JP4278132B2 - 高効率水素製造方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素製造方法および装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、水素製造の効率を高めるための方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素は燃焼時に二酸化炭素などの温室効果ガスを発生しないクリーンなエネルギーである。近年、水素を燃料とする燃料電池自動車の開発が進み、その実用化が議論されるようになってきた。そのため、国内外で水素エネルギー関連技術に対する関心が高まっている。
【0003】
水素は、(1)水の電気分解、(2)石炭の酸化・水蒸気分解、(3)ナフサの水蒸気改質、(4)天然ガスの水蒸気改質で製造できるが、そのほとんどは天然ガスの水蒸気改質方式によって製造されている。
【0004】
天然ガスの水蒸気改質のプロセスは、次のように行なわれる。先ず、天然ガス(主成分:メタン(CH))と水蒸気(HO)を約800℃まで加熱し、ニッケル等の触媒下で反応させ、一酸化炭素(CO)と水素(H)に変化させる(数式1参照)。この反応は、吸熱反応(ΔH=250kJ/mol)である。
【0005】
【数1】
Figure 0004278132
【0006】
数式1の反応が終了した後、改質ガスを約350〜500℃(第1段反応)、約200〜250℃(第2段反応)、と2段階で冷却および転化反応させて、鉄−クロム(第1段反応)や銅−亜鉛(第2段反応)等の触媒下で、改質ガス中の一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)を二酸化炭素(CO)と水素(H)に変成させる(数式2参照)。この反応は発熱反応である(ΔH=−41.1kJ/mol)。
【0007】
【数2】
Figure 0004278132
【0008】
そして、数式2の反応で生成した二酸化炭素と水素を分離して水素ガスを得る。従来、水素と二酸化炭素の混合ガスから二酸化炭素を分離する方法として、一旦室温付近まで混合ガスを冷却するアミン法や炭酸カリ法などがある。また、水素と二酸化炭素の混合ガスから水素を分離する方法として、やはり一旦室温付近まで混合ガスを冷却してセルロースアセテートやポリスルホン多孔膜シリコンコート等で分離するものがある。例えば、炭酸カリ水溶液を用いた化学吸着分離法では、数式2の反応で生成した二酸化炭素と水素を室温(常温)まで冷却した後、二酸化炭素を炭酸カリ(KCO)水溶液により吸収させ、水素ガスを得るようにしている(数式3参照)。
【0009】
【数3】
Figure 0004278132
【0010】
水素を分離した後、反応生成物である2KHCOは、加熱されることで、二酸化炭素と水を放出し、KCOに再生される(数式4参照)。この再生工程により、CO吸収剤である炭酸カリ水溶液を繰り返し使用することができる。
【0011】
【数4】
Figure 0004278132
【0012】
また、近年、高温下で水素と二酸化炭素の混合ガスから水素を分離する膜として、多孔質ガラス膜やパラジウム−銀合金膜が研究されており、一部実用化されている。例えば、非特許文献1には、500〜550℃で数式1および数式2の水蒸気改質工程を同時に行うとともに(数式5参照)、パラジウム−銀合金膜を用いて水素を分離し、高純度水素を製造するメンブレンリアクタ(膜反応器)型水素製造装置が開示されている。パラジウム−銀合金膜は、水素生成反応場の水素分圧が透過側の水素分圧よりも高くなるようにして、当該水素分圧差を水素透過の駆動力として用いられる。
【0013】
【数5】
Figure 0004278132
【0014】
その他、ボンベに充填されて販売されている水素は、簡易なオンサイト水素製造法であるメタノール改質法(天然ガスの改質反応に比べて低い操作温度であり、シフト反応を行う反応器が不要なため設備費は安いという特長をもつ)を用いて製造されることが一般的である。
【0015】
【非特許文献1】
藤本芳正、小林一登、平野昌宏、安田勇、白崎義則、「メンブレンリアクタ型水素製造装置の開発、Vol.38, No.5 p.246-249 (2001).」
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
数式5で示されるメタンなどの炭化水素系燃料の水蒸気改質には水が必要であり、また数式5の改質反応は吸熱反応であるため熱も必要とする。従って、連続的に水素を製造するためには、メタンの他に水と熱を反応場に供給する必要がある。
【0017】
しかしながら、高圧の反応器内に水を送り込むためには多くのエネルギーを必要とし、また別の熱源から反応器に熱を伝えることは、水素製造に対するエネルギー効率の大幅な低下につながる。反応器内に空気を送り込んで燃焼反応を起こさせ、反応器内に燃焼熱と水を発生させることも考えられるが、この場合、反応器内に空気中の窒素が混入してしまう。窒素は水素生成に何ら寄与せず、供給する前に窒素を分離し酸素のみ供給する、或いは後で反応器内から窒素を除去する、などの処理が必要となる。圧力スイング法(PSA)を用いて空気中の酸素と窒素を分離し、酸素のみを反応器に供給することも考えられるが、このためには多くのエネルギーを必要とし、かえって非効率となってしまう。
【0018】
また、水素を利用する機器や装置(例えば燃料電池)に対し、必要時に速やかに水素を供給するため、つまり実用上不可欠な負荷追従性を得るために、製造された水素ガスは圧力(用途により異なるが、例えば10気圧以上)を有していることが望まれる。例えば普及が最も早い燃料電池と期待される固体高分子型燃料電池(PEFC)は、家庭用コージェネレーションや自動車内燃機関に代わる動力として期待されており、負荷機器のスイッチのオン・オフも含めた瞬間電力負荷および瞬間出力負荷への対策が不可欠である。また、燃料電池本体では、発電出力に必要な水素量の不足する事態が生じると、腐食などの悪影響を及ぼす。
【0019】
しかしながら、従来は、水素製造装置とは別の機器(例えば圧縮機やポンプなど)を用いて水素を高圧化する必要があるため、設備の大型化やコスト高を招いてしまう。例えばボンベに充填されて販売されている水素は、水素ガスをボンベに高圧充填するコストや輸送コストが含まれるため、高額(約200円/Nm程度(Nmは、0℃、1気圧での体積を示す))で取引されている。
【0020】
また、アミンや炭酸カリにより水素と二酸化炭素の混合ガスから二酸化炭素を分離する方法、セルロースアセテートやポリスルホン多孔膜シリコンコートにより水素と二酸化炭素の混合ガスから水素を分離する方法では、混合ガスを常温まで冷却する必要がある。さらに、炭酸カリ等を繰り返し使用するためには、再生処理を施す必要がある。これらの冷却工程では熱交換損失が生じ、再生工程では多くのエネルギーが消費されるため、エネルギー効率の大幅な低下につながっており、水素製造設備の大型化やコスト高の要因にもなっている。このため、改質ガスなどの冷却工程やCO吸収剤の再生工程を必要としない水素分離法や二酸化炭素分離法が望まれる。
【0021】
また、多孔質ガラス膜では、比較的高温下での使用が可能ではあるが、分子ふるいを分離の原理としているため、水素ガスだけでなく他のガスも透過してしまうので、高純度の水素ガスを得ることができない。例えば、固体高分子型燃料電池では、燃料ガス(水素ガス)中に二酸化炭素が含まれていると、触媒下で微量ではあるが二酸化炭素と水素が一酸化炭素と水に変化し、発電性能が低下してしまうことが近年判ってきている。このため、二酸化炭素等の不純物を含まない高純度の水素製造が望まれる。
【0022】
また、パラジウム−銀合金膜では、メタンの水蒸気改質の反応場のような高温での使用が可能であり、且つ水素を選択的に分離できるので高純度の水素を得ることができるが、単位面積当り及び1時間あたりの水素透過速度が、4.2Nm/(hour・m)程度(水素透過側圧力:0.1MPa)と低い値に留まっている。また、貴金属であるパラジウムや銀の使用は、資源的な制約があり普及を阻害する要因となっているとともに、水素製造コストを高くしている要因の一つとなっている。
