これによると、製造されるノズルプレートは、所定の相対位置関係にある2以上のノズル列からなるノズル列組を複数有する構成とされ、ノズルを形成するパンチ群はノズル列組を構成するノズル列のいずれか一列に対応するパンチ列を複数有し、これらパンチ列上におけるパンチの間隔はノズル列におけるノズル孔の所定間隔と等しくなるように構成されているため、複数のノズル列を備えた高解像度の印字が可能なインクジェットヘッドのノズルプレートと少ない工程数で形成することが可能となる。また、ノズルプレートの製造方法として、金型コストを抑えつつ比較的少ない工程数でノズルプレートを形成することができるので、工程数に基づく時間的なコストとパンチ数に基づく金型コストとをバランス良く低減させた製造方法を実現することができる。
本発明において、前記第2のノズル孔群を形成した後に、前記パンチ群に対して前記基板を前記一方向及び前記第1の方向のいずれに対しても交差する第2の方向に相対移動させる工程と、前記第2の方向に相対移動させる工程の後に、前記パンチ群によって前記基板に第3のノズル孔群を形成する工程とをさらに備えていることが好ましい。これにより、1つのパンチ列で少なくとも3列のノズル列を形成することができる。そのため、パンチ数が少なくなってさらなる低コスト化を図ることができるとともに、複数のノズルを高い自由度でマトリクス状に配列することができる。
また、本発明において、前記第1の方向に相対移動させる工程において、前記パンチ群は、前記一方向において前記第2の所定距離分移動し、前記直交する方向において前記第1の所定距離分移動されることが好ましい。これによると、複数のノズル列組は、互いに一方向に直交する方向に第1の所定距離だけ離間され、且つ一方向に第2の所定距離だけ変位した構成からなる2つのノズル列を有することになる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
<インクジェットヘッドの全体構造>
本発明の第1実施形態に係る製造方法によって製造されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態による製造方法で製造されたノズルプレートが適用されたインクジェットヘッドの外観斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。インクジェットヘッド1は、用紙に対してインクを吐出するための主走査方向に延在した矩形平面形状を有するヘッド本体70と、ヘッド本体70の上面に配置され且つヘッド本体70に供給されるインクの流路である2つのインク溜まり3が形成されたリザーバユニットであるベースブロック71と、これらヘッド本体70とベースブロック71とを保持するホルダ72とを含んで構成されている。
ヘッド本体70は、インク流路が形成された流路ユニット4と、流路ユニット4の上面にエポキシ系の熱硬化性接着剤によって接着された複数のアクチュエータユニット21とを含んでいる。アクチュエータユニット21は、複数の薄板を積層して互いに接着させた構成である。また、ヘッド本体70の底面は微小径を有する多数のノズル8(図5参照)が配列されたインク吐出面70aとなっている。また、アクチュエータユニット21の上面には、給電部材であるフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)50が半田によって接着され、左又は右に引き出されている。
図3は、ヘッド本体70を上面から見た平面図である。図3に示すように、流路ユニット4は、一方向(主走査方向)に延在した矩形平面形状を有している。図3において、流路ユニット4内に設けられた共通インク室であるマニホールド流路5が破線で描かれている。マニホールド流路5には、ベースブロック71のインク溜まり3に貯溜されていたインクが複数の開口3aを通じて供給される。マニホールド流路5は、流路ユニット4の長手方向(主走査方向)と平行に延在する複数の副マニホールド流路5aに分岐している。
流路ユニット4の上面には、平面形状が台形である4つのアクチュエータユニット21が、開口3aを避けるように、千鳥状になって2列に配列されており、流路ユニット4の上面に接着されている。各アクチュエータユニット21は、その平行対向辺(上辺及び下辺)が流路ユニット4の長手方向に沿うように配置されている。複数の開口3aは流路ユニット4の長手方向に沿って2列に配列されており、各列5個、計10個の開口3aがアクチュエータユニット21と干渉しない位置に設けられている。そして、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士が、流路ユニット4の幅方向(副走査方向)に部分的にオーバーラップしている。
アクチュエータユニット21の接着領域に対応する流路ユニット4の下面であって、インク吐出面70aは、多数のノズル8(図6参照)がマトリクス状に配列されたインク吐出領域となっている。アクチュエータユニット21に対向する流路ユニット4の上面には、多数の圧力室10(図5参照)がマトリクス状に配列された圧力室群9が形成されている。言い換えると、アクチュエータユニット21は、圧力室群9を構成する多数の圧力室10に跨る寸法を有している。
図2に戻って、ベースブロック71は、例えばステンレスなどの金属材料からなる。ベースブロック71内のインク溜まり3は、ベースブロック71の長手方向に沿って延在する略直方体の中空領域である。インク溜まり3は、その一端に設けられた開口(図示せず)を通じて外部に設置されたインクタンク(図示せず)からインクが供給され、常にインクで満たされている。インク溜まり3には、インクを流出するための開口3bが、その延在方向に沿って2列に計10個設けられており、流路ユニット4の開口3aと接続されるように千鳥状に設けられている。すなわち、インク溜まり3の10個の開口3bと流路ユニット4の10個の開口3aは同じ位置関係となるように設けられている。
ベースブロック71の下面73は、開口3bの近傍部分73aにおいて周囲よりも下方に飛び出している。そして、ベースブロック71は、下面73の開口3bの近傍部分73aにおいてのみ流路ユニット4の上面における開口3aの近傍部分と接触している。そのため、ベースブロック71の下面73の開口3bの近傍部分73a以外の領域は、ヘッド本体70から離隔しており、この離隔部分にアクチュエータユニット21が配されている。
ホルダ72は、ベースブロック71を把持する把持部72aと、副走査方向に間隔をおいて設けられ把持部72aの上面から上方に向けて突出する一対の突出部72bとを含んでいる。ベースブロック71は、ホルダ72の把持部72aの下面に形成された凹部内に接着固定されている。アクチュエータユニット21に接着されたFPC50は、スポンジなどの弾性部材83を介してホルダ72の突出部72b表面に沿うようにそれぞれ配置されている。そして、ホルダ72の突出部72b表面に配置されたFPC50上にドライバIC80が設置されている。すなわち、FPC50は、ドライバIC80から出力された駆動信号をヘッド本体70のアクチュエータユニット21に伝達するものであり、アクチュエータユニット21及びドライバIC80とはハンダ付けによって電気的に接合されている。
ドライバIC80の外側表面には略直方体形状のヒートシンク82が密着配置されているため、ドライバIC80で発生した熱を効率的に散逸させることができる。ドライバIC80及びヒートシンク82の上方においては、FPC50の外側に接続された基板81が配置されている。ヒートシンク82の上面と基板81との間、および、ヒートシンク82の下面とFPC50との間は、それぞれシール部材84で接着されており、インクジェットヘッド1の本体にゴミやインクが侵入することを防いでいる。
図4は、図3内に示す流路ユニット4の上面における一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図4に示すように、流路ユニット4内のアクチュエータユニット21に重なる領域には、流路ユニット4の長手方向と平行に4本の副マニホールド流路5aが延在している。各副マニホールド流路5aには、ノズル8の各々に通じる多数の個別インク流路が接続されている。図5は、個別インク流路を示す断面図である。図5から分かるように、各ノズル8は、圧力室10及びアパーチャすなわち絞り13を介して副マニホールド流路5aと連通している。このようにして、ヘッド本体70には、副マニホールド流路5aの出口からアパーチャ13、圧力室10を経てノズル8に至る個別インク流路7が圧力室10ごとに形成されている。
<ヘッド断面構造>
ヘッド本体70は、図5からも分かるように、上から順に、アクチュエータユニット21、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、カバープレート29及びノズルプレート30の合計10枚のシート材が積層された積層構造を有している。これらのうち、アクチュエータユニット21を除いた9枚のプレートから流路ユニット4が構成されている。
