JP4642266B2 - パルスアーク溶接の溶接安定性判定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、消耗電極式ガスシールドアーク溶接の内、パルスアーク溶接による溶接開始時の溶接安定性を判定する装置に関する。
【従来の技術】
消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接法は、図8の模式図に示すように、溶接ワイヤに一定周期のパルス電流を流し、溶接ワイヤと被溶接部との間に形成されるアーク放電の入熱により溶接ワイヤ先端部を溶融し、この溶融部をパルス電流による電磁ピンチ力で絞り出すことにより、溶接ワイヤ先端部から溶滴を離脱させ、被溶接部へ溶滴を滴下移行させるものであり、最適な溶接条件の下での安定した溶接状態では、1パルス→1ドロップの溶滴移行形態を取る。
【0002】
このパルスアーク溶接法では、近時、インバータ溶接電源の進歩により出力電流の高速制御を行ないながら出力電圧を細かくフィードバック制御することで1パルス→1ドロップの溶滴移行が可能となり、これにより溶接の低スパッタ化、溶接状態の規則的再現性向上および高速溶接性向上等が図れるようになりつつある。
【0003】
しかし、溶接開始時は未加熱で冷えたままの溶接ワイヤと被溶接材が突然接触するため安定したアーク放電が形成されない。そのため種々の溶接異常現象が発生し易く、溶接ロボット等による自動溶接ラインで大きな問題となっている。
【0004】
例えば、溶接開始時に起き易い溶接異常現象の一つとしてワイヤスティック現象がある。この現象は高電圧を給電した溶接ワイヤと被溶接材とが短絡した際に瞬時に絶縁破壊が発生せずアーク放電に移行しない現象であって、放電回路を構成する被溶接材の接地不良や、溶接ワイヤへの給電不良又は溶接ワイヤ先端の酸化玉に起因して発生する。ワイヤスティック現象発生後も溶接ワイヤは送給され続け、短絡電流は流れ続けるが、アーク放電が行われないため溶接ビードが出来ず、ワイヤスティック時間分だけビード欠落が発生し、溶接開始部の溶接不良となる。
【0005】
また溶接開始時に起き易い他の溶接異常現象としてアーク途切れ現象がある。この現象は、溶接開始時にワイヤスティックのような長期短絡現象が発生すると短絡を解放させる過大な短絡電流が流れる結果、アーク再生時に過大なスパッタが発生したり、溶接ワイヤが吹き飛ばされるなどしてアークが瞬間的に途切れる現象である。このアークが瞬間的に途切れる時間を「アーク途切れ時間」と呼びこの場合もアーク放電が適切に行われないため、溶接ビードが出来ず、アーク途切れ時間分だけビード欠落が発生し、溶接開始部の溶接不良となる。
【0006】
このような異常現象を抑制するための対策として、▲1▼定期的に溶接ワイヤ送給経路を清掃すること、▲2▼溶接ワイヤコンジットケーブルを定期的に交換すること、▲3▼コンタクトチップを定期的に交換すること、▲4▼溶接欠陥が発生してから前記対策を実施すること等が実施されているが、溶接異常現象は溶接開始直後の僅かな時間で収束してしまうので、溶接終了後に溶接ビード外観を目視検査しても、微小な異常の場合の判定が難しく、個人差による誤判定の可能性もあり、インラインでの統一的判定基準を求めることが困難であった。
【0007】
一方、前述の消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接法とは異なる消耗電極式ガスシールド短絡アーク溶接においては、溶接開始時の溶接安定性を判定するための方法が本願出願人により特開平11―123546号公報などで提案されている。
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この短絡アーク溶接法は溶滴移行の形態がパルスアーク溶接法とはまったく異なるので、前記公報記載の技術をそのままパルスアーク溶接法での溶接開始時の溶接安定性判定に使用することはできない。
【0008】
すなわち、短絡アーク溶接法は図7の模式図に示すように、消耗電極(以下溶接ワイヤと言う)の先端部をアーク放電の入熱により溶融し、この溶融部を高い電流密度による電磁ピンチ力により溶接ワイヤの先端部から溶滴として離脱させて被溶接部へと短絡移行させるものであり、短絡現象による溶滴の「接触移行」形態を取るものである。そのため、溶接開始時の溶接電流波形は基本的に不安定かつ非周期的であるから、その中から前述した異常現象の関連指標を抽出することは、「不安定波形」の中の異常現象に関連した「不安定波形」部分を分離抽出することになり、非常な困難性を伴うことが判明した。このため、従来は短絡アーク溶接法では異常現象の関連指標を抽出せず、前述の不安定で非周期的な溶接電流波形の中からアーク現象の安定性に関連した指標を抽出することにむしろ重点が置かれてきた。
