JP4281333B2 - アフタヘム摩擦攪拌接合方法及びその接合装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アウターパネルの周辺部をインナーパネル側に折り曲げて縁取り加工するいわゆるヘミング成形の後、そのアウターパネルとインナーパネルとが一体になったサブアッシィーのヘミング部を摩擦攪拌接合によって接合させるためのアフタヘム摩擦攪拌接合方法及びその接合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車のドアパネルやエンジンフードパネル等のボディ部品は、プレス加工したアウターパネルとインナーパネルとが重ね合わされ、箱型をした閉断面を構成することによって薄い板でも強度・剛性を確保した構造をしている。こうしたボディ部品は、アウターパネルとインナーパネルとがヘミング成形によって結合され、閉断面構造をもった部品として構成される。なお、アウターパネルとインナーパネルとが一体化したものを、以下、サブアッシィーという。
【0003】
ここで図8は、アウターパネルとインナーパネルとを一体化するヘミング装置を示した図である。このヘミング装置は、基台101の上に被加工物を載せるヘミング型102と、成形用ローラ103を備えたヘミング工具104を装着したロボット105とが配置されている。ロボット105は、アーム先端のヘミング工具104を操作してヘミング型102上のワークに対してロールヘミング成形を行うよう構成されたものである。
【0004】
ロールヘミング成形は、先ずアウターパネル51がヘミング型102の上に載せられ、その上にインナーパネル52が重ねられる。このときアウターパネル51は、その外周フランジ53が起立しており、インナーパネル52は、その外周縁54がアウターパネル51の外周フランジ53の内側に位置するように配置される。そして、ヘミング工具104の成形用ローラ103が図示するようにアウターパネル51の外周フランジ53に押し当てられ、転がりながらその外周フランジ53を内側に折り曲げていき、インナーパネル52の外周縁54を挟み込んでかしめ、アウターパネル51とインナーパネル52とが一体化される。
【0005】
こうしてアウターパネル51とインナーパネル52とが一体化したサブアッシィ50は、ボディに取り付けられて塗装工程へと送られるが、その際、インナーパネル52とアウターパネル51とがずれ動くことを防止する必要がある。そのため、ヘミング成形後に、外周フランジ53と外周縁54とが重なったヘミング部を特開2001−314982号公報に記載されているスポット接合によって接合したり、ヘミング成形に際して、特開平10−258331号公報に記載されている熱硬化性接着材を用いて接着させる方法が採られている。
【0006】
先ず、接合方法には抵抗スポット溶接法があるが、それでは接合部に圧痕が残って自動車外板の外観を損なうなどの問題がある。そのため、特開2001−314982号公報には、そうした問題を解決する方法として摩擦攪拌接合が提案されている。図9は、その摩擦攪拌接合を利用したスポット接合方法について、2枚のアルミニウム合金板であるパネル61,62を接合する例を示した図である。
【0007】
摩擦攪拌接合は、重ねたパネル61,62の接合部が受け部材111の受け面112上に配置され、そこに高速回転させた接合ツール113を押圧させる。接合ツール113のピン114が上のパネル61に達すると、摩擦によってパネル61が加熱されて軟化し、徐々にピン114が挿入される。続いてショルダー部115の下面がパネル61に接触することによって接合点116近傍がさらに加熱され、塑性流動が生じる。ピン114の先端がパネル61を貫いて下のパネル62の裏面手前まで挿入されると、接合点116近傍では、回転する接合ツール113によって攪拌されて塑性流動域117が形成され、パネル61,62が接合される。
【0008】
次に、図10に示す特開平10−258331号公報に記載の熱硬化性接着材による方法では、アウターパネル51の外周フランジ53でインナーパネル52の外周縁54を挟み込んだヘミング部55に、球状体(粒体)71が添加された熱硬化性接着材70が塗布され、ヘミングによる加工圧によって熱硬化性接着材70中の球状体71がヘミング部55に食い込み、アウターパネル51とインナーパネル52とが接合する。その後、塗装工程における乾燥を経て熱硬化性接着材が硬化し、ヘミング部55が固められる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−314982号公報(4頁、図3)
【特許文献2】
特開平10−258331号公報(図1、図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記特許文献1で提案されている摩擦攪拌接合の場合には、ヘミング成形後、スポット接合工程へ搬送する間にアウターパネル51とインナーパネル52とがずれてしまい、車体に組み付けるサブアッシィとしての精度が落ちてしまう問題があった。そのため、前記特許文献1に摩擦攪拌接合について記載はあるものの、ヘミング部の接合方法としての採用は困難であり、実際には前記特許文献2に記載された接着材による方法が採られている。
