JP4275251B2 - セラミックス成形用バインダー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なセラミックス成形用バインダーに関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックスの成形、特に押出し成形においては、坏土に十分な可塑性、粘着性および潤滑性を与えるために水溶性高分子からなる成形用バインダーが必要であるが、この高分子として現在はメチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの各種セルロースエーテル類が広く用いられている。
しかしセルロースエーテル類には、脱脂時の発熱が急激で発熱量も多く、成形体が脱脂時に損傷し易いという問題があった。また脱脂後に炭化した残滓や無機塩類が残り易い(残炭率が高い)ことも問題であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、脱脂時の発熱が緩慢で発熱量も少なく、また残炭率も低い、セルロースエーテル類に替わる新しいセラミックス成形用バインダーを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、櫛形疎水性ジオールを疎水基とする新規な可溶性ポリウレタンからなるセラミックス成形用バインダーを見出し、本発明を完成した。
本発明は、化学式1(化6)
【0005】
【化6】
Figure 0004275251
で表される繰り返し単位(1)と、化学式2(化7)
【0006】
【化7】
Figure 0004275251
で表される繰り返し単位(2)からなり、繰り返し単位(1)のモル比率が0.5以上0.99以下であり、繰り返し単位(2)のモル比率が0.01以上0.5以下であり、GPCにより測定された重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲にある高分子からなるセラミックス成形用バインダーである。
【0007】
ただし、AはHO−A−OHが少なくとも両末端に水酸基を有しかつ数平均分子量が400〜100,000の水溶性ポリオキシアルキレンポリオール(化合物A)である2価基であり、BはOCN−B−NCOが全炭素数が3〜18のポリイソシアナート類よりなる群から選ばれたポリイソシアナート化合物(化合物B)である2価基であり、DはHO−D−OHが化学式3(化8)
【0008】
【化8】
Figure 0004275251
(ただし、R1は炭素数が1〜20の炭化水素基である。またR2およびR3は炭素数が4〜21の炭化水素基である。また該炭化水素基R1、R2およびR3中の水素の一部ないし全部はフッ素、塩素、臭素ないし沃素で置換されていてもよく、R2とR3は同じでも異なっていてもよい。またYおよびY’は水素、メチル基ないしCH2Cl基であり、YとY’は同じでも異なっていてもよい。またZおよびZ’は酸素、硫黄ないしCH2基であり、ZとZ’は同じでも異なっていてもよい。またnはZが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄ないしCH2基の場合は0である。またn’はZ’が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄ないしCH2基の場合は0であり、nとn’は同じでも異なっていてもよい)ないし化学式4(化9)
【0009】
【化9】
Figure 0004275251
(ただし、R4は炭素数が1〜20の炭化水素基である。またR5およびR6は炭素数が4〜21の炭化水素基である。また該炭化水素基R4、R5およびR6中の水素の一部ないし全部はフッ素、塩素、臭素ないし沃素で置換されていてもよく、R5とR6は同じでも異なっていてもよい。またY、Y’およびY”は水素、メチル基ないしCH2Cl基であり、YとY’は同じでも異なっていてもよい。またZおよびZ’は酸素、硫黄ないしCH2基であり、ZとZ’は同じでも異なっていてもよい。またR7は炭素数が2〜4のアルキレン基であり、kは0〜15の整数である。またnはZが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄ないしCH2基の場合は0である。またn’はZ’が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄ないしCH2基の場合は0であり、nとn’は同じでも異なっていてもよい)ないし化学式5(化10)
【0010】
【化10】
Figure 0004275251
(ただし、R8およびR9はR8とR9の炭素数の合計が2〜20の炭化水素基である。またR10およびR11は炭素数が4〜21の炭化水素基である。また該炭化水素基R8、R9、R10およびR11の水素の一部ないし全部はフッ素、塩素、臭素ないし沃素で置換されていてもよい。R8とR9は同じでも異なっていてもよい。R10とR11は同じでも異なっていてもよい。またR12は炭素数が2〜7のアルキレン基である。またYおよびY’は水素、メチル基ないしCH2Cl基であり、YとY’は同じでも異なっていてもよい。またZおよびZ’は酸素、硫黄ないしCH2基であり、ZとZ’は同じでも異なっていてもよい。またnはZが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄ないしCH2基の場合は0である。またn’はZ’が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄ないしCH2基の場合は0であり、nとn’は同じでも異なっていてもよい)で表わされる櫛形疎水性ジオール(化合物D)である2価基である。
【0011】
また本発明は、化合物Aが数平均分子量1,000〜20,000のポリエチレングリコールであり、化合物Bが鎖状脂肪族ジイソシアナートないし環状脂肪族ジイソシアナートである該高分子からなるセラミックス成形用バインダーである。
また本発明は、化合物Bがヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素化トリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナートまたはノルボルネンジイソシアナートである該高分子からなるセラミックス成形用バインダーである。
また本発明は、該高分子からなるセラミックス押出し成形用バインダーである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる高分子は、水溶性ポリオキシアルキレンポリオールと櫛形疎水性ジオールをポリイソシアナートで連結して得られる櫛形疎水基を有するポリウレタンである。本発明で用いられる水溶性ポリオキシアルキレンポリオール(化合物A)は、少なくとも高分子鎖の両末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体である。ただし水酸基を3個以上有するポリオキシアルキレンポリオールを用いると、製品の水への溶解性が低下しやすい。従って高分子鎖の両末端に1級水酸基を有するポリアルキレングリコールを用いることがより好ましい。
【0013】
単量体のアルキレンオキサイドとしてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリンなどがあるが、水や極性溶剤への溶性を高めるためにはエチレンオキサイドの含有率が40重量%以上あることがより好ましい。更に好ましくはエチレンオキサイドの重合物(ポリエチレングリコール。以下PEGと略記する)を用いることである。
【0014】
該化合物Aの分子量は数平均分子量で400〜100,000のものが好ましい。より好ましくは1,000〜20,000である。分子量が400未満では粘着性の低い製品が得られ易く、バインダーに用いるには不適当である。また分子量が100,000より大きくなると溶解性の低い製品が得られ易い。分子量が1,000〜20,000の範囲で、十分な可塑性、粘着性と溶解性を示す製品が最も得られ易い。
【0015】
本発明で用いられるポリイソシアナート化合物(化合物B)は、鎖状脂肪族ポリイソシアナート類、環状脂肪族ポリイソシアナート類および芳香族ポリイソシアナートよりなる群から選ばれた全炭素数が(NCO基の炭素を含めて)3〜18のポリイソシアナート化合物である。ポリイソシアナート類の全炭素数が18より大きいとポリウレタンの溶解性が低下し易い。
ただし分子内にNCO基3個以上有するポリイソシアナート類を用いると、製品の水への溶解性が低下しやすい。従って分子内にNCO基を2個有するジイソシアナート類を用いることがより好ましい。
【0016】
ジイソシアナート類として芳香族ジイソシアナート類、鎖状脂肪族ジイソシアナート類、環状脂肪族ジイソシアナート類などがあるが、鎖状脂肪族ジイソシアナート類および環状脂肪族ジイソシアナート類は芳香族ジイソシアナートと比較して脱脂時の残炭率が低く、バインダーとしてより優れている。
従って、全炭素数が3〜18の鎖状および環状脂肪族ジイソシアナート類を用いることがより好ましい。更に好ましくはヘキサメチレンジイソシアナート(通称HDI)、イソホロンジイソシアナート(通称IPDI)、水素化トリレンジイソシアナート(通称HTDI)、水素化キシリレンジイソシアナート(通称HXDI)またはノルボルネンジイソシアナート(通称NBDI)を用いることである。特に好ましくはHDIを用いることである。
【0017】
鎖状脂肪族ジイソシアナート類は、NCO基の間を直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基で繋いだ構造をもつジイソシアナート化合物であり、具体例としては、メチレンジイソシアナート、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、1−メチルエチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナート、2−メチルブタン−1,4−ジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアナート、2,2’−ジメチルペンタン−1,5−ジイソシアナート、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、オクタメチレンジイソシアナート、2,5−ジメチルヘキサン−1,6−ジイソシアナート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジイソシアナート、ノナメチルジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ウンデカメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、トリデカメチレンジイソシアナート、テトラデカメチレンジイソシアナート、ペンタデカメチレンジイソシアナート、ヘキサデカメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートなどが挙げられる。
【0018】
環状脂肪族ジイソシアナート類は、NCO基の間を繋ぐアルキレン基が環状構造をもつジイソシアナート化合物であり、具体例としては、シクロヘキサン−1,2−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアナート、1−メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアナート、1−メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアナート、1−エチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアナート、4,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジイソシアナート、1,2−ジメチルシクロヘキサン−ω,ω’−ジイソシアナート、1,4−ジメチルシクロヘキサン−ω,ω’−ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメチルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアナート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−メチレン−ビス(イソシアナトシクロヘキサン)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、水素化トリレンジイソシアナート(HTDI)、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(HMDI)、水素化キシリレンジイソシアナート(HXDI)、ノルボルネンジイソシアナート(NBDI)などが挙げられる。
【0019】
芳香族ジイソシアナート類は、NCO基の間をフェニレン基、アルキル置換フェニレン基およびアラルキレン基などの芳香族基ないし芳香族基を含有する炭化水素基で繋いだジイソシアナート化合物であり、具体例としては、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアナート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアナート(2,4−TDI)、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアナート(2,6−TDI)、1−メチル−2,5−フェニレンジイソシアナート、1−メチル−3,5−フェニレンジイソシアナート、1−エチル−2,4−フェニレンジイソシアナート、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアナート、1,3−ジメチル−2,4−フェニレンジイソシアナート、1,3−ジメチル−4,6−フェニレンジイソシアナート、1,4−ジメチル−2,5−フェニレンジイソシアナート、m−キシレンジイソシアナート、ジエチルベンゼンジイソシアナート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアナート、1−メチル−3,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアナート、3−メチル−1,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアナート、1,3,5−トリエチルベンゼン−2,4−ジイソシアナート、ナフタリン−1,4−ジイソシアナート、ナフタリン−1,5−ジイソシアナート、1−メチルナフタリン−1,5−ジイソシアナート、ナフタリン−2,6−ジイソシアナート、ナフタリン−2,7−ジイソシアナート、1,1−ジナフチル−2,2’−ジイソシアナート、ビフェニル−2,4’−ジイソシアナート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート(MDI)、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート(XDI)などが挙げられる。