【0009】
そのため、両溶接法で溶接欠陥発生時の現象は同じであるものの、前述の如く溶滴移行形態がまったく異なり、従って溶接欠陥に至るまでのプロセスも異なり溶接開始時の溶接安定性評価のために共通の判定指標を使用できないことが判明した。
【0010】
因みに、特開平11―123546号公報記載の短絡アーク溶接法に於ける溶接開始時の溶接安定性判定方法を、パルスアーク溶接法での同様の判定に適用しても、周期的なパルス波形の中から瞬間的なアークの不安定現象を定量的に検出することが難しく、正確な判定をすることができない。
【0011】
以上のように、短絡アーク溶接法における溶接開始時の溶接安定性判定方法はパルスアーク溶接法での同様の判定に使用することができず、アーク溶接ロボット等による自動溶接ライン及び半自動溶接ラインにおける溶接開始時の溶接現象の不安定状態に起因して発生する溶接品質不良の流出防止を図る上で、依然として大きな問題となっていた。
【0012】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたもので、消耗電極式パルスアーク溶接における溶接開始時の溶接不安定現象を定量的且つ正確に捉えることにより、パルスアーク溶接の溶接安定性良否を的確且つ迅速に判定する判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の請求項1に係るパルスアーク溶接の溶接安定性判定装置は、溶接電極と被溶接材との間に溶接電圧を印加してパルス・ベース電流を交互に繰り返し供給し、前記溶接電極から溶滴を1パルス毎に被溶接材上に滴下させながら溶接する消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接に於いて、パルスアーク溶接開始時の前記溶接電極と被溶接材間の溶接電流を検出する溶接電流検出手段と、前記溶接電流検出手段により検出される溶接電流からパルス周期毎のパルス電流積分値とベース電流積分値を演算すると共に前記2つの積分値の各標準偏差の積を前記溶接電流の乱れ度として演算する演算手段と、前記乱れ度を正常なパルスアーク溶接開始時の乱れ度と比較して両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
上記の溶接安定性判定装置によれば、パルスアーク溶接開始時に於ける溶接安定性の指標として、パルス周期毎のパルス電流積分値とベース電流積分値の各標準偏差の積が取上げられている。この指標は、パルス電流とベース電流の均一性並びにパルス時間とベース時間の均一性の両方が同時に評価されるものであり、この指標の値が小さいほど、パルスアーク溶接開始時に於ける溶滴の移行現象が安定していることを示すものである。
【0014】
また、本発明の請求項2に係るパルスアーク溶接の溶接安定性判定装置は、溶接電極と被溶接材との間に溶接電圧を印加してパルス・ベース電流を交互に繰り返し供給し、前記溶接電極から溶滴を1パルス毎に被溶接材上に滴下させながら溶接する消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接に於いて、パルスアーク溶接開始時のパルス期とベース期の通電時間を検出する通電時間検出手段と、前記通電時間検出手段により検出されるパルス周期毎のパルス期通電時間とベース期通電時間から前記2つの通電時間の標準偏差を演算すると共に、各標準偏差の積を前記パルス期とベース期の通電時間の乱れ度として演算する演算手段と、前記乱れ度を正常なパルスアーク溶接開始時の乱れ度と比較して両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
上記の溶接安定性判定装置によれば、パルスアーク溶接開始時に於ける溶接安定性の指標として、パルス周期毎のパルス期通電時間とベース期通電時間の各標準偏差の積が取上げられている。この指標は、パルス時間とベース時間の均一性が更に精度良く評価されるものであり、この指標の値が小さいほど、前述と同じくパルスアーク溶接開始時に於ける溶滴の移行現象が安定していることを示すものである。
【0015】
また、本発明の請求項3に係るパルスアーク溶接の溶接安定性判定装置は、溶接電極と被溶接材との間に溶接電圧を印加してパルス・ベース電流を交互に繰り返し供給し、前記溶接電極から溶滴を1パルス毎に被溶接材上に滴下させながら溶接する消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接に於いて、パルスアーク溶接開始時の前記溶接電極と被溶接材間の溶接電流を検出する溶接電流検出手段と、前記溶接電流検出手段により検出される溶接電流から1パルス毎のパルス電流積分値を演算すると共に、前記パルス電流積分値の標準偏差と正常溶接時パルス電流積分値の標準偏差の比を前記溶接電流の乱れ度として演算する演算手段と、前記乱れ度を正常なパルスアーク溶接開始時の乱れ度と比較して両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
