JP4281999B2 - 検量線の作成方法並びにそれを利用した未知物質の測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、未知なる被測定物質を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する場合において、その測定値を校正するのに用いられる検量線の作成方法並びにそれを利用した未知なる物質の測定方法に関する。更に詳述すると、本発明は、環境試料中の未知なる物質の検出に用いて好適な検量線の作成方法並びにそれを利用した測定方法に関する。
近年環境中に存在する微量な化学物質が化学物質過敏症、アレルギー、発ガン、雌化などの原因となることが指摘されている。このような問題の解決には、化学物質の環境中への拡散を防止し、かつ除去を進める必要があるため、化学物質を検出する簡易な方法の開発が求められている。
しかし、これらの化学物質は、ナノモルないしピコモル単位という極めて希薄な濃度で環境中に存在するため、できるだけ感度が高く、かつ簡易な方法を開発する必要がある。
これらの化学物質の検出には、通常質量分析計が用いられるが、装置が高価であること、操作には熟練した技術が必要であること、携帯できないため現場での簡易検出が望めないことなどの種々の問題が指摘されている。
一方、生物の優れた機能を利用してこれらの化学物質を検出する方法が提案されている。例えば、抗体を用いる場合には、検出を目的とする物質に結合反応を起す抗体を試料に添加して試料に含まれる未知濃度の物質と反応させ、この抗体の反応率を蛍光、蛍光偏向、表面プラズモン共鳴、発色などの種々の検出原理を用いて物理化学的な変化として測定し、その測定値を予め生理食塩水などを用いた理想的な条件で作成した検量線に当てはめて物質濃度を算出する。この生物的検出法は、既に臨床検査などに用いられており、操作が簡単でかつ特異性の高い検出が可能である利点がある。
特開平11−293037号 Enzyme-linked Immunosorbent Assy,ELISA;Gosling,j.p. Clin Chem,36(8),1408(1990)
ところが、最近になって、このような手順で算出した物質濃度が質量分析計によって求めた濃度と一致しないことが指摘されている。濃度の不一致は、抗体の反応率が試料を用いた実測定条件下と生理食塩水を用いた人工的かつ理想的な条件下で異なることに起因するものと思われる。特に、この生物的検出法を環境試料に適用する際には、生物的検出の素子となる抗体、受容体などの生物由来の素子が未知物質を多く含む環境試料中では不安定であり、検出の判定に大きな誤差を生じ易いものと考えられる。
この反応率の不均一性は、試料の水素イオン濃度や塩濃度、または温度などの他に、試料に含まれる被測定物質以外の全ての原子あるいは物質が与える影響の総和として表われる。よって、試料の性状により均一性が著しく損なわれる場合や、まったく損なわれない場合もある。また、同一の試料においても、被測定物質と反応する物質の性質によっても反応率が著しく異なることが容易に予想される。よって、現在これらの反応の不均一性をもたらす因子について詳細を理解することは不可能であるが、大きく2つの因子に分けて考えることができる。
一つは、特異的な反応率への影響因子であり、これは被測定物質と測定に際して添加した抗体などの物質との間の反応を特異的に妨害あるいは促進する。具体的には、被測定物質と化学構造が類似した物質群が挙げられる。
もう一つは、非特異的な反応率への影響因子であり、これは被測定物質と測定に際して添加した抗体などの物質との間の反応を非特異的に妨害あるいは促進する。具体的には、本来非測定物質と反応するべき物質に非特異的に影響し、本来目的とする非測定物質との反応に不均質性を与える物質群が挙げられる。この様な試料由来の反応率の不均一性はマトリックス効果と呼ばれている。
このマトリックス効果は、生物的検出方法に限らず、化学・物理的検出方法においても同様に見られる。このため、現在、環境試料などの夾雑物質を多く含む試料における測定は非常に困難であり、測定に際して夾雑物質を除く前処理を行うことが一般的である。ところが、前処理にかかる手間、時間、費用が余分にかかるため、省略できることが望ましい。しかし、現状では、マトリックス効果に有効な技術は知られていない。
本発明はこのような状況を考慮してなされたものであり、試験すべき試料中の被測定物質の濃度を正確に定量するための校正に用いる検量線の作成方法並びにそれを利用した測定方法を提供することを目的とする。また、本発明は、特に環境試料の測定の校正に効果的な検量線の作成方法並びにそれを利用した被測定物質の測定方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本発明者等は、標識した物質と標識していない2種類の被測定物質と反応しうる物質を試料に同時に添加し、主に非標識物質と被測定物質並びに測定妨害物質を反応させることで擬似的に被測定物質並びに測定妨害物質を含まない試料を調製することで、標識物質の検量線を作成することに着眼し、測定の目的となる試料中の物質の濃度を正確に校正できることを確認して本発明を完成させるに至った。
即ち、請求項1記載の発明は、試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、前記未知なる被測定物質と反応しうる外来の標識物質の少量と非標識物質の過剰量を前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせて測定によって求め、これを0点として検量線を作成するようにしている。
