JP4270420B2 - 投影スクリーン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、投影スクリーンに関し、特に、ホログラムを用いて異なる方向から入射する複数の色の光を同一方向に出射させるホログラム色補正板及びそれを用いた3板式又は3管式のプロジェクター若しくは3板式又は3管式プロジェクションTVの投影スクリーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
3板式プロジェクターの投影スクリーンには次の2つの機能が求められる:
▲1▼ 横方向拡散機能:出射光を横方向に拡散して視域を広げる機能、
▲2▼ 色補正機能:異なる方向からの異なる色の投影光を略同じ方向に向く光にする機能。
【0003】
これらを実現する透過型のスクリーンに関しては従来種々の方法があるが、図6に示すように、両面がレンズ面のレンチキュラーレンズとフレネルレンズの組み合せからなるものが代表的なものである。レンチキュラーレンズは、図7に示すように、その両面のレンズの作用により、異なる方向から入射する異なる色の投影光(図では、0°入射の実線の光束と、10°入射の破線の光束)を略同じ方向に向く光束に変換している。この場合、レンチキュラーレンズは、図8に示すように、溶融した樹脂をTダイから押出機により押し出し、入射側レンズ面を成形する入光側金型ロールと出射側レンズ面を成形する出光側金型ロールとの間を通してシート両面にレンズ面を成形する溶融押し出し成形により作製する方法が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の▲2▼の色補正機能を実現するために、両面がレンズ面のレンチキュラーレンズを用いる場合に、両面のレンズ面の位置合わせが重要である。図8に示すように、レンチキュラーレンズを押し出し成形により作製する場合に、一対の金型ロール(入光側金型ロールと出光側金型ロール)を相互に横移動させて成形される両面のレンズの位置合わせを行なっていたが、レンチキュラーレンズ面がファインピッチとなるに従い、このような位置合わせ方法は益々困難な方法となってきている。
【0005】
また、レンチキュラーレンズの断面形状は、ピッチが変っても相似形を保つ必要があるため、ファインピッチとなるに従って厚みも薄くなる。ところが、上記の押し出し成形では成形後に延伸することができないため、薄く成形することに必然的に限界があり(一般的に、約0.5mm)、0.4mm程度以下のファインピッチの両面レンチキュラーレンズを溶融押し出し成形により製造することはできない。
【0006】
それに代わる方法として、特許2,693,095号に示されているように、基材のフイルムの両面に紫外線硬化樹脂を塗布してレンズ面を形成する方法も提案されているが、位置合わせの困難さ等の理由で未だ実用化されていない。
【0007】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホログラムを用いて異なる方向から入射する複数の色の光を同一方向に出射させるようにする色補正板を用いた投影スクリーンを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の投影スクリーンは、投影側から、異なる方向から入射する複数の波長の光をホログラムによって波長に応じて異なる角度で回折させ、同一方向に出射させるホログラム色補正板、レンチキュラーレンズから構成されていることを特徴とするものである。
この場合、そのホログラム色補正板の投影側にフレネルレンズが配置されていてもよい。
【0009】
また、そのホログラムは透過型であり、1つの波長の光をほとんど回折せずそのまま透過し、その他の波長の光は波長に応じて異なる角度で回折させるものであることが望ましい。
【0010】
また、その複数の波長の光が赤色、緑色、青色の3原色の光であり、赤色の波長をそのまま透過し、緑色の光、青色の光を赤色の光と平行になるように回折させるものとすることができる。また、緑色の波長をそのまま透過し、赤色の光、青色の光を緑色の光と平行になるように回折させようにしてもよい。
【0012】
また、そのホログラムは、複数の波長に対するホログラムが1層の感光材料に多重記録されているものであっても、複数の波長に対応する複数の層の感光材料から構成されていてもよい。
【0013】
