JP4272315B2 - シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの製造法およびそれに使用する鉄をベースにした触媒組成物 - Google Patents

シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの製造法およびそれに使用する鉄をベースにした触媒組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【本発明の分野】
本発明は(a)鉄を含む化合物、(b)環式亜燐酸水素エステル、および(c)有機アルミニウム化合物を含んで成る触媒組成物、および1,3−ブタジエンを重合させてシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを得るためのその使用に関する。シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは熱可塑性の樹脂であり、その残留不飽和基のために通常のゴムと一緒に硬化させることができる。
【0002】
【本発明の背景】
本発明はシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの製造法、およびそれに使用する触媒組成物に関する。
【0003】
シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは立体規則性を有する熱可塑性樹脂であり、炭素−炭素結合を構成する重合主鎖に関し側鎖のビニル基が交互に反対側に位置している。使用するシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンはプラスティックスの性質とゴムの性質とが組み合わされた独特の材料である。例えばシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを使用してフィルム、繊維および成形品をつくることができる。またこれをゴムの中に配合し、それと一緒に硬化させることができる。
【0004】
シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは溶液重合、乳化重合または懸濁重合でつくることができる。溶液重合、乳化重合または懸濁重合からつくられたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは典型的には約195〜215℃の範囲内の融点をもっている。しかし加工性の理由で実際の用途に適するようにするためには、一般にシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは約195℃以下の融点をもっていることが望ましい。
【0005】
シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを製造する従来法においては、コバルト、チタン、バナジン、クロムおよびモリブデンをベースにした種々の遷移金属触媒系が報告されている(例えばG.C.Eastmond,A.Ledwith,S.Russo,P.Sigwelt編、Pergamon Press,Oxford 1989年発行、「Comprehensive Polymer Science」第4巻、53頁のL.PorriおよびA.Giarrussoの論文参照のこと)。しかしこれらの触媒系の大部分は、触媒活性が低いか立体選択性が悪く、或る場合には工業用には不適な低分子量の重合体または交叉結合した重合体を生じるために、実際には全く使用されていない。
【0006】
工業的規模でシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを製造するためにはコバルトを含む化合物をベースにした次の二つの触媒系が知られている。(1)コバルトビス(アセチルアセトネート)/トリエチルアルミニウム/水/トリフェニルフォスフィン系(米国特許3,498,963号および同4,182,813号;日本特許公告44−32426号、日本合成ゴム株式会社(Japan Synthetic Rubber Co.Ltd.))、および(2)コバルトトリス(アセチルアセトネート)/トリエチルアルミニウム/二硫化炭素系(米国特許3,778,424号;日本特許公告72−19,892号、81−18,127号、74−17,666号、および74−17,667号;日本特許公開明細書81−88,408号、81−88,409号、81−88,410号、75−59,480号、75−121,380号および75−121,379号、宇部興産株式会社(Ube Industries Ltd.))。これらのコバルトをベースにした触媒系もまた重大な欠点をもっている。
【0007】
コバルトビス(アセチルアセトネート)/トリエチルアルミニウム/水/トリフェニルフォスフィン系は結晶性が非常に低いシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを与える。さらにこの触媒系は、重合媒質としてハロゲン化炭化水素溶媒の中だけでしか十分な触媒活性を示さないが、ハロゲン化溶媒には毒性の問題が生じる。
【0008】
