JP4271293B2 - アーク溶接の最適制御方法及び装置 - Google Patents

アーク溶接の最適制御方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アーク溶接の最適制御方法及び最適制御装置に関し、特に溶接状態の安定性を維持しながら自動的にアーク溶接を行なう消耗電極式ガスシールドアーク溶接の最適制御方法及び最適制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
近時のアーク溶接装置においては、溶接電源の出力制御がサイリスタ方式からインバータ方式に移行したことに伴い、制御速度が300Hzから15乃至60kHz へと50乃至200倍に高速化され、しかも溶接電流及び溶接電圧の波形制御も可能となっている。これにより、アークスタート性能の向上、高速溶接時の溶接安定性向上、スパッタの発生量低減等が可能となり、アーク溶接時の溶接安定性も改善されつつある。しかし、依然としてまだアーク溶接開始時の溶接作動領域たるスタート部が不安定であり、その後の定常部においても、加工歪みあるいは熱歪み等によって溶接状態が変化するため、安定した溶接品質を維持することが困難であり、溶接ロボット等による自動溶接ライン及び半自動溶接ラインにおける溶接状態の不安定性に起因して発生する溶接品質不良の流出防止を図る上で障害となっていた。また、要求される溶接品質は、製品によってそれぞれ異な り、適正な溶接電圧値及び溶接電流値も異なる。この適正溶接電圧値及び溶接電流値は、一般に熟練作業者や技術者が溶接ビード外観の均一性や溶け込み深さを判定することにより決められた値であるが、実際の溶接施工状態においては前記のように溶接状態が変化するため適正値も変化し、製品によって、一定の溶接電圧値及び溶接電流値による溶接施工では適正値からずれることがある。
【0003】
しかも、従前のアーク溶接装置における溶接状態安定性の良否判定は、一般に作業者が溶接ビード外観均一性の目視による定性的な判定に委ねられていた。このため、従来より種々の対策が講じられ、種々の溶接安定性判定方法及び溶接電源の出力あるいはワイヤ送給量を制御する方法が提案されている。しかし実際の溶接施工状態は前記のように変化するため最適化することは困難であった。
【0004】
例えば、▲1▼特公平2−62017号公報には、1周期毎の短絡時間、アーク時間、短絡平均電流、アーク平均電流、アーク平均抵抗およびアーク電力を算出 し、これらに基づき、例えばこれらの標準偏差を求め、アーク状態の均一性の程度、アーク切れの程度、アーク燃え上がり度を表し、溶接性の良否を判定する方法が提案されている。
【0005】
また、▲2▼特公平5−57070号公報には、溶接電圧を測定することにより1周期毎の短絡時間とアーク時間を検出し、所定時間内での短絡時間の平均値あるいは標準偏差及びアーク時間の平均値あるいは標準偏差を求め、これらに基づき溶接指数を演算し、この溶接指数によって溶接性の良否を判定する溶接性判定方法が提案されている。更に、▲3▼特公平6−53310号公報には、母材とワイヤが短絡する期間中に与えられる入熱の変化度を、最大短絡電流、短絡時の電流の平均値、短絡時の実効電流及び短絡時の電力の少なくとも1つの標準偏差を用いて表し、該標準偏差の値により溶接性を判定する方法が提案されている。
【0006】
あるいは、▲4▼特公平7−2275号公報には、溶接電流、電圧を測定し、このデータを基に溶接電流の移動平均を求める移動平均法を利用したアーク溶接モニタ装置が提案されている。更に、この移動平均の演算期間および移動ピッチを適当に選択すること、そして開始直前及び終了間際のアークを除くように監視区間を設定することも提案されている。また、▲5▼特公平6−53309号公報には、自動的に最適な溶接条件を設定してCO2 あるいはMAG溶接の最適制御を行なうことを目的としたアーク溶接の最適制御方法が提案されている。具体的に は、短絡時間Ts、アーク時間Ta、短絡期間の電流の平均値Is'ave、アーク期間の電流の平均値Ia'ave、アーク期間の抵抗の平均値Ra'ave及びアーク期間の電力Paから、溶接性を定量的に把握する指数(以下、溶接性指数と称す)W=(σTs・σTa・σIs'ave・σIa'ave/K)・(Ra'ave/Ri)2 ・(Pa/Pi)を算出し、該溶接性指数が最小となるように溶接電源の出力あるいはワイヤ送給量を制御することとしている。ここで、σTsはTsの標準偏差、σTaはTaの標準偏差、σIs'aveはIs'aveの標準偏差、σIa'aveはIa'aveの標準偏差、Kは基準溶接条件でのσTs・σTa・σIs'ave・σIa'aveの積、Riは最適条件におけるRa'aveの回帰式、Piは最適条件におけるPaの回帰式を示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された溶接状態の判定技術においては、何れも誤判定を招く恐れがあり、それらの判定を基に溶接電源の出力を制御すると逆に溶接状態の安定性を欠く恐れがある。例えば、前掲の▲1▼特公平2- 62017号公報に記載の方法ではアーク期間中の平均電流を用いているが、この平均電流はアーク時間によって変化し易いから正確な判定は期待しがたい。また、▲2▼特公平5- 57070号公報に記載の方法も、短絡時間の平均値及びアーク時間の平均値に夫々定数を乗じ、これらを加えたものを溶接安定性指数としているが、短絡とアークの時間平均値だけでは電流・電圧の影響が欠落してしまう。▲3▼特公平6−53310号公報に記載の方法は、アーク期間中の指標を用いることなく、短絡期間中のみの指標に基づく標準偏差を用いているが、溶接品質により大きな影響を与えるアーク期間中の諸条件が無視されている。更に、▲4▼特公平7−2275号公報に記載の装置においては、移動平均法としているものの、基本的には平均値を利用しているから、電流・電圧の実際の挙動を反映した溶接条件の良否判定は難しい。
【0008】
以上のように、従来のアーク溶接における溶接安定性の判定方法では不十分であり、解析に時間を要するものもあり、アーク溶接における溶接安定性の維持が困難である。更に、自動的に最適な溶接条件を設定するものとして、前掲の▲5▼特公平6−53309号公報に開示されたアーク溶接の最適制御方法があるが、これも平均値を利用しているから、▲1▼特公平2- 62017号公報につき前述したのと同様の理由により最適制御のレベルが低水準とならざるを得ない。しかも、▲1▼特公平2−62017号公報等と同様、利用する指標が多く処理が複雑なた め、判定に時間を要し、また、制御ソフトが増大し、これに必要なメモリ容量が増大することとなる。
【0009】