【0011】
仮に、摩擦攪拌接合方法を採用した場合でも、従来のスポット接合装置では図9に示すようにスポット的に受け部材111を当てて行うため、その受け面112と接合部の面とが揃っていない場合(例えば、図9に示す接合ツール113の軸線Lとパネル61,62が直交していない場合)には、接合時にかかる押圧力によってサブアッシィ50に歪みが生じてしまうという問題があった。更に、スポット接合装置を用いた接合工程を別工程として設けなければならず、搬送による加工効率低下や設備費によるコストアップを招くなどの問題もあった。
【0012】
一方、接着材を使用した方法でも、スポット接合に比べてヘミング部55の接合強度が弱いため、搬送の途中にアウターパネル51とインナーパネル52にずれが生じてしまい、車体に組み付けるサブアッシーとしての精度が落ちてしまう問題が生じていた。また、接着材にかかるコストの問題もあった。
【0013】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、サブアッシィとしての精度を落とすことなく、低コストでヘミング部の接合を行うためのアフタヘム摩擦攪拌接合方法及びその接合装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合方法は、ヘミング型の上に載置させたアウターパネルにインナーパネルを重ねて配置し、アウターパネルの周辺部をヘミング成形してアウターパネルとインナーパネルとを一体にしてサブアッシィーとした後、当該サブアッシィーをヘミング型の上に載置させたまま、次に接合ツールを回転状態で押圧することによって、ヘミング部を摩擦攪拌により接合することを特徴とする。
【0015】
本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合方法によれば、同一のヘミング型上でヘミング成形と摩擦攪拌接合を行うため、インナーパネルとアウターパネルとにずれを生じさせることがなく、車体に組み付けるサブアッシーとしての精度を確保できる。なお、ヘミング成形には、ローラによるロールヘミングの他、曲げ型を使用したヘミングなどを含む。
また、摩擦攪拌接合時にはヘミング型は受け部材となるため、接合ツールをヘミング型に対して直交方向に作用させればサブアッシィーに歪みが生じることもない。更に、ヘミング工程と摩擦攪拌接合工程とを一箇所に集約したことや、接着材を使用しないことによってコストを抑えることができる。
【0016】
本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合方法は、ヘミング型の上に載置させたアウターパネルにインナーパネルを重ねて配置し、アウターパネルの周辺部をロボットに装着したヘミング工具でロールヘミング成形してアウターパネルとインナーパネルとを一体にしてサブアッシィーとした後、当該サブアッシィーをヘミング型の上に載置させたまま、次にロボットに装着した接合ツールを回転状態で押圧することによって、ヘミング部を摩擦攪拌により接合することを特徴とする。
また、本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合方法は、前記ロールヘミング成形と摩擦攪拌接合とが、別のロボットに持たせたヘミング工具と接合ツールにより行うものであることが望ましい。
また、本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合方法は、前記ロールヘミング成形後、前記ロボットに装着のヘミング工具に換えて接合ツールを装着することにより行うものであることが望ましい。
【0017】
本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合方法によれば、ヘミング型に設けられたロボットにヘミング工具や接合ツールを装着することによって、ヘミング型上でロールヘミング成形と摩擦攪拌接合を行うため、インナーパネルとアウターパネルとにずれを生じさせることがなく、車体に組み付けるサブアッシーとしての精度を確保できる。また、摩擦攪拌接合時にはヘミング型は受け部材となるため、接合ツールをヘミング型に対して直交方向に作用させればサブアッシィーに歪みが生じることもない。更に、ヘミング工程と摩擦攪拌接合工程とを一箇所に集約したことや、接着材を使用しないことによってコストを抑えることができる。
【0018】