【0023】
また、従来のメンブレンリアクタでは、以下に述べる理由から数式5の平衡反応の右側への進行が遅く、時間あたりに製造される水素量が少ないと考えられる。反応速度論から、数式5の平衡反応定数(K)は、次式で表すことができる。
【0024】
【数6】
Figure 0004278132
但し、
K:平衡反応定数
CO2:二酸化炭素の分圧
H2:水素の分圧
CH4:メタンの分圧
H2O:水蒸気の分圧
【0025】
平衡反応定数(K)は各温度に対して一定の値をとる。ル・シャトリエ−ブラウンの法則で知られているように、数式5の平衡反応では、水蒸気改質の反応場(例えば反応器内)の圧力が高圧になるに従い、式の左側方向に反応が進行するため、発生する水素の分圧が小さくなる。このため、水素分圧差を水素透過の駆動力とするパラジウム−銀合金膜では、水素透過速度が遅くなる。また、数式1の反応には800℃以上の高温場が必要なことから、反応場が800℃以下の温度域である場合、高性能触媒を用いたとしても、数式1の反応が含まれる数式5の平衡反応の右側方向への進行は、かなり遅いと考えられる。さらに、反応器からは水素しか分離されないため、二酸化炭素が反応器中に残留し続けることとなる。平衡反応は、反応生成物を除去することで平衡を移動させることができるから、二酸化炭素が反応器に残留していると数式5の平衡反応を右側方向へ速やかに進行させることができない。また、反応器内の二酸化炭素濃度が高くなってくると、反応器内の水素分圧が低くなり水素が分離できないため、折角製造した水素を二酸化炭素と一緒に反応器から排出しなければならなくなり、効率が極めて悪くなる。このため、水蒸気改質の反応場から二酸化炭素を除去する技術が望まれる。また、地球温暖化防止の観点からも二酸化炭素の回収技術を備えた水素製造装置が望まれる。ところが、上述したように従来の二酸化炭素の分離方法では混合ガスを常温程度まで冷却する必要がある。
【0026】
そこで本発明は、水素の生成反応場に水や熱を効率的に供給する水素製造方法および装置を提供すること目的とする。さらに本発明は、コンプレッサ等を用いずに高圧の水素を製造する方法および装置並びに当該水素製造装置を備えた燃料電池自動車を提供すること目的とする。さらに本発明は、改質ガスなどの冷却工程やCO吸収剤の再生工程を必要とせずに水素を製造する方法および装置を提供すること目的とする。さらに本発明は、二酸化炭素等の不純物を含まない高純度の水素を製造する方法および装置を提供すること目的とする。さらに本発明は、水素の生成反応を速やかに進行させることができる水素製造方法および装置を提供すること目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の高効率水素製造方法は、炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器の外側に第1の電極を配置し、前記反応器または前記反応器に接続された循環路内に第2の電極を配置し、前記第1の電極と前記第2の電極とを酸素イオン導電体で接続し、前記反応器の外側に存在する酸素を前記第1の電極により酸素イオン化して、前記酸素イオン導電体中を移動させ、前記第2の電極により前記反応器または前記循環路中の水素または炭化水素系燃料と電気化学的に反応させて、前記反応器に水および熱を供給するようにしている。
【0028】
また、請求項2記載の高効率水素製造装置は、炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器を備えるとともに、前記反応器の外に存在する酸素を酸素イオン化する第1の電極と、当該酸素イオンが移動する酸素イオン導電体と、前記反応器から得られる水素または炭化水素系燃料と前記酸素イオン導電体を移動してきた酸素イオンとを電気化学的に反応させて水を生成する第2の電極とを備える水熱供給手段を有し、前記水熱供給手段により前記反応器に水および熱を供給するようにしている。
【0029】
したがって、反応器の外に存在する酸素分子は、第1の電極から電子を受け取って酸素イオンとなり、この酸素イオンは、酸素イオン導電体を介して第2の電極に移動する。第2の電極においては、この酸素イオンと水素との電気化学的な反応により水と電子が発生する。また、第2の電極においては、酸素イオンと炭化水素系燃料(例えばメタン)との電気化学的な反応により、水素および一酸化炭素と電子が発生する。当該発生した一酸化炭素は水と反応し、水素と二酸化炭素を生成する。さらに、第2の電極における上記炭化水素系燃料(例えばメタン)に起因する反応によって生成された水素も、第2の電極において酸素イオンと電気化学的に反応し、水と電子を発生させる。上記の電気化学的な反応によって電気(即ち電圧と電流)が発生し、電流が電解質中を流れることでジュール熱が発生する。発生した熱は、例えば第2の電極において発生した水を媒体として、反応器に供給できる。これにより、水と熱を同時に反応器に供給できる。
【0030】
また、請求項3記載の高効率水素製造方法は、炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器にカソードを配置し、前記反応器と隔てて設けられる水素分離室にアノードを配置し、前記カソードと前記アノードをプロトン導電体で接続し、前記反応器の外に存在する酸素と前記反応器から得られる水素または炭化水素系燃料とにより発電する燃料電池により前記カソードおよび前記アノードに電気を供給し、前記反応器から前記水素分離室に電気化学的に水素を移動させると共に、前記燃料電池において生成された水を前記反応器に供給するようにしている。
【0031】
また、請求項4記載の高効率水素製造装置は、炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器と、前記反応器と隔てて設けられる水素分離室へ水素を移動させる水素分離手段と、前記反応器の外に存在する酸素と前記反応器から得られる水素または炭化水素系燃料とにより発電すると共に水を生成する燃料電池を有し、且つ前記水素分離手段は、前記反応器に備えられるカソードと、前記水素分離室に備えられるアノードと、前記カソードと前記アノードの間に介在して水素イオンが移動するプロトン導電体とを有し、前記燃料電池を前記カソードと前記アノードに電気を供給する電源として用いるとともに、前記燃料電池により得られた水を前記反応器に供給するようにしている。
【0032】
したがって、反応器の外に存在する酸素と、反応器から得られる水素または炭化水素系燃料とにより燃料電池が発電し、当該発電により得られた電力により水素分離手段を駆動することができる。また、水素と酸素の電気化学的な反応により水が生成されるので、この水を反応器に供給することができる。
【0033】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の高効率水素製造装置において、前記燃料電池が単セルであるものとしている。燃料電池の単セルの起電力は通常小さく(例えば高々1V程度)、実用的な電力を得るために複数の単セルを電気的に直列接続することが一般的である。燃料電池の単セルを直列接続するためにはインターコネクタが必要となり、このインターコネクタ材料は、例えば固体酸化物形燃料電池の場合、高温で酸化(空気)雰囲気と還元(水素)雰囲気に耐え、電子伝導性を有する必要がある。このインターコネクタ材料を単セルと組み合わせる技術が、固体酸化物形燃料電池開発の最も大きな障壁となっている。ところが、水素分離手段は小さな電圧(例えば0.76V程度)でも駆動できるため、この場合には本発明に係る燃料電池は単セルで足り、インターコネクタ材料を単セルと組み合わせる必要がない。インターコネクタが無い燃料電池は大量生産が可能であり、燃料電池の製造コストを大幅に低減することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0035】