以上のホログラムは体積型ホログラムからなることが望ましい。
【0015】
本発明においては、異なる方向から入射する複数の波長の光をホログラムによって波長に応じて異なる角度で回折させ、同一方向に出射させるので、ホログラム同士、ホログラムと投影スクリーンを構成するレンチキュラーレンズとのアライメントを必要とせずに、色ずれ、色にじみのない色合成、カラー画像合成ができる。その結果、分解能の高い投影スクリーンとするためにレンチキュラーレンズ面をファインピッチとしても、色ずれ、色にじみのない高分解能の投影スクリーンが得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、ホログラムにより色補正機能が実現できること、その場合にアライメントが不要になることに着目してなされたものであり、両面レンズ面のレンチキュラーレンズシートの代わりに、レンチキュラーレンズとこのようなホログラム色補正板とを組み合せ、レンチキュラーレンズには横方向拡散機能(前記の▲1▼)、ホログラム色補正板には色補正機能(前記の▲2▼)を受け持たせて投影スクリーンを構成する。なお、ホログラムは、本来面分布を有さないものとすることができるので、上記のようにアライメントが不要になる。
【0017】
以下、本発明のホログラム色補正板とそれを用いた投影スクリーンを実施例に基づいて説明する。
【0018】
ホログラムには、レリーフ型と体積型があるが、この中、体積型は波長選択性、角度選択性が高いので、本発明においては、主として体積型を用いることが望ましい。また、体積型ホログラムの中、位相型は回折効率を高くすることができるので、本発明においては、体積位相型ホログラムを用いることが望ましい。これらに適したホログラム感光材料としては、銀塩感光材料、重クロム酸ゼラチン、フォトポリマー等が使用できる。
【0019】
さて、本発明のホログラム色補正板は、ホログラムの波長選択性、角度選択性を利用して、異なる方向から入射する複数の波長の光を合成して同一方向に出射させるために、その複数の波長の数をNとするとき、N−1の波長に対してそれぞれ進行方向を変更するホログラムを作成し、それらのホログラムを多重化するか多層化し、残りの1波長の光はその多重化あるいは多層化したホログラムを透過させることにより、Nの波長の光を同一方向に出射させるようにしたものである。
【0020】
実施例1
図2において、ホログラム感光材料1G、1Bとして、米国デュポン社製フォトポリマーOMNIDEXを用い、30cm角の大きさに切り出したフィルムを使用した。
【0021】
そして、図2(a)に示すように、緑色光源として波長543nmのNdYAGレーザ2Gを用い、ハーフミラー3でレーザ2Gからのレーザ光を分割し、それぞれビーム拡大器4を通してビーム径を拡大し、一方のレーザ光をホログラム感光材料1Gに対して垂直に、他方のレーザ光を入射角θ=30°で同じ側からホログラム感光材料1Gに入射させて干渉させ、材料指定の後処理として超高圧水銀灯で紫外線露光後に120℃で2時間加熱することにより、緑色ホログラム1Gを作成した。
【0022】
また、図2(b)に示すように、青色光源として波長488nmのアルゴンレーザ2Bを用い、ハーフミラー3でレーザ2Bからのレーザ光を分割し、それぞれビーム拡大器4を通してビーム径を拡大し、一方のレーザ光をホログラム感光材料1Bに対して垂直に、他方のレーザ光を図2(a)の場合とは反対側の入射角θ=−30°で同じ側からホログラム感光材料1Bに入射させて干渉させ、材料指定の後処理として超高圧水銀灯で紫外線露光後に120℃で2時間加熱することにより、青色ホログラム1Bを作成した。
【0023】
その後、図1に示すように、この緑色ホログラム1Gと青色ホログラム1Bをアクリル樹脂の支持板5の上に、青色ホログラム1B、緑色ホログラム1Gの順に粘着剤を用いて貼り合わせて、本発明による1実施例のホログラム色補正板10を構成した。この場合、ホログラム1G、1Bは面内均一なので、相互のアライメンは不要である。
【0024】
このホログラム色補正板10の支持板5側から赤色の平行光束6Rを垂直に入射させると同時に、緑色の平行光束6Gを入射角θ=30°で、青色の平行光束6Bを入射角θ=−30°で入射させたところ、ホログラム色補正板10の支持板5と反対側に、透過した赤色の平行光束6Rと、ホログラム色補正板10でその垂直方向に回折された緑色の平行光束6Gと青色の平行光束6Bとが垂直に合成されて出射され、白色光7Wとして見えた。
