオ]-1-プロパン-スルホン酸)
DMSO ジメチルスルホキシド
DTT ジチオスレイトール
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ELISA 酵素結合免疫吸着定量法
HRP ホースラディッシュペルオキシダーゼ
IAA ヨードアセタミド
IgG 免疫グロブリンG
IEF 等電点電気泳動法
IPG 固定化pH勾配
LDS ドデシル硫酸リチウム
MALDI-TOF マトリックス支援レーザ脱離イオン化-飛行時間型質量分析
MES メシチル、2,4,6-トリメチルフェニル
OD 光学密度
PAGE ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PI 等電点
RTS 迅速翻訳装置
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
UICC 国際対癌連合
実施例1
潜在的な乳癌マーカーとしての細胞性レチノイン酸結合タンパク質II(CRABP-II)の同定
組織の供給源
乳癌の潜在的な診断マーカーとして腫瘍特異的なタンパク質を同定するために、プロテオミクス方法を用いて2つの異なる種類の組織の分析を行なう。
乳癌を患う全部で14人の患者に由来する組織標本を分析する。各患者から、2つの異なる組織型を治療的切除から収集する:腫瘍組織(>80%腫瘍)(T)、および隣接する健康な組織(N)。後者の組織型は、対応する健康な対照試料として働く。組織を切除後すぐにスナップ凍結し、処理する前に−80℃で保存する。腫瘍を組織病理学的基準により診断する。
組織調製
0.8〜1.2gの凍結組織をモルタルに入れ、液体窒素で完全に凍結させる。組織をモルタル中で粉砕し、10倍容積(w/v)の溶解バッファー(40mM クエン酸Na、5mM MgCl2、1% Genapol X-080、0.02%アジドNa、Complete(登録商標)EDTAフリー [Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号 1 873 580])中に溶解させ、続いてWheaton(登録商標)グラスホモジナイザー(20×ルーズフィッティング、20×タイトフィッティング)でホモジナイズする。3 mlのホモジェネートを1時間、4500 xgでスクロース密度遠心分離(10〜60%スクロース)に供する。この遠心分離工程後、3つの画分を得る。グラジェントの上部画分は、可溶性タンパク質を含み、更なる解析に用いる。
CNBr活性化セファロース4Bへのモノクローナル抗体抗ヒトアルブミンの固定化
凍結乾燥したCNBr活性化セファロース4B(Amersham Biosciences, 17-0430-01)を製造業者の指示に従って再膨潤させ洗浄する。ヒトアルブミンに対する方向をもったモノクローナル抗体を、0.1 M NaHCO3, pH 8.3, 0.5 M NaCl, 10 mg/mlに溶解する。1 mlの抗体溶液を1 mlの再膨潤させたCNBr活性化セファロース4Bと混合する。反応時間は1時間である。製造業者の指示に従って、残存活性基のブロッキングとゲルの洗浄を行う。
血清アルブミンの除去
7 mlの抗アルブミンゲルをGenapol X-080を含まない溶解バッファーで平衡にする。スクロース密度遠心分離の上部画分の7 ml(上記、組織調製参照)をカラムにアプライし、Genapol X-080を含まない溶解バッファーで洗い流す。混合した溶出液を等電点電気泳動実験に用いる。
等電点電気泳動(IEF)およびSDS-PAGE
IEFのために、3 mlのHSAを除去した組織調製液を12 mlの試料バッファー(7M 尿素、2M チオ尿素、2% CHAPS、0.4% IPGバッファー pH4〜7、0.5% DTT)と混合し、1時間インキュベートする。試料をAmicon(登録商標)Ultra-15装置(Millipore GmbH, Schwalbach, Germany)で濃縮し、Bio-Rad(登録商標)タンパク質アッセイ(カタログ番号 500-0006; Bio-Rad Laboratories GmbH, Muenchen, Germany)を用いて供給業者のマニュアルの指示に従ってタンパク質濃度を測定する。1.5 mgのタンパク質試料に相当する容積に、最終体積350 μlまでバッファーを加える。この溶液を用いてIPG条片pH4〜7(Amersham Biosciences, Freiburg, Germany)を一晩再水和させる。以下の勾配プロトコルを用いてIEFを行なう:(1.)500Vまで1分;(2.)3500Vまで2時間;(3.)3500Vの一定で22時間、82 kVhを生じさせる。IEF後、条片を-80℃で保存するか、またはSDS-PAGEで直接使用する。