コバルトトリス(アセチルアセトネート)/トリエチルアルミニウム/二硫化炭素系は触媒成分の一つとして二硫化炭素を使用している。二硫化炭素は揮発性が高く、不快な臭気を有し、フラッシュ点が低く毒性があるため、使用するのが困難且つ危険であり、最小限度の量でも大気中に逃げるのを防ぐために高価な安全手段が必要である。さらにこの触媒系を用いて製造されるシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは200〜210℃の範囲の非常に高い融点をもち、そのため重合体の加工が困難になる。第4の触媒成分として触媒変性剤を使用することによりシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの融点は下げることができるが、このような触媒変性剤が存在すると触媒活性および重合体の収率に悪影響がある。従ってこれら2種の従来法のコバルトをベースにした触媒系を工業的に使用するには多くの制約が必要である。
【0009】
鉄を含む化合物をベースにした配位触媒系、例えば鉄(III)アセチルアセトネート/トリエチルアルミニウムは従来法において久しい以前から知られているが、この触媒系は1,3−ブタジエンの重合に対し触媒活性が非常に低く、また立体規則性が悪く、しばしばオリゴマー、低分子量の液体重合体または交叉結合した重合体を生じる。従ってこれらの従来法の鉄をベースにした触媒系は工業的に使用されていない。
【0010】
このような状況の下で、従来法の上記の欠点を克服し、種々の融点をもったシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを製造するために、工業的に使用する際に技術的な制約がなく、高度の触媒活性と立体規則性を有する新規にして著しく改善された触媒組成物を開発し提供する目的で、本出願人により熱心な研究開発が行われて来た。
【0011】
【本発明の概要】
本発明の目的は種々の融点およびシンジオタクティック性を有し、しかも従来法の上記欠点をもたないシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は上記シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを効率的に製造する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、上記シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの製造に使用される、高度の触媒活性と立体選択性をもった融通性に富みかつ廉価な触媒組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的および特徴は以下の本明細書の説明から明らかになるであろう。
【0015】
本発明においては、特殊の鉄をベースにした触媒組成物を使用して1,3−ブタジエンを重合させると、目的のシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを効率的に製造し得ることが見出された。
【0016】
特に本発明は1,3−ブタジエン単量体を立体規則的に重合させてシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを製造するのに使用することができ、(a)鉄をベースにした化合物、(b)環式亜燐酸水素エステル、および(c)有機アルミニウム化合物を含んで成る触媒組成物に関する。
【0017】
本発明はさらに上記触媒組成物を触媒として有効な量だけ使用して1,3−ブタジエン単量体を重合させるシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの製造法に関する。
【0018】
本発明の方法および触媒組成物を使用すると、多くの明確で高度に顕著な利点が実現される。例えば本発明の方法および触媒組成物を使用することにより、低い触媒使用量で比較的短い重合時間の後に高収率でシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを製造することができる。それに加えもっと重要なことは、本発明の触媒組成物は、従来法の或る種の触媒組成物二重典型的に使用されている高度の揮発性、毒性および可燃性をもった二硫化炭素を含んでいないから、二硫化炭素を使用する際の毒性、不快な臭気、危険性およびそれに伴う必要な経費が除去される。さらに、本発明の触媒組成物は、環境的に好適な非ハロゲン化溶媒、例えば脂肪族および脂環式炭化水素を含む広い範囲の溶媒中において高度の触媒活性を示す。また、本発明の触媒組成物は鉄をベースにしており、鉄化合物は一般に安定で毒性がなく、廉価であり入手が容易である。さらに、本発明の触媒組成物は非常に融通性に富み、第4の触媒成分として触媒変性剤を使用する必要がなく、種々の融点をもつシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを製造することができる。
【0019】
【本発明の詳細な説明】
本発明の触媒組成物は次の成分、即ち(a)鉄を含む化合物、(b)環式亜燐酸水素エステル、および(c)アルミニウム化合物から成っている。
【0020】
本発明の触媒組成物の成分(a)としては、種々の鉄化合物を使用することができる。一般に炭化水素溶媒、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、または脂環式炭化水素に溶解する鉄含有化合物を使用することが有利である。しかし不溶性の鉄含有化合物を重合触媒に懸濁させるだけで触媒活性をもった化学種をつくることができる。従って鉄含有化合物の可溶性に関しては何も制限はない。
【0021】
