本発明では、液晶層と接する表面に微小な凹凸を設け、その凹凸によって液晶層を垂直配向させる。本明細書では、このような凹凸を「配向制御構造」とよぶこともある。
まず、液晶層と接する表面に設けられた凹凸による配向制御の概念を説明する。ここでは、図3(a)の斜視図および図3(b)の断面図を参照しながら、表面に単位構造16が配列された基板15を用いて液晶分子17を配向させる例を説明する。
単位構造16は、傾斜方向の異なる2つの面(面A、面B)から構成されており、略三角形の断面形状を有している。単位構造16の表面には垂直配向膜(図示せず)が形成されている。垂直配向膜は、単位構造16の表面形状を反映した表面を有している。この垂直配向膜と接するように液晶層を設けると、液晶層の液晶分子17を、垂直配向膜の表面に垂直に配向させることができる。すなわち、単位構造16の面B上の液晶分子は面Bに垂直に、面A上の液晶分子は面Aに垂直に配向させることができる。このように、液晶層と接する表面に凹凸を設けると、垂直配向型液晶層の液晶分子の傾斜方位および角度を制御することが可能になる。
なお、凹凸形状を用いて平行配向型の液晶層を配向させる技術は、従来からよく知られている。例えばJ.COGNARD, Mol.Cryst.Liq.Cryst.Suppl.1(1987)1などに記載されている。平行配向の場合、図6に示すように、A面もB面も液晶分子の方位角方向を制御できるが、これらの傾斜面によって初期配向プレチルトを自由に変化させることはできない。従って、上述した凹凸形状による垂直配向型液晶層の配向制御とは全く概念の異なるものである。
凹凸による配向制御をVANモードの液晶表示装置に適用しようとすると、次のような問題が生じる。
再び図3を参照する。単位構造16の周期(ピッチ)Pを画素ピッチ(例えば100μm)と同程度とし、表面形状のうち面Aの部分を隠し、面Bの部分だけで画素部分を構成すれば、液晶分子17を面Bのみによって配向させることができる。すなわち、液晶分子17は面Bの法線方向に配向し、基板15の法線に対して傾斜する。しかし、1画素の幅が100μmで厚さが3〜5μmである一般の液晶表示素子の場合、液晶層を良好な配向制御するためには、液晶分子17を基板法線から3°程度傾斜させる必要があり、上記サイズの単位構造16でそのような傾斜角度を与えようとすると、単位構造16の稜線部の高さが液晶層の厚さを超えてしまう。従って、単位構造16をセル内部に形成することは物理的に不可能となる。
これに対し、単位構造16の繰り返し周期Pを画素ピッチよりも短くすると、1画素内に複数の単位構造16が構成されるが、面Aおよび面Bによる方向の異なる配向が混在してしまう。面Aを隠して、面Bのみによって配向させることも考えられるが、この場合には開口率が下がり表示が暗くなる。従って、面Aおよび面Bの面積比を調整する必要がある。
しかしながら、面Aおよび面Bの面積比を最適化し、液晶分子17の配向を制御することができても、液晶層と接する表面に凹凸形状を設けているために、実質的なセル厚が変化してしまう。そのため、画素内部に明るさの分布ができてしまい、透過率が低下してしまう。実質的なセル厚が変化することを防止するためには、単位構造16の繰り返し周期Pをさらに短く(例えば10μm以下)する必要がある。
一方、繰り返し周期Pを1μm以下とすると、配向制御体15は可視光に対して回折格子として機能するので、液晶表示装置に適用すると画素が着色してしまう。従って、良好な表示を実現するためには、周期Pは1μm以上であることが望ましい。
ところが、繰り返し周期Pが1μm〜10μm程度の微細な単位構造16を有する配向制御体15を用いて液晶層を配向させると、面Aおよび面Bによる配向が平均化されてしまい、液晶層内部に十分なプレチルトを与えることが難しいという問題が生じる。
単位構造16が10μmの繰返し周期Pで配列された基板15を用いて、液晶層における液晶分子の配向を調べた。そのシミュレーション結果を図4に示す。シミュレーションでは、液晶層の厚さを20μmとした。
図4からわかるように、液晶層と単位構造16との界面に位置する液晶分子(以下、「界面液晶分子」とよぶ)17sの配向は、単位構造16の傾斜面A、Bによって決定される。しかし、単位構造16から離れた位置にある液晶分子は、傾斜面の影響を受け難くなり、液晶層の厚さ方向の中央に位置する液晶分子(以下「中央分子」とよぶ)17cは、基板15の法線方向からほとんど傾斜していない。
次いで、単位構造16における面Aと面Bとの面積比や単位構造16の高さHを変化させて同様のシミュレーションを行った。その結果を図5に示す。図5に示すグラフの横軸は、単位構造16の繰り返し周期Pに対する面Aの幅の割合A/Pである。縦軸は、電圧無印加状態において、中央分子の長軸と基板表面との間の角度(チルト角)である。図5に示す結果から、単位構造16における面Aと面Bとの面積比や高さHを変化させても、図4に示すシミュレーション結果と同様の傾向がみられ、中央分子は基板法線方向からほとんど傾斜していないことがわかる。
図4および図5に示すシミュレーション結果によると、単位構造16によって液晶層の厚さ方向の中間に位置する液晶分子に十分なプレチルト(例えばチルト角:87°あるいは93°程度、すなわち液晶分子と基板法線との角度:約3°程度)を与えることができない。これは、以下のような理由によるものと考えられる。
ラビング処理を利用して配向制御を行う場合、液晶配向は液晶層と基板(配向膜)との界面で決定され、その配向は液晶層の厚さ方向に亘って維持される。これに対し、図4のように、液晶層と接する表面に設けた凹凸によって配向制御を行う場合、凹凸が微細なパターン(例えば10μm以下)をから構成されていれば、液晶分子は、凹凸形状に応じて配向するものの、周囲の影響を受けながら配向分布の歪を最小にするように再配向する。よって、凹凸形状によって液晶分子17sに与えられた局所的な変化(傾斜方向や傾斜角度)は、液晶層の厚さ方向に向かって次第に平均化されてしまう。
従って、単に単位構造16を微細化するだけでは、凹凸による配向制御を液晶表示装置に適用できない。液晶表示装置に適用するためには、単位構造の平均周期Pを10μm以下に抑えるとともに、液晶層の厚さ方向に亘って液晶配向を制御できるように単位構造16の形状やサイズなどを最適化する必要がある。
本発明者らが検討を重ねた結果、液晶層の厚さ方向に亘って液晶配向を制御するためには、液晶層における垂直配向膜の表面近傍に、故意に一種のディスクリネーション(配向欠陥)を生じさせることが有効であると見出した。図7を参照しながらより詳しく説明する。図7は、表面に単位構造31が配列された基板30を用いて液晶層の配向制御を行う例であり、単位構造31は平行四辺形の断面を有している。
図7(a)は、配向欠陥が生じていない場合の液晶分子の配向を示す図である。この図からわかるように、単位構造31の表面近傍では、単位構造31を構成する面C、面Dによって液晶分子32c、32dの配向がそれぞれ規制されている。よって、面C上の液晶分子32cと面D上の液晶分子32dは、それぞれ異なる方向に傾斜している。これらの傾斜方向は、単位構造31から離れるにつれて打ち消しあって平均化され、液晶層の厚さ方向の中央付近にある液晶分子33は基板30とほぼ垂直に配向している。
これに対し、図7(b)に示すように、配向欠陥は、単位構造31の形状や配列を最適化することによって発生させることができる。図7(b)では、単位構造31の基板表面に対して傾斜した側面(面C)によって配向規制された液晶分子の配向と、基板の表面(底面)によって配向規制された液晶分子の配向とが、液晶層の厚さ方向に連続性を保つことができず、面Cと基板表面とで挟まれた領域に配向欠陥が発生する。配向欠陥が生成し配向の連続性が破れるので、面Cの配向規制力は、面Cから離れた場所の液晶分子には伝達されない。その結果、面Cが液晶層の液晶分子の配向に及ぼす影響が小さくなり、面Dの配向規制力が優勢となる。この状態を液晶配向が「空間的に閉じ込められている」と表現することもある。
本発明では、図7(b)に示すような配向欠陥を利用して、液晶層の厚さ方向の中央にある液晶分子33の配向をほぼ均一に制御することができる。
上述してきたような凹凸(配向制御構造)は、液晶表示装置のTFT基板、カラーフィルター基板などの液晶層と接する表面に設けられる。本明細書では、表面に配向制御構造が設けられた基板(TFT基板、カラーフィルター基板、ガラス基板などを含む)を総称して「配向制御体」とよぶ。
以下、図面を参照しながら、本発明における配向制御体の構造例を説明する。
図8(a)は、四角形状の断面を有する単位構造31を備えた配向制御体20の斜視図であり、図8(b)は配向制御体20のE−E’断面図である。
配向制御体20の表面には、単位構造31が2次元的に配列されている。単位構造31は、X方向に非対称な断面を有している。また、配向制御体20には複数の溝35が形成されている。各溝35は、X方向と直交しない方向に延びており、例えばX方向に延びている。
配向制御体20では、図8(b)の斜線部、すなわち隣接する単位構造の側壁および基板表面で囲まれた領域21に配向欠陥を発生させることができる。領域21に液晶配向を閉じ込めるためには、例えば隣接する単位構造のギャップを十分小さくするなど、表面形状を調整する必要がある。単位構造の具体的なサイズやピッチは後述する。なお、単位構造の断面形状は、非対称な形状であれば良く、例えば三角形であってもよい。
配向制御体20における溝35は、以下に説明するように、高電圧印加時に液晶分子が方位角方向に回転することを防止するために設けられている。
図2を参照しながら前述したように、VANモードでは、電圧無印加時には液晶分子は垂直に配向するが(図2(a))、液晶層に電圧を印加すると、液晶分子は基板と平行に配向するようになる(図2(b))。配向制御体20に溝35が形成されていない場合、電圧印加時に配向制御体20の表面付近の液晶分子が基板に対して水平に近くなると、液晶分子は単位構造間のギャップの方向に並ぼうとする。これは、図6に示す液晶分子17と同様の原理による。単位構造間のギャップの方向は、電圧無印加時の液晶分子の配向方向と直交している。従って、電圧を高くすると、液晶分子の動きは極角方向の動きから方位角方向の動きへと変化してしまう。そのため、明状態の電圧を高くできないので、良好な表示が得られない。
これに対し、図8(a)に示すように、配向制御体20に溝35を設けると、電圧印加時の液晶分子は溝35に沿って並ぼうとするため、液晶分子が方位角方向に回転することを防止できる。
各単位構造31は、X方向と基板表面とに垂直な平面に関して非対称である。そのため、配向制御体20の表面は方位に関して非対称性を有する。すなわち、配向制御体20の表面の高さは、X方向にも、X方向と直交するY方向にも周期的に変化しており、X方向における高さの変化の周期は、Y方向における高さの変化の周期と異なっている。従って、配向制御体20の表面を液晶層と接するように配置すると、各単位構造31のX方向の非対称な断面形状によって、電圧無印加時の液晶層にプレチルトを与えることができるとともに、Y方向の表面高さの変化(この場合、周期的な溝35)によって、高電圧印加時の液晶分子の配向を規制することができる。
このように、配向制御体20は、凹凸形状の断面形状だけでなく、奥行き方向の形状も最適化されているので、暗状態および明状態を通じて液晶配向を制御でき、その結果、高品位の表示が得られる。
図8(a)および図8(b)に示した配向制御体20は、図7(a)および図7(b)を参照して説明したように、単位構造31の基板表面に対して傾斜した面Cの配向規制力と基板表面の配向規制力とによって、液晶層の厚さ方向に連続性を破り、配向欠陥を形成する。これに代わって、液晶層面内の配向の連続性を破って配向欠陥を生成させることもできる。
図8(c)および図8(d)に示した配向制御体40は、図9(a)および図9(b)を参照して後述するように、単位構造41の基板表面に略垂直な側面によって配向規制される液晶分子17wの配向と、基板表面(底面)によって配向規制される液晶分子17gの配向とは、液晶層面内で連続性を保つことができず、単位構造41の側面に沿って配向欠陥が形成される。このような配向欠陥が生じた状態を、液晶配向は、側面によって実質的に囲まれ、かつ底面42で規定される「平面内に閉じ込められている」と表現することもある。
平面内に配向欠陥を生じる配向制御体の構造の一例を以下に説明する。
図8(c)は、本発明における配向制御体の他の構造例を示す斜視図である。図8(c)に示す配向制御体40は、複数の三角柱状の単位構造41を備えている。単位構造41の上面は、例えば二等辺三角形である。図8(d)は、配向制御体40の平面図である。これらの図からわかるように、隣接する単位構造41の間のギャップ(凹部)は、二等辺三角形の底面42を有している。
配向制御体40を用いて液晶を配向させると、底面42に液晶配向を閉じ込めることができる。この原理を図9を参照しながら以下に説明する。
図9(a)および(b)は、それぞれ、配向制御体40と液晶層との界面における界面液晶分子の配向を示す平面図およびC−C’断面図である。図示するように、単位構造41の上面近傍の液晶分子17pは、単位構造41の上面に垂直に並ぶ。また、単位構造41のギャップ(凹部)の底面42では、液晶分子17bは、底面42と平行で、かつ底面42の二等辺三角形の底辺に略垂直に強制的に並べられる。単位構造41のギャップ内の他の液晶分子17gは、底面42の液晶分子17bの影響を受けて、液晶分子17bと略同様の配向を有する。ただし、単位構造41のそれぞれの側壁近傍に位置する液晶分子17wは、単位構造41の各側壁に垂直に配向する。