【0020】
その他のポリイソシアナートとしては1,6,11−ウンデカトリイソシアナート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナートなどが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる櫛形疎水性ジオール(化合物D)は、該化学式3、該化学式4ないし該化学式5で表わせれる、2級水酸基を分子内に2個有しかつ疎水鎖を分子内に3本以上有する疎水性のジオール類である。
この疎水性ジオール類は1級アミン類に各種オキシラン化合物(オキシラン環を有する化合物)を付加させることにより得ることができる。アミン類のアミノ基とオキシラン化合物の付加反応は活性が高く、無触媒でも十分反応が進行するほどである。
【0022】
より具体的に説明すると、1級アミン類としては1級の鎖状ないし環状アルキルアミン類、1級の鎖状ないし環状アルケニルアミン類、1級のアラルキルアミン類、1級のジアルキルアミノアルキルアミン類、1級のN−ベンジルアミノピロリジン類、1級のN−アミノアルキルモルホリン類、1級のアリールアミン類、1級のアミノピリジン類、1級のアミノアルキルピリジン類、1級のアルキルオキシアルキルアミン類、1級アルケニルオキシアルキルアミン類、1級のアリールオキシアルキルアミン類、1級のアラルキルオキシアルキルアミン類のなどを例として挙げることができる。
【0023】
1級鎖状アルキルアミン類の例としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ter−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、2−アミノヘプタン、n−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−アミノ−6−メチルヘプタン、ノニルアミン、イソノニルアミン、1,4−ジメチルヘプチルアミン、3−アミノノナン、2−アミノ−6−エチルヘプタン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、2−アミノウンデカン、6−アミノウンデカン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、2−アミノトリデカン、n−テトラデシルアミン、2−アミノテトラデカン、n−ペンタデシルアミン、8−アミノペンタデカン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、2−アミノノナデカンなどの鎖状アルキルアミン類などが挙げられる。
【0024】
1級鎖状アルケニルアミン類の例としてはアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。
1級環状アルキルアミン類の例としては、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、シクロオクチルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、4−ter−ブチルシクロヘキシルアミン、1−シクロペンチル−2−アミノプロパン、1−アミノインダン、シクロドデシルアミン、o−アミノビシクロヘキシル、3−アミノスピロ[5,5]ウンデカン、ボルニルアミン、1−アダマンタンアミン、2−アミノノルボルナン、1−アダマンタンメチルアミンなどが挙げられる。
【0025】
1級環状アルケニルアミン類の例としてはジヒドロアビエチルアミン、2−(1−シクロヘキセニル)エチルアミンなどが挙げられる。
1級のアラルキルアミン類の例としてはベンジルアミン、フェネチルアミン、p−メトキシフェネチルアミン、α−フェニルエチルアミン、1−メトキシ−3−フェニルプロピルアミン、N−アミノプロピルアニリンなどが挙げられる。
【0026】
1級ジアルキルアミノアルキルアミン類の例としては、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1−ジメチルアミノ−2−プロピルアミン、N2,N2−ジメチル−1,2−プロパンジアミン、4−ジメチルアミノブチルアミン、1−ジメチルアミノエチル−2−アミノプロパン、N,N−ジメチルネオペンタンジアミン、1−ジエチルアミノ−2−プロピルアミン、6−ジメチルアミノヘキシルアミン、2−ジ−n−プロピルアミノエチルアミン、N−エチル−N−ブチルエチレンジアミン、7−ヂエチルアミノヘプチルアミン、N1,N1−ジ−n−プロピル−1,2−プロパンジアミン、N’,N’−ジ−n−プロパンジアミン、5−ジエチルアミノペンチルアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N−ジ−n−ブチルエチレンジアミン、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−ジイソブチルアミノエチルアミン、4−ジイソプロピルアミノブチルアミン、7−ジエチルアミノヘプチルアミン、3−(ジ−n−ブチルアミノ)プロピルアミン、N,N−ジイソブチル−1,6−ヘキサンジアミン、3−ジオクチルアミノプロピルアミン、3−ジデシルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、3−ピペリジノプロピルアミン、4−ピロリジノブチルアミン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、3−アミノトロパン、5−ピロリジノアミルアミン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルアミン、1−ベンジル−3−アミノピロリジン、N1−エチル−N1−フェニルプロパン−1,3−ジアミンなどが挙げられる。
【0027】
1級のN−ベンジルアミノピロリジン類の例としては、N−ベンジル−3−アミノピロリジン、N−ベンジル−2−メチル−3−アミノピロリジンなどが挙げられる。
1級のN−アミノアルキルモルホリン類の例としては、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリンなどが挙げられる。
【0028】
