以下、図1から図16を用いて、本発明の可変容量素子および可変容量装置をその第1から第3の実施形態により説明する。
はじめに、図1から図5を用いて、第1の実施形態の可変容量装置1Aおよび可変容量素子2Aを説明する。図1は第1の実施形態の可変容量素子2Aを平面図として示しており、図2は図1の2−2矢視断面図を示している。また、図3は第1の実施形態の可変容量装置1Aの等価回路を示している。
第1の実施形態の可変容量装置1Aは、可変容量素子2Aおよび外部電源3を備えている。また、この可変容量素子2Aは、図1および図2に示すように、構成要素を持って説明すると、柱状振動子4Aおよび支持壁5A、ならびに第1の駆動電極6A、第2の駆動電極7A(分割された各片を7Aa〜7Adとする。)、第1の容量用電極8A、第2の容量用電極9Aおよび各引出電極を備えている。
柱状振動子4Aは図1および図2に示すように円柱状に形成されており、絶縁層10の表面(絶縁面)から上方に起立している。柱状振動子4Aに用いられる材料としては柱状振動子4Aの形成容易性および形成精度の観点から単結晶シリコンが選択されており、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)のインシュレータを利用して絶縁層10と一体に形成されている。
支持壁5Aは、図1および図2に示すように、柱状振動子4Aの直径よりも大きな直径を有する円柱孔5Aaを有して形成された壁状部材であり、その円柱孔5Aaにより柱状振動子4Aを円形状に包囲するように、絶縁層10の表面から起立している。また、この支持壁5Aは、絶縁性を保持しながら複数個に分割された第2の駆動電極7Aをそれぞれ支持するため、その上面に酸化形成された絶縁表面膜11を有している。ここで、支持壁5Aに用いられる材料としては支持壁5Aの形成容易性および形成精度の観点から単結晶シリコンが選択されており、SOIのインシュレータを利用して絶縁層10と一体に形成されている。
第1の駆動電極6Aおよび第2の駆動電極7Aからなる1組の駆動電極6A、7Aは、図2に示すように、内側の第1の駆動電極6Aが柱状振動子4Aの外側面4Abの上方の全周に配置され、外側の環状の第2の駆動電極7Aが支持壁5Aの上端面5Acに配置されており、一定の間隔だけ離間して対向配置されている。また、第1の容量用電極8Aおよび第2の容量用電極9Aからなる1組の容量用電極8A、9Aは、内側の第1の容量用電極8Aが柱状振動子4Aの高さ方向中央部の全周に配置され、外側の環状の第2の容量用電極9Aが支持壁5Aの内側面5Abに配置され、1組の駆動電極6A、7Aの下方において一定の間隔だけ離間して対向配置されている。
ここで、第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aからなる第1組の電極6A、8Aは、図1および図2に示すように、半導体としての性質を有する単結晶シリコンを用いて閉じた円環状(第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aは後述するように柱状振動子4Aと一体に形成されるために第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aの形状は正確には仮想の閉じた円環状となる。)にそれぞれ形成されており、柱状振動子4Aの外側面4Ab上において柱状振動子4Aを囲繞する仮想の円環(図1の点線円環R6を参照)の周上にそれぞれ配置されている。図2からも明らかなように、第1組の電極6A、8Aは単結晶シリコンを用いて形成された柱状振動子4Aと一体に形成されており、柱状振動子4Aの外側面4Abにおける表面層として支持されている。よって、柱状振動子4Aの外観からは第1組の電極6A、8Aの存在を柱状振動子4Aと区別して確認することはできない。また、この第1組の電極6A、8Aは、柱状振動子4Aの根元4Adから絶縁層10を貫通して下方に延在する第1の引出電極12を介して接地されている。
第2の駆動電極7Aは、図1および図2に示すように、CuやAuなどの良好な導電性を有する金属を用いて四等分に分割された円環状に形成されており、支持壁5Aの上端面5Acにおいて柱状振動子4Aを囲繞する仮想の円環(図1の点線円環R7を参照)の周上に配置されている。この分割された円環状の第2の駆動電極7Aは、図1に示すように、そのそれぞれの片7Aa〜7Adの周方向端部をできる限り近接するように形成されている。また、第2の駆動電極7Aは、図1に示すように、導電性ワイヤ16を用いて外部電源3に個々に接続されている。
第2の容量用電極9Aは、図1および図2に示すように、半導体としての性質を有する単結晶シリコンを用いて、閉じた円環状(第2の容量用電極9Aは後述するように支持壁5Aと一体に形成されるために第2の容量用電極9Aの形状は正確には仮想の閉じた円環状となる。)に形成されており、支持壁5Aの内側面5Ab上において柱状振動子4Aを囲繞する仮想の円環の周上に配置されている。図2からも明らかなように、第2の容量用電極9Aは同一材料を用いて形成された支持壁5Aと一体に形成されており、支持壁5Aの内側面5Abにおける表面層として支持されている。よって、支持壁5Aの外観からは第2の駆動電極7Aの存在を確認することができるが、第2の容量用電極9Aの存在を支持壁5Aと区別して確認することはできない。そして、第2の容量用電極9Aは、図1および図2に示すように、支持壁5Aの絶縁表面膜11を貫通して上方に延在する第2の引出電極13を介して他の回路に接続されている。
