JP4279819B2 - 発音体モジュール及びそれを利用した電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、発音体モジュール及びそれを利用した電子機器に関し、更に具体的には、薄型の発音体モジュールの音圧特性の改善に関するものである。
例えば、携帯電話で使用されている音響変換電子部品としては、電磁誘導を利用したダイナミック型のものと、圧電現象を利用した圧電型のものがある。これらのうち、ダイナミック型の音響変換電子部品は、例えば、PETなどの樹脂からなる振動板,駆動源のコイル,コイルを取り囲む磁石,ステンレスなどの金属製のケースやカバーから構成されており、構造が複雑で部品点数も多い。また、コイルが存在するためにある程度の厚みを確保しなければならず、薄型化に適しているとはいいがたい。
一方、圧電型の音響変換電子部品は、音に変換する圧電振動板のほか、該圧電振動板を支持する構造体としてケースやカバーを用いている。例えば、圧電スピーカなどの圧電振動板(圧電発音体)は、振動板の少なくとも一方の主面に圧電素子が貼り合わせられており、前記振動板の縁部が前記ケースやカバーに取り付けられている。前記振動板としては、例えば、ステンレスなどの金属板やPETなどの樹脂板が用いられ、圧電素子としては、例えば、PZTなどの圧電セラミックスが用いられ、前記ケースやカバーとしては、例えば、ステンレスなどの金属やPPSなどの樹脂が用いられる。また、これらケースやカバーは、圧電発音体の音響空間を形成するためにも用いられるが、ケースやカバーを用いずに、両面テープリングのみで、圧電振動板の固定から音響空間形成までをこなす場合もある。
以上のような圧電発音体は、一般的には電子機器の筐体内部に実装される。具体的には、電子機器の筐体の内面に貼り付けられ、圧電発音体の内側の筐体に形成された孔(放音孔)から音を発生させる構造がとられる。また、実装空間を有効に用いるために、他の電子部品(例えば、液晶表示装置)に音圧電発音体を貼り付けたり、前記電子部品内部に圧電発音体を包含したモジュールとして電子機器の筐体内部に実装し、筐体に形成された放音孔から音を発生させる構造としたりする場合もある。
例えば、以下の特許文献1には、筐体の内部に圧電発音体を収納した電子機器において、前記筐体の厚みよりも厚い質量部品に、その一部が重なるように、圧電発音体を固定することが開示されている。そして、電子部品を質量体とみなして筐体へ振動が伝わることを抑制することで、局部的な音圧の特性差(ディップ)を抑えることができるとしている。また、特許文献2に記載の発音体付電気光学装置では、画像を表示する画像表示部が設けられた電気光学装置を有する表示要素部と、発音体を有する発音部は、当該表示要素部の背面に発音部が位置するように配置され、少なくとも前記表示要素部の背面と前記発音体とにより第一気室を構成することにより、薄型化,省スペース化を図ることが開示されている。
特開2005−117201公報 特開2004−336293公報
上述した圧電発音体は、構造が簡単で部品点数も少なく軽量化が可能であるとともに、圧電振動板の振幅さえ確保できれば薄型化も可能である。しかしながら、電子機器の筐体内部に実装する場合は、音響空間を設定する必要がある。また、圧電発音体は、共振点の音圧ピークを抑えないとフラットな特性が得られないが、電子機器筐体へ圧電発音体を直接実装するだけでは、特性のフラット化は困難であった。
また、上述した特許文献1のように、他の電子部品に圧電発音体を貼り付ける場合は、音響空間を調整する必要があり、音を前面に誘導する構造を別途設ける必要があるという不都合がある。更に、上述した特許文献2に示すように、他の電子部品内部に圧電発音体を包含したモジュールとして電子機器の筐体内部に実装する場合は、音響空間をあらかじめ設定することができるが、その最適値は明確になっておらず、特性のフラット化は不十分である。このように、従来の技術では、薄型化を図ると同時に、音圧特性を改善するには至っていない。
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、電子部品の筐体内側に圧電発音体を設けた薄型の発音体モジュールの音圧特性を改善することである。他の目的は、前記発音体モジュールを利用した電子機器を提供することである。
前記目的を達成するため、本発明は、電子部品を固定する筐体の内面に、圧電発音体が前記電子部品と重なるように取り付けられた発音体モジュールであって、前記圧電発音体の径をφ,前記電子部品の本体の縁部の長さをL,前記縁部に沿った放音孔の幅をWとしたときに、1/2×φ≦W≦L,の関係を満たすことを特徴とする。