そこで、本発明は、アーク溶接における溶接安定性をリアルタイムで迅速且つ適切に判定し、その判定結果に応じて溶接電源を最適に制御し安定した状態でアーク溶接を行ない得るアーク溶接の最適制御方法及び装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明のアーク溶接の最適制御方法は、請求項1に記載のように、溶接電源によって母材と溶接電極との間に溶接電圧を印加して溶接電流を供給し、前記母材と前記溶接電極との間で短絡とアークを繰り返して溶接を行なうアーク溶接において、(A)前記溶接電源から前記母材及び前記溶接電極に入力する溶接電流であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電流及び短絡期溶接電流を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電流の積分値及び前記短絡期溶接電流の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電流の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電流積分値の標準偏差を乗じた第1の積Xを算出する工程、及び/又は、(B)前記溶接電源によって前記母材及び前記溶接電極に印加する溶接電圧であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電圧及び短絡期溶接電圧を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電圧の積分値及び前記短絡期溶接電圧の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電圧の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電圧の積分値の標準偏差を乗じた第2の積Yを算出する工程を有し、(C)前記第1の積X、第2の積Y又はこれらを掛合わせた値XYを溶接安定性指標W1とし、該溶接安定性指標W1を最小とするように前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御することとしたものである。
【0011】
このように、本発明はアーク溶接の短絡期とアーク期に着目し、その期間の電流波形と電圧波形の積分値の各標準偏差を演算し、これらを掛け合わせた積(X,Y又はXY)を溶接電源の出力溶接電圧及び溶接電流制御若しくはワイヤ送給量制御に使用しているが、これは短絡期とアーク期の相互関係が溶接品質に大きな影響を持っていることが経験上確認されたからである。
【0012】
すなわち、アーク溶接は短絡期とアーク期の交互繰返しによりなされるものであるから、アーク溶接の品質を決定する要因は短絡期とアーク期とで一対として把握されるべきであり、いずれか一方の電流・電圧データにのみ依存した制御では良好な溶接制御は困難であると考えられる。本発明はこのような仮説に立脚して前述の如く短絡期とアーク期の電流波形と電圧波形の積分値の各標準偏差を演算してこれら標準偏差を掛け合わせた積の値が、実験により得られた理想的な溶接状態での溶接安定性指標W1(基準指標値Kw1)からどの程度隔たっているかで溶接の良否を判断し、当該隔たりをゼロにすべく、溶接電源の出力溶接電圧及び溶接電流をフィードバック制御したところ、実際の溶接品質との整合性が非常に高いことが確認され、前記仮説が正しかったことが証明されたのである。な お、出力溶接電圧の増・減フィードバック制御に代えて、ワイヤ送給量の減・増フィードバック制御でも同様の結果が得られた。
【0013】
本発明はまた、請求項2に記載のように、前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期と短絡期の時間比率を演算すると共に、該アーク期と短絡期の時間比率の標準偏差を演算し、該時間比率の標準偏差を前記溶接安定性指標W1に掛合わせた値を新たな溶接安定性指標W2とし、該溶接安定性指標W2を最適溶接時に得られる同指標の値(基準指標値)と比較判定し、前記溶接安定性指標W2を前記基準指標値に近づけるべく前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御することとしてもよい。
【0014】
また、請求項3に記載のように、アーク溶接の開始点と終了点の間を複数の検出区間に分割し、各検出区間毎に最適溶接時に得られる指標W1又はW2の基準指標値を設定することとしてもよい。
【0015】
また、本発明のアーク溶接の最適制御装置は、請求項4に記載のように、溶接電源によって母材と溶接電極との間に溶接電圧を印加して溶接電流を供給し、前記母材と前記溶接電極との間で短絡とアークを繰り返して溶接を行なうアーク溶接装置において、(A)前記溶接電源から前記母材及び前記溶接電極に入力する溶接電流であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電流及び短絡期溶接電流を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電流の積分値及び前記短絡期溶接電流の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電流の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電流積分値の標準偏差を乗じた第1の積Xを算出する手段、及び/又は、(B)前記溶接電源によって前記母材及び前記溶接電極に印加する溶接電圧であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電圧及び短絡期溶接電圧を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電圧の積分値及び前記短絡期溶接電圧の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電圧の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電圧の積分値の標準偏差を乗じた第2の積Yを算出する手段を有し、(C)前記第1の積X、第2の積Y又はこれらを掛合わせた値XYを溶接安定性指標W1とし、該溶接安定性指標W1を最適溶接時に得られる同指標の基準指標値と比較判定し、前記溶接安定性指標W1を前記基準指標値に近づけるべく前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御する溶接電源制御手段とを備えることとしたものである。
【0016】
更に、本発明のアーク溶接の最適制御装置は、請求項5に記載のように、前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期と短絡期の時間比率の標準偏差を演算する演算手段と、該時間比率の標準偏差を前記溶接安定性指標W1に掛合わせた値を新たな溶接安定性指標W2とし、該溶接安定性指標W2を最適溶接時に得られる同指標の基準指標値と比較判定し、前記溶接安定性指標W2を前記基準指標値に近づけるべく前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御する判定制御手段を具備しても良い。
【0017】
また、本発明のアーク溶接の最適制御装置は、請求項6に記載のように、アーク溶接の開始点と終了点の間を複数の検出区間に分割し、各検出区間毎に最適溶接時に得られる指標W1又はW2の基準指標値を設定するようにしてもよい。
【0018】
尚、アーク溶接の開始から終了に至る溶接作動領域をスタート部、定常部及び終端処理部に大きく分割し、更に大部分を占める定常部を任意に分割し、該分割した複数の検出区間毎に、前記溶接安定性指標W1又はW2並びにアーク期と短絡期の出力溶接電圧値及び出力溶接電流値を演算し、それぞれの所定の目標値と比較判定し、比較判定結果に応じて前記溶接電源の出力を制御するように構成すれば、アーク溶接の開始から終了に至るまで、各検出区間毎により細かく適切な溶接電源制御を行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の望ましい実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接装置(以下、単にアーク溶接装置という)を示すもので、溶接電源装置1によって母材5と溶接電極たる溶接ワイヤ2との間に溶接電圧が印加され溶接電流が供給されると、母材5と溶接ワイヤ2との間で短絡とアークが繰り返され、両者が溶接される。溶接ワイヤ2はコイル状に巻回され、その先端部がコンタクトチップ4によって保持されており、送給ローラ3によって所定の速度で母材5方向に送給されるように構成されている。