本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合装置は、アウターパネルにインナーパネルを重ね、そのアウターパネルの周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形し、その後の接合ツールによって当該ヘミング部を摩擦攪拌により接合するものであって、前記アウターパネルを載置するヘミング型と、前記ヘミング工具及び接合ツールを装着可能な着脱部を有し、前記ヘミング型の上に載置されたアウターパネルについて、その周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形してアウターパネルとインナーパネルとを一体にしてサブアッシィーとした後、当該サブアッシィーのヘミング部を接合ツールで摩擦攪拌させて接合するロボットとを有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合装置は、アウターパネルにインナーパネルを重ね、そのアウターパネルの周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形し、その後の接合ツールによって当該ヘミング部を摩擦攪拌により接合するものであって、前記アウターパネルを載置するヘミング型と、前記ヘミング工具を装着し、前記ヘミング型の上に載置されたアウターパネルについて、その周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形する第1のロボットと、前記接合ツールを装着し、ヘミング型の上にあるアウターパネルとインナーパネルとが一体となったサブアッシィーについて、そのヘミング部を接合ツールで摩擦攪拌させて接合する第2のロボットとを有することを特徴とする。
【0020】
こうした本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合装置によれば、ロボットにヘミング工具や接合ツールを取り替えて装着することにより、ロールヘミング成形と摩擦攪拌接合とを同じヘミング型の上で行うことができるため、インナーパネルとアウターパネルとにずれを生じさせることがなく、車体に組み付けるサブアッシーとしての精度を確保できる。また、摩擦攪拌接合時にはヘミング型は受け部材となるため、接合ツールをヘミング型に対して直交方向に作用させればサブアッシィーに歪みが生じることもない。更に、ヘミング工程と摩擦攪拌接合工程とを一箇所に集約したことや、接着材を使用しないことによってコストを抑えることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るアフタヘム摩擦攪拌接合方法及びその接合装置について、一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。なお、本発明におけるアフタヘムの摩擦攪拌接合は、ある接合長さを持って接合してもスポット的に接合しても良いが、以下スポット的に接合するアフタヘム点摩擦攪拌接合を採用した例について説明する。アフタヘム摩擦攪拌接合とは、ヘミング工程の後にヘミング部について行う摩擦攪拌接合であって、特に本実施形態のアフタヘム点摩擦攪拌接合方法は、ヘミング工程と摩擦攪拌接合工程とを一箇所に集約化した方法である。そして、その集約化にあたっては、ヘミング型を摩擦攪拌接合を行うための受け部材として利用し、そこに載置されたヘミング成形後のサブアッシィに対してそのまま点摩擦攪拌接合を行うようにした。
【0022】
そこで、当該方法を実行するためのアフタヘム点摩擦攪拌接合装置として、本実施形態では、図1に示すように、ロボット3にヘミング工具10を装着してロールヘミング成形を行わせ、その後、図2に示すように同じロボット3の着脱部6に装着したヘミング工具10を接合ツール20に交換して点摩擦攪拌接合を行わせるように構成した。また別の装置として、図3に示すように、ヘミング型2に対して2機のロボット4,5を配置し、一方のロボット4にはヘミング工具10を装着し、他方のロボット5には接合ツール20を装着して、それぞれにロールヘミング成形と点摩擦攪拌接合を行わせるように構成した。
【0023】
ロールヘミング成形と点摩擦攪拌接合とを一台のロボット3で行わせる接合装置は、ヘミング工具10と接合ツール20とをそれぞれ交換できるように着脱部6を構成し、そのロボット3に図1に示すヘミング工具10を装着したロールヘミング成形と、図2に示す接合ツール20を装着した点摩擦攪拌接合とを実行させるようにしている。すなわち、ロボット3には、ヘミング工具10に所定のロールヘミング成形を行わせるための動作だけでなく、接合ツール20に所定の点摩擦攪拌接合を行わせるための動作プログラムを記憶した制御手段を有している。
【0024】
一方、ロールヘミング成形と点摩擦攪拌接合とを2機のロボット4,5で行わせる接合装置は、図3に示すように、ヘミング型2を載せた基台1にロールヘミング成形用のロボット4と、摩擦攪拌接合用のロボット5が設けられ、それぞれの着脱部7,8にはヘミング工具10または接合ツール20が装着されている。そして、ロボット4は、ヘミング工具10に所定のロールヘミング成形を行わせるための動作プログラムを記憶した制御手段を有し、ロボット5は、接合ツール20に点摩擦攪拌接合を行わせるための動作プログラムを記憶した制御手段を有している。