アクチュエータユニット21は、後で詳述するように、4枚の圧電シート41〜44(図9参照)が積層され且つ電極が配されることによってそのうちの最上層だけが電界印加時に活性部となる部分を有する層(以下、単に「活性部を有する層」というように記する)とされ、残り3層が活性部を有しない非活性層とされたものである。キャビティプレート22は、圧力室10の空隙を構成するほぼ菱形の孔が、アクチュエータユニット21の貼付範囲内に多数設けられた金属プレートである。ベースプレート23は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10とアパーチャ13との連絡孔23a及び圧力室10からノズル8への連絡孔23bがそれぞれ設けられた金属プレートである。
アパーチャプレート24は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ13となる孔のほかに圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。サプライプレート25は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ13と副マニホールド流路5aとの連絡孔及び圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。マニホールドプレート26、27、28は、副マニホールド流路5aに加えて、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。カバープレート29は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。ノズルプレート30は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、ノズル8がそれぞれ設けられた金属プレートである。
これら10枚のシート21〜30は、図5に示すような個別インク流路7が形成されるように、互いに位置合わせして積層されている。この個別インク流路7は、副マニホールド流路5aからまず上方へ向かい、アパーチャ13において水平に延在し、それからさらに上方に向かい、圧力室10において再び水平に延在し、それからしばらくアパーチャ13から離れる方向に斜め下方に向かってから垂直下方にノズル8へと向かう。
図5から明らかなように、各プレートの積層方向において圧力室10とアパーチャ13とは異なるレベルに設けられている。これにより、図4に示すように、アクチュエータユニット21に対向した流路ユニット4内において、1つの圧力室10と連通したアパーチャ13を、当該圧力室に隣接する別の圧力室10と平面視で同じ位置に配置することが可能となっている。この結果、圧力室10同士が密着して高密度に配列されるため、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド1により高解像度の画像印刷が実現される。
ベースプレート23及びマニホールドプレート28の上下面と、サプライプレート25及びマニホールドプレート26、27の上面と、カバープレート29の下面には、余分な接着剤を流すための逃し溝14が、各プレートの接合面に形成された開口を取り囲むように設けられている。この逃し溝14があることによって、プレートどうしを接着する際の接着剤が個別インク流路内にはみ出して流路抵抗が変動することが防止される。
<ノズルプレートの詳細>
図6は、図5に示す流路ユニットのノズルプレート30の平面図である。図6に示すようにノズルプレート30には、流路ユニット4の上面に接着されたアクチュエータユニット21が占める領域と重なるインク吐出領域内において、複数のノズル8がマトリクス状に隣接配置されたノズル群51が形成されている。ノズル群51は、4つのアクチュエータユニット21と対応するように4つ形成されるとともに、千鳥状になって2列に配列されている。つまり、4つのノズル群51は、アクチュエータユニット21の平面形状とほぼ同じ台形領域を有するとともに、その平行対向辺が流路ユニット4の長手方向に沿うように配置されている。そして、隣接するノズル群51の斜辺同士が、流路ユニット4の幅方向に部分的にオーバーラップしている。
図7は、図6に示す2点鎖線で囲まれた領域の拡大平面図である。図7に示すようにノズル群51は、複数のノズル8が配列方向Aに沿って配列された16列のノズル列52を有している。16列のノズル列52は互いに平行に配列されており、各ノズル列52を構成するノズル8は配列方向Aに沿って37.5dpiに相当する距離ずつ離隔されている。なお、配列方向Aは、インクジェットヘッド1の長手方向(主走査方向)、すなわち流路ユニット4の延在方向であり、上述した主走査方向と平行である。
各ノズル列52は、4本の副マニホールド5a(図4参照)と対向しない位置に配置されている。これらノズル列52のうち、1つのノズル群51の長辺側のノズル列を第1のノズル列52aとし、短辺側に向かって順に第2のノズル列52b、第3のノズル列52c・・・第16のノズル列52pというように符号をつけた場合に、第1のノズル列52aを構成するノズル8の数が最大数となっており、第16のノズル列52pを構成するノズル8の数が最小数となっている。すなわち、ノズル群51の長辺側から短辺側に近づくにつれてノズル列52を構成するノズル数が減少しており、ノズル群51がインク吐出領域内に収まっている。
図7に示すように16列のノズル列52は、第4のノズル列52dと第5のノズル列52e、第8のノズル列52hと第9のノズル列52i、及び、第12のノズル列52lと第13のノズル列52mのそれぞれの列間隔が最も小さな間隔を有するように配置されている。そして、この最も小さい列間隔の距離をYとすると、16列のノズル列52のうち、最も大きい列間隔となる第2のノズル列52bと第3のノズル列52c、第6のノズル列52fと第7のノズル列52g、第10のノズル列52jと第11のノズル列52k、及び、第14のノズル列52nと第15のノズル列52oのそれぞれの列間隔の距離が7Yとなっている。
また、ノズル群51は、16列のノズル列52のうち、2つのノズル列52を1つの組として8つのノズル列組53に分けられている。これら8つのノズル列組53は、第1のノズル列52aと第2のノズル列52bとで1つの組となったノズル列組53aと、第3のノズル列52cと第5のノズル列52eとで1つの組となったノズル列組53bと、第4のノズル列52dと第6のノズル列52fとで1つの組となったノズル列組53cと、第7のノズル列52gと第9のノズル列52iとで1つの組となったノズル列組53dと、第8のノズル列52hと第10のノズル列52jとで1つの組となったノズル列組53eと、第11のノズル列52kと第13のノズル列52mとで1つの組となったノズル列組53fと、第12のノズル列52lと第14のノズル列52nとで1つの組となったノズル列組53gと、第15のノズル列52oと第16のノズル列52pとで1つの組となったノズル列組53hとで構成されている。これら8つのノズル列組53にそれぞれ属するノズル列52同士の列間隔は、配列方向Aと直交する方向(方向C)においてそれぞれ等しい距離となっており、その距離(第1の所定距離)は3Yとなっている。
図7には、配列方向Aに37.5dpiに相当する幅(678.0μm)を有し、方向Cに延在する帯状領域Rが示されている。この帯状領域R内には、各ノズル列52の1つのノズル8が存在しており、これら16個の各ノズル8を配列方向Aに延びる直線上に射影した点の位置は、印字時の解像度である600dpiに相当する間隔ずつ離隔し、等間隔になっている。
1つの帯状領域Rに属する16個のノズル8を配列方向Aに延びる直線上に射影した位置が左にあるものから順に、これら16個のノズル8を(1)〜(16)と記することにしたとき、これら16個のノズル8は、下から、(1)、(9)、(13)、(15)、(5)、(7)、(11)、(16)、(3)、(8)、(12)、(14)、(4)、(6)、(10)、(2)の順番に並んでいる。このように構成されたインクジェットヘッド1において、アクチュエータユニット21内を印字媒体の搬送に合わせて適宜駆動させると、600dpiの解像度を有する文字や図形等を描画することができる。