また、請求項2記載の発明は、試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、前記未知なる被測定物質と反応しうる外来の標識物質の少量と非標識物質の過剰量を前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせた測定で検量線の0点として求める工程と、既知濃度の定量したい被測定物質と前記0点測定時と同一濃度の標識物質とを前記試料に添加して標識した形式に合わせた測定によって前記被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを求める工程とを有し、前記測定値FとFとから検量線を作成する検量線を作成するようにしている。
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の検量線の作成方法において、測定値Fを異なる濃度で複数点求めるようにしている。
また、請求項4記載の発明は、試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、前記未知なる被測定物質と反応しうる外来の標識物質の少量と非標識物質の過剰量を前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせた測定で検量線の0点として求め、前記被測定物質並びに前記測定妨害物質を当初から含まない試料に既知量の被測定物質を添加して予め作成した検量線を前記0点を用いて校正するようにしている。
また、請求項5記載の発明は、試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、定量したい前記存在未知なる被測定物質と反応する外来の標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値Fを求める工程と、前記F測定時と同一濃度の前記標識物質と該標識物質に比べて過剰量の前記被測定物質と反応しうる非標識物質とを前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせた測定で検量線の0点として求める工程とを有し、前記測定値FとFを用いて検量線を作成するようにしている。
また、請求項6記載の発明にかかる未知物質の測定方法は、定量したい被測定物質と反応する標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値Fを求める工程と、既知濃度の定量したい被測定物質と前記測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質とを前記試料に添加して標識した形式に合わせた測定によって前記被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表すF値を求める工程とを有し、同一成分の試料に前記測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質と該標識物質よりも過剰量の非標識物質とを添加して前記被測定物質並びに測定妨害物質が全く存在しない状態を擬似的に作り出したときの測定値Fを求め、前記FとFとから検量線を求めて、前記測定値Fを校正するようにしている。
更に、請求項7記載の発明にかかる未知物質の測定方法は、定量したい被測定物質と反応する標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値Fを求める工程と、同一成分の試料に前記測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質と該標識物質よりも過剰量の非標識物質とを添加して前記被測定物質並びに測定妨害物質が全く存在しない状態を擬似的に作り出したときの測定値Fを求める工程とを有し、前記FとFとから検量線を求めて前記測定値Fを校正するようにしている。
また、請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の未知物質の測定方法において、検出しようとする試料中の存在未知なる被測定物質の類似体を固定した検出容器に、定量したい被測定物質と反応する既知濃度の標識物質あるいは該標識物質に加えて該標識物質よりも過剰量の非標識物質を予め添加した試料を導入して行うようにしている。
尚、本発明において被測定物質の形態、組成、構成及び数は、実施例に挙げたものに限定されるものではなく、未知あるいは既知の化学物質、蛋白質、核酸、金属、鉱物、生物由来の高分子あるいは生物・無機物の一部の全てを対象とし得る。また、測定のために添加する標識物質あるいは非標識物質は、被測定物質と反応しうる物質である限り、形態や原子組成において限定されるものではない。また、被測定物質と反応する性質を有する、測定のために添加する標識物質あるいは非標識物質の種類と数においても同様であり、例えば複数の標識物質を一度に添加したり、あるいは複数の非標識物質を一度に添加することも、更には標識物質と非標識物質の双方において複数の物質を同時に添加することも可能である。標識の方法は、蛍光物質、放射性物質、蛋白質、核酸、金属などであり、標識物質濃度を測定する蛍光、放射性、酵素活性、光吸収、質量、磁気などの、生物、化学あるいは物理的に検出が可能な標識である限り限定されない。測定される値が物理・化学・生物的に表記できるとは、被測定物質と標識物質との反応を物理・化学・生物的に数値化(定量化)できる方法を指し、例えば、物理的には、プラズモン共鳴、蛍光、蛍光偏光、分子量、化学的には、抗原抗体反応の2次反応を促すような電気化学反応、生物的には、抗原抗体反応を酵素を使って活性でみる方法などを指す。より好ましくは、被測定物質と反応しうる物質としては抗体、受容体など、標識の方法としては、蛍光など、標識のための蛍光色素には、cy-5、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート等の使用である。