図1から図10に本発明の高効率水素製造方法および装置の実施の一形態を示す。この高効率水素製造方法は、例えば図7に示すように、炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器2の外側に第1の電極21を配置し、反応器2または反応器2に接続された循環路25内に第2の電極23を配置し、第1の電極21と第2の電極23を酸素イオン導電体22で接続し、反応器2の外側に存在する酸素を第1の電極21により酸素イオン化して、酸素イオン導電体中22を移動させ、第2の電極23により反応器2または循環路25中の水素または炭化水素系燃料と電気化学的に反応させて、反応器2に水および熱を供給するようにしている。
【0036】
例えば本実施形態の水素製造装置1は、図1に示すように、反応器2と、この反応器2とそれぞれ隔てて設けられる水素分離室4および二酸化炭素分離室6と、反応器2から水素分離室4へ水素を選択的に移動させる水素分離手段3と、反応器2から二酸化炭素分離室6に二酸化炭素を選択的に移動させる二酸化炭素分離手段5と、反応器2に水および熱を供給する水熱供給手段7と、を備えるようにしている。
【0037】
本実施形態では、反応器2において、炭化水素系燃料(例えばメタン(CH))と水蒸気(HO)とを反応させて主として水素(H)と二酸化炭素(CO)を生成する数式5の反応を起こさせるようにしている。尚、反応器2内のガスは、実際には、水蒸気(HO)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水素(H)等の混合気体となるため、「主として水素と二酸化炭素を生成する」と表現している。反応器2には、数式5の反応を起こさせるための触媒12が設けられている。この触媒12としては、例えば金属ニッケルのようなニッケル系触媒、あるいはニッケル系触媒におけるガス流方向の後部に酸化鉄や鉄−クロム複合酸化物のような鉄系酸化物を混合したものなど、数式5の反応を起こさせる場合に用いられる既知の触媒を利用して良い。
【0038】
本実施形態の水素分離室4は、図1に示すように、外部(例えば燃料電池などの水素利用機器13)と接続する水素流通路14をバルブ(弁)15で閉じることにより、密閉できるように構成されている。
【0039】
水素分離手段3は、反応器2側に備えられるカソード8と、水素分離室4側に備えられるアノード9と、カソード8とアノード9の間に介在して水素イオンが移動するプロトン導電体10と、カソード8とアノード9に電気エネルギーを供給する電源11とを備えている。
【0040】
したがって、図6に示すように、反応器2中の水素分子(水素ガス)Hは、カソード8に電子(e)を渡して水素イオン(プロトン)Hとなり、この水素イオンHは、カソード8とアノード9の間の電位差によりプロトン導電体10を介してアノード9に移動し、アノード9から電子(e)を受け取って、再び水素分子(水素ガス)Hとなって水素分離室4に放出される。尚、図6中の符号16は水素分子(水素ガス)を示し、符号17は水素イオン(プロトン)を示す。以下、カソード8とアノード9とプロトン導電体10の組を水素分離セル18と呼ぶ。
【0041】
電源11により電極(カソード8とアノード9)に電圧を加え、カソード8側からアノード9側に外部回路を通して電子を流し、水素イオンをプロトン導電体10中で移動させる。水素分離セル18を水素分離室4側に移動する水素量は、次式に示すように、水素分離セル18に通電した電流(I)の大きさと通電時間(t)に比例する。
【0042】
【数7】
Figure 0004278132
但し、
H2:移動した水素量[mol]
I:通電した電流[A]
t:通電した時間[s]
F:ファラデー定数
【0043】
この水素の移動に必要な電気エネルギーは、主に、電解質としてのプロトン導電体10中を水素イオンが移動する抵抗である電気抵抗(R)、水素分子を水素イオンに電気分解するために必要なカソード過電圧(ηc)、水素イオンを水素分子に戻すために必要なアノード過電圧(ηa)、反応器2と水素分離室4の間の水素濃度差により発生する逆起電力(E)、などに起因し、例えば次式で表すことができる。
【0044】
【数8】
必要な電気エネルギー=(RI+ηa+ηc+E)I
【0045】
ここで、水素濃度差により発生する逆起電力(E)は次式で表される。ただし、反応器2、水素分離室4、水素分離セル18の温度はすべてTとする。
【0046】
【数9】
Figure 0004278132
E:起電力[V]
R:気体定数
T:絶対温度[K]
F:ファラデー定数
P’H2:反応器2内の水素分圧
P”H2:水素分離室4内の水素分圧
ln:自然対数
【0047】
例えば、仮に温度が1000℃、水素分離室4内の水素分圧が10気圧、反応器2内の水素分圧が1気圧である場合、0.042[V]の逆起電力(E)が発生する。温度および反応器2内の水素分圧は同じとし、水素分離室4内の水素分圧を100気圧まで高めた場合、発生する逆起電力(E)は0.084[V]となる。水素分離室4と反応器2とで水素分圧の圧力差が大きくなっても、逆起電力(E)の増加は僅かである。また、プロトン導電体10の電気抵抗(R)は、水素分離室4と反応器2の間における水素濃度差や水素分圧差の影響を受けない。また、過電圧特性の評価として横軸に電流密度量の対数、縦軸に過電圧をプロットするグラフが知られている。カソード過電圧(ηc)およびアノード過電圧(ηa)は、電流(I)の値が小さい場合には、電流値の対数と直線関係を示しながら増加する特長を持つため、水素分離室4と反応器2の間における水素濃度差や水素分圧差の影響を殆んど受けない。水素分離セル18による水素の移動に必要な電気エネルギーで水素分離室4における水素の昇圧が可能であり、しかも当該電気エネルギーは水素分離室4における水素分圧が大きくなってもそれほど変化しないことから、効率的な水素の分離および昇圧が可能である。
【0048】
電極(カソード8とアノード9)の過電圧は、電極材料の選択によって小さくすることも可能である。電極材料としては、例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)などの金属、或いはこれらの金属とプロトン導電性を有したセラミックスとの混合物(サーメット)、例えばニッケルストロンチウムセレートサーメットなどが好適である。また、カソード8における水素の吸収およびアノード9における水素の放出を良好に行なうために、カソード8およびアノード9は多孔質体とすることが好ましい。また、電極(カソード8とアノード9)の過電圧は、電極のミクロ構造の最適化によっても小さくすることが可能である。例えば、電極(カソード8とアノード9)の気孔率(相対密度の逆数)、電極材料がサーメットの場合には金属とセラッミクスの混合比、電極材料の粒子径、などを最適なものにすることで、過電圧を小さくすることが可能である。
【0049】
電解質(プロトン導電体10)は、電気抵抗を小さくするために薄い膜状とすることが好ましく、また水素以外の物質が水素分離室4に混入してしまうことを防ぐために緻密であることが好ましく、さらに水素分離室4で高圧水素を得るために液体よりも固体であることが好ましい。そのような電解質として、プロトン導電性を有する安価なセラミックス、例えばストロンチウムセレート(SrCe1−xYb3−z)系やバリウムセレート(BaCe1−xNd3−z)系の利用が好ましい。尚、SrCe1−xYb3−zの場合、0<x≦0.1(特にx=0.05)の組成範囲が、高いプロトン導電性(例えば、800℃のとき、6×10−2[S/cm])を有するので好ましい。また、BaCe1−xNd3−zの場合、0.05≦x≦0.15(特にx=0.10)の組成範囲が、高いプロトン導電性(例えば、800℃のとき、2×10−1[S/cm])を有するので好ましい。
【0050】