可変容量素子2Aに接続される外部電源3は、図1および図3に示すように、分割配置された第2の駆動電極7Aにそれぞれ接続されており、柱状振動子4Aの共振周波数(もしくは共振回転数ともいう。)と同等の周波数になっている駆動電圧を分割配置された第2の駆動電極7Aにそれぞれ印加するようになっている。この駆動電圧の印加状態を図4に示す。図4A〜Dは四等分に分割配置された第2の駆動電極7Aのそれぞれに対して印加する駆動電圧を示したグラフとなっており、図4Eは図4A〜Dに示した駆動電圧の曲線を重ね合わせたグラフである。図4Eに示すように、この駆動電圧を示す曲線は正弦波となっており、四等分に分割配置された第2の駆動電極7Aの配置角にあわせてその位相がその第2の駆動電極7Aの周方向(第2の駆動電極7Aの片7Aa→片7Ab→片7Ac→片7Adの順またはその逆方向)に沿って90°ずつ異なっている(図4A→図4B→図4C→図4Dの順)。
例えば、第1の実施形態においては、柱状振動子4Aの直径が50μm、その高さが300μmとなっており、その共振周波数が570KHzとなるため、この駆動電圧の周波数は570KHzとなっており、1/(570×4)秒(位相差90°)ずつずらして駆動電圧を四等分に分割配置された第2の駆動電極7Aのそれぞれに印加する。
次に、図5を用いて、可変容量素子2Aの製造方法を説明する。ここで、図5は、可変容量素子2Aの製造工程をA〜Jの順に示している縦断面図である。なお、図5の切断方向は図2の断面図の切断方向と同様である。
可変容量素子2Aは、図5A〜Jに示すように、第1A工程から第6A工程までの6工程を経て製造される。
第1A工程においては、図5Aに示すSOIウェハー30の表面30aおよび裏面30bを酸化することにより、図5Bに示すような絶縁表面膜31a、31bを形成する。第1A工程に用いられるSOIウェハー30としては、下層の厚さが50μm、上層30cの厚さが300μm、それらの間に介在するインシュレータ(10)の厚さが5μmとなっている。ここで、SOIウェハー30のインシュレータ(10)は前述した絶縁層10となる。また、絶縁表面膜31a、31bの厚さは0.5μmとなっている。そして、絶縁表面膜31a、31bの形成後、裏面30b側の絶縁表面膜31bの一部32をRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)により円形にエッチングする。
第2A工程においては、図5Cに示すように、BOSCHプロセスによるDeep−RIE(加工表面から垂直方向へ行なう深いエッチング)により、第1A工程においてエッチングされた絶縁表面膜31bの一部32からSOIウェハー30の内部に向けてSOIウェハー30に円柱孔33を形成し、図5Dに示すようにその円柱孔33の内面に酸化膜31cを形成する。この酸化膜31cの形成後、酸化膜31cが形成された円柱孔33の底面33aのみをRIEすることにより、図5Eに示すようにSOIウェハー30の上層のシリコン30cを外部に露出させる。
第3A工程においては、図5Eに示すような裏面30b側の絶縁表面膜31bの表面上および円柱孔33の酸化膜31cの表面上に15nm厚のTi膜および100nm厚のCu膜からなるシード膜(図示せず)をスパッタにより形成する。そして、シード膜の表面上にレジスト膜(図示せず)を形成して所定の形状のレジストパターンニングを行い、レジストパターンニングにより露出したシード膜にCuやAuなどの良導電性の金属を電気めっきすることにより、図5Fに示すような軸径20μm程度の円形鋲状の第1の引出電極12を形成する。電気めっきの終了後、レジスト膜をレジスト除去剤により除去するとともに、レジスト膜の除去により表面に露出したシード膜をイオンミリングにより除去する。
第4A工程においては、表面30a側の絶縁表面膜31aの表面に直径50μmの円形状のレジスト膜(図示せず)をパターンニングした後にDeep−RIEにより100μm程度エッチングすることにより、図5Gに示すような円柱状の突起34を形成する。この円柱状の突起34は裏面30b側に形成された第1の引出電極12を中心軸としている。そして、円柱状の突起34の形成後、図5Hに示すように、エッチングされた部分の表面を酸化してその表面に酸化膜31dを形成する。この酸化膜31dの形成後、図5Hに示すように、この酸化膜31dの表面における円柱状の突起34の根元周縁にRIEによる幅5μm程度の円環溝35のパターンニングを行なうとともに、この円環溝35の外側の一部(第1の実施形態においては図5H右側)36にRIEによる円形溝のパターンニングを行なう。
第5A工程においては、第4A工程において形成された酸化膜31dの表面およびエッチングにより酸化膜31dから露出した面にシード膜(図示せず)およびレジスト膜(図示せず)を順次形成し、そのレジスト膜に所定のパターンニングを行なった後、そのレジスト膜から露出したシード膜にCuやAuなどの良導電性の金属を電気めっきすることにより、図1および図5Iに示すような四等分に分割された開いた円環状の第2の駆動電極7Aおよび第2の容量用電極9Aに用いられる円柱状の第2の引出電極13を形成する。第2の駆動電極7Aおよび第2の引出電極13の形成後、レジスト膜をレジスト除去剤により除去するとともに、シード膜をイオンミリングにより除去する。