1級のアリールアミン類の例としては、アニリン、2−クロロアニリン、2,3−ジクロロアニリン、2,4−ジブロモアニリン、2,4,6−トリブロモアニリン、o−トルイジン、2−クロロ−4−メチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,4−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2−エチルアニリン、2−イソプロピルアニリン、4−tert−ブチルアニリン、p−デシルアニリン、p−ドデシルアニリン、p−テトラデシルアニリン、4−シクロヘキシルアニリン、2−アミノビフェニル、1−ナフチルアミン、5−アミノインダン、1−アミノナフタセン、6−アミノクリセン、1−アミノピレンなどが挙げられる。
【0029】
1級のアミノピリジン類の例としては、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、2−アミノ−4−エチルピリジン、2−アミノ−4−プロピルピリジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン、2−アミノ−3−ニトロピリジンなどが挙げられる。
【0030】
1級のアミノアルキルピリジン類の例としては、2−アミノメチルピリジン、3−アミノメチルピリジン、4−アミノメチルピリジン、3−アミノメチル−6−クロロピリジンなどが挙げられる。
また1級のアルキルオキシアルキルアミン類としては、2−アルコキシエチルアミン類、3−アルコキシプロピルアミン類、4−アルコキシブチルアミン類、アルケニルオキシアルキルアミン類、アラルキルオキシアルキルアミン類、アリールオキシアルキルアミン類、アルコール−アルキレンオキシド付加物のアミノアルキルエーテル類、フェノール/アルキル置換フェノール−アルキレンオキシド付加物のアミノアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0031】
2−アルコキシエチルアミン類としては、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−プロポキシエチルアミン、2−イソプロポキシエチルアミン、2−ブトキシエチルアミン、2−(イソブトキシ)エチルアミン、2−(ter−ブトキシ)エチルアミン、2−ペンチルオキシエチルアミン、2−ヘキシルオキシエチルアミン、2−ヘプチルオキシエチルアミン、2−オクチルオキシエチルアミン、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチルアミン、2−(α−ブチルオクチルオキシ)エチルアミン、2−デシルオキシエチルアミン、2−ドデシルオキシエチルアミン、2−テトラデシルオキシエチルアミン、2−ペンタデシルオキシエチルアミン、2−ヘキサデシルオキシエチルアミン、2−ヘプタデシルオキシエチルアミン、2−オクタデシルオキシエチルアミン、2−ノナデシルエチルアミン、2−エイコシルエチルアミンなどが挙げられる。
【0032】
3−アルコキシプロピルアミン類の例としては、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−(イソブトキシ)プロピルアミン、3−(ter−ブトキシ)プロピルアミン、3−ペンチルオキシプロピルアミン、3−ヘキシルオキシプロピルアミン、3−ヘプチルオキシプロピルアミン、3−オクチルオキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−(α−ブチルオクチルオキシ)プロピルアミン、3−デシルオキシプロピルアミン、3−ドデシルオキシプロピルアミン、3−、3−テトラデシルオキシプロピルアミン、3−ペンタデシルオキシプロピルアミン、3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、3−ヘプタデシルオキシプロピルアミン、3−オクタデシルオキシプロピルアミン、3−ノナデシルプロピルアミン、3−エイコシルプロピルアミンなどが挙げられる。
【0033】
4−アルコキシブチルアミン類の例としては、4−メトキシブチルアミン、4−エトキシブチルアミン、4−プロポキシブチルアミン、4−イソプロポキシブチルアミン、4−ブトキシブチルアミン、4−(イソブトキシ)ブチルアミン、4−(ter−ブトキシ)ブチルアミン、4−ペンチルオキシブチルアミン、4−ヘキシルオキシブチルアミン、4−ヘプチルオキシブチルアミン、4−オクチルオキシブチルアミン、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ブチルアミン、4−(α−ブチルオクチルオキシ)ブチルアミン、4−デシルオキシブチルアミン、4−ドデシルオキシブチルアミン、4−テトラデシルオキシブチルアミン、4−ペンタデシルオキシブチルアミン、4−ヘキサデシルオキシブチルアミン、4−ヘプタデシルオキシブチルアミン、4−オクタデシルオキシブチルアミン、4−ノナデシルブチルアミン、4−エイコシルブチルアミン、4−(2,4−ジ−ter−アミルフェノキシ)ブチルアミンなどが挙げられる。
【0034】
アルケニルオキシアルキルアミン類の例としては、3−ビニルプロピルアミン、2−アリルオキシエチルアミン、3−オレイルオキシプロピルアミンなどが例として挙げられる。
アラルキルオキシアルキルアミン類の例としては、2−ベンジルオキシエチルアミン、3−フェネチルオキシプロピルアミンなどが例として挙げられる。
アリールオキシアルキルアミン類としては、2−フェニルオキシエチルアミン、3−(p−ノニルフェニルオキシ)プロピルアミンなどが例として挙げられる。
【0035】
その他のアミン類としてはアルコール類やフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物など)のアミノアルカノールエーテル類が挙げられる。
アルコール−エチレンオキサイド付加物のアミノアルカノールエーテルの例としては、2−[2−(ドデシルオキシ)エトキシ]エチルアミン、3,6,9−トリオキサペンタデシルアミンなどが挙げられる。
【0036】
同様にアルコール類やフェノール類のプロピレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物の各々のアミノアルカノールエーテル類を用いることも可能である。付加数kは1〜15程度が適当である。
【0037】
その他の1級アミン類としては、2−アミノメチルピラジン、2−アミノピラジン、スルファレンなどのピラジン類などが挙げられる。
またオキシラン化合物としては各種グリシジルエーテル類や1,2−エポキシアルカン類、1,2−エポキシアルケン類、グリシジルスルフィド類などを用いることが可能である。
グリシジルエーテル類としては、アルキルグリシジルエーテル類、アルケニルグリシジルエーテル類、アラルキルグリシジルエーテル類、アリールグリシジルエーテル類などを例として挙げることができる。
【0038】
アルキルグリシジルエーテル類の例としては、n−ブチルグリシジルエーテル、sec−ブチルグリシジルエーテル、ter−ブチルグリシジルエーテル、グリシジルペンチルエーテル、グリシジルヘキシルエーテル、グリシジルオクチルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、グリシジルノニルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、グリシジルラウリルエーテル、グリシジルトリデシルエーテル、グリシジルテトラデシルエーテル、グリシジルペンタデシルエーテル、グリシジルヘキサデシルエーテル、グリシジルステアリルエーテル、3−(2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(3−パーフルオロオクチル−2−イオドプロポキシ)−1,2−エポキシプロパンなどが挙げられる。