ここで、水素分離セル18は平板型としても良く、例えば図4および図5に示す変形例のように、水素分離セル18を円筒状に形成し、またプロトン導電体10を薄膜としても良い。円筒状の場合、耐圧性がより高い構造となり、水素分離室4に貯蔵される高圧水素の圧力に充分耐え得る。また、円筒状の水素分離セル18を小さく若しくは細く、例えばストローないし爪楊枝程度の大きさに構成しても良い。更に、この細管状水素分離セル18を反応器2内に複数設けて共通の水素分離室4に接続するようにしても良い。尚、図4および図5中の点線の矢印が水素ガスの流れを示している。但し、上述した水素分離セル18の構造および電極材料や電解質材料は好適な例示であって、これらの例に限定されるものではない。
【0051】
また、電気化学的に反応器2から水素分離室4に移された水素は、高い熱を有している。そこで、当該水素の有する熱を有効に利用することで、水素製造装置1の効率を高めることができる。例えば、熱交換器19を用いて電気化学的に分離された水素が有する熱を炭化水素系燃料および水の供給管20に伝えて、炭化水素系燃料や水などの予熱に利用しても良い(図1参照)。その他、熱交換器などを用いて水素が有する熱を反応器2や予備水蒸気改質用の反応器等に伝えて、水蒸気改質の吸熱反応に利用しても良い。
【0052】
以上のように構成された水素分離手段3では、反応器2と水素分離室4の水素分圧の高低によらず、電気化学的原理に基づいて、あたかも反応器2から水素を汲み上げて水素分離室4へ吐き出して移す水素ポンプとして機能する。したがって、水素分離室4を密室とした状態で水素分離室4側に水素を吐出することで、水素分離室4内の水素分圧が高まり、高圧水素を得ることができる。そして、バルブ(弁)15を開けることで、水素分離室4内の高圧水素を例えば燃料電池などの水素利用機器13に速やかに供給することができる。
【0053】
この水素分離手段3によれば、パラジウム−銀合金膜のように水素分離室4の水素分圧を反応器2内の水素分圧よりも低くする必要はなく、パラジウムや銀といった貴金属を用いる必要もない。また、高圧水素を得るためのコンプレッサ等の流体圧縮手段は不要であり、水素の昇圧に要していたエネルギーやコストを削減することができる。尚、実用上不可欠な負荷追従性を得るために、水素分離室4内の水素ガス圧は例えば10気圧以上とすることが望ましい。
【0054】
次に水熱供給手段7について説明する。この水熱供給手段7は、反応器2の外に存在する酸素を酸素イオン化する第1の電極21と、当該酸素イオンが移動する酸素イオン導電体22と、反応器2から得られる水素または炭化水素系燃料(本実施形態ではメタン)と酸素イオン導電体22を移動してきた酸素イオンとを電気化学的に反応させて水を生成する第2の電極23とを備えている。
【0055】
例えば本実施形態の酸素イオン導電体22には、酸素イオン導電性と電子伝導性とを備える材料を用いている。当該材料としては、例えば、CeO−R(R=Y,Sm,Gd等の希土類元素)系酸化物(イットリアドープセリア、サマリアドープセリア、ガドリアドープセリア)などが好適である。
【0056】
第1の電極21の材料としては、例えばLa1−xAECo1−yFeやLa1−xAEMn1−yCoなど(AE=Ca,Sr等のアルカリ土類金属元素)のペロブスカイト酸化物が好適である。尚、La1−xAECo1−yFeの場合、一般に0.1≦x≦0.4、0.1≦y≦0.4の組成範囲が、酸素を酸素イオン化する触媒反応を良好に示すので好ましい。また、La1−xAEMn1−yCoの場合は、0.1≦x≦0.4、0≦y≦0.4の組成範囲が一般に好ましい。特に、Mn系ペロブスカイト酸化物は、(La1−xAE1−aMn1−yCoも、化学的に安定な電極材料として存在でき、0≦a≦0.1が好ましい組成範囲として考えられる。
【0057】
第2の電極23の材料としては、例えばTE金属(鉄族、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co))と、セラミックス(例えばイットリア安定化ジルコニア(Zr0.90.11.95)、サマリウムドープセリア(Ce0.9Sm0.11.95)、マグネシウム−ストロンチウムドープランタンガレート(La0.8Sr0.2Ga0.85Mg0.152.825))酸化物の混合物(TE系サーメットなど)が好適である。
【0058】
尚、TE金属とセラミックスのサーメットは多くの実験結果とpercolation理論から、TE金属が約40体積%程度含まれると充分な導電率が得られ、40体積%のTE金属と60体積%のセラミックスから構成されるサーメットの電極特性が特に優れたものが多いことが知られている。上記サーメットを材料として電極を作製する方法は種々あるが、一例を挙げると、粗いイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粒子、細かいYSZ粒子、および酸化ニッケルを混合し、その後、テレピン油などの有機溶剤で電解質上にコーティングし、乾燥後、1400℃、5時間程度で焼結させて電極を構成することが一般的に行なわれている。
【0059】
第1の電極21は、酸素供給手段(例えば空気導入部)24が供給する酸素含有ガス(例えば空気)に触れるように反応器2の外側に配置される。第2の電極23は反応器2中のガスと触れるように例えば反応器2の内部に配置される。電解質としての酸素イオン導電体22は、空気側電極(第1の電極21)と燃料側電極(第2の電極23)に挟まれるように配置される。
【0060】
例えば図2に示すように第2の電極23を反応器2の内部に設置する構成の場合、水熱供給手段7と反応器2が一体化され、水素製造装置1をコンパクトに構成できる。ここで、第2の電極23において水素やメタンが良好に反応するように、例えば図4に示すように反応器2内のガスを反応器2内で循環させることが好ましい。当該ガス循環は、例えば流体の密度差による自然対流により実現しても良く(この場合、反応器2内の自由な流体の移動を規制するように反応器2内に部分的な仕切りなどを設けても良い)、或いは反応器2内に羽根車などを設けて当該羽根車などの回転運動による強制対流により実現しても良い。反応器2内でガスを循環させる場合、水熱供給手段7の燃料利用率が高くなる利点もある。尚、図4中の実線の矢印が反応器2内の混合ガス(メタン、水蒸気、水素、二酸化炭素などを含む)の流れを示している。また、図4および図5中の点線の矢印が水素ガスの流れを示し、一点鎖線の矢印が水蒸気の流れを示し、二点鎖線の矢印が二酸化炭素の流れを示している。また、図5中の実線の矢印が酸素含有ガス(例えば空気)の流れを示している。
【0061】
但し、第2の電極23を反応器2の内部に設置する構成には限定されない。例えば図3に示す変形例のように、反応器2内のガスを一旦反応器2の外に出させてから再び反応器2内に戻す循環路25を設けて、この循環路25を流れる排ガスに第2の電極23が触れるように、この循環路25の途中に第2の電極23を設置するようにしても良い。図3に示す構成の場合、例えば循環路25と水や熱を必要とする他のシステム(図示省略)とをバイパス路(図示省略)で接続し、且つ当該バイパス路を開閉する弁(図示省略)を設けることで、水熱供給手段7で水や熱が過剰に得られるような場合には、当該過剰の水や熱を他のシステムに供給するといった制御が行なえる。また、反応器2の外でガスを循環させる場合、熱交換器などの利用が容易となり、熱の有効利用が容易となる利点がある。
【0062】
電解質(酸素イオン導電体22)は、電気抵抗を小さくするために薄い膜状とすることが好ましく、また窒素などの水素生成に寄与しない物質が反応器2に混入してしまうことを防ぐために緻密であることが好ましい。一方、第1の電極21における反応物である酸素の吸収および第2の電極23における生成物である水の排出を良好に行なうために、第1の電極21および第2の電極23は多孔質体とすることが好ましい。
【0063】