そして、第6A工程においては、図5Jに示すように、円柱状の突起34と第2の駆動電極7Aとの間に挟まれており第3A工程において形成された円環溝35以外の部分をレジスト膜により被膜した後、Deep−RIEすることにより、円柱状の突起34が円柱状の柱状振動子4Aとなるようにその円環溝35を絶縁層10までエッチングする。このエッチングが終わった後、円環溝35以外の部分に形成されたレジスト膜をレジスト除去剤により除去する。最後に、外部電源3に接続された導電性ワイヤ16を図1に示すように第2の駆動電極7Aの各片7Aa〜7Adにそれぞれ接続することにより、可変容量素子2Aの製造工程が終了する。
次に、図2から図4および図6から図8を用いて、第1の実施形態の可変容量装置1Aおよび可変容量素子2Aの作用を説明する。図6および図7は、第1の実施形態の可変容量素子2Aの動作状態を示す平面図または断面図となっており、図8は分割配置された第2の駆動電極7Aの各片7Aa〜7Adに印加する駆動電圧が方形波状に変化する場合を図4と同様に示したグラフとなっている。
第1の実施形態の可変容量装置1Aは、図3に示すように、可変容量素子2Aおよび外部電源3を備えている。図4A〜Dに示すように、位相が90°ずつ順にずれている4つの正弦波の駆動電圧がこの外部電源3から四等分に分割配置された第2の駆動電極7Aの各片7Aa〜7Adに対してその周方向に順に印加されることにより、第1の駆動電極6Aと第2の駆動電極7Aとの間の駆動電圧が分割配置された第2の駆動電極7Aの周方向に順に増減する。そのため、第1の駆動電極6Aと第2の駆動電極7Aとの間に生じた静電力に基づく引力(以下、単に「静電力」という。)が第2の駆動電極7Aの周方向に順に強弱することになる。
ここで、図2に示すように、第1の駆動電極6Aは柱状振動子4Aの外側面4Abの上方に配置(正確には柱状振動子4Aとの一体形成による仮想配置)されており、第2の駆動電極7Aは支持壁5Aの上端面5Acに配置されている。このことから、静電力の強弱が第2の駆動電極7Aの周方向に順に生じると、図6および図7に示すように、柱状振動子4Aの根元4Adを固定端として柱状振動子4Aの先端4Aeが第2の駆動電極7Aの配置側にたわみながら第2の駆動電極7Aの周方向に回転する。そして、第1の容量用電極8Aが第1の駆動電極6Aの下方に配置(正確には柱状振動子4Aとの一体形成による仮想配置)されており、第2の容量用電極9Aが第2の駆動電極7Aの下方に配置(正確には支持壁5Aとの一体形成による仮想配置)されているので、柱状振動子4Aが回動することにより、第1の容量用電極8Aと第2の容量用電極9Aとの対向距離が小さくなって、第1の容量用電極8Aと第2の容量用電極9Aとの間の静電容量が大きくなる。
また、柱状振動子4Aの回動半径は静電力の最大強度、すなわち駆動電圧の最大電圧に比例するので、駆動電圧の最大電圧を全体的に強弱させることにより、第1の容量用電極8Aと第2の容量用電極9Aとの間の対向距離を自在に変化させることができる。これによって、それらの間の静電容量を所望の容量に自由に変更することができる。
これら第1の実施形態の可変容量装置1Aおよび可変容量素子2Aにおいて特に重要な作用は、柱状振動子4Aを回動させることにより柱状振動子4Aを振動させている点にある。柱状振動子4Aの振動数(または回転数)においては、大きな駆動力を要することなく回転させることができる回転数、すなわち共振周波数(共振回転数)が存在する。この柱状振動子4Aの共振周波数と同等の周波数になる駆動電圧を第2の駆動電極7Aに印加することにより、柱状振動子4Aの先端4Aeを第2の駆動電極7Aの配置側にたわませるのみに必要な駆動電圧(従来の可変容量素子において必要な駆動電圧)よりも小さな駆動電圧で柱状振動子4Aを回動させることができる。つまり、柱状振動子4Aの回動に共振を利用することにより、大きな駆動電圧を印加することなく柱状振動子4Aの変位量を大きくすることができるため、低い駆動電圧により所望の静電容量を得ることができる。
また、図4に示すように、可変容量素子2Aに接続されている外部電源3は分割配置された第2の駆動電極7Aの各片7Aa〜7Adに正弦波の駆動電圧を第2の駆動電極7Aの周方向の順に位相をずらして印加している。ここで、仮に外部電源3が図8に示すような方形波の駆動電圧を分割された第2の駆動電極7Aの各片7Aa〜7Adにその周方向の順に印加したとすると、駆動電圧の波形と同様に静電力の増減がオン・オフ動作のように急激に変化してしまうので、柱状振動子4Aの回動が理想的な円運動にならずに四角形(第2の駆動電極7Aの分割数と同じ角数の多角形)の周上を移動する回転運動になってしまう。そのため、方形波の駆動電圧が第2の駆動電極7Aに印加されると、第1の容量用電極8Aおよび第2の容量用電極9Aの間の対向距離を一定に維持しながら柱状振動子4Aの回動を行なうことが困難になる。つまり、第2の駆動電極7Aに正弦波の駆動電圧を印加することにより、第1の駆動電極6Aと第2の駆動電極7Aとの間に生じる静電力が滑らかに増減を繰り返すことができるので、図8に示すような方形波の駆動電圧が印加された場合と比較して柱状振動子4Aを滑らかに回動させることができる。
さらに、第1の実施形態の可変容量素子2Aにおいては、所望の静電容量を得るため、第1の容量用電極8Aと第2の容量用電極9Aとの間の対向距離を一定に維持して柱状振動子4Aを回動させる必要がある。そこで、第1の実施形態の可変容量素子2Aにおいては以下のようになっている。