主要な形態の一つは、(1)前記放音孔の面積をSSH,前記圧電発音体の面積をSCSPとしたときに、1/20×SCSP≦SSH≦1/2×SCSP,の関係を満たすこと,より好ましくは、SSH=1/10×SCSPであることを特徴とする。または、(2)前記背面側のカバーに設けた通気孔の面積をSBH,前記圧電発音体の面積をSCSPとしたときに、1/20×SCSP≦SBH≦SCSP,の関係を満たすことを特徴とする。あるいは、(3)前記圧電発音体と電子部品本体の背面間に形成される前気室の厚みをtとしたときに、0.2mm≦t≦4mm,であることを特徴とする。
他の形態は、前記電子部品が、液晶表示装置であることを特徴とする。更に他の形態は、前記放音孔を、前記電子部品本体が取り付けられた前面側のカバーの縁部に設けたこと,あるいは、前記電子部品本体を覆うカバーの側面部に設けたことを特徴とする。
本発明の電子機器は、請求項1〜8のいずれかに記載の発音体モジュールを備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明は、電子部品の本体の背面側であって、かつ前記本体を覆う背面側のカバーの内側に圧電発音体を取り付け、前記圧電発音体の径をφ,前記電子部品の本体の縁部の長さをL,前記縁部に沿った放音孔の幅をWとしたときに、1/2×φ≦W≦L,の関係を満たし、必要に応じて、前記放音孔の面積,前記背面カバーに形成された通気孔の面積,前記圧電発音体と電子部品本体の背面間に形成される前気室の厚みを所定の範囲内に設定することとした。このため、薄型で音圧特性の良好な発音体モジュールを得ることができるという効果がある。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
<基本構成>・・・最初に、図1〜図16を参照しながら本発明の実施例1を説明する。まず、図1を参照して、本実施例の基本構成を説明する。図1(A)は本実施例の発音体モジュールの分解斜視図,図1(B)は、本実施例を組み立てた状態で、前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図に相当する。携帯電話などの電子機器50は、筐体52の内部に各種の電子部品を収納しており、本実施例では、前記電子部品として、液晶表示装置が収納されている。本実施例の発音体モジュール10は、前記液晶表示装置と圧電発音体30を一体化した構成となっている。
前記液晶表示装置は、バックライトを含む液晶(液晶本体)26と、これを収納するための前面カバー12及び背面カバー20などにより構成されている。前記前面カバー12は、前記液晶26の表示側が取り付けられる主面に、放音孔16と表示用の窓18が形成されており、前記放音孔16に該当する部分が、若干突出した突出部14となっている。背面カバー20は、前記前面カバー12の外側に被せられる形状となっており、前記突出部14に対応する位置に、突出部25が形成されている。更に、背面カバー20には、圧電発音体30を収納するための厚みを有する収納部22が形成されている。該収納部22には、圧電発音体30に対応する位置に、通気孔24が設けられている。
前記圧電発音体30は、ステンレスなどの金属やPET(ポリエチレンテレフタラート)などの樹脂材料によって形成された円形の振動板32の表裏に、圧電素子34及び36が貼り合わせられたバイモルフ構造となっている。圧電素子34,36は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスによる圧電シートの表裏に、Ni,Pd,Agなどによる電極を形成した構成となっている。これらの圧電素子34,36の電極は、導体パターン38A及び38Bにより外部に引き出され、振動板32は、導体パターン40により外部に引き出される。以上のような圧電発音体30は、略リング状の緩衝材42と、リングの一部を切り欠いた形状の緩衝材44によって、背面カバー20と液晶26の間に固定される。このような構成の圧電発音体30の基本的な動作は公知であり、圧電素子34及び36に音声信号が印加されると、圧電素子34及び36の一方は半径方向に伸び、他方は半径方向に縮む。このため、振動板32が屈曲して空気の振動が生じ、音が発生する。
前記圧電発音体30と液晶表示装置が一体化された発音体モジュール10は、前記筐体52の内部に実装される。なお、前記筐体52には、前記放音孔16と対応する位置に、開口部54が形成されるとともに、窓18に対応する位置は、透明部材によって構成された表示部56となっており、外部から液晶26の表示内容を確認することができる構成となっている。
<圧電発音体の実装形態>・・・次に、圧電発音体の実装形態について、図2〜図4を参照して説明する。図2は、圧電発音体を、電子機器筐体に直接実装した例を示す図であり、(A)は裏面側からみた平面図,(B)は前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は周波数と音圧の関係を示す図である。図3は、圧電発音体を、電子機器筐体に直接実装するとともに放音孔の位置を変更した例を示す図であり、(A)は裏面側からみた平面図,(B)は前記(A)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は周波数と音圧の関係を示す図である。図4は、圧電発音体を、液晶表示装置を介して電子機器筐体に実装した例を示す図であり、(A)は裏面側からみた平面図,(B)は前記(A)を#D−#D線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は周波数と音圧の関係を示す図である。前記図2(A),図3(A),図4(A)は、それぞれ、前記図2(B),図3(B),図4(B)を、矢印F2,F3,F4方向から見た図に相当する。