【0025】
実施例2
図3に示すように、実施例1により作製されたホログラム色補正板10の支持板5とは反対側にピッチ0.3mmのレンチキュラーレンズ11を組み合わせて本発明による1実施例の透過型スクリーン12を構成した。この際、レンチキュラーレンズ11のレンズ面をホログラム色補正板10側に配置した。
【0026】
得られた透過型スクリーン12を用い、図4に示すように、緑色画像投影機13G、赤色画像投影機13R、青色画像投影機13Bの3台のプロジェクターを赤色画像投影機13Rを中心に配置して、緑色画像投影機13Gからの投影光束14Gが中心光線で30°の入射角で、赤色画像投影機13Rからの投影光束14Rが中心光線で垂直に、青色画像投影機13Bからの投影光束14Bが中心光線で−30°の入射角で透過型スクリーン12にその支持板5側から入射し、かつ、そのスクリーン面に各投影像が位置ずれなく結像するように配置した。その結果、透過型スクリーン12の背後からは、全拡散角αの角度範囲で、従来タイプ(図7)と同様に、色ずれ、色にじみのないカラー画像が観察できた。
【0027】
実施例3
実施例1により作成された緑色ホログラム1Gと青色ホログラム1Bを、図5に示すように、フレネルレンズ15の出射側の平面上に、青色ホログラム1B、緑色ホログラム1Gの順に粘着剤を用いて貼り合わせた。これを、実施例2の場合と同様に、フレネルレンズ15とは反対側にピッチ0.3mmのレンチキュラーレンズ11を組み合わせて本発明による別の実施例の透過型スクリーン16を構成した。この際、レンチキュラーレンズ11のレンズ面をフレネルレンズ15側に配置した。この場合も、ホログラム1G、1Bは面内均一なので、相互のアライメンは不要である。
【0028】
得られた透過型スクリーン16を用い、実施例2の場合と同様に緑色画像投影機13G、赤色画像投影機13R、青色画像投影機13Bの3台のプロジェクターを配置し、透過型スクリーン16のフレネルレンズ15側から投影した。その結果、透過型スクリーン16の背後からは、全拡散角αの角度範囲で、従来タイプ(図7)と同様に、色ずれ、色にじみのないカラー画像が観察できた。
【0029】
ところで、以上の実施例においては、ホログラムで回折させずに透過させる色として赤色を選んでいる。通常の3板式のプロジェクター若しくは3板式プロジェクションTVにおいては、中心に配置される投影機は緑色画像投影機であり、その配置に従うなら、透過型スクリーン12、16のホログラムで回折させずに透過させる色としては緑色を選ぶのが素直である(もちろん、本発明において、図1のホログラム1Gを赤色ホログラムとし、中心から入射させる光束6Rを緑色光束とし、図4において、中心に配置される投影機13Rを緑色画像投影機としてもよい。)。しかしながら、上記実施例において、ホログラムで回折させずに透過させる色として赤色を選んだことには理由がある。以下、この理由を簡単に説明する。
【0030】
体積型ホログラムは、回折波長が長い程以下の困難がある:
▲1▼■感光材料を厚くする必要がある。B光の波長に対して厚さが50μm必要なとき、G光の波長に対しては70μm、R光の波長に対しては90μmとなる。
【0031】
▲2▼ 入射角度幅が狭くなる(中心角からずれた光はより回折されなくなる)。B光の波長に対して回折効率が0%になる角度ずれが1.04°のとき、G光の波長に対しては0.88°、R光の波長に対しては0.79°となる。
【0032】
したがって、ホログラムで回折させる波長は極力短波長にするのが有利である。そのため、上記実施例においては、赤色の光を素通しにし、緑色、青色をホログラムにより回折させる構成にしている。
【0033】
また、以上の実施例においては、緑色ホログラム1Gと青色ホログラム1Bは別々の層に記録されたものとしたが、1層にこの2つのホログラムを多重に記録したものでももちろんよい。
【0034】
なお、以上の説明においては、使用するホログラムとしては透過型のホログラムを用いて透過型スクリーンを構成しているが、反射型ホログラムを用いて反射型スクリーンを構成することもできる。その場合には、ホログラムで回折されない波長の光を正反射させるために、ホログラムの背後に反射層を設ける必要がある。あるいは、その波長の光も同じ方向に回折するようにホログラムを構成する必要がある。
【0035】