【0039】
アルケニルグリシジルエーテル類の例としては、アリルグリシジルエーテル、オレイルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
アラルキルグリシジルエーテル類の例としては、ベンジルグリシジルエーテル、フェネチルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
アリールグリシジルエーテル類の例としては、フェニルグリシジルエーテル、4−ter−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−エチルフェニルグリシジルエーテル、4−エチルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジル−4−ノニルフェニルエーテル、グリシジル−3−(ペンタデカジエニル)フェニルエーテル、2−ビスフェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、α−ナフチルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
その他のグリシジルエーテル類としてはアルコール類やフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物など)のグリシジルエーテル類が挙げられる。
エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルの例としては、2−エチルヘキシルアルコール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ラウリルアルコール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、4−ter−ブチルフェノール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルやノニルフェノール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0041】
同様にアルコール類やフェノール類のプロピレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物の各々のグリシジルエーテル類を用いることも可能である。工業薬品のグリシジルエーテル類には通常はエピクロロヒドリン付加物のグリシジルエーテル類が副生成物として含まれているが、そのような純度の低い原料も用いることができる。付加数nは1〜15程度が適当である。付加数が15を超えるとポリウレタンの水溶液粘度が低下し易い。
【0042】
また1,2−エポキシアルカン類や1,2−エポキシアルケン類の例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセンなどが挙げられる。
【0043】
その他のオキシラン化合物としては2−エチルヘキシルグリシジルスルフィド、デシルグリシジルスルフィドなどのアルキルグリシジルチオエーテル(アルキルグリシジルスルフィド)類や、p−ノニルフェニルグリシジルスルフィドなどのアリールグリシジルチオエーテル(アリールグリシジルスルフィド)類が挙げられる。
上記のアミン類とオキシラン化合物類を、アミン1分子にオキシラン化合物2分子の割合で反応させることにより化合物Dを得ることができる。化学式6に反応式を表す(化11)。
【0044】
【化11】
Figure 0004275251
(ただしRa、Rb、Rcは該化学式3〜5の各置換基に対応する。)
反応はオキシラン化合物として1,2−エポキシアルカン類、1,2−エポキシアルケン類、グリシジルスルフィド類を用いた場合と比較して、グリシジルエーテル類を用いた場合により容易である。グリシジルエーテル類のアミン類との反応性が高いためと思われる。
【0045】
化合物Dは分子内に3〜4本の疎水鎖(化学式3中のR1、R2およびR3あるいは化学式4中のR4、R5およびR6あるいは化学式5中のR8、R9、R10およびR11)を有するが、これらの疎水鎖が互いに近接していることにより、ポリウレタンに適度な疎水性を付与する効果がある。バインダーに用いた時に坏土に適度な可塑性、粘結性を与えるのはこの適度な疎水性であると推察される。各疎水鎖の炭素数はポリウレタンに適当な疎水性を付与しうる長さが必要である。
【0046】
アミン類の疎水鎖の炭素数は1以上20以下が好ましい。置換基R1ないしR4の炭素数が20を超えるアミン類を用いるとポリウレタンの溶解性が低下することがある。同様に置換基R8とR9の炭素数の合計が20を超えるアミン類を用いるとポリウレタンの溶解性が低下することがある。
【0047】
グリシジルエーテル類の疎水鎖(化学式3中のR2およびR3あるいは化学式4中のR5およびR6あるいは化学式5中のR10およびR11)の炭素数は4以上21以下が好ましい。炭素数が4未満のグリシジルエーテルを用いるとポリウレタンの疎水性が充分に高くならないことがある。炭素数が21を超えるグリシジルエーテルを用いるとポリウレタンの溶解性が低下することがある。より好ましくは炭素数が4〜18の直鎖状ないし分岐鎖状アルキル基を疎水基として有するアルキルグリシジルエーテル類、ないし炭素数が6〜18の芳香族基またはアルキル置換芳香族基を疎水基として有するアリールグリシジルエーテル類である。
【0048】
同様の理由により1,2−エポキシアルカン、1,2−エポキシアルケン、アルキルグリシジルチオエーテル、アリールグリシジルチオエーテルの疎水基の炭素数は4以上21以下が好ましい。
以下に櫛形疎水性ジオールの製造方法を説明するが、本発明に用いる櫛形疎水性ジオールの合成方法はこの例に限定されるものではない。
【0049】
攪拌装置、原料導入機構、温度制御機構を有する反応容器に、原料のアミン類とオキシラン化合物類を仕込み、所定の反応温度において撹拌しながら反応させる。
反応は無溶媒で行うことができるが、DMFなどの一般的な溶媒を用いてもよい。
原料の導入は、アミン類とオキシラン化合物類を一括して仕込んでもよいし、どちらか一方を反応容器に仕込み、他方を連続的ないし段階的に導入してもよい。
【0050】
反応温度は室温〜160℃程度、より好ましくは60℃〜120℃程度が適当である。
反応時間は、反応温度等にも依るが、0.5〜10時間程度である。
また常法によりOH価を求めることができる。
櫛形疎水基を有する可溶性ポリウレタンは、化学式7(化12)
【0051】
【化12】
Figure 0004275251
に表すように、ポリアルキレングリコール(化合物A)および櫛状疎水性ジオール(化合物D)の2個の水酸基とジイソシアナート化合物(化合物B)の2個のNCO基の反応により合成される。繰り返し単位(1)のモル比率が(1−x)でかつ繰り返し単位(2)のモル比率がxである可溶性ポリウレタンは、化合物Aと化合物Dのモル比率が(1−x):xの比率で反応させることにより得られる。