このように、液晶層と配向制御体40との界面では、底面42における液晶分子17bの配向、および単位構造41の上面における液晶分子17pの配向の主に2つの配向が得られる。液晶層内部における液晶分子は、これらの2つの配向が平均化された方向に配向し、特定の方向に傾斜した垂直配向が得られる。言い換えると、液晶層内部の配向制御は、界面液晶分子に与える上記2つの配向を制御することによって行うことができる。
単位構造41の上面の形状や底面42の形状は、図8(c)、(d)に示す形状に限定されない。ただし、底面42が正三角形や正方形、長方形などの基板法線方向に回転対称軸を有する形状であれば、底面近傍の界面液晶分子を特定の方向に配向させることができない。従って、底面42は、基板法線方向に回転対称軸を有しないことが必要である。
図8(c)および(d)に示した配向制御体40のように面内に配向欠陥を発生させる構造は、図8(a)および(b)の配向制御体20のように空間に配向欠陥を発生させる構造よりも容易に作製できる。空間に配向欠陥を発生させる構造では、配向制御体の表面には、液晶層の厚さ方向に変化する凹凸形状(例えば配向制御体20の単位構造31)が形成される必要がある。しかし、厚さ方向に変化する凹凸形状を従来の露光機で作製することは困難である。これに対し、面内に配向欠陥を発生させる構造では、凹凸形状は基板に対して垂直に形成されていてもよいので(例えば三角柱状の単位構造41)、表示装置の製造に通常用いられるのステッパーをなどの露光機で作製できる。
上述した配向制御体20、40を用いると、例えば図10(a)および(b)に示すような構成を有する液晶表示装置が得られる。
図10(a)に示す表示装置700では、表面に導電膜485および垂直配向膜487をこの順で有する配向制御体483と、表面に電極481および垂直配向膜488が形成された基板480とが対向し、配向制御体483および基板480によって液晶層490が狭持されている。垂直配向膜487は、液晶層490と接するように形成されている。液晶層490は垂直配向型液晶層である。配向制御体483の表面は、例えば図8(a)〜(d)を参照しながら説明したような凹凸形状を有しており、この凹凸形状によって液晶層490の液晶分子を配向させる。
液晶層490に電圧が印加されていない状態(OFF状態)では、液晶層490に含まれる液晶分子(中央分子)は、配向制御体483の表面形状の影響を受けて、基板の法線方向から傾いている。導電膜485および電極481によって液晶層490に電圧が印加されると、液晶分子は、OFF状態で傾いていた方向に倒れる。
基板480の代わりに、他の配向制御体を配向制御体483と対向するように配置して、液晶層490が2つの配向制御体によって狭持される構成にしてもよい。
図10(b)の表示装置701は、図10(a)に示す表示装置700と同様の構成を有している。ただし、表示装置701では、導電膜482は、基板と配向制御体484との間に形成されている。
配向制御体483における各単位構造は、その形状にかかわらず、フォトレジスト、アクリル樹脂やゴム、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、エポキシ樹脂などの有機物を用いて形成されていても良いし、無機物の金属(例えばAl、Ta、Cu等)、半導体(Si、ITO等)や絶縁体(SiO2、SiN等)を用いて形成されていても良い。また、単位構造が、液晶を垂直配向させる性質(フッ素樹脂等)を有する材料を用いて形成されていれば、配向制御体483の表面に垂直配向膜488を塗布する必要がなく、生産プロセスが簡略化されるので好ましい。
表示装置700、701によると、配向制御体483の表面に設けられた凹凸により、液晶層490の中央分子の配向を略均一に制御できるので、高コントラストな表示が得られる。また、配向制御体483、484における単位構造の形状や配列を制御することにより、液晶配向(液晶分子の基板法線からの傾斜方向や傾斜角度)を任意に設定できる。さらに、リブやスリットなどの従来の配向制御手段を備えた表示装置と比べて、リタデーションや開口率を向上できる。
表示装置700、701は、好ましくはMVAモードの液晶表示装置である。本発明をMVAモードの液晶表示装置に適用する場合、配向制御体483の形状および/または位置に応じて凹凸形状を制御することにより自由かつ簡易に配向分割を実現できる。従って、従来のように複雑な配向制御手段(リブ、スリットなど)を形成することがないので、製造プロセスを簡略化できる。
さらに、表示装置700、701は、リブやスリットを利用した表示装置と比べて、優れた応答特性を実現できるという利点もある。この利点について以下に説明する。
リブやスリットなどの従来のMVA型LCDで用いられる配向制御手段は、画素内の液晶層に対して局所的(一次元的)に配置される。そのため、2次元的な広がりを有する画素内において、配向制御手段近傍にある液晶分子は比較的速く応答するのに対し、配向制御手段の影響を受けにくい位置にある液晶分子の応答が遅くなる。この応答特性の分布が表示特性を低下させることがある。
リブ法では、リブの近傍に存在する液晶分子は、リブ形状の影響を受けて所定のプレチルト(プレチルト方向およびプレチルト角)を有する。一方、隣接するリブの中間に位置する液晶分子はリブ形状の影響を受けにくいので、そのプレチルト角は、リブの近傍に存在する液晶分子よりも小さくなる。このような液晶層に電圧を印加すると、プレチルト角の大きい液晶分子から順にプレチルト方向に倒れていくため、液晶層の応答速度が小さくなる。
同様に、斜め電界法においても、スリットの近傍に存在する液晶分子と隣接するスリットの中間に位置する液晶分子とでは、スリット近傍に存在する液晶分子の方が斜め電界の影響を大きく受ける。従って、電圧を印加すると、スリット近傍に存在する液晶分子から順に応答していく。そのため、液晶層の応答時間は長くなってしまう。
これに対し、上記表示装置700、701では、画素部のほぼ全域に(2次元的に)均一に液晶層490の配向制御手段を形成できるので、液晶分子は液晶層490における位置にかかわらず高速で応答できる。従って、液晶層490の応答速度を従来よりも大幅に向上できる。
なお、双安定性液晶モードで動作するZBD(Zenithal Bistable Device)でも、凹凸形状を利用して液晶配向を制御している。ZBDにおける配向制御は、例えば特表2002−500383号公報、特表2003−515788号公報などに記載されている。ZBDでは、凹凸形状の配向膜によって決定される液晶配向状態(プレチルト)は2以上あり、これらの配向状態は異なる極性の電圧を印加することによりスイッチングされ得る。各配向状態は電圧無印加時でもそのまま保持される。これに対し、本発明では、配向制御体の凹凸形状によって決定される配向状態(プレチルト角、プレチルト方向)は、異なる極性の電圧(例えば−5V〜+5Vの範囲内)を印加しても変化しない。すなわち、双安定性を示さない。なお、双安定性液晶モードの液晶表示装置では、一般的に、電圧印加に対して透過率のヒステリシスが発生するという問題があるが、本発明の液晶表示装置では、そのような透過率のヒステリシスが発生しないので、優れた中間調表示が得られる。
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態1の液晶表示装置の構成を説明する。
図11(a)および(b)は、それぞれ、本実施形態の液晶表示装置の構成を例示する断面模式図である。図11(a)に示す液晶表示装置は、スペーサ(厚さ:5μm)65を挟んで貼り合せられた一対の配向制御体50と、その間に設けられた液晶層66とを有している。配向制御体50は、ガラス基板61と、ガラス基板61の上に形成された電極62とを有し、電極62の上には、配向制御構造が設けられている。配向制御構造は、配列された複数の単位構造51を有している。単位構造51は、例えば樹脂材料から形成されている。単位構造51は非対称な四角形の断面を有している。また、配向制御構造には、単位構造51の配列方向と直交する方向に沿って溝(図示せず)が形成されている。単位構造51の表面には垂直配向膜64が形成されている。垂直配向膜64は液晶層66と接している。
図11(b)に示す液晶表示装置は、配向制御体50と、対向基板61’と、その間に設けられた液晶層66とを有している。配向制御体50は、図11(a)に示すサンプル素子の配向制御体50と同様の構成を有している。対向基板61’は、電極62と、電極62の表面に形成された垂直配向膜64とを有している。対向基板61’における垂直配向膜64の表面は平坦である。
いずれの構成を有する液晶表示装置でも、単位構造51の形状や配列を制御すれば、液晶層66の液晶分子にプレチルトを生じさせることができる。ただし、図11(b)に示す液晶表示装置の中央分子(液晶層66における厚さ方向の中央に位置する液晶分子)に生じるプレチルト角は、図11(a)に示す液晶表示装置の中央分子に生じるプレチルト角の約1/2となる。
本実施形態の液晶表示装置に用いられる配向制御体50は、四角形の断面を有する単位構造51を有しているが、単位構造51の断面形状は非対称であれば良く、三角形やその他の形状であってもよい。
図12(a)は、本実施形態における配向制御体の他の構成を例示する斜視図である。図12(a)に示す配向制御体70は、複数の単位構造列71cを有している。各単位構造列71cは、X方向にピッチPで配列された複数の単位構造71を有している。各単位構造71の断面は略三角形である。単位構造列71cは、Y方向に所定の間隔(溝72)を空けてピッチPGで配列されている。溝72はX方向に沿って延びている。ここでは、溝72におけるY方向の長さを幅Gとする。
配向制御体70を用いて液晶表示装置を構成すると、図8(a)を参照しながら説明したように、高電圧印加時の液晶分子は溝72に沿って並ぼうとするため、液晶分子が方位角方向に回転することを防止できる。溝72は、Y方向に対称な断面形状(例えば矩形)を有することが好ましい。これにより、単位構造71のX方向における非対称な断面形状によって決まるプレチルトに影響を与えることなく、高電圧印加時における液晶分子の回転を防止できる。
本実施形態における配向制御体70は、図12(a)に示す構成に限定されない。高電圧印加時に液晶分子が方位角方向に回転することを防止できるように、単位構造の断面形状のみでなく、その奥行き方向の形状も制御されていれば良い。例えば、図12(b)に示すように、単位構造列73cと、X方向のピッチPの1/2だけ単位構造列73cをX方向に平行移動させた単位構造列73c’とをY方向に交互に配列させた構成を有していてもよい。
図12(a)または(b)に示す構成によると、配向制御体70の表面は、X方向にピッチPで高さが変化し、Y方向にピッチPGで高さが変化する。X方向における高さの変化とY方向における高さの変化とは互いに異なっている。X方向のピッチPとY方向のピッチPGは適宜選択でき、これらのピッチP、PGが互いに等しくても構わない。Y方向のピッチPGは、X方向のピッチPほど小さくなくても、上記高電圧印加時における液晶分子の回転を防止する効果が得られる。例えば、P=1μm、PG=5μm、G=1μmとして配向制御体70を形成し、これを用いて液晶層を配向させると、液晶層に高電圧を印加しても問題となる方位方向の変化は見られない。また、溝72の幅Gは例えば0.5μm以上10μm以下であれば、方位方向の変化をより効果的に抑制できる。
液晶層に生じるプレチルト方位やプレチルト角は、基本的に単位構造71、73のX方向の断面形状によって決まる。従って、単位構造71、73の断面形状は一定のまま、その奥行き方向の形状のみを変化させても、プレチルトに大きな変化は生じない。従って、後述する<配向制御構造の各種パラメータの検討>では、単位構造の断面形状を規定する各パラメータの検討を行っているが、その検討結果は、基本的に、溝72のピッチや形状、あるいは溝72の有無によって影響を受けない。ただし、図11(b)に示す構成を有する配向制御体を用いる場合、液晶層に生じるプレチルト角は、単位構造71、72の断面形状から決まるプレチルト角よりも小さくなる傾向にある。従って、所望のプレチルト角を得るためには、単位構造71、73の断面形状を調整しておく必要がある。
本実施形態における配向制御体は、例えば電子線描画装置を用いて形成できる。以下、一例として配向制御体70の形成方法を説明する。
まず、基板の表面にフォトレジスト層(厚さ:例えば1μm)をスピンコートにより形成する。ここでは、基板として、表面に導電膜を形成したガラス基板を用いる。また、フォトレジストとしてTHMR−IP3300を用いる。
次いで、フォトレジスト層を微細なパターンに加工する。ここでは、図12(a)に示すように配列された単位構造71を形成する。より具体的には、電子線描画装置を用いて、フォトレジスト層を露光した後、フォトレジスト層の現像を行う。各単位構造71における傾斜面(側壁)は、露光の際に、露光機のビーム強度を変化させることにより形成できる。
フォトレジスト層のパターニング後、基板の露出表面に垂直配向膜を塗布する。これにより、配向制御体70が得られる。
本実施形態における配向制御体の形成方法は上記の方法に限定されず、例えば、ホログラム、2光束干渉露光などを用いてもよい。干渉露光を用いる場合には、干渉露光によってストライプ状の凹凸を形成した後、ストライプと直交する方向にピッチPGで溝72を形成してもよい。溝72は、例えばエッチングやレーザーアブレーションによって形成できる。