本発明の触媒組成物に使用する鉄含有化合物中の鉄は種々の酸化状態、即ち0、+2、+3および+4を含む酸化状態にあることができるが、これらに限定されるものではない。鉄が+2の酸化状態にある2価の鉄化合物(第1鉄化合物と呼ばれる)、および鉄が+3の酸化状態にある3価の鉄化合物(第2鉄化合物と呼ばれる)を使用することが好適である。本発明の触媒組成物に使用できる適当な種類の鉄含有化合物には、カルボン酸鉄、鉄β−ジケトネート、鉄のアルコキシドまたはアリーロキシド、ハロゲン化鉄、プソイドハロゲン化鉄、および有機鉄化合物が含まれるが、これだけに限定されるものではない。
【0022】
適当な鉄カルボン酸塩の幾つかとしては、蟻酸鉄(II)、蟻酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、アクリル酸鉄(II)、アクリル酸鉄(III)、メタクリル酸鉄(II)、メタクリル酸鉄(III)、吉草酸鉄(II)、吉草酸鉄(III)、グルコン酸鉄(II)、グルコン酸鉄(III)、クエン酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)、フマル酸鉄(II)、フマル酸鉄(III)、乳酸鉄(II)、乳酸鉄(III)、マレイン酸鉄(II)、マレイン酸鉄(III)、蓚酸鉄(II)、蓚酸鉄(III)、2−エチルヘキサン酸鉄(II)、2−エチルヘキサン酸鉄(III)、ネオドデカン酸鉄(II)、ネオドデカン酸鉄(III)、ナフテン酸鉄(II)、ナフテン酸鉄(III)、ステアリン酸鉄(II)、ステアリン酸鉄(III)、オレイン酸鉄(II)、オレイン酸鉄(III)、安息香酸鉄(II)、安息香酸鉄(III)、ピコリン酸鉄(II)、およびピコリン酸鉄(III)が含まれる。
【0023】
適当な鉄β−ジケトネートの幾つかの特定の例としては、鉄(II)アセチルアセトネート、鉄(III)アセチルアセトネート、鉄(II)トリフルオロアセチルアセトネート、鉄(III)トリフルオロアセチルアセトネート、鉄(II)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、鉄(II)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(II)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、および鉄(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが含まれる。
【0024】
適当な鉄のアルコキシドまたはアリーロキシドの幾つかの特定の例としては、鉄(II)メトキシド、鉄(III)メトキシド、鉄(II)エトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(II)イソプロポキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(II)2−エチルヘキソキシド、鉄(III)2−エチルヘキソキシド、鉄(II)フェノキシド、鉄(III)フェノキシド、鉄(II)ノニルフェノキシド、鉄(III)ノニルフェノキシド、鉄(II)ナフトキシド、および鉄(III)ナフトキシドが含まれる。
【0025】
適当なハロゲン化鉄の幾つかの特定の例としては、フッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、およびヨウ化鉄(II)が含まれる。
【0026】
適当なプソイドハロゲン化鉄の幾つかの代表的な例としては、シアン化鉄(II)、シアン化鉄(III)、シアン酸鉄(II)、シアン酸鉄(III)、チオシアン酸鉄(II)、チオシアン酸鉄(III)、アジ化鉄(II)、アジ化鉄(III)、およびフェロシアン化鉄(III)(プルシアンブルーとも呼ばれる)が含まれる。
【0027】
本明細書において「有機鉄化合物」と言う言葉は、少なくとも1個の共有結合の鉄−炭素結合を含む任意の鉄化合物を意味するものとする。適当な有機鉄化合物の幾つかの特定の例としては、ビス(シクロペンタジエニル)鉄(II)(フェロセンとも呼ばれる)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄(II)(デカメチルフェロセンとも呼ばれる)、ビス(ペンタジエニル)鉄(II)、ビス(2,4−ジメチルペンタジエニル)鉄(II)、ビス(アリル)ジカルボニル鉄(II)、(シクロペンタジエニル)(ペンタジエニル)鉄(II)、テトラ(1−ノルボルニル)鉄(IV)、(トリメチレンメタン)トリカルボニル鉄(II)、ビス(ブタジエン)カルボニル鉄(0)、(ブタジエン)トリカルボニル鉄(0)、およびビス(シクロオクタテトラエン)鉄(0)が含まれる。
【0028】
本発明の触媒組成物の成分(b)は環式亜燐酸水素エステル(cyclic hydrogen phosphite)である。環式亜燐酸水素エステルは環式亜燐酸水素アルキレンエステルまたは環式亜燐酸水素アリーレンエステルのいずれかであり、下記のケト−エノール互変異性構造で表すことができる。
【0029】
【化1】
Figure 0004272315
ここでRは2価のアルキレンまたはアリーレン基、または置換基をもつ2価のアルキレンまたはアリーレン基であり、炭素数は2または6ないし20であることが好ましい。環式亜燐酸水素エステルは主としてケト型異性体(上図の左側)として存在し、エノール型の異性体(上図の右側)は少量の化学種である。この二つの互変異性体のいずれかまたはその混合物を本発明の触媒組成物の成分(b)として使用することができる。上記の互変異性の平衡式の平衡定数は、温度、R基の種類、溶媒の種類等に依存する。両方の互変異性体はいずれも水素結合により二量体、三量体またはオリゴマーの形で会合していることができる。
【0030】