以上のように構成された水熱供給手段7は、次のように作動する。即ち、図7に示すように、反応器2の外の空気中に存在する酸素分子Oは、空気側電極(第1の電極21)から電子(e)を受け取って酸素イオンO2−となり、この酸素イオンO2−は、酸素イオン導電体22を介して燃料側電極(第2の電極23)に移動する。第2の電極23においては、この酸素イオンO2−と水素Hとの電気化学的な反応により水(HO)と電子(e)が発生し、または当該酸素イオンO2−とメタンCHとの電気化学的な反応により水素(H)および一酸化炭素(CO)と電子(e)が発生する。当該発生した一酸化炭素(CO)は水(HO)と反応し、水素(H)と二酸化炭素(CO)を生成する。さらに、第2の電極23における上記メタンに起因する反応によって生成された水素も、第2の電極23において酸素イオンと電気化学的に反応し、水と電子を発生させる。例えば、反応器2を循環する又は反応器2から排出される混合ガス34の水素が第2の電極23において水に化学変化して、混合ガス35となって再び反応器2を循環する又は反応器2に再び供給される。
【0064】
ここで、本実施形態の電解質(酸素イオン導電体22)は電子伝導性を有するので、電子は外部回路を流れる必要が無く、電解質(酸素イオン導電体22)内を流れる。また、反応器2の内外での酸素分圧の違いにより自然に電圧が発生し、この電圧によって電子は第1の電極21側に流れる。従って、水熱供給手段7に外部より電気エネルギーを与える必要は無い。
【0065】
水素と酸素が電気化学的に反応することより電気(即ち電圧と電流)が発生し、電流が電解質中を流れることでジュール熱が発生する。発生した熱は、例えば第2の電極23において発生した水を媒体として、反応器2に供給される。即ち、水と熱が同時に反応器2に供給される。
【0066】
数式5で示されるメタンの水蒸気改質を進行させるためには水が必要であり、また当該反応は吸熱反応であるため熱も必要とするが、これら必要な水と熱を、反応器2の外に存在する空気と、反応器2の中に存在する又は反応器2から排出されるガス中に存在する水素またはメタンから、得ることができる。しかも、空気を直接反応器2に供給しないので、水素生成に何ら寄与しない窒素などが反応器2に混入し、反応器2に残留してしまうことを防止できる。図2および図3中のハッチングを施した矢印は第1の電極21に供給される酸素と窒素を含んだ空気の流れを示し、黒塗の矢印は排ガスとして排出される窒素の流れを示している。従って、当初必要な水と熱を水供給手段(例えば給水タンク)26や熱供給手段(例えばヒータや熱交換器)27により反応器2に供給しておけば、以後、水と熱については水熱供給手段7によって自然に供給されるので、反応器2には炭化水素系燃料供給手段(例えばメタンを主成分とする天然ガスが充填されたタンク)28により炭化水素系燃料のみを供給すれば良い。尚、高圧の炭化水素系燃料と水とは混合され、例えば400℃〜750℃の高温とした状態で、反応器2に供給することが好ましい。従って、水および熱についてのクローズドサイクルが実現され、水素製造装置1のエネルギー効率をより高めることができる。但し、運転条件等によって反応器2内の水や熱が不足する場合には、水供給手段26や熱供給手段27によって不足分の水や熱を適宜供給しても良いのは勿論である。
【0067】
次に二酸化炭素分離手段5について説明する。本実施形態の水素製造装置1は、二酸化炭素分離手段としての二酸化炭素分離膜5を反応器2に備えている。二酸化炭素分離膜5は、反応器2と二酸化炭素分離室6との仕切り(隔壁)となる。例えば本実施形態では、二酸化炭素分離膜5の材料に、アルカリ金属系複合酸化物ABO(A=Li,Na,K等のアルカリ金属元素、B=Ti,Zr等のチタン族元素、但し、AまたはBに該当する元素は一種類だけでなく複数種の元素であっても良く、例えば、LiKZrO、LiZr0.5Ti0.5でも良い。)またはアルカリ金属系オルソシリケートASiO(A=Li,Na,K等のアルカリ金属元素、但し、Aに該当する元素は一種類だけでなく複数種の元素であっても良く、例えば、LiSiOでも良い。)の一方または双方を少なくとも用いるようにしている。そして、二酸化炭素分離室6の二酸化炭素分圧を、反応器2内の二酸化炭素分圧よりも低くなるように、圧力差を設けるようにしている。このため、例えば吸気装置などを用いて二酸化炭素分離室6の二酸化炭素分圧を負圧(例えば大気圧以下)の状態となるようにしている。
【0068】
二酸化炭素分離膜5の作用を、ABOを例に挙げ、図8を用いて説明する。反応器2側の二酸化炭素分離膜5の表面では、ABOが二酸化炭素(CO)と反応してACOとBOとなる(即ち、数式10の反応が進む)。
【0069】
【数10】
Figure 0004278132
【数11】
Figure 0004278132
【数12】
Figure 0004278132
【0070】
当該反応により生じたACOまたはCO 2−は溶融状態となり、二酸化炭素分離膜5中を二酸化炭素分離室6側に拡散する。そして、二酸化炭素分離室6側の二酸化炭素分離膜5の表面では、ACOが解離して二酸化炭素(CO)を二酸化炭素分離室6に放出する(即ち、数式11の反応が進む)。またはCO 2−が解離して二酸化炭素(CO)を二酸化炭素分離室6に放出する。当該解離により生じたAOは二酸化炭素分離膜5中を反応器2側に逆拡散する。当該逆拡散したAOは、BOと反応してABOに戻り(即ち、数式12の反応が進む)、反応器2側の二酸化炭素分離膜5の表面で二酸化炭素(CO)と反応して、再び溶融状態のACOまたはCO 2−となって、二酸化炭素分離膜5中を二酸化炭素分離室6側に拡散する。これにより、物質移動のサイクルが実現され、反応器2側での二酸化炭素の吸収および二酸化炭素分離室6側での二酸化炭素の放出が連続的に行なわれる。
【0071】
SiOの場合も同様の原理で反応器2から二酸化炭素分離室6へ二酸化炭素を分離できる。即ち、反応器2側の二酸化炭素分離膜5の表面では、ASiOが二酸化炭素(CO)と反応してACOとASiOとなる(即ち、数式13の反応が進む)。
【0072】
【数13】
Figure 0004278132
【数14】
Figure 0004278132
【数15】
Figure 0004278132
【0073】
当該反応により生じたACOまたはCO 2−は溶融状態となり、二酸化炭素分離膜5中を二酸化炭素分離室6側に拡散する。そして、二酸化炭素分離室6側の二酸化炭素分離膜5の表面では、ACOが解離して二酸化炭素(CO)を二酸化炭素分離室6に放出する(即ち、数式14の反応が進む)。またはCO 2−が解離して二酸化炭素(CO)を二酸化炭素分離室6に放出する。当該解離により生じたAOは二酸化炭素分離膜5中を反応器2側に逆拡散する。当該逆拡散したAOは、ASiOと反応してASiOに戻り(即ち、数式15の反応が進む)、反応器2側の二酸化炭素分離膜5の表面で二酸化炭素(CO)と反応して、再び溶融状態のACOまたはCO 2−となって、二酸化炭素分離膜5中を二酸化炭素分離室6側に拡散する。これにより、物質移動のサイクルが実現され、反応器2側での二酸化炭素の吸収および二酸化炭素分離室6側での二酸化炭素の放出が連続的に行なわれる。
【0074】
LiZrOを例に挙げて、二酸化炭素分離膜5の作用を更に詳細に説明する。図9にLiZrOのCO吸収および放出特性を示す。図9の縦軸は、CO雰囲気下にあるLiZrOのCO吸収による重量変化率(100×(同図中横軸の各温度で測定した重量−測定前の初期重量)/(測定前の初期重量)[%])、つまりLiZrOのCO吸収量を示す。同図中の符号Aで示すグラフは二酸化炭素分圧が0.7MPaの場合を、図中の符号Bで示すグラフは二酸化炭素分圧が0.1MPaの場合を示す。CO雰囲気下、約460℃程度以上となると、LiZrOはCOを吸収して、LiCOとZrOに変化する(即ち、数式16の反応が進む)。さらに高温(例えば約900℃程度)となると、LiCOはCOを放出して、LiZrOに戻る(即ち、数式17および数式18の反応が進む)。
【0075】
【数16】
Figure 0004278132
【数17】
Figure 0004278132
【数18】
Figure 0004278132
【0076】