まず、図2に示す直接実装の例についてみると、引出部112を備えた圧電発音体110は、電子機器の筐体100の主面に、緩衝材114を介して取り付けられており、該圧電発音体110の内側の筐体100には、複数の放音孔102が設けられている。なお、圧電発音体110の構成は、前記圧電発音体30と同様のバイモルフ型であってもよいし、ユニモルフ型であってもよい。図2(C)は、横軸が周波数[kHz],縦軸が音圧[dB]であって、音圧周波数特性を示している。このグラフにおいて、実用帯域内の音圧は、ピークが出現しており、特性がフラットではないことが確認できる。また、実用帯域内の平均音圧をA[dB],共振周波数frでの音圧をB[dB]とすると、その音圧差Dは、約+6dBとなっている。
次に、図3に示す例は、前記図2に示す例と放音孔102の位置をずらしたものである。図3(C)では、実線が放音孔位置を変更した場合のグラフ、点線が、前記図2に示す構造の場合の音圧周波数特性を示す図であり、放音孔102の位置を変えても、音圧特性に著しい変化は見られない。また、図4に示す例は、圧電発音体110を、液晶表示装置120などの電子部品を介して筐体100に実装したものであって、圧電発音体110の一部が液晶表示装置120に重なっている。このような構造の音圧周波数特性を見ると、図4(C)の実線で示すように、実用帯域内での音圧がフラットになり、上述した音圧差Dも、約+3dBとなっている。
以上の結果から、圧電発音体110と筐体100の間に、液晶表示装置120などの電子部品相当の固体を介して実装することで、音圧特性がフラット化されることが確認できる。この手法によれば、例えば上述した特許文献1に示される局部的な音圧の特性差(ディップ)を抑える方法とは異なり、圧電発音体110の振動と直角方向に音を導きだすことで、放音孔102のみでは制御しきれないピークの平坦化を図ることができる。
<放音孔の幅>・・・次に、図5〜図8を参照して、放音孔の幅について検討する。図5は、本実施例の発音体モジュールを示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を#E−#E線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図6は、放音孔の幅を変更したときの周波数と音圧の関係を示す図である。図7は、放音孔の幅と、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧の差との関係を示す図であり、図8は、本実施例と従来実装の音圧周波数特性を示すグラフである。なお、圧電発音体30は、液晶26と完全に重なる必要はなく、図5に示すように一部が重ならなくてもよい。
図5に示すように、液晶26の縁部に沿った放音孔16の幅をW,それと直交する幅をWs,圧電発音体30の径をφ,前記液晶26の縁部の長さをLとすると、図5(B)に矢印F5で示す方向に、前記放音孔幅Wを、W=1/4φ,W=φ,W=Lとしたときの音圧周波数特性は、図6で示すようになる。図6に示すように、放音孔幅Wが狭いほど低周波側の音圧が下がり、高周波の特性のみ強調されている。できるだけ平坦な周波数特性が良好とされていることを考えると、放音孔幅Wが狭すぎると、音質として好ましくないと考えられる。なお、本発明でいう圧電発音体30の径とは、緩衝材42及び44によって支持された部分を除いた有効径のことであり、角形,楕円形,その他形状の圧電発音体を用いる場合には、液晶26の縁部の長さL方向における圧電発音体30の支持部以外の有効寸法をさす。また、1つの圧電発音体30に対して放音孔を複数に分割配置する場合における放音孔幅Wは、分割した各部分の幅W1,W2・・の和W=W1+W2・・のことである。
ここで、図6で示した実用帯域内の平均音圧をA[dB],共振周波数での音圧をB[dB]として、これらの音圧差D=(B−A)[dB]と放音孔幅Wの関係を示すと、図7のグラフのようになる。また、以下の表1には、前記音圧差D,音のエネルギー,感じ方の対応が示されている。
Figure 0004279819
前記表1に示すように、一般的に聴感上、差異が判る音圧レベルは3dB以上とされることから、良好な音圧特性範囲を、−3<音圧差D<+3[dB]とすると、放音孔幅Wの範囲が定義可能となる。最大幅WMAXと、最小幅WMINについては、多くの測定結果から求められ、おおむね以下の通りとなる。