本実施形態の液晶表示装置は、例えば、上記方法で作製した配向制御体70を用いて作製される。具体的には、図11(a)に示す構成の液晶表示装置を作製する場合には、配向制御体70を2枚形成して、厚さが5μmのスペーサーを挟んで貼り合わせる。その後、これらの配向制御体70の間に、Δεが負の液晶材料を注入する。液晶材料として、MLC6609(MERCK製)を用いる。また、図11(b)に示す構成の液晶表示装置を作製する場合は、一方の配向制御体50の代わりに、電極62および垂直配向膜64を形成した対向基板61’を用いることにより、同様の方法で作製できる。
本実施形態では、配向制御体表面の凹凸形状によって液晶層の配向制御を行う。このとき、図7(b)に示すように、液晶層の中央分子の配向を略均一に制御するためには、配向制御体の表面近傍の領域(空間)に配向欠陥を生じさせる必要がある。
以下、配向欠陥を生じさせることができる配向制御体の表面形状(配向制御構造)を具体的に検討した。その結果を説明する。
<配向制御構造の各種パラメータの検討>
まず、配向制御構造を規定する各種パラメーターを説明する。
図13(a)および(b)は、それぞれ、配向制御体50の斜視図および断面図である。配向制御体50の表面には複数の単位構造51が配列されている。単位構造51の断面形状は略台形である。図13(b)の断面図において、単位構造51のピッチを参照符号「P」、単位構造51の高さを参照符号「H」、上面の幅を参照符号「W」、各側壁と基板表面との角度(底角)をそれぞれ参照符号「A」および「B」、隣接する単位構造51のギャップの幅を「F」で示す。単位構造51のピッチPは、前述したように1μm以上10μm以下である。これらのパラメータP、H、W、A、BおよびFは、液晶層に与えようとするプレチルトに応じて、適宜選択される。
単位構造の断面形状における側壁の1つと基板表面との角度Aは90°以上であっても良く、この場合、上記の各パラメータは、図13(c)に示すように定義される。また、単位構造の断面形状は三角形であっても良く、その場合、上面の幅Wはゼロとなる。
本明細書では、液晶層に電圧を印加しない状態の、液晶分子(液晶ダイレクター)の傾斜方向の基板表面における方位を「プレチルト方向」とする。また、図14(a)および(b)に示すように、液晶分子の傾斜方向と基板表面とがなす角度を「チルト角θ」とする。さらに、図14(a)に示すように、水平配向型液晶層において、液晶分子の傾斜方向と基板表面とがなす角度を「プレチルト角Ph」とする。一方、図14(b)に示すように、垂直配向型液晶層において、液晶分子の長軸の傾斜方向と基板法線とがなす角度を「プレチルト角Pv」とする。従って、プレチルト角Phはチルト角θと等しい(Ph=θ)が、プレチルト角Pvは(90―θ)°となる。
次に、配向制御構造の上記パラメータを検討するために、図11(a)に示すような構成を有するサンプル素子を作製したのでその作製方法を説明する。
まず、サンプル素子に用いる配向制御体50を形成する。
透明基板の表面に、フォトレジスト層(厚さ:1μm)を例えばスピンコートで形成する。本実施形態では、フォトレジストとしてTHMR−IP3300を用いる。また、本実施形態では、透明基板として、表面に導電層(ITO)62が形成されたガラス基板61を用いる。
次いで、フォトレジスト層を2光束干渉露光を用いてパターニングする。具体的には、図15(a)に示すように、干渉露光装置において、Alミラー68の上に設けられたプリズム(プリズム角:φ)69の上に基板61を設置する。この基板61を、波長が407nmのKrレーザー光67で露光する。図15(b)に示すように、入射角iで基板に入射した光は、基板を通過してプリズム内で屈折し、Alミラーで反射した後に、再び基板表面から出射角γで出射する。これによって、フォトレジスト層に所望の強度分布を与えることができる。露光後、現像を行うことにより、基板61の表面に、高さが1μm以下で、非対称な四角形状の断面を有する単位構造51を形成できる。このパターニング方法によると、入射角i、プリズム角φ、プリズムの屈折率などによって、単位構造51のピッチ、傾斜面の角度などを自由に設定できるので有利である。
この後、単位構造51が形成された基板61の表面に、垂直配向膜64を塗布により形成する。このようにして配向制御体50が得られる。
上記方法により配向制御体50を2つ形成し、これらの配向制御体50をスペーサー65を介して貼り合わせる。この後、これらの配向制御体50の間に液晶材料を注入する。液晶材料として、Δεが負の液晶MLC6609(MERCK製)を用いる。このようにして、図11(a)に示す構成を有するサンプル素子が作製される。
(A)単位構造のピッチPの検討
まず、単位構造のピッチPと液晶配向との関係を検討する。ここでは、単位構造51の高さHを0.5μm、一方の側壁と基板表面との角度Bを75°、上面の幅Wを0、隣接する単位構造51のギャップの幅Fを0とし、単位構造51のピッチPを表1のように変化させた6種類のサンプル素子No.1〜6を用いる。他方の側壁と基板表面との角度Aは、ピッチPに応じて変化する。
得られたサンプル素子No.1〜6の初期配向(電圧無印加時の配向)におけるチルト角θを測定した。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、単位構造51のピッチPが10μm程度以下であれば、液晶層にプレチルトを発生させることができるが、十分なプレチルトを発生させるためには、ピッチPを小さく(例えば1μm以下)する必要がある。これは、以下のような理由によるものと考えられる。
単位構造51のピッチPが大きいと、図7(a)に示すシミュレーション結果のように、液晶層の厚さ方向の中央部分では、配向制御体50の表面における液晶配向が平均化されてしまうので、液晶分子は基板法線方向からほとんど傾斜しない。一方、ピッチPが小さくなると図7(b)に示すシミュレーション結果のように、隣接する単位構造51の間に、液晶配向が閉じ込められた部分(配向欠陥)ができるので、液晶配向の平均化が抑えられる。その結果、液晶層の厚さ方向の中央部分でも、液晶分子は基板法線方向から傾いて配向する。
(B)単位構造の高さHの検討
次に、単位構造の高さHと液晶配向との関係を検討する。ここでは、単位構造51のピッチPを1μm、単位構造51における一方の側壁と基板表面との角度Bを75°、上面の幅Wを0、隣接する単位構造51のギャップの幅Fを0とし、単位構造51の高さHを表2のように変化させたサンプル素子No.7〜12を用いる。単位構造51の他方の側壁と基板表面との角度Aは、高さHに応じて変化する。W=0であるため、単位構造51の断面形状は三角形である。
得られたサンプル素子No.7〜12の液晶層に低い電圧(2〜3V)を印加したときの、液晶層の配向均一性を目視により評価した。その結果を表2に示す。なお、表2の配向均一性は、良好な配向を「○」、多少乱れた配向を「△」、乱れた配向を「×」の記号でそれぞれ表わす。
表2からわかるように、単位構造の高さHが十分大きいと、凹凸構造に囲まれた領域に液晶配向を閉じ込めることができるので、液晶層の全体の中央分子に略均一なプレチルトを発生させることができる。従って、電圧印加時に、中央分子を所望の方向に傾かせることができる。
なお、単位構造51のピッチPおよび高さHを変化させて電圧印加時の配向を調べると、H/Pが0.1以上でほぼ良好な配向が得られ、H/Pが0.5以上であればより均一に配向制御できることが確認できる。
(C)単位構造の上面の幅Wの検討
単位構造の上面の幅Wと液晶配向との関係を検討する。ここでは、単位構造51のピッチPを1μm、単位構造51の高さHを0.5μm、一方の側壁と基板表面との角度Bを75°、隣接する単位構造51のギャップの幅Fを0とし、単位構造51の上面(頂点部)の幅Wを表3のように変化させた4種類のサンプル素子No.13〜16を用いる。他方の側壁と基板表面との角度Aは幅Wに応じて変化する。なお、上面の幅Wは、干渉露光によりパターンングされるフォトレジスト層の厚さ、露光時間、および現像時間を制御することによって変化させる。
得られたサンプル素子No.13〜16の初期配向におけるチルト角θを測定した。その結果を表3に示す。
表3から、単位構造51の上面の幅Wを大きくすると、チルト角が90°に近づく、すなわちプレチルト角Pvがゼロに近づくことがわかる。
(D)隣接する単位構造のギャップの幅Fの検討
隣接する単位構造のギャップの幅Fと液晶配向との関係を検討する。ここでは、単位構造51の高さHを0.5μm、一方の側壁と基板表面との角度Bを75°、上面の幅Wを0とし、隣接する単位構造51のギャップの幅Fを表4のように変化させた4種類のサンプル素子No.17〜20を用いる。他方の側壁と基板表面との角度Aは、ギャップの幅Fに応じて変化する。
得られたサンプル素子No.17〜20の初期配向におけるチルト角θを測定した。その結果を表4に示す。
表4から、隣接する単位構造51におけるギャップの幅Fを大きくすると、配向欠陥が生じやすくなり、プレチルト角Pvが大きくなることがわかる。しかし、ギャップの幅Fが大きすぎる(例えば2μm以上)と、プレチルト角Pvが0°になってしまう。これは、ギャップの幅Fが増大することによって、単位構造51のピッチPが増大し、液晶配向の平均化が起こるためと考えられる。すなわち、ギャップの幅Fを大きくすると、図7(b)のシミュレーション結果に示すようなプレチルトが得られるが、ギャップの幅Fが2μm以上になると、図7(a)のシミュレーション結果のように、液晶配向が液晶層の厚さ方向に平均化され、液晶層内部でプレチルトが得られなくなるためと考えられる。
(E)単位構造の側壁の角度Aの検討
単位構造の側壁の角度Aと液晶配向との関係を検討する。ここでは、単位構造71の高さHを0.5μm、一方の側壁と基板表面との角度Bを60°、上面の幅Wを0、隣接する単位構造71のギャップの幅Fを0とし、単位構造71の他方の側壁と基板表面との角度Aを表5に示すように変化させた5種類のサンプル素子No.21〜25を用いる。単位構造71のピッチPは角度Aに応じて変化する。W=0であるため、単位構造71の断面形状は三角形である。
なお、ここで用いるサンプル素子No.2〜20の配向制御構造は、上記(A)〜(D)で用いたサンプル素子と異なり、電子線描画装置によって形成されている。
得られたサンプル素子No.21〜25の液晶層に低い電圧(2〜3V)を印加し、液晶層の配向均一性を目視により評価する。結果を表5に示す。なお、表5における「○」、「△」、「×」の記号は、上記表2におけるこれらの記号とそれぞれ同様である。
表5に示す結果から、一方の側壁の角度Bを60°に固定する場合、他の側壁の角度Aが大きいほど、良好な配向が得られることがわかる。角度Aは、好ましくは45°以上である。
上述してきたように、単位構造51の形状や配列を最適化することにより、液晶層内部に所望のプレチルトを発生させることが可能となる。単位構造51の形状(傾斜面の角度、面積など)やサイズ、配列ピッチなどを変えることによって、任意のプレチルト(プレチルト角、プレチルト方向)が安定して得られる。また、プレチルト方向は単位構造51の側壁の傾斜角度などによって決まるので、基板表面における位置に応じて単位構造51の形状を変化させれば、MVAモードなどの配向分割を容易に実現できることがわかる。
(実施形態2)
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態2の液晶表示装置を説明する。本実施形態の液晶表示装置は、図11(a)および(b)を参照しながら説明した実施形態1の構成と同様の構成を有している。ただし、以下の点で異なっている。
実施形態1で用いた配向制御体は、非対称な断面形状を有する複数の単位構造を備えている。従って、実施形態1では、単位構造で構成された凹凸で、液晶配向をある領域(空間)に閉じ込めることにより配向欠陥を生じさせている。これに対し、本実施形態における配向制御体は、基板表面に垂直な側壁を有する複数の柱状単位構造を備えている。このような配向制御体を用いると、図8(c)、(d)および図9を参照しながら前述したように、単位構造間のギャップ(凹部)における基板表面に液晶配向を閉じ込めることにより配向欠陥を生じさせることができる。
本実施形態によると、配向制御体の表面形状を、通常の解像度(1μm以下)を有するステッパーなどの露光装置を用いて簡便に形成できるので有利である。
本実施形態では、液晶層に生じるプレチルト(プレチルト角、プレチルト方向)は、配向制御体の単位構造の形状に依存する。プレチルトを生じさせるためには、単位構造の形状および配列は以下の2つの条件を満足することが好ましい。
第1に、最近接の単位構造によって包囲される底面は、基板法線方向に回転対称軸を有していないことが必要がある。プレチルトには方向性があるので、上記底面が基板法線方向に回転対称軸を有していると(例えば円や正三角形)、プレチルト角の大きさは同じでも、正の方向に生じるプレチルトと負の方向に生じるプレチルトとが等価となる。すなわち、プレチルト方向の異なるプレチルト同士が打ち消し合って平均化され、結果的に液晶層内部の液晶分子のプレチルト角は全体として0°となってしまうからである。
柱状単位構造の上面の形状自体が、基板法線方向に回転対称軸を有してない形状(例えば二等辺三角形や台形など)であってもよい。この場合、単位構造を比較的単純に配列するだけで、上記条件を満足する底面が形成できるので有利である。
第2に、配向制御体の各単位構造の高さ(凹部の深さ)Hは、他の実施形態と同様に、単位構造のピッチPの0.5倍程度以上であることが必要である。単位構造の高さHがピッチPの0.5倍程度よりも小さいと、図7(a)を参照しながら説明したような液晶配向の平均化が起こり、プレチルトが得られないおそれがあるからである。