SDS-PAGEの前に、条片を平衡バッファー(6M 尿素、50 mM Tris/HCl、pH8.8、30% グリセロール、2%SDS)中でインキュベートし、還元のためにDTT(15分、+50 mg DTT/10 ml)、およびアルキル化のためにIAA(15分、+235 mg ヨードアセトアミド/10 ml)を加える。条片を12.5%ポリアクリルアミドゲル上に置き、1W/ゲルおよびその後17W/ゲルで1時間電気泳動に供する。続いて、ゲルを固定し(50%メタノール、10%酢酸塩)、NovexTMColloidal Blue Stainingキット(Invitrogen, Karlsruhe, Germany, カタログ番号 LC6025, 45-7101)で一晩染色する。
乳癌の潜在的なマーカーとしてのCRABP-IIの検出
各患者を、ProteomeWeaver(登録商標)ソフトウェア(Definiens AG, Germany, Muenchen)を用いてイメージ分析により別々に分析する。さらに、ゲルの全てのスポットを、ピッキングロボットにより切り出し、スポットに存在するタンパク質をMALDI-TOFマススペクトロメトリー(UltraflexTMTof/Tof, Bruker Daltonik GmbH, Bremen, Germany)により同定する。各患者について、腫瘍試料由来の4つのゲルを、隣接する組織由来の4つのゲルと比較し、特異に発現したタンパク質に対応する独自のスポットについて分析する。この手段により、タンパク質CRABP-IIは腫瘍組織中に特異的に発現するか、強く過剰発現するが、健康な対照組織中では検出されないことが見出される。それゆえ、多くのタンパク質の中でもとりわけ、乳癌の診断に使用するための候補マーカーとして適切である。
実施例2
乳癌マーカータンパク質CRABP-IIに対する抗体の産生
乳癌マーカータンパク質CRABP-IIに対するポリクローナル抗体を、免疫検出アッセイ、例えば、ウエスタンブロッティングおよびELISAによりCRABP-IIの血清および血漿および血液レベルの測定における抗体のさらなる使用のために産生する。
組換えタンパク質の発現および精製
CRABP-IIに対する抗体を産生するために、免疫原を得るためにタンパク質の組換え発現を行なう。発現は、RTS100発現系および大腸菌の組み合わせを適用して行なう。第一の工程において、DNA配列を分析し、高収率cDNAサイレント変異バリアントおよび個々のPCRプライマー配列の推奨を「ProteoExpert RTS E.coli HY」系を用いて得る。これは商業用のウェブベースサービスである(www.proteoexpert.com)。推奨されたプライマー対を用いて、CRABP-IIタンパク質をコードするヌクレオチド配列のインビトロ転写および発現のためcDNAから直鎖PCRテンプレートを産生するために「RTS 100 E.coli Linear Template Generation Set, His-tag」(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号 3186237)系を使用する。ウェスタンブロット検出およびその後の精製のために、発現タンパク質はHis-tagを含む。最良の発現バリアントを同定する。PCRから発現および検出までの全ての工程を製造業者の指示に従って行なう。全ての必要なT7調節領域(プロモーター、リボソーム結合部位およびT7ターミネーター)を含む各々のPCR産物を、製造業者の指示に従ってpBAD TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen, Karlsruhe, Germany, カタログ番号 K 4300/01)にクローニングする。T7調節配列を用いる発現のために、構築物を大腸菌BL 21(DE 3)(Studier, F.W.ら、Methods Enzymol. 185 (1990)60-89)に形質転換し、形質転換細菌をタンパク質発現のために1lバッチ中で培養する。