1つの帯状領域Rに属する16個のノズル8を配列方向Aに延びる直線上に射影した場合において、1つの帯状領域Rに存在するいずれのノズル列組53に属する2つのノズル8の間にも、当該ノズル列組53以外の他の7つのノズル列組53に属するノズル8が1つずつ配置されるようになっている。例えば、ノズル列52aとノズル列52bとでなるノズル列組53においては、帯状領域R内に存在する2つのノズル(1),(9)は、1番目と9番目になるので、その1番目と9番目のノズル(1),(9)の間には2番目〜8番目に該当する7つのノズル(2)〜(8)が存在しており、それらは他の7つのノズル列組53のいずれかに属することになる。このように、各ノズル列組53の2つのノズル列52のうち、一方のノズル列52に属するノズル8と他方のノズル列52に属するノズル8とが配列方向Aにおいて偏って位置しており、その偏倚距離(第2の所定距離)は、他のノズル列組53に属する7つのノズル8が1つずつ等間隔に配置されるだけの距離であって、600dpiに相当する間隔分の8倍(75dpi)である。すなわち、8つのノズル列組53の第2の所定距離はすべて等しくなっている。このような16列のノズル列52が配列されてノズル群51が構成されている。
また、図7に示すように隣接する2つのノズル群51の間には、領域61が各ノズル群51の一斜辺に沿ってそれぞれ存在している。各領域61内には、ノズル群51の一斜辺方向に沿って互いに離隔した5つの領域62a〜62eが存在している。これら領域62内には、ノズルプレート30にノズル8が形成されるときに形成されたものであって、個別インク流路7と連通しないダミーノズルとなるダミー孔18(図7中黒丸で示す孔)が形成されている。これらダミー孔18は、各ノズル列組53の2つのノズル列52のうち、図7中上側に位置するノズル列52を構成する複数のノズル8と配列方向Aにおいて連続するように1つずつ形成されている。そのため、ダミー孔18は、5つの領域62のうち、ノズル群51の一斜辺方向の両端に位置する2つの領域62a,62e内の各々には、ダミー孔18が1つ形成されている。一方、領域62a,62e以外の3つの領域62b〜62dの各々には、ダミー孔18が2つ形成されている。したがって、1つのノズル群51に係わる複数のダミー孔18は、合計8個形成されていることになる。なお、本実施の形態において、複数のダミー孔18のうち、図7中左側のノズル群51(全体が図示されている方のノズル群51)を構成するノズル列52のノズル8と連続する8個のダミー孔18は、図7中左側のノズル群51の左側斜辺と長辺とを2辺とした平行四辺形領域からノズル群51の台形領域を除くことで形成される三角形領域Z1(図6中に図示)内に形成されているとともに、図7中右側のノズル群51を構成するノズル列52のノズル8と連続する8個のダミー孔18は、図7中右側のノズル群51(全体が図示されていない方のノズル群51)の右側斜辺と長辺とを2辺とした平行四辺形領域からノズル群51の台形領域を除くことで形成される三角形領域Z2(図6中に図示)内に形成されている。このように1つのノズル群51に係わる8個のダミー孔18が、各ノズル群51に係わる三角形領域Z1,Z2内に形成されていることで、2つの領域61も、その三角形領域Z1,Z2内に存在し、且つ領域61の面積が三角形領域Z1,Z2より小さくなっている。
また、図7中右側のノズル群51の斜辺近傍に形成されるダミー孔18は、図7中右側のノズル群51が左側のノズル群51と反対方向を向くように配置されているので、図7中左側のノズル群51の一斜辺近傍に形成された複数のダミー孔18が左右逆に形成された状態と同じ状態に形成される。図7に示すように隣接するノズル群51の2つの領域61同士は、方向Cについてオーバーラップするように配置されているので、隣接するノズル群51の斜辺同士を近づけることが可能となる。また、隣接する2つのノズル群51を方向Cにおいてオーバーラップするように配置することで、2つのノズル群51に属するすべてのノズル8を配列方向Aに延びる直線上に射影したときにすべての射影点を切れ目なく600dpiに相当する間隔で配列することが可能となる。これにより、隣接する2つのノズル群51が離れていても切れ目のない画像を形成することができる。以上の構成により、図7に示すように隣接するノズル群51同士をノズルプレート30の長手方向(配列方向A)において近づけつつ、ノズルプレート30の短手方向(方向C)において近づけることが可能になり、ノズルプレート30の長手方向及び短手方向の長さを小さくすることが可能になる。加えて、流路ユニット4に接着される4つのアクチュエータユニット21も隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士を近づけて配置することが可能になるので、流路ユニット4全体の平面領域を小さくすることが可能になり、インクジェットヘッド1の小型化を図ることができる。なお、ノズルプレート30にノズル8及びダミー孔18を形成する製造方法については後述する。以上の説明からわかるとおり、本実施の形態におけるインクジェットヘッド1は、平行に配列するノズル列52を複数有する、いわゆるマルチラインヘッドである。マルチラインヘッドは、複数のノズル列52に属するすべてのノズル8に関して、それら各々のノズル列方向における位置がすべて異なっていることが構成上の特徴である。そして、印字の際には、ノズル列52の各々を記録媒体上の一の直線上に対向するように順次位置決めしつつインクを吐出させるように制御する。これにより、ノズル列方向の解像度を高くするものである。
<流路ユニット全体の詳細>
図4に戻って、アクチュエータユニット21の貼付範囲内には、多数の圧力室10からなる圧力室群9が形成されている。圧力室群9は、アクチュエータユニット21の貼付範囲とほぼ同じ大きさの台形形状を有している。圧力室群9は、各アクチュエータユニット21について1つずつ形成されている。
図4から明らかなように、圧力室群9に属する各圧力室10は、その長い対角線の一端においてノズル8に連通されていると共に、長い対角線の他端においてアパーチャ13を介して副マニホールド流路5aに連通されている。後述するように、アクチュエータユニット21上には、平面形状がほぼ菱形で圧力室10よりも一回り小さい個別電極35(図8及び図9参照)が、圧力室10と対向するようにマトリクス状に配列されている。なお、図4において、図面を分かりやすくするために、流路ユニット4にあって破線で描くべき、ノズル8、圧力室10及びアパーチャ13等を実線で描いている。
圧力室10は、配列方向A及び配列方向Bの2方向に千鳥状配列パターンでマトリクス状に隣接配置されている。圧力室10の短い方の対角線は上述した配列方向Aと平行である。配列方向Bは、配列方向Aと鈍角θをなる圧力室10の一斜辺方向である。そして、圧力室10の両方の鋭角部は、隣接する別の2つの圧力室の間に位置している。
配列方向A及び配列方向Bの2方向にマトリクス状に隣接配置された圧力室10は、配列方向Aに沿って37.5dpiに相当する距離ずつ離隔している。また、圧力室10は、1つのアクチュエータユニット21内において、配列方向Bに16個並べられている。
マトリクス状に配置された多数の圧力室10は、図4に示す配列方向Aに沿って、複数の圧力室列11を形成している。圧力室列11は、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、副マニホールド流路5aとの相対位置に応じて、第1の圧力室列11a、第2の圧力室列11b、第3の圧力室列11c、及び、第4の圧力室列11dに分けられる。これら第1〜第4の圧力室列11a〜11dは、アクチュエータユニット21の上辺から下辺に向けて、11c→11d→11a→11b→11c→11d→…→11bという順番で周期的に4個ずつ配置されている。
第1の圧力室列11aを構成する圧力室10a及び第2の圧力室列11bを構成する圧力室10bにおいては、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、方向Cに関して、ノズル8が図4の紙面下側に偏在している。そして、ノズル8が、それぞれ対応する圧力室10の下端部付近と対向している。一方、第3の圧力室列11cを構成する圧力室10c及び第4の圧力室列11dを構成する圧力室10dにおいては、方向Cに関して、ノズル8が図4の紙面上側に偏在している。そして、ノズル8が、それぞれ対応する圧力室10の上端部付近と対向している。第1及び第4の圧力室列11a、11dにおいては、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、圧力室10a、10dの半分以上の領域が、副マニホールド流路5aと重なっている。第2及び第3の圧力室列11b、11cにおいては、図4の紙面に対して垂直な方向から見て、圧力室10b、10cのほぼ全領域が、副マニホールド流路5aと重なっていない。そのため、いずれの圧力室列11に属する圧力室10についてもこれに連通するノズル8が副マニホールド流路5aと重ならないようにしつつ、副マニホールド流路5aの幅を可能な限り広くして各圧力室10にインクを円滑に供給することが可能となっている。
図4に示すように、ヘッド本体70には、台形である圧力室群9の対となる平行辺のうちの長辺に沿って、圧力室10と同じ形状及び同じ大きさを有する多数の周縁空隙15が長辺の全域に亘って一直線状に配列されている。周縁空隙15は、キャビティプレート22に形成された圧力室10と同じ形状及び同じ大きさを有する孔がアクチュエータユニット21及びベースプレート23によって塞がれることによって画定されている。つまり、周縁空隙15にはインク流路が接続されておらず、しかも周縁空隙15には対向する個別電極35が設けられていない。つまり、周縁空隙15はインクで満たされることがない。