本発明の触媒組成物に使用する環式亜燐酸水素エステルは、非環式亜燐酸水素エステル(通常は亜燐酸水素ジメチルまたは亜燐酸水素ジエチル)をアルキレンジオールまたはアリーレンジオールとエステル交換反応を行わせて合成することができる。このようなエステル交換反応の方法は当業界の専門家には公知である。典型的にはこのエステル交換反応は非環式亜燐酸水素ジヒドロカルビルとアルキレンジオールまたはアリーレンジオールの混合物を加熱し、エステル交換反応で分離されるアルコール(通常メタノールまたはエタノール)を蒸溜して除去し、新しく生じた環式亜燐酸水素エステルを残す方法で行われる。
【0031】
適当な環式亜燐酸水素アルキレンエステルの幾つかの特定の例としては、2−オキソー(2H)−5−ブチル−5−エチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−4−メチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−5−エチル−5−メチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−5,5−ジエチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−5−メチル−5−プロピル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−4−イソプロピル−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−4,6−ジメチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−4−プロピル−5−エチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−4−メチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、2−オキソー(2H)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン等が含まれる。上記環式亜燐酸水素アルキレンエステルの混合物も使用できる。
【0032】
適当な環式亜燐酸水素アリーレンエステルの幾つかの特定の例としては、2−オキソー(2H)−4,5−ベンゾ−1,3,2−ジオキサフォスフォラン、2−オキソー(2H)−4,5−(3’−メチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサフォスフォラン、2−オキソー(2H)−4,5−(4’−メチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサフォスフォラン、2−オキソー(2H)−4,5−(4’−t−ブチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサフォスフォラン、2−オキソー(2H)−4,5−ナフタロ−1,3,2−ジオキサフォスフォラン等が含まれる。上記環式亜燐酸水素アリーレンエステルの混合物も使用できる。
【0033】
本発明の触媒組成物はさらに成分(c)として有機アルミニウム化合物を含んでいる。本明細書において「有機アルミニウム化合物」という言葉は少なくとも1個の共有結合のアルミニウム−炭素結合を含む任意のアルミニウム化合物を意味する。一般に炭化水素重合媒質に可溶な有機アルミニウム化合物を使用することが有利である。本発明の触媒組成物に使用できる好適な種類の有機アルミニウム化合物は一般式AlRn3-n(n=1、2または3)で表され、ここでRは同一または相異なることができ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、およびアリル基から成る群から選ばれるヒドロカルビル基であり、好ましくは1または該基を構成するのに必要な最低数から最高20の炭素原子を含み、各Xは同一または相異なることができ、水素;ハロゲン、好ましくは塩素または臭素:または炭素数1または6ないし20のアルコキシドまたはアリーロキシドである。従って本発明の触媒組成物に使用できる適当な種類の有機アルミニウム化合物には、トリヒドロカルビルアルミニウム、水素化ジヒドロカルビルアルミニウム、二水素化ヒドロカルビルアルミニウム、ハロゲン化ジメチルヒドロカルビルアルミニウム、二ハロゲン化ヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド、ジヒドロカルビルアルミニウムアリーロキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアリーロキシド等が含まれるが、これだけに限定されない。一般にトリヒドロカルビルアルミニウムが好適である。
【0034】
本発明の触媒組成物に使用できる適当な有機アルミニウム化合物の幾つかの特定の例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、エチルジベンジルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジイソプロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジ−n−オクチルアルミニウム、水素化ジフェニルアルミニウム、水素化ジ−p−トリルアルミニウム、水素化ジベンジルアルミニウム、水素化フェニルエチルアルミニウム、水素化フェニル−n−プロピルアルミニウム、水素化フェニルイソプロピルアルミニウム、水素化フェニル−n−ブチルアルミニウム、水素化フェニルイソブチルアルミニウム、水素化フェニル−n−オクチルアルミニウム、水素化p−トリルエチルアルミニウム、水素化p−トリル−n−プロピルアルミニウム、水素化p−トリルイソプロピルアルミニウム、水素化p−トリル−n−ブチルアルミニウム、水素化p−トリルイソブチルアルミニウム、水素化p−トリル−n−オクチルアルミニウム、水素化ベンジルエチルアルミニウム、水素化ベンジル−n−プロピルアルミニウム、水素化ベンジルイソプロピルアルミニウム、水素化ベンジル−n−ブチルアルミニウム、水素化ベンジルイソブチルアルミニウム、水素化ベンジル−n−オクチルアルミニウム、二水素化エチルアルミニウム、二水素化−n−プロピルアルミニウム、二水素化イソプロピルアルミニウム、二水素化−n−ブチルアルミニウム、二水素化イソブチルアルミニウム、二水素化−n−オクチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、フッ化ジメチルアルミニウム、フッ化ジエチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二フッ化メチルアルミニウム、二フッ化エチルアルミニウム、セスキ塩化メチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、セスキ塩化イソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、イソブチルアルミニウムジフェノキシド等、およびこれらの混合物が含まれる。
【0035】
本発明の触媒組成物は上記の三つの成分(a)、(b)および(c)を主要成分として含んでいる。これら3種の触媒成分(a)、(b)および(c)の他に、当業界に公知の他の有機金属成分のような他の触媒成分を必要に応じ加えることができる。
【0036】
本発明の触媒組成物は触媒全体の濃度および触媒の成分比の広い範囲に亙り極めて高い触媒活性をもっている。三つの触媒成分(a)、(b)および(c)は明らかに相互作用して活性の触媒種を生じる。従って任意の一つの触媒成分に対する最適の濃度は他の二つの触媒成分の濃度に依存する。重合は広い範囲の触媒濃度および触媒成分の比に亙って起こるが、最も望ましい性質をもった重合体は狭い範囲の触媒濃度および触媒成分比で得られる。
【0037】
本発明の触媒組成物中の環式亜燐酸水素エステル対鉄含有化合物のモル比(P/Fe)は約0.5:1〜約50:1の範囲で変化することができ、さらに好適な範囲は約1:1〜約25:1、最も好適な範囲は約2:1〜約10:1である。有機アルミニウム化合物対鉄含有化合物のモル比(Al/Fe)は約1:1〜約100:1の範囲で変化することができる。しかしAl/Feのモル比のさらに好適な範囲は約3:1〜約50:1、最も好適な範囲は約5:1〜約20:1である。
【0038】
重合混合物中の全触媒濃度は成分の純度、重合速度および所望の変化率、重合温度等のような因子に依存する。従って特定の全触媒濃度は、個々の触媒成分を触媒として有効な量で使用しなければならないと言う以外、明確に設定することはできない。一般に鉄含有化合物の使用量は1,3−ブタジエン100g当たり約0.01〜約2ミリモルの範囲で変えることができ、好ましくは1,3−ブタジエン100g当たり約0.02〜約1.0ミリモル、最も好ましくは1,3−ブタジエン100g当たり約0.05〜約0.5ミリモルの範囲である。所望の性質をもった重合体を生じる或る種の特定の全触媒濃度および触媒成分比は本発明を説明する下記実施例に例示されている。
【0039】
本発明の3種の触媒成分は幾つかの異なった方法で重合体系に導入することができる。即ち、この3種の成分を単量体/溶媒混合物の中に段階的にまたは同時に加えることによりその場で触媒をつくることができる。該成分を段階的に加える順序は重要ではないが、鉄含有化合物、環式亜燐酸水素エステル、最後に有機アルミニウム化合物の順序で成分を加えることが好適である。別法として、重合系の外で適当な温度(例えば約−20℃〜約80℃)において三つの成分を予め混合し、得られた混合物を次いで重合系に加えることができる。さらに触媒を予めつくり、即ち少量の1,3−ブタジエンを存在させ適当な温度(例えば約−20℃〜約80℃)において3種の触媒成分を予め混合し、その後これを重合させるべき単量体/溶媒混合物の主要部分に装入することができる。触媒を予めつくるのに使用する1,3−ブタジエン単量体の量は鉄含有化合物1モル当たり約1〜約500モルの範囲であることができ、鉄含有化合物1モル当たり約4〜約50モルであることが好ましい。さらに二段階工程を用いて3種の触媒成分を重合系に導入することもできる。この方法は先ず、上記のように少量の1,3−ブタジエンを存在させ、適当な温度(例えば約−20℃〜約80℃)において鉄含有化合物を有機アルミニウム化合物と反応させる。得られた反応混合物と環式亜燐酸水素エステルとを次に段階的な方法で或いは同時に単量体/溶媒混合物の主要部分に加える。また別の二段階工程を使用することもできる。この方法では先ず適当な温度(例えば約−20℃〜約80℃)において鉄含有化合物を環式亜燐酸水素エステルと反応させて鉄錯体をつくり、次に得られた鉄錯体と有機アルミニウム化合物とを段階的な方法で或いは同時に単量体/溶媒混合物の主要部分に加える。
【0040】
重合系の外で触媒成分の溶液をつくる場合、触媒成分溶液に使用できる有機溶媒は芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素、並びにこれらの炭化水素の2種以上の混合物から成る群から選ぶことができる。好ましくはこの有機溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンから成る群から選ばれる少なくとも1種から成っている。