最大幅WMAX=液晶幅L
最小幅WMIN=1/2×φ
従って、放音孔幅Wを、1/2×φから液晶幅Lの間に設定する,すなわち、1/2×φ≦W≦Lの関係を満たすように設定することにより、良好な音圧特性を得ることができる。
図8には、本実施例(図中のLCDモジュール)と従来の直接実装の音圧周波数特性が示されており、実線のグラフが本実施例,一点鎖線のグラフが従来実装である。両者のグラフを比較すると明らかなように、特に、1kHz〜10kHzの周波数帯域で、本実施例のグラフのほうが、平坦性が良好となっている。すなわち、従来実装では、音圧が84〜91dBの範囲で変化しており、特性の凹凸が大きいのに対して、本実施例では、音圧が83〜87dBの範囲で変化しており、特性の凹凸が小さくなっている。
<放音孔の面積>・・・次に、放音孔16の面積と、圧電発音体30の面積の関係について、図9〜図11を参照して説明する。図9及び図10は、本実施例の発音体モジュールの放音孔の面積を変更した例を示す図であり、それぞれ(A)は平面図,(B)は音圧周波数特性を示す図である。図11は、前記発音体モジュールの放音孔の面積と、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧の差との関係を示す図である。なお、本発明でいう圧電発音体30の面積とは、緩衝材42及び44によって支持された部分を除いた有効面積のことである。
まず、図9(A)に示すように、放音孔16の幅をW,それと直交する幅をWs,圧電発音体30の径をφとし、放音孔16の面積をSSH,圧電発音体の面積をSCSPと表す。そして、前記幅Wsを変え、前記SSHを、SSH=SCSP,SSH=1/2×SCSP,SSH=1/10×SCSPとすると、その音圧周波数特性は、図9(B)で示されるようになる。図9(B)を見ると、放音孔16の面積SSHが広いほど共振周波数frでの共振特性が顕著に現れ、ピークが大きくなる。そのような特性は、聴感上、耳障りな音質となり好ましくないため、できるだけ平坦な周波数特性が良好とされている。一方、図10(B)には、前記SSHを、SSH=1/10×SCSP,SSH=1/20×SCSP,SSH=1/50×SCSPとした場合の音圧周波数特性が示されている。この場合は、放音孔面積SSHを狭くするほど、共振周波数frでの音圧が下がり、音圧不足になるという傾向がある。
ここで、図9及び図10で示した実用帯域内の平均音圧をA[dB],共振周波数での音圧をB[dB]として、これらの音圧差D=(B−A)[dB]と放音孔の面積SSHの関係を示すと、図11のグラフのようになる。良好な音圧特性範囲は、上述した表1で示すように、−3<音圧差D<+3[dB]であるから、これに基づいて必要は放音孔の面積SSHの範囲が定義可能となる。最大面積SSH・MAXと、最小面積SSH・MINについては、多くの測定結果から求められ、おおむね以下の通りとなる。
最大面積SSH・MAX=1/2×SCSP
最小面積SSH・MIN=1/20×SCSP
従って、放音孔面積SSHを、圧電発音体30の面積の1/20〜1/2の間に設定する,すなわち、1/20×SCSP≦SSH≦1/2×SCSPの関係を満たすように設定することにより、共振ピークを平坦化し、良好な音圧特性を得ることができる。更に、図10(B)に示すように、
SH=1/10×SCSP
とすれば、最も良好な音圧特性に近づけることが可能である。
具体的に説明すると、例えば、圧電発音体30の径φ=20mmの場合は、圧電発音体30の面積SCSPは、314mmとなる。これを上述した1/20×SCSP≦SSH≦1/2×SCSPに当てはめると、15.7mm≦SSH≦157mmとなる。157mmよりも大きいと、共振周波数frでの音圧が大きくなり、フラットな特性が得られないため、157mm以下とする必要がある。また、15.7mmよりも小さいと、音が出にくくなり音圧が低くなってしまうため、15.7mm以上とする必要がある。特に、SSH=1/10×SCSP,すなわち、SSH=31.4mmであれば、音圧特性はフラットになりやすい。また、φ=23mmの圧電発音体の場合は、放音孔16の面積SSH≒41.5mmが理想となる。なお、放音孔16の面積SSHは、放音孔の幅W×幅(ないし長さ)Wで求められることから、いずれか一方の値が決まれば、他方の寸法が決定可能である。例えば、電子機器50の筐体52に放音孔54を設定するためには、前記長さWを、0.8mm〜9mmの間とすると都合がよい。
<通気孔の面積>・・・次に、通気孔24の面積と、圧電発音体30の面積の関係について、図12及び図13を参照して説明する。図12は、本実施例の発音体モジュールの通気孔の面積を変更した例を示す図であり、(A)は平面図,(B)は音圧周波数特性を示す図である。図13は、前記発音体モジュールの通気孔の面積と、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧の差との関係を示す図である。
まず、図12(A)に示すように、通気孔24の面積をSBH,圧電発音体30の径をφ,該圧電発音体30の面積をSCSPと表わす。そして、前記SBHを、SBH=1/50×SCSP,SBH=1/20×SCSP,SBH=1/10×SCSPとすると、その音圧周波数特性は、図12(B)で示すようになる。図12(B)を見えると、通気孔の面積SBHが小さくなるほど、共振周波数frでの音圧が下がり、音圧不足になるという傾向がある。
ここで、図12(B)で示した実用帯域内の平均音圧をA[dB],共振周波数での音圧をB[dB]として、これらの音圧差D=(B−A)[dB]と通気孔24の面積SBHの関係を示すと、図13のグラフのようになる。良好な音圧特性範囲は、前記表1で示すように、−3<音圧差D<+3[dB]であるから、これに基づいて必要は通気孔の面積SBHの範囲が定義可能となる。通気孔24の最大面積SBH・MAXは、圧電発音体30の面積SCSPであるが、最小面積SBH・MINについては、多くの測定結果から求められ、おおむね以下の通りとなる。
最大面積SBH・MAX=SCSP
最小面積SBH・MIN=1/20×SCSP
従って、通気孔面積SBHを、圧電発音体30の面積の1/20以上に設定する,すなわち、1/20×SCSP≦SBH≦SCSPの関係を満たすように設定することにより、ディップの発生を抑制して、良好な音圧特性を得ることができる。
具体的に説明すると、例えば、圧電発音体30の径φ=20mmの場合は、圧電発音体30の面積SCSPは、314mmとなる。これを上述した1/20×SCSP≦SBHに当てはめると、15.7mm≦SBHとなる。15.7mmよりも小さいと通気性が乏しく、後気室47側の空気抵抗が大きいため、圧電発音体30が振動しにくくなり、音圧が低くなってしまう。また、圧電発音体30よりも大きい通気孔24は、構造上設定できないため、SBH>SCSPは不可能である。SCSP=SBH(=15.7mm)の場合は、通気性が確保され、圧電発音体30が振動しやすくなり、音圧が最大となる。この場合は、後気室47の空気抵抗は無視できるため、前気室46側の放音孔16のみで音質を調整することが可能である。
<前気室の厚み>・・・次に、液晶26の背面と圧電発音体30との間に形成される前気室46(図5参照)の厚みについて、図14〜図16を参照して説明する。図14(A)及び(B)は、本実施例の発音体モジュールの前気室46の厚みtを変更した場合の音圧周波数特性を示す図である。図15(A)は、前気室の厚みtと、実用帯域内での平均音圧との関係を示す図,図15(B)は、前気室の厚みtと、平均音圧の減衰量の関係を示す図である。図16は、前気室の厚みtと、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧差との関係を示す図である。
まず、図14(A)に示すように、前気室46の厚みtを、t=5.5e−7×φ,t=0.2mm,t=0.4mmとすると、前気室46の厚みtが0.2mm以下の薄さになると圧電発音体30の接触や空気抵抗により、低周波側の音圧が下がることが確認される。また、図14(B)に示すように、前気室46の厚みtを、t=0.4mm,t=4mm,t=8mmとすると、厚みtを4mm以上に厚くすることにより、全体の音圧が下がることが確認される。
ここで、前記図14に示す実用帯域内の平均音圧をA[dB]として、前気室厚みtとの関係を示すと図15(A)のようになり、前気室厚みtと平均音圧Aの減衰量の関係を示すと図15(B)のようになる。これらの条件を合わせて、共振周波数での音圧をB[dB]と平均音圧Aとの音圧差D=(B−A)[dB]と前気室46の厚みtの関係を示すと図16のグラフのようになる。良好な音圧特性範囲は、前記表1で示すように、−3<音圧差D<+3[dB]であるから、これに基づいて必要な前気室厚みtが定義可能となる。前気室最大厚みtMAXと、前気室最小厚みtMINについては、多くの測定結果から求められ、おおむね以下の通りとなる。
前気室最大厚みtMAX=4mm
前気室最小厚みtMIN=0.2mm
従って、前気室46の厚みtを、0.2mm〜4mmの間に設定する,すなわち、0.2mm≦t≦4mmの関係を満たすように設定することにより、平均音圧が高く、音圧の平坦化が可能となり、良好な音圧特性を得ることができる。
具体的に説明すると、例えば、前気室46の厚みをt,圧電発音体30の径をφとしたときに、圧電発音体30の振幅は、およそ、5.5e−7×φで表わされる。ここで、
0<t<5.5e−7×φでは、圧電発音体30が振動すると、液晶26の背面に接触して音圧が低くなってしまい、5.5e−7×φ<t<0.2mmでは、圧電振動板30が振動しても、前気室46が狭いために音が液晶26の側面に十分に伝わらず、音圧が低くなってしまう。また、4mm<tになると、放音孔16に対して圧電発音体30の位置が遠くなってしまうため、全体の音圧が下がってしまう。従って、0.2mm≦t≦4mmであれば、圧電発音体30の音が液晶26の側面に十分に出るため、フラットな特性が得られる。例えば、φ=20mmの場合は、振幅は0.08mmとなるが、上述した範囲内に前気室46の厚みtを設定することにより、良好な音圧特性が得られる。