図9に示すように、二酸化炭素分圧が高い方が、二酸化炭素分圧が低い場合と比べて、COの吸収量が多く、また吸収したCOを放出するようになるまでの温度が高くなる。このため、ある一定の温度範囲(図9の例では600℃〜800℃程度、より好ましくは750℃付近)において、二酸化炭素分離膜5を挟んで二酸化炭素の分圧差を設ければ、二酸化炭素分離膜5は高圧側でCOを吸収し低圧側でCOを放出するようになる。上記一定の温度範囲は、二酸化炭素分離膜5の作動温度となる。
【0077】
従って、高圧側(反応器2側)では、数式16の反応が進行し、LiZrOがCOと反応して、溶融状態のLiCOと固体のZrOが生じる。溶融状態のLiCOまたはCO 2−は二酸化炭素分離膜5中を低圧側(二酸化炭素分離室6側)に拡散する。低圧側では、数式17の反応が進行し、LiCOまたはCO 2−がCOを放出して、LiOとなり、逆に高圧側に拡散する。高圧側に拡散したLiOは、ZrOと反応してLiZrOに戻り、再びCOと反応して溶融状態のLiCOまたはCO 2−となり、二酸化炭素分離膜5中を低圧側に拡散する。これにより、COを連続的に反応器2から二酸化炭素分離室6へと分離することが可能となる。
【0078】
尚、例えば本実施形態では、薄膜状の二酸化炭素分離膜5を多孔質膜29で支持するようにしている。この多孔質膜29の材料としては、例えばアルミナやイットリアなどの希土類元素で安定化したジルコニアなどが好適である。また、例えば本実施形態では、ABOやBOなどの粒成長を妨げる粒子であって粒径がナノオーダの粒子(不活性ナノ粒子)30を、二酸化炭素分離膜5の材料に添加するようにしている。不活性ナノ粒子30としては、例えばアルミナなどが好適である。尚、図8中の符号31はABO(例えばLiZrO)粒子を示し、符号32はBO(例えばZrO)粒子を示し、符号33は溶融状態のACO(例えばLiCO)を示す。
【0079】
ここで、CO分離を連続的に行なうためには、二酸化炭素分離膜5中の円滑な物質移動が必要となるため、高圧側のCO吸収反応により生成されて低圧側でCOを放出する機能を担う物質(例えばLiCOなど)は、溶融状態であることが望ましい。そこで、上記物質の融点を調整することで、二酸化炭素分離膜5の作動温度(即ち、高圧側でCOを吸収し尚且つ低圧側でCOを放出する温度)を制御できると考えられる。例えばアルカリ金属系炭酸塩を膜材料にドープ(添加)することで、上記物質の融点を下げることができる。
【0080】
LiCOの融点は732℃であるが、LiCOとKCOの混合物の融点は500℃以下となることが知られている(例えば図10(A)参照)。さらに、LiCOとKCOとNaCOの混合物の融点は400℃以下となることが知られている(例えば図10(B)参照)。従って、例えばKCOとNaCOの一方または双方を膜材料LiZrOに添加し且つその添加量を調整することで、二酸化炭素分離膜5の作動温度を約400〜700℃の範囲内で制御することが可能となる。例えばKCOとNaCOの一方または双方を、膜材料LiZrOに添加し、Li2−xNaZrOまたはLi2−xZrOあるいはLi2−x−yNaZrOとする。CO吸収反応によりLiCOまたはLi2−xNaCOまたはLi2−xCOまたはLi2−x−yNaCOが生成されるが、これら生成物が目的とする温度域で溶融状態となるようにする。これにより、これらの物質が二酸化炭素分離膜5中で良好に拡散し、CO分離が連続的に行なわれる。
【0081】
二酸化炭素分離膜5の作動温度は、水素製造装置1における温度調整を容易とする観点から、数式5の反応を起こさせる水蒸気改質触媒12、水素分離手段3、水熱供給手段7の作動温度に合わせることが好ましい。各部(二酸化炭素分離膜5、水蒸気改質触媒12、水素分離手段3、水熱供給手段7)の温度差は例えば200℃以内であることが好ましい。また、反応器2内の温度は、例えば400℃〜900℃程度であることが好ましい。LiCOとKCOとNaCOの混合物の共晶温度が400℃未満には下がらないため、400℃未満の温度域では二酸化炭素分離膜5の作動が困難と考えられるからである。また、900℃を超えるとLiZrOが二酸化炭素を吸収しなくなることから、やはり二酸化炭素分離膜5の作動が困難と考えられるからである。
【0082】
以上のように構成される二酸化炭素分離膜5では、数式5の反応場のような高温で機能するので、反応器2内の混合ガスを冷却する工程は不要となる。さらに、この二酸化炭素分離膜5では、二酸化炭素の吸収と放出が連続的に行なわれるので、吸収剤などの再生工程は不要である。従って、多くのエネルギーが消費される冷却工程や再生工程が不要となり、エネルギー効率を大幅に向上させることができる。また、原理としては、二酸化炭素しか二酸化炭素分離膜5を透過できないため、純度の高い二酸化炭素が回収できる。二酸化炭素の回収により、地球温暖化防止にも寄与できる。さらに、水素製造装置1では、反応器2から水素を分離すると同時に二酸化炭素も分離するので、水素だけを分離する場合よりも、数式5の平衡反応を右側へ速やかに進行させることができる。また、反応器2内に二酸化炭素が残留しないため、折角製造した水素を二酸化炭素と一緒に反応器2から排出する必要が無い。従って、より多くの水素を効率的に得ることができる。
【0083】
以上に説明した水素分離手段3および水熱供給手段7および二酸化炭素分離膜5および水蒸気改質触媒12は、反応器2と一体化するように設けることが好ましい。この場合、水素製造装置1をコンパクトに構成でき、このコンパクト水素製造装置1によれば、例えば自動車または家庭あるいは水素ステーションといった消費場所での水素製造(オンサイト水素製造)が可能となる。この水素製造装置1の応用例の1つとして、燃料電池自動車における利用が考えられる。例えば既存の燃料電池自動車は、走行モータの駆動源となる燃料電池と、この燃料電池の燃料となる水素の供給手段として高圧水素タンクを搭載している。この高圧水素タンクの代わりに、本発明の水素製造装置1を搭載する。この場合、上述したように水素製造装置1に炭化水素系燃料(例えばメタン)を供給することで高純度且つ高圧の水素が得られるので、走行モータの駆動源となる燃料電池13に必要時に迅速に水素を供給できる。また、水素は高圧化された状態で得られるので、燃料電池13の出力変化の負荷変動にも対応できる。
【0084】
次に、本発明の高効率水素製造方法および装置の第二の実施形態について、図11から図17を用いて説明する。この高効率水素製造方法では、炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器2にカソード8を配置し、反応器2と隔てて設けられる水素分離室4にアノード9を配置し、カソード8とアノード9をプロトン導電体10で接続し、反応器2の外に存在する酸素と反応器2から得られる水素または炭化水素系燃料とにより発電する燃料電池36によりカソード8およびアノード9に電気を供給し、反応器2から水素分離室4に電気化学的に水素を移動させると共に、燃料電池36において生成された水を反応器2に供給するようにしている。
【0085】
尚、上述の実施形態と同じ構成要素については、同一符号付して詳細な説明を省略する。この水素製造装置1は、例えば、反応器2と、この反応器2とそれぞれ隔てて設けられる水素分離室4および二酸化炭素分離室6と、反応器2から水素分離室4へ水素を選択的に移動させる水素分離手段3と、反応器2から二酸化炭素分離室6に二酸化炭素を選択的に移動させる二酸化炭素分離手段5と、反応器2の外に存在する酸素と反応器2から得られる水素または炭化水素系燃料とにより発電すると共に水を生成する燃料電池36を備えるようにしている。そして、当該燃料電池36を水素分離手段3の電源として用いるとともに、燃料電池36により得られた水を反応器2に供給するようにしている。さらに、例えば本実施形態では、燃料電池36の発電により発生した熱を、例えば燃料電池36で発生した水を媒体として、反応器2に供給するようにしている。
【0086】
