JP4271394B2 - ゴム物品補強用スチールワイヤの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラスメッキを施した線材を溶接した線材を伸線して製造されるゴム物品補強用スチールワイヤの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用スチールラジアルタイヤやホース用ワイヤなどに使用されるスチールワイヤは、一般に、ブラスメッキを施した直径0.7〜2.0mm程度の硬鋼線材を複数回湿式伸線工程に通して、最終的に直径が0.1〜0.4mm程度の規定長さ分の素線に仕上げた後、このような素線を単線としたり、複数本撚り合わせたコードとして製造される。
このとき、上記ブラスメッキ線材の投入長さと伸線後の長さとのバランスが合わないとブラスメッキ線材が余ってしまい、これが廃棄物となるため、製造効率が悪いといった問題があった。また、近年、環境問題の観点から、上記のような廃棄物の削減を促進することが要求されている。
そこで、上記余ったブラスメッキ線材を溶接してこれを伸線工程に投入し、連続的に規定長さの伸線を得るようにする方法が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ブラスメッキ線材を溶接した場合には、その溶接部分でブラスメッキが剥れてしまい、そのため、スチールコードとゴムとを複合体化したときに、スチールワイヤ表面のブラスメッキが剥れた部分で接着性が悪化するという問題が生じる。そこで、ブラスメッキ線材を溶接し、溶接により発生したバリや酸化物をグラインダーなどで研削して除去した後、上記ブラスメッキが剥れた部分に再度メッキ処理を施して補修した後伸線することにより、上述したゴムとの接着性を改善する方法が提案されている(例えば、特開平9−188982号公報など)。
しかしながら、上記の方法では、作業効率が悪いだけでなく、溶接後の表面状態によっては、伸線後に上記後付けされたメッキが保持されず、ゴムとの十分な接着性が得られないといった問題点があった。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、スチールコードとゴムとの接着性を損なうことのないようなブラスメッキ線材の溶接方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載のゴム物品補強用スチールワイヤの製造方法は、ブラスメッキを施した線材を溶接して繋ぎ合わせながら伸線処理する際に、上記ワイヤの溶接部を研削してバリや酸化物を除去した後、上記研削された溶接部の表面を研磨仕上げする表面仕上げを行い、この表面仕上げされた溶接部近傍のメッキが剥離した部分を銅メッキ処理してから伸線処理するようにしたことを特徴とする。
請求項2に記載のゴム物品補強用スチールワイヤの製造方法は、上記研磨仕上げにより表面仕上げした溶接部をエッチング処理にて再度表面仕上げした後、銅メッキ処理するようにしたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
ブラスメッキを施した線材を伸線してスチールワイヤを製造する工程において、上記線材を溶接して連続的に規定長さのワイヤを伸線する際、まず、上記線材の端部同士を溶接して繋ぎ合わせてから、溶接により発生したバリや酸化物を目の粗いヤスリやグラインダーなどで研削した後、表面仕上げとして、目の細かいヤスリにて研磨仕上げして上記ワイヤの表面を平滑化する。次に、上記表面仕上げされた溶接部近傍のメッキが剥離した部分を硫酸銅などの薬品に浸積させて銅の化学メッキを行った後伸線し、この伸線されたワイヤを単線として、あるいは、複数本撚り合わせたコードとして製造する。
表面仕上げの具体的な方法としては、例えば、#1000番程度の目の細かい紙ヤスリ(または、ラッピングテープ)や、目の細かい砥石を備えたグラインダー等を用いて研磨仕上げすることが好ましい。また、グラインダーの砥石としては、硬質ゴム性の砥石が特に好ましく、これにより、溶接部表面の仕上がり肌をより平滑にすることができる。
【0007】
本例では、上記のように、溶接部表面の仕上がり肌を平滑にしてから溶接部近傍のメッキが剥離した部分に銅メッキするようにしているので、メッキされた銅の密着性を向上させることができる。したがって、溶接した線材を伸線処理しても銅メッキが剥れることがないので、スチールコードとゴムとの接着性を向上させることができる。
なお、上記研磨して平滑化した溶接部を、硝酸溶液などの溶液にて、化学的に処理すると、溶接部表面は一層平滑になるので、メッキされた銅の密着性を更に向上させることができる。
【0008】
<実施例>
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
約0.82%wt.の炭素を含有する直径約5.5mmの高炭素鋼線材に、直径が約1.4mmとなるまで繰り返し乾式伸線を施した後、パテンティング処理およびブラスメッキ処理を施した。このブラスメッキ線材を溶接してから表面仕上げをし、その後、硫酸銅溶液にて置換メッキした線材を0.25mmになるように湿式伸線を行いスチールワイヤを作製し、この処理された部分を含む素線を1×5構造に撚り合わせてスチールコードとゴムとの接着性の評価を行うとともに、上記処理部分にCu成分が存在しているかどうかをEPMAにて元素分析した結果を以下の表1に示す。
【表1】
Figure 0004271394
表1から明らかなように、溶接部の表面を目の細かい#1000の紙ヤスリで仕上げた実施例1、硬質ゴム製砥石や目の細かい#1000ペーパー砥石によるグラインダ仕上げした実施例2,3、及び、#1000ペーパー砥石によるグラインダ仕上げの後硝酸溶液で再度表面仕上げした実施例4のように溶接部を平滑にしてからCuメッキして伸線したスチールワイヤは、接着時においても素線の溶接部近傍にメッキされたCuが付着しており、このため、上記スチールワイヤを用いたコードは、従来の溶接部のないブラスメッキされたスチールワイヤを用いたコードと同等の良好な接着性を示すことが確認された。
一方、溶接後の表面仕上げとして、セラミック砥石によるグラインダ仕上げ(比較例1)や目の粗い#600の紙ヤスリ仕上げ(比較例2)のように、表面が凹凸となるような仕上げをした場合には、Cuメッキが保持されず、ゴムとの接着性が悪かった。
【0009】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ブラスメッキを施した線材を、溶接して繋ぎ合わせながら伸線処理する際に、上記ワイヤの溶接部を研削してバリや酸化物を除去した後、上記研削された溶接部の表面を研磨仕上げする表面仕上げを行い、この表面仕上げされた溶接部近傍のメッキが剥離した部分を銅メッキ処理してから伸線処理するようにしたので、ゴムとの接着性を損なうことなくゴム物品の補強に供するスチールワイヤを製造することができる。これにより、ブラスメッキ線材が規定長さにならなくても、上記処理によりブラスメッキ線材を溶接してこれを伸線工程に投入して、連続的に規定長さの伸線を得ることが可能となるので、スチールワイヤの製造効率を向上させることができる。

Claims (2)

  1. ブラスメッキを施した線材を、溶接して繋ぎ合わせながら伸線処理するゴム物品補強用スチールワイヤの製造方法であって上記線材の端部同士を溶接で繋ぎ合わせてから、上記ワイヤの溶接部を研削してバリや酸化物を除去した後、上記研削された溶接部の表面を研磨仕上げする表面仕上げを行い、この表面仕上げされた溶接部近傍のメッキが剥離した部分を銅メッキ処理してから伸線処理するようにしたことを特徴とするゴム物品補強用スチールワイヤの製造方法。
  2. 上記研磨仕上げにより表面仕上げした溶接部をエッチング処理にて再度表面仕上げした後、銅メッキ処理するようにしたことを特徴とする請求項に記載のゴム物品補強用スチールワイヤの製造方法。
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