【0020】
また、溶接電源装置1から母材5及び溶接ワイヤ2に供給される溶接電流を検出するため、溶接電流検出手段DTiが設けられており、アーク溶接における1周期毎に母材5と溶接ワイヤ2に供給されるアーク期溶接電流及び短絡期溶接電流が検出される。本実施形態では、溶接電圧検出手段DTvも設けられており、アーク溶接における1周期毎に母材5と溶接ワイヤ2に印加されるアーク期溶接電圧及び短絡期溶接電圧が検出される。
【0021】
更に、判定手段MTが設けられ、溶接電流検出手段DTiの検出溶接電流に基づきアーク期溶接電流の積分値及び短絡期溶接電流の積分値が演算されると共 に、各々の積分値の標準偏差が演算される。同様に、溶接電圧検出手段DTvの検出溶接電圧に基づきアーク期溶接電圧の積分値及び短絡期溶接電圧の積分値が演算されると共に、各々の積分値の標準偏差が演算される。更に、判定手段MTにおいては、必要に応じアーク溶接の1周期毎におけるアーク期と短絡期の時間比率が演算されると共に、この時間比率の標準偏差が演算される。
【0022】
そして、判定手段MTでは、アーク期溶接電流の積分値の標準偏差、短絡期溶接電流積分値の標準偏差、アーク期溶接電圧積分値の標準偏差、短絡期溶接電圧積分値の標準偏差及びアーク期と短絡期の時間比率の標準偏差が、必要に応じ適宜組み合わされてアーク溶接における溶接安定性指標が演算される。そして、この溶接安定性指標が所定の基準指標値(=実験により最適溶接状態で得られた溶接安定性指標)と比較されて母材5と溶接ワイヤ2の溶接安定性が判定される。このように、上記標準偏差を組み合わせて種々の溶接安定性指標を設定することができるが、電圧よりも電流の方が溶接品質に対する影響度が大きいので、少なくともアーク期溶接電流の積分値の標準偏差及び短絡期溶接電流の積分値の標準偏差を用い、両標準偏差の第1の積Xを溶接安定性指標として設定するのが望ましい。尚、図1に破線で示すように警報手段WGを設けることとすれば、判定手段MTの判定結果に基づき、アーク溶接不安定時には適宜警報を発することができる。また本実施形態では、上記の溶接安定性指標を、所定の基準指標値に対して所定の限度内で、且つアーク期と短絡期の所定の溶接電圧値及び溶接電流値を維持するように、溶接電源制御手段PCによって溶接電源装置1の出力溶接電圧及び溶接電流が制御される(必要に応じて電圧又は電流の何れか一方のみの制御も可能)。而して、判定手段に基づき、常に最適な状態で溶接作動を行なうことができる。
【0023】
また、本実施形態においては、図1に破線で示すように検出区間分割手段DSによって、溶接電流検出手段DTi及び溶接電圧検出手段DTvによる検出開始から終了までを複数の検出区間に分割することができるように構成されている。而して、判定手段MTにおいては、検出区間毎に溶接安定性指標を演算し、各溶接安定性指標を所定の基準指標値と比較判定することによって、母材5と溶接ワイヤ2の溶接安定性を検出区間毎に判定することができるので、検出区間毎の判定結果に応じて適切に溶接電源装置1の出力溶接電圧及び溶接電流を制御することができる。
【0024】
更に、本実施形態の判定手段MTにおいては、アーク溶接の開始から終了に至る溶接作動領域(これは溶接区間と表すこともできるが、上記の検出区間との混同を避けるために作動領域とする)が予め分割されている。即ち、アーク溶接開始直後のアークの状態は不安定であり定常部とは異なる特性を示すので、この溶接作動領域はスタート部として定常部とは区別される。一方、アーク溶接終了間際は、次のアークスタートを安定にするため溶接ワイヤが特有の時定数で繰出し速度を減衰させ、その間の惰走分を溶融させるために溶接安定性が不安定となり定常部とは異なる特性を示すので、この溶接作動領域は終端処理部として定常部と区別される。結局、本実施形態では、スタート部、定常部及び終端処理部の3つの溶接作動領域に溶接時間の設定により分割されており、各溶接作動領域毎に溶接安定性指標が演算され、且つ各溶接作動領域毎に基準指標値が設定される。而して各溶接作動領域の溶接安定性指標が各溶接作動領域の基準指標値と比較判定されて母材5と溶接ワイヤ2の溶接安定性が判定される。
【0025】
本実施形態において、図1に一点鎖線で囲繞した部分は、具体的には図2に示すように構成されている。即ち、バスを介して相互に接続されたプロセシングユニットCPU、メモリROM,RAM、入カインターフェースIT、出力インターフェースOT、並びにキーボード、ディスプレイ、プリンタ等の周辺機器(代表してOAで表す)が収容、装着されたコントローラ10が設けられており、このコントローラ10に溶接電流検出回路ID、溶接電圧検出回路VD、溶接電流調整回路IM及び溶接電圧調整回路VMが接続されている。溶接電流検出回路ID及び溶接電圧検出回路VDの出力信号はA/DコンバータADを介して夫々インターフェースITからプロセシングユニットCPUに入力されるように構成されている。
【0026】
また、出力インターフェースOTからは駆動回路ACを介して溶接電流調整回路IM及び溶接電圧調整回路VMに夫々制御信号が出力されるように構成されている。更に出力インターフェースOTからは駆動回路ACを介して警報手段WGに駆動信号が出力されるように構成されている。この警報手段WGとしては、ディスプレイ、スピーカ等種々の装置があるがどのような装置を用いても良い。而して、溶接電流検出回路ID及び溶接電圧検出回路VDが図1の溶接電流検出手段DTi及び溶接電圧検出手段DTvに包含され、溶接電流調整回路IM及び溶接電圧調整回路VMが図1の溶接電源制御手段PCに包含され、その他の手段はコントローラ10内で構成されている。コントローラ10においては、メモリROMは図5乃至図9に示したフローチャートを含む種々の処理に供するプログラムを記憶し、プロセシングユニットCPUは起動されている間当該プログラムを実行し、メモリRAMは当該プログラムの実行に必要な変数デー夕を一時的に記憶する。
【0027】
図3は上記コントローラ10の処理機能の一例を示したブロック図で、ここでは説明を容易にするため前述の溶接電圧検出手段DTv及びその関連機能等については省略している。先ず、ブロックB1及びB2では短絡とアークの繰り返しによるアーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電流IA(n) 及び短絡期溶接電流IS(n) が検出され、ブロックB3及びB4ではアーク期溶接電流の積分値∫IA(n)dt 及び短絡期溶接電流の積分値∫IS(n)dt が演算される。ブロックB5及びB6ではアーク期溶接電流の積分値及び短絡期溶接電流の積分値の各々の標準偏差σ( ∫IA(n)dt),σ( ∫IS(n)dt)が演算され、ブロックB7に て、少なくとも各々の溶接電流の積分値の標準偏差σ( ∫IA(n)dt),σ( ∫IS(n)dt)に基づき溶接安定性指標W1が演算され、この溶接安定性指標W1に基づき、母材5と溶接ワイヤ2の溶接安定性が判定される。また、ブロックB10及びB11では1 周期毎におけるアーク期溶接電流の平均値IA(n)ave及び短絡期溶接電流の平均値IS(n)aveが演算され、ブロックB12ではアーク期及び短絡期の出力溶接電流平均値が所定の目標値と比較判定される。尚、溶接安定性指標W1の演算に溶接電圧も用いる場合には、ブロックB1乃至B6に対応する溶接電圧に係るブロックが並設される。
【0028】
そして、ブロックB8にて、上記溶接安定性指標W1が実質的に最小で、且つアーク期と短絡期の溶接電圧平均値及び溶接電流平均値が所定の目標値に対して所定の限度内に維持されるように、溶接電源装置1の出力溶接電圧及び溶接電流が制御される。また、上記溶接安定性指標W1に基づき溶接状態が不安定又は不良と判定されたときには、ブロックB13にて警報が行われる。更に、図3で破線で示すブロックB9にて、検出開始から終了までを、(手動操作により)複数の検出区間に分割することとしてもよい。尚、前述のように、溶接作動領域 は、スタート部、定常部及び終端処理部に分割され、各領域の溶接安定性指標及び目標値(電流、電圧及びワイヤ送給量)が異なるが、これについては後述す る。
【0029】
図4は、アーク溶接時における溶滴の移行現象と、これに対応する溶接電圧及び溶接電流の波形を示している。溶接ワイヤ2と母材5との間に溶接電圧が印加され溶接電流が供給されると、短絡とアークの1周期で、図4の(A)から (H)に移行する。即ち、溶接ワイヤ2の先端及び母材5が溶接されて、夫々に溶滴2a及び溶融池5aが形成され、溶滴2aが溶融地5aに入り溶接金属(ビード)が形成される。このときの溶接電圧及び溶接電流は図4の上段及び下段に示すように変動する。同図に明らかなように、アークから短絡への移行、及び短絡からアークへの移行時には溶接電圧が急激に変化する。従って、図4にVaで表すアーク/短絡判定電圧を基準にアーク期と短絡期を峻別することができる。
【0030】
図4において、TS(n) はn周期目の短絡時間、TA(n) はn周期目のアーク時間、TS(n+1) は(n+1) 周期目の短絡時間、∫IS(n)dt はn周期目の短絡期溶接電流積分値、∫IA(n)dt はn周期目のアーク期溶接電流積分値、∫VS (n)dt はn周期目の短絡期溶接電圧積分値、∫VA(n)dt はn周期目のアーク期溶接電圧積分値を表す。尚、参考までに、アーク期平均電流IA(n)av 、短絡期平均電流IS(n)av 、アーク期平均電圧VA(n)av 及び短絡期平均電圧VS(n)av を破線で示した。
【0031】
上記のように構成された本実施形態においては、コントローラ10により溶接電流制御等の一連の処理が行なわれ、溶接電源装置1が起動されると図5乃至図9等のフローチャートに対応したプログラムの実行が開始する。図5は溶接作動全体の処理を示すもので、先ずステップ101において初期設定が行なわれ、サンプリング速度、トリガーレベル、アーク/短絡判定電圧等が例えばキーボード(図示せず)によって入力される。本実施形態のサンプリング速度は、溶接電源装置1の出力信号波形の判定も可能なように、溶接電源装置1の制御速度以上の(例えば、本実施形態では27kHz )に設定されているが、異なる値としてもよい。そして、溶接電圧がトリガーレベルに達すると溶接電圧及び溶接電流の入力が開始される。
【0032】
初期設定後、ステップ102にてアーク溶接が開始され、ステップ103に進み、スタート部のアーク溶接が行なわれる。そして、ステップ104においてスタート部のアーク溶接における溶接安定性が判定される。尚、ここで処理されるスタート部の溶接安定性判定については後述する。ステップ104における溶接安定性の判定結果に基づき、ステップ105にてスタート部のアーク溶接が安定と判定されると、ステップ106に進みスタート部の終了条件が判定される。終了条件の判定は初期設定のスタート部時間を経過したか否かで判定される。ここで、未だスタート部の終了条件が充足されていないと判定されればステップ104に戻り、スタート部が終了と判定されるとステップ108に進む。一方、ステップ105にてスタート部のアーク溶接が不安定と判定されると、ステップ107に進み警報信号が出力される。
【0033】
スタート部が終了すると、ステップ108において定常部となり、ステップ109aにて定常部のアーク溶接における溶接安定性が判定される。このステップ109aで処理される定常部の溶接安定性判定については図6を参照して後述する。またステップ109aと並列のステップ109bにて、アーク期と短絡期の出力溶接平均電圧と平均電流が目標値の範囲内か否か判定される。そしてステップ109aと109bの両方の判定結果に基づき、ステップ110にて溶接安定性指標と電圧電流の適否が総合判定され、適当と判定されるとステップ111に進み定常部の終了条件が判定される。ステップ110の総合判定は、出力溶接平均電圧又は電流のいずれか一方が不適であっても、溶接安定性指標が基準指標値のレベルであれば溶接安定としてステップ111に移行する。このステップ111で定常部が終了と判定されるとステップ114に進み終端処理部のアーク溶接が行われる。これに対し、定常部のアーク溶接に関し、未だ終了条件が充足されていないと判定されたときには、ステップ109aに戻る。また、ステップ110において溶接安定性指標及び電圧電流が不適当と判定されると、ステップ112に進み出力溶接電圧及び/又は出力溶接電流の制御によって、溶接安定性指標及び出力溶接平均電圧と平均電流を正常値に回復可能か否かが判定される。
【0034】
ステップ112において不安定状態が回復調整可能と判定された場合にはステップ113に進み、後述する溶接安定性指標を、所定の基準指標値に対して所定の限度内に維持するように、溶接電圧及び/又は溶接電流が制御されて、ステップ109a,109bに戻る。ステップ110にて定常部のアーク溶接が不安定と判定され、且つステップ112にて調整不可能と判定されると、ステップ107に進み警報信号が出力される。
【0035】
一方、ステップ111にて定常部のアーク溶接に関し終了条件が充足されたと判定されると、ステップ114に進み終端処理部となり、ステップ115にて終端処理部でのアーク溶接における溶接安定性が判定される。ステップ115における溶接安定性の判定結果に基づき、ステップ116にて終端処理部のアーク溶接が安定と判定されると、ステップ117に進み終端処理部の終了条件が判定される。ここで、未だ終端処理部の終了条件が充足されていないと判定されればステップ115に戻り、ステップ117にてアーク溶接が終了と判定されるとこの処理全体が終了する。一方、ステップ116にて終端処理部のアーク溶接が不安定と判定されると、ステップ107に進み警報信号が出力される。
【0036】
以上のように、本実施形態ではアーク溶接の開始から終了に至る溶接作動領域が予めスタート部、定常部及び終端処理部の3つに分割されるが、終端処理部は定常部とは異なる特性を示すものの、基準指標値を若干変更する程度で定常部の溶接安定性判定と同様に判定することができる。しかし乍ら、アーク溶接開始直後のアークの状態は不安定であるので、定常部の溶接安定性指標をスタート部にそのまま適用することはできない。従って、スタート部の溶接安定性判定は種々の判定手段を適宜組み合わせることによって行なう必要があるが、これについては後述する。
【0037】
尚、スタート部と終端処理部において不安定と判定されると、定常部のように調整を行なうことなく、直ちに警報信号を出力すると共に処理を終了させることとしたのは、スタート部と終端処理部は定常部と異なり、通常自動的に回復させることが困難であるからである。従って、溶接電圧及び溶接電流の制御等によって回復が容易である場合には、溶接作動を終了させることなく継続することとしてもよい。
【0038】
図6は上記ステップ109aにおける溶接安定性判定の処理内容を示すもの で、先ずステップ201において、定常部の溶接安定性判定に供するサンプリング回数j,sがクリアされる。続いて、ステップ202にて溶接電圧v(j)及び溶接電流i(j)が入力され、ステップ203において溶接電圧v(j)が所定のトリガーレベルVtと比較され、この値未満であればステップ204にてサンプリング回数jがインクリメントされてステップ202に戻る。このように、溶接電圧v(j)が所定のトリガーレベルVtに達するまで待機状態とされる。ステップ203において溶接電圧v(j)がトリガーレベルVt以上となったと判定されると、ステップ205に進みトリガー後の溶接電圧V(s)及び溶接電流I(s)として入力され、ステップ206にて夫々メモリRAMに格納され る。次に、ステップ207においてサンプリング回数sが所定回数Nsと比較され、これに達していないときには、ステップ208にてサンプリング回数sがインクリメントされた後、ステップ205に戻る。このようにして、所定回数Nsのサンプリングによって、トリガー後の溶接電圧V(s)及び溶接電流I(s)が抽出され、メモリRAMに格納される。
【0039】
次に、上記のように蓄積されたデータに基づき、ステップ209乃至212において、アーク期溶接電流の積分値(∫IA(n)dt )の標準偏差(σ1)、アーク期溶接電圧の積分値(∫VA(n)dt )の標準偏差(σ2)、短絡期溶接電流の積分値(∫IS(n)dt )の標準偏差(σ3)及び短絡期溶接電圧の積分値(∫VS(n)dt )の標準偏差(σ4)が演算される。尚、これらの演算の詳細については図7乃至図9を参照して後述する。更に、ステップ213において上記の標準偏差σ1乃至σ4の積が定数K1で除算され、溶接安定性指標W1が演算され る。そして、ステップ214にて溶接安定性指標W1が所定の基準指標値Kw1と比較され、この基準指標値Kw1以下であればアーク溶接が安定した状態で行なわれていると判定され、ステップ215に進み安定を表すフラグがセットされ、基準指標値Kw1を越えている場合にはアーク溶接が不安定あるいは不良と判定さ れ、ステップ216に進み不安定/不良を表すフラグがセットされる。而して、これらのフラグに基づき、前述のステップ110において溶接安定性指標W1が基準内か否かが判定される。なお、出力溶接電圧及び出力溶接電流は、後述の図10,図11で説明するように、溶接安定性指標が常に所定の最小値(基準指標値Kw1)に近づくように設定制御するのがベストであるが、制御回路の負荷を軽減するために、W1がKw1≦W1≦Kw1+αの範囲内にあれば(αは例えばKw1の数%に設定する)、実質的にW1が最小値(溶接安定)と見なして出力溶接電圧及び出力溶接電流の増減制御をパスするのが現実的である。
【0040】
図7は、ステップ209にて演算されるアーク期溶接電流の積分値(∫IA (n)dt )の標準偏差(σ1)の演算処理の詳細を示すもので、ステップ301にて溶接電圧V(s)及び溶接電流I(s)のサンプリングが開始され、この演算に供するカウンタがクリア(0)された後カウントを開始する。続いて、ステップ302にてカウント開始後の経過時間tai が所定の時間T1となったか否かが判定され、所定の時間T1に達するまで待機される。サンプリング開始後所定の時間T1以上となるとステップ303乃至307の処理が行なわれ、所定の時間T2に達するまでこの処理が繰り返される(ステップ308)。即ち、定常部の溶接安定性判定開始時間T1から判定終了時間T2までの間に溶接ワイヤ2と母材5との間に供給される溶接電流I(s)がサンプリングされる。
【0041】
ステップ303においてはサンプリング溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Va以上となったか否かが判定され、アーク/短絡判定電圧Va以上であればステップ304に進みサンプリングk周期目のアーク期溶接電流IA(k) の測定が開始され、溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Vaを下回るまで測定される。ここで「k」はサンプリングの周期の順番を表すもので、所定のサンプリング周期で自動的に測定が続行される。即ち、ステップ303で溶接電圧V (s)がアーク/短絡判定電圧Va以上となった時から所定サンプリング周期でアーク期溶接電流IA(k) の測定が開始され(ステップ304)、ステップ305にて溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Vaを下回ると、次のステップ306にてサンプリングk周期目のアーク期溶接電流IA(k) の測定が終了す る。
【0042】
そして、ステップ307にてkがインクリメントされた後、ステップ308にてサンプリング開始後の経過時間tai が所定の時間T2以上となったか否かが判定される。経過時間tai が所定の時間T2未満と判定されるとステップ303に戻り、次の周期のアーク期溶接電流IA(k+1)の測定が行なわれる。一方、ステップ303において溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Va未満と判定されたときにはアーク期ではなく短絡期であるのでそのままステップ308に進む。このようにして、上記ステップ303乃至307の処理が所定の時間T2を経過するまで繰り返される。
【0043】
而して、ステップ308にてサンプリング開始後の経過時間tai が所定の時間T2以上となったと判定されるとステップ309に進み、所定の時間T1,T2間のアーク期溶接電流IA(k) が積分され、アーク・短絡n周期目のアーク期溶接電流積分値(∫IA(n)dt )が演算される。そして、ステップ310においてアーク期溶接電流積分値(∫IA(n)dt )の標準偏差(σ1)が演算される。
【0044】
上記アーク期溶接電流積分値(∫IA(n)dt )は、図4に斜線で示したアーク・短絡1周期毎のアーク期溶接電流波形と時間軸で囲まれた部分の面積に相当し、その標準偏差σ(∫IA(n)dt )はアーク期溶接電流とアーク時間のバラツキを同時に表す指標となる。従って、アーク期溶接電流積分値(∫IA(n)dt )の標準偏差(σ1) が大きくなるということは、短絡現象が略継続する瞬間アークや短絡に至らない長期アーク現象の発生等により溶滴移行が不安定となっていることを意味し、この標準偏差(σ1)が小さいほど溶滴移行がスムーズで安定していることを示す。
【0045】
これに対して従来技術の特公平6−53309号は、短絡期とアーク期の平均電流の標準偏差を使用して溶接性指数を算出し、時間のバラツキは考慮されていないので、その分溶滴移行の不安定性に関して現実とは食違った判定が頻繁になされる可能性が大である。
【0046】
図8は、ステップ211にて演算される短絡期溶接電流の積分値(∫IS
(n)dt )の標準偏差(σ3)の演算処理の詳細を示すもので、ステップ401にて溶接電圧V(s)及び溶接電流I(s)のサンプリングが開始され、この演算に供するカウンタがクリア(0)された後カウントを開始する。続いて、ステップ402にてカウント開始後の経過時間tsi が所定の時間T1となったか否かが判定され、所定の時間T1に達するまで待機される。サンプリング開始後所定の時間T1以上となるとステップ403乃至407の処理が行なわれ、所定の時間T2に達するまでこの処理が繰り返される(ステップ408)。
【0047】
ステップ403においてはサンプリング溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Vaを下回ったか否かが判定され、アーク/短絡判定電圧Vaを下回っていればステップ404に進みサンプリングk周期目の短絡期溶接電流IS(k) の測定が開始され、ステップ405にて溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Va以上となると、ステップ406にて短絡期溶接電流IS(k) の測定が終了す る。そして、ステップ407にて周期kがインクリメントされた後、ステップ408にてサンプリング開始後の経過時間tsi が所定の時間T2以上となったか否かが判定される。経過時間tsi が所定の時間T2未満と判定されるとステップ403に戻り、次の周期の短絡期溶接電流IS(k+1)の測定が行なわれる。一 方、ステップ403において溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Va以上と判定されたときには短絡期ではなくアーク期であるのでそのままステップ408に進む。このようにして、上記ステップ403乃至407の処理が所定の時間T2を経過するまで繰り返される。
【0048】
ステップ408にてサンプリング開始後の経過時間tsi が所定の時間T2以上と判定されるとステップ409に進み、所定の時間T1,T2間の短絡期溶接電流IS(k) が積分され、アーク・短絡n周期目の短絡期溶接電流積分値(∫IS(n)dt )が演算される。そして、ステップ410において短絡期溶接電流積分値(∫IS(n)dt )の標準偏差(σ3)が演算される。
【0049】
上記短絡期溶接電流積分値(∫IS(n)dt )は、図4に斜線で示したアーク・短絡1周期毎の短絡期溶接電流波形と時間軸で囲まれた部分の面積に相当し、その標準偏差σ(∫IS(n)dt )は短絡期溶接電流と短絡時間のバラツキを同時に表す指標となる。従って、短絡期溶接電流積分値(∫IS(n)dt )の標準偏差 (σ3)が大きくなるということは、溶滴移行が殆ど行なわれない瞬間短絡や短絡現象が解放されない長期短絡の発生等により短絡現象が不安定となっていることを意味し、この標準偏差(σ3)が小さいほど短絡現象が安定し溶滴移行がスムーズに周期的に行なわれていることを示す。
【0050】
尚、図示は省略するが、アーク期溶接電流の積分値の標準偏差に短絡期溶接電流の積分値の標準偏差を乗じた第1の積Xと、アーク期溶接電圧の積分値に短絡期溶接電圧の積分値の標準偏差を乗じた第2の積Yとを掛合わせた値XYを溶接安定性指標とする場合は、図7及び図8の処理と同様に、アーク期溶接電圧の積分値(∫VA(n)dt )の標準偏差(σ2)及び短絡期溶接電圧の積分値(∫VS(n)dt )の標準偏差(σ4)も夫々演算される。
【0051】
なお、前記掛合わせた値XYを溶接安定性指標とせずに、第1の積X又は第2の積Yの一方を溶接安定性指標とした場合でも、溶滴移行の安定性を比較的正確に把握した適切な制御を行なうことができる。従って、このような制御方法では制御に要するメモリ容量を小さくすることができ、安価な制御装置とすることが可能である。
【0052】
上記の標準偏差σ1乃至σ4に加え、アーク/短絡時間比率(TA(n) /TS(n) )の標準偏差(σ5)を演算し、これらを適宜組み合わせることによって、種々の溶接安定性指標を設定することができる。図9はアーク/短絡時間比率 (TA(n) /TS(n) )の標準偏差(σ5)の演算処理を示すもので、ステップ501にて溶接電圧V(s)及び溶接電流I(s)のサンプリングが開始され、この演算に供するカウンタがクリア(0)された後カウントを開始する。続い て、ステップ502にてカウントを開始した後の経過時間tas が所定の時間T1となったか否かが判定され、所定の時間T1に達するまで待機される。サンプリング開始後所定の時間T1以上となるとステップ503乃至509の処理が行なわれ、所定の時間T2に達するまでこの処理が繰り返される(ステップ51 0)。
【0053】
上記アーク/短絡時間比率(TA(n) /TS(n) )の標準偏差(σ5)が大きくなるということは、瞬間アーク、長期アーク、瞬間短絡、長期短絡等の発生により溶滴移行が不安定となっていることを意味し、この標準偏差(σ5)が小さいほど溶滴移行が安定していることを示す。
【0054】
ステップ503においては、溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Va以上となったか否かが判定され、アーク/短絡判定電圧Va以上であればステップ504に進みアーク期のカウンタのカウント時間takがクリア(0)された後、アーク期の時間(アーク時間)の測定が開始する。この後、溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Vaを下回るまで測定され、ステップ505にてアーク/短絡判定電圧Vaを下回ったと判定されるとステップ506に進み、そのときのカウント時間takがアーク時間TA(k) とされる。一方、ステップ503で溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Vaを下回ったと判定されると、ステップ507に進み短絡期のカウンタのカウント時間tskがクリア(0)された後、短絡期の時間(短絡時間)の測定が開始する。この後、溶接電圧V(s)がアーク/短絡判定電圧Va以上となるまで測定され、ステップ508にてアーク/短絡判定電圧Va以上と判定されるとステップ509に進み、そのときのカウント時間tskが短絡時間TS(k) とされる。
【0055】
上記ステップ503乃至509においてアーク時間TA(k) 及び短絡時間TS(k) の測定は、所定の時間T2を経過するまで繰り返される。即ち、ステップ510にてサンプリング開始後の経過時間tas が所定の時間T2以上か否かが判定され、所定の時間T2未満と判定されると、ステップ511にて周期kがインクリメントされてステップ503に戻り、次の周期のアーク時間TA(k+1)及び短絡時間TS(k+1)が演算される。サンプリング開始後の経過時間tan が所定の時間T2以上となるとステップ510からステップ512に進み、アーク・短絡n周期目のアーク時間TA(n) と短絡時間TS(n) の時間比率(TA(n) /TS(n) )が演算される。そして、ステップ513においてアーク/短絡時間比率(TA(n) /TS(n) )の標準偏差(σ5)が演算される。而して、このアーク/短絡時間比率標準偏差(σ5)と前述の標準偏差σ1乃至σ4を適宜組み合わせることにより、以下のように溶接安定性指標W2a乃至W2bを設定することができる。
【0056】
例えば、アーク期溶接電流の積分値(∫IA(n)dt )の標準偏差(σ1)と、短絡期溶接電流の積分値(∫IS(n)dt )の標準偏差(σ3)及び時間比率(TA(n) /TS(n) )の標準偏差(σ5)の積が定数K2で除算されて溶接安定性指標W2aが演算される(W2a=σ1・σ3・σ5/K2)。また、アーク期溶接電圧の積分値(∫VA(n)dt )の標準偏差(σ2)と、短絡期溶接電圧の積分値(∫VS(n)dt )の標準偏差(σ4)及び時間比率(TA(n) /TS(n) )の標準偏差(σ5)の積が定数K3で除算されて溶接安定性指標W2bが演算される(W2b=σ2・σ4・σ5/K3)。
【0057】
最も簡単な組合せとして、アーク期溶接電流の積分値(∫IA(n)dt )の標準偏差(σ1)及び短絡期溶接電流の積分値(∫IS(n)dt )の標準偏差(σ3)の積が定数K4で除算された溶接安定性指標W1a(=σ1・σ3/K4)を用いることとしてもよい。尚、定数K1乃至K4は溶接安定性指標W1、W1a、W2a、W2bを実用的な値に設定するために用いられている。
【0058】
以上のように、溶接安定性指標W1,W1a,W2a及びW2bは前述の積分値又は時間比率の標準偏差の積で表されているので、この値が大きい場合にはアーク溶接における均一性が悪いことになり、アーク溶接時の溶接安定性の良否を定量的に判定することができる。これらの溶接安定性指標W1,W1a,W2a及びW2bは、要求される溶接品質に応じて適宜選択される。例えば、溶接安定性指標W1は演算速度は遅くなるが、厳しい溶接品質が要求される場合に好適であり、溶接安定性指標W1a は演算速度が要求される場合に好適であり、溶接安定性指標W2a は溶滴移行の不安定性を精度良く検出することができ、溶接安定性指標W2bはアーク切れ等によるアーク現象の不安定性を精度良く検出することができる。勿論、前掲の全ての標準偏差σ1乃至σ5を用いて、σ1・σ2・σ3・σ4・σ5/K5としてもよいが、それだけ演算処理が多くなり、演算速度が遅くなるので、このような制御は最も厳しい溶接品質が要求される場合などに事実上限定される。
【0059】
図10及び図11は溶接施工条件を変化させたときの溶接安定性指標に基づき適正溶接電圧及び溶接電流を判定する実験結果を示すもので、Wの値は下に凸の最小値を持った曲線となり、その最小値を示す溶接電圧・電流値が、最良の溶接品質が得られる適正溶接電圧・電流値と一致することが確認された。
【0060】
黒角点と白角点は溶接施工条件が異なる場合を表し、破線(黒角点)と実線 (白角点)は夫々を代表する曲線であるが、黒角点の場合はバラツキが大で破線で代表させることは困難である。これらの図10、図11から明らかなように、溶接安定性指標曲線は溶接施工条件毎の固有の曲線となるが、溶接電圧及び溶接電流の余裕度が広く、換言すると下に凸の屈曲度が緩やかであり、アーク溶接における溶接安定性が良好な、実線のような特性を示した溶接施工条件が選択される。また、このようにして設定された溶接施工条件に対し、溶接後の判定が異なった場合には、溶接安定性指標が、設定された最小値に近づくように溶接電圧及び溶接電流を自動的に調整することができ、更に、調整後の溶接安定性指標を演算することにより、調整が正しく行なわれたか否かの判定も可能となる。
【0061】
溶接電圧及び溶接電流は、以上のように溶接安定性指標が所定の最小値(基準指標値)に近づくように設定するのであるが、アーク溶接の開始点と終了点の間の複数の検出区間毎に、最適な溶接電圧及び溶接電流を設定するのが望ましい。また、溶接電圧及び溶接電流に加えて、ワイヤ送給量も制御対象とすることができる。すなわち、溶接電圧・溶接電流を増加させる代わりにワイヤ送給量を減少させたり、この反対に電圧・電流を減少させる代わりにワイヤ送給量を増加させても溶接安定性指標に関して同様の結果が得られるから、溶接安定性指標W1又はW2が最小となるときの溶接電源の出力溶接電圧、溶接電流及びワイヤ送給量の所定の組合わせを予め目標値と定めてこれらを制御するようにしてもよい。
【0062】
スタート部における溶接安定性の判定は、上記の定常部とは異なり、以下の指標が必要となる。先ず、溶接ワイヤと母材が短絡するまでの時間が「無負荷電圧時間」と呼ばれるが、この時間が短すぎると充分なアークが形成されない。このため、本実施形態では、無負荷電圧時間の積算値を基準値と比較し、その差が予め設定した許容範囲を越えたときに異常と判定することとしている。次に、高電圧を印加した溶接ワイヤと母材が短絡した際、瞬時に絶縁破壊が発生せずアーク放電に移行しない現象が「ワイヤスティック」と呼ばれる。このワイヤスティックが生じたときには溶接ワイヤと母材とが短絡しているので短絡電流が流れる。このため、アーク電圧はアーク放電時に比べると低くなることに鑑み、本実施形態では、無負荷電圧時間終了直後のアーク電圧の判定により、アーク放電が生ずるまでの積算時間をワイヤスティック時間とし、これを基準値と比較し、その差が予め設定した許容範囲を越えたときに異常と判定することとしている。
【0063】
更に、アークスタート時に短絡時間が長く続き、長期短絡と定義される状態となると、これを解放するための溶接電源装置1による波形制御によって過大な短絡電流が流れ、アーク再生時に大粒のスパッタが発生しアークが瞬間的に途切れることになる。また、アーク期が長期にわたる場合にもアークが瞬間的に途切れることがある。本実施形態では、このようなアーク途切れ時間の設定時間内における積算時間を基準値と比較し、その差が予め設定した許容範囲を越えたときにアーク途切れ時間異常と判定することとしている。
【0064】
而して、本実施形態においては、スタート部における溶接安定性指標として、上記ワイヤスティック時間、アーク途切れ時間、長期短絡時間及び無負荷電圧時間、並びにこれらにアークスタート電流立上り速度を加え、5つの指標を用意 し、何れかの指標と基準値との差が予め設定した許容範囲を越えたときに不安定又は不良と判定することとしている。尚、アークスタート電流立上り速度は、無負荷電圧時間終了後から所定時間T3(例えば、0.1 msec )までの間に溶接ワイヤ2及び母材5に流れる溶接電流の増加速度である。
【0065】
このように、スタート部においては定常部とは異なる指標が用いられるが、前述のように本実施形態では予め溶接作動領域を設定しておき、各溶接作動領域に応じて順次、溶接安定性の判定が行なわれるので最適な状態でアーク溶接が行なわれる。
【0066】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のアーク溶接の最適制御方法及び最適制御装置においては、請求項1及び4に記載のように、アーク溶接の短絡期とアーク期の電流波形及び電圧波形の積分値の各標準偏差を演算し、これらを掛け合わせた積(X,Y又はXY)を溶接安定性指標とし、これを最小とするように溶接電源の出力溶接電圧及び溶接電流の制御若しくはワイヤ送給量を制御するように構成したので、アーク溶接時の溶接安定性をリアルタイムで迅速且つ適切に判定し、安定した状態で自動的にアーク溶接を行うことができる。しかも、アーク期溶接電流の積分値の標準偏差に短絡期溶接電流の積分値の標準偏差を乗じた第1の積X又はアーク期溶接電圧の積分値に短絡期溶接電圧の積分値の標準偏差を乗じた第2の積Yの一方という、少ない指標に基づいて演算した溶接安定性指標でも適切な制御を行なうことができるの で、制御に要するメモリ容量を小さくすることができ、安価な装置とすることができる。
【0067】
そして、アーク溶接における溶接安定性指標は、更にアーク期と短絡期の時間比率の標準偏差も加え、請求項2及び5に記載のように設定することができ、例えば、時間比率の標準偏差を前記第1の積Xに乗じて演算した溶接安定性指標により、定量的に溶滴移行状態の不安定性を精度良く検出することができ、また時間比率の標準偏差を前記第2の積Yに乗じて演算した溶接安定性指標により、定量的にアーク切れ等によるアーク現象の不安定性を精度良く検出することができるため、加工歪みあるいは熱歪み等によって溶接状態が変化してもそれらに応じ適正溶接電圧値及び溶接電流値に設定し、常に安定した溶接品質の確保が可能となる
【0068】
更に、請求項3及び6に記載のようにアーク溶接の開始点と終了点の間を複数の検出区間に分割し、検出区間毎に溶接安定性指標を演算し、それぞれの所定の基準指標値と比較判定し、比較判定結果に応じて検出区間毎に溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御するように構成したの で、常に安定した溶接品質の確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアーク溶接の最適制御装置の一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるコントローラ内の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明のアーク溶接の最適制御装置の一実施形態の機能ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるアーク溶接作動状態を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態におけるアーク溶接作動の全体処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における定常部における溶接安定性判定の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態におけるアーク期溶接電流の積分値の標準偏差の演算処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態における短絡期溶接電流の積分値の標準偏差の演算処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態におけるアーク/短絡時間比率の標準偏差の演算処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態において溶接施工条件を変化させたときの溶接安定性指標に基づき適正溶接電圧を判定する実験結果の一例を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施形態において溶接施工条件を変化させたときの溶接安定性指標に基づき適正溶接電流を判定する実験結果の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 溶接電源装置
2 溶接ワイヤ
5 母材
10 コントローラ
AC 駆動回路,
AD A/Dコンバータ
CPU プロセシングユニット,
IT 入カインターフェース,
OT 出力インターフェース

Claims (8)

  1. 溶接電源によって母材と溶接電極との間に溶接電圧を印加して溶接電流を供給し、前記母材と前記溶接電極との間で短絡とアークを繰り返して溶接を行なうアーク溶接において、
    (A)前記溶接電源から前記母材及び前記溶接電極に入力する溶接電流であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電流及び短絡期溶接電流を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電流の積分値及び前記短絡期溶接電流の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電流の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電流積分値の標準偏差を乗じた第1の積Xを算出する工程、及び/又は、
    (B)前記溶接電源によって前記母材及び前記溶接電極に印加する溶接電圧であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電圧及び短絡期溶接電圧を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電圧の積分値及び前記短絡期溶接電圧の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電圧の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電圧の積分値の標準偏差を乗じた第2の積Yを算出する工程を有し、
    (C)前記第1の積X、第2の積Y又はこれらを掛合わせた値XYを溶接安定性指標W1とし、該溶接安定性指標W1を最小とするように前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御することを特徴とするアーク溶接の最適制御方法。
  2. 前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期と短絡期の時間比率を演算すると共に、該アーク期と短絡期の時間比率の標準偏差を演算し、該時間比率の標準偏差を前記溶接安定性指標W1に掛合わせた値を新たな溶接安定性指標W2とし、該溶接安定性指標W2を最小とするように前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御することを特徴とする請求項1記載のアーク溶接の最適制御方法。
  3. アーク溶接の開始点と終了点の間を複数の検出区間に分割 し、各検出区間毎に最適溶接時に得られる前記指標W1又はW2の基準指標値を設定することを特徴とする請求項1又は2記載のアーク溶接の最適制御方法。
  4. 溶接電源によって母材と溶接電極との間に溶接電圧を印加して溶接電流を供給し、前記母材と前記溶接電極との間で短絡とアークを繰り返して溶接を行なうアーク溶接装置において、
    (A)前記溶接電源から前記母材及び前記溶接電極に入力する溶接電流であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電流及び短絡期溶接電流を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電流の積分値及び前記短絡期溶接電流の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電流の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電流積分値の標準偏差を乗じた第1の積Xを算出する手段、及び/又は、
    (B)前記溶接電源によって前記母材及び前記溶接電極に印加する溶接電圧であって前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期溶接電圧及び短絡期溶接電圧を所定の周波数でサンプリングして検出し、前記アーク期溶接電圧の積分値及び前記短絡期溶接電圧の積分値を演算すると共に、該各々の積分値の標準偏差を演算し、前記アーク期溶接電圧の積分値の標準偏差に前記短絡期溶接電圧の積分値の標準偏差を乗じた第2の積Yを算出する手段を有し、
    (C)前記第1の積X、第2の積Y又はこれらを掛合わせた値XYを溶接安定性指標W1とし、該溶接安定性指標W1を最小とするように前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御する制御手段を有することを特徴とするアーク溶接の最適制御装置。
  5. 前記アーク溶接の1周期毎におけるアーク期と短絡期の時間比率の標準偏差を演算する演算手段と、
    該時間比率の標準偏差を前記溶接安定性指標W1に掛合わせた値を新たな溶接安定性指標W2とし、該溶接安定性指標W2を最小とするように前記溶接電源の出力溶接電圧及び/又は溶接電流若しくはワイヤ送給量を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項4記載のアーク溶接の最適制御装置。
  6. アーク溶接の開始点と終了点の間を複数の検出区間に分割 し、各検出区間毎に最適溶接時に得られる前記指標W1又はW2の基準指標値を設定することを特徴とする請求項4又は5記載のアーク溶接の最適制御装置。
  7. 前記溶接安定性指標W1又はW2が最小となるときの前記溶接電源の出力溶接電圧、溶接電流及びワイヤ送給量の所定の組合わせを予め目標値と定めてこれらを制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のアーク溶接の最適制御方法。
  8. 前記溶接安定性指標W1又はW2が最小となるときの前記溶接電源の出力溶接電圧、溶接電流及びワイヤ送給量の所定の組合わせを予め目標値と定めてこれらを制御することを特徴とする請求項4から6のいずれか記載のアーク溶接の最適制御装置。
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