しかして、請求項1記載の発明によると、試料中の全ての被測定物質並びに測定妨害物質となる夾雑物が、試料中に添加された割合に応じて外来の標識物質並びに非標識物質試料との反応に供されて擬似的に被測定物質が存在しない状態をつくりだすので、試料中に添加された割合に応じて非標識物質と標識物質とが試料中に残留する。したがって、少量の標識物質に対して過剰量となる非標識物質を添加すれば、試料中の全ての被測定物質並びに測定妨害物質となる夾雑物が、試料中に添加された割合に応じて主に非標識物質との反応に供されて擬似的に被測定物質が存在しない状態をつくりだすので、標識した形式に合わせた測定を行うと、被測定物質並びに測定妨害物質となる夾雑物が存在しない試料中に標識物質のみが添加された場合とほぼ同じ標識物質の量が検出される。この試料に対して求められる検出値は試料に全く検出しようとする物質並びに妨害物質となる夾雑物が存在しない検量線の0点として求めることができる。
依って、原理的に非標識・標識外来物質の種類に拘わらず、これらに結合性を持つ測定
すべき試料中の被測定物質の定量において、正確な0点を有する検量線を求めることができるので、測定値の正確な校正を可能とする。
また、請求項2記載の発明によると、前述の検量線の0点を求める工程に、0点を求めた時と同一濃度の標識物質と既知濃度の定量したい被測定物質とを試料に添加して被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを求める工程を増やすだけで正確な検量線を作成することができる。
また、請求項3記載の発明によると、被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを異なる濃度で複数求めることで、定量の精度をより正確に校正できる検量線を求めることができる。
また、請求項4記載の発明によると、被測定物質や測定妨害物質となる夾雑物を全く含まない試料に既知濃度の被測定物質を添加する理想的な条件で正確に作成された検量線を環境試料に適用することができる。
また、請求項5記載の発明によると、0点を含めて少なくとも2点が求まるので、理論式より検量線を求めることができる。
また、請求項6記載の発明によると、同じ濃度の標識物質で、試料に全く被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない場合の測定値Fと、試料に被測定物質が未知濃度で含まれる場合の測定値F並びに試料に被測定物質が未知濃度と既知濃度の総和濃度として含まれる場合の測定値Fを、試料中の未知の被測定物質の検出と同じ操作でそれぞれ求めることができる。そして、測定値FとFから検量線を作成して測定値Fの校正を行うので、被測定物質の未知濃度を正確に測定できる。
また、請求項7記載の発明によると、同じ濃度の標識物質で、試料に全く被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない場合の測定値Fと試料に被測定物質が未知濃度で含まれる場合の測定値Fとが、試料中の未知の被測定物質の検出と同じ操作でそれぞれ求められる。そして、測定値FとFから検量線を作成して測定値Fの校正を行うので、被測定物質の未知濃度が簡略に測定できる。
また、請求項8記載の発明によると、標識した形式に合わせた測定が行われる前に、試料中の全ての被測定物質並びに測定妨害物質となる夾雑物が標識物質または非標識物質との反応に供されて、試料中に残留する標識物質と場合によっては非標識物質のみが検出容器に固定されることとなる。したがって、少量の標識物質に対して過剰量となる非標識物質が添加される場合には、試料中の全ての被測定物質並びに測定妨害物質となる夾雑物が、試料中に添加された割合に応じて主に非標識物質との反応に供されて擬似的に被測定物質が存在しない状態をつくりだすので、標識した形式に合わせた測定を行うと、被測定物質並びに測定妨害物質となる夾雑物が存在しない試料中に標識物質のみが添加された場合とほぼ同じ標識物質の量が検出される。また、標識物質のみが添加される場合には、試料中の全ての被測定物質並びに測定妨害物質となる夾雑物が標識物質との反応に供された後の残留標識物質のみが検出器に固定されて検出される。
つまり、検出容器の固定能力即ちビーズの非標識物質並びに標識物質の捕捉容量の範囲内であるならば、非標識物質の添加の有無に拘わらず試料中に残留する標識物質の量が標識の形式に応じた測定によって検出される。これにより、通常の試料中の未知の被測定物質の検出と同じ操作で、試料に全く被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の検出値Fと、試料に被測定物質が未知濃度で含まれる場合の検出値Fと、試料に被測定物質が未知濃度と既知濃度の総和濃度として含まれる場合の検出値Fとがそれぞれ簡単かつ正確に求められる。
以上、本発明によると、原理的に非標識・標識外来物質の種類に拘わらず、これらに結合性を持つ測定すべき試料中の被測定物質の定量において、その測定値を正確に校正して被測定物質の正確な定量化を可能とする。しかも、測定妨害物質となる夾雑物質を含む試料でも正確に測定値を校正できる。このことから、現在、測定に際して夾雑物質を除く前処理を行うことが一般的である環境試料などの夾雑物質を多く含む試料の測定においても、迅速かつ簡易な測定を可能とする。更に、本発明は原理的に被測定物質の種類に関わらず有効であるため、被測定物質並びに夾雑物と反応する非標識・標識外来物質を作成することにより、標識の種類に関わらず適用することができる。よって、標識の種類により、様々な測定に応用できる。
以下、本発明を最良の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明は、被測定物質と反応しうる標識した物質(標識物質)と標識していない物質(非標識物質)との2種類の物質を試料に同時に添加し、主に非標識物質と被測定物質並びに測定妨害物質を反応させることで擬似的に被測定物質並びに測定妨害物質を含まない試料を調製し、この試料中に残留する標識物質と非標識物質を捕捉して、標識した形式で測定することによって標識物質を定量することで同試料の被測定物質並びに測定妨害物質を含まない状態の測定値Fを求め、これを0点として検量線を作成するようにしている。この検量線は、試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定の測定値の校正に使用されるものである。尚、試料中における未知なる被測定物質の存在は、外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定される。例えば、抗原抗体反応を利用する場合には、未知物質の測定方法において、検出しようとする試料中の存在未知なる被測定物質の類似体を固定した検出容器に、定量したい被測定物質と反応する既知濃度の標識物質あるいは該標識物質に加えて該標識物質よりも過剰量の非標識物質を予め添加した試料を導入して行うようにしている。