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)圧電発音体30を、液晶26の背面カバー20の内側に設け、前記圧電発音体30の径をφ,前記液晶26の縁部の長さをL,前記縁部に沿った放音孔16の幅をWとしたときに、1/2×φ≦W≦L,の関係を満たすようにする。そして、必要に応じて、前記放音孔16の面積,前記背面カバー20に形成された通気孔24の面積,前記圧電発音体30と液晶26の背面間に形成される前気室46の厚みを所定の範囲内に設定することとしたので、音圧特性の良好な薄型の発音体モジュール10を得ることができるという効果がある。
(2)圧電発音体30を、直接電子機器50の筐体52に実装する場合は、前記筐体52内に音響空間を設定する必要があるが、これに対して、本実施例では、液晶表示装置内に圧電発音体30を実装して、該液晶表示装置内に音響空間を形成するため、電子機器50の筐体52に音響空間を設定する必要がなく、電子機器50自体の薄型化も実現することができる。
(3)圧電発音体30を、液晶26に重ねる構成としたため、電子機器50の筐体52には、液晶26の他には放音孔16を設けるスペースさえ確保すればよく、液晶26の搭載面積を広く取ることができるという効果がある。これにより、フルサイズのブラウザに対応した携帯電話用の液晶表示パネルなどの実現が可能である。
次に、図17を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。本実施例2から以下の実施例5までは、上述した実施例1と圧電発音体の実装形態が異なる例が示されている。なお、放音孔の幅,放音孔の面積,通気孔の面積,前気室の厚みは、上述した実施例1で示す範囲内に設定されているものとする。図17(A)は、本実施例の分解斜視図,図17(B)は、前記(A)を組み立てて#F−#F線に沿って切断し矢印方向に見た断面図に相当する。
前記図17に示す発音体モジュール200は、通気孔24A及び24Bを有する背面カバー20の内側に、圧電発音体30A及び30Bを、それぞれ緩衝材42A及び42Bを介して取り付けたもので、これらの圧電発音体30A,30Bの間には、仕切り202が設けられている。また、前面カバー12は、一端側に突出部14A及び放音孔16Aを備えており、他端側に突出部14B及び放音孔16Bを備えている。このような構成とすると、図17(B)に示すように、圧電発音体30A及び30Bの振動により発生した音は、該圧電発音体30A及び30Bと液晶26の間から、液晶26の角をまわり、放音孔16A及び16Bから外部にでる。本実施例は、例えば、ステレオなどの2チャンネルの音声を再生する場合に好適な構造であり、基本的作用・効果は上述した実施例と同様である。
次に、図18を参照しながら本発明の実施例3を説明する。図18(A)は、本実施例の分解斜視図,図18(B)は、前記(A)を組み立て#G−#G線に沿って切断し矢印方向に見た断面図に相当する。本実施例の発音体モジュール210も、前記実施例2と同様に、ステレオ実装の例である。図18に示すように、本実施例では、前面カバー212には放音孔は設けられておらず、代わりに、背面カバー214の収納部216の両側面が開放した構成となっている。前記背面カバー214の側面の開放部218A及び218Bは、放音孔の役割を果たすものである。圧電発音体30A及び30Bの振動により発生した音は、仕切り220によって仕切られた各空間から、前記圧電発音体30A及び30Bと液晶26の間を通って、背面ケース214の側面の開放部218A及び218Bから外部に出る。このように、本実施例では、左右のスピーカの音の出口が、前記実施例2の場合よりも離れているため、より音響のよいステレオを実現することができる。
次に、図19を参照しながら本発明の実施例4を説明する。図19(A)は、本実施例の分解斜視図,図19(B)は、前記(A)を組み立て#H−#Hに沿って切断し矢印方向に見た断面図に相当する。本実施例の発音体モジュール230は、前記実施例1と同様の液晶背面カバー20の収納部22に、内側に向かって凹んだ窪み232が設けられており、該窪み232の段差234に、圧電発音体30が背面カバー20の外側に向けて接着剤などで固定された構造となっている。本実施例の構造によれば、上述した実施例に示す緩衝材を用いることなく、簡単に背面カバー20に圧電発音体30を取り付けることができる。