His-CRABP-II融合タンパク質の精製は、以下の標準的な手順に従いNiキレートカラムにおいて行なう。手短にいえば、His-CRABP-II融合タンパク質の発現ベクターを含む1lの細菌培養物を遠心分離によりペレット化する。細胞ペレットをリン酸塩、pH8.0、7M 塩酸グアニジン、イミダゾールおよびチオグリセロールを含む溶解バッファーに再懸濁し、続いてUltra-Turrax(登録商標)を用いてホモジナイズする。不溶性物質を高速遠心分離によってペレット化し、上清をNiキレートクロマトグラフィーカラムにアプライする。カラムを数ベッド容積の溶解バッファーで洗浄し、続いてリン酸塩、pH8.0、および尿素を含むバッファーで洗浄する。最後に、結合した抗原を酸性条件下でSDSを含むリン酸塩バッファーを用いて溶出する。
さらに、CRABP-IIタンパク質をKleywegt, G. J.ら, Structure 2 (1994) 1241-1258, 特に1252ページ (「タンパク質調製」) に記載してあるように発現し精製する。
ペプチド合成
ペプチドを最先端の、化学の方法によって合成し、精製する。
配列番号:1の85〜96位に相当するCRABP-IIペプチドはシステイン残基を含む。ペプチドはこれより先、CRABP-II (85-96) またはCRABP-II (85-96) ペプチドとも呼ばれる。
配列番号:1の106〜120位に相当するCRABP-IIペプチドに対して、ペプチドのC末端にシステイン残基を加える。ペプチドはこれより先、CRABP-II (106-120 Cys) またはCRABP-II (106-120 Cys) ペプチドとも呼ばれる。
抗体の産生のためのヘモシアニン−ペプチドコンジュゲートの合成
ヘテロ二官能性化学(マレイミド/SH化学)を用いて合成を行う。
CRABP-II (85-96) ペプチドを3-マレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MHS)活性化ヘモシアニンに結合する。同様に、CRABP-II (106-120 Cys) ペプチドを3−マレイミドヘキサノイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MHS)活性化ヘモシアニンに結合する。ヘモシアニンを、100 mM NaH2PO4/NaOH, pH7.2中に10 mg/mlにする。ヘモシアニン1 mlあたり100 μlのMHS(DMSO中に12.3 mg)を加え、1時間インキュベートする。試料を100 mM NaH2PO4/NaOH, pH6.5に対して一晩透析し、透析バッファーで6 mg/mlに調整する。CRABP-II (85-96) ペプチドまたはCRABP-II (106-120 Cys) ペプチドをDMSOに溶解する(1500 Da(ダルトン)のペプチドについて5 mg/ml)。MHS活性化ヘモシアニン(6 mg/ml)1 mlあたり20 μlの100 mM EDTA, pH7.0および100 μlのシステイン含有CRABP-IIペプチド (85-96) またはCRABP-II (106-120 Cys) ペプチドを加える。1時間後、反応混合物1 mlあたり10 μlの0.5 M システイン/塩酸を加えることによって、残存マレイミド基をブロックする。この調製物をさらなる精製なしで免疫化のために用いる。
CRABP-IIに対するモノクローナル抗体の産生
a)マウスの免疫化
12週齢のA/Jマウスを100 μgのCRABP-IIまたはヘモシアニン−ペプチドコンジュゲート(上記参照)で腹腔内に初回免疫する。6週間後、一月間隔で2回のさらなる腹腔内免疫を行なう。この過程において、各マウスに水酸化アルミニウムに吸着した100 μgのCRABP-IIまたはヘモシアニン−ペプチドコンジュゲートおよび109個の細菌の百日咳菌を投与する。続いて、最後の2回の免疫を、PBSバッファー中の100 μgのCRABP-IIまたはヘモシアニン−ペプチドコンジュゲートを用いて融合の3日前および2日前におのおの静脈内に行う。
b)融合およびクローニング