図7に示すように、第2の駆動電極7Aおよび第2の容量用電極9Aからなる第2組の電極7A、9Aは、支持壁5Aの上下方向にそれぞれ分かれて配置されている。また、第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aからなる第1組の電極6A、8Aは、第2組の電極7A、9Aの配置に対応して柱状振動子4Aに配置されている(第1組の電極6A、8Aは柱状振動子4Aと一体に形成されているため、正確には第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aが上下に仮想配置されていることになる。)ため、第1の容量用電極8Aおよび第2の容量用電極9Aを継ぎ目のない閉じた環状に形成することができる。これにより、柱状振動子4Aの回動を行なったとしても第1の容量用電極8Aおよび第2の容量用電極9Aの間の対向面積が変化してしまうことを防止することができるので、それらの間の静電容量を振動させずに一定に維持することができる。
また、図6および図7に示すように、第1組の電極6A、8Aを支持する柱状振動子4Aは円柱状に形成されており、第2組の電極7A、9Aを支持する支持壁5Aは円柱状の柱状振動子4Aを円形状に包囲するように形成されている。よって、回動する柱状振動子4Aの外側面4Abから支持壁5Aの内側面5Abまでの対向距離は角柱状の柱状振動子4Aの回動時と異なり一定に維持される。そのため、柱状振動子4Aに支持される第1組の電極6A、8Aと支持壁5Aに支持される第2組の電極7A、9Aとの対向距離を一定に維持することができるので、角柱状に形成された柱状振動子を回動させる場合と比較して柱状振動子4Aを支持壁5A側により近づけながら柱状振動子4Aを回動させることができる。
ただし、この可変容量素子2AはMEMSとして用いられるため、その柱状振動子4Aおよび支持壁5Aの寸法は極めて小さく、その形状を精密に形成することは容易ではない。そのため、第1の実施形態の可変容量素子2Aにおいては、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)における単結晶シリコンをエッチングしてこれら柱状振動子4Aおよび支持壁5Aを形成することにより、第1組の電極6A、8Aを支持している円柱状の柱状振動子4Aおよび第2組の電極7A、9Aを支持している支持壁5Aの形状を精密に形成している。これにより、各電極間の対向距離を精密に設定することができる。
また、図7に示すように、柱状振動子4Aに支持される第1組の電極6A、8A、すなわち第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8AはSOIにおける単結晶シリコンを用いて一体に形成されているとともに、この第1組の電極6A、8Aが前述した単結晶シリコンを用いて形成された柱状振動子4Aの外側面4Abの表面層としてその柱状振動子4Aと一体に形成されている。そして、この第1組の電極6A、8Aは柱状振動子4Aの根元4Adから下方に延在する第1の引出電極12を介して接地されている。
第1組の電極6A、8Aが接地されて一体に形成されることにより、第1組の電極6A、8Aを離間させて別個形成するときと異なり、第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aの間に酸化膜や空気などの絶縁層を介在させる必要がなくなるので、第1組の電極6A、8Aの形成を容易に行なうことができる。また、柱状振動子4Aおよび第1組の電極6A、8Aを単結晶シリコンを用いて一体に形成することにより、形成精度の良い柱状振動子4Aを第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aとして用いることができるので、第1組の電極6A、8Aと第2組の電極7A、9Aとの対向距離を正確かつ一定に維持することができるとともに、第1の駆動電極6Aおよび第1の容量用電極8Aを別個形成するための工程を省略することができる。
すなわち、第1の実施形態の可変容量装置1Aおよび可変容量素子2Aによれば、柱状振動子4Aのたわみ量の如何にかかわらず柱状振動子4Aの回動に共振を利用することができるので、駆動電圧が小さくても所望の静電容量を得ることができる。そのため、第1の実施形態の可変容量装置1Aおよび可変容量素子2Aにおいては、小さな消費電力により大きな静電容量を得ることができるという効果を奏する。
なお、第1の実施形態においては、図1および図6に示すように、第2の駆動電極7Aを四等分に分割配置しているが、この分割数は柱状振動子4Aの回動が可能となる3個以上に分割されていればよく、その等分数を六等分、八等分など多くすることにより柱状振動子4Aの回動をより滑らかにすることができる。
また、可変容量素子2Aから得られる静電容量の値を大きくしたい場合、図9および図10に示すように、可変容量素子2Aを複数個形成することにより、その形成個数に応じた静電容量を得ることができる。
次に、図11から図14を用いて、第2の実施形態の可変容量装置1Bおよび可変容量素子2Bを説明する。図11は第2の実施形態の可変容量素子2Bを平面図として示しており、図12は図11の12−12矢視断面図を示している。また、図13は第2の実施形態の可変容量装置1Bの等価回路を示している。
第2の実施形態の可変容量装置1Bは、第1の実施形態の可変容量装置1Aと同様、図11および図12に示すような可変容量素子2Bおよび図13に示すような外部電源3を備えている。ここで、図13の等価回路に示すように、第1の実施形態の可変容量装置1Aと第2の実施形態の可変容量装置1Bとの相違点は可変容量素子2A、2Bであり、その第1の実施形態の可変容量素子2Aと第2の実施形態の可変容量素子2Bとの相違点は、図12に示すように第1の容量用電極8A、8Bが第1の駆動電極6A、6Bと一体形成されているか否か、および、図13に示すように第1の容量用電極8A、8Bが接地されているか否かとなっている。これらの相違点をふまえて第2の実施形態の可変容量素子2Bの詳細を下記に記載する。