また、ヘッド本体70には、台形である圧力室群9の対となる平行辺のうちの短辺に沿って、多数の周縁空隙16が短辺の全域に亘って一直線状に配列されている。さらに、ヘッド本体70には、台形である圧力室群9の両斜辺に沿って、多数の周縁空隙17が両斜辺の全域に亘って一直線状に配列されている。周縁空隙16、17は、共に平面視正三角形の領域においてキャビティプレート22を貫通している。周縁空隙16、17にはインク流路が接続されておらず、しかも周縁空隙16、17には対向する個別電極35が設けられていない。つまり、周縁空隙15と同様、周縁空隙16、17はインクで満たされることがない。
<アクチュエータユニットの詳細>
次に、アクチュエータユニット21の構成について説明する。アクチュエータユニット21上には、圧力室10と同じパターンで多数の個別電極35がマトリクス状に配置されている。各個別電極35は、平面視において圧力室10と対向する位置に配置されている。
図8は個別電極35の平面図である。図8に示すように、個別電極35は、圧力室10と対向する位置に配置されて平面視において圧力室10内に収容される主電極領域35aと、主電極領域35aにつながっており且つ圧力室10外に対向する位置に配置された補助電極領域35bとから構成されている。
図9は、図8のIX−IX線に沿った断面図である。図9に示すように、アクチュエータユニット21は、それぞれ厚みが15μm程度で同じになるように形成された4枚の圧電シート41、42、43、44を含んでいる。これら圧電シート41〜44は、ヘッド本体70内の1つのインク吐出領域内に形成された多数の圧力室10に跨って配置されるように連続した層状の平板(連続平板層)となっている。圧電シート41〜44が連続平板層として多数の圧力室10に跨って配置されることで、例えばスクリーン印刷技術を用いることにより圧電シート41上に個別電極35を高密度に配置することが可能となっている。そのため、個別電極35に対応する位置に形成される圧力室10をも高密度に配置することが可能となって、高解像度画像の印刷ができるようになる。圧電シート41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。
最上層の圧電シート41上に形成された個別電極35の主電極領域35aは、図8に示すように、圧力室10とほぼ相似である略菱形の平面形状を有している。略菱形の主電極領域35aにおける下方鋭角部は延出されて、圧力室10外に対向する補助電極領域35bにつながっている。補助電極領域35bの先端には、個別電極35と電気的に接続された円形のランド部36が設けられている。図9に示すように、ランド部36は、キャビティプレート22において圧力室10が形成されていない領域に対向している。ランド部36は、例えばガラスフリットを含む金からなり、図8に示すように、補助電極領域35bにおける延出部表面上に接着されている。図9ではFPC50の図示を省略しているものの、ランド部36は、FPC50に設けられた接点と電気的に接合されている。この接合を行う際に、FPC50の接点を、ランド部36に対して押圧する必要がある。ランド部36に対向するキャビティプレート22の領域に、圧力室10が形成されていないため、十分な押圧により確実な接合を行うことができる。
最上層の圧電シート41とその下側の圧電シート42との間には、圧電シート41と同じ外形及び略2μmの厚みを有する共通電極34が介在している。個別電極35及び共通電極34は共に、例えばAg−Pd系などの金属材料からなる。
共通電極34は、図示しない領域において接地されている。これにより、共通電極34は、すべての圧力室10に対応する領域において等しく一定の電位、本実施の形態ではグランド電位に保たれている。また、個別電極35は、各圧力室10に対応するものごとに電位を制御することができるように、各個別電極35ごとに独立した別のリード線を含むFPC50及びランド部36を介してドライバIC80に接続されている。
<アクチュエータユニットの駆動方法>
次に、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21における圧電シート41の分極方向はその厚み方向である。つまり、アクチュエータユニット21は、上側(つまり、圧力室10とは離れた)1枚の圧電シート41を活性部が存在する層とし且つ下側(つまり、圧力室10に近い)3枚の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。従って、個別電極35を正又は負の所定電位とすると、圧電シート41中の電極に挟まれた電界印加部分が活性部(圧力発生部)として働き、例えば電界と分極とが同方向であれば圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。
本実施の形態では、圧電シート41において主電極領域35aと共通電極34とによって挟まれた部分は、電界が印加されると圧電効果によって歪みを発生する活性部として働く。一方、圧電シート41の下方にある3枚の圧電シート42〜44は、外部から電界が印加されることが無く、そのために活性部としてほとんど機能しない。したがって、圧電シート41において主に主電極領域35aと共通電極34とによって挟まれた部分が、圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。
一方、圧電シート42〜44は、電界の影響を受けないため自発的には変位しないので、上層の圧電シート41と下層の圧電シート42〜44との間で、分極方向と垂直な方向への歪みに差を生じることとなり、圧電シート41〜44全体が非活性側に凸となるように変形しようとする(ユニモルフ変形)。このとき、図9に示したように、圧電シート41〜44で構成されたアクチュエータユニット21の下面は圧力室を区画する隔壁(キャビティプレート)22の上面に固定されているので、結果的に圧電シート41〜44は圧力室側へ凸になるように変形する。このため、圧力室10の容積が低下して、インクの圧力が上昇し、ノズル8からインクが吐出される。その後、個別電極35を共通電極34と同じ電位に戻すと、圧電シート41〜44は元の形状になって圧力室10の容積が元の容積に戻るので、インクを副マニホールド流路5a側から吸い込む。
なお、他の駆動方法として、予め個別電極35を共通電極34と異なる電位にしておき、吐出要求があるごとに個別電極35を共通電極34と一旦同じ電位とし、その後所定のタイミングにて再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にすることもできる。この場合は、個別電極35と共通電極34とが同じ電位になるタイミングで、圧電シート41〜44が元の形状に戻ることにより、圧力室10の容積は初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加し、インクが副マニホールド流路5a側から圧力室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にしたタイミングで、圧電シート41〜44が圧力室10側へ凸となるように変形し、圧力室10の容積低下によりインクへの圧力が上昇し、インクが吐出される。
<印字時の動作例>
再び図4に戻って、図4中に示された帯状領域Rは図7中に示すものと同じ帯状領域Rであって、この帯状領域R中では、16列の圧力室列11a〜11dの内の何れの列についても、ノズル8が1つしか存在していない。これにより、各圧力室列11a〜11dが下から順に図7に示す第1のノズル列52a〜第16のノズル列52pと対応していることがわかる。
例えば、600dpiの解像度で配列方向Aに延びる直線を印字する場合について説明する。まず、ノズル8が圧力室10の同じ側の鋭角部に連通している参考例の場合について簡単に説明する。この場合には、用紙が搬送されるのに対応して、図4中一番下に位置する圧力室列中のノズル8からインクの吐出を始め、順次上側に隣接する圧力室列に属するノズル8を選択してインクを吐出する。これにより、インクのドットが配列方向Aに向かって600dpiの間隔で隣接しながら形成されていく。最終的には、全体で600dpiの解像度で配列方向Aに延びる直線が描かれることになる。
一方、本実施の形態では、図4中一番下に位置する圧力室列11b中のノズル8からインクの吐出を始め、用紙が搬送されるのに伴って順次上側に隣接する圧力室に連通するノズル8を選択してインクを吐出していく。このとき、下側から上側に1圧力室列上がるごとのノズル位置の配列方向Aへの変位が同じでないので、用紙が搬送されるのに伴って配列方向Aに沿って順次形成されるインクのドットは、600dpiの間隔で等間隔にはならない。