【0052】
以下に可溶性ポリウレタンの製造方法を例を挙げて説明するが、勿論本発明は以下の製造方法に限定されるものではない。
攪拌装置、原料導入機構、温度制御機構を有する反応容器内を不活性ガスで置換する。ポリアルキレングリコールを反応容器へ仕込む。場合によっては溶媒を仕込む。
【0053】
反応容器を設定された反応温度に制御しつつ触媒を加える。容器内を攪拌しつつジイソシアナート化合物、櫛形疎水性ジオールを反応容器へ導入する。導入方法は特に限定するものではない。連続的に導入しても断続的に導入してもよい。またジイソシアナート化合物と櫛形疎水性ジオールは、同時に導入しても、ジイソシアナート化合物の導入後に櫛形疎水性ジオールを導入しても、櫛形疎水性ジオールの導入後にジイソシアナート化合物を導入してもよい。
【0054】
触媒は必ずしも反応前にポリアルキレングリコールに添加する必要はなく、ポリアルキレングリコールにジイソシアナート化合物や櫛形疎水性ジオールを加えた後に触媒を加え、反応を開始することも可能である。または、ジイソシアナート化合物や櫛形疎水性ジオールに予め触媒を添加しておき、これらをポリアルキレングリコールに加え反応させることも可能である。
【0055】
反応に用いられる触媒は特に限定するものではなく、有機金属化合物、金属塩、3級アミン、その他の塩基触媒や酸触媒などの、一般にイソシアナート類とポリオール類の反応に用いられる公知の触媒を用いることができる。例を挙げれば、ジブチル錫ジラウレート(以下DBTDLと略す)、ジブチル錫ジ(ドデシルチオラート)、第一錫オクタノエート、フェニル水銀アセテート、亜鉛オクトエート、鉛オクトエート、亜鉛ナフテナート、鉛ナフテナート、トリエチルアミン(TEA)、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、N−エチルモルホリン(NEM)、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、N,N‘−ジメチル−1,4−ジアザシクロヘキサン(DMP)などがある。
【0056】
反応に用いる触媒の量は、反応温度や触媒の種類によっても異なり特に限定するものではないが、ポリアルキレングリコールの1モル当たり0.0001〜0.1モル、より好ましくは0.001〜0.1モル程度で十分である。
反応は無溶媒で行うこともできるが、生成物の溶融粘度を下げるために溶媒を用いて反応させることもできる。溶媒としては、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクレンなどのハロゲン系溶剤や、キシレン、トルエン、ベンゼンなどの芳香族系溶剤や、デカン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタンなどの飽和炭化水素系溶剤や、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤や、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトンなどのケトン系溶剤や、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤、などの活性水素を持たない溶剤が有効に用いられる。
ただし溶媒を用いないことは、脱溶剤の工程が不用となるので製造コストの点で有利であり、また環境汚染の恐れが少ないのでより好ましい。
【0057】
反応に用いるジイソシアナート化合物の量は、ポリアルキレングリコールと櫛形疎水性ジオールの各々のモル数の合計が1モルに対して、ジイソシアナート化合物のモル数(NCO/OH)が0.7〜1.3モル、より好ましくは0.8〜1.2モルである。0.7未満または1.3を超えると生成物の平均分子量が小さく、バインダーとしての能力が十分でない。
【0058】
ただし、ポリアルキレングリコールや櫛形疎水性ジオールに水分が含まれる場合には、上述のジイソシアナート化合物の量は、水分によりジイソシアナートが分解する分だけ余分に用いる必要がある。従って、十分に乾燥した原料を用いることがより好ましい。できれば原料に含まれる水分は5,000ppm以下が好ましい。より好ましくは1,000ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。
【0059】
反応に用いる櫛形疎水性ジオールの量は、ポリアルキレングリコールの分子量や櫛形疎水性ジオールの疎水基の炭素数によっても異なるが、櫛形疎水性ジオールのモル数がポリアルキレングリコールの1モル当たり0.01〜1モル(xが0.01〜0.5)が適当である。0.01モル未満では十分な疎水性の効果が表われないことがある。また1モルを超えて反応させることは溶解性を低下させる場合があるので好ましくない。なお、()内の数値は該化学式7中のxの値を表している。
【0060】
反応温度は用いる触媒の種類や量などによっても異なるが、50〜180℃が適当である。より好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃の範囲である。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く経済的でない。また180℃を超えると生成物が熱分解することがある。
反応時間は用いる触媒の種類や量、反応温度などにより異なり特に限定するものではないが、1分〜10時間程度で十分である。
反応圧力は特に限定されない。常圧、減圧ないし加圧状態で反応させることができる。より好ましくは常圧ないし弱加圧状態で反応させる。
以下に本発明により得られる可溶性ポリウレタンの特性を記す。
【0061】
本発明にはGPCにより測定された重量平均分子量がおよそ1万から100万の範囲の高分子が適している。より好ましくは重量平均分子量が1万〜50万のポリウレタンである。GPCはクロロホルム溶液を用い、標準ポリスチレンにより分子量を校正した。重量平均分子量が1万未満では可塑性や粘結性が十分でなく、バインダーとして適さないことが多い。また重量平均分子量が100万を超えると粘結性が強くなりすぎ、やはりバインダーとして適さないことがある。
【0062】
これらのポリウレタンは水や、エタノール等の極性有機溶媒に容易に溶解できる。
これらの可溶性ポリウレタンをセラミックス成形用バインダーとして用いるには、目的に応じてその他の常用の成分を加えた組成物とする。例えば、各種界面活性剤、プロピレングリコール、流動パラフィン、グリセリン、エタノールアミン、ワックスエマルション、ステアリン酸およびその塩類、アルコール類、消泡剤などである。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明するが、勿論本発明はこの実施例に限られるものではない。
(櫛形疎水性ジオールの合成例)
実施例1