上記2つの条件を満足する好適な配向制御体は、例えば図8(c)および(d)に示すような、三角柱を基本とする配向制御体40である。あるいは、配向制御体は、図16(a)〜(d)に例示する構成を有していてもよい。図16(a)に示す構成では、三角柱状の単位構造82が、基板81の表面に間隔を空けて配列されている。図16(b)に示す構成では、単位構造は、上面が台形である四角柱である。図16(c)に示す構成では、三角柱状の単位構造が、図8(c)や図16(a)に示す構成と異なるパターンで配列されている。また、図16(d)に示す構成では、単位構造は五角柱である。いずれの構成においても、各単位構造は線対称でなくてもよい。
上記いずれの構成であっても、単位構造の形状や配列を制御することにより、プレチルト角やプレチルト方向を自由に設定できる。単位構造の形状や配列は、次に説明するように露光時のマスク形状によって簡単に変化させることができる。従って、製造プロセスによってプレチルト角やプレチルト方向の選択が制約されないというメリットがある。
以下、本実施形態における配向制御体の形成方法を、図16(a)に示す配向制御体80を例に説明する。
まず、基板81の表面にフォトレジスト層(厚さ:例えば0.8μm)をスピンコートにより形成する。基板81として、表面に導電膜を形成したガラス基板を用てもよい。また、フォトレジストとして例えばTHMR−IP3300を用いる。
次いで、液晶表示装置の製造に通常用いられる露光装置を用いてフォトレジスト層の形状を加工し、図16(a)に示すように配列された三角柱(単位構造)82を形成する。より具体的には、フォトレジスト層表面のうち、単位構造82の上面となる領域を覆うようにマスクを設け、このマスクを介してフォトレジスト層を露光する。この後、フォトレジスト層の現像を行う。
続いて、基板の露出表面に垂直配向膜を塗布する。これにより、配向制御体80が得られる。
なお、露光工程で用いるマスクの形状を変えることにより、他の構成の配向制御体(例えば図16(b)〜(d)に示す配向制御体)も上記方法と同様の方法で形成できる。
上述してきたように、本発明における配向制御体の表面形状は、2次元的な異方性を有している必要がある。具体的には、少なくとも、互いに直交するX、Y方向における周期が異なっているか、または、それらの方向における位相が変化していることが好ましい。以下、本発明における配向制御体の異方性について、図16(a)、(c)を参照しながら説明する。
図16(a)、(c)に示すように、基板81と平行で、単位構造間のギャップ(凹部)における配向欠陥によって発生するプレチルト方位と直交する方向をX方向、基板81と平行で、X方向と直交する方向をY方向とする。
図16(a)の構成では、X方向における配向制御体80の断面をY方向にずらしていくと、断面形状は、X方向における単位構造82の周期Txの1/2のピッチでX方向に沿ってずれていく。Y方向における断面形状も同様に、X方向にずらすと変化する。すなわち、単位構造82は、X、Y方向における断面形状の位相が変化するように配列されている。この場合、X方向における単位構造82の周期Txと、Y方向における単位構造82の周期Tyとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。図16(b)に示す構成も同様である。
一方、図16(c)の構成では、X方向における断面形状の位相は、Y方向にずらしても変化しない。Y方向における断面形状の位相も、X方向にずらしても変化しない。この場合には、X方向における単位構造82の周期Txと、Y方向における単位構造82の周期Tyとは互いに異なっていることが好ましい。図16(d)に示す構成も同様である。
(実施形態3)
以下、本発明による実施形態3の液晶表示装置を説明する。本実施形態の液晶表示装置は、図11(a)および(b)を参照しながら説明した実施形態1の構成と同様の構成を有している。ただし、領域分割された配向制御体を用いたMVAモードの液晶表示装置である点で異なっている。
前述したように、VANモードにおける視野角を改善するためには、1つの画素に異なるプレチルト方向を混在させる(MVAモード)ことが好ましい。本発明によると、液晶層と接する表面の凹凸形状によってプレチルト方向を任意に設定できるため、比較的容易にMVAモードを実現できる。
本実施形態における配向制御体の構成例を図17及び図18を参照しながら説明する。
配向制御体は、図17(a)に示すように、例えば60mm×60mmの配向制御領域92を有する基板(石英基板など)上に形成される。配向制御領域92には、300μm×100μmの単位領域90が200個×600個並べられている。配向制御領域92は表示装置における表示領域に、単位領域90は表示装置における画素にそれぞれ対応して設けられる。
各単位領域90は、図17(b)に示すように、縦横ともに2分割された4つの「サブ」の領域94を有している。サブ領域94は、例えば画素分割されたサブ画素に対応づけられる。各サブ領域94には複数の単位構造が配列されている。単位構造の形状は、例えば実施形態1、2における単位構造の形状と同じであってもよい。これらのサブ領域94では、サブ領域毎に異なる方向のプレチルトを発生させるように単位構造が配列されている。
図18(a)および(b)を参照しながら、各サブ領域94における単位構造の配列状態をより詳しく説明する。
図18(a)に示す単位構造96は、例えば図12を参照しながら説明した実施形態1における単位構造と同様である。この図では、略三角形の断面を有しているが(W=0)、四角形の断面を有していてもよい。各サブ領域94における単位構造96は、それぞれ、矢印の方向にプレチルトを生じさせるように配列されている。ここでは、隣接するサブ領域94における単位構造の配列方向(図12(a)のX方向)が90°の角度をなすように設計されている。これによって、サブ領域毎に異なる方向のプレチルト実現することができる。
図18(b)に示す単位構造96’は、例えば実施形態2における単位構造と同様である。この図では、単位構造96’として三角柱を形成しているが、五角柱や他の形状であってもよい。この図でも、各サブ領域94における単位構造96’は、それぞれ矢印の方向にプレチルトを生じさせるように配列されている。
このように単位領域90を4つのサブ領域94に分割することにより、4分割の配向分割を行うことができる。配向制御体90を用いて表示装置を構成する場合、配向制御体90と対向する基板として、同様に領域分割された配向制御体を用いてもよいし、表面に垂直配向膜が塗布された平坦な対向基板を用いても良い。ただし、平坦な対向基板を用いる場合は、配向制御体90によるプレチルト角が実質的に半分になるので、予め大きいプレチルト角を生じさせるように配向制御体90の凹凸形状を設定しておく必要がある。
配向制御体90は、マスク露光装置(ステッパー)でフォトレジスト層(厚さ:1μm程度以上)を凹凸形状に加工することによって形成できる。または、前述の実施形態と同様に、例えば干渉露光装置や電子線描装置を用いて、基板表面に形成されたフォトレジスト層(厚さ:1μm程度以下)を所望の凹凸形状に加工することによって形成してもよい。
本実施形態における配向制御体は、図18(a)および(b)に示す構成に限定されず、各単位構造の凹凸によって得られるプレチルト方向が、その単位構造の基板表面における位置に応じて予め決められていればよい。単位領域92を、帯状のサブ領域に分割してもよい。単位領域92の他の分割方法を図19(a)、(b)、(c)に例示する。あるいは、各単位領域92をサブ領域に分割せず、単位構造96、96’の配列方向を、単位領域90における位置に応じて変化させることによって配向分割を行ってもよい。例えば、単位領域90におけるプレチルト方向を連続的にかざぐるま状(continuous pinweel alignment)に変化させるように、単位構造96、96’が配列されていてもよい。また、単位領域90のサイズやサブ領域の数、形状なども任意に設定できる。単位領域90のサイズは、表示装置の画素のサイズに対応させることが好ましい。また、各単位構造96、96’のサイズやピッチも任意に設定できる。
(実施形態4)
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態4の配向制御体の形成方法を説明する。本実施形態では、転写によって配向制御体を形成する点で、前述の実施形態1〜3と異なっている。
実施形態1〜3では、配向制御体は、樹脂層(フォトレジスト層)を凹凸形状に加工することにより形成される。この方法によると、樹脂層は、高解像度に対応できる高い感光性が要求されるため、耐熱性や耐溶媒性が制限される。また、樹脂層の材料も自由に選択できないので、樹脂層の材料の誘電率や導電率、不純物濃度などの電気的特性が制限される。そのため、例えば、形状加工後の樹脂層表面に垂直配向膜を塗布する際に、樹脂層表面にダメージを与えないように、垂直配向膜の溶媒や焼成温度を選ばなければならないという、製造プロセス上の問題がある。また、樹脂層の表面には、高さが1μm程度の凹凸が液晶層の内部に向かって形成されるので、この凹凸によって電圧降下が起こったり、樹脂層から不純物が溶出するという問題がある。
本実施形態では、配向制御体に転写により凹凸形状を形成する。本明細書では、このような形成方法を「レプリカ法」と呼ぶ。
レプリカ法の概略を図20を参照しながら説明する。まず。図20(a)に示すように、表面に凹凸形状が形成された原盤101を作製する。一方、表面に樹脂(かたどり樹脂)103を塗布あるいは滴下した基板102を用意する。次いで、原盤101を基板102の表面に押し付けることにより、原盤101の表面形状をかたどり樹脂103に転写する。これにより、図20(b)に示すように、原盤101の凹凸形状に対応する形状を有する樹脂層103’を備えた配向制御体105を形成できる。
レプリカ法によると、樹脂層は高い感光性を有する必要はないので、樹脂層の材料の選択の自由度を大きくできる。その結果、高性能で信頼性に優れた表示装置が得られる。
以下、図面を参照しながら、本実施形態の配向制御体の形成方法をより具体的に説明する。
まず、図21(a)に示すように、表面に凹凸形状を有する原盤101を作製する。原盤101は、基板上にフォトレジスト層を形成した後、2光束干渉露光装置、電子線描画装置またはステッパーのようなマスク露光機を用いて、フォトレジスト層をパターニングすることによって作製できる。フォトレジスト層のパターニング方法は、例えば実施形態1、2におけるフォトレジスト層のパターニング方法と同様である。または、Alなどの材料からなる基板を機械的に削ったり、Si基板などの単結晶基板をエッチングすることによって作製してもよい。原盤101は、光学的に透明である必要はなく、微細加工が可能な材料を用いて形成されていればよい。微細加工が可能な材料として、例えば高解像度のレジストを用いてもよい。
次に、図21(b)に示すように、透明基板102の表面にかたどり樹脂103を塗布した後、原盤101の凹凸形状がかたどり樹脂103と接するように、原盤101を透明基板102に貼付する。透明基板102として、例えばガラス基板、表面に導電膜(ITO)を有するガラス基板などを用いることができる。かたどり樹脂103として、ここでは紫外線硬化樹脂を用いる。かたどり樹脂103は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの他の樹脂材料であってもよい。
透明基板102と原盤101との上記貼付は、例えば図22に示すような装置を用いて行うことができる。下部ステージ(石英ガラス製サンプルステージ)107に透明基板102を、上部ステージ(石英ガラス製サンプルステージ)109に原盤101をそれぞれ設置する。上部ステージ109を下降させることにより、原盤101および透明基板102をかたどり樹脂103を介して貼付する。
原盤101および透明基板102を貼付後、図21(c)に示すように、原盤101を貼付した基板102を、矢印の方向に加圧しながら一定時間保持する。この後、紫外線ランプ106を用いてかたどり樹脂103を紫外線で照射する。これにより、かたどり樹脂103が固化され、樹脂層103’となる。なお、基板102および原盤101が紫外線透過性を有している場合、紫外線は、基板102の表面および裏面の両側から照射されることが好ましい。紫外線を基板の両側から照射すると、硬化時間を短くできるだけでなく、基板102にTFTや金属配線などが形成されていても、紫外線の影ができにくいという利点がある。
続いて、図21(d)に示すように、上部ステージ109を上昇させることにより、基板102から原盤101を引き離す。これにより、凹凸形状を有する樹脂層103’を備えた配向制御体105が得られる。
本実施形態の配向制御体の形成方法は、上記方法に限定されない。例えば、ローラー状の原盤を作製し、ローラー状の原盤の側面形状を樹脂層に転写させることもできる。転写には、例えば図23に示す装置を用いる。具体的な転写方法の一例を以下に説明する。
まず、図23に示す装置のステージ108に基板102を設置する。基板102の表面にはかたどり樹脂103を塗布する。かたどり樹脂103は、ここでは紫外線硬化性の樹脂である。次に、基板102の上に、ローラー状の原盤110を矢印111の方向に回転させながら押し付けつつ、ステージ108を矢印112の方向に移動させる。これにより、かたどり樹脂103のうち原盤110が押し付けられた部分に、紫外線照射用の間隙114を介して紫外線ランプ113からの紫外線を照射させることができる。このように、かたどり樹脂103を紫外線でライン状に照射することにより、かたどり樹脂103が連続的に固化し、凹凸形状を有する樹脂層103’が形成される。