燃料電池36の数は、例えば水素分離手段3を駆動するのに必要な起電力が得られるように決定される。燃料電池36の単セルの起電力よりも水素分離手段3を駆動するために必要な電圧が高い場合は、燃料電池36を複数設けるようにする。逆に、燃料電池36の単セルの起電力よりも水素分離手段3を駆動するために必要な電圧が低い場合は、燃料電池36は1つで足りる。一般に、燃料電池36の単セルの起電力は小さく(例えば高々1V程度)、実用的な電力を得るために複数の単セルを電気的に直列接続することが通常行なわれる。燃料電池36の単セルを直列接続するためにはインターコネクタが必要となる。このインターコネクタ材料は、例えば固体酸化物形燃料電池の場合、高温で酸化(空気)雰囲気と還元(水素)雰囲気に耐え、電子伝導性を有する必要がある。このインターコネクタ材料を単セルと組み合わせる技術が、固体酸化物形燃料電池開発の最も大きな障壁となっている。ところが、水素分離手段3は小さな電圧(例えば0.76V程度)でも駆動することができるため、この場合には燃料電池36は単セルで足り、インターコネクタ材料を単セルと組み合わせる必要がない。インターコネクタが無い燃料電池36は大量生産が可能であり、燃料電池の製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0087】
燃料電池36は、空気極37および燃料極38と、空気極37と燃料極38とを接続する電解質39とを備えている。燃料電池36は、例えば平板型でも良く、図14〜図17に示すように円筒型でも良い。尚、図14および図15は、燃料電池36を単セルとし、燃料電池36がインターコネクタを有さない例を示している。一方、燃料電池36(単セル)を複数備える場合には、隣接する燃料電池36(単セル)同士は、例えば図16および図17に示すようにインターコネクタ50によって電気的に直列に接続される。
【0088】
空気極37は酸化剤ガス供給手段(例えば空気導入部)24が供給する酸化剤ガス(例えば空気)に触れるように反応器2の外側に配置される。燃料極38は反応器2中のガスと触れるように例えば反応器2の内部に配置される。電解質39は、例えば固体電解質であり、空気極37と燃料極38に挟まれるように配置される。
【0089】
例えば図12に示すように燃料極38を反応器2の内部に設置する場合、燃料電池36と反応器2が一体化され、水素製造装置1をコンパクトに構成できる。ここで、燃料極38において水素やメタンが良好に反応するように、例えば図14や図16に示すように反応器2内のガスを反応器2内で循環させることが好ましい。当該ガス循環は、例えば流体の密度差による自然対流により実現しても良く(この場合、反応器2内の自由な流体の移動を規制するように反応器2内に部分的な仕切りなどを設けても良い)、或いは反応器2内に羽根車などを設けて当該羽根車などの回転運動による強制対流により実現しても良い。反応器2内でガスを循環させる場合、燃料電池36の燃料利用率が高くなる利点もある。尚、図14および図16中のハッチングを施した矢印が反応器2内の混合ガス(メタン、水蒸気、水素、二酸化炭素などを含む)の流れを示している。また、図14〜図17中の点線の矢印が水素ガスの流れを示し、一点鎖線の矢印が水蒸気の流れを示し、二点鎖線の矢印が二酸化炭素の流れを示している。また、図15および図17中の二重線の矢印が酸化剤ガス(例えば空気)の流れを示している。
【0090】
但し、燃料極38を反応器2の内部に設置する構成には限定されない。例えば図13に示すように、反応器2内のガスを一旦反応器2の外に出させてから再び反応器2内に戻す循環路25を設けて、この循環路25を流れる排ガスに燃料極38が触れるように、この循環路25の途中に燃料極38を設置するようにしても良い。図13に示す構成の場合、例えば循環路25と水や熱を必要とする他のシステム(図示省略)とをバイパス路(図示省略)で接続し、且つ当該バイパス路を開閉する弁(図示省略)を設けることで、燃料電池36で水や熱が過剰に得られるような場合には、当該過剰の水や熱を他のシステムに供給するといった制御が行なえる。また、反応器2の外でガスを循環させる場合、熱交換器などの利用が容易となり、熱の有効利用が容易となる利点がある。
【0091】
電解質39は、電気抵抗を小さくするために薄い膜状とすることが好ましく、また空気が反応器2に混入してしまうことを防ぐために緻密であることが好ましい。一方、空気極37および燃料極38における電気化学反応を良好に行なうために、空気極37および燃料極38は多孔質体とすることが好ましい。
【0092】
例えば本実施形態の電解質39には、酸素イオン導電性を有し、電子伝導性を有さない材料を用いている。当該材料としては、例えば、希土類元素ドープ安定化ジルコニア、希土類元素ドープセリア、アルカリ土類金属元素ドープランタンガレートなどが好適である。
【0093】
空気極37の材料としては、例えばLa1−xAECo1−yFeやLa1−xAEMn1−yCoなど(AE=Ca,Sr等のアルカリ土類金属)のペロブスカイト酸化物が好適である。尚、La1−xAECo1−yFeの場合、0.1≦x≦0.4、0.1≦y≦0.4の組成範囲が一般に好ましく、La1−xAEMn1−yCoの場合は、0.1≦x≦0.4、0≦y≦0.4の組成範囲が一般に好ましい。特に、Mn系ペロブスカイト酸化物は、(La1−xAE1−aMn1−yCoも、化学的に安定な電極材料として存在でき、0≦a≦0.1が好ましい組成範囲として考えられる。
【0094】
燃料極38の材料としては、例えばTE金属(鉄族、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co))と、セラミックス(例えばイットリア安定化ジルコニア(Zr0.90.11.95)、サマリウムドープセリア(Ce0.9Sm0.11.95)、マグネシウム−ストロンチウムドープランタンガレート(La0.8Sr0.2Ga0.85Mg0.152.825))酸化物の混合物(TE系サーメットなど)が好適である。
【0095】
燃料電池36の空気極37(複数の燃料電池36を直列に接続する場合は最も端に位置する空気極37もしくはインターコネクタ50)は、水素分離手段3のカソード8に電子伝導性を有する導線40により電気的に接続され、燃料電池36の燃料極38(複数の燃料電池36を直列に接続する場合は最も端に位置する燃料極38)は、水素分離手段3のアノード9に電子伝導性を有する導線41により電気的に接続される。
【0096】
したがって、反応器2の外の空気中に存在する酸素分子は、空気極37から電子を受け取って酸素イオンとなり、この酸素イオンは、電解質39を介して燃料極38に移動する。燃料極38においては、この酸素イオンと水素との電気化学的な反応により水と電子が発生し、または酸素イオンとメタンとの電気化学的な反応により水素および一酸化炭素と電子が発生する。当該発生した一酸化炭素は水と反応し、水素と二酸化炭素を生成する。さらに、燃料極38における上記メタンに起因する反応によって生成された水素も、燃料極38において酸素イオンと電気化学的に反応し、水と電子を発生させる。燃料極38において発生した電子は、導線41を介して水素分離手段3のアノード9に流れて行く。また、水素分離手段3のカソード8が受け取った電子は、導線40を介して空気極37に流れて行く。即ち、燃料電池36の発電により得られた電力が水素分離手段3に供給され、この電力により水素分離手段3が駆動する。また、燃料電池36の発電により発生した熱は、例えば燃料極38において発生した水を媒体として、反応器2に供給される。即ち、水と熱が同時に反応器2に供給される。
【0097】