すなわち、図4に示したように、印字媒体が搬送されるのに対応して、まず図中一番下の圧力室列11bに連通するノズル(1)からインクが吐出され、印字媒体上に37.5dpiに相当する間隔でドット列が形成される。この後、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から2番目の圧力室列11aに連通するノズル(9)の位置に達すると、このノズル(9)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の8倍だけ配列方向Aに変位した位置に2番目のインクドットが形成される。
次に、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から3番目の圧力室列11dに連通するノズル(13)の位置に達すると、ノズル(13)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の12倍だけ配列方向Aに変位した位置に3番目のインクドットが形成される。さらに、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から4番目の圧力室列11cに連通するノズル(15)の位置に達すると、ノズル(15)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドットの位置から600dpiに相当する間隔分の14倍だけ配列方向Aに変位した位置に4番目のインクドットが形成される。さらに、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から5番目の圧力室列11bに連通するノズル(5)の位置に達すると、ノズル(5)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の4倍だけ配列方向Aに変位した位置に5番目のインクドットが形成される。
以下同様にして、順次図中下側から上側に位置する圧力室10に連通するノズル8を選択しながらインクドットが形成されていく。このとき、図4中に示したノズル8の番号をNとすると、(倍率n=N−1)×(600dpiに相当する間隔)に相当する分だけ、始めに形成されたドット位置から配列方向Aに変位した位置にインクドットが形成される。最終的に16個のノズル8を選択し終わったときには、図中一番下の圧力室列11b中のノズル(1)により37.5dpiに相当する間隔で形成されたインクドットの間が600dpiに相当する間隔毎に離れて形成された15個のドットで繋げられ、全体で600dpiの解像度で配列方向Aに延びる直線を描くことが可能になっている。
なお、各ノズル群51の配列方向Aについての両端部(アクチュエータユニット21の斜辺)近傍では、ヘッド本体70の幅方向に対向する別のアクチュエータユニット21に対応するノズル群51の配列方向Aについての両端部近傍と相補関係となることで600dpiの解像度での印刷が可能となっている。これにより、4つのノズル群51から吐出されたインクによって記録される画像が途中で途切れなくなる。
<インクジェットヘッドの製造方法>
次に、上述したインクジェットヘッド1の製造方法について、図10を参照しつつ説明する。図10は、インクジェットヘッド1の製造工程図である。
インクジェットヘッド1を製造するには、流路ユニット4及びアクチュエータユニット21などの部品を別々に作製し、それから各部品を組み付ける。まず、ステップ1(S1)では、流路ユニット4を作製する。流路ユニット4を作製するには、これを構成する各プレート22〜30のうち、ノズルプレート30を除く各プレート22〜29に、パターニングされたフォトレジストをマスクとしたエッチングを施して、図5に示すような孔を各プレート22〜29に形成する。そして、後述するようにパンチ91で複数のノズル8及びダミー孔18とを形成した後、各圧力室10が各ノズル8に通じる個別インク流路7が形成されるように位置合わせされた9枚のプレート22〜30を、エポキシ系の熱硬化性接着剤を介して重ね合わせる。そして、9枚のプレート22〜30を熱硬化性接着剤の硬化温度以上の温度に加圧しつつ加熱する。これによって、熱硬化性接着剤が硬化して9枚のプレート22〜30が互いに固着され、図5に示すような流路ユニット4が得られる。
一方、アクチュエータユニット21を作製するには、まず、ステップ2(S2)において、圧電セラミックスのグリーンシートを複数用意する。グリーンシートは、予め焼成による収縮量を見込んで形成される。そのうちの一部のグリーンシート上に、導電性ペーストを共通電極34のパターンにスクリーン印刷する。そして、治具を用いてグリーンシート同士を位置合わせしつつ、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートの下に、共通電極34のパターンで導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを重ね合わせ、さらにその下に、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを2枚重ね合わせる。
そして、ステップ3(S3)において、ステップ2で得られた積層体を公知のセラミックスと同様に脱脂し、さらに所定の温度で焼成する。これにより、4枚のグリーンシートが圧電シート41〜44となり、導電性ペーストが共通電極34となる。その後、最上層にある圧電シート41上に、導電性ペーストを個別電極35のパターンにスクリーン印刷する。そして、積層体を加熱処理することによって導電性ペーストを焼成して、圧電シート41上に個別電極35を形成する。しかる後、ガラスフリットを含む金を個別電極35上に印刷して、ランド部36を形成する。このようにして、図9に描かれたようなアクチュエータユニット21を作製することができる。
変形例として、個別電極35及びランド部36が形成されていないアクチュエータユニット(本明細書において、このようなものを便宜上アクチュエータユニットということがある)と流路ユニット4との加熱接着後に、アクチュエータユニット上に導電性ペーストを個別電極35のパターンにスクリーン印刷し、さらに加熱処理を行ってもよい。また、導電性ペーストを個別電極35のパターンにスクリーン印刷したグリーンシートを用意し、その下に、共通電極34のパターンで導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを重ね合わせ、さらにその下に、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを2枚重ね合わせた積層体に加熱処理を施してもよい。
なお、ステップ1の流路ユニット作製工程と、ステップ2〜3のアクチュエータユニット作製工程は、独立に行われるものであるため、いずれを先に行ってもよいし、並行して行ってもよい。
次に、ステップ4(S4)において、ステップ1で得られた流路ユニット4の圧力室に相当する凹部が多数形成された面に、熱硬化温度が80℃程度であるエポキシ系の熱硬化性接着剤を、バーコーターを用いて塗布する。熱硬化性接着剤としては、例えば二液混合タイプのものが用いられる。
続いて、ステップ5において、流路ユニット4に塗布された熱硬化性接着剤層状に、アクチュエータユニット21を載置する。このとき、各アクチュエータユニット21は、活性部と圧力室10とが対向するように流路ユニット4に対して位置決めされる。この位置決めは、予め作製工程(ステップ1〜ステップ3)において流路ユニット4及びアクチュエータユニット21に形成された位置決めマーク(図示せず)に基づいて行われる。
次に、ステップ6(S6)において、流路ユニット4と、流路ユニット4とアクチュエータユニット21との間の熱硬化性接着剤と、アクチュエータユニット21との積層体を図示しない加熱・加圧装置で熱硬化性接着剤の硬化温度以上に加熱しながら加圧する。そして、ステップ7(S7)において、加熱・加圧装置から取り出された積層体を自然冷却する。こうして、流路ユニット4とアクチュエータユニット21とで構成されたヘッド本体70が製造される。
しかる後、FPC50の接着工程を行った後、ベースブロック71の接着工程などを経ることによって、上述したインクジェットヘッド1が完成する。
<ノズルプレートの製造方法>
続いて、上述した流路ユニット4の一部を構成するノズルプレート30の製造方法の詳細について以下に説明する。図11は、本発明の第1実施形態による製造方法で使用される金型の一部の平面図である。図12は、本発明の第1実施形態による製造方法で使用されるプレス加工装置の概略構成図である。図13は、本発明の第1実施形態によるインクジェットヘッドのノズルプレート30に形成されるノズルの形成工程を示した説明図であり、図7中に描かれた領域Tの拡大図である。
図11に示すように金型90は、ヘッド本体70aのインク吐出面70aと同様な矩形平面形状を有する本体90aと本体90aから突出し先端が尖った複数のパンチ91(図12参照)を有している。金型90は、複数のパンチ91が金型90の長手方向であって配列方向Aに沿って等間隔に配列されたパンチ列92を有している。パンチ列92は、金型90の短手方向であって方向Cにおいて互いに平行となるように金型90に8列形成されている。そして、8列のパンチ列92によってパンチ群93が構成されている。パンチ群93は、アクチュエータユニット21に対応する台形領域94の内側に形成されており、パンチ列92が台形領域94の長辺側から短辺側に近づくにつれて各パンチ列92を構成するパンチ91のうちの両端パンチ位置が各パンチ列92において中心に近づくように配列されている。なお、金型90は、配列方向Aに沿って千鳥状に配列された4つのパンチ群93を有するとともに、それぞれのパンチ群93の台形領域94が4つのノズル群51の台形領域と同じ向きで対向するように形成されている。
図11には、図7に示された各ノズル列組53の外形線が示されており、これらの外形線の枠内の各々には、パンチ列92が1列設けられている。パンチ列92は、ノズル列組53の2つのノズル列52のうち、図7中上側のノズル列52を構成する複数のノズル8とそのノズル列52と連続した位置に形成されたダミー孔18とに対応する位置に配置されている。これにより、複数のパンチ91は、配列方向Aについて各ノズル列52を構成するノズルピッチと同じ間隔を有して等間隔に配置されていることになる。すなわち、複数のパンチ91は、パンチ列92において37.5dpiの間隔を有して配列方向Aに沿って配列されている。本実施の形態においては、図11中左側のパンチ群93の8列のパンチ列92は、図7に示すノズル列組53を構成するノズル列52のうち、ノズル群51の短辺側に近い側のノズル列52と対応する位置にそれぞれ配置されている。また、図11中右側のパンチ群93の8列のパンチ列92は、ノズル列組53を構成するノズル列52のうち、ノズル群51の長辺側に近いノズル列52と対応する位置にそれぞれ配置されている。このように、パンチ群93を構成する8列のパンチ列92は、ノズル列組53を構成する2つのノズル列52のうちの所定の1つのノズル列52に対応する位置に配置され、複数のノズル8及びダミー孔18に対応しているので、金型90に形成されるパンチ数が、ノズル数の約1/2となり金型90の製造コストが減少する。
図12に示すようにプレス加工装置101は、金型90が固定される上部治具105aと、ノズル8が形成されることでノズルプレート30となる基板99を水平に支持する支持部106を有するXYテーブル107と、上部治具105aと対向する位置に配置されるとともに金型90のパンチ群93と対向する位置に貫通孔103aが形成された金型103と、金型103が固定される下部治具105bと、下部治具105bを下方から支持する本体101aとを含んで構成されている。
本体101aの内部には、XYテーブル107とXYテーブル107を移動させる移動装置108が配置されている。XYテーブル107は、移動装置108によって金型90のパンチ列92の列方向であって配列方向Aと平行な方向をX方向として、金型90のパンチ列92の列方向と直交する方向であって方向Cと平行な方向をY方向として、2方向に移動可能となっている。金型103の貫通孔103aはパンチ91によって形成されるノズル8の開口面積より若干大きな開口面積を有している。そのため、パンチ91で基板99にノズル8となる貫通しない仮孔をプレス加工で形成した際に、パンチ91によって基板99の下面側から下方に向かって突出した突出部を貫通孔103aに内在させることが可能になり、パンチ91の先端に大きな負荷がかからないようになる。したがって、金型90のパンチ91が破損しにくくなる。
次に、ノズルプレート30となる基板99にノズル8を形成する工程について、図13に基づいて説明する。図13は、図7に示された4つのノズル列52l,52n,52o,52pの一部を取り囲んだ領域Tを拡大して示したものである。金型90のパンチ群93のパンチ列92がXYテーブル107のX方向に平行になるように金型90をプレス加工装置101の上部治具105aに固定し、基板99をXYテーブル107の支持部106及び金型103の上面で水平に支持されるように配置させる。そして、金型90の上部治具105aを図示しないシリンダで下方に移動させ、領域Tの各ノズル列組53g,53hの2つのノズル列52のうち、上側のノズル列52に対応する複数のノズル8となる貫通しない仮孔群(第1のノズル孔群)121を基板99の所定位置に形成し、金型90を上昇させる。こうして、図7に示すノズル列組53の2つのノズル列52のうち、ノズル群51の短辺側に近いノズル列52(各ノズル列組53においては図7中上側のノズル列52)となる仮孔列が形成されるとともに、この仮孔列の一端部に位置する1つの仮孔が後のダミー孔18となる。なお、図13においては、2つのノズル列組53g,53hに属するノズル8となる第1のノズル孔群121や後述の第2のノズル孔群122しか描かれていないが、その他の6つのノズル列組53に属するノズル8となる第1のノズル孔群121及び第2のノズル孔群122も同じように形成される。
次に、XYテーブル107をX方向に移動させ、金型90に対して基板99をP1(第2の所定距離)分の距離だけ配列方向Aに平行な方向141aに相対移動させつつ、XYテーブル107をY方向に移動させ、金型90に対して基板99をP2(第1の所定距離)分の距離だけ方向Cに平行な方向141bに相対移動させる。つまり、XYテーブル107をX方向に移動させつつY方向に移動させ、金型90に対して基板99を配列方向Aと方向Cとの合成方向であって図13中左斜め下方向(第1の方向)141に相対移動させる。そして、金型90を同様に下降させ、図13に示すように基板99に貫通しない仮孔群(第2のノズル孔群)122を形成し、金型90を上昇させる。こうして、図7に示すノズル列組53の2つのノズル列52のうち、ノズル群51の長辺側に近いノズル列52(各ノズル列組53における図7中下側のノズル列52)となる仮孔列が形成される。
次に、プレス加工装置101から基板99を取り外し、複数の仮孔群(第1及び第2のノズル孔群)121,122が基板99に金型90のパンチ群93によって形成されたときに形成された基板99の下面(インク吐出面70aとなる面)から突出した突出部を研磨する。このとき、基板99の下面の一部も突出部と同様に研磨除去して下面を平坦な面に仕上げる。こうして、金型90のパンチ群93によって基板99に形成された仮孔群121,122が貫通しノズル群51及びダミー孔18となる。そして、基板99が矩形平面形状を有するように打ち抜かれてノズルプレート30が製造される。
以上のような本実施の形態におけるインクジェットヘッド1のノズルプレート30の製造方法によると、金型コストを抑えつつ比較的少ない工数で基板99に対してノズル8となる仮孔群121,122を形成することが可能になり、複数のノズル8を有するノズルプレート30を製造することができる。つまり、1つのパンチしか有していない金型でノズルが2次元状に複数形成されたノズルプレートを製造する場合は、そのノズル数分だけ繰り返しプレス加工する必要があるため製造工程数が増加し、ノズルと同数のパンチを有する金型でノズルプレートを製造する場合は金型コストが増加する。しかし、本発明においては、前者に比べて製造工程数が減少し、後者に比べて金型コストが低減するので、コストバランスの優れた製造方法を実現することができる。
なお、本実施形態の製造方法で製造されたノズルプレート30を用いたインクジェットヘッド1は、上述したようにマルチラインヘッドと称されるものであるが、本実施形態の製造方法は、マルチラインヘッドのノズルプレートのいずれに対しても適用できるものではなく、ノズルプレート30に形成されるノズル8の配列パターンとして、16本のノズル列52が、所定の相対位置関係にある2つのノズル列52の組である8つのノズル列組53a〜53hに分けられるような構成を採用したことにより、本実施形態の製造方法の適用が可能となっている。
上述したように、本実施の形態のノズルプレート30は、16本のノズル列52に属する全てのノズル8に関して、それら各々のノズル列方向(配列方向A)における位置を互いに異ならせたマルチラインヘッド特有の構成を有しているが、それに加えて、ノズル列組53a〜53hに属する2つのノズル列52の相対位置関係は、いずれも、ノズル列方向(配列方向A)に直交する方向における相対距離(第1の所定距離)が3Yで、ノズル列方向(配列方向A)におけるノズル8の偏倚距離(第2の所定距離)が75dpiであり、8つのノズル列組53a〜53hに属する2つのノズル列52の相対位置関係はすべて等しくなるように構成されている。