図21を参照しながら説明した形成方法によると、配向制御体105の基板102と略同じサイズの平板状の原盤101を作製する必要がある。そのため、一つの大型基板に複数のパネルを同時に作製する(多面取り)場合のように大面積の基板102を用いる場合には、原盤101の作製が困難となる。基板102よりも小さいサイズの原盤101を用いて複数回の転写を行うことも考えられるが、位置合わせが難しい。これに対し、上記のようにローラー状の原盤110を用いる方法によると、多面取りの場合でも、1つのパネルに対応する原盤110を作製すれば、基板102に対して連続して型押しできる。従って、原盤110の面積を小さくできる点で有利である。
また、ローラー状の原盤110を用いて、例えば熱可塑性樹脂(かたどり樹脂)103に転写を行ってもよい。具体的には、基板102と熱可塑性樹脂103とを加熱しておき、熱可塑性樹脂103に原盤110を押し付ける。その後、熱可塑性樹脂103を冷却して固化させる。熱可塑性樹脂103への転写は、加熱および冷却機構を付加すれば、図23に示す装置を用いることができる。
かたどり樹脂103として粘度の高い樹脂を用いると、凹版印刷と同様の方法で、ローラー状の原盤110の側面形状を転写できる。転写には、例えば図24に示すような装置を用いる。具体的な転写方法の一例を以下に説明する。
まず、ステージ123に基板102を設置する。次いで、容器120にかたどり樹脂103を入れる。かたどり樹脂103は、容器120の底面に設けられた隙間から連続的に吐出され、矢印124の方向に回転する塗布ローラー121の表面に塗布される。塗布ローラー121に塗布されたかたどり樹脂103は、矢印125の方向に回転する原盤110の表面に均一に塗布される。この後、かたどり樹脂103が塗布された原盤110は、ステージ123に設置された基板102に押し付けられる。ステージ123は原盤110の回転に同期して矢印126の方向に移動する。これにより、原盤110に塗布されたかたどり樹脂103は基板102に転写され、基板102にかたどり樹脂103からなる所望の微細形状が形成される。基板102に転写されたかたどり樹脂103は、紫外線照射または加熱によって固化され、樹脂層103’となる。
上述したいずれの方法でも、原盤は直接ガラス基板などの基板102に押し付けられることに加えて、複数回使用される。そのため、原盤に傷がつきやすい。傷がついた原盤を用いて更に転写を行うと、その傷が転写されるおそれがある。そこで、原盤の表面形状を、まずフィルムに転写し、続いてそのフィルムを原盤として用いてかたどり樹脂に転写することもできる。転写には、例えば図25に示す装置を用いる。具体的な転写方法の一例を以下に説明する。
まず、基板102を、ステージ128の裏面に設置する。次に、熱で変形する材料から形成されているフィルム(厚さ:0.5μm以上)127を、原盤110および加圧ローラー129の間に供給して、フィルム127に微細な凹凸を形成する。フィルム127は、例えばPETである。次いで、容器120に入ったかたどり樹脂103を、凹凸が形成されたフィルム127の上に薄く塗布する。塗布されたかたどり樹脂103は、剥離ローラー130によって、ステージ128の裏面に設置された基板102に転写される。基板102に転写されたかたどり樹脂103は、紫外線照射または加熱によって固化され、樹脂層103’となる。
このように、フィルム127を介して原盤110の形状を転写させると、複数回の転写による原盤110へのダメージを防止できる。なお、かたどり樹脂103は、図24を参照しながら説明したように、塗布ローラーを用いてフィルム127に塗布してもよい。また、必要に応じて、フィルム127に塗布されたかたどり樹脂103を、紫外線照射や加熱によってある程度固化させてから、基板102に転写してもよい。
(実施形態5)
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態5の液晶表示装置を説明する。本実施形態の液晶表示装置は、複数のサブ領域に分割された配向制御体を有するMVAモードの表示装置である。
実施形態3で説明したように、配向制御体は、表示装置における画素に対応する複数の単位領域を有している。MVAモードを採用する場合、各単位領域は、複数のサブ領域に分割される。これらのサブ領域は、サブ画素にそれぞれ方向の異なるプレチルトを発生させる。
本実施形態における配向制御体の各単位領域は、以下に説明するような好適なパターンで複数のサブ領域に分割されている。ここで説明する配向制御体の分割パターンは、実施形態4における原盤、あるいは実施形態1〜3の配向制御体にも適用できる。
第1に、VANモードでは図2(b)を参照して説明したように、電圧印加時に液晶分子が倒れ、その複屈折により明状態が実現される。液晶セルを挟む一対の偏光板10は吸収軸が90°をなすように配置されているので、複屈折を効率よく利用するためには、液晶分子の倒れる方向(プレチルト方向)とそれぞれの偏光板10の吸収軸とは、基板法線方向から見て45°の角度をなすことが好ましい。
第2に、1つの単位領域におけるサブ領域の数(分割数)は2または4であり、それらのサブ領域の面積は、互いに等しいことが好ましい。なお、サブ領域の面積は画素単位で互いに等しければ良く、異なる画素におけるサブ領域の面積は互いに異なっていてもよい。
上記第1および第2の条件を満足するような単位領域の分割パターンは、例えば図19(a)〜(c)に示すように、単位領域を4つのサブ領域(I)〜(IV)に分割するパターンである。
上記分割パターンは、表示装置において、液晶層を挟んで対向する1対の基板のうちいずれか一方または両方に適用される。上記分割パターンの適用例を図26(a)〜(c)を参照しながら説明する。
図26(a)〜(c)は、表示装置における1つの画素と対応する液晶層142および一対の基板141、143を例示する図である。垂直配向型の液晶層142は、第1基板143および第2基板141の間に設けられている。一般的には、第1基板143はカラーフィルター基板であり、第2基板141はTFT基板であるが、いずれの基板にも同様の方法で凹凸を形成できるため、第2基板141がカラーフィルター基板、第1基板143がTFT基板であってもよい。第1基板143および第2基板141の液晶層と接する表面には、同じまたは異なる分割パターンを有する凹凸が形成される。または、いずれか一方の基板の表面にのみ、分割パターンを有する凹凸が形成されている。
図26(a)に示す例では、第1基板143および第2基板141の表面に凹凸が形成されている。これらの基板143、141の単位領域は、それぞれ、図19(b)に示すパターンで分割されたサブ領域(I)〜(IV)、(I’)〜(IV’)を有している。従って、1つの画素は、対向するサブ領域(I)および(I’)、(II)および(II’)、(III)および(III’)、(IV)および(IV’)でそれぞれ規定される4つのサブ画素に分割される。このように、基板141、143に同じ分割パターンを適用すると、最も安定した配向が得られる。また、プレチルト角と凹凸形状との関係が明確であるため、凹凸形状の設計も容易である。
図26(b)に示す例では、第2基板141の表面にのみ、図19(b)に示すパターンで分割されたサブ領域(I)〜(IV)を有する凹凸を形成している。第1基板143の単位領域(V’)は平坦な表面を有しており、プレチルトを与えるような構造を有していない。従って、1つの画素は、サブ領域(I)〜(IV)のそれぞれと、単位領域(V’)とで規定される4つのサブ画素に分割される。この例では、一方の基板141のみに分割パターンを有する凹凸を形成し、他方の基板143に凹凸を形成しないので、作製プロセスを短縮できる。ただし、第2基板141の凹凸形状が、図26(a)の第1および第2基板141、143における凹凸形状と同じであれば、液晶層142の中央分子のプレチルト角は、図26(a)の液晶層142の中央分子のプレチルト角の半分である。
なお、図26(a)、(b)に示す例では、液晶層と接する基板表面に、図19(b)に示すパターンで分割された凹凸を形成しているが、代わりに図19(a)、(c)または他のパターンで分割された凹凸を形成してもよい。
図26(c)に示す例では、第1基板143および第2基板141の表面に凹凸が形成され、これらの基板143、141の単位領域はそれぞれ2つのサブ領域(I)、(II)および(III’)、(IV’)に分割されている。ただし、第1基板143のサブ領域と第2基板141のサブ領域とは、液晶層142を挟んでサブ領域のピッチの1/2だけずれた位置に設けられている。従って、例えばサブ領域(II)は、2つのサブ領域(III’)および(IV’)と対向している。このような場合、1つの画素は、サブ領域(I)および(III’)、(II)および(III’)、(II)および(IV’)、(I)および(IV’)でそれぞれ規定される4つのサブ画素に分割される。この例では、各サブ領域(I)、(II)、(III’)、(IV’)の面積が図26(a)におけるサブ領域の面積の2倍である。そのため、領域分割の解像度が比較的低い場合でも、この例における第1基板143および第2基板141を良好に作製できる。
図26に示すいずれの例でも、配向分割を実現できるが、製造プロセスの観点からは、図26(b)に示すように、一方の基板のみに凹凸形状を設けることが好ましい。前述してきたように、微小な凹凸を形成するために、表示装置の製造プロセスが複雑になる場合が多いからである。
また、特に一辺が1m以上の大型基板を用いて液晶パネルを作製する場合、液晶配向を制御する凹凸を形成するために、実施形態4で説明したように、原盤を作製して基板表面に転写するレプリカ法が好適に用いられる。しかし、原盤と基板との位置合わせは非常に難しく、高い精度の位置合わせの必要がない分割パターンが望まれる。
以下、原盤の表面形状を基板表面に転写する際に、原盤と基板とを高精度に位置合わせする必要のない分割パターンについて説明する。
MVAモードにおける単位領域の分割パターンは、上下左右いずれの方向に視角を倒しても輝度の変化が同じになるように、1つの画素を正確に同じ面積のサブ領域に分割する必要がある。しかし、サブ領域の面積さえ同じであれば、各サブ領域の位置や並ぶ順番は表示に影響しない。そこで、一つの単位領域に複数のサブ領域が含まれるように、サブ領域や単位領域のサイズを設定し、原盤に連続するサブ領域の組(サブ領域グループ)を形成することが有利である。このとき、各サブ領域の合計面積を略等しくすることが好ましい。これにより、高精度に位置合せを行うことなく、原盤の形状を基板に転写しても、基板におけるそれぞれの単位領域(画素)に含まれる各サブ領域の合計面積を略等しくすることが可能になる。
以下、サブ領域グループが配列された原盤を用いて製造された液晶表示装置の構成例を説明する。液晶表示装置は、行および列を有するマトリクス状に配置された複数の画素を有している。また、典型的には、行方向にゲートラインおよびCSライン、列方向にソースラインが設けられている。以下の例では、液晶表示装置のTFT基板が、上記原盤を用いて形成された配向制御構造(凹凸)を有している。
図27(a)は、一般的なアクティブマトリクス型液晶表示装置の画素3つ分を拡大した平面図である。また、図27(b)は、図27(a)の液晶表示装置における画素1つ分の斜視図である。ここでは、簡単のため、各画素の形状を、列方向に長い矩形とする。
図27(b)に示すように、各画素は、TFT基板910、カラーフィルター基板911、およびそれらの基板910、911の間に設けられた液晶層908を有している。カラーフィルター基板911の液晶層側の表面には透明電極905が形成されている。一方、TFT基板910の液晶層側には、画素毎に画素電極906とスイッチング素子(TFT)903とが設けられている。スイッチング素子903は、ゲートライン901およびソースライン902と接続されている。また、各画素の中央を横切るようにCSライン904が設けられている。図27(a)に示すように、このような画素における光が透過する領域は、参照符号「201」で示す開口部となる。従って、開口部201に位置する凹凸が液晶配向を制御する機能を最も有効に発揮する。この例では、開口部は、行方向に平行な短辺と列方向に平行な長辺とを有する矩形である。
まず、開口部201に、縦もしくは横方向のストライプ状に領域分割された凹凸を形成する例について説明する。この場合、原盤とTFT基板とを高精度に位置合わせすることなく転写工程を実行しても、1つの開口部201に複数のサブ領域グループが配置されるので、確実に配向分割を実現できる。ただし、以下のような欠点もある。
分割されたストライプ状のサブ領域の長手方向は、開口部201の短辺または長辺と平行になる。従って、開口部201の周縁と重なるサブ領域の有効面積(配向制御に寄与する面積)がCSライン904やゲートライン901によって小さくなる。その結果、各サブ領域の合計有効面積比がアンバランスになり易い。また、上記サブ領域における有効面積の減少量は、隣接する開口部との間隔Wsによって変わる。そのため、面積比のアンバランスを低減するためには、隣接するサブ領域グループの境界と、開口部におけるサブ領域の長手方向と平行な辺とを、サブ領域の長手方向と直交する方向に厳密に位置合わせする必要がある。ストライプ状のサブ領域の幅を短くするとアンバランスの程度は小さくなるが、例えば1μm程度のピッチで凹凸を形成しようとすると、サブ領域の幅は10μm程度以上は必要であり、無制限に幅を短くすることはできない。