a)に従って免疫化したマウスの脾臓細胞をGalfre, G.およびMilstein, C., Methods in Enzymology 73(1981)3-46に従ってミエローマ細胞と融合する。この過程において、免疫化マウスの約1×108個の脾臓細胞を2×107個のミエローマ細胞(P3X63-Ag8-653、ATCC CRL1580)と混合し、遠心分離(300 xgおよび4℃で10分間)する。次いで、細胞をウシ胎仔血清(FCS)を含まないRPMI 1640培地で一度洗浄し、50 mlコニカルチューブ中にて400 xgで再び遠心分離する。上清を廃棄し、細胞沈殿物をタッピングにより穏やかに解し、1 mlのPEG(分子量4000、Merck、Darmstadt)を加え、ピペッティングにより混合する。37℃の水浴中で1分間の後、4〜5分以内に室温でFCSを含まない5 mlのRPMI 1640を滴下する。その後、10%FCSを含む5 mlのRPMI 1640を約1分以内に滴下し、十分に混合し、培地(RPMI 1640+10% FCS)で50 mlにし、続いて400 xgおよび4℃で10分間遠心分離する。沈殿した細胞を、10% FCSを含むRPMI 1640培地中にとり、ヒポキサンチン-アザセリン選択培地(RPMI 1640+10% FCS中に100 mmol/l ヒポキサンチン、1 μg/ml アザセリン)中に播種する。100 U/mlのインターロイキン6を成長因子として培地に添加する。
約10日後、初代培養物を特異的抗体について試験する。CRABP-II陽性初代培養物を蛍光活性化細胞ソーターにより96ウェル細胞培養プレート中でクローニングする。この過程において、再び100 U/mlのインターロイキン6を成長添加物として培地に添加する。
c)細胞培養上清からの免疫グロブリンの単離
得られたハイブリドーマ細胞を、10%FCSを含むRPMI 1640培地中に1 mlあたり1×105個の細胞の密度で播種し、発酵槽(Thermodux Co., Wertheim/Main, Model MCS-104XL, 注文番号 144-050)中で7日間増殖させる。1 mlあたり100 μgの平均濃度のモノクローナル抗体が培養上清中に得られる。培養上清からのこの抗体の精製を、タンパク質化学における従来の方法(例えば、Bruck, C.ら、Methods in Enzymology 121(1986)587-695による)により行なう。
ポリクローナル抗体の産生:
a)免疫
免疫のために、タンパク質溶液(100 μg/ml CRABP-IIまたはCRABP-II (85-96) ペプチドもしくはCRABP-II (106-120 Cys) ペプチドを含むヘモシアニン−ペプチドコンジュゲート)および完全フロイントアジュバントの1:1の比の新鮮なエマルジョンを調製する。各ペプチドに関して、各ウサギをそれぞれの1 mlのエマルジョンで1、7、14および30、60および90日に免疫する。血液を抜き取り、得られた抗CRABP-II血清を実施例3および4に記載されるさらなる実験のために使用する。
b)カプリル酸および硫酸アンモニウムを用いた連続沈殿によるウサギ血清由来のIgG(免疫グロブリンG)の精製
1容積のウサギ血清を4容積の酢酸バッファー(60 mM、pH4.0)で希釈する。pHを2 M Tris塩基を用いて4.5に調整する。カプリル酸(希釈試料の25 μl/ml)を激しい攪拌下で滴下する。30分後、試料を遠心分離(13,000 xg、30分、4℃)し、ペレットを廃棄し、上清を収集する。上清のpHを2 M Tris塩基を加えることによって7.5に調整し、濾過(0.2 μm)する。
上清の免疫グロブリンを最終濃度2 Mまでの4 M硫酸アンモニウム溶液の滴下により激しい攪拌下で沈殿させる。沈殿した免疫グロブリンを遠心分離(8,000 xg、15分、4℃)により収集する。
上清を廃棄する。ペレットを10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaCl中に溶解し、完全に透析する。透析物を遠心分離(13,000 xg、15分、4℃)し、濾過(0.2 μm)する。
ポリクローナルウサギIgGのビオチン化
ポリクローナルウサギIgGを10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaCl中に10 mg/mlにする。IgG溶液1 mlあたり、50 μlのビオチン-N-ヒドロキシスクシンイミド(DMSO中に3.6 mg/ml)を加える。室温で30分後、試料をSuperdex 200(10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaCl)においてクロマトグラフを行う。ビオチン化IgGを含む画分を収集する。モノクローナル抗体を同じ手順に従ってビオチン化する。