数式5で示されるメタンの水蒸気改質を進行させるためには水が必要であり、また数式5の改質反応は吸熱反応であるため熱も必要とするが、これら必要な水と熱を、反応器2の外に存在する空気と、反応器2の中に存在する又は反応器2から排出されるガス中に存在する水素またはメタンから、得ることができる。しかも、空気を直接反応器2に供給しないので、水素生成に何ら寄与しない窒素などが反応器2に混入し、反応器2に残留してしまうことを防止できる。図12および図13中のハッチングを施した矢印は空気極37に供給される酸素と窒素を含んだ空気の流れを示し、黒塗の矢印は排ガスとして排出される窒素の流れを示している。従って、当初必要な水と熱を水供給手段26や熱供給手段27により反応器2に供給しておけば、以後、燃料電池36によって水と熱が自然に供給される。さらに、燃料電池36によって得られた電力で水素分離手段3を駆動することができる。従って、炭化水素系燃料だけを供給すれば駆動するクローズドサイクルが実現され、水素製造装置1のエネルギー効率をより高めることができる。但し、運転条件等によって反応器2内の水や熱、水素分離手段3を駆動するために必要な電力が不足する場合には、水供給手段26や熱供給手段27によって不足分の水や熱を適宜供給し、燃料電池36以外の外部電源によって不足分の電力を補うようにしても良いのは勿論である。尚、高圧の炭化水素系燃料と水とは混合され、例えば400℃〜750℃の高温とした状態で、反応器2に供給することが好ましい。
【0098】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、水素分離手段3の構成は上述の例には限定されない。また、二酸化炭素分離手段5は必ずしも備えなくても良い。
【0099】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1記載の高効率水素製造方法および請求項2記載の高効率水素製造装置によれば、水素生成に必要な水と熱を、反応器の外に存在する酸素と、反応器の中に存在する又は反応器から排出されるガス中に存在する水素または炭化水素系燃料から得ることができる。しかも、空気を直接反応器に供給しないので、水素生成に何ら寄与しない窒素などが反応器に混入し、反応器中に残留してしまうことを防止できる。従って、当初必要な水と熱を反応器に供給しておけば、以後、水と熱については水熱供給手段によって自然に供給されるので、反応器には炭化水素系燃料のみを供給すれば良い。従って、水および熱についてのクローズドサイクルが実現され、水素製造装置のエネルギー効率をより高めることができる。
【0100】
さらに、請求項3記載の高効率水素製造方法および請求項4記載の高効率水素製造装置によれば、水素生成に必要な水と、水素分離に必要な電力とを、反応器の外に存在する酸素と、反応器の中に存在する又は反応器から排出されるガス中に存在する水素または炭化水素系燃料から得ることができる。従って、水素製造装置のエネルギー効率をより高めることができる。
【0101】
さらに、請求項5記載の高効率水素製造装置によれば、燃料電池を単セルとしているので、インターコネクタは不要となる。インターコネクタが無い燃料電池は大量生産が可能であり、燃料電池の製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高効率水素製造装置の実施の一形態を示す概略構成図である。
【図2】上記高効率水素製造装置が備える反応器の構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】上記反応器の他の構成例を示す概略構成図である。
【図4】上記反応器の更に他の構成例を示す概略構成図である。
【図5】図4のV−V線で切った断面を示す概略構成図である。
【図6】本発明の水素分離手段の原理を示す概念図である。
【図7】本発明の水熱供給手段の原理を示す概念図である。
【図8】本発明の二酸化炭素分離手段の原理を示す概念図である。
【図9】LiZrOのCO吸収および放出特性を示すグラフであり、横軸は温度[℃]を、縦軸はCO吸収によるLiZrOの重量変化率(100×(横軸の各温度で測定した重量−測定前の初期重量)/(測定前の初期重量)[%])を示す。
【図10】(A)はLiCOとKCOの相図を示し、(B)はLiCOとKCOとNaCOの相図を示す。
【図11】本発明の高効率水素製造装置の他の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図12】上記高効率水素製造装置が備える反応器の構成の一例を示す概略構成図である。
【図13】上記反応器の他の構成例を示す概略構成図である。
【図14】上記反応器の更に他の構成例(燃料電池が単セルの場合)を示す概略構成図である。
【図15】図14のXV−XV線で切った断面を示す概略構成図である。
【図16】上記反応器の更に他の構成例(燃料電池の単セルを複数スタックした場合)を示す概略構成図である。
【図17】図16のXVII−XVII線で切った断面を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 水素製造装置
2 反応器
3 水素分離手段
4 水素分離室
5 二酸化炭素分離膜(二酸化炭素分離手段)
6 二酸化炭素分離室
7 水熱供給手段
8 カソード
9 アノード
10 プロトン導電体
11 電源
21 第1の電極
22 酸素イオン導電体
23 第2の電極
36 燃料電池
37 空気極
38 燃料極
39 電解質

Claims (5)

  1. 炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器の外側に第1の電極を配置し、前記反応器または前記反応器に接続された循環路内に第2の電極を配置し、前記第1の電極と前記第2の電極とを酸素イオン導電体で接続し、前記反応器の外側に存在する酸素を前記第1の電極により酸素イオン化して、前記酸素イオン導電体中を移動させ、前記第2の電極により前記反応器または前記循環路中の水素または炭化水素系燃料と電気化学的に反応させて、前記反応器に水および熱を供給するようにしたことを特徴とする高効率水素製造方法。
  2. 炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器を備えるとともに、前記反応器の外に存在する酸素を酸素イオン化する第1の電極と、当該酸素イオンが移動する酸素イオン導電体と、前記反応器から得られる水素または炭化水素系燃料と前記酸素イオン導電体を移動してきた酸素イオンとを電気化学的に反応させて水を生成する第2の電極とを備える水熱供給手段を有し、前記水熱供給手段により前記反応器に水および熱を供給するようにしたことを特徴とする高効率水素製造装置。
  3. 炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器にカソードを配置し、前記反応器と隔てて設けられる水素分離室にアノードを配置し、前記カソードと前記アノードをプロトン導電体で接続し、前記反応器の外に存在する酸素と前記反応器から得られる水素または炭化水素系燃料とにより発電する燃料電池により前記カソードおよび前記アノードに電気を供給し、前記反応器から前記水素分離室に電気化学的に水素を移動させると共に、前記燃料電池において生成された水を前記反応器に供給するようにしたことを特徴とする高効率水素製造方法。
  4. 炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて主として水素と二酸化炭素を生成する反応器と、前記反応器と隔てて設けられる水素分離室へ水素を移動させる水素分離手段と、前記反応器の外に存在する酸素と前記反応器から得られる水素または炭化水素系燃料とにより発電すると共に水を生成する燃料電池を有し、且つ前記水素分離手段は、前記反応器に備えられるカソードと、前記水素分離室に備えられるアノードと、前記カソードと前記アノードの間に介在して水素イオンが移動するプロトン導電体とを有し、前記燃料電池を前記カソードと前記アノードに電気を供給する電源として用いるとともに、前記燃料電池により得られた水を前記反応器に供給するようにしたことを特徴とする高効率水素製造装置。
  5. 前記燃料電池は単セルであることを特徴とする請求項4記載の高効率水素製造装置。
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