上記の溶接安定性判定装置によれば、パルスアーク溶接開始時に於ける溶接安定性の指標として、パルス周期毎のパルス電流積分値と正常溶接時パルス電流積分値の各標準偏差の比が取上げられている。
この指標は、現在の溶滴の滴下状態が最適の滴下状態と比較して、どの程度外れているかが評価されるものであり、この指標の値が小さいほど、パルスアーク溶接開始時に於ける溶滴の滴下状態が良好であることを示すものである。
【0016】
以上の請求項1〜3に取上げた3種の指標は、上述のようにパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定するためには重要な指標であるので、これ等の3種の指標の値を全て演算し、それぞれの基準値と比較して溶接安定性の良否を判定するのが望ましいが、場合によっては、これ等の3種の指標のうち、1種又は2種の指標について演算し、該当する基準値と比較して溶接安定性の良否を判定してもよい。
【0017】
また、前記3指標の2以上を相互に掛け合わせた積を乱れ度として演算し、これを正常なパルスアーク溶接開始時の同様指標の乱れ度と比較して、両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定するようにしてもよい。
【発明実施の形態】
以下、本発明の実施の形態として、パルスMIG溶接する場合を取上げ、図1乃至図7に示す実施例に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接装置(以下、単にアーク溶接装置と言う)の概略構成を示す。図1で1は溶接電源、2は溶接ワイヤ、3は送給ローラ、4はコンタクトチップ、5は被溶接材、6は溶接電流を測定するための分流器、31は溶接電流検出回路、32は溶接電圧検出回路である。溶接電源1から供給される電流・電圧が溶接ワイヤ2と被溶接材5の間に印加されるようになっている。溶接ワイヤ2は送給ローラ3によって所定速度で送り出され、コンタクトチップを通して被溶接材5に供給されるようになっている。溶接電源1のアース側は、分流器6を介して溶接電流検出回路31へ接続される一方、溶接電圧検出回路32及び通電時間検出回路(図示せず)に対して直接的に接続されている。
【0019】
図2は本発明のパルスアーク溶接判定装置10の基本構成を示すブロック図であって、この溶接安定性判定装置10はパルス期又はベース期の溶接電流検出手段11、パルス期又はベース期の溶接電圧検出手段12、パルス期又はベース期の通電時間検出手段13、溶接安定性演算手段14、溶接安定性判定手段15及び警報手段16を有する。そして3つの検出手段11,12,13から検出される検出値に基づいて溶接安定性演算手段14により各検出値の乱れ度が個別に演算され、これら乱れ度と、正常なパルスアーク溶接開始時の同種検出値の乱れ度とを溶接安定性判定手段15によりそれぞれ比較して、両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性が総合的に判定され、総合的な乖離度が基準値を越えて溶接安定性がないと判定される場合は、警報手段16により警報が発せられるようになっている。
【0020】
次に、パルスアーク溶接安定性判定装置10の基本回路を、図3のブロック図に基づき説明する。同図で20はプロセシングユニット(CPU)、21はメモリ(ROM)、22はメモリ(RAM)、23は入力インターフェース、24は出力インターフェース、25はキーボード・ディスプレイ・プリンター等の周辺機器、26は以上の要素を収納したコントローラ、30はA/Dコンバータ(信号変換手段)、31は溶接電流検出回路、32は溶接電圧検出回路、33は通電時間検出回路、34は警報手段16を駆動する駆動回路である。
【0021】
メモリ(ROM)21には溶接性を判定するための後述フローチャートを含む種々の処理に供するプログラム(判定プログラム)が記憶されており、プロセシングユニット(CPU)20が起動されている間は当該判定プログラムを実行するようになっている。また、メモリ(RAM)22は判定プログラムの実行に必要な変数データを一時的に記憶するようになっている。
【0022】
各検出回路31〜33の出力信号は、A/Dコンバータ30を介して入力インターフェース23からプロセシングユニット(CPU)20に入力され、プロセシングユニット(CPU)20で演算された溶接電流、溶接電圧及び通電時間に関する各乱れ度をそれぞれの基準値と比較し、基準値を外れる場合は出力インターフェース24を介して駆動回路34が駆動され、警報手段16から警報が発せられる。