第2の実施形態の可変容量素子2Bは、図11および図12に示すように、柱状振動子4Bおよび支持壁5B、ならびに第1の駆動電極6B、第2の駆動電極7B、第1の容量用電極8B、第2の容量用電極9Bおよびそれら各電極(第1の駆動電極6B、第2の駆動電極7B、第1の容量用電極8Bまたは第2の容量用電極9B)の引出電極を備えている。
柱状振動子4Bは、図11および図12に示すように、第1の実施形態の柱状振動子4Aと同様にして円柱状に形成されており、絶縁層10の表面(絶縁面)から上方に起立している。また、この柱状振動子4Bは、絶縁性を保持しながらその上方に位置する第1の駆動電極6Bを支持するため、その上面に酸化形成された絶縁表面膜11を有している。柱状振動子4Bに用いられる材料は第1の実施形態と同様であり、絶縁層10と一体に形成されている。
支持壁5Bは、図11および図12に示すように、柱状振動子4Bの半径よりも大きな半径を曲率半径とする曲面を柱状振動子4Bの対向側面5Bbとして有する図11に示すような所定形状の立体(底面形状が等脚台形の四角柱であって柱状振動子対向面を内側に湾曲させた立体内側の変形四角柱と底面形状が長方形である立体外側の四角柱とを組み合わせた立体形状)を四方に等分配置した4個の壁状部材を組み合わせたものとなっており、その4つの曲面により柱状振動子4Bを円形状に包囲するように、絶縁層10の表面から起立している。
また、この支持壁5Bは、絶縁性を保持しながら複数個に分割された第2の駆動電極7Bをそれぞれ支持するため、その上面に酸化形成された絶縁表面膜11を有している。ここで、支持壁5Bに用いられる材料としては支持壁5Bの形成容易性および形成精度の観点から単結晶シリコンが選択されており、SOIウェハー30を用いて絶縁層10と一体に形成されている。なお、図11および図1に示すように、第2の実施形態の支持壁5Bの形状は第1の実施形態の支持壁5Aの形状と大きく異なっているが、図13および図3に示すように、等価回路に大きな相違点はない。
1組の駆動電極6B、7Bは、図11および図12に示すように、柱状振動子4Bおよび支持壁5Bの上端面4Bc、5Bcにおいて一定の間隔だけ離間して対向配置されている。また、1組の容量用電極8B、9Bは、柱状振動子4Bの外側面4Bbおよび支持壁5Bの内側面5Bbであって1組の駆動電極6B、7Bの下方において一定の間隔だけ離間して対向配置されている。この上下方向における対向配置は第1の実施形態および第2の実施形態ともに同様である。
ここで、図11および図12に示すように、第1の駆動電極6Bは、円柱状の柱状振動子4Bの上端面4Bcから円柱状に起立することにより、柱状振動子4Bの上方に位置する仮想の円環の周上に重なるように配置されている。また、この第1の駆動電極6Bは、柱状振動子4Bの根元4Bdから絶縁層10を貫通して下方に延在する第1の引出電極12を介して接地されている。
第1の容量用電極8Bは、第1の実施形態の第1の容量用電極8Aと同様、単結晶シリコンを用いて閉じた円環状(正確には仮想の円環状)に形成されており、柱状振動子4Bの外側面4Bb上において柱状振動子4Bを囲繞する仮想の円環の周上に配置されている。図12からも明らかなように、第1の容量用電極8Bは単結晶シリコンを用いて形成された柱状振動子4Bと一体に形成されており、柱状振動子4Bの外側面4Bbにおける表面層として支持されている。よって、柱状振動子4Bの外観からは第1の容量用電極8Bの存在を確認することはできない。そして、この第1の容量用電極8Bは、柱状振動子4Bの根元4Bdから絶縁層10の表面上に沿って引き出された第3の引出電極14を介して他の回路に接続されている。
第2の駆動電極7Bは、図11および図12に示すように、支持壁5Bの上端面5Bcにおいて柱状振動子4Bを囲繞する仮想の円環の周上に配置されており、CuやAuなどの良好な導電性を有する金属を用いて、円環を四個以上に分割して得た四個以上の片のうちの四片を柱状振動子4Bを囲繞するために仮想の円環の周上に等間隔で配置した形状に形成されている。また、第2の駆動電極7Bは、図11に示すように、導電性ワイヤ16を用いて外部電源3に個々に接続されている。
第2の容量用電極9Bは、図11および図12に示すように、単結晶シリコンを用いて、円環を四個以上に分割したうちの四片9Ba〜9Bdが第1の容量用電極8Bの下方に位置する仮想の円環の周上に等間隔で配置されたような形状(第2の容量用電極9Bは後述するように支持壁5Bと一体に形成されるために第2の容量用電極9Bの形状は正確には仮想の形状となる。)に形成されている。図12からも明らかなように、第2の容量用電極9Bは同一材料を用いて形成された支持壁5Bと一体に形成されており、支持壁5Bの内側面5Bbの表面層として支持されている。よって、第2の容量用電極9Bの存在を確認することはできない。そして、第2の容量用電極9Bは、図11および図12に示すように、支持壁5Bの絶縁表面膜11を貫通して上方に延在する第2の引出電極13を介して他の回路に接続されている。
なお、前述した第2の駆動電極7Bおよび第2の容量用電極9Bの形状は、図11および図12ならびに図1および図2に示すように、第1の実施形態の第2の駆動電極7Aおよび第2の容量用電極9Aの形状と大きく異なるが、図13および図3のように等価回路図として示すと、第1の実施形態および第2の実施形態の第2の駆動電極7A、7Bおよび第2の容量用電極9A、9Bはどちらも等しくなる。