次に、図20を参照しながら本発明の実施例5を説明する。図20(A)は、本実施例の分解斜視図,図20(B)は、前記(A)を組み立て#I−#I線に沿って切断し矢印方向に見た断面図に相当する。本実施例の発音体モジュール250では、液晶の背面カバー252には、前記実施例1〜4で示すような収納部は形成されておらず、カバーの外側に向かって凸になった窪み256が設けられている。該窪み256には、通気孔254が形成されている。圧電発音体30は、前記窪み256の縁部に、接着剤などの適宜手法で固定される。本実施例によれば、圧電発音体30を取り付ける部分のみ背面カバー252に厚み(窪み256)を設ければよいため、発音体モジュール250全体のより一層の小型化・薄型化を図ることができる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した材料や形状,寸法は一例であり、同様の作用を奏するように適宜設計変更可能である。
(2)圧電発音体30,30A,30Bの構造も、ユニモルフ,バイモルフのいずれであってもよい。また、圧電素子34,36自体が、圧電層と電極層とを交互に積層した積層構造のものであってもよく、その積層数,内部電極の接続パターン,引出構造なども必要に応じて適宜変更可能である。
(3)カバーとしては、電子機器内部の部品の固定,保護,もしくは封止を目的とする構造体であれば、必ずしも最外側にあるものでなくてもよい。
(4)前記実施例の液晶表示装置は一例であり、電池ケースや他の電子部品を固定するケースなどに圧電発音体を取り付けて一体化してよい。
(5)カバーに対する圧電発音体30の取り付け方としては、接着、押し付けなどの適宜の方法を用いてよい。また、緩衝材やスペーサも必要に応じて設けてよい。更に、気室内に他の電子部品などが存在してもよい。
(6)本発明の好適な応用例としては、携帯電話,携帯情報端末(PDA),ボイスレコーダ,PC(パソコン)などの各種電子機器がある。
本発明によれば、電子部品の本体の背面側であって、かつ前記本体を覆う背面側のカバーの内側に圧電発音体を取り付け、前記圧電発音体の径をφ,前記電子部品の本体の縁部の長さをL,前記縁部に沿った放音孔の幅をWとしたときに、1/2×φ≦W≦L,の関係を満たし、必要に応じて、前記放音孔の面積,前記背面カバーに形成された通気孔の面積,前記圧電発音体と電子部品本体の背面間に形成される気室の厚みを所定の範囲内に設定して、良好な音圧特性を得ることとした。このため、薄型の発音体モジュールの用途に適用できる。特に、携帯電話などの軽量で小型の電子機器へ搭載される発音体モジュールの用途として好適である。
本発明の実施例1を示す図であり、(A)は発音体モジュールの分解斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。 圧電発音体を、電子機器筐体に直接実装した例を示す図であり、(A)は裏面側からみた平面図,(B)は前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は周波数と音圧の関係を示す図である。 圧電発音体を、電子機器筐体に直接実装するとともに放音孔の位置を変更した例を示す図であり、(A)は裏面側からみた平面図,(B)は前記(A)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は周波数と音圧の関係を示す図である。 圧電発音体を、液晶表示装置を介して電子機器筐体に実装した例を示す図であり、(A)は裏面側からみた平面図,(B)は前記(A)を#D−#D線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は周波数と音圧の関係を示す図である。 前記実施例1の発音体モジュールを示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を#E−#E線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。 前記実施例1の放音孔の幅を変更したときの周波数と音圧の関係を示す図である。 前記実施例1の放音孔の幅と、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧の差との関係を示す図である。 前記実施例1と従来実装の音圧周波数特性を示す図である。 発音体モジュールの放音孔の面積を変更した例を示す図であり、(A)は平面図,(B)は音圧周波数特性を示す図である。 発音体モジュールの放音孔の面積を変更した例を示す図であり、(A)は平面図,(B)は音圧周波数特性を示す図である。 発音体モジュールの放音孔の面積と、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧の差との関係を示す図である。 発音体モジュールの通気孔の面積を変更した例を示す図であり、(A)は平面図,(B)は音圧周波数特性を示す図である。 発音体モジュールの通気孔の面積と、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧の差との関係を示す図である。 