500mlの丸底フラスコにマグネチックスターラー、温度計および滴下ロートを設置し、2−エチルヘキシルアミン(関東化学)64.6gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。オイルバスでフラスコを60℃に加熱し、攪拌しながら、滴下ロートから2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(ナガセ化成工業、デナコールEX−121、エポキシ価188)188.0gを40分かけて滴下した。滴下終了後、オイルバスの温度を80℃に上げて、フラスコを10時間加熱した。続いて、オイルバスの温度を120℃に上げて、真空ポンプを用いて、3mmHgの真空度で少量の未反応物を減圧留去した。2−エチルヘキシルアミン1モルに対して2−エチルヘキシルグリシジルエーテルが2モルの比率で付加した櫛形疎水性ジオール1(OH価からの平均分子量490)を収率98%で得た。
【0064】
実施例2
n−ブチルアミン(東京化成)1モルに対してn−ブチルグリシジルエーテル(東京化成)を2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール2を合成した。
【0065】
実施例3
n−ブチルアミン1モルに対して2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール3を合成した。
【0066】
実施例4
ドデシルアミン(関東化学)1モルに対して2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール4を合成した。
【0067】
実施例5
n−オクチルアミン(東京化成)1モルに対してドデシルグリシジルエーテル(アルドリッチ社製ドデシル/テトラデシルグリシジルエーテルを蒸留精製したもの)を2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール5を合成した。
【0068】
実施例6
n−オクタデシルアミン(関東化学)1モルに対してn−オクチルグリシジルエーテル(P&B)を2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール6を合成した。
【0069】
実施例7
n−ブチルアミン1モルに対してオクタデシルグリシジルエーテル(日本油脂、エピオールSK)を2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール7を合成した。
【0070】
実施例8
3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1−プロピルアミン(広栄化学)1モルに対して2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール8を合成した。
【0071】
実施例9
ジブチルアミノプロピルアミン(広栄化学)1モルに対して2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを2モルの比率で付加して、櫛形疎水性ジオール9を合成した。
表1に結果を纏めた。
【0072】
【表1】
Figure 0004275251
(可溶性ポリウレタンの合成例)
以下に実施例1の疎水性ジオールを用いた可溶性ポリウレタンの合成例を示すが、勿論本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0073】
実施例10
500mlのSUS製セパラブルフラスコに市販のPEG#6000(純正化学、数平均分子量8、700)を100g仕込み、窒素シール下で150℃にて溶融した。これを攪拌しながら減圧下(3mmHg)で3時間乾燥した。残留する水分は200ppmであった。80℃まで温度を下げ、フラスコ内を攪拌しながら、実施例1で得た櫛形疎水性ジオール1を1.00g、ヘキサメチレンジイソシアナート(東京化成)を2.28g仕込んだ。触媒としてDBTDLを0.01g添加すると、10分程で急激に増粘した。攪拌を止めて、さらに2時間反応させた。
反応終了後に生成物をフラスコから取り出し、小片に裁断後放冷した。これを液体窒素で冷却し、電動ミルで粒径1mm(16メッシュ)以下に粉砕した。
GPCにより測定された重量平均分子量は50万であった。
【0074】
実施例11〜20
櫛形疎水性ジオール2〜9を用いた他のポリウレタンの合成例を示す。HDIのモル数はPEGと櫛形疎水性ジオールの各々のモル数の合計の1.00倍になるように(NCO/OH=1.00)、HDIの量を選んだ。結果を表2に纏めた。
【0075】
【表2】
Figure 0004275251
表2の中で、「PEGの分子量」はOH価(OHV)から求めたPEGの数平均分子量である。
【0076】
また「疎水性ジオール/PEG」はPEGに対する疎水性ジオールの重量比を百分率で表わしたものである。「繰返単位の係数x」は該化学式7で表した繰り返し単位の係数xである。
また「重量平均分子量」は単分散のポリスチレンを標準としてGPCの測定により求めた値である。溶媒はクロロホルムを用いた。
xが0.01〜0.5、重量平均分子量が1万〜100万の範囲の可溶性ポリウレタンが得られている。
【0077】
(セラミックスの押出し成形)
セラミックス成形用バインダーの例としてアルミナの坏土に本発明のバインダーを調合した例を示す。また比較例としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)をバインダーに用いた例を示す。
試験に用いた組成は以下の通りである。
アルミナ 100重量部
グリセリン 2重量部
バインダー 表3の所定量
水 20重量部
従来品のバインダーとしてはHPMC(メトローズ60SH−4000)を用いた。
【0078】
これらの組成物を真空押出成形機(宮崎鉄工製FM−30形)で、幅2cm厚さ1cmの板状に押出し、成形性を評価した。○は押出しがスムーズで表面形状が良好、△は表面形状がやや荒れている、×は表面形状が荒れているか押出しが不能であったことを示す。
【0079】
またこの成形品を空気中500℃で仮焼成した。この際、テストピース20本中1本もヒビ割れがなかった場合を○、1〜2本ヒビ割れした場合を△、3本以上ヒビ割れした場合を×で表した。
結果を表3に纏めた。
【0080】
【表3】
Figure 0004275251
本発明のバインダーは坏土の成形性においては従来のバインダーとほぼ同等であり、焼成工程において製品の歩留まりを大きく改善している。
【0081】
(バインダーの熱分析)
焼成工程における製品の歩留まり向上は、バインダーの熱分解挙動と関連する。そこでバインダーの熱分解挙動をTGA(熱天秤)とDTA(示差熱分析)で評価した。図1にTGAの測定結果を、図2にDTAの測定結果を示す。
【図1】
図1の(a)は本発明のバインダー、(b)は従来品であるヒドロキシプロピルメチルセルロースのTGAの結果である。測定は空気中、昇温速度10℃/分で行った。また表4に500℃での残炭率と分解開始温度として5%重量減少温度(Td5)を示した。なお表4には窒素中の測定結果も示した。
【0082】
【表4】
Figure 0004275251
本発明のバインダーは従来品より低温で分解し始め、残炭率も低く、より効率的に脱脂できることを示している。
【0083】
【図2】
図2の(a)は本発明のバインダー、(b)は従来品であるヒドロキシプロピルメチルセルロースのDTAの結果である。測定は空気中、昇温速度10℃/分で行った。またDTA曲線の面積値は発熱量に比例するが、本発明のバインダーの発熱量は従来品(HPMC)の68%であった。