【0041】
前に述べたように、3種の触媒成分(a)、(b)および(c)を含む本発明の鉄をベースにした触媒組成物はシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの製造に対し極めて高い触媒活性を示す。従って本発明によればさらに上記の鉄をベースにした触媒組成物を使用してシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを製造する方法が提供される。
【0042】
本発明方法によるシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの製造は、上記3種の触媒成分(a)、(b)および(c)の鉄をベースにした触媒組成物を存在させて1,3−ブタジエンを重合させることにより実施される。上記のように、本発明の触媒組成物の触媒成分を1,3−ブタジエン単量体と接触させるには種々の方法がある。
【0043】
本発明に従えば、1,3−ブタジエン単量体の重合は溶媒を使用しない塊状重合によって行うことができる。この塊状重合は凝縮した液相または気相のいずれかで行うことができる。
【0044】
別法としてもっと典型的には、本発明方法の1,3−ブタジエン単量体の重合は希釈剤としての有機溶媒の中で行われる。このような場合、重合させる1,3−ブタジエン単量体と生成した重合体との両方が重合媒質に可溶な溶液重合系を使用することができる。別法として、生成する重合体が不溶な溶媒を選ぶことにより懸濁重合系を用いることもできる。両方の場合触媒成分溶液の中に含まれる有機溶媒以外の余分な量の溶媒を通常重合系に加える。この余分の量の溶媒は触媒成分溶液に含まれる溶媒と同じものでも異なっているものでも良い。通常、重合触媒として使用される触媒組成物に関して不活性な有機溶媒を選ぶことが望ましい。希釈剤として使用できる適当な種類の有機溶媒には脂肪族、脂環式および芳香族の炭化水素が含まれるが、これだけには限定されない。適当な脂肪族の溶媒の幾つかの代表的な例には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、灯油、石油スピリット等が含まれる。適当な脂環式の溶媒の幾つかの代表的な例には、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等が含まれる。適当な芳香族の溶媒の幾つかの代表的な例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メジチレン等が含まれる。上記炭化水素の工業的混合物も使用できる。環境的な理由で脂肪族および脂環式溶媒が好適である。
【0045】
重合させる1,3−ブタジエンの濃度は特定の範囲には限定されない。しかし一般に、重合開始時において重合媒質中に存在する1,3−ブタジエン単量体の量は約3〜約80重量%の範囲であることができ、約5〜約50重量%が好適であり、約10〜約30重量%が最も好適である。
【0046】
本発明方法に従って1,3−ブタジエンの重合を行う際、分子量調節剤を使用して生成するシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの分子量を制御することができる。その結果これを使用して極端に高い分子量の重合体から低分子量の重合体に亙るシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンが製造できるように重合系の範囲を拡張することができる。使用可能な分子量調節剤の適当な種類には、累積型(クムレン系)のジオレフィン(accumulated diolefins)、例えばアレンおよび1,2−ブタジエン;非共役型のジオレフィン、例えば1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、4−ビニルシクロヘキセン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,2−ジビニルシクロヘキセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよび1,2,4−トリビニルシクロヘキサン;アセチレン類、例えばアセチレン、メチルアセチレンおよびビニルアセチレン;およびこれらの混合物該含まれるが、これだけには限定されない。分子量調節剤の使用量は、重合に使用する1,3−ブタジエン単量体100重量部に対する重量部(phm)で表して、約0.01〜約10phmの範囲であり、好ましくは約0.02〜約2phm、最も好ましくは約0.05〜約1phmの範囲である。さらに製造されるシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの分子量は水素の存在下で1,3−ブタジエン単量体を重合させることにより制御することができる。この場合水素の分圧は約0.01〜約50気圧の範囲で適当に選ばれる。
【0047】
本発明方法に従えば、1,3−ブタジエンの重合はバッチ法、半連続法または連続法で行うことができる。いずれの場合も重合は窒素、アルゴンまたはヘリウムのような不活性保護ガスを用い酸素のない条件下において中程度ないし激しく撹拌しながら行うことが望ましい。本発明を実施するのに使用される重合温度は−10℃またはそれ以下のような低温から100℃以上に亙る高温までの広い範囲で変えることができ、約20〜約90℃が好適な範囲である。重合熱は外部からの冷却、1,3−ブタジエン単量体または溶媒の蒸発による冷却、またはこの二つの方法を組み合わせて除去する。本発明を実施するのに用いられる重合圧力も広い範囲で変えることができ、好適な圧力範囲は約1〜約10気圧である。