ポリクローナルウサギIgGのジゴキシゲニン化
ポリクローナルウサギIgGを10mM NaH2PO4/NaOH、30mM NaCl、pH7.5中に10 mg/mlにする。
IgG溶液1 mlあたり、50 μlのジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミド エステル(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany, カタログ番号 1 333 054)(DMSO中に3.8 mg/ml)を加える。室温で30分後、試料をSuperdex(登録商標) 200(10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaCl)においてクロマトグラフを行う。ジゴキシゲニン化IgGを含む画分を収集する。モノクローナル抗体を同じ手順に従ってジゴキシゲニンで標識する。
実施例3
ヒト血清および血漿試料中のCRABP-IIの検出のためのウェスタンブロッティング
SDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングをInvitrogen, Karlsruhe, Germanyの試薬および装置を使用して行なう。ヒト血漿試料を還元NuPAGE(登録商標)(Invitrogen)LDS試料バッファーに1:20に希釈し、95℃で5分間加熱する。10μlのアリコートをMESランニングバッファー系中の4〜12% NuPAGE(登録商標)ゲル(Bis-Tris)において泳動する。ゲル分離したタンパク質混合物を、Invitrogen XCell IITMBlot Module(Invitrogen)およびNuPAGE(登録商標)トランスファーバッファー系を使用してニトロセルロース膜上にブロットする。膜をPBS/0.05% Tween-20で3回洗浄し、SuperBlockブロッキングバッファー(Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL, USA)でブロックする。ビオチン化一次抗体をSuperBlockブロッキングバッファーに希釈し(0.01〜0.2 μg/ml)、膜と1時間インキュベートする。膜をPBS/0.05% Tween-20で3回洗浄する。特異的に結合するビオチン化一次抗体をストレプトアビジンHRPコンジュゲート(SuperBlock ブロッキングバッファー中に20 mUABTS/ml)で標識する。1時間のインキュベーション後、膜をPBS/0.05% Tween-20で3回洗浄する。結合したストレプトアビジンHRPコンジュゲートを化学発光基質(SuperSignal West Femto Substrate, Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL, USA)およびオートラジオグラフフィルムを用いて検出する。曝露時間は10分から一晩まで変動する。
実施例4
ヒト血清および血漿試料中のCRABP-IIの測定のためのELISA
ヒト血清または血漿中のCRABP-IIの検出のために、サンドイッチELISAをストレプトアビジン被覆96ウェルマイクロウェルプレートを用いて開発した。
ヒト血清または血漿中のCRABP-IIの検出のために、サンドイッチELISAをストレプトアビジン被覆96ウェルマイクロウェルプレートを用いて開発した。