【0023】
次に、溶接性を判定するためのフローチャートを図4〜図6に基づき説明する。図4は概略フローチャートを示し、図5及び図6は詳細フローチャートを示す。これらフローチャートを実行するための判定プログラムは、図3のメモリ(ROM)21に格納されていることは既述した。図4から分かるように、溶接開始によりサンプリングが開始され(ステップ101、102)、溶接終了によりサンプリングが終了し(ステップ103、104)、その後、溶接開始時の溶接安定性乱れ度の指標としてパルス・ベース電流積分値標準偏差積、パルス・ベース時間標準偏差積、パルス・ベース電流標準偏差比が順次演算され(ステップ105〜107)、これら指標が正常溶接時の同種指標と比較されて両者の乖離度により溶接性の良否が判定され(ステップ108)、乖離度が基準値よりも大きい場合は異常信号が出力される(ステップ109)。
【0024】
次に、サンプリング開始からパルス・ベース電流積分値標準偏差積及びパルス・ベース時間標準偏差積を演算するまでのフローチャートを図5に基づき説明する。既述の図9を参照すると、パルス・ベース電流積分値標準偏差積=σ(∫IP(n)dt)×σ(∫IB(n)dt)、パルス・ベース時間標準偏差積=σT P(n) ×σTB(n) と表される。図5から分るように、先ず溶接電流、溶接電圧のサンプリングが開始され(ステップ201)、通電が開始されているかが判定され(ステップ202)、開始されていれば溶接開始期間の溶接電流、溶接電圧の測定を開始する(ステップ203)。
【0025】
ステップ203に次いで、無負荷電圧時間が終了したかが判定され(ステップ204)、終了していれば溶接電流がパルス判定電流Iw1(図9参照)以上になっているかが判定れさ(ステップ205)、その条件が満足されていれば、パルス溶接電流、パルス時間の測定が開始れさる(ステップ206)。またパルス判定電流Iw1以下の場合は、ベース溶接電流、ベース時間の測定が開始される(ステップ207)。次いで溶接電流がパルス判定電流Iw1以下になっているかが判定され(ステップ208)、その条件が満足されると、パルス溶接電流、パルス通電時間の測定が終了し(ステップ209)、またパルス判定電流Iw1以上になっているかが判定され(ステップ210)、当該条件が満足されると、ベース溶接電流、ベース時間の測定が終了する(ステップ211)。
【0026】
次に、タイムアップしているか否かが判定され(ステップ212)、タイムアップしていれば溶接開始期間のパルス電流積分値、パルス時間、ベース電流積分値、ベース時間が演算され(ステップ213、214)、次にそれぞれパルス電流積分値とベース電流積分値の標準偏差と、パルス時間とベース時間の標準偏差が演算され(ステップ215、216)、続いてそれぞれの標準偏差の積が演算される(ステップ217、218)。
【0027】
図6はパルス電流積分値標準偏差比(σ(∫IP(n)dt)/S)に関するフローチャートで、先ず溶接電流、溶接電圧のサンプリングを開始し(ステップ301)、通電が開始されているかを判定し(ステップ302)、開始されていれば溶接開始期間の溶接電流、溶接電圧の測定を開始する(ステップ303)。次いで無負荷電圧時間が終了したかを判定し(ステップ304)、終了していれば溶接電流がパルス判定電流Iw1以上になっているかを判定し(ステップ305)、その条件を満足していれば、パルス溶接電流、パルス通電時間の測定を開始する(ステップ306)。次いで溶接電流がパルス判定電流Iw1以下になっているかを判定し(ステップ307)、その条件を満足したらパルス溶接電流、パルス通電時間の測定を終了する(ステップ308)。次いでタイムアップしているかを判定し(ステップ309)、タイムアップしていれば溶接開始期間のパルス電流積分値を演算し(ステップ310)、次にそのパルス電流積分値の標準偏差を演算し(ステップ311)、次いでそのパルス電流積分値標準偏差を適正電圧で溶接した場合のパルス電流積分値標準偏差「S:σ(∫IP(n)dt)」で除し、そのパルス電流積分値標準偏差比を演算する(ステップ312)。
【0028】
上述の要領により演算された各重要特性の値は、それぞれの基準値と比較して溶接安定性の良否が判定され、否と判定された場合には、前述のように警報が発せられる、この場合には、後工程に溶接不良品が流れないように溶接ラインの稼働が直ちに停止されると共に、溶接装置の異常箇所の点検と調整が行われ、処置が完了すれば溶接ラインは再稼働される。