【0048】
本発明の重合反応は、所望の変化率に達した場合、公知の重合停止剤を重合系に加えて触媒系を不活性化した後、典型的に用いられるような共役ジエン重合体の製造において当業界の専門家に公知の脱溶媒および乾燥の通常の工程を行うことにより停止させることができる。典型的には触媒系を不活性化させるのに使用される重合停止剤はプロトン性の化合物であり、その中にはアルコール、カルボン酸、無機酸および水、またはこれらの組み合わせが含まれるが、それだけには限定されない。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールのような酸化防止剤を、重合停止剤と共に、またはそれを添加する前または後に加えることができる。酸化防止剤の使用量は通常重合体生成物の0.2〜1重量%である。重合反応が停止した後、アルコール、例えばメタノール、エタノール、またはイソプロパノールで沈澱させるか、または溶媒および未反応の1,3−ブタジエン単量体を水蒸気蒸溜し、次いで濾過することによりシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを重合混合物から分離することができる。次に一定の真空度において約25〜約100℃(好ましくは約60℃)で生成物を乾燥する。
【0049】
本発明の触媒組成物を使用してつくられたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは種々の融点をもっているが、その融点は触媒成分およびその成分比に依存する。望ましくはこの融点は約125〜約175℃の間で変化するが、約130または135℃〜約165または170℃の間であることがさらに望ましい。1,2−結合の含有量は約60〜約90または95%であることが望ましく、約70〜90または95%であることがさらに望ましい。シンジオタクティック性は約60〜約90または95%であることが望ましく、約70〜90または95%であることがさらに望ましい。
【0050】
本発明の触媒組成物を用いてつくられたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは多くの用途をもっている。これを種々のゴムと配合してその性質を改善することができる。例えばエラストマーの中に混入し、これらのエラストマー、特にタイヤの生の強度を改善することができる。タイヤの支持用のカーカス(補強用のカーカス)は製造中および硬化操作中特に変形し易い。そのためタイヤの支持用のカーカスに使用されるゴム組成物の中にシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンを混入することは、変形を防止し或いはそれを最低限度に抑制する上で特に有用である。またシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンをタイヤの踏み面に混入すると熱の蓄積を減少させ、タイヤの摩耗特性を改善することができる。シンジオタクティック1,2−ポリブタジエン製品はまた食品用のフィルムの製造および多くの成形の用途に有用である。
【0051】
下記の実施例を参照して本発明をさらに例示するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。これらの実施例において特記しない限りすべての割合は重量による。
【0052】
【実施例】
実施例 1
蒸溜ヘッドおよび受器のフラスコに連結された丸底フラスコの中で亜燐酸水素ジメチル(76.3g、0.693モル)と1,3−プロパンジオール(110.0g、0.687モル)とを混合する。反応フラスコをアルゴン雰囲気下に保ち、150℃に保たれたシリコーンの油浴の中に入れる。エステル交換反応の進行はメタノールが蒸溜することによって示される。上記温度で約2時間加熱した後、残ったメタノールと未反応の原料とを温度135℃、圧力150トールにおいて真空蒸溜により除去する。残った粗製物を温度160℃、圧力2トールで蒸溜し、非常に粘稠な無色液体として2−オキソ−(2H)−5−ブチル−5−エチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナンを得た(128.8g、0.625モル、収率91%)。生成物の適切な同定は核磁気共鳴(NMR)分光分析法によって行った。1HNMRデータ(CDCl3、25℃、テトラメチルシラン基準):δ6.88(二重線、1HP=675Hz、1H、H−P)、4.1(複雑な多重線、4H、OCH3)、0.8〜1.8(複雑な多重線、14H、EtおよびBu)。31PNMRデータ(CDCl3、25℃、85%H3PO4外部基準):δ3.88(多重線の二重線、1HP=670Hz)。
【0053】
実施例 2
乾燥器で乾燥したガラス瓶に自己密封性のゴムのライニング材と孔の開いた金属のキャップで栓をし、乾燥した窒素ガスを流して空気を追い出す。この瓶に1,3−ブタジエンを26.9重量%含む64gのヘキサンと186gの1,3−ブタジエン/ヘキサン混合物を装入する。この瓶に下記の触媒成分を下記の順序で加えた。(1)0.050ミリモルの2−エチルヘキサン酸鉄(II)、(2)0.20ミリモルの2−オキソ−(2H)−5−ブチル−5−エチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン、および(3)0.60ミリモルのトリイソブチルアルミニウム。50℃に保った水浴中でこの瓶を5時間振盪する。0.5gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを加えて重合を停止させた。