可変容量素子2Bに接続される外部電源3は、図3および図13に示すように、第1の実施形態の外部電源3と同様、分割配置された第2の駆動電極7Bにそれぞれ接続されている。外部電源3から供給される駆動電圧の強度、周波数、位相差は柱状振動子4Bの寸法、各電極の対向距離、駆動電極に生じる静電力その他の柱状振動子4Bの回動を制御する特性を考慮して決められる。例えば、第2の駆動電極7Bが4つに分割配置されているため、駆動電圧の位相差を90°ずつ異ならせることにより、柱状振動子4Bを回動させている。
次に、図14を用いて、第2の実施形態の可変容量素子2Bの製造方法を説明する。ここで、図14は、可変容量素子2Bの製造工程をA〜Fの順に示している縦断面図である。なお、図14の切断方向は図12の断面図の切断方向と同様である。
可変容量素子2Bは、図14A〜Fに示すように、第1B工程から第6B工程までの6工程を経て製造される。
第1B工程においては、図14Aに示すように、SOIウェハー30の表面30aおよび裏面30bを酸化することにより絶縁表面膜31a、31bを形成する。SOIウェハー30としては第1の実施形態の第1A工程において用いられたものと同様である。ここで、SOIウェハー30のインシュレータ(10)は前述した絶縁層10となる。また、絶縁表面膜31a、31bの厚さは0.5μmとなっている。
第2B工程においては、図14Bに示すように、BOSCHプロセスによるDeep−RIEによりSOIウェハー30に円柱孔33を形成する。
第3B工程においては、図14Cに示すように、第2B工程において形成された円柱孔33の内面に酸化膜31cを形成した後、裏面30b側の絶縁表面膜31bの表面上および円柱孔33の酸化膜31cの表面上に15nm厚のTi膜および100nm厚のCu膜からなるシード膜(図示せず)をスパッタにより形成する。そして、シード膜の表面上にレジスト膜(図示せず)を形成して所定の形状のレジストパターンニングを行い、レジストパターンニングにより露出したシード膜にCuやAuなどの良導電性の金属を電気めっきすることにより、図14Cに示すような軸径20μm程度の円形鋲状の第1の引出電極12を形成する。電気めっきの終了後、レジスト膜をレジスト除去剤により除去するとともに、レジスト膜の除去により表面に露出したシード膜をイオンミリングにより除去する。
第4B工程においては、次の第5B工程において表面30a側の絶縁表面膜31aからSOIウェハー30のインシュレータ(10)を露出させる部分(図11および図14Eを参照)37および第2の引出電極13の形成部分36以外の部分に所定のレジストパターンニング(図示せず)を施した後Deep−RIEを行なうことにより、図14Dに示すように、表面30a側の絶縁表面膜31aからSOIウェハー30のインシュレータ(10)を露出させたい部分37および第2の引出電極13の形成部分36を20μm程度エッチングする。エッチングの終了後、レジスト除去剤により不要なレジスト膜を除去する。
第5B工程においては、柱状振動子4Bおよび支持壁5Bの上端面4Bc、5Bcに該当する部分にレジスト膜をレジストパターンニングにより形成し、パターンニングされていない部分にDeep−RIEによるエッチングを行なう。このエッチングにより、図11および図14Eに示すような柱状振動子4B(第1の容量用電極8Bを含む)、支持壁5B(第2の容量用電極9Bを含む)、第3の引出電極14がSOIウェハー30の上層のシリコン30cを用いて形成される。そして、エッチングの終了後、レジスト除去剤により不要なレジスト膜を除去する。
第6B工程においては、図14Fに示すように、柱状振動子4Bおよび支持壁5Bの上端面4Bc、5Bcにシード膜(図示せず)およびレジスト膜(図示せず)を順次形成し、そのレジスト膜に所定のパターンニングを行なった後、そのレジスト膜から露出したシード膜にCuやAuなどの良導電性の金属を電気めっきすることにより、図11および図14Fに示すように、円柱状の第1の駆動電極6B、分割配置された第2の駆動電極7B、第2の容量用電極9Bに接続される第2の引出電極13および第3の引出電極14の端部に形成される端子14aを形成する。その後、レジスト膜をレジスト除去剤により除去するとともにシード膜をイオンミリングにより除去し、図14Fに示すように、外部電源3に個々に接続された導電性ワイヤ16を第2の駆動電極7Bに接続することにより、可変容量素子2Bの製造工程が終了する。
次に、図11から図13を用いて、第2の実施形態の可変容量装置1Bおよび可変容量素子2Bの作用を説明する。
第2の実施形態の可変容量装置1Bは、図13に示すように、可変容量素子2Bおよび外部電源3を備えている。第1の実施形態と同様、位相差90°ずつの4つの正弦波の駆動電圧(図4A〜Dおよび図4Eを参照)がこの外部電源3から分割配置された第2の駆動電極7Bの各片7Ba〜7Bdに対してその周方向に順に印加されると、第1の駆動電極6Bと第2の駆動電極7Bとの間の駆動電圧が第2の駆動電極7Bの周方向(片7Ba→片7Bb→片7Bc→片7Bdの方向またはその逆の方向)に順に増減し、それによって静電力がその周方向に順に強弱する。この静電力の強弱が第2の駆動電極7Bの周方向に生じることにより、柱状振動子4Bの根元4Bdを固定端として柱状振動子4Bの先端4Beが第2の駆動電極7Bの配置側にたわみながら第2の駆動電極7Bの周方向に回転する。