【0025】
ここで図4は、本実施形態のアフタヘム点摩擦攪拌接合方法で使用する接合ツール20を示した図である。この接合ツール20は、円柱形状の本体22の下端面の中心に、ネジの切られた円柱形状の先端ピン21が形成され、その周りには、本体22の底面に傾斜部23,24からなる凹部が形成されている。傾斜部23の角度θは、5度以上25度以下の角度であることが望ましいが、この数値は実験により得たものであり、詳細については後で説明する。
【0026】
次に、アフタヘム点摩擦攪拌接合方法について順を追って説明する。
先ず、ヘミング型2の上にアウターパネル51が載せられ、その上にインナーパネル52が重ねられてロールヘミング成形が行われる。このとき図1に示すように、アウターパネル51は、その外周フランジ53が起立しており、インナーパネル52は、その外周縁54がアウターパネル51の外周フランジ53の内側に位置するように配置されている。そして、図1及び図3に示すように、アウターパネル51の外周フランジ53に押し当てられたヘミング工具10の成形用ローラ11が転がり、その外周フランジ53を内側に折り曲げて外周縁54を挟み込んでかしめていく。こうしてアウターパネル51とインナーパネル52とが一体化する。
【0027】
その後、アウターパネル51とインナーパネル52とが一体になったサブアッシィ50は、ヘミング型2に載せられたまま次のアフタヘム点摩擦攪拌接合が行われる。このとき、ロボット3を兼用する図1及び図2に示す装置の場合には、ヘミング工具10に換えて接合ツール20が着脱部6に装着され、サブアッシィ50のヘミング部55に摩擦攪拌接合が行われる。また一方で、図3に示すように2機のロボット4,5を備えた装置の場合には、サブアッシィ50のヘミング部55に対して直ちに摩擦攪拌接合が行われる。アフタヘム点摩擦攪拌接合は、接合ツール20に回転が与えられ、ロボット3(或いはロボット5、以下同じ)がその接合ツール20を次のように操作することによって行われる。図5は、アフタヘム摩擦撹拌接合を図(a)〜図(d)にかけて段階的に示した図である。
【0028】
先ず、接合ツール20は、所定の回転数で回転が与えられ、ロボット3によって接合ポイントにおいて姿勢が整えられる。すなわち、図5(a)に示すように、接合ツール20の回転軸Lがヘミング部55及びヘミング型2の受け面2aに直交するように位置決めされる。そして、その姿勢を保ったまま先端ピン21がヘミング部55へと押し当てられる。
【0029】
すると、図5(b)に示すように、先端ピン21の先端部が接触した外周フランジ53に摩擦熱が発生し、アウターパネル51がアルミ板であるので、再結晶温度である摂氏400度を越えると半溶融状態となる。そして、接合ツール20は押圧力によって先端ピン21が外周フランジ53内に入り込み、半溶融状態部分が上側に盛り上がる。
【0030】
接合ツール20が押し付けられて摩擦撹拌が進むと、図5(c)に示すように、先端ピン21の先端部が下の外周縁54内にも入り始め、本体22の底面に形成された傾斜部23,24が外周フランジ53に接触する。すると、外周フランジ53の半溶融状態がA領域で増大し、アルミ板であるインナーパネル52の外周縁54にも半溶融状態となったB領域が発生する。従って、この状態で先端ピン21が回転し続ければ、その先端ピン21外周に形成さたネジによって、外周フランジ53と外周縁54とに連続してできた半溶融状態部分が撹拌される。
【0031】
なお、このときはまだ外周フランジ53と外周縁54との界面Cは、狭い範囲で形成されているに過ぎない。そこで更に、図5(d)に示すように先端ピン21が外周縁54の所定の位置(図では外周縁54の板厚の中間地点付近)まで入り込んで摩擦撹拌が行われる。これによって、図5(c)の段階では接合界面Cの形成が不充分で接合面積が小さく接合強度が低かったものが、図5(d)の状態まで摩擦撹拌することによって接合界面Cの形成が十分となって接合強度が高くなる。
【0032】
ところで、回転する先端ピン21を押し込み過ぎると、接合界面Cが上に来すぎる所謂「接合界面の巻き上げ」状態を起こし、外周フランジ53の残存する肉厚が薄くなって接合強度が低下してしまう場合がある。しかし、本実施形態の接合ツール20では、接合界面Cの上昇を傾斜部23が抑え込んでおり、この抑え込みによって接合強度が強くなる。そこで、傾斜部23の傾斜角度θと当該強度の関係について実験を行ったところ、図6に示す結果を得た。横軸が傾斜部23の傾斜角度であり、縦軸がせん断強度である。そして、この結果からは、せん断強度を高く保つためには傾斜角度として5度以上25度以下であれば良いことがわかった。
【0033】
次に、図5(d)の状態から更に摩擦撹拌を進めてしまうと、傾斜部23によって接合界面Cの上昇が抑えきれなくなり、外周フランジ53の残存する肉厚が小さくなって接合強度が低下してしまう。従って、接合強度を高めるには接合ツール20に傾斜部23を設けるだけでは足りず、先端ピン21の入り込む距離を制御する必要がある。そこで、本実施形態では、先端ピン21の入り込みを時間で管理することとした。