次に、図28に示す構成例について説明する。この例では、開口部201を斜めに横切るようにストライプ状に領域分割された配向制御構造を形成している。これにより、各サブ領域の合計有効面積比を大幅に改善できる。
より好ましくは、隣接する開口部の隙間によって低減されるサブ領域(I)〜(IV)の有効面積を略等しくする。これにより、開口部201における各サブ領域の合計有効面積を略等しくできる。そのような分割パターンの具体例を説明する。
図28に示すように、開口部201の高さHpが開口部の幅Wpの整数倍となるように画素を形成する(式(1))。
Hp=nWp (nは0を除く整数) (1)
サブ領域の長手方向と、開口部201の短辺との間の角度をαとし、原盤における1つのサブ領域グループのピッチをGPとする。角度αおよびピッチGPが下式(2)および(3)を満たすと、各サブ領域間の合計有効面積のアンバランスを改善できる。
tanα=Wp/(Hp/n) (2)
GP=Wp/m(mは0を除く整数) (3)
上式(2)より、角度αは45°である。式(3)のmを例えば1とする。このとき、下式(1’)および(3’)を満たすように、画素のサイズ(Hp、Wp)およびサブ画素グループのピッチGPを設定し、角度αが45°となるように転写を行えば、原盤パターンと、凹凸が転写される基板との位置ずれに無関係に各サブ領域の合計面積を常に等しくすることができる。また、画素の中央部分を横切るCSライン904の位置や幅Wcs、また隣接する画素の開口部との隙間Wsの大きさに無関係に、サブ領域の有効面積比を等しくすることができる。
Hp=nWp (nは0を除く整数) (1’)
GP=Wp (3’)
以下、本実施形態による表示装置の実施例を説明する。
<実施例1>
実施例1の表示装置は、図26(a)に示すような領域分割された配向制御構造を有する第1および第2基板と、それらの基板に挟持された液晶層とを備えている。第1および第2基板表面の配向制御構造は、図21(a)〜(d)を参照しながら説明したレプリカ法により形成される。
以下、実施例1の表示装置の作製方法をより詳細に説明する。
まず、複数の単位構造からなる凹凸を有する原盤を作製する。原盤の凹凸は、ガラス基板に塗布したレジストに対して、フォトマスクを用いて、サブ領域毎に4回の露光を行った後、現像することにより形成される。露光は、サブ領域毎に、露光方向をそれぞれ90°ずつ変えて行う。各サブ領域における露光は、次に説明するように2段階で行ってもよい。例えば、2光束干渉露光装置を用いて露光し(第1の露光)、続いて、通常のマスク露光(第2の露光)を行う。第2の露光は、単位構造の配列方向と直交する方向に複数の溝を形成する目的で行われる。溝のピッチは比較的荒いのでマスク露光で作成できる。細かいピッチで溝を形成しようとする場合は、第2の露光として、2光束干渉露光装置を用いて、第1の露光の方向と異なる方向に干渉露光を行ってもよい。上記第1および第2の露光を行う代わりに、プリズムを備えていない干渉露光機を用いて、ガラス基板上のレジストを異なる2本のレーザーで同時に照射してもよい。この場合、それぞれのレーザーによる干渉縞を独立に制御できる。
得られた凹凸形状における単位構造は実施形態1と同様の形状を有している。単位構造のピッチPは0.5μmとし、隣接する単位構造のギャップの幅Wは0、各単位構造の高さHは0.5μm、側壁の角度A、Bは105°および75°、上面の幅Fは0とする。また、溝は、単位構造の配列方向に直交する方向に5μmのピッチPGで形成されており、溝の幅Gは1μmである。なお、上記パラメータP、W、H、A、B、F、PG、Gの値は大凡の値である。
次に、得られた原盤の表面形状を基板表面に転写する。転写は、図22に示す装置を用いて行う。具体的には、紫外線硬化樹脂をスピンコートにより1μm塗布した基板に、原盤を35Kg/cm2の圧力で押し付け、加圧したまま60Sec放置する。放置後、紫外線硬化樹脂を紫外線で照射(0.7J/cm2)すると、紫外線硬化樹脂が固化し、表面に凹凸を有する樹脂層が形成される。この後、原盤と基板とを引き剥がす。
続いて、樹脂層の表面にスピンコートにより垂直配向膜を形成する。これにより、第1基板が得られる。同様の方法で、第2基板も作製する。
得られた第1および第2基板を、図26(a)に示すように、それぞれ垂直配向膜が内側になるように対向させ、3μmの隙間を空けて貼り合わせる。これらの基板の間にΔεが負の液晶(MLC6609)を注入する。これにより、実施例1の表示装置が完成する。
実施例1の表示装置の液晶配向を調べると、液晶層に電圧を印加しない状態では、中央分子は基板法線方向から傾斜(プレチルト)して垂直配向することが確認できる。また、液晶層に電圧を印加すると、図1に示すように、液晶配向は、液晶分子の倒れる方向がそれぞれ異なる4つの領域に分割されることが確認できる。
なお、実施例1では、2光束干渉露光などを利用して原盤を作製したが、電子線描画装置やステッパーなどを用いて実施形態1、2の単位構造と同様の単位構造が形成された原盤を作製しても、実施例1と同様の効果が得られる。
<実施例2>
実施例2の表示装置は、表面に配向制御構造が形成された第1および第2基板と、それらの基板に挟持された液晶層とを備えている。配向制御構造は、図28に示すように、各開口部に対して傾斜した方向(α=45°)に延びる複数のサブ領域グループに分割されている。各サブ領域グループは、4つのサブ領域(I)、(II)、(III)、(IV)で構成されている。この表示装置における画素のサイズ(幅Wp、高さHp)やサブ領域グループのピッチGPは、上式(1’)および(3’)を満足するように設定されている。すなわち、各画素の高さHpは幅Wpの3倍(n=3)であり、かつサブ領域グループのピッチGPは画素の幅Wpと等しい(m=1)。
第1および第2基板表面の凹凸は、図21(a)〜(d)を参照しながら説明したレプリカ法により形成される。
以下、実施例2の表示装置の作製方法をより詳細に説明する。
まず、複数の単位構造からなる凹凸形状を有する原盤を作製する。原盤の凹凸形状は、2光束干渉露光およびマスク露光を利用して、実施例1と同様の方法で形成される。本実施例では、図28に示すように、サブ領域(I)、(II)、(III)、(IV)からなるサブ領域グループ(ピッチGP:100μ)を繰り返し配列する。サブ領域内部の凹凸によるプレチルト方向は一定とし、隣接するサブ領域の凹凸によるプレチルト方向とは基板表面において90°異なるように、各サブ領域における単位構造の向きを設定する。各サブ領域における単位構造は、実施形態1と同様の形状を有している。単位構造のピッチPは0.5μmとし、隣接する単位構造のギャップの幅Wは0、各単位構造の高さHは0.5μm、側壁の角度A、Bは105°および75°、上面の幅Fは0とする。また、溝は、単位構造の配列方向に直交する方向に5μmのピッチPGで形成されており、溝の幅Gは1μmである。
一方、第2基板として図23に示すTFT基板を用意する。TFT基板における画素の幅WPは100μm、画素の高さHPは300μm、CSラインの幅Wcsは20μm、隣接する開口部の隙間の幅Wsは30μmとする。
次に、上記で作製した原盤の表面形状をTFT基板表面に転写する。転写は、図22に示す装置を用いて行う。具体的には、紫外線硬化樹脂をスピンコートにより1μm塗布した基板に、原盤を35Kg/cm2の圧力で押し付け、加圧したまま60Sec放置する。放置後、紫外線硬化樹脂を紫外線で照射(0.7J/cm2)すると、紫外線樹脂が固化し、表面に凹凸を有する樹脂層が形成される。この後、原盤と基板とを引き剥がす。
続いて、樹脂層の表面にスピンコートにより垂直配向膜を形成する。これにより、配向制御構造が形成されたTFT基板が得られる。同様の方法で、対向基板(第1基板)も作製する。
得られた第1および第2基板を、それぞれ垂直配向膜が内側になるように対向させ、3μmの隙間を空けて貼り合わせる。これらの基板の間にΔεが負の液晶(MLC6609)を注入する。これにより、実施例2の表示装置が完成する。
実施例2の表示装置の液晶配向を調べると、液晶層に電圧を印加しない状態では、液晶は基板法線方向から傾斜(プレチルト)して垂直配向することが確認できる。また、液晶層に電圧を印加すると、液晶配向は、液晶分子の倒れる方向がそれぞれ異なる4つの領域に分割されることが確認できる。このとき、1つの画素における各サブ領域(I)〜(IV)の合計面積は互いに略等しいので、上下左右いずれの方向に視角を倒しても輝度の変化が同様になり、優れた視野角特性が得られる。
なお、実施例2では、2光束干渉露光などを利用して原盤を作製したが、電子線描画装置やステッパーなどを用いて実施形態1、2の単位構造と同様の単位構造が形成された原盤を作製しても、実施例2と同様の効果が得られる。
(実施形態6)
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態6の液晶表示装置を説明する。本実施形態の液晶表示装置は、複数のサブ領域に分割された配向制御体を有するMVAモードの表示装置である。ただし、サブ領域をさらに複数の微細領域に分割する点で前述の他の実施形態の液晶表示装置と異なる。
実施形態5では、単位領域(画素に対応)をサブ領域に分割することにより、プレチルト方向の異なる配向分割が行われる。これに対し、本実施形態では、各サブ領域を、同一の方位(プレチルト方向)に異なる角度(プレチルト角)で傾斜するプレチルトを生じさせる複数の微細領域に分割する。従って、プレチルト方向のみでなく、プレチルト角も異なる複数の領域に配向分割を行うことができる。
サブ領域を上記のようにさらに分割する理由を以下に説明する。
図29は、液晶層に電圧Vを印加したときの光の透過率Trを示すグラフである。図29から明らかなように、プレチルト角を大きくすると、透過率Trは低電圧側に移動する。これは、同じ方位(プレチルト方向)に傾いていても、電圧印加による極角方向への傾きやすさが初期のプレチルト角によって異なるためである。
従って、MVAモードのサブ画素を更にプレチルト角の異なる複数の微細領域に分割することによって、電圧印加時に、液晶層は、液晶分子の傾く方位の異なる領域を有するだけでなく、同じ方位でもチルト角(起き上がり方向の角度)の異なる領域にさらに有することになる。これらの領域は平均化されるので、観察方向を変えたときの、明るさ、コントラストの変化を従来よりも緩やかにすることができる。このように高精度な配向分割を行うことにより、より高品位の表示を実現できる。
なお、従来より、1つの画素内に異なる配向方位を生じさせるための配向分割は種々検討されてきたが、本実施形態のように、液晶層の厚さ方向に中央に位置する液晶分子に異なるプレチルト角を生じさせるための配向分割は検討されていない。これは、より高い精度で配向処理を行う必要があり、そのような配向制御構造を形成することは困難であるためと考えられる。
本実施形態における配向制御体では、サブ領域は複数の微細領域に分割されており、微細領域毎に異なる形状の単位構造が配列されている。
図30(a)および(b)は、本実施形態におけるサブ領域の構成を例示する斜視図である。
図30(a)に示すサブ領域210は、2つの微細領域220a、220bに分割されている。各微細領域220a、220bには、三角形の断面を有する単位構造212a、212bが略等しいピッチPで配列されている。微細領域220a、220bによるプレチルト方向は同じである。微細領域220aの単位構造212aにおける側壁の角度213aは、微細領域220bの単位構造212bにおける側壁の角度213bよりも小さい。そのため、微細領域220aによるプレチルト角と微細領域220bによるプレチルト角は異なる。
図30(b)に示すサブ領域240は、2つの微細領域230a、230bに分割されている。各微細領域230a、230bには、三角柱状の単位構造231a、231bが略等しいピッチPで配列されている。微細領域230aの単位構造231aにおける上面の二等辺三角形の高さは、微細領域230bの単位構造231bにおける上面の二等辺三角形の高さと異なっている。そのため、これらの微細領域230a、230bによるプレチルト方向は同じであるが、微細領域230aによるプレチルト角と微細領域230bによるプレチルト角は異なる。
本実施形態における配向制御体は、上述したようなサブ領域から構成される。図31(a)は、配向制御体における1つの単位領域の構成例を説明するための図である。
図31(a)に示す単位領域250は、4つのサブ領域(I)、(II)、(III)、(IV)に分割されている。各サブ領域は、例えば図30(a)、(b)に例示する構成を有している。すなわち、サブ領域(I)はそれぞれ2つ微細領域IaおよびIbに分割されている。他のサブ領域(II)〜(IV)も同様に、それぞれ、IIaおよびIIb、IIIaおよびIIIb、IVaおよびIVbに分割されている。
図31(a)に示す例では、1つのサブ領域に含まれる2つの微細領域の面積比は1:1であるが、微細領域の面積比は、視角特性から得られる最適の比率にすることが好ましく、1つのサブ領域に含まれる微細領域の面積を互いに等しくする必要はない。また、単位領域をサブ領域に分割するパターンや、サブ領域を微細領域に分割するパターンも、図31(a)に示す例に限定されず、適宜選択できる。
本実施形態における配向制御体は、他の実施形態と同様の方法で形成できる。好ましくは、レプリカ法により形成される。
以下、本実施形態による液晶表示素子の実施例を説明する。
<実施例3>