そして、第1の容量用電極8Bが第1の駆動電極6Bの下方に配置(正確には柱状振動子4Bとの一体形成による仮想配置)されており、第2の容量用電極9Bが第2の駆動電極7Bの下方に配置(正確には支持壁5Bとの一体形成による仮想配置)されているので、柱状振動子4Bが回動することによって第1の容量用電極8Bと第2の容量用電極9Bとの対向距離が小さくなり、第1の容量用電極8Bと第2の容量用電極9Bとの間の静電容量が大きくなる。これによって、それらの間の静電容量を所望の容量に自由に変更することができる。
もちろん、第1の実施形態と同様、柱状振動子4Bを共振周波数で回動させることにより、少ない駆動電圧で大きな静電容量を得ることができる。また、正弦波の駆動電圧を第2の駆動電極7Bに印加することにより、柱状振動子4Bが滑らかに回動するという作用も第1の実施形態と同様である。
第1の実施形態の可変容量素子2Aと大きく異なっている点は、図11から図13に示すように、第1の容量用電極8Bが第1の駆動電極6Bと一体に形成されておらず、その第1の容量用電極8Bが接地されていないことである。このように形成することによって、他の回路は第1の容量用電極8Bおよび第2の容量用電極9Bの両方に接続させたり、第1の容量用電極8Bを接地させてたりして使用することができるので、他の回路と可変容量素子2Bとの接続自由度を大きくすることができる。また、第1の容量用電極8Bおよび第1の駆動電極6Bを別個形成することにより、第1の駆動電極6Bを金属製にすることができるので、第1の実施形態のように第1の駆動電極6Bをシリコン製にするよりも大きな静電力を得ることができる。
その他、第2の駆動電極7Bおよび第2の容量用電極9Bの上下配置、柱状振動子4Bの円柱状形成および支持壁5Bの円形包囲、シリコンまたはSOIを用いた柱状振動子4Bおよび支持壁5BのRIEによるエッチング、柱状振動子4Bと第1の容量用電極8Bとの一体形成ならびに支持壁5Bと第2の容量用電極9Bとの一体形成により得られる作用は第1の実施形態と同様である。
次に、図15および図16を用いて、第3の実施形態の可変容量装置1Cおよび可変容量素子2Cを説明する。図15は第3の実施形態の可変容量素子2Cを平面図として示しており、図16は図15の16−16矢視断面図を示している。
第3の実施形態の可変容量装置1Cは、第1の実施形態の可変容量装置1Aと同様、図15および図16に示すような可変容量素子2Cおよび図示しない外部電源3を備えている。この可変容量装置1Cの等価回路は、図3に示すような第1の実施形態の可変容量装置1Aの等価回路と同様となっている。第1の実施形態の可変容量装置1Aと第3の実施形態の可変容量装置1Cとの相違点は可変容量素子2Cであり、その第1の実施形態の可変容量素子2Aと第3の実施形態の可変容量素子2Cとの相違点は、図1および図2ならびに図15および図16に示すように、第2の駆動電極7Cおよび第2の容量用電極9Cが上下方向に配置されるか(第1の実施形態)、それとも同一の仮想の円環の周上に交互に配置されているか(第3の実施形態)という点にある。他の部分については相違しないか大きな相違ではないため、前述した相違点を重点的に説明する。
第3の実施形態の可変容量素子2Cは、図15および図16に示すように、絶縁層10から起立する円柱状の柱状振動子4C、その柱状振動子4Cの直径よりも大きな直径を有して絶縁層10から起立する支持壁5C、第1の駆動電極6C、第2の駆動電極7C、第1の容量用電極8Cおよび第2の容量用電極9Cを備えている。この柱状振動子4Cは第1の実施形態の柱状振動子4Aと同様、SOIの上層のシリコン30cをDeep−RIEすることにより円柱状に形成されている(図5を参照)。また、この支持壁5Cは、SOIの上層のシリコン30cをDeep−RIEすることにより円筒を八等分に分割した形状に形成されている。
第1の駆動電極6Cおよび第1の容量用電極8Cは、第1の実施形態と同様、柱状振動子4Cと一体に形成されており、柱状振動子4Cの表面層としてその柱状振動子4Cに支持されている。また、第1の駆動電極6Cおよび第1の容量用電極8Cの引出電極となる第1の引出電極12も第1の実施形態と同様にして形成されており、柱状振動子4Cの根元4CdからSOIのインシュレータ(10)を貫通して引き出されている。
支持壁5Cが支持する第2の駆動電極7Cおよび第2の容量用電極9Cは第1の実施形態の第2の駆動電極7Aおよび第2の容量用電極9Aの形状と異なっている。図15および図16に示すように、これら第2の駆動電極7Cおよび第2の容量用電極9Cは支持壁5Cの上端面5Ccを電気めっきすることにより形成された八分割された円環状の導電部材に導電性ワイヤ16を個々に接続して形成されたものである。第2の駆動電極7Cと第2の容量用電極9Cとの違いは導電性ワイヤ16の接続先の違いである。導電性ワイヤ16を外部電源3に接続すると導電部材の片7Ca〜7Cdは第2の駆動電極7Cとなり、導電性ワイヤ16を他の回路に接続すると導電部材の片9Ca〜9Cdは第2の容量用電極9Cとなる。この接続先を図15に示すように交互に異ならせることにより、第2の駆動電極7Cおよび第2の容量用電極9Cは支持壁5Cの上方における同一の円環の周上に交互に分割配置される。また、これら第2の駆動電極7Cおよび第2の容量用電極9Cは八等分に分割された円筒状の導電部材を交互に用いているため、それら第2の駆動電極7Cまたは第2の容量用電極9Cの配置角は90°ずつずれていることになる。
次に、図15および図16を用いて、第3の実施形態の可変容量装置1Cおよび可変容量素子2Cの作用を説明する。