ここで、少量の標識物質とは、非標識物質に対して少量という意味で、検出しようとする存在未知の被測定物質の通常の測定に用いる量の標識物質を意味している。環境試料中に存在する微量な化学物質を検出する場合には、nMないしpM単位という極めて希薄な濃度で環境中に存在するため、これらと反応できる量が用いられる。
また、過剰量の非標識物質とは、標識物質に対して超過剰であり、試料中の未知の被測定物質並びに測定妨害物質のほぼ全てと結合する量をいう。標識物質非標識物質とは同じ物質からなるときには、試料に添加された割合と同じ割合で試料中の未知の被測定物質並びに測定妨害物質と直接的ないしは間接的に反応・結合し、更にビーズに固定されることから、定量したい被測定物質と反応させて測定値Fを求めるに十分な量の標識物質を添加するとき、その標識物質量よりも超過剰量例えば100倍程度の量の添加が好ましい。勿論、それよりも少なくとも、あるいは多くとも構わない。
これら標識物質と非標識物質とは同じあるいは性質(化学構造あるいは被測定物質との反応に不均質性を与える特性)が類似しているものであり、被測定物質との間の結合力の差はある程度は許容される。試料中の被測定物質並びに測定妨害物質を全て結合できる量あるいは結合力であればよく、目的とする被測定物質並びに測定妨害物質に対して反応、例えば被測定物質が抗原であれば抗原抗体反応を起こすものであれば良い。しかし、標識物質並びに非標識物質を補足できるビーズ量は有限で比較的少ないので、被測定物質及び測定妨害物質との間の結合に関して標識物質と非標識物質との間で同じような性質・結合力のものを使わないと、大量に非標識物質を使わざるを得なくなり、ビーズに補足できなくなる虞もあるので、標識物質と非標識物質とは同じ物質を用いることが好ましい。
また、標識物質並びに非標識物質を捕捉する物質としては、試料中の存在未知なる被測定物質の類似体を用い、検出容器のビーズなどに固定するようにしている。抗原抗体反応などの結合反応の実績のある類似体としては、例えば被測定物質がタンパク質の場合には受容体、核酸の場合にはRNAやDNA、金属の場合にはカドミウムや水銀などの重金属、鉱物の場合には黄鉄鉱、生物由来の高分子の場合には糖鎖、生物・無機質の一部の場合には病原微生物や金薄膜などの使用が好ましい。
尚、測定妨害物質とは、試料中の未知なる被測定物質と外来の標識物質との間の直接あるいは間接的な反応、あるいは外来の標識物質の検出容器内(外来の標識物質と容器に固定した被測定物質あるいは非測定物質の類似物との直接あるいは間接的な反応)での直接あるいは間接的な反応に、特異的あるいは非特異的に関与し、測定値に正あるいは負的な影響を及ぼす物質群をいう。
以上の外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって試料中における未知なる被測定物質の存在を測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、被測定物質が存在しない状態の測定値F即ち検量線の0点の信号が求まれば、既知濃度の定量したい被測定物質と0点測定時と同一濃度の標識物質とを試料に添加して標識した形式に合わせた測定によって被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを求めることによって、測定値FとFとから検量線を正確に作成することができる。このとき、測定値Fは異なる濃度で複数点求めることが精度を高める上で好ましい。これを0点として検量線を作成するようにしている。
このようにして作成された検量線は、測定妨害物質の影響が排除されたものである。したがって、この検量線を用いた測定値の校正は、存在未知なる被測定物質の検出とその濃度を正確に測定することができる。即ち、定量したい被測定物質と反応する標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値Fを求め、既知濃度の定量したい被測定物質と測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質とを試料に添加して標識した形式に合わせた測定によって被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表すF値を求め、同一成分の試料に測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質と該標識物質よりも超過剰の非標識物質とを添加して測定物質並びに測定妨害物質が全く存在しない状態を擬似的に作り出したときの測定値Fを求め、FとFとから検量線を求めて、測定値Fを校正することができる。この場合には、少なくとも3点の測定で存在未知なる被測定物質の検出とその濃度を正確に測定することができる。