この重合混合物を3リットルのイソプロパノールに加えた。濾過して重合体を分離し、真空下で60℃において恒量になるまで乾燥する。生成物の収量は48.1g(96%)であった。示差走査熱量分析法(DSC)で測定してこの重合体は融点が159℃であった。この重合体の1Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)分析を行い、1,2−結合の含有量は84.7%、シンジオタクティック性は81.5%であった。ゲル透過クロマトグラフ法(GPC)で決定した結果、この重合体の重量平均分子量(Mw)は641,000、数平均分子量(Mn)は346,000、多重分散度指標(polydispersity index)は1.9であった。単量体の装入量、触媒成分の量および得られたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの性質を表1にまとめる。
【0054】
【表1】
Figure 0004272315
実施例 3〜7
実施例3〜7においては、表1に示したように触媒比を変化させたこと以外実施例2の方法を繰り返した。各実施例における単量体の装入量、触媒成分の量および得られたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの性質を表1にまとめる。
【0055】
実施例 8〜12
実施例8〜12においては、2−エチルヘキサン酸鉄(II)の代わりに2−エチルヘキサン酸鉄(III)を使用し、表2に示したように触媒比を変化させたこと以外、実施例2の方法を繰り返した。各実施例における単量体の装入量、触媒成分の量および得られたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの性質を表2にまとめる。
【0056】
【表2】
Figure 0004272315
実施例13〜18
実施例13〜18においては、2−エチルヘキサン酸鉄(II)の代わりに2−エチルヘキサン酸鉄(III)を用い、2−オキソ−(2H)−5−ブチル−5−エチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナンの代わりに2−オキソ−(2H)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサフォスフォリナンを使用し、表3に示したように触媒比を変化させたこと以外、実施例2の方法を繰り返した。各実施例における単量体の装入量、触媒成分の量および得られたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの性質を表3にまとめる。
【0057】
【表3】
Figure 0004272315
実施例19〜24
実施例19〜24においては、2−エチルヘキサン酸鉄(II)の代わりに鉄(III)アセチルアセトネートを使用し、表4に示したように触媒比を変化させたこと以外、実施例2の方法を繰り返した。各実施例における単量体の装入量、触媒成分の量および得られたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの性質を表4にまとめる。
【0058】
【表4】
Figure 0004272315
実施例25〜30
実施例25〜30においては、2−エチルヘキサン酸鉄(II)の代わりに2−エチルヘキサン酸鉄(III)を用い、トリイソブチルアルミニウムの代わりにトリエチルアルミニウムを使用し、表5に示したように触媒比を変化させたこと以外、実施例2の方法を繰り返した。各実施例における単量体の装入量、触媒成分の量および得られたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの性質を表5にまとめる。
【0059】
【表5】
Figure 0004272315
実施例31〜37
実施例31〜37においては分子量調節剤としての1,2−ブタジエンの有用性を例示するために一連の重合実験を行った。、2−エチルヘキサン酸鉄(II)の代わりに2−エチルヘキサン酸鉄(III)を用い、触媒成分を加える前に1,3−ブタジエン単量体溶液を含む重合瓶に種々の量の1,2−ブタジエンを加えたこと以外、実質的に実施例2と同じ方法を行った。各実施例における単量体の装入量、触媒成分の量および得られたシンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの性質を表6にまとめる。
【0060】
【表6】
Figure 0004272315
以上上記実施例において特定の方法、材料および具体化例を参照して本発明を説明したが、添付請求の範囲に記載された本発明の特許請求の範囲内に入る種々の変形および変更をなし得ることは当業界の専門家には明白であろう。

Claims (2)

  1. (a)カルボン酸鉄、鉄β−ジケトネート、鉄のアルコキシドまたはアリーロキシド、ハロゲン化鉄およびプソイドハロゲン化鉄;
    (b)環式亜燐酸水素エステル;および
    (c)有機アルミニウム化合物を含んで成ることを特徴とするジエン重合触媒組成物。
  2. (a)カルボン酸鉄、鉄β−ジケトネート、鉄のアルコキシドまたはアリーロキシド、ハロゲン化鉄およびプソイドハロゲン化鉄;
    (b)環式亜燐酸水素エステル;および
    (c)有機アルミニウム化合物を含んで成る触媒組成物を触媒として有効な量存在させ1,3−ブタジエンを重合させることを特徴とするシンジオタクティック1,2−ポリプタジエンの製造法。
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