実施例3の液晶表示素子は、第1および第2基板と、それらの基板に挟持された液晶層とを有している。第2基板(TFT基板)の表面には、液晶配向を規制するための凹凸形状が設けられている。第1基板(カラーフィルター基板)の表面は平坦である。第2基板の表面の凹凸形状は、図31(a)に示すように、単位領域毎に4つのサブ領域(I)〜(IV)に分割され、さらに各サブ領域は2つの微細領域IaおよびIb、IIaおよびIIb、IIIaおよびIIIb、IVaおよびIVbに分割されている。サブ領域(I)〜(IV)の面積は互いに等しい。また、各サブ領域における微細領域の面積比Ia:Ib、IIa:IIb、IIIa:IIIb、IVa:IVbはいずれも1:4である。
各サブ領域には、図30(a)に示すように、三角形の断面を有する単位構造が配列されている。各単位構造のピッチPは0.5μmとし、隣接する単位構造のギャップの幅Wは0、上面の幅Fは0とする。また、微細領域Ia、IIa、IIIa、IIIaでは、各単位構造の高さHおよび側壁の角度A、Bは、基板と液晶層との界面における液晶分子のチルト角(起き上がり角)が89°になるように設定されている。一方、微細領域Ib、IIb、IIIb、IIIbでは、各単位構造の高さHおよび側壁の角度A、Bは、基板と液晶層との界面における液晶分子のチルト角が85°になるように設定されている。また、単位構造の配列方向と直交する方向に、ピッチGPが5μmで溝が設けられている。溝の幅は1μmである。
実施例3の液晶表示装置は以下のようにして作製され得る。
まず、表面に所定の凹凸構造が形成されたローラー状の原盤を作製し、この表面形状を基板表面に塗布された紫外線硬化樹脂に転写する。これにより、TFT基板上に、原盤の凹凸構造と対応する構造を有する樹脂層が形成される。転写は、図25に示す装置を用いて行う。この後、樹脂層の表面にスピンコートにより垂直配向膜を形成する。
樹脂層が形成されたTFT基板と、表面に垂直配向膜が形成されたカラーフィルター基板とを、それぞれ垂直配向膜が内側になるように対向させ、3μmの隙間を空けて貼り合わせる。これらの基板の間にΔεが負の液晶(MLC6609)を注入する。これにより、実施例3の表示装置が完成する。
各微細領域における光の透過率を調べたので、その結果を説明する。なお、偏光板の透過軸は垂直、水平方向とする。
微細領域Ia〜IVa、Ib〜IVbにおける正面の透過率を図31(b)に、方位角45°(右上方向に45°)、視角60°(基板法線方向から60°)の角度から観察したときの透過率を図31(c)に示す。この結果から、本実施例のように高精度に配向分割すると、各微細領域による液晶配向が平均化されるので、観察方向による輝度の変化が抑制され、より優れた視野角特性が得られることがわかる。
(実施形態7)
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態7の液晶表示装置を説明する。
本実施形態の液晶表示装置は、対向する一対の基板と、その間に設けられた液晶層とを備えており、一対の基板のうち何れか一方あるいは両方は図32(a)に示す配向制御体501を用いて形成されている。
配向制御体501は、基板502および、基板502の表面に配列された複数の単位構造503を有しており、液晶層510に含まれる液晶分子の配向を制御する配向制御手段として機能できる。なお、液晶層510は、ネガ型ネマティック液晶(Δε<0)を用いた垂直配向型液晶層である。
配向制御体501の表面に形成された単位構造503は、それぞれ、壁部材505および傾斜部材507を有している。壁部材505は、2つの側面505a、505bと、それらの側面によって形成された稜線505rとを有している。傾斜部材507は、壁部材505の1つの側面505aに接触するように形成されている。また、傾斜部材507は、基板502の表面に対して傾斜した傾斜面507aを有している。壁部材505および傾斜部材507は、典型的にはそれぞれ異なる材料から形成されている。なお、図32(a)に示す壁部材505は略三角形の断面形状を有しているが、壁部材505の断面形状は丸みを帯びていてもよいし、また四角形などの他の形状であってもよい。
図32(b)に、配向制御体501の平面図を例示する。配向制御体501は、稜線505rの方向(以下、「Y方向」とする)に、所定の溝504を空けて配列された複数の比較的短い短冊状の単位構造503を有している。単位構造503は、Y方向と直交する方向(X方向)に平行に配列されていてもよい。図32(b)では、X方向とY方向とは直交しているが、X方向はY方向と異なる方向であればよい。なお、本実施形態では、単位構造503は周期的に配列されている必要はない。
以下、液晶層510に含まれる液晶分子が、どのようにして単位構造503の傾斜面507aによって配向制御されるかを、例を挙げて説明する。
液晶層10に電圧を印加しない状態(以下、「OFF状態」という)において、傾斜面507aの表面における液晶分子の長軸は、配向制御体501の傾斜面507aに対して略垂直方向に配向している。このため、液晶層510の液晶分子は、基板502の表面の法線方向から傾いている(プレチルト方向)。この液晶層510に対して、基板502と垂直方向に電圧を印加すると、それぞれの液晶分子はプレチルト方向に倒れようとする。印加される電圧が十分に高いと、液晶分子は基板502の表面と略平行になる。このとき、液晶分子の長軸は溝504の方向に沿う。
本実施形態における配向制御体501が十分な液晶配向制御性を有するためには、単位構造503の平均ピッチは0.1μm以上であることが好ましい。一方、液晶の配向方向を配向制御体501の表面全体で制御するためには、単位構造503の平均ピッチは10μm以下であることが好ましい。
本実施形態において、「単位構造の(平均)ピッチ」とは、隣接する壁部材における、傾斜部材と接する側の側面の頂点間の基板表面内における距離をいう。例えば、図33(a)に示す単位構造のピッチは、隣接する壁部材505における傾斜部材507と接する側の側面505aの最も高い点505p間の基板表面内における距離PXである。同様に、壁部材が略長方形の断面を有する場合、単位構造のピッチは、図33(b)に示すように、隣接する壁部材506における側面506aの最も高い点506p間の基板表面内における距離PXである。
稜線505rの方向における単位構造503のピッチPYは、例えば0.1μm以上10μm以下である。また、それぞれの溝の幅は、例えば10nm以上で、単位構造503のX方向におけるピッチPX以下である。
本実施形態では、単位構造503の高さ(ここでは壁部材505の高さ)は10nm以上10μm以下であることが好ましい。高さが10nm以上であれば、配向制御体501の表面形状はより確実に液晶分子の配向を規制できる。一方、高さが10μm以下であれば、単位構造503によって液晶層510の実質的な厚さが変化することによる弊害を抑制できる。
単位構造503の傾斜面507aと基板502の表面との間の角度は、例えば0°より大きく45°以下の範囲で適宜選択できる。例えば、傾斜面507aと基板502の表面との間の角度を10°以上45°以下とすると、配向制御体501における傾斜面507aの近傍では、液晶分子は基板502の法線方向から10°以上45°以下傾いて配向させることができる。
ここで、図33(c)および(d)を用いて、「単位構造の傾斜面と基板表面との間の角度(以下、単に「傾斜面の角度」ということもある)」について説明する。本実施形態の傾斜部材507の傾斜面507aは、例えば図33(c)および(d)に示すように、その作製方法などに起因して平面にならない場合がある。このような場合、図33(c)および(d)に示すように、単位構造の稜線505rと直交する断面図において、壁部材505における傾斜部材507と接する側の側面505aの最も高い点505pと、傾斜部材507の傾斜面507aおよび基板表面の接する点507cとを結ぶ直線507Aを引く。この直線507Aと基板表面とのなす角度a1を「傾斜面の角度」とする。
単位構造503の壁部材505の側面のうち、傾斜部材507と接触していない方の側面505bと、基板502の表面との間の角度は、上述した傾斜面507aと基板502の表面との間の角度a1よりも大きいことが好ましい。壁部材505の側面505bと基板502の表面との間の角度は、典型的には45°より大きく180°未満である。なお、「壁部材505の側面505bと基板502の表面との間の角度」は、図33(e)に示すように、壁部材505の側面505bの最も高い点505p’と、側面505bおよび基板表面が接する点505cとを結ぶ直線505Bを引き、その直線505Bと基板表面とのなす角度a2をいう。
配向制御体501の表面と液晶層との界面にある液晶分子は、配向制御体501の表面の法線方向に沿って配向している。すなわち、傾斜面上の液晶分子は、傾斜面507aの法線方向に沿って配向するプレチルト(第1プレチルト)、壁部材の側面上の液晶分子は壁部材の側面505bの法線方向に沿って配向するプレチルト(第2プレチルト)をそれぞれ有する。本実施形態では、各単位構造503は非対称な断面を有し、傾斜面7aの付与するプレチルトが壁部材の側面5bの付与するプレチルトよりも支配的である。そのため、液晶層の厚さ方向の中間付近の液晶分子は、傾斜面507aによる第1プレチルトの影響をより大きく受けて、例えば、第1プレチルトと同じプレチルト方向を有し、かつ第1プレチルトよりも小さいプレチルト角を有する。なお、液晶層の厚さ方向の中間付近にある液晶分子のプレチルトは、配向制御体501の表面形状だけではなく、液晶層510の上面と接する対向基板の表面の形状によっても影響される。
図32(a)に示す配向制御体501における単位構造503の露出表面は液晶層510と接触しているが、これらは接触していなくてもよい。例えば、配向制御体501と液晶層510との間に、垂直配向膜、液晶層510に電圧を印加するための電極として機能できる導電膜、または導電膜と配向膜とをこの順で積層した積層膜が設けられていてもよい。配向制御体501と液晶層510との間に設けられる膜は、単位構造503の形状を反映した表面形状を有するように十分薄い(例えば厚さが1μm以下)ことが望ましい。上記膜が十分に薄いと、配向制御体501の表面形状によって液晶層510の配向を制御できるからである。
以下、図面を参照しながら、配向制御体501の作製方法の一例を説明する。
図34(a)〜(e)は、熱変形(熱だれ)を生じる材料を用いて配向制御体501を作製する方法を示す断面工程図である。
まず、図34(a)に示すように、基板520に壁部材形成層(厚さ:例えば300nm)522を形成する。基板520および壁部材形成層522の材料は特に限定されないが、本実施形態では、基板520として石英基板を用い、壁部材形成層522として窒化シリコン膜を用いる。
次いで、図34(b)に示すように、壁部材形成層522の上に、例えばネガレジストを用いて複数の微細な島状部を有するレジストパターン524を形成する。レジストパターン524の微細な島状部のX方向におけるピッチは、形成しようとする壁部材のピッチ、すなわち単位構造のピッチPXに応じて選択される。本実施形態では、レジストパターン524のX方向における平均ピッチを1.6μmとする。また、X方向と直交するY方向に、平均で0.8μmの間隔を空けて複数の微細な島状部を配置する。Y方向におけるレジストパターン524の平均ピッチは3.2μmとする。
この後、図34(c)に示すように、レジストパターン524をマスクとして壁部材形成用層522をエッチングする。例えば、壁部材形成層(窒化シリコン膜)522に対し、バッファードフッ化水素酸を用いて、60秒間のウェットエッチングを行った後、よく水洗する。このエッチングにより、壁部材形成用層522の厚さと対応する高さを有する壁部材526が形成される。図34(c)では、壁部材526の断面は、基板520と接する底辺を有する略三角形状であるが、壁部材526の断面形状は図34(c)に示す形状に限定されない。壁部材526の断面は、基板520と接する下辺を有する台形状であってもよい。あるいは、壁部材形成層522に対して異方性エッチングを行うことにより、略長方形状の断面を有する壁部材526を形成してもよい。
続いて、アセトンなどを用いてレジストパターン524を除去した後、基板520の上に、複数の傾斜部材形成層528を形成する(図34(d))。傾斜部材形成層528は、例えばポジレジストを用いたレジストパターンの微細な島状部である。レジストパターン528の微細な島状部のそれぞれは、対応する壁部材526の一方の側面526aに接触するように形成される。本実施形態では、図34(b)におけるレジストパターン524を形成する際に用いるフォトマスク(レチクル)のパターンとは0.4μmずれたパターンを有するフォトマスクを使用して、レジストパターン528を形成する。従って、隣接するレジストパターン528の微細な島状部のX方向における平均ピッチは1.6μm、隣接するレジストパターン528の微細な島状部の間隔は平均で0.8μmとなる。
この後、図34(e)に示すように、レジストパターン528を加熱することにより、レジストパターン528を変形させて傾斜部材530を形成する。傾斜部材530の形成は、例えば基板520をホットオーブン内(温度:135度)で10分間加熱することによって行うことができる。オーブン内の温度は、壁部材526や基板520が変形せず、かつレジストパターン528を熱変形(熱だれ)させることができる温度であればよく、壁部材526およびレジストパターン528の材料によって適宜選択される。