例えば、物質の存在を試験すべき環境中の種々の試料、すなわち試験すべき試料中に検出しようとする物質が存在する場合に、それが標識物質・非標識物質などの物質と結合反応する現象を利用して、該物質を検出しようとするものである。そのためにまず、該物質と反応する標識物質をある濃度で試験すべき試料に添加し、標識した形式に合わせた測定を行う(この値を検出値F1とする)。さらに試験すべき試料に定量したい該物質を既知濃度で添加し、同様に該物質と反応する標識物質を検出値F1を求めたときと同じ濃度で混合した場合の測定を行う (この値を検出値Fとする)。続いて、該物質と反応する標識物質をある濃度で、また同じく該物質と反応する物質の非標識体を過剰に試験すべき試料に添加し、標識した形式に合わせた測定を行う(この値を検出値Fとする)。ここで、Fは試料にまったく該物質が存在しない場合の検出値、F1は試料に該物質が未知濃度で含まれる場合の検出値、Fは試料に該物質が未知濃度と既知濃度の総和濃度として含まれる場合の検出値を示す。よって、FとFから理論式に従い検量線を作成することができ、Fを示す未知濃度を決定できる。この時、試料に種々の濃度で定量したい該物質を添加することで、定量の精度を向上させることができる。
このように本発明においては、被測定物質と標識物との反応を測定することが必須であるが、その標識の形態と測定には限定されない。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、被測定物質の形態、組成、構成、数は、本発明において限定されるものではなく、未知あるいは既知の化学物質、蛋白質、核酸、金属、鉱物、生物由来の高分子あるいは生物・無機物の一部を意味する。測定のために添加する標識あるいは非標識物質は、被測定物質と反応しうる物質である限り、形態や原子組成において限定されるものではない。また、添加する物質の種類と数も同様である。標識の方法は、蛍光物質、放射性物質、蛋白質、核酸、金属などであり、標識物質濃度を測定する蛍光、放射性、酵素活性、光吸収、質量、磁気などの生物、化学あるいは物理的に検出が可能な標識である限り限定されない。ここで、測定される値が物理・化学・生物的に表記できるとは、抗原抗体反応を物理・化学・生物的に数値化(定量化)できる方法を指す。例えば、物理的には、プラズモン共鳴、蛍光、蛍光偏光、分子量、化学的には、抗原抗体反応の2次反応を促すような電気化学反応、生物的には、抗原抗体反応を酵素を使って活性でみる方法などを指す。例えば、被測定物質と反応しうる物質としては抗体、受容体など、標識の方法としては、蛍光等を用いることができ、標識のための蛍光色素には、cy-5、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート等がある。
また、上述の実施形態では、0点と被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを少なくとも1点求めることによって、検量線を作成する場合について主に説明しているが、被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを求めることは場合によっては必要ない。例えば、被測定物質が存在しない状態の測定値F即ち検量線の0点の信号が求まれば、この検量線の0点を利用して、被測定物質並びに測定妨害物質を当初から含まない理想的な試料に既知量の被測定物質を添加して予め作成した理想的な検量線を校正して使用することができる。例えば、検出しようとする試料中の存在未知なる被測定物質の類似体を固定した検出容器に、一定濃度で被測定物質を含む試料に被測定物質と反応しうる標識物質を加えて導入した場合に検出される測定値をFとし、F測定時と同一濃度の標識物質と該標識物質に比べて超過剰量の被測定物質と反応しうる非標識物質とを加えて検出容器に導入した場合に検出される測定値をFとし、測定値Fを被測定物質を含まない場合の測定値とした検量線によって測定値Fを校正し、測定値Fから試料中に存在する被測定物質の濃度を求めることができる。
また、理想的な試料を使って予め求めた検量線を校正しなくとも、擬似的に被測定物質が存在しない状態を作り出したときの測定値Fの他に、定量したい存在未知なる被測定物質と反応する外来の標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値Fを求めるだけで、この測定値FとFを用いて検量線を作成することも可能である。この場合、被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを求めることは場合に比べて正確さには幾分かけるが、最低限の測定で簡略に検量線を求めることができる。
次に、環境試料中に存在する化学物質・環境ホルモンの定量を行う実施例について説明する。しかし、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
A.材料と方法
(1)ホルモン、抗ホルモン抗体
試料中に添加する被測定物質として17β−エストラジオール(和光純薬工業社製)を使用した。また、抗体を蛍光測定のために捕捉する被測定物質の類似物としては、17β−エストラジオールと牛血清アルブミンの複合体(Sigma-Aldrich社、米国)を用いた。非標識物質としては、マウス抗エストラジオール抗体(BioSpacific社、米国)を使用した(以下、本実施例では標識していない物質として抗体を用いるので非標識抗体と呼ぶ)。標識物質としては、同じ前記の抗体にCY5ラベリングキット〔米国イリノイ州アーリントンハイトのアマルシャム・ライフサイエンス(Amersham LiFe Science)社製〕を用いてCy-5蛍光色素を標識したものを用いた(以下、本実施例では標識物質として抗体を用いるので標識抗体と呼ぶ)
(2)固定化担体の調製
エストラジオールと牛血清アルブミンの複合体の担体(ビーズ)への固定は、アルブミン上のアミノ基を介した化学結合により行った。具体的には、エストラジオールと牛血清アルブミンを1mlの生理食塩水に溶解し、溶解液に容量約0.5mlの平均粒径60μmのアガロースの粒子(アマシャム社製)を加えた。この後、1時間しんとうして化学結合を促した。この後、さらに100マイクロリットルの牛血清アルブミン(100ミリグラム/ml)を添加し、しんとうした。最後に、生理食塩水で担体を洗浄し、固定化担体とした。
(3)蛍光測定法
蛍光強度の測定は、フロー式蛍光光度計〔米国アイダホ州ボイシのサピダイン・インストルメント(Sapidyne Instrument)社製〕を使用して以下の手順にて行った。