また、金型90は、ノズル列52のノズルピッチと等間隔でパンチ91が配列されたパンチ列92を8列有し、これらのパンチ列92の各々は、ノズル列組53を構成する2つのノズル列52のうちの所定の1つのノズル列52に対応する位置に配置されている。これにより、1つのパンチ列92に属する複数のパンチ91に1つのノズル列組53に属する全てのノズル8の形成を行わせるべく、上述した製造方法の工程を実行することで、図6及び図7に示すノズルプレート30を形成することができる。ちなみに、図7に示された16本のノズル列52a〜52pが、図示された順番に方向Cにおいて等間隔で配列されているノズルプレートは、マルチラインヘッドとして高解像度の印字が可能なものではあるが、8つのノズル列組53a〜53hに該当する構成を有していないため、本発明の実施形態の製造方法によって製造することはできない。
また、上述のノズルプレート30の製造方法によって製造されたノズルプレート30には、図7に示すように隣接するノズル群51間であって、ノズル群51の台形領域から外れた領域61に複数のダミー孔(ダミーノズル)18が形成されている。これらダミー孔18が生じる上記の製造方法でノズルプレート30を製造しても、複数のノズル8が2次元配列されて構成されたノズル群51を有する解像度が高いヘッドのノズルプレート30となる。
[第2実施形態]<ノズルプレートの詳細>
続いて、本発明の第2実施形態による製造方法で製造されたインクジェットヘッドのノズルプレートについて以下に説明する。図14は、本発明の第2実施形態による製造方法で製造されたインクジェットヘッドのノズルプレートの平面図である。なお、前述と同様なものについては同符号で示し説明を省略する。
図14に示すように本実施の形態におけるノズルプレート230は、第1実施形態のノズルプレート30のノズル群51と同様な構成を有するノズル群251を有しているが、隣接するノズル群251同士の間に形成されたダミー孔218が前述したダミー孔18よりも多く設けられているので、隣接するノズル群251同士の距離が若干広くなっている。また、ノズル群251は、16列のノズル列252のうち、4つのノズル列252を1つの組として4つのノズル列組253に分けられている。これら4つのノズル列組253は、第1のノズル列252aと第2のノズル列252bと第3のノズル列252cと第5のノズル列252eとで1つの組となったノズル列組253aと、第4のノズル列252dと第6のノズル列252fと第7のノズル列252gと第9のノズル列252iとで1つの組となったノズル組253bと、第8のノズル列252hと第10のノズル列252jと第11のノズル列252kと第13のノズル列252mとで1つの組となったノズル組253cと、第12にノズル列252lと第14のノズル列252nと第15のノズル列252oと第16のノズル列252pとで1つの組となったノズル列組253dとで構成されている。なお、各ノズル列252a〜252pは、前述した第1実施形態のノズル列52a〜52pと同一の構成であり、それらの列間隔も第1実施形態と同一である。
2つの隣接したノズル群251の間には、前述した領域61よりも平面積が大きい領域261がノズル群251の一斜辺に沿ってそれぞれ存在している。各領域261内には、ノズル群251の一斜辺方向に沿って互いに離隔された4つの領域262a〜262dが存在している。これら領域262内には、前述したダミー孔18と同様なダミー孔218(図14中黒丸で示す孔)が形成されている。これらダミー孔218は、各ノズル列組253の4つのノズル列252のうち、図14中最も下側に位置するノズル列252以外の3つのノズル列252を構成する複数のノズル8と配列方向Aについて連続するように1つ以上形成されているとともに、各ノズル列組253a〜253dにそれぞれ隣接する領域262a〜262d内に6つずつダミー孔218が形成されている。したがって、1つのノズル群251に係わる複数のダミー孔218は、合計24個形成されている。
なお、本実施の形態において、複数のダミー孔218のうち、図14中左側のノズル群251(全体が図示されている方のノズル群251)を構成するノズル列252のノズル8と連続する24個のダミー孔218は、図14中左側のノズル群251の左側斜辺と長辺とを2辺とした平行四辺形領域からノズル群251の台形領域を除くことで形成される三角形領域(図示せず)内に形成されているとともに、図7中右側のノズル群251(全体が図示されていない方のノズル群251)を構成するノズル列252のノズル8と連続する24個のダミー孔218は、図7中右側のノズル群251の右側斜辺と長辺とを2辺とした平行四辺形領域からノズル群251の台形領域を除くことで形成される三角形領域(図示せず)内に形成されている。このように1つのノズル群251に係わる24個のダミー孔218が、各ノズル群251に係わる三角形領域内に形成されていることで、2つの領域261も、その三角形領域内に形成され、且つ領域261の面積が三角形領域より小さくなっている。
また、図14中右側のノズル群251の一斜辺近傍に形成されるダミー孔218は、図14中右側のノズル群251が左側のノズル群251と反対方向を向くように配置されているので、図14中左側のノズル群251の斜辺近傍に形成された複数のダミー孔218が左右逆に形成された状態と同じ状態に形成される。このように1つのノズル群251の斜辺近傍に前述のダミー孔18より多い数で複数のダミー孔218が形成されていることで、図14に示すように隣接するノズル群251の間隔が前述した隣接するノズル群51の間隔より若干大きな間隔となっている。しかしながら、図14に示すように隣接するノズル群251の2つの領域261同士は、方向Cについてオーバーラップしつつその一部が重なっているので、前述の隣接するノズル群51同士ほど近づけられないにしても、ある程度隣接するノズル群251の斜辺同士を近づけることが可能となる。なぜなら、ダミー孔218はインクの吐出には寄与しないためダミー孔218同士が重複して形成されることが許されるからである。以上の構成により、前述と同様に、隣接するノズル群251同士をノズルプレート230の長手方向(配列方向A)において近づけつつ、ノズルプレート230の短手方向(方向C)において近づけることが可能になり、ノズルプレート230の長手方向及び短手方向の長さを小さくすることが可能になる。加えて、流路ユニットに接着される4つのアクチュエータユニットも隣接するアクチュエータユニットの斜辺同士を近づけて配置することが可能になるので、流路ユニット全体の平面領域を小さくすることが可能になり、インクジェットヘッドの小型化を図ることができる。
<ノズルプレートの製造方法>
次に、本実施の形態におけるノズルプレート230の製造方法について、以下に説明する。図15は、本発明の第2実施形態による製造方法で使用される金型の一部の平面図である。図16は、本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッドのノズルプレート230に形成されるノズルの形成工程を示した説明図であり、図14中に描かれた領域Uの拡大図である。
図15に示すように金型290は、前述した金型90のパンチ群93を構成するパンチ数よりも少ないパンチ数で構成されたパンチ群293を有している。つまり、金型290は、前述したパンチ群93のパンチ配列が異なったパンチ群293を有しているだけでその他は同じ構成となっている。金型290は、複数のパンチ291が金型290の長手方向であって配列方向Aに沿って等間隔に配列されたパンチ列292を有している。パンチ列292は、金型290の短手方向であって方向Cにおいて互いに平行となるように金型290に4列形成されており、それら4列のパンチ列292によってパンチ群293が構成されている。パンチ群293は、アクチュエータユニット21に対応する台形領域294の内側に形成されており、パンチ列292が台形領域294の長辺側から短辺側に近づくにつれて各パンチ列292を構成するパンチ291のうちの両端パンチ位置が各パンチ列292において中心に近づくように配列されている。なお、金型290は、配列方向Aに沿って千鳥状に配列された4つのパンチ群93を有するとともに、それぞれのパンチ群93の台形領域94が4つのノズル群51の台形領域と同じ向きで対向するように形成されている。
図15には、図14に示された各ノズル列組253の外形線が示されており、これらの外形線の枠内の各々には、パンチ列292が1列設けられている。ノズル列組253の4つのノズル列252のうち、図14中最も上側のノズル列252を構成する複数のノズル8とそのノズル列252と連続した位置に形成されたダミー孔218とに対応する位置に配置されている。これにより、複数のパンチ291は、配列方向Aについて各ノズル列252を構成するノズルピッチと同じ間隔を有して等間隔に配置されていることになる。すなわち、複数のパンチ291は、パンチ列292において37.5dpiの間隔を有して配列方向Aに沿って配列されている。本実施の形態においては、図15中左側のパンチ群293の4列のパンチ列292は、図14に示すノズル列組253を構成するノズル列252のうち、ノズル群251の短辺側に近い側のノズル列252と対応する位置にそれぞれ配置されている。また、図14中右側のパンチ群293の4列のパンチ列292は、ノズル列組253を構成するノズル列252のうち、ノズル群251の長辺側に近いノズル列252と対応する位置にそれぞれ配置されている。このように、パンチ群293を構成する4列のパンチ列292は、ノズル列組253を構成する4つのノズル列252のうち、1つのノズル列252に対応する位置に配置されて複数のノズル8及びダミー孔218に対応しているので、金型290に形成されるパンチ数が、ノズル数の約1/4となり金型290の製造コストが減少する。