第3の実施形態の可変容量装置1Cは、図16に示すような可変容量素子2Cおよび図示しない外部電源3を備える。第1の実施形態と同様、この外部電源3から位相差90°ずつの4つの正弦波の駆動電圧(図4A〜Dおよび図4Eを参照)が90°ずつずれて分割配置された第2の駆動電極7Cの各片7Ca〜7Cdに対してその周方向(片7Ca→片7Cb→片7Cc→片7Cdの方向またはその逆方向)に順に印加されると、第1の駆動電極6Cと第2の駆動電極7Cとの間の駆動電圧が第2の駆動電極7Cの周方向に順に増減し、それによって静電力が第2の駆動電極7Cの周方向に順に強弱する。この静電力の強弱が第2の駆動電極7Cの周方向に順に生じることにより、柱状振動子4Cの根元4Cdを固定端として柱状振動子4Cの先端4Ceが第2の駆動電極7Cの配置側にたわみながら第2の駆動電極7Cの周方向に回転する。また、第1の実施形態や第2の実施形態と同様、柱状振動子4Cの回動に共振を利用することにより、小さな駆動電圧で大きな静電容量を得ることができる。
ここで、第2の駆動電極7Cおよび第2の容量用電極9Cからなる第2組の電極7C、9Cは、柱状振動子4Cの上端を囲繞する仮想円環の同一周上においてそれぞれ交互に配置されている。また、第1の駆動電極6Cおよび第1の容量用電極8Cからなる第1組の電極6C、8Cは柱状振動子4Cと一体形成されている。つまり、それらは第2組の電極7C、9Cの配置に対応して柱状振動子4Cの上端に仮想配置されていることになる。そのため、柱状振動子4Cが回動すると第1の容量用電極8Cと第2の容量用電極9Cとの対向距離が小さくなり、第1の容量用電極8Cと第2の容量用電極9Cとの間の静電容量が大きくなる。これによって、それらの間の静電容量を所望の容量に自由に変更することができる。
第3の実施形態の可変容量素子2Cの特徴としては、第1の駆動電極6Cおよび第1の容量用電極8Cならびに第2の駆動電極7Cおよび第2の容量用電極9Cが柱状振動子4Cの外側面4Cbの上方または支持壁5Cの上端面5Ccにおいてそれぞれ同一周上に配置されていることにある。これらが同一周上に配置されていると、静電力により柱状振動子4Cが第2の駆動電極7C側にたわんだとき、それらが第1の実施形態のように上下方向に配置されるよりも第1の容量用電極8Cと第2の容量用電極9Cとの間の対向距離を近づけることができる(第1の実施形態または第2の実施形態を参照)そのため、それらの間の静電容量を大きくすることができる。
また、第2の容量用電極9Cを支持壁5Cの上端面5Ccにめっき形成することにより第2の容量用電極9Cを金属製にすることができるので、第1の実施形態のように第2の容量用電極9Cをシリコン製にするよりも大きな静電力を得ることができる。
その他、正弦波の駆動電圧の利用、柱状振動子4Cの円柱状形成および支持壁5Cの円形包囲、シリコンまたはSOIを用いた柱状振動子4Cおよび支持壁5CのRIEによるエッチング、柱状振動子4Cと第1の容量用電極8Cとの一体形成ならびに支持壁5Cと第2の容量用電極9Cとの一体形成により得られる作用は第1の実施形態と同様である。
すなわち、第1から第3の実施形態の可変容量装置1A〜1Cおよび可変容量素子2A〜2Cによれば、柱状振動子4A〜4Cのたわみ量に依存することなく柱状振動子4A〜4Cの回動に共振を利用することができるので、駆動電圧が小さくても所望の静電容量を得ることができる。そのため、小さな消費電力により大きな静電容量を得ることができるという効果を奏する。
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
例えば、図17および図18に示すように、他の実施形態の可変容量素子2Dにおいては、柱状振動子4Dは八角柱などの角柱状に形成されていてもよい。その際には、第1の実施形態に似たような八角孔5Daを有する支持壁5D(図17および図18を参照)または第2もしくは第3の実施形態に似たような柱状振動子4Dを八角形状に囲繞する支持壁5D(図示せず)を形成することが好ましい。また、柱状振動子4Dに支持(正確には仮想支持)される第1の駆動電極6Dおよび第1の容量用電極8Dについては、それらが一体に形成されない場合、図18に示すようにそれらに接続される第1の引出電極12および第4の引出電極15を設けることが好ましい。一方、第2の駆動電極7Dは第1の駆動電極6Dの対向位置に電気めっきにより平板状に分割形成されており、第2の容量用電極9Dはその下方に支持壁5Dと一体に形成されていることが好ましい。
また、第1の駆動電極6Dおよび第2の駆動電極7Dについては少なくともどちらか一方が分割形成されていればよい。そのため、図19および図20に示すように、他の実施形態の可変容量素子2Eにおいては、八等分に分割されたカットケーキ片6Ea〜6Ehのような形状にめっき形成された第1の駆動電極6Eが柱状振動子4Eの上方における仮想の八角環の周上に分割配置されるとともに、それに対向する第2の駆動電極7Eが八角環状に形成されて柱状振動子4Eを囲繞する仮想の八角環の周上に配置されるようにしてもよい。その際には、分割配置された第1の駆動電極6Eの各片6Ea〜6Ehに対して第1の引出電極12を形成して相互に絶縁性を保持するようにする。
さらに、他の実施形態の可変容量素子においては、図示はしないが、柱状振動子が支持壁側にたわんだとき、それらの間に介在する空気の存在により柱状振動子がダンピングして第1の駆動電極と第2の駆動電極との間の対向距離が振動してしまうことを防止するため、柱状振動子と支持壁との間の空間を真空に保持するカバーを備えていることが好ましい。このカバーは真空保持機能を有していればその形状および大きさは自由である。このカバーにより、柱状振動子と支持壁との間の空間から空気を排除することができるので、空気が介在することによるダンピングの悪影響を減少または排除することができる。