光度計は、ガラスセルの前面に配置された集束光学レンズにより励起光源からの励起光をガラスセル内に充填された物質固定化ビーズに入射し、当該入射光により励起されて発光した蛍光を前記光学レンズにより検出器へ向かわせ、検出器により、蛍光強度を電気信号単位で測定する。固定化ビーズはガラスセル内に設置されたスクリーンによりせき止めて積層することによりガラスセル中に充填した。また、このガラスセルの上流側には、ビーズ、試料、洗浄液等の供給源に接続されたロータリーバルブが配してあり、下流側に配されたシリンジポンプと共働して操作することにより、ガラスセル内にこれらの物質を順次供給した。
測定操作は、予めある既知量の標識抗体あるいは標識抗体と非標識抗体を混合した試料を、固定化ビーズに接触させる。ここで、試料中に含まれる被測定物質と反応していない余剰の未反応標識抗体あるいは非標識抗体がビーズ上に固定化した被測定物質の類似物と反応し、捕捉される。最後にセル内に洗浄液を流し前記試料をセル内から除去すると、固定化ビーズに結合した標識抗体のみがセル内に残り、その蛍光強度を測定することで固定化ビーズに結合した抗体量を検知し、試料中に存在していた被測定物質の量を知ることができる。ここで、少量(50pM)の標識抗体とこれに対して過剰な量(5nM)の非標識抗体が試料中の被測定物質並びに妨害物質と結合して擬似的に被測定物・抗原並びに妨害物質が存在しない状態を作り出す。このとき、標識抗体と非標識抗体とは試料に添加されたときと同じ割合でビーズに固定されることから、ビーズには非標識抗体の1%程度の標識抗体しか結合しないこととなるが、この量は、図3及び図4に示されるように定量したい被測定物質と反応させて測定値Fを求めるに十分な量である。通常の測定で用いられる量の標識抗体よりも100倍多い非標識抗体を一緒にいれると、抗体の捕捉絶対量は、入れていない場合の100倍になる。非標識抗体は蛍光を発しないので、見えないだけである。従って、標識抗体から得られる蛍光量は、ビーズの非標識抗体並びに標識抗体捕捉容量の範囲内であるならば、非標識抗体があるなしに関わらず、ビーズに捕捉される標識抗体の量そのものは同じであり、測定検出される量も非標識抗体の有無にかかわらず一定である。この測定法を実現するためには、ビーズに大量の被測定物質の類似体が固定されていることが必要であり、非標識抗体標識抗体の量がビーズ容量を上回る場合は正確な測定が困難となる。また、非標識抗体並びに標識抗体の性質が悪く、大量の非標識抗体並びに標識抗体をビーズに導入する場合も適用できないが、このような非標識抗体並びに標識抗体は測定に適していないので、実際上は多くの場合、有効である。因みに、蛍光物質で標識された抗体を抗原たる被測定物質と反応させる場合には、通常、試料中の被測定物質が0のとき、蛍光信号が100%となる(標識抗体に結合する被測定物質が存在しないので、標識抗体のみがビーズに結合するため)。逆に、試料中に被測定物質が存在すると、ビーズに結合する標識抗体量が少なくなり、被測定物質0のときよりも低い信号しか得られない。
(4)試料の調製
実際の試料中に含有される未知なる非特異的な測定妨害物質として、実施例ではメタノールを用いた。従って、10vol%メタノールを含む生理食塩水を試料とした。
(5)校正方法
測定妨害物質として10vol%メタノールを含む生理食塩水に被測定物質であるエストラジオールが溶解した試料を例に、未知なるエストラジオールの濃度を測定および校正する方法を説明する。試料は17β−エストラジオールを300pM(実試料の未知濃度を模擬した)添加したものとした。この試料に、まずエストラジオールと結合反応するCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pMとなるように添加し、上記の蛍光測定により被測定物質が未知濃度で含まれる場合の測定値Fを求めた。次に、試料にA〜Fの既知濃度の17β−エストラジオールを試料に添加し、測定値Fを求めるときと同じ濃度で標識抗体を添加して同様な蛍光測定を行い、A〜Fに対応する測定値F2−1〜F2−6を求めた。この後、もとの試料(同じ試料升から分抽)にCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体とCY5を標識していない同じマウス抗エストラジオール抗体をそれぞれ50pMと5nMとなるように試料に添加し、蛍光測定により測定値Fを求めた。この測定値Fがエストラジオールがない場合の試料中の値を示す。従って、得られたF,F,F2−1〜F2−6を以下の理論式に当てはめ、検量線から試料中の未知なるエストラジオール濃度を校正して定量できる。さらに、本発明原理を確認するため、測定値Fを求めるときと同様な蛍光測定を、添加するCY5を標識していない同じマウス抗エストラジオール抗体の濃度を変えて行い、G〜Jに対応する測定値F1−1〜F1−4を求めた。これらの測定値はFとFの中間値を示すはずであり、測定値F1−1〜F1−4から上記の検量線が正しいことを確かめた。
Figure 0004281999
Signalは蛍光強度、Sig0は測定値F、NSBは標識抗体の非特異的結合による蛍光強度、Kdは標識抗体の平衡解離定数、Ag0は試料中のエストラジオール濃度、Ab0は試料中の抗体結合部位濃度。
B.結果
試料中に混在するメタノールが測定に及ぼす影響(マトリックス効果)を調べた(図1)。生理食塩水にエストラジオールを種々の濃度で含む試料にCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pM添加し、10vol%メタノールが存在する場合と存在しない場合について蛍光強度を測定し(図1A)、検量線を作成した(図1B)。尚、Aが蛍光測定値、BがAの蛍光測定値を元に作成した検量線であり、●が10vol%メタノールを含む生理食塩水にエストラジオールを添加した場合、▲が生理食塩水にエストラジオールを添加した場合をそれぞれ示す。いずれの場合も、CY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pM添加して行った。その結果、メタノール即ち測定妨害物質の存在により検量線が著しい影響を受け(メタノールを含む検量線と含まない検量線との間に大きな乖離が生じた)、試料中のメタノールがマトリックス効果を示すことが確認された。