次に、ノズルプレート230となる基板99にノズル8を形成する工程について、図16に基づいて説明する。図16は、図14に示された4つのノズル列252l,252n,252o,252pの一部を取り囲む領域Uを拡大して示したものである。金型290のパンチ群293のパンチ列292がXYテーブル107のX方向に平行になるように金型290をプレス加工装置101の上部治具105aに固定し、基板99をXYテーブル107の支持部106及び金型103の上面で水平に支持されるように配置させる。そして、金型290の上部治具105aを図示しないシリンダで下方に移動させ、領域Uのノズル列組253dの4つのノズル列252のうち、上側のノズル列252pに対応する複数のノズル8となる貫通しない仮孔群(第1のノズル孔群)221を基板99の所定位置に形成し、金型290を上昇させる。こうして、図14に示すノズル列組253の4つのノズル列252のうち、ノズル群251の短辺側に最も近いノズル列252p(各ノズル列組253においては図14中最も上側のノズル列252)となる仮孔列が形成されるとともに、この仮孔列の一端部に位置する3つの仮孔が後のダミー孔218となる。なお、図16においては、ノズル列組253dに属するノズル8となる第1のノズル孔群221や後述の第2〜第4のノズル孔群222〜224しか描かれていないが、その他の3つのノズル列組253に属するノズル8となる第1〜第4のノズル孔群221〜224も同じように形成される。
次に、XYテーブル107をX方向に移動させ、金型290に対して基板99をP1分の距離(第2の所定距離)だけ配列方向Aに平行な方向に141aに相対移動させつつ、XYテーブル107をY方向に移動させ、金型290に対して基板99をP2分の距離(第1の所定距離)だけ方向Cに平行な方向141bに相対移動させる。つまり、XYテーブル107をX方向に移動させつつY方向に移動させ、金型290に対して基板99を配列方向Aと方向Cとの合成方向であって図16中左斜め下方向(第1の方向)141に相対移動させる。そして、金型290を同様に下降させ、図16に示すように基板99に貫通しない仮孔群(第2のノズル孔群)222を形成し、金型290を上昇させる。こうして、図14に示すノズル列組253の4つのノズル列252のうち、ノズル群251の短辺側に2番目に近いノズル列252o(各ノズル列組253においては図14中上から2番目のノズル列252)となる仮孔列が形成されるとともに、この仮孔列の一端部に位置する2つの仮孔が後のダミー孔218となる。
次に、XYテーブル107をX方向に移動させ、金型290に対して基板99をP3分の距離だけ配列方向Aに平行な方向に142aに相対移動させつつ、XYテーブル107をY方向に移動させ、金型290に対して基板99をP4分の距離だけ方向Cに平行な方向142bに相対移動させる。つまり、XYテーブル107をX方向に移動させつつY方向に移動させ、金型290に対して基板99を配列方向Aと方向Cとの合成方向であって図16中左斜め下方向(第2の方向)142に相対移動させる。そして、金型290を同様に下降させ、図16に示すように基板99に貫通しない仮孔群(第3のノズル孔群)223を形成し、金型290を上昇させる。こうして、図14に示すノズル列組253の4つのノズル列252のうち、ノズル群251の長辺側に2番目に近いノズル列252n(各ノズル列組253においては図14中下から2番目のノズル列252)となる仮孔列が形成されるとともに、この仮孔列の一端部に位置する1つの仮孔が後のダミー孔218となる。なお、図7に示された帯状領域Rで考えたときに、ノズル(6)とノズル(10)との配列方向Aについての距離が、P3の距離に該当する。つまり、P3の距離は、ノズル(6)とノズル(10)との間にノズル(7)〜ノズル(9)が存在するだけの距離であって、600dpiに相当する間隔分の4倍となる。また、P4の距離は図14より7Yの距離となる。これより、第1の方向141を決めるP1とP2との比と、第2の方向142を決めるP3とP4との比とがあきらかに異なるので、第1の方向141と第2の方向142は異なる方向であって平行となっていない。すなわち、第2の方向142は第1の方向141及び配列方向Aと交差する方向となっている。
次に、XYテーブル107をX方向に移動させ、金型290に対して基板99をP1分の距離(第2の所定距離)だけ配列方向Aに平行な方向に141aに相対移動させつつ、XYテーブル107をY方向に移動させ、金型290に対して基板99をP2分の距離(第1の所定距離)だけ方向Cに平行な方向141bに相対移動させる。つまり、XYテーブル107をX方向に移動させつつY方向に移動させ、金型290に対して基板99を配列方向Aと方向Cとの合成方向であって図16中左斜め下方向(第1の方向)141に相対移動させる。そして、金型290を同様に下降させ、図16に示すように基板99に貫通しない仮孔群(第4のノズル孔群)224を形成し、金型290を上昇させる。こうして、図14に示すノズル列組253の4つのノズル列252のうち、ノズル群251の短辺側に最も近いノズル列252l(各ノズル列組253においては図14中下側のノズル列252)となる仮孔列が形成される。
次に、プレス加工装置101から基板99を取り外し、複数の仮孔群(第1〜第4のノズル孔群)221〜224が基板99に金型290のパンチ群293によって形成されたときに形成された基板99の下面(インク吐出面70aとなる面)から突出した突出部を研磨する。このとき、基板99の下面の一部も突出部と同様に研磨除去して下面を平坦な面に仕上げる。こうして、金型290のパンチ群293によって基板99に形成された仮孔群221〜224が貫通しノズル群251及びダミー孔18となる。そして、基板99が矩形平面形状を有するように打ち抜かれて台形領域を有するノズル群251が4つ形成されたノズルプレート230が製造される。
以上のような本実施の形態におけるインクジェットヘッドのノズルプレート230の製造方法においても第1実施形態による製造方法と同様な効果を得ることができる。つまり、金型290に形成された複数のパンチ291によって構成されたパンチ群293によって金型コストを抑えつつ、比較的少ない工数で基板99に対してノズル8となる仮孔群221〜224を形成することが可能になり、複数のノズル8を有するノズルプレート230を製造することができる。また、本実施の形態においては、第1実施形態より約2倍の工程数の増加が見られるが、金型290のパンチ数が金型90のパンチ数の約1/2になっているので、金型費が減少する。つまり、第2実施形態のノズルプレートの製造方法によると、第1実施形態のノズルプレートの製造方法に比べてノズルプレートを製造する時間が長くなるが、金型費は安くなる。そのため、金型コストの低減をより優先させたい場合は、第2実施形態による製造方法を行うことが望ましい。
また、上述のノズルプレート230の製造方法によって製造されたノズルプレート230には、図14に示すように隣接するノズル群251間であって、ノズル群251の台形領域から外れた領域261に複数のダミー孔(ダミーノズル)218が形成されている。
これらダミー孔218が生じる上記の製造方法でノズルプレート230を製造しても、複数のノズル8が2次元配列されて構成されたノズル群251を有する解像度が高いヘッドのノズルプレート230となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述した第1〜第2の実施形態における製造方法において、第1の方向がノズル列に平行な方向と交差しておればどの方向であってもよい。第2の方向もノズル列に平行な方向及び第1の方向と交差しておればどの方向であってもよい。また、ノズルプレート30,230のノズル群51,251は、2又は4列のノズル列52、252によって構成されたノズル列組53,253を有しているが、ノズル群が少なくとも3又は5列以上のノズル列によって構成された複数のノズル列組を有していてもよい。これらノズル列組の3又は5列以上のノズル列のうち、1つのノズル列に対応するパンチ列を複数有した金型を使用し、上述したノズルプレートの製造方法と同様な手順で複数のノズルを形成することで、上述の3又は5列以上のノズル列によって構成されたノズル列組を有するノズル群を形成することが可能となる。