【0034】
図7は、その実験結果を示した図であり、横軸は下側の外周縁54の残存板厚(単位mm)を、縦軸はせん断強度を示している。実験は、外周フランジ53の板厚を1.0mm、外周縁54の板厚を1.2mmとし、接合ツール20を回転数2000rpm、押圧力3920Nで、加工時間1.5秒から5.0秒で行った。その結果、加工時間1.5秒以上3秒以下の場合に点線SAで示す範囲の値をとり、加工時間3.0秒以上5.0秒以下の場合に点線SBで示す範囲の値をとることとなった。
【0035】
この結果から、加工時間が3.0秒を越えると接合界面の巻き上げが発生してSBで示すように接合強度が低下し、加工時間が3.0秒未満であれば、SAに示すように適度な接合強度を得られることが分かった。従って、例えばアウターパネル51とインナーパネル52の板厚が1mm同士のアルミ板である場合、ロボット3が接合ツール20に図5(a)〜図5(d)の加工を行わせる時間は1.5秒から3秒程度が適当である。ロボット3が有する制御手段には、こうした時間管理に基づき先端ピン21の入り込みを制御する動作プログラムが記憶されている。
【0036】
こうしたヘミング型2上のサブアッシィ50に対するアフタヘム点摩擦攪拌接合は、ロールヘミング成形されたヘミング部55について数カ所行われる。そして、アウターパネル51とインナーパネル52とが接合されたサブアッシィ50は、次の工程へと搬送される。
【0037】
以上、アフタヘム点摩擦攪拌接合方法及びその接合装置の実施形態を説明したが、本実施形態では、同じヘミング型2上でロールヘミング成形と摩擦攪拌接合を行うため、アウターパネル51インナーパネル52とにずれを生じさせることがなく、車体に組み付けるサブアッシーとしての精度を確保できるようになった。
また、摩擦攪拌接合時にはヘミング型2が受け部材となるため、図5(a)に示すように、接合ツール20の回転軸Lをヘミング型2の受け面2aに対して直交方向に作用させれば、サブアッシィー50に歪みが生じることはない。
また、ヘミング工程と摩擦攪拌接合工程とを一箇所に集約して行うため、製造設備の簡素化を図ることができ、その分コストを抑えることができた。
そして更に、アウターパネル51とインナーパネル52とを摩擦攪拌接合することにより、接着材を使用しない点でもコストを抑えることができた。
【0038】
以上、アフタヘム点摩擦攪拌接合方法及びその接合装置の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、成型用ローラ11を使用したロールヘミングの場合を説明したが、例えば、ヘミング型を下型として曲げ型を使用し、予備曲げをした後に本曲げを行うようなヘミング成形であってもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合方法では、ヘミング型の上に載置させたアウターパネルにインナーパネルを重ねて配置し、アウターパネルの周辺部をヘミング成形してアウターパネルとインナーパネルとを一体にしてサブアッシィーとした後、当該サブアッシィーをヘミング型の上に載置させたまま、次に接合ツールを回転状態で押圧することによって、ヘミング部を摩擦攪拌により接合するようにしたので、サブアッシィとしての精度を落とすことなく、低コストでヘミング部の接合を行うことが可能となった。
【0040】
また、本発明のアフタヘム摩擦攪拌接合装置では、アウターパネルを載置するヘミング型と、着脱部に装着したヘミング工具あるいは接合ツールによってロールヘミング成形と摩擦攪拌接合との両方を行うロボットとを有する構成、又はアウターパネルを載置するヘミング型と、ヘミング工具を装着してロールヘミング成形する第1のロボット及び接合ツールを装着して摩擦攪拌接合を行う第2のロボットとを有する構成としたので、サブアッシィとしての精度を落とすことなく、低コストでヘミング部の接合を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヘミング工具を装着したアフタヘム点摩擦攪拌接合装置を示した図である。
【図2】 接合ツールを装着したアフタヘム点摩擦攪拌接合装置を示した図である。
【図3】 ヘミング工具、接合ツールを別々のロボットに装着したアフタヘム点摩擦攪拌接合装置を示した図である。
【図4】 接合ツールを示した図である。
【図5】 アフタヘム摩擦撹拌接合を図(a)〜図(d)にかけて段階的に示した図である。
【図6】 接合ツールに設けられた傾斜部の傾斜角度と接合強度との関係について行った実験結果を示した図である。
【図7】 せん断強度について行った実験結果を示した図である。
【図8】 アウターパネルとインナーパネルとを一体化するヘミング装置を示した図である。
【図9】 点摩擦攪拌接合による接合方法を示した図である。