マトリックス効果がある試料は従来法では校正ができないことが指摘されている。そこで、300pMのエストラジオールを被測定物質とし、これを含む10vol%メタノール生理食塩水をマトリックス効果を示す試料とした。この試料にCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pM、エストラジオールを0,74,222,666,2000,6000,30000pMの計7濃度についてそれぞれ添加した場合の蛍光値を測定し、従来法として検量線を作成した。その結果、測定値は式1の校正曲線の理論式に当てはめてみると、良く当てはまる3種類の検量線が得られた(蛍光信号値が横軸(蛍光信号値)でそろっているのは、このためである)。この結果、同じ蛍光信号値が得られても、試料がまったくエストラジオールを含まない場合の蛍光測定値即ち0点となるF値が0.2の検量線1(◆)の場合には未知濃度は42pMに、F値が0.4の検量線2(▲)の場合には未知濃度は313pMに、F値が1.0の検量線3(●)の場合には未知濃度は474pMとなる。即ち、同じ蛍光信号値が得られても、F値が定まらないと、何本もの検量線(上述の例では3本)が得られるため、エストラジオールの校正値がバラバラになり、定量は不可能であることが示された。
次に、標識抗体とともに非標識抗体を過剰に試料に添加することで試料がまったくエストラジオールを含まない状態を疑似的に作出せることを確認した。過剰量の非標識抗体は試料中のほぼ全ての被測定物質と反応するため、標識抗体をこれに加えた場合、実測定条件と同一でありながら、試料にまったくエストラジオールが含まれない状態を擬似的に作出することができる。しかし、この時、過剰の非標識抗体が標識抗体による検出に影響してはならない。そこで、10vol%メタノールを含む生理食塩水にCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を表記の濃度で添加した場合の標識抗体の固定化ビーズへの捕捉量と蛍光強度を調べた。その結果、図3に示す。この結果から、少なくとも全抗体濃度が5nMまでは抗体の固定化ビーズへの捕捉量および蛍光強度に影響は見られなかった。よって、本実施例で用いる固定化ビーズにおいては、5nMまで非標識抗体を添加できることがわかった。これは、標識抗体50pMの場合、非標識抗体をどれだけ一緒に添加できるかを見た実験であり、ビーズ容量が十分にある場合、非標識抗体を標識抗体と一緒に過剰に入れても、標識抗体からの信号は変わらないが、5nM以上になるとビーズ容量を超えてしまうことを示している。
次に、非標識抗体の添加効果を予備的に調べた。10vol%メタノールを含む生理食塩水にエストラジオールを添加しない試料と、100pM添加した試料に、それぞれCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pM添加し、さらに同じ抗体の非標識体を5nMで添加した場合と添加しなかった場合の蛍光強度の違いを測定した。同時にメタノールを全く含まない生理食塩水(測定妨害物質なし)にエストラジオールを添加しない試料と、100pM添加した試料に、それぞれCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pM添加し、さらに同じ抗体の非標識抗体を5nMで添加した場合と添加しなかった場合の蛍光強度の違いを測定した。その結果、エストラジオールを含まない試料では非標識抗体の有無により測定値に違いは見られなかった。一方、エストラジオールを含む試料では、非標識抗体を添加しない場合には測定蛍光強度が低下する(添加エストラジオールの存在を反映している)が、非標識抗体を5nM添加した場合には測定蛍光強度がエストラジオールを含まない試料での測定値とほぼ一致した。これにより、標識抗体とともに非標識抗体を過剰に添加することにより、試料がまったくエストラジオールを含まない状態を疑似的に作出できると考えられた。尚、エストラジオールを100pM添加し、非標識抗体を添加しない場合においては、生理食塩水に10vol%メタノールを含む場合(A)と含まない場合(B)とで蛍光強度が異なる。これは、測定妨害物質の影響を示している。つまり、非標識抗体を添加しない場合には、測定妨害物質の分だけ標識抗体が失われビーズに結合・捕捉される量が低減するので、相対蛍光強度は低下した。
最後に、本発明により得られる検量線とそれを利用した未知物質の測定は測定妨害物質が存在していても正確であることを確認した。10vol%メタノールを含む生理食塩水にエストラジオールを300pM(実試料の未知濃度を模擬した)添加した。これを試料とし、種々の異なる濃度でエストラジオールおよびCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pMで添加して蛍光強度を測定した。これを式1に当てはめて検量線を作成した。同時に、検量線の校正値とし、種々の異なる濃度でエストラジオール、CY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pM、非標識抗体を5nMで添加した場合も測定した(前述の(5)校正方法)。この校正値を同様に式1に当てはめて検量線を校正した。その結果、試料に含まれるエストラジオールとして模擬したエストラジオールの定量値は、校正後に297pMと計算され、実濃度(300pM)と良く一致することが示された。つまり、標識抗体50pMに対してその100倍の量の非標識抗体5nMを添加した場合、1%の誤差で相対蛍光強度が得られた。この結果を検証するため、試料にCY5標識したマウス抗エストラジオール抗体を50pM、非標識抗体を60pM、185pM、560pM、1.67nMで添加した場合も同様に測定した。その結果、添加した非標識抗体の濃度が高いほど蛍光強度が高くなり、非標識抗体の添加効果が確認された。同様な実験を種々の濃度のエストラジオールを模擬した試料で行った結果、図6に示すように本発明を用いない校正前の定量値は実濃度に相関が乏しい一方、本発明を用いて校正した定量値は、実濃度と明確に直接関係を有することが示された。