20 μlのヒト血清もしくは血漿試料または標準抗原として組換えCRABP-IIタンパク質の連続希釈物を10 mMリン酸塩、pH7.4、1% BSA、0.9% NaClおよび0.1% Tween-20中において100 μlのビオチン化ポリクローナル抗CRABP-II (85-96) 抗体 (0.1 μg/ml) およびジゴキシゲニン化モノクローナル抗CRABP-II (0.1 μg/ml) とインキュベートした。室温で一晩インキュベーション後、プレートを0.9% NaCl、0.1% Tween-20で3回洗浄した。抗原抗体複合体の検出のために、10 mMリン酸塩、pH7.4、1% BSA、0.9% NaClおよび0.1% Tween-20中のモノクローナル抗ジゴキシゲニンペルオキシダーゼコンジュゲート100 μlを加えて2時間インキュベートした。コンジュゲートの過剰量はプレートを0.9% NaCl、0.1% Tween-20で3回洗浄することによって除いた。結合したコンジュゲート量を100 μl ABTS溶液(Roche Diagnostics GmbH, Penzberg, Germany, カタログ番号 11685767)と30〜60分間インキュベーションすることによって検出した。色の展開はELISAリーダーを用いて405 nmで定量化した。血清または血漿試料中のCRABP-IIの濃度を組換えCRABP-IIの連続希釈物を用いた標準曲線から計算した。
実施例5:
マーカー評価、感受性および特異性;
診断の正確度の点から臨床的有用性の評価するためのROC分析
正確度を、十分に特徴づけられた患者コホートから得られた個々の液体試料を分析することにより評価する。対照集団(表1参照)は乳房撮影を受けた50人の患者を含む。40人の患者は乳房撮影陰性と見出され、他の胸部疾患の症状は検出されない。5人の患者は乳腺炎と診断され(5人中3人は乳房撮影陽性)、5人の患者は微小石灰化と診断される(5人全て乳房撮影陽性)。試料コホートを表1に要約する。

50人の乳癌患者を異なる病期の侵襲性の管癌および侵潤性の小葉癌を有する患者から集めた。乳癌を早期に診断する目的のために、UICC IおよびUICC II期の割合が78%であった。他の固形腫瘍に対する特異性を分析するために、40人の結腸癌、20人の肺癌、20人の胃癌、20人の卵巣癌および20人の前立腺癌の試料の集団もまた測定した。市販のアッセイ(Elecsys(登録商標)Systemsイムノアッセイアナライザー用のRoche Diagnostics, CA 15-3アッセイ:カタログ番号 0 304 5838およびCEAアッセイ:カタログ番号 1731629))によって測定されるCA 15-3およびCEAならびに上記のように測定されるCRABP-IIをこれらの個体の各々から得られた血清中で定量した。
区別は95%特異性に等しい、対照集団の95%百分位数に関して定義する。こうして本一連の実験において、CRABP-IIに関する区別する値を0.92 ng/mlに設定する。
「健康な対照」群のCRABP-II測定の3人の陽性(偽陽性と想定される)対照患者は乳腺炎または微小石灰化患者ではないことを示す。かかる患者は乳房撮影に基づく高い割合の陽性結果を通常生じさせる。肺癌、胃癌および前立腺癌の群における陽性反応はないことがわかる。結腸癌患者において3人のみが陽性結果である。この観察は健康な対照群のものに匹敵する。最も多い陽性反応は卵巣癌群において観察され、すなわち20人中6人で観察される。
マーカーCEAおよびCA 15-3と比較したCRABP-IIの感度および特異性を要約するデータを表2および表3に示す。
ROC分析をZweig, M. H.およびCampbell, 前出に従って行なった。「健康な」対照群から乳癌群における患者を区別するための判別能力は、曲線下面積により測定されるように、少なくとも確立されたマーカーCA 15-3 (60%)およびCEA (65%)各々と比べて、CRABP-II (64%) について良好であることが見出された。一方、胃癌、肺癌および前立腺癌の試料全てにおいて陽性結果がなかったので、CRABP-IIは乳癌に対して高い特異性を示した。結腸癌においては40試料中わずか3試料が陽性であり(健康な対照群に匹敵する)、卵巣癌においては20試料中6試料が陽性であると見出された。このことから、乳癌集団を全ての他の固形腫瘍を含む全ての対照と比較する場合、CA 15-3 (54%)およびCEA (51%)に比較してCRABP-II (73%)の改良された判別能力が示される。
結論として、CRABP-IIはCA 15-3と同等な感度であり、同時に拡大された対照群、すなわち他の癌を含む対照群において、より高い特異性を示す。さらに、CRABP-IIは早期により多くの腫瘍を検出する。CRABP-IIは胸部腫瘍に対して特異性が高い。肺癌、胃癌および前立腺癌を有する患者由来の血清試料では陽性結果が得られず、結腸癌を有する患者由来の試料ではわずかな陽性反応のみ得られた。卵巣癌試料では特異性は低いが、マーカーCA 15-3の特異性よりはさらに高い。全ての他の固形腫瘍を含む全ての対照試料を用いると、CRABP-IIの判別能力(73%)はCA 15-3(54%)およびCEA (51%)より高い。データはCRABP-IIはまた乳癌の診断または手術後の患者の追跡において大変有用であり得ると示唆する。