【図10】 熱硬化性接着材を塗布したヘミング部を示した図である。
【符号の説明】
2 ヘミング型
3,4,5 ロボット
10 ヘミング工具
20 接合ツール
50 サブアッシィ
51 アウターパネル
52 インナーパネル
Claims (5)
- ヘミング型の上に載置させたアウターパネルにインナーパネルを重ねて配置し、アウターパネルの周辺部をヘミング成形してアウターパネルとインナーパネルとを一体にしてサブアッシィーとした後、当該サブアッシィーをヘミング型の上に載置させたまま、次に接合ツールを回転状態で押圧することによって、ヘミング部を摩擦攪拌により接合すること、
摩擦攪拌により接合するための動作プログラムを記憶した制御手段を有するロボットを用いること、
前記ロボットは接合ツールの回転軸がヘミング型の受面に直交するように位置決めされ、その直交する位置を保ったままヘミング部に押し当て、前記接合ツールがインナーパネル内に至るまで直進することによって接合が行われること、
を特徴とするアフタヘム摩擦攪拌接合方法。 - ヘミング型の上に載置させたアウターパネルにインナーパネルを重ねて配置し、アウターパネルの周辺部をロボットに装着したヘミング工具でロールヘミング成形してアウターパネルとインナーパネルとを一体にしてサブアッシィーとした後、当該サブアッシィーをヘミング型の上に載置させたまま、次にロボットに装着した接合ツールを回転状態で押圧することによって、ヘミング部を摩擦攪拌により接合すること、
摩擦攪拌により接合するための動作プログラムを記憶した制御手段を有するロボットを用いること、
前記ロボットは接合ツールの回転軸がヘミング型の受面に直交するように位置決めされ、その直交する位置を保ったままヘミング部に押し当て、前記接合ツールがインナーパネル内に至るまで直進することによって接合が行われること、
を特徴とするアフタヘム摩擦攪拌接合方法。 - 請求項2に記載するアフタヘム摩擦攪拌接合方法において、
前記ロールヘミング成形と摩擦攪拌接合とは、別のロボットに持たせたヘミング工具と接合ツールにより行うことを特徴とするアフタヘム摩擦攪拌接合方法。 - アウターパネルにインナーパネルを重ね、そのアウターパネルの周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形し、その後の接合ツールによって当該ヘミング部を摩擦攪拌により接合するものであって、
前記アウターパネルを載置するヘミング型と、
前記ヘミング工具及び接合ツールを装着可能な着脱部を有し、前記ヘミング型の上に載置されたアウターパネルについて、その周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形してアウターパネルとインナーパネルとを一体にしてサブアッシィーとした後、当該サブアッシィーのヘミング部を接合ツールで摩擦攪拌させて接合するロボットとを有すること、
前記ロボットは、摩擦攪拌により接合するための動作プログラムを記憶した制御手段を有すること、
前記ロボットは接合ツールの回転軸がヘミング型の受面に直交するように位置決めされ、その直交する位置を保ったままヘミング部に押し当て、前記接合ツールがインナーパネル内に至るまで直進することによって接合が行われること、
を特徴とするアフタヘム摩擦攪拌接合装置。 - アウターパネルにインナーパネルを重ね、そのアウターパネルの周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形し、その後の接合ツールによって当該ヘミング部を摩擦攪拌により接合するものであって、
前記アウターパネルを載置するヘミング型と、
前記ヘミング工具を装着し、前記ヘミング型の上に載置されたアウターパネルについて、その周辺部をヘミング工具でロールヘミング成形する第1のロボットと、
前記接合ツールを装着し、ヘミング型の上にあるアウターパネルとインナーパネルとが一体となったサブアッシィーについて、そのヘミング部を接合ツールで摩擦攪拌させて接合する第2のロボットとを有すること、
前記第2ロボットは、摩擦攪拌により接合するための動作プログラムを記憶した制御手段を有すること、
前記ロボットは接合ツールの回転軸がヘミング型の受面に直交するように位置決めされ、その直交する位置を保ったままヘミング部に押し当て、前記接合ツールがインナーパネル内に至るまで直進することによって接合が行われること、
を特徴とするアフタヘム摩擦攪拌接合装置。
Priority Applications (1)
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JP2002334751A JP4281333B2 (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | アフタヘム摩擦攪拌接合方法及びその接合装置 |
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