さらに、本発明による投影スクリーンに色分解像を投影する投影機としては、液晶表示装置、CRT、マイクロミラーデバイス等を用いたものがあるが、本発明の投影スクリーンは、3板式プロジェクター若しくは3板式プロジェクションTVであれば、その何れも使用可能である。
【0036】
以上、本発明のホログラム色補正板及びそれを用いた投影スクリーンを実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のホログラム色補正板及びそれを用いた投影スクリーンによると、異なる方向から入射する複数の波長の光をホログラムによって波長に応じて異なる角度で回折させ、同一方向に出射させるので、ホログラム同士、ホログラムと投影スクリーンを構成するレンチキュラーレンズとのアライメントを必要とせずに、色ずれ、色にじみのない色合成、カラー画像合成ができる。その結果、分解能の高い投影スクリーンとするためにレンチキュラーレンズ面をファインピッチとしても、色ずれ、色にじみのない高分解能の投影スクリーンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例のホログラム色補正板の構成と作用を説明するための図である。
【図2】図1のホログラム色補正板の構成要素のホログラムを作成するための光学配置を示す図である。
【図3】図1のホログラム色補正板を用いた本発明の1実施例の透過型スクリーンの断面図である。
【図4】図3の透過型スクリーンを用いた3板式プロジェクターの配置を示す図である。
【図5】図1のホログラム色補正板を用いた本発明の別の実施例の透過型スクリーンの断面図である。
【図6】従来のレンチキュラーレンズシートを用いた投影スクリーンと3板式プロジェクションTVを示す図である。
【図7】従来のレンチキュラーレンズシートによる色補正機能を説明するための図である。
【図8】従来のレンチキュラーレンズシートの製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1G…緑色ホログラム(ホログラム感光材料)
1B…青色ホログラム(ホログラム感光材料)
2G…緑色レーザ
2B…青色レーザ
3…ハーフミラー
4…ビーム拡大器
5…支持板
6R…赤色光束
6G…緑色光束
6B…青色光束
7W…出射白色光
10…ホログラム色補正板
11…レンチキュラーレンズ
12…透過型スクリーン
13G…緑色画像投影機
13R…赤色画像投影機
13B…青色画像投影機
14G…緑色投影光束
14R…赤色投影光束
14B…青色投影光束
15…フレネルレンズ
16…透過型スクリーン
Claims (8)
- 投影側から、異なる方向から入射する複数の波長の光をホログラムによって波長に応じて異なる角度で回折させ、同一方向に出射させるホログラム色補正板、レンチキュラーレンズから構成されていることを特徴とする投影スクリーン。
- 前記ホログラム色補正板の投影側にフレネルレンズが配置されていることを特徴とする請求項1記載の投影スクリーン。
- 前記ホログラムは透過型であり、1つの波長の光をほとんど回折せずそのまま透過し、その他の波長の光は波長に応じて異なる角度で回折させることを特徴とする請求項1又は2記載の投影スクリーン。
- 複数の波長の光が赤色、緑色、青色の3原色の光であり、赤色の波長をそのまま透過し、緑色の光、青色の光を赤色の光と平行になるように回折させることを特徴とする請求項3記載の投影スクリーン。
- 複数の波長の光が赤色、緑色、青色の3原色の光であり、緑色の波長をそのまま透過し、赤色の光、青色の光を緑色の光と平行になるように回折させることを特徴とする請求項3記載の投影スクリーン。
- 前記ホログラムは複数の波長に対するホログラムが1層の感光材料に多重記録されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載の投影スクリーン。
- 前記ホログラムは、複数の波長に対応する複数の層の感光材料から構成されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載の投影スクリーン。
- 前記ホログラムは体積型ホログラムからなることを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の投影スクリーン。
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