これにより、壁部材526と傾斜部材530とから構成された複数の単位構造532を有する配向制御体600が作製できる。得られた配向制御体600における単位構造532の平均ピッチは1.6μm、傾斜部材530の傾斜面530aと基板502との間の角度は12°である。また、本実施形態における単位構造532の断面は、図4(e)に示すように略三角形であり、その三角形の頂角(壁部材の露出側面526bと傾斜部材530の傾斜面530aとの間の角度)は112°である。
上記方法では、熱だれによって傾斜部材形成層(レジストパターン)528を変形させるが、代わりに、露光によって傾斜部材形成層を変形させることもできる。
以下、図35(a)〜(e)を参照しながら、本実施形態における配向制御体の他の作製方法を説明する。この方法では、壁部材の壁を利用した斜め露光を用いて傾斜部材形成層を変形させることにより、傾斜部材を形成している。
まず、図35(a)に示すように、基板540の上に、例えば転写などによって複数の壁部材542を形成する。本実施形態では、樹脂ブラック(カラーモザイクCK−2000;富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製)を用いて壁部材542を形成する。
次いで、図35(b)に示すように、隣接する壁部材542のそれぞれの間に、基板540の表面のうち壁部材542が形成されていない表面を覆うように、傾斜部材形成層544を形成する。図35(b)では、傾斜部材形成層544の厚さは壁部材542の高さと同じであるが、これらは異なっていてもよい。傾斜部材形成層544は、例えばネガレジスト(OMR85;東京応化社製)からなる層である。
この後、図35(c)に示すように、傾斜部材形成層(ネガレジスト層)544を斜めから露光する。露光する方向は、傾斜面を形成しようとする方向に応じて選択できる。これにより、ネガレジスト層544のうち壁部材542の影とならない部分のみが露光される。
このとき、図35(c)に示すように、基板540の表面のうち、この工程によって露光しようとする領域以外の領域をマスクで覆ってもよい。その場合、図35(c)の工程に続いて、基板540の表面のうち図35(c)に示す工程で露光された領域をマスクで覆い、マスクで覆われていない領域のネガレジスト層544を、図35(c)の露光方向とは異なる方向から露光してもよい(図35(d))。このようにして、所望の表面形状に応じて、露光方向を変えて複数回(3回以上でもよい)の斜め露光を行うことができる。なお、光透過性の基板540を用い、図35(c)および(d)に示す斜め露光を、基板540の裏面から行ってもよい。
露光後、ネガレジスト層544の現像を行うと、図35(e)に示すように、ネガレジスト層544のうち露光された部分のみが除去され、露光されなかった部分から、傾斜面546aを有する傾斜部材546が形成される。これにより、壁部材542および傾斜部材546からなる複数の単位構造548が形成された配向制御体601が得られる。なお、図35(c)および(d)に示すように、露光方向を変えて複数回の斜め露光を行った場合には、単位構造548は、それぞれの露光方向に応じて異なる法線方向を有する傾斜面を有する。
図34および図35を参照しながら説明した方法では、傾斜部材形成層を変形させて傾斜部材を形成したが、そのような変形工程を行わずに傾斜部材を形成することもできる。
以下、図36(a)〜(d)を参照しながら、本実施形態における配向制御体のさらに他の作製方法を説明する。この方法では、壁部材をダムとして用いて、インクジェット法によって基板に溶液を付与することにより傾斜部材を形成する。従って、図34や図35に示す上記方法のように、傾斜部材形成層の変形工程を行う必要がない。
まず、図36(a)に示すように、転写などにより基板550の上に、複数の壁部材552を形成する。壁部材552は、例えばポジレジスト(OFPR800、東京応化社製)から形成される。なお、壁部材552の材料は、比較的小さい表面張力を有する材料であればよく、感光性を有する必要はない。
次いで、図36(b)に示すように、壁部材552が形成された基板550に対して斜め露光を行うと、壁部材552の一方の側面552aのみが露光される。これにより、壁部材552の側面552aのみに親水性が付与され、壁部材552の他方の側面552bは撥水性を保つ。
このとき、図36(b)に示すように、基板550の表面のうち、この工程で露光しようとする領域以外の領域をマスクで覆ってもよい。その場合、図36(b)の工程に続いて、基板550の表面のうち図36(b)に示す工程で露光された領域をマスクで覆い、マスクで覆われていない領域の壁部材552を、図36(b)の露光方向とは異なる方向から露光してもよい(図36(c))。このようにして、露光方向を変えて複数回(3回以上でもよい)の斜め露光を行うことによって、各壁部材552の任意の側面に親水性を付与できる。なお、図36(b)および(c)に示す斜め露光は、基板550の裏面から行ってもよい。
この後、図36(d)に示すように、基板550の表面に対して、例えばインクジェット法により傾斜部材形成用の溶液を付与する。このとき、溶液は、壁部材552における撥水性の側面552bにはじかれて、壁部材552の親水性の側面552aおよび基板550の表面と接触するように付与される。次に、付与された溶液を乾燥させることにより、傾斜面554aを有する傾斜部材554が形成される。なお、傾斜部材形成用の溶液は特に限定されないが、例えばポリビニルアルコールなどの親水性(水分散系)のインクを用いることができる。
なお、図36(d)の工程において、傾斜部材形成用の溶液として疎水性(有機溶媒系)のインクを用いてもよい。その場合、壁部材552の側面552aに親油性を付与しておく必要がある。このように、傾斜部材形成用の溶液に対する濡れ性を高めるために、壁部材552の側面552aに親水性や親油性を付与することを、「親液性を付与する」、「親液性を高める」等と表現することにする。
上記方法により、壁部材552および傾斜部材554からなる複数の単位構造556が形成された配向制御体602が得られる。なお、図36(b)および(c)に示すように、露光方向を変えて複数回の斜め露光を行った場合には、単位構造556は、それぞれの露光方向に応じて異なる法線方向を有する傾斜面556aを有する。
図34〜図36を参照しながら例示した方法によると、液晶層と接触する面全体で液晶層の初期配向を制御できる配向制御体600、601および602を簡便に作製できる。このような配向制御体600、601および602を用いると、液晶層の配向をより均一に制御できるので有利である。また、上記方法によると、配向制御体における単位構造の平均ピッチPXを小さく(例えば数μm以下)しても、傾斜面と基板の表面との間の角度や壁部材の高さなどを任意かつ精確に設定できる。また、傾斜面と基板の表面との間の角度を、壁部材のピッチや高さなどによって簡単に調整できるので、従来の方法では困難であったハイプレチルトが実現可能となる。
なお、転写(レプリカ法)によっても図32(a)に示す配向制御体501を形成することができる。以下、転写による配向制御体の形成方法について説明する。
まず、例えば図34〜図36を参照しながら説明した方法と同様の方法により、表面に複数の単位構造を有する原盤を作製する。
次に、この原盤をマスターとして用いて、原盤の表面形状を樹脂材料からなる層(樹脂層)などに転写することにより、配向制御体501を形成する。樹脂層は、例えばガラス基板上などに配置されていてもよい。樹脂層の材料は特に限定されないが、公知の配向膜の材料と同じ材料を用いることができる。また、上記原盤を転写して得られた転写物をマスターとして用いて更なる転写を行うことにより、配向制御体501を形成してもよい。
(実施形態8)
以下、図面を参照しながら、本発明による液晶表示装置の実施形態8を説明する。
本実施形態の液晶表示装置は、実施形態7の液晶表示装置と同様の構成を有している。ただし、本実施形態における配向制御体では、単位構造503の傾斜面507aの法線方向は、基板502の表面における位置に応じて異なる方位に傾斜している。なお、傾斜面507aが平面でない場合、「傾斜面507aの法線方向」は、図33(c)および(d)における直線507Aと直交する方向をいう。
以下、本実施形態における配向制御体のより詳細な構造を説明する。本実施形態における配向制御体は、図17(a)を参照しながら説明したように、200個×600個の単位領域(300μm×100μm)を有している。
図37(a)に示すように、それぞれの単位領域574は、図37(a)に示すように、縦横ともに2分割された4つのサブ領域580に分割されている。図37(b)に、図37(a)のA―A’およびB−B’断面図を示す。図示するように、各サブ領域580には複数の単位構造576が配列されている。それぞれのサブ領域580では、単位構造576の傾斜面576aは略同一の法線方向を有している。また、各サブ領域における傾斜面576aは、そのサブ領域を含む単位領域574の中心に対して外を向くように形成されている。
図37(c)を参照しながら、各サブ領域における単位構造576の配列状態をより詳しく説明する。単位構造576は、その稜線と直交する方向に1.6μmの平均ピッチPXで配列されている。また、単位構造576は、その稜線の方向に、0.8μmの溝を空けて、3.2μmの平均ピッチPYで配列されている。
本実施形態における配向制御体では、各単位構造の傾斜面の法線方向は、その単位構造の基板表面における位置に応じて予め決められた方位に傾斜している。従って、液晶層のプレチルト方向を所定の領域ごとに制御する、いわゆる配向分割が可能になる。そのため、液晶表示装置の視野角特性を改善できる。
なお、本実施形態における配向制御体の構造は、図37に示す構造に限定されない。例えば、単位領域574のサイズやサブ領域の数、形状なども任意に設定できる。本実施形態の配向制御構造を表示装置に適用する場合には、単位領域574のサイズは、適用しようとする表示装置の画素のサイズに対応させることが好ましい。また、各単位構造576のサイズやピッチも任意に設定できる。さらに、配向制御体は、表面に配向膜および/または導電膜を有していてもよい。この場合、配向膜と接するように液晶層を配置するとよい。
次に、本実施形態における配向分割可能な配向制御体を作製する方法を例示する。
まず、熱変形を生じる材料を用いて配向制御体を作製する方法について説明する。
図34(a)〜(c)を参照しながら説明した方法と同様の方法で、基板520の上に壁部材526を形成する。ただし、図34(b)に示すレジストパターン524は、図37(a)に示す単位構造の配置に応じて形成される。
次いで、図34(d)に示すように、フォトマスクを用いてレジストパターン528を形成する。このとき、それぞれのサブ領域において、壁部材526の側面のうち、傾斜面を形成しようとする側の側面526aと接するようなパターンを形成する。本実施形態では、図37(a)に示す単位領域の右上のサブ領域では、壁部材526を形成するためのレジストパターン524から右上に0.4μmずれたパターンが形成され、同様に、左上のサブ領域では左上に、右下のサブ領域では右下に、左下のサブ領域では左下に、それぞれ0.4μmずれたパターンが形成されるようなフォトマスクを使用する。
この後の工程は、図34(e)を参照しながら説明した工程と同様である。
上記方法により、基板表面における位置に応じて、傾斜面の向きが異なる単位構造を容易に形成できる。
また、本実施形態の配向制御体は、図35を参照しながら説明した方法と同様に、傾斜部材形成層の露光による変形を利用する方法で作製してもよい。
まず、図35(a)に示す壁部材542の形成工程において、図37(a)に示す単位構造の配置に応じて基板540の上に壁部材542を形成する。続いて、図35(c)および(d)に示すネガレジスト層544の斜め露光工程において、まず、各単位領域における右上のサブ領域以外の領域を覆うマスクを用いて、第1の斜め露光を行う。同様にして、右下、左下および左上のサブ領域以外の領域を覆うマスクをそれぞれ用いて、第2、第3および第4の斜め露光を行う。第1〜第4の斜め露光の露光方向はそれぞれ異なる。この後、ネガレジスト層544を現像する(図35(e))と、サブ領域ごとに傾斜面の向きが異なる配向制御体を形成できる。
さらに、本実施形態の配向制御体は、図36を参照しながら説明したインクジェット法を用いる方法と同様の方法でも作製できる。
まず、図36(a)に示す壁部材552の形成工程において、図37(a)に示す単位構造の配置に応じて基板550の上に壁部材552を形成する。
続いて、図36(b)および(c)に示す壁部材552の斜め露光工程において、まず、各単位領域における右上のサブ領域以外の領域を覆うマスクを用いて、第1の斜め露光を行う。同様にして、右下、左下および左上のサブ領域以外の領域を覆うマスクをそれぞれ用いて、第2、第3および第4の斜め露光を行う。第1〜第4の斜め露光の露光方向はそれぞれ異なる。この後、基板550に対して、インクジェット法などにより傾斜部材形成用の溶液を付与した後、付与した溶液を乾燥させる(図36(d))。これにより、サブ領域ごとに傾斜面の向きが異なる配向制御体を形成できる。
上述したような方法によると、単位構造のピッチ、高さおよび傾斜面の角度などが任意かつ精確に制御され、かつ配向分割が可能な配向制御体を容易に作製できる。
なお、本実施形態における配向制御体は転写物であってもよい。そのような転写物は、実施形態7で説明した転写によって配向制御体を形成する方法と同様の方法で形成され得る。さらに、図34〜図36を参照しながら説明した方法で、例えば右上のサブ領域と対応するマスターを作製し、このマスターの表面形状を、向きを変えて異なる領域に4回転写することにより、サブ領域ごとに傾斜面の法線方向が異なる配向制御体を形成することもできる。