BC患者由来の試料のいくつかにおいて、CRABP-IIのレベルおよびCA 15-3のレベル両方が高くなる。さらに、異なる乳癌患者から得られた個々の試料においてCRABP-IIまたはCA 15-3のいずれかが陽性である。このことによって、両方のマーカーが患者試料において測定される場合、より高い感度が示される。患者試料が陽性として分類される場合、マーカーCRABP-IIまたはCA 15-3の一つは陽性であると、40%の感度が達成される。CRABP-IIの高い特異性のために、この組み合わせの特異性はCA 15-3のみの特異性に匹敵する。このようにCRABP-IIおよびCA 15-3のマーカーの組み合わせの感度の増大には、特異性を必要としない(CA 15-3のみ75%および組み合わせ78%)。

図1は腫瘍試料を負荷した2Dゲル(左側)、および対応する対照試料を負荷したゲル(右側)の典型的な例を示す。これらのゲルの拡大部分にある円は、タンパク質細胞性レチノイン酸結合タンパク質II(CRABP-II)の位置を示す。同じ方法を用いて、このタンパク質は健康な組織では検出されなかった。 図2はROC曲線:乳癌対対照/他の癌を示す。x軸は1から特異性の値を差し引くことによって計算された値を示す。y軸は感度を示す。両者において1の値は100%に相当する。CRABP-II、CEAおよびCA 15-3に対するROC値はそれぞれ73%、51%および54%と測定された。 図3はROC曲線:乳癌対対照/卵巣癌を除くその他の癌を示す。x軸は1から特異性の値を差し引くことによって計算された値を示す。y軸は感度を示す。両者において1の値は100%に相当する。CRABP-II、CEAおよびCA 15-3に対するROC値はそれぞれ74%、50%および58%と測定された。

Claims (10)

  1. a)個体から得た液体試料を提供すること、
    b)前記試料と、細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIに特異的な結合試薬とを、前記結合試薬と細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの間での複合体の形成に適切な条件下で接触させること、および
    c)(b)で形成した複合体の量を乳癌の検出に相関させること
    を含む、乳癌の検出方法。
  2. 前記試料が血清であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記試料が血漿であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
  4. 前記試料が全血であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
  5. 前記試料が乳吸引液であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
  6. 個体から得た液体試料由来乳癌の検出におけるマーカー分子としてのタンパク質細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの使用。
  7. 個体から得た液体試料由来乳癌の早期検出におけるマーカー分子としてのタンパク質細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの使用。
  8. 早期検出をTis〜3; N0; M0期におけるBC患者由来の試料で行なう、請求項7記載の使用。
  9. 個体から得た液体試料由来の乳癌の検出における乳癌に対する1つ以上のマーカー分子と組み合わせた、乳癌に対するマーカー分子としてのタンパク質細胞性レチノイン酸結合タンパク質IIの使用。
  10. 少なくとも1つの別のマーカー分子がCA 15-3である、請求項9記載の使用。
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