試料中に混在する測定妨害物質してのメタノールが測定に及ぼす影響(マトリックス効果)を示すグラフであり、Aが蛍光測定値、BがAの蛍光測定値を元に作成した検量線を示す。 従来の検量線の作成方法ではマトリック効果がある試料に対しては校正ができないことを示すグラフである。 非標識抗体と標識抗体が混在する場合の蛍光強度と抗体の捕捉を示すグラフである。 非標識抗体の添加効果を相対蛍光強度の違いで示したグラフである。 非標識抗体を用いた校正方法を説明するグラフである。 本発明における校正の効果を示すグラフで、10vol%メタノールを含む生理食塩水にエストラジオールを種々の濃度で添加した試料を図5に示した非標識抗体による校正後の測定値(●)と校正前の測定値(▼)とを比較して示す。

Claims (8)

  1. 試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、前記未知なる被測定物質と反応しうる外来の標識物質の少量と非標識物質の過剰量を前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせて測定によって求め、これを0点として検量線を作成することを特徴とする検量線の作成方法。
  2. 試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、前記未知なる被測定物質と反応しうる外来の標識物質の少量と非標識物質の過剰量を前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせた測定で検量線の0点として求める工程と、既知濃度の定量したい被測定物質と前記0点測定時と同一濃度の標識物質とを前記試料に添加して標識した形式に合わせた測定によって前記被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表す測定値Fを求める工程とを有し、前記測定値FとFとから検量線を作成する検量線を作成することを特徴とする検量線の作成方法。
  3. 前記測定値Fを異なる濃度で複数点求めることを特徴とする請求項2記載の検量線の作成方法。
  4. 試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、前記未知なる被測定物質と反応しうる外来の標識物質の少量と非標識物質の過剰量を前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせた測定で検量線の0点として求め、前記被測定物質並びに前記測定妨害物質を当初から含まない試料に既知量の被測定物質を添加して予め作成した検量線を前記0点を用いて校正することを特徴とする検量線の作成方法。
  5. 試料中における未知なる被測定物質の存在を外来の物質との直接あるいは間接的な反応によって測定する際の測定値の校正に用いる検量線の作成において、定量したい前記存在未知なる被測定物質と反応する外来の標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値Fを求める工程と、前記F測定時と同一濃度の前記標識物質と該標識物質に比べて過剰量の前記被測定物質と反応しうる非標識物質とを前記試料に添加し、全ての前記被測定物質並びに測定妨害物質を前記少量の標識物質並びに過剰量の非標識物質との反応に供して擬似的に前記被測定物質並びに測定妨害物質が存在しない状態の測定値Fを標識した形式に合わせた測定で検量線の0点として求める工程とを有し、前記測定値FとFを用いて検量線を作成することを特徴とする検量線の作成方法。
  6. 定量したい被測定物質と反応する標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値Fを求める工程と、既知濃度の定量したい被測定物質と前記測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質とを前記試料に添加して標識した形式に合わせた測定によって前記被測定物質の既知濃度と未知濃度の総和の濃度を表すF値を求める工程と、同一成分の試料に前記測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質と該標識物質よりも過剰量の非標識物質とを添加して前記被測定物質並びに測定妨害物質が全く存在しない状態を擬似的に作り出したときの測定値Fを求める工程とを有し、前記FとFとから検量線を求めて、前記測定値Fを校正することを特徴とする未知物質の測定方法。
  7. 定量したい被測定物質と反応する標識物質を既知濃度で試料に添加して標識した形式に合わせた測定により測定値F を求める工程と、同一成分の前記試料に前記測定値Fの測定時と同一濃度の標識物質と該標識物質よりも過剰量の非標識物質とを添加して前記被測定物質並びに測定妨害物質が全く存在しない状態を擬似的に作り出したときの測定値Fを求める工程とを有し、前記FとFとから検量線を求めて前記測定値Fを校正することを特徴とする未知物質の測定方法。
  8. 前記測定は検出しようとする試料中の存在未知なる被測定物質の類似体を固定した検出容器に、定量したい被測定物質と反応する既知濃度の標識物質あるいは該標識物質に加えて該標識物質よりも過剰量の非標識物質を予め添加した試料を導入して行うことを特徴とする請求項6または7記載の未知物質の測定方法。
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