発音体モジュールの前気室の厚みを変更した例の音圧周波数特性を示す図である。 発音体モジュールの前気室の厚みを変更した例を示す図であり、(A)は、前気室の厚みと実用帯域内での平均音圧との関係を示す図,(B)は、前気室の厚みと平均音圧の減衰量の関係を示す図である。 発音体モジュールの前気室の厚みと、実用帯域内の平均音圧と共振周波数での音圧差との関係を示す図である。 本発明の実施例2を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は前記(A)を#F−#F線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。 本発明の実施例3を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は前記(A)を#G−#G線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。 本発明の実施例4を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は前記(A)を#H−#H線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。 本発明の実施例5を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は前記(A)を#I−#I線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
符号の説明
10:発音体モジュール
12:前面カバー
14,14A,14B,25:突出部
16,16A,16B:放音孔
18:窓
20:背面カバー
22:収納部
24,24A,24B:通気孔
26:液晶
30,30A,30B:圧電発音体(圧電音響変換電子部品)
32:振動板
34,36:圧電素子
38A,38B,40:導体パターン
42,44:緩衝材
50:電子機器
52:筐体
54:開口部
56:表示部
100:筐体
102:放音孔
110:圧電発音体
112:引出部
114:緩衝材
120:液晶表示装置
200:発音体モジュール
202:仕切り
210:発音体モジュール
212:前面カバー
214:背面カバー
216:収納部
218A,218:開放部
220:仕切り
230:発音体モジュール
232:窪み
234:段差
250:発音体モジュール
252:背面カバー
254:通気孔
256:窪み

Claims (9)

  1. 電子部品の本体の背面側であって、かつ前記本体を覆う背面側のカバーの内側となるように圧電発音体を取り付けるとともに、前記電子部品の縁部に放音孔を設けた発音体モジュールであって、
    前記圧電発音体の径をφ,前記電子部品の本体の縁部の長さをL,前記縁部に沿った放音孔の幅をWとしたときに、
    1/2×φ≦W≦L,
    の関係を満たすことを特徴とする発音体モジュール。
  2. 前記放音孔の面積をSSH,前記圧電発音体の面積をSCSPとしたときに、
    1/20×SCSP≦SSH≦1/2×SCSP
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の発音体モジュール。
  3. 好ましくは、SSH=1/10×SCSPであることを特徴とする請求項2記載の発音体モジュール。
  4. 前記背面側のカバーに設けた通気孔の面積をSBH,前記圧電発音体の面積をSCSPとしたときに、
    1/20×SCSP≦SBH≦SCSP
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の発音体モジュール
  5. 前記圧電発音体と電子部品本体の背面間に形成される前気室の厚みをtとしたときに、
    0.2mm≦t≦4mm,
    であることを特徴とする請求項1記載の発音体モジュール。
  6. 前記電子部品が、液晶表示装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発音体モジュール。
  7. 前記放音孔を、前記電子部品本体が取り付けられた前面側のカバーの縁部に設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の発音体モジュール。
  8. 前記放音孔を、前記電子部品本体を覆うカバーの側面部に設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の発音体モジュール。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の発音体モジュールを備えたことを特徴とする電子機器。

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