【0084】
本発明のバインダーは従来品より発熱が緩慢で相対的な発熱量も低く、脱脂工程(仮焼成工程)での成形品への熱歪みの発生が小さいことが解る。
これらの試験から、本発明のバインダーは熱分解挙動が従来のバインダーより温和であり、成形体の焼成時歩留まり向上、生産性向上に貢献することが解る。発熱が緩慢で発熱量が少ないことで焼成時の成形体の温度分布が小さくなり、破損が避けられる。また焼成時の昇温速度を増すことができ、生産性が向上する。
【0085】
本発明のバインダーは適用できるセラミックスに特に限定はなく、アルミナ以外にチタン酸バリウム、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、その他ファインセラミックス一般に広く用いることができる。
また本発明のバインダーは適用できる成形方法も広く、押出し成形以外にシート成形、テープ成形、プレス成形にも適している。また熱可塑性の樹脂なので射出成形にも用いることができる。どの場合も焼成時の発熱が温和なことが従来品と比較して特に優れている。
【0086】
本発明のバインダーの燃焼時の発熱が特に温和で残炭率も少ないことの理由は必ずしも明らかではないが、ウレタン結合が熱分解し易いこと、ポリマーの元素構成に酸素が多く含まれており酸化熱の発生が少ないこと、分子が炭化し易い環構造を持たないことなどによると推察される。
【0087】
【発明の効果】
本発明によって生産性が高いセラミックス成形用バインダーが利用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
バインダーの熱分解挙動をTGA(熱天秤)とDTA(示差熱分析)で測定した結果を示す。
【図1】 TGAの測定結果
(a)の図は、本発明のバインダー
(b)の図は、従来品であるヒドロキシプロピルメチルセルロース
【図2】 DTAの測定結果
(a)の図は、本発明のバインダー
(b)の図は、従来品であるヒドロキシプロピルメチルセルロース

Claims (4)

  1. 化学式1(化1)
    Figure 0004275251
    で表される繰り返し単位(1)と、化学式2(化2)
    Figure 0004275251
    で表される繰り返し単位(2)からなり、繰り返し単位(1)のモル比率が0.5以上0.99以下であり、繰り返し単位(2)のモル比率が0.01以上0.5以下であり、GPCにより測定された重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲にある高分子からなる新規なセラミックス成形用バインダー。ただし、AはHO−A−OHが少なくとも両末端に水酸基を有しかつ数平均分子量が400〜100,000の水溶性ポリオキシアルキレンポリオール(化合物A)である2価基であり、BはOCN−B−NCOが全炭素数が3〜18のポリイソシアナート類よりなる群から選ばれたポリイソシアナート化合物(化合物B)である2価基であり、DはHO−D−OHが化学式3(化3)
    Figure 0004275251
    (ただし、R1は炭素数が1〜20の炭化水素基である。またR2およびR3は炭素数が4〜21の炭化水素基である。また該炭化水素基R1、R2およびR3中の水素の一部ないし全部はフッ素、塩素、臭素ないし沃素で置換されていてもよく、R2とR3は同じでも異なっていてもよい。またYおよびY'は水素、メチル基ないしCH2Cl基であり、YとY'は同じでも異なっていてもよい。またZおよびZ'は酸素、硫黄ないしCH2基であり、ZとZ'は同じでも異なっていてもよい。またnはZが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄ないしCH2基の場合は0である。またn'はZ'が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z'が硫黄ないしCH2基の場合は0であり、nとn'は同じでも異なっていてもよい)ないし化学式4(化4)
    Figure 0004275251
    (ただし、R4は炭素数が1〜20の炭化水素基である。またR5およびR6は炭素数が4〜21の炭化水素基である。また該炭化水素基R4、R5およびR6中の水素の一部ないし全部はフッ素、塩素、臭素ないし沃素で置換されていてもよく、R5とR6は同じでも異なっていてもよい。またY、Y'およびY"は水素、メチル基ないしCH2Cl基であり、YとY'は同じでも異なっていてもよい。またZおよびZ'は酸素、硫黄ないしCH2基であり、ZとZ'は同じでも異なっていてもよい。またR7は炭素数が2〜4のアルキレン基であり、kは0〜15の整数である。またnはZが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄ないしCH2基の場合は0である。またn'はZ'が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z'が硫黄ないしCH2基の場合は0であり、nとn'は同じでも異なっていてもよい)ないし化学式5(化5)
    Figure 0004275251
    (ただし、R8およびR9はR8とR9の炭素数の合計が2〜20の炭化水素基である。またR10およびR11は炭素数が4〜21の炭化水素基である。また該炭化水素基R8、R9、R10およびR11の水素の一部ないし全部はフッ素、塩素、臭素ないし沃素で置換されていてもよい。R8とR9は同じでも異なっていてもよい。R10とR11は同じでも異なっていてもよい。またR12は炭素数が2〜7のアルキレン基である。またYおよびY'は水素、メチル基ないしCH2Cl基であり、YとY'は同じでも異なっていてもよい。またZおよびZ'は酸素、硫黄ないしCH2基であり、ZとZ'は同じでも異なっていてもよい。またnはZが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄ないしCH2基の場合は0である。またn'はZ'が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z'が硫黄ないしCH2基の場合は0であり、nとn'は同じでも異なっていてもよい)で表わされる櫛形疎水性ジオール(化合物D)である2価基であり、
    前記化合物Aが数平均分子量1,000〜20,000のポリエチレングリコールである。
  2. 化合物Bが鎖状脂肪族ジイソシアナートないし環状脂肪族ジイソシアナートである請求項1に記載の高分子からなるセラミックス成形用バインダー。
  3. 化合物Bがヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素化トリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナートまたはノルボルネンジイソシアナートである請求項1または2に記載の高分子からなるセラミックス成形用バインダー。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子からなるセラミックス押出し成形用バインダー。
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