【0029】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であり、例えば前記実施形態では溶接安定性の乱れ度として、▲1▼パルス電流積分値とベース電流積分値の各標準偏差の積、▲2▼パルス期通電時間とベース期通電時間の各標準偏差の積、▲3▼パルス電流積分値標準偏差と正常溶接時の同様標準偏差との比の3つの指標を例示したが、本発明はこれら3つの指標以外の指標を乱れ度として演算することも可能であって、例えば(パルス電流積分値標準偏差)×(ベース電流積分値標準偏差)×(パルス期通電時間標準偏差)×(ベース期通電時間標準偏差)を乱れ度の指標としてもよい。
【発明の効果】
本発明は前述の如く、パルスアーク溶接の溶接開始時におけるパルス期とベース期の溶接電流、溶接電圧及び溶接時間をそれぞれ検出してこれら検出値の乱れ度を演算し、この乱れ度を正常溶接時の同種指標と比較して両者の乖離度から溶接安定性を判定するようにしたので、溶接安定性の良否をリアルタイムで的確に判定することができ、溶接不良品の流出を未然に防止することができる。また溶接不良発生時の対策結果も直ちに判るから、溶接異常発生時の自動回復処理で電源制御信号をフィードバック制御するなど早期対策が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接安定性判定装置を組込んだパルスアーク溶接装置の概略構成図。
【図2】溶接安定性判定装置の基本構成を示すブロック図。
【図3】溶接安定性判定装置の基本回路を示すブロック図。
【図4】判定プログラムの概略フローチャートである。
【図5】判定プログラムの詳細フローチャート。
【図6】判定プログラムの詳細フローチャート。
【図7】短絡アーク溶接法における公知の溶滴移行形態を示す模式図。
【図8】パルスアーク溶接法における公知の溶滴移行形態を示す模式図。
【図9】パルスアーク溶滴移行と溶接電圧・電流の関係を示す模式図。
【符号の説明】
1 溶接電源
2 溶接電極(溶接ワイヤ)
5 被溶接材
11 溶接電流検出手段
12 溶接電圧検出手段
13 通電時間検出手段
14 溶接安定性演算手段
15 溶接安定性判定手段
30 A/Dコンバータ(信号変換手段)
Claims (3)
- 溶接電極と被溶接材との間に溶接電圧を印加してパルス・ベース電流を交互に繰り返し供給し、前記溶接電極から溶滴を1パルス毎に被溶接材上に滴下させながら溶接する消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接に於いて、
パルスアーク溶接開始時の前記溶接電極と被溶接材間の溶接電流を検出する溶接電流検出手段と、
前記溶接電流検出手段により検出される溶接電流からパルス周期毎のパルス電流積分値とベース電流積分値を演算すると共に前記2つの積分値の各標準偏差の積を前記溶接電流の乱れ度として演算する演算手段と、
前記乱れ度を正常なパルスアーク溶接開始時の乱れ度と比較して両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定する判定手段とを有することを特徴とするパルスアーク溶接の溶接安定性判定装置。 - 溶接電極と被溶接材との間に溶接電圧を印加してパルス・ベース電流を交互に繰り返し供給し、前記溶接電極から溶滴を1パルス毎に被溶接材上に滴下させながら溶接する消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接に於いて、
パルスアーク溶接開始時のパルス期とベース期の通電時間を検出する通電時間検出手段と、
前記通電時間検出手段により検出されるパルス周期毎のパルス期通電時間とベース期通電時間から前記2つの通電時間の標準偏差を演算すると共に、各標準偏差の積を前記パルス期とベース期の通電時間の乱れ度として演算する演算手段と、
前記乱れ度を正常なパルスアーク溶接開始時の乱れ度と比較して両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定する判定手段とを有することを特徴とするパルスアーク溶接の溶接安定性判定装置。 - 溶接電極と被溶接材との間に溶接電圧を印加してパルス・ベース電流を交互に繰り返し供給し、前記溶接電極から溶滴を1パルス毎に被溶接材上に滴下させながら溶接する消耗電極式ガスシールドパルスアーク溶接に於いて、
パルスアーク溶接開始時の前記溶接電極と被溶接材間の溶接電流を検出する溶接電流検出手段と、
前記溶接電流検出手段により検出される溶接電流から1パルス毎のパルス電流積分値を演算すると共に、前記パルス電流積分値の標準偏差と正常溶接時パルス電流積分値の標準偏差の比を前記溶接電流の乱れ度として演算する演算手段と、
前記乱れ度を正常なパルスアーク溶接開始時の乱れ度と比較して両者の乖離度からパルスアーク溶接開始時の溶接安定性を判定する判定手段とを有することを特徴とするパルスアーク溶